説明

電子制御サーモスタットの制御装置

【課題】 実際の天候を考慮した効率的な冷却媒体の温度制御を行うことが可能な電子制御サーモスタットの制御装置を提供する。
【解決手段】 車両に搭載されるエンジンの負荷に応じて、エンジンを冷却する冷却媒体の温度を電子制御サーモスタットの動作により可変させるに際して、エンジン制御ユニット1は、エンジン運転状態検知部3によってエンジンの運転状態を検出して、エンジンの負荷を判定すると共に、降雨状況検知部4からの情報によって、車両に搭載される雨滴センサから入力される検知結果と、車両に搭載されるワイパの動作モードを示すワイパスイッチ信号とに基づいて降雨量を判定する。そして、エンジン制御ユニット1は、エンジン負荷と、降雨量とに基づいて、冷却媒体の目標温度を設定して電子制御サーモスタット駆動ユニット2を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるエンジンの負荷に応じて、エンジンを冷却する冷却媒体の温度を電子制御サーモスタットにより可変設定させる電子制御サーモスタットの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関(エンジン)により駆動する車両は、エンジンの適正な運転状態を維持するために、エンジンを冷却するエンジン冷却システムが搭載されている。エンジン冷却システムは、冷却水やオイルなどの冷却媒体の温度をセンサにより検知し、ラジエタ等の熱交換器への冷却媒体の流入/遮断をサーモスタットで調節させて、エンジン及びラジエータに冷却媒体を循環させることでエンジンを冷却している。
【0003】
このようなエンジン冷却システムにおいては、冷却媒体の温度を比較的高く設定した場合、エンジンのシリンダーから冷却媒体への冷却損失を低減することができる。また、この場合、エンジン内の温度が高温に保持されることにより潤滑油の粘度が低下し、エンジン内のメカニカルフリクション損失(機械的摩擦損失)を低減することができる。これらの結果として、冷却媒体の温度を比較的高く設定することでエンジンの熱効率を向上させて、車両の燃費を向上させることが知られている。
【0004】
しかしながら、冷却媒体の温度を高温に設定すると、エンジンの吸入空気の温度が上昇するため、空気密度が低下してエンジン出力が低下してしまう。また、空気と燃料との混合気の異常燃焼(ノッキング)が発生する可能性が高くなる。
【0005】
そこで、燃費の向上を図りつつ、エンジン出力の低下や異常燃焼などの不具合の発生を抑制するために、エンジン負荷や環境条件に応じて冷却媒体の温度を電子制御サーモスタットにより可変設定する技術が提案されている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【0006】
具体的には、エンジンの運転状態を検出する各種センサ群から得られたパラメータをエンジン制御ユニット(ECU)に入力し、ECUが入力されたパラメータに基づいてエンジン負荷を判定する。
【0007】
そして、ECUは、エンジン負荷が低いと判定すると、低負荷モードによる制御として、冷却媒体が所定の高温度に保持されるように制御する。このとき、ECUは、エンジンのスロットル開度、エンジン回転数、及び冷却水温度に基づいて冷却媒体の温度を制御する。
【0008】
また、ECUは、エンジン負荷が中程度或いは高程度であると判定すると、中高負荷モードによる制御として、予め設定された冷却媒体の目標温度を読み出して、冷却媒体温度が目標温度となるように電子制御サーモスタットの動作を制御する。このとき、ECUは、エンジンのスロットル開度、エンジン回転数、冷却水温度、大気圧、吸入吸気量、吸入空気の湿度、及び吸入空気の温度のうち少なくとも一つ或いは任意の組み合わせに基づいて冷却媒体の温度制御を行う。
【特許文献1】特開2003−120294号公報
【特許文献2】特開2003−201844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、雨天時においては、車両表面の雨滴が蒸発するため、非雨天時よりも冷却媒体温度を高く設定することでエンジン効率を改善できることが知られている。
【0010】
しかしながら、例えば上述した特許文献1に代表される公知の技術は、冷却媒体温度を制御するに際して、湿度センサにより検出された湿度を用いて冷却媒体の目標温度を決定している。このような手法では、大気中の水蒸気割合に相当する湿度を湿度センサによって検出しており、実際に雨が降っているか否かを検出することができない。
【0011】
すなわち、ごく一般的な自然環境の下において、湿度が高いからといって必ずしも雨が降っているとは限らず、降雨のない曇天時においても雨天時と同程度の90%〜100%の湿度となる場合がある。したがって、従来の冷却水温度制御手法では、雨天時に非雨天時よりも高い温度となるように冷却水温度を設定することができず、エンジン効率を改善することに限界がある。
【0012】
そこで、本発明は、上述した従来の実情に鑑みて提案されるものであり、実際の天候を考慮した効率的な冷却媒体の温度制御を行うことが可能な電子制御サーモスタットの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、車両に搭載されるエンジンの負荷に応じて、エンジンを冷却する冷却媒体の温度を電子制御サーモスタットの動作により可変させるに際して、エンジン負荷判定手段により、エンジンの運転状態を検出して、エンジンの負荷を判定すると共に、降雨量判定手段により、車両に搭載される雨滴センサから入力される検知結果と、車両に搭載されるワイパの動作モードを示すワイパスイッチ信号との少なくとも一方に基づいて降雨量を判定すると、目標温度設定手段は、エンジン負荷判定手段により判定されたエンジン負荷と、降雨量判定手段により判定された降雨量との少なくとも一方に基づいて、冷却媒体の目標温度を設定して電子制御サーモスタットを駆動制御することにより、上述の課題を解決する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、雨滴センサの検知結果とワイパスイッチ信号の少なくとも一方から降雨量を判定するので、雨滴センサでは雨滴を検知していないような降雨状態であってもワイパスイッチ信号によって雨滴の払拭をしているような場合に、エンジン負荷に応じた冷却媒体の目標温度を設定することができ、実際の天候を考慮した効率的な冷却媒体の温度制御を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下では、まず、本発明を適用して構成された第1の実施形態として示すエンジン冷却制御システムについて、図面を参照しながら説明する。
【0016】
[第1の実施形態]
エンジン冷却制御システムは、図1に示すように、車両に搭載される内燃機関(エンジン)を制御するためのエンジン制御ユニット(ECU)1によって、電子制御サーモスタット駆動ユニット2の動作を制御するものである。エンジン冷却制御システムは、エンジン制御ユニット1に、エンジンの運転状態を検知するエンジン運転状態検知部3と、車両の現在位置における天候(降雨状況)を検知する降雨状況検知部4とが接続されている。
【0017】
エンジン運転状態検知部3は、エンジンの運転状態を検知する複数のセンサによって構成されている。具体的には、エンジン運転状態検知部3は、エンジンが吸入する空気(以下、吸入空気と称する。)の湿度を検出する湿度センサ31、車両周辺の気温を検出する外気温センサ32、エンジン周囲の大気圧を検出する大気圧センサ33、吸入空気の温度を検出する吸気温センサ34、エンジンのスロットルバルブの開度を検出するスロットル開度センサ35、吸入空気の量(吸入空気量)を検出するエアフローメータ36、エンジンの冷却システムを循環する冷却水の温度を検出する冷却水温センサ37、エンジンの回転数を検出する回転数センサ38、及びノッキング(異常燃焼)の発生を検出するノックセンサ39を備えている。これらのエンジン運転状態検知部3を構成する各センサからの出力信号は、エンジン制御ユニット1に入力されている。
【0018】
降雨状況検知部4は、車両外装に降雨する雨滴の有無を検出する雨滴センサ(雨滴検知センサ)41と、窓部の雨滴を払拭するワイパの動作モードを制御するワイパスイッチ42とを備えている。
【0019】
雨滴センサ41は、例えば、車両のボンネット或いはフロントウィンドウ周辺部などの車両外装に取り付けられており、雨滴の有無を検出する。雨滴センサ41は、降雨状況をより的確に検知する目的で、雨滴の有無だけでなく、単位時間あたりの雨滴の量を検出可能とされていることが望ましい。本実施形態においては、雨滴センサ41によって雨滴量の有無及び大小を検出し、検出結果を示す雨滴信号をエンジン制御ユニット1に出力する構成とされている。
【0020】
ワイパスイッチ42は、ワイパの動作モードを、停止(OFF)モード、間欠動作モード、低速動作(Low)モード、及び高速動作(Hi)モードのうちから選択操作可能とされており、各動作モードを示すワイパスイッチ信号を出力する。ワイパスイッチ信号は、ワイパを駆動する駆動ユニット(図示せず)と、エンジン制御ユニット1とに対して出力される。
【0021】
電子制御サーモスタット駆動ユニット2は、図示しないラジエータ(熱交換器)とエンジンとの間で循環させる冷却水の流入/遮断を制御する電子制御サーモスタットを駆動する。この電子制御サーモスタット駆動ユニット2は、エンジン制御ユニット1から出力される制御信号に応じて、電子制御サーモスタットを構成するアクチュエータを制御する。
【0022】
エンジン制御ユニット1は、エンジン運転状態検知部3を構成する各センサから入力された信号に基づいて、エンジンの負荷を判定する処理と、雨滴センサ41から入力される雨滴の検知結果とワイパの動作モードを示すワイパスイッチ信号とに基づいて降雨量を判定する処理とを行う。また、エンジン制御ユニット1は、判定の結果得られたエンジン負荷及び降雨量に基づいて、電子制御サーモスタット駆動ユニット2に対して冷却水の目標温度を設定する。
【0023】
エンジン制御ユニット1は、冷却水の目標温度を設定する際に、図2に示す温度設定テーブルを参照する。温度設定テーブルは、エンジン制御ユニット1内に設けられたメモリに保持されており、エンジン負荷と降雨量とに応じて予め設定された冷却水温度の設定値(目標温度)を決定するためのテーブルである。
【0024】
なお、温度設定テーブルは、エンジン制御ユニット1内に設けられたメモリに保持されるとしてもよいし、エンジン制御ユニット1の外部に接続されたメモリに保持されるとしてもよい。また、メモリとしては、読出し専用のROMであってもよいが、保持内容を書き換え可能とされたEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)などであることが望ましい。
【0025】
つぎに、以上のように構成されたエンジン冷却制御システムによる電子制御サーモスタットの制御処理について、図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0026】
電子制御サーモスタットの制御処理が開始されると、エンジン制御ユニット1は、エンジン運転状態検知部3を構成する各センサから入力される信号に基づいて、エンジンの運転状態を把握し、エンジン負荷を判定する(ステップS1)。このとき、エンジン制御ユニット1は、各センサで検出したスロットル開度、吸入空気量、回転数、水温、図示しない車速センサから検出した車速のそれぞれに所定の係数を乗算して、所定の演算式でエンジン負荷を判定しても良く、所定のマップデータを使用してエンジン負荷を判定しても良い。
【0027】
次に、エンジン制御ユニット1は、ステップS1で判定したエンジン負荷の大きさに基づいて、エンジン負荷を「大」、「中」、「小」の3段階のうちのいずれに該当するかのランク判別をする(ステップS2)。
【0028】
次に、エンジン制御ユニット1は、ワイパスイッチ42から出力されたワイパスイッチ信号を取得してワイパの動作モードを判定し、図示しないメモリに保持しておいた前回の判定結果を更新する(ステップS3)。このステップS3においては、例えば、フロントウィンドウに付着した汚れを除去する目的で短期間ワイパを動作させる場合と、雨天時にフロントウィンドウの雨滴を除去する目的で継続的にワイパを動作させる場合とを区別するために、予め設定された所定の期間ワイパの動作が継続した場合にワイパが動作していると判定することが望ましい。
【0029】
次に、エンジン制御ユニット1は、雨滴センサ41から入力された雨滴信号を取得する(ステップS4)。
【0030】
次に、エンジン制御ユニット1は、ワイパスイッチ信号に基づいて、ワイパが動作しているか否か、すなわちワイパの動作モードが停止モード以外であるか否かを判定する(ステップS5)。この判定の結果、ワイパが動作している場合(図中S5におけるYES)には、処理をステップS6に進め、ワイパが動作していない場合(図中S5におけるNO)には、処理をステップS9に進める。
【0031】
ステップS6において、エンジン制御ユニット1は、ステップS4で取得した雨滴信号によって雨滴が検出されているか否かに基づいて、車両周辺の天候が雨天か否かを判定する(ステップS6)。この判定の結果、雨滴信号によって雨滴が検出されている場合(図中S6におけるYES)には、処理をステップS7に進め、雨滴信号によって雨滴が検出されていない場合(図中S6におけるNO)には、処理をステップS8に進める。
【0032】
ステップS7において、エンジン制御ユニット1は、ワイパスイッチ信号に基づく現在のワイパの動作モード(間欠動作モード、低速動作モード、高速動作モード)と、雨滴信号に基づく現在の降雨量とに応じて、車両周辺の降雨量を判定する(ステップS7)。本実施形態においては、降雨量の大きさに応じて、「大」、「中」、「小」の3段階のうちのいずれに該当するかをランク判別するものとする。このステップS7の後に、処理をステップS9に進める。
【0033】
一方、ステップS8において、エンジン制御ユニット1は、非雨天時の下でワイパの動作が継続的に行われていることで、車両の運転者(ドライバ)のワイパスイッチ42の操作に応じて雨滴が存在していると見なすことができ、冷却水を高い温度に設定した制御が要求できるものと判定する。本実施形態においては、ステップS8における処理を行うことにより、例えば、雨滴センサ41が雨滴を検知していない非雨天時においても、ドライバがワイパを例えば間欠動作モードで継続的に動作させるといった所定の条件を満たした場合に、雨天時と同様に高い温度に冷却水の目標温度を設定できる。これにより、非雨天時においても、ドライバのワイパスイッチ42の操作による冷却水温度の制御を行うことが可能となる。なお、このステップS8の後に、エンジン制御ユニット1は、処理をステップS9に進める。
【0034】
ステップS9において、エンジン制御ユニット1は、ステップS2で得られたエンジン負荷と、雨滴信号及びワイパスイッチ信号とに基づいて得られた降雨量とを確定する。
【0035】
次に、エンジン制御ユニット1は、図2に示す設定温度テーブルを参照して、冷却水の目標温度を取得する(ステップS10)。なお、ステップS8において、非雨天時にドライバの操作によって冷却水温度を高く設定した制御を行うと判定されている場合には、図2に示す設定温度テーブルのうちの最右列の雨滴センサ41では雨滴が検出されていないがワイパスイッチ42がオン状態である場合の所定の目標温度値を参照する。
【0036】
次に、エンジン制御ユニット1は、ステップS10で取得された目標温度を示す制御信号を電子制御サーモスタット駆動ユニット2に出力し、電子制御サーモスタット駆動ユニット2に目標温度を設定する(ステップS11)。これにより、電子制御サーモスタット駆動ユニット2は、冷却水が設定された目標温度となるように電子制御サーモスタットを駆動させる。
【0037】
ここで、設定温度テーブルは、図2に示すように、エンジン負荷が小さくなるにつれて、且つ降雨量が大きくなるにつれて、冷却水の目標温度が高くなるように設定されている。
【0038】
一般に、雨天時には、車両の外装が濡れることから、ラジエータ放熱量、及びエンジンフード(ボンネット)やエンジンブロックからの放熱量が増大し、エンジンの冷却性能に余裕ができて冷却水温度を高く設定できることが知られている。また、雨天時には、空気と共に吸入した雨滴の気化による作用によって吸入空気が冷却され、エンジンのシリンダーへの混合気の充填効率が上昇するため、より広いエンジン負荷条件の下で冷却水温度を高く設定することができる。
【0039】
エンジン冷却システムにおいては、冷却水の温度を高く設定することにより、エンジンのシリンダーから冷却水への冷却損失を低減することができ、更に、エンジン内の温度が高温に保持されることにより潤滑油の粘度が低下して、エンジン内のメカニカルフリクション損失を低減することができる。これらの結果として、冷却媒体の温度を比較的高く設定することでエンジンの熱効率が向上し、車両の燃費を向上できる。
【0040】
本実施形態においては、雨滴センサ41による雨滴の検知結果とワイパスイッチ信号に基づくワイパの動作モードとに応じて、実際の降雨量を判定することができ、判定した降雨量に応じて現在のエンジン負荷に最適な温度となるように冷却水の温度を電子制御サーモスタットに対して設定している。
【0041】
したがって、例えば湿度センサ31のみによって降雨の判定を行うことによる誤判定、すなわち、湿度が高いだけの非雨天時に雨が降っていると誤判定してしまうことがなく、より高精度且つ確実に冷却水温度を設定して電子制御サーモスタットを動作させることができる。これにより、エンジンの熱効率を一層向上させると共に、車両の燃費を更に向上させることができる。
【0042】
[第2の実施形態]
つぎに、本発明を適用して構成された第2の実施形態として示すエンジン冷却制御システムについて、図面を参照しながら説明する。
【0043】
エンジン冷却制御システムは、図4に示すように、降雨状況検知部4に通信部100が含まれているという点で上述したエンジン冷却制御システムとは異なる。そこで、以下の説明においては、上述した第1の実施形態と同一又は同等の構成・動作については説明を省略し、同一又は同等の部位については第1の実施形態と同一の番号、ステップ番号を付すことによりその詳細な説明を省略する。
【0044】
通信部100は、図示しない基地局との間で無線通信を行い、例えばインターネットなどの外部ネットワークと接続して、車両の現在位置周辺の気象情報を取得する機能を有している。通信部100が取得する気象情報としては、例えば、大気圧、大気温度、湿度、降雨量などを示す情報である。通信部100は、エンジン制御ユニット1と接続されており、外部ネットワークから取得した気象情報をエンジン制御ユニット1に出力する。
【0045】
本実施形態において、エンジン制御ユニット1は、降雨量を判定する際に、雨滴センサ41から入力される雨滴の検知結果と、ワイパの動作モードを示すワイパスイッチ信号とに加えて、通信部100から入力された気象情報に基づいて降雨量を判定する。
【0046】
以上のように構成されたエンジン冷却制御システムによる電子制御サーモスタットの制御処理について、図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0047】
第2の実施形態における電子制御サーモスタットの制御処理において、上述した第1の実施形態と異なる点は、ステップS7及びステップS8の後段に、それぞれ通信部100から気象情報を取得するステップS21及びステップS22を有するという点である。
【0048】
ステップS7において降雨量の判定を行った後に、エンジン制御ユニット1は、通信部100を介して外部ネットワーク(本実施形態ではインターネット)から車両の現在位置周辺の気象情報を取得する(ステップS21)。このステップS21の後に、処理をステップS9に進める。
【0049】
また、ステップS8において、ドライバの操作に応じた雨滴の有無から、冷却水温度の制御を行うことを判定した後に、エンジン制御ユニット1は、通信部100を介して外部ネットワーク(本実施形態ではインターネット)から車両の現在位置周辺の気象情報を取得する(ステップS12)。このステップS12の後に、処理をステップS9に進める。
【0050】
ステップS9において、エンジン制御ユニット1は、ステップS2で得られたエンジン負荷を確定すると共に、雨滴信号及びワイパスイッチ信号に加えて、ステップS21或いはステップS22で取得された気象情報に基づいて車両周辺の降雨量を確定する。次に、エンジン制御ユニット1は、ステップS10において図2に示す設定温度テーブルを参照すると共に、参照の結果得られた目標温度をステップS11において電子制御サーモスタット駆動ユニット2に設定する。
【0051】
本実施形態においては、雨滴センサ41による雨滴の検知結果とワイパスイッチ信号に基づくワイパの動作モードとに加えて、外部ネットワークから取得した気象情報に基づいて、実際の降雨量を判定している。したがって、第1の実施形態よりも更に高精度に車両周辺の降雨状況を判定することができ、より高精度且つ確実に冷却水温度を設定して、電子制御サーモスタットを駆動させることができる。これにより、エンジンの熱効率を一層向上させると共に、車両の燃費を更に向上させることができる。
【0052】
なお、上述した第2の実施形態においては、通信部100を介して取得した気象情報を降雨量判定の際に補足的に用いているが、取得する気象情報の精度が十分である場合には、主に取得した気象情報に基づいて降雨量判定を行い、雨滴信号及びワイパスイッチ信号を補足的に用いてもよい。
【0053】
また、第2の実施形態においては、例えば図6に示すように、エンジン運転状態検知部3に設けられたエンジン負荷を判定するための各センサ群のうち、湿度センサ31、外気温センサ32、及び大気圧センサ33を省略し、通信部100を介して得られた気象情報に含まれる湿度、大気温、及び大気圧を利用してエンジン負荷を判定するとしてもよい。これにより、図4に示す構成よりも装置構成を簡略化して、低コスト化を図ることができる。
【0054】
なお、図6においては、エンジン運転状態検知部3が備えるセンサ群のうちのひとつとして、車両の速度を検出する車速センサ120が追加されているが、車速センサ120の有無は任意である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の実施形態として示すエンジン冷却制御システムの一例を示すブロック図である。
【図2】エンジン制御ユニット1により参照する設定温度テーブルの一例を示す模式図である。
【図3】エンジン制御ユニット1による制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第2の実施形態として示すエンジン冷却制御システムの一例を示すブロック図である。
【図5】エンジン制御ユニット1による制御処理の他の一例を示すフローチャートである。
【図6】エンジン冷却制御システムの変形例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0056】
1 エンジン制御ユニット
2 電子制御サーモスタット駆動ユニット
3 エンジン運転状態検知部
4 降雨状況検知部
31 湿度センサ
32 外気温センサ
33 大気圧センサ
34 吸気温センサ
35 スロットル開度センサ
36 エアフローメータ
37 冷却水温センサ
38 回転数センサ
39 ノックセンサ
41 雨滴センサ
42 ワイパスイッチ
100 通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるエンジンの負荷に応じて、前記エンジンを冷却する冷却媒体の温度を電子制御サーモスタットの動作により可変させる電子制御サーモスタットの制御装置において、
前記エンジンの運転状態を検出して、前記エンジンの負荷を判定するエンジン負荷判定手段と、
前記車両に搭載される雨滴センサから入力される検知結果と、前記車両に搭載されるワイパの動作モードを示すワイパスイッチ信号との少なくとも一方に基づいて降雨量を判定する降雨量判定手段と、
前記エンジン負荷判定手段により判定されたエンジン負荷と、前記降雨量判定手段により判定された降雨量との少なくとも一方に基づいて、前記冷却媒体の目標温度を設定して前記電子制御サーモスタットを駆動制御する目標温度設定手段と
を備えることを特徴とする電子制御サーモスタットの制御装置。
【請求項2】
前記車両の現在位置周辺の気象情報を取得する通信手段を更に備え、
前記降雨量判定手段は、前記通信手段により取得された前記気象情報を利用して前記降雨量の判定を行うことを特徴とする請求項1に記載の電子制御サーモスタットの制御装置。
【請求項3】
前記雨滴センサによって雨滴が検知されておらず、前記降雨量判定手段により前記ワイパが所定の期間継続して動作していることを前記ワイパスイッチ信号から検出した場合に、前記目標温度設定手段は、当該ワイパの状態に応じた所定の温度に目標温度を設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子制御サーモスタットの制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−40163(P2007−40163A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−224449(P2005−224449)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】