説明

電子制御装置

【課題】この発明は、小型化、高出力化、高寿命化を可能とする電子制御装置を得る。
【解決手段】この発明に係る電子制御装置は、両端部に開口部を有する絶縁性樹脂製のハウジング3と、このハウジング3の一方の端部に取り付けられ、ハウジング3側の表面に半導体スイッチング素子2が搭載されたヒートシンク5と、このヒートシンク5と対向して設けられた回路基板4とを備え、回路基板4は、一方の面に半導体スイッチング素子2の駆動を制御するマイクロコンピュータ41を含む複数の小電流部品が実装され、他方の面に半導体スイッチング素子2に流れる電流のリップルを吸収するコンデンサを含む複数の大電流部品が実装されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば電動モータの回転力によって車両のステアリング装置に補助付勢する電動式パワーステアリング装置に使用する電子制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パワーデバイスである半導体スイッチング素子(FET)が金属基板上に実装されているとともに、金属基板と金属基板外の部品とを電気的に接続する接続部材が金属基板上に取付けられている電子制御装置が知られている。
例えば、特許文献1に記載の電子制御装置は、電動モータの電流を切り換えるための半導体スイッチング素子からなるブリッジ回路が搭載されたパワー基板と、導電板等が絶縁性樹脂にインサート成形されているとともに大電流部品が搭載されたハウジングと、マイクロコンピュータ等の小電流部品が搭載された制御基板と、パワー基板と上記ハウジング及び上記制御基板とを電気的に接続した接続部材と、パワー基板に密着されたヒートシンクと、パワー基板、ハウジング及び制御基板を覆い金属板でプレス成形されているとともにヒートシンクに取り付けられたケースとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3644835号明細書(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電子制御装置では、半導体スイッチング素子を搭載するパワー基板、大電流部品を搭載するハウジング、及び小電流部品を搭載する制御基板がそれぞれ必要であり、部品点数増加による装置の大型化・複雑化・コスト高を生じるという問題点があった。
【0005】
この発明は、上記のような問題点を解決することを課題とするものであって、小型化・簡単化・コスト低減化に加えて、高出力化、高寿命化を可能にした電子制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る電子制御装置は、両側のそれぞれの端部に開口部を有する絶縁性樹脂製のハウジングと、複数のコネクタが側面に分散配置された前記ハウジングの一方の前記端部に取り付けられ、ハウジング側の表面にパワーデバイスが搭載されたヒートシンクと、このヒートシンクと対向して設けられた回路基板とを備え、前記パワーデバイスと電気的に接続された複数の前記コネクタのうちの一つのコネクタにおけるコネクタ端子の近傍に前記パワーデバイスが配置され、前記回路基板は、一方の面に前記パワーデバイスの駆動を制御するマイクロコンピュータを含む複数の小電流部品が実装され、他方の面に前記パワーデバイスに流れる電流のリップルを吸収するコンデンサを含む複数の大電流部品が実装され、前記大電流部品は、全て前記回路基板の周縁部で、かつ前記パワーデバイスと重ならない位置に配置されている。
【0007】
また、この発明に係る電子制御装置は、両側のそれぞれの端部に開口部を有する絶縁性樹脂製のハウジングと、複数のコネクタが側面に分散配置された前記ハウジングの一方の前記端部に取り付けられ、ハウジング側表面にパワーデバイスが搭載されたヒートシンクと、このヒートシンクと対向して設けられた回路基板とを備え、前記パワーデバイスと電気的に接続された複数の前記コネクタのうちの一つのコネクタにおけるコネクタ端子の近傍に前記パワーデバイスが配置され、前記回路基板は、一方の面に前記パワーデバイスの駆動を制御するマイクロコンピュータを含む複数の小電流部品が実装され、他方の面に前記パワーデバイスに流れる電流を検出するシャント抵抗を含む複数の大電流部品が実装され、前記大電流部品は、全て前記回路基板の周縁部で、かつ前記パワーデバイスと重ならない位置に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係る電子制御装置によれば、パワーデバイスをヒートシンクに搭載するとともに、回路基板の一方の面に小電流部品を実装し、他方の面に大電流部品を実装したので、小型化・簡単化・コスト低減化に加えて、高出力化、高寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1による電子制御装置を示す分解斜視図である。
【図2】図1の電子制御装置を示す分解斜視図を上下反対方向から視たときの分解斜視図である。
【図3】図1の電子制御装置を車両コネクタ側から視たときの側面図である。
【図4】図1の電子制御装置をモータコネクタ側から視たときの側面図である。
【図5】図1の電子制御装置のハウジングをヒートシンクが取付けられる方向から視たときの斜視図である。
【図6】図5の要部拡大図である。
【図7】図1の電子制御装置のブロック図である。
【図8】図1の電子制御装置の側断面図である。
【図9】図1の電子制御装置の導電板とコネクタ端子との組付を示す斜視図である。
【図10】図1の電子制御装置の導電板とコネクタ端子との組付を示す斜視図である。
【図11】図1の電子制御装置での図8の側断面と平行な側断面図である。
【図12】図1の電子制御装置の導電板とコネクタ端子との組付を示す斜視図である。
【図13】図1の電子制御装置の保持部材とバネ材との組付を示す斜視図である。
【図14】図1の電子制御装置での図8の側断面と平行な側断面図である。
【図15】図1の電子制御装置での図8の側断面に対して直角方向に沿って切断したときの断面図である。
【図16】図1の電子制御装置での図8の側断面と平行な側断面図である。
【図17】図1の電子制御装置の回路基板を示す正面図である。
【図18】図1の電子制御装置のヒートシンクとハウジングとの位置関係を示す分解斜視図である。
【図19】図1の電子制御装置のヒートシンクとハウジングとの位置関係を示す斜視図である。
【図20】図1の電子制御装置の要部斜視図である。
【図21】この発明の実施の形態2による電子制御装置を示す側断面図である。
【図22】この発明の実施の形態1,2による電子制御装置の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、この発明の各実施の形態を図に基づいて説明するが、各図において、同一、または相当部材、部位については同一符号を付して説明する。
この実施の形態では、電動モータの回転力によって車両のステアリング装置に補助付勢する電動式パワーステアリング装置に使用する電子制御装置1を例に説明する。
図1はこの発明の実施の形態1に係る電子制御装置1を示す分解斜視図、図2は図1の電子制御装置1を示す分解斜視図を上下反対方向から視たときの分解斜視図、図3は図1の電子制御装置1の車両コネクタ8側を示した側面図、図4は図1の電子制御装置1のモータコネクタ9、センサコネクタ10側を示した側面図、図5は図1の電子制御装置1のハウジング3をヒートシンク5が取り付けられる方向から示した斜視図、図6は図5の要部拡大図、図7は図1の電子制御装置1のブロック図、図8は、図1の電子制御装置1の断面図である。
【0011】
この電子制御装置1は、両端部にそれぞれ開口部を有する絶縁性樹脂製のハウジング3と、このハウジング3の一方の端部にネジ20を用いて取り付けられ、表面に絶縁皮膜が形成されたアルミニウム製のヒートシンク5と、このヒートシンク5に搭載され板バネ21によりヒートシンク5側に押圧された、パワーデバイスである半導体スイッチング素子2と、ヒートシンク5と対向して設けられた回路基板4と、ヒートシンク5と協同して半導体スイッチング素子2、回路基板4を格納したカバー7とを備えている。
【0012】
回路基板4のカバー7側の表面には、信号用の小電流が流れる複数の小電流部品が半田付けにより実装されている。この小電流部品は、図1に示すように、ハンドルの操舵トルク、及び車両の車速に基づいて補助トルクを演算するとともに、モータ電流をフィードバックして補助トルクに相当する駆動信号を生成するマイクロコンピュータ41、電子制御装置1を駆動させる電源IC42、半導体スイッチング素子2の動作を制御するドライバIC43がそれぞれ相当する。
回路基板4のヒートシンク5側の表面には、モータ駆動用の大電流が流れる複数の大電流部品が半田付けにより実装されている。この大電流部品は、図2に示すように、半導体スイッチング素子2のスイッチング動作時に発生する電磁ノイズが外部へ流出するのを防止するコイル44、半導体スイッチング素子2に流れる電流のリップルを吸収するコンデンサ45、バッテリ24からブリッジ回路の半導体スイッチング素子2を介して電動モータ22に供給されるモータ電流を開閉するリレー46、半導体スイッチング素子2に流れる電流を検出するシャント抵抗47が相当する。
【0013】
回路基板4の電流回路は、半導体スイッチング素子2により構成されたブリッジ回路と、コイル44、コンデンサ45、リレー46、シャント抵抗47と電気的に接続され、配線パターンにより構成されモータ駆動用の大電流が流れる大電流回路と、マイクロコンピュータ41、電源IC42、ドライバIC43と電気的に接続され、配線パターンにより構成され信号用の小電流が流れる小電流回路とから構成されている。
【0014】
また、電子制御装置1は、ハウジング3の一側面に設けられ、車両の配線と電気的に接続される車両コネクタ8と、ハウジング3の他側面に設けられ、電動モータ22と電気的に接続されるモータコネクタ9と、このモータコネクタ9に隣接しトルクセンサ23と電気的に接続されるセンサコネクタ10とを備えている。
【0015】
図3に示されるように、車両コネクタ8は、車両のバッテリ24と電気的に接続される板厚0.8mmの銅、または銅合金で形成された電源コネクタ端子11と、車両の配線を介して信号が入出力される厚さ0.64mmのりん青銅製の信号コネクタ端子12を備えている。
また、図4に示されるように、モータコネクタ9は、厚さ0.8mmの高電気導電率の銅合金、またはりん青同製のモータコネクタ端子13を備え、センサコネクタ10は、厚さ0.64mmのりん青銅製のセンサコネクタ端子14を備えている。
【0016】
さらに、図5に示されるように、電子制御装置1は、基礎部がインサート成形でハウジング3と一体化されているとともに、回路基板4と半導体スイッチング素子2とを電気的に接続した、パワー用導電板6a、出力用導電板6b及び信号用導電板6cと、基礎部がインサート成形でハウジング3と一体化されているとともに、回路基板4と電源コネクタ端子11とを電気的に接続した導電板6dとを備えている。
また、電子制御装置1は、回路基板4と信号コネクタ端子12及びセンサコネクタ端子14とを電気的に接続した導電板6eと、回路基板4のグランドをヒートシンク5に接続する役割をもつ保持部材6fとを備えている。
【0017】
電源コネクタ端子11、信号コネクタ端子12、モータコネクタ端子13及びセンサコネクタ端子14等の部品は、パワー用導電板6a、出力用導電板6b、信号用導電板6c、導電板6d、6e、保持部材6fがインサート成形されてハウジング3が形成される際に、それぞれ同時にインサート成形され、車両コネクタ8、モータコネクタ9、センサコネクタ10がハウジング3に一体化されて形成されている。
また、ヒートシンク5が取り付けられるハウジング3の開口部と反対側の開口部側の側面には、電子制御装置1を被取り付け体である車両に取り付けるための取り付け脚部3Lが形成されている。
【0018】
並列された一対の各半導体スイッチング素子2の各端子は、図6において右側から供給電源端子VS、ハイサイドMOSFET2Hのゲート端子GT1、ブリッジ出力端子OUT、ローサイドMOSFET2Lのゲート端子GT2、及びグランド端子GNDの順に並んで配置されている。
ここで、供給電源端子VS、ブリッジ出力端子OUT、グランド端子GNDは、電動モータ22を作動させるため、最大で50A程度の大電流が流れる大電流用端子、ゲート端子GT1、ゲート端子GT2は、最大で3A程度の信号用の小さな電流が流れる小電流用端子であり、大電流用端子と小電流用端子とが交互に配置されている。
並列された半導体スイッチング素子2の各端子OUTは、図8に示すように中間部の2箇所で起立、倒伏したクランク状に同一形状で曲げられており、同一方向にそれぞれ導出している。これは、その他の端子VS,GT1,GT2,GNDについても同様である。
半導体スイッチング素子2の端子VS,GT1,OUT,GT2,GNDは、幅が0.8mm、厚さが0.5mm、端子の間隔が1.7mmで形成されている。
【0019】
図7に示すように、半導体スイッチング素子2は、ハイサイドMOSFET2HとローサイドMOSFET2Lが集積されてハーフブリッジが形成されている。そして、半導体スイッチング素子2は、ハーフブリッジが1つのパッケージに収納されているとともに、2個1組となって電動モータ22の電流を切り替えるためのブリッジ回路を構成している。
【0020】
また、図5、図6に示すように、ハウジング3には、半導体スイッチング素子2の本体とハウジング3との位置決めをする位置決め部3dが形成されている。
この位置決め部3dの先端部にはテーパが形成されており、このテーパ部に半導体スイッチング素子2のヒートスプレッダ部に設けられた穴2aが案内されて挿入され、位置決めがなされる。位置決め部3dは、各端子VS,GT1,OUT,GT2,GNDの導出方向の位置決めを兼ねている。
また、各端子VS,GT1,OUT,GT2,GNDと導電板6a,6b,6cとの位置決めを行う位置決め部3eが同様にハウジング3に形成されている。この位置決め部3eは、各端子VS,GT1,OUT,GT2,GNDの導出方向と直角方向の位置決めを行っている。位置決め部3eは、半導体スイッチング素子2の両端の端子VS,GNDの外側に形成されており、先端部にはテーパが形成されている。このテーパ部で半導体スイッチング素子2の各端子VS,GNDの外側が案内されて、各端子VS,GT1,OUT,GT2,GNDと導電板6a,6b,6cとの位置決めがなされる。
【0021】
図6に示すとおり、導電板6a,6b,6cは、半導体スイッチング素子2の端子VS,GT1,OUT,GT2,GNDが導出する導出方向に延びて重なって配置され、端子VS,GT1,OUT,GT2,GND、及び導電板6a,6b,6cは、ヒートシンク5と対向する面に配置されている。
【0022】
位置決め部3d,3eで半導体スイッチング素子2を位置決め固定した後、各端子VS,GT1,OUT,GT2,GNDと導電板6a,6b,6cが例えばレーザ溶接で溶接される。
レーザ溶接は、ヒートシンク5が取り付けられる前に、ヒートシンク5が取り付けられる方向から端子VS,GT1,OUT,GT2,GNDの表面に向かってレーザLBを照射して行われる。
図6に示すとおり、パワー用導電板6aの基端部は、半導体スイッチング素子2の供給電源端子VS、グランド端子GNDの先端部にそれぞれ接続される。出力用導電板6bの基端部は、ブリッジ出力端子OUTの先端部に接続される。信号用導電板6cの基端部は、ゲート端子GT1,GT2の先端部にそれぞれ接続される。
【0023】
導電板6a,6b,6c及びこれらに接続される周囲部品の斜視図を図9に示す。
導電板6a,6b,6cには、それぞれプレスフィット端子6ap,6bp,6cpが形成されている。回路基板4には銅箔による配線パターン、及び内面に銅メッキがなされて前記配線パターンと電気的に接続される複数のスルーホール4aが形成されており、プレスフィット端子6ap,6bp,6cpが回路基板4のそれぞれのスルーホール4aに圧入されて、半導体スイッチング素子2の端子VS,GT1,OUT,GT2,GNDと回路基板4の配線パターンとが電気的に接続されている。
【0024】
パワー用導電板6a、出力用導電板6bは、圧延された銅、または銅合金で形成されている。ただし、導電板6a,6bと半導体スイッチング素子2の端子VS,OUT,GNDとが溶接されると、導電板6a,6bには大電流が流れるため、導電板6a,6bは十分な体積を確保する必要がある。
しかしながら、プレスフィット端子の形成とプレス加工の点からは、板厚を厚くすることが困難である。そのため、この実施の形態では、パワー用導電板である導電板6a,6bの板厚を、端子VS,OUT,GNDの幅と同じ0.8mmとし、板厚より板幅を広く形成して半導体スイッチング素子2の端子VS,OUT,GNDとを溶接している。
なお、信号用導電板6cは、小電流が流れるので、電気抵抗の低減化について考慮する必要性はないが、大電流が流れるパワー用導電板6a、出力用導電板6bと同様の板材で形成されている。
【0025】
図8、図9に示すように、出力用導電板6bは、半導体スイッチング素子2のブリッジ出力端子OUTが接続されている。
また、基端部の反対側端部にはモータコネクタ端子13の端部13aが接続されている。そして、出力用導電板6bと半導体スイッチング素子2のブリッジ出力端子OUTとが接続されるのと同様に、モータコネクタ端子13の端部13aは、出力用導電板6bの端部のヒートシンク5と対向する面に配置され、ヒートシンク5が取り付けられる方向からモータコネクタ端子13の表面に向かってレーザLBが照射されて溶接されている。
半導体スイッチング素子2のブリッジ出力端子OUTからのモータ電流は、回路基板4を経由せず、直接モータコネクタ端子13を経由して電動モータ22に流れるように構成されている。
出力用導電板6bの中間部には、回路基板4に向かって延びたプレスフィット端子6bpが形成されており、モータコネクタ端子13の電圧をモニタするための信号が回路基板4へ出力される。
【0026】
電源用導電板6d、及びこれらに接続される周囲部品の斜視図を図10に示す。
図8、図10に示すとおり、電源用導電板6dには、電源コネクタ端子11の端部11aが接続されている。出力用導電板6bとモータコネクタ端子13の端部13aとが接続されているのと同様に、電源コネクタ端子11は、電源用導電板6dの端部のヒートシンク5と対向する面に配置され、ヒートシンク5が取り付けられる方向から電源コネクタ端子11の端部11aの表面に向かってレーザLBが照射されて溶接されている。
電源用導電板6dの中間部には、回路基板4に向かって延びたプレスフィット端子6dpが形成されており、このプレスフィット端子6dpが回路基板4のスルーホール4aに圧入されて、回路基板4の配線パターンと電気的に接続されている。そして、バッテリ24の電流が電源コネクタ端子11、電源用導電板6d、プレスフィット端子6dpを経由して回路基板4へ供給される。
【0027】
図11は、図8と平行であって、車両コネクタ8及びセンサコネクタ10に沿って切断した断面図であり、図12は、各導電板6e、及びこれらに接続される周囲部品の斜視図である。
図11、図12に示すとおり、導電板6eは、信号コネクタ端子12、センサコネクタ端子14の端部12a,14aと重ね合わせられ、この合わせ面は、ヒートシンク5近傍で、かつ、ヒートシンク5と平行に形成されている。
このとき、信号コネクタ端子12、センサコネクタ端子14の端部12a,14aがヒートシンク5側に配置され、ヒートシンク5が取り付けられる方向から、信号コネクタ端子12の端部12a、センサコネクタ端子14の端部14aの表面に向かってレーザLBが照射され、溶接されている。
また、導電板6eは、溶接部とは反対側の端部にはプレスフィット端子6epが形成されており、このプレスフィット端子6epが回路基板4のスルーホール4bに圧入されて、導電板6eに接続された信号コネクタ端子12、センサコネクタ端子14が回路基板4の配線パターンと電気的に接続されている。
【0028】
図13は保持部材6f、及びこの保持部材6fに接続される周囲部品の斜視図であり、図14は図8と平行であって、保持部材6fの中心に沿って切断した断面図である。
保持部材6fは、回路基板4のグランドをヒートシンク5に接続する機能を有している。ただし、ヒートシンク5の表面には絶縁皮膜52が形成されているため、保持部材6fを直接ヒートシンクに接触させることはできない。そこで、ネジ20、板バネ21を介して、回路基板4とヒートシンク5とを電気的に接続させる。
図13に示す板バネ21は、バネ用ステンレス鋼板、バネ用りん青銅などの導電体で形成されており、一端にはスリット21sが設けられている。保持部材6fが、スリット21sに圧入固定されることで、保持部材6fと板バネ21とが電気的に接続される。保持部材6fが固定された板バネ21は、図14に示すとおり、ハウジング3とネジ20の頭部との間に配置され、ハウジング3と共にヒートシンク5に締め付け固定される。
ヒートシンク5に設けられたネジ穴には絶縁処理が施されていないため、保持部材6fとヒートシンク5とは電気的に接続される。
保持部材6fには、先端部にプレスフィット端子6fpが形成されており、プレスフィット端子6fpが、回路基板4のスルーホール4aに圧入される。
この構成により、プレスフィット端子6fp、保持部材6f、板バネ21、ネジ20を経由して回路基板4の配線パターンとヒートシンク5とが電気的に接続されている。
【0029】
図8、図11に示されるとおり、この実施の形態では、プレスフィット端子6ap,6bp,6cp,6dp,6epがカバー7側に配置され、レーザ溶接部がヒートシンク5側に配置される。
この構成により、プレスフィット端子6ap,6bp,6cp,6dp,6epとレーザ溶接部との距離が長くなるため、レーザ溶接時に発生する熱、反射光、シールド用ガスの影響がプレスフィット端子6ap,6bp,6cp,6dp,6epに与える影響を少なくすることができる。
また、プレスフィット端子6ap,6bp,6cp,6dp,6epとレーザ溶接部との間に、絶縁性樹脂3a、及び回路基板4が介在するので、レーザ溶接時に発生する反射光がプレスフィット端子6ap,6bp,6cp,6dp,6epに到達しにくくなっている。
また、各端子VS,GT1,OUT,GT2,GND,11,12,13,14は、プレスフィット端子6ap,6bp,6cp,6dp,6epの各中心(例えば図11の点線)を通る中心線に対して平行に離れた線上の溶接部位で導電板6a,6b,6c,6d,6eに溶接されている。このように、溶接部位をプレスフィット端子6ap,6bp,6cp,6dp,6epの各中心から離れた位置にすることで、プレスフィット端子6ap,6bp,6cp,6dp,6epの回路基板4に対する圧入時の圧入荷重が溶接部に直接作用するのを防ぐことができ、溶接部の歪み、または剥離の発生を防止することができる。
回路基板4は、スルーホール4aにプレスフィット端子6ap,6bp,6cp,6dp,6ep,6fpが圧入されて機械的に保持されている。
【0030】
また、ハウジング3の絶縁性樹脂3aに、各導電板6a,6b,6c,6d,6e,6fの基礎部がインサート成形されているため、プレスフィット端子6ap,6bp,6cp,6dp,6ep,6fpが回路基板4に圧入される際に、図8、図11及び図14に示すように、絶縁性樹脂3aがヒートシンク5との間に介在し、圧入力をヒートシンク5で受けられるようになっている。ただし、製造上の精度により絶縁性樹脂3aとヒートシンク5との間にわずかな隙間が発生することになる。
【0031】
プレスフィット圧入は、プレスフィット端子6ap,6bp,6cp,6dp,6ep,6fpと回路基板4との相対高さ精度が重要であるが、絶縁性樹脂3aとヒートシンク5との間のわずかな隙間によりこの相対高さ精度が悪化するので、この隙間に接着剤(図示せず)を塗布してこの隙間の影響を無くしている。
【0032】
この実施の形態では、パワー用導電板6aにはプレスフィット端子6apが2個、出力用導電板6bにはプレスフィット端子6bpが1個、信号用導電板6cにはプレスフィット端子6cpが1個それぞれ形成されており、1つの半導体スイッチング素子2について7個のプレスフィット端子6ap,6bp,6cpが配置されている。
また、隣接する導電板6a,6b,6cのプレスフィット端子6ap,6bp,6cpを千鳥状に配置することで、プレスフィット端子6ap,6bp,6cp間の距離を大きくして、各端子6a,6b,6c間の短絡を防いでいる。
【0033】
導電板6dには、電源コネクタ端子1つにつき、プレスフィット端子6dpが2個形成されており、導電板6eには、信号コネクタ端子12と接続するプレスフィット端子が6本、センサコネクタ端子14と接続するプレスフィット端子が5本、計11本のプレスフィット端子6epが形成されている。
また、保持部材6fには、プレスフィット端子6fpが1本形成されている。プレスフィット端子6ap,6bp,6cp,6dp,6fpが圧入される回路基板4のスルーホール4aの穴径は1.45mm、プレスフィット端子6epが圧入されるスルーホール4bの穴径は1mmに形成されている。
【0034】
上記構成の電子制御装置1では、マイクロコンピュータ41が駆動信号を生成すると、回路に電流が流れ各部から発熱が生じる。この際、大電流回路に電気的に接続された、コイル44、コンデンサ45、リレー46及びシャント抵抗47の発熱量は、小電流回路に電気的に接続された、マイクロコンピュータ41、電源IC42及びドライバIC43の発熱量よりも大きい。これらの部品を同一空間に配置すると、発熱が小さいマイクロコンピュータ41、電源IC42、ドライバIC43が、発熱の大きいコイル44、コンデンサ45、リレー46、シャント抵抗47から発生する熱の影響をうけ、温度が上昇してしまう。
【0035】
この実施の形態では、大電流部品である、コイル44、コンデンサ45、リレー46及びシャント抵抗47を、小電流部品である、マイクロコンピュータ41、電源IC42及びドライバIC43が実装される回路基板4の表面の反対側の面に実装し、かつコイル44、コンデンサ45、リレー46は、ヒートシンク5のスイッチング素子2が実装された表面と対向するように回路基板4に配置されている。
【0036】
この実施の形態における回路基板4上の電流部品の位置関係を図15及び図16に示す。図15は、図8に平行な別断面を示し、図16は、図15に対して直角方向に切断した断面を示している。
図15に示すとおり、コイル44、コンデンサ45、リレー46は、回路基板4、ヒートシンク5及びハウジング3の内壁面に囲まれた空間内に配置されている。
また、図16に示すとおり、同一空間内には、シャント抵抗47、ヒートシンク5に搭載された半導体スイッチング素子2も配置されている。
【0037】
小電流部品である、マイクロコンピュータ41、電源IC42、ドライバIC43が実装される側の回路基板4の表面は、カバー7と対向するように配置される。即ち、マイクロコンピュータ41、電源IC42、ドライバIC43は、回路基板4とカバー7の内壁面とに囲まれた空間内に配置されている。
この配置により、ハウジング3、ヒートシンク5、カバー7により形成される電子制御装置1の内部空間は、回路基板4により、大電流部品を格納した空間Aと、小電流部品を格納した空間Bの2つに分断されることになる。
空間Aには、大電流が流れる大電流部品、即ち、発熱量が大きい大電流部品が格納されるため、空間内部の温度が高くなる。これに対して、空間Bには、発熱量が小さい小電流部品が格納され、かつ回路基板4が断熱材の役割を果たし、空間Aの熱を断熱するため、空間Bの内部の温度が低くなる。
マイクロコンピュータ41、電源IC42及びドライバIC43は、小型、高性能な集積回路が組み込まれており、他の電流部品と比べて熱に弱い。
そこで、これらの部品を低温の空間Bに配置することで、受熱による温度上昇を防ぐことができる。
【0038】
電子制御装置1を構成する部品のうち、もっとも温度が低くなるのは、非発熱体、かつ、熱伝導率の低い絶縁性樹脂で形成されたハウジング3である。
ハウジング3の内壁面近傍には温度境界層が発達するため、内壁面近傍には他部よりも温度が低い低温空間が形成される。また、当然であるが、内壁面近傍は外気との距離が近くなるため、外気への放熱が行われ易くなる。
即ち、回路基板4に実装される電流部品を回路基板4の周縁部に配置すると、電流部品がハウジング3の内壁面付近に配置されることになるため、放熱が促進され温度上昇を抑制することができる。特に、回路基板4の角部に電流部品を配置すると、電流部品がハウジング3の内壁面の2面と近接することになり、より効果的に放熱させることができるため、電子制御装置1の小型化、高出力化、長寿命化が可能となる。
【0039】
この実施の形態における回路基板4の正面図を図17に示す。
図17から分かるように、コンデンサ45が回路基板4の角部に配置されているため、組み立て時にハウジング3の内壁角部近傍に配置される。
また、シャント抵抗47も回路基板4の縁部に配置されており、組み立て時ハウジング3の内壁近傍に配置される。
なお、回路基板4の周縁部に配置する部品は、コンデンサ45、シャント抵抗47に限らず、例えばコイル44、リレー46、マイクロコンピュータ41、電源IC42、ドライバIC43であっても問題は無い。
また、複数の大電流部品、小電流部品を回路基板4の周縁部にそれぞれ配置しても問題は無い。
【0040】
また、図16、図17に示されるとおり、コンデンサ45と回路基板4上に形成された配線との接続点と、シャント抵抗47と回路基板4上に形成された配線との接続点が近接している。そのため、コンデンサ45とシャント抵抗47とは回路基板4上で近接配置されている。
コンデンサ45とシャント抵抗47との接続距離が長くなると、系のインダクタンスが大きくなり、ノイズが大きくなってしまう。そのため、コンデンサ45とシャント抵抗47の接続間距離を3mm以内に配置している。
【0041】
また、ヒートシンク5は、ヒートシンク本体51と、このヒートシンク本体51の表面に形成された絶縁皮膜であるアルマイト皮膜52とから構成されている。
ヒートシンク5は、アルミニウムまたはアルミニウム合金をダイスから押し出して形成された押出形材の全面に予めアルマイト皮膜52を形成したヒートシンク素材を製造し、このヒートシンク素材を切断機で所望の長さに切断し、穴あけ等の機械加工を施して形成される。
この製造方法では、ヒートシンク個々に対してアルマイト皮膜52を形成する必要が無いため、製造工程が単純化され製造コストが低減する。
アルマイトは、アルミニウム、または、アルミニウム合金を陽極酸化処理することで、表面に絶縁性の酸化被膜を形成する表面処理法である。
【0042】
金属の酸化皮膜は一般に0.8〜0.9程度の高い放射率を持つ。
即ち、アルマイト処理が施されたヒートシンク5の表面には、自然空冷による放熱と放射による放熱が生じるため、高い放熱性能を得ることができる。
ヒートシンク5は、アルマイト皮膜52を形成した素材を切断して製造されるため、端面5aにはアルマイト処理が施されない。一般に金属の放射率は0.1〜0.2程度であるため、ヒートシンク5の端面5aを外部に露出しても十分な放熱性能が得られない。
そこで、ヒートシンク5の端面5aを絶縁性樹脂製のハウジング3の開口部の内壁面3cに近接対向させて配置している。
この実施の形態における、ハウジング3の内壁面3cとヒートシンク5の端面5aとの位置関係を示す斜視図を図18、図19に示す。
絶縁性樹脂は、金属に比べると十分に高い熱放射率を持つ。また、ハウジング3の表面積は、ヒートシンク5の端面5aの表面積に比べて十分に大きい。
【0043】
そこで、ヒートシンク5の端面5aとハウジング3の内壁面3cとを面接触させることで、ヒートシンク5の多量の熱は、端面5aを通じて、放熱面積が大きく、熱放射率が高いハウジング3に円滑に流れ、ハウジング3を通じて外部に放出され、ヒートシンク5の端面5aを直接外部に露出させるよりも高い放熱性能を得ることができる。
なお、表面にアルマイト皮膜52が施されたヒートシンク5の一方の側面5bは、図19に示すとおり、外部に露出するように構成されている。
【0044】
ヒートシンク5は、ヒートシンク本体51が熱伝導率の高いアルミニウム、または、アルミニウム合金で製造されるため、ヒートシンク5自身の熱抵抗はほぼ零として差し支えない。
また、アルマイト皮膜52は、酸化アルミナ(AL)で形成されており、かつ膜厚は10μm程度と非常に薄いため、熱抵抗がほぼ零とみなすことができる。
【0045】
ヒートシンク5は、端面5a以外では、表面にアルマイト皮膜52が形成される。
即ち、半導体スイッチング素子2が搭載される面、及び半導体スイッチング素子2の端子VS,GT1,OUT,GT2,GNDと対向する面にもアルマイト皮膜52が形成されている。アルマイトは、放射率を向上させる酸化皮膜としての役割の他に、絶縁皮膜としての役割も持つ。
半導体スイッチング素子2は、高電流が流れるが、ヒートシンク5の表面にアルマイト皮膜52が形成されているため、ヒートシンク5との短絡を防ぐことができる。
また、万が一半導体スイッチング素子2の近傍で、アルマイト皮膜52のクラック等による絶縁不良が生じても、ヒートシンク5の表面は、アルマイト皮膜52とハウジング3により絶縁されているため、電子制御装置1の外側から半導体スイッチング素子2と電気的に短絡されることが無く、絶縁性能の向上した電子制御装置1を得ることができる。
【0046】
この実施の形態では、ヒートシンク5は押出形材を用いて製造したが、熱間または冷間圧延された板材を用いて製造してもよい。
また、絶縁皮膜をアルマイト皮膜52としたが、絶縁皮膜として、プレコートされた絶縁性樹脂を用いてもよい。
さらに、アルミニウムまたはアルミニウム合金のヒートシンク表面を塗料にて塗装してもよい。
【0047】
半導体スイッチング素子2をヒートシンク5に設置する際には、半導体スイッチング素子2のヒートスプレッダ部とヒートシンク5のアルマイト皮膜52との間に熱伝導性接着剤(図示せず)を介在させて固定させる。ヒートシンク5とヒートスプレッダとの表面には、小さな凹凸が存在するため、ヒートスプレッダ部をヒートシンク5に密着させても僅かな隙間が発生し、真実接触面積が見た目の接触面積に比べて小さい。
接触面積が小さくなると、半導体スイッチング素子2で発生した熱がヒートシンク5に伝熱する際の伝熱経路における熱抵抗が大きくなるため、半導体スイッチング素子2からの放熱が妨げられる。
そこで、隙間に熱伝導性接着剤を介在させることで、半導体スイッチング素子2とヒートシンク5との間の熱抵抗を低減させ、放熱性能を促進させることができる。
また、半導体スイッチング素子2とヒートシンク5とが熱伝導性接着剤で固定されることで、例えば電子制御装置1に外力が加わる、または、振動が生じた際に、半導体スイッチング素子2の溶接部にかかる応力が小さくなる。
【0048】
また、板バネ21には、回路基板4のグランドとヒートシンク5とを接続する役割の他に、半導体スイッチング素子2をハウジング3に固定する役割をもつ。
板バネ21、及びその周囲の部品を示した要部斜視図を図20に示す。
図14、図16及び図20に示すとおり、板バネ21の係り止め部21bは、ハウジング3の保持部3bに係止されるとともに、ハウジング3を介在させてネジ20でヒートシンク5に固定されている。
この際、板バネ21の押え部21aは、半導体スイッチング素子2の樹脂パッケージ面に押し付けられる。この結果、熱伝導性接着剤が板バネ21の押圧により薄くかつ均一に広がるため、ヒートシンク5のアルマイト皮膜52と半導体スイッチング素子2との間の熱抵抗ばらつき差を低減させることができる。
さらに、半導体スイッチング素子2は、熱伝導性接着剤の接着力に加えて板バネ21の押圧により固定されるため、ヒートシンク5と半導体スイッチング素子2との熱膨張差により発生するアルマイト皮膜52の剥離、及び外力・振動によるアルマイト皮膜52の剥離を防ぐことができる。
【0049】
また、半導体スイッチング素子2は、ヒートスプレッダ部がブリッジ出力端子OUTと内部で電気的に繋がっているが、アルマイト皮膜52及び高熱伝導接着剤でヒートシンク5と電気的に絶縁されている。
【0050】
カバー7は、ハウジング3と同様の絶縁性樹脂で成形され、超音波溶着機でハウジング3の開口部に溶着されている。
なお、カバー7とハウジング3との溶着は、振動溶着機による振動溶着であってもよい。
振動溶着は、カバー7とハウジング3との接合面の面方向に沿って、カバー7を往復振動させ、摩擦熱によりカバー7とハウジング3との樹脂を互いに溶融させて接合している。
振動溶着は、カバー7とハウジング3との接合面が大きい場合に適用される。
また、超音波溶着機の代わりに、レーザ溶着機によるレーザ溶着であってもよい。
レーザ溶着は、カバー7がレーザ透過率の大きい材料で構成されているとともに、ハウジング3がレーザ吸収率の高い材料で構成されている。
そして、レーザ光をカバー7側から照射すると、レーザ光がカバー7を透過して、ハウジング3の接合面でレーザ光が吸収され、発熱する。その熱がカバー7側にも伝導され、カバー7も発熱してカバー7とハウジング3との接合面で相互に溶融し、溶着される。
レーザ溶着は、ソリやヒケが大きい樹脂成形では、接合面にレーザの焦点を合わせることが困難となり用いることはできないが、ソリやヒケが小さな樹脂成形の場合には、溶着自体はバリの発生が無く、振動の発生が無いので、内部部品への振動伝達がないという利点がある。
【0051】
以上説明したように、この実施の形態1の電子制御装置1によれば、ヒートシンク5に半導体スイッチング素子2が搭載されているので、半導体スイッチング素子2の放熱性が向上するとともに、従来必要とした、半導体スイッチング素子2を搭載するためのパワー基板が不要となり、全高を低く小型化される。
また、回路基板4は、一方の面に半導体スイッチング素子2の駆動を制御するマイクロコンピュータ41を含む複数の小電流部品が実装され、他方の面にコンデンサ45を含む複数の大電流部品が実装され、一つの回路基板に大電流部品及び小電流部品が実装されているので、さらに全高を低く小型化される。
また、発熱量の大きい大電流部品と発熱量の小さい小電流部品とが回路基板4を介して区分けされ、耐熱性に弱い小電流部品は大電流部品からの熱の影響が抑制され、電子制御装置1の長寿命化が可能となる。
しかも、小電流部品は、半導体スイッチング素子2と対向する面の反対側の面に実装されているので、大電流が流れる半導体スイッチング素子2からの熱の影響も抑制され、電子制御装置1がより長寿命化される。
【0052】
また、コンデンサ45、シャント抵抗47は、回路基板4の縁部に配置されているので、コンデンサ45、シャント抵抗47の放熱性が向上する。
【0053】
また、回路基板4は、シャント抵抗47とコンデンサ45とが近接して実装されているので、シャント抵抗47とコンデンサ45との電気的な接続距離を短くすることができ、系のインダクタンスを小さく抑えることができ、ノイズの発生を抑制することができる。
【0054】
また、ヒートシンク5は、半導体スイッチング素子2が搭載された表面、及びその裏面にアルマイト皮膜52が形成されているので、ヒートシンク5の熱放射率が高くなり、ヒートシンク5の熱放射性が向上する。
【0055】
また、ヒートシンク5は、アルマイト皮膜52を有しない露出した端面5aが、ハウジング3の内壁面3cと面接触しているので、ヒートシンク5の多量の熱は、端面5aを通じて放熱面積が大きく、熱放射率が高いハウジング3に円滑に流れ、ハウジング3を通じて外部に放出され、ヒートシンク5の放熱性が向上する。
【0056】
また、ヒートシンク5は、熱伝導率が高いアルミニウムまたはアルミニウム合金からなるヒートシンク本体51の表面に、熱抵抗がほぼゼロのアルマイト皮膜52が形成されているので、ヒートシンク5の放熱性が高い。
【0057】
また、半導体スイッチング素子2は、アルマイト皮膜52の表面に熱伝導性接着剤を用いて固定されているので、半導体スイッチング素子2とヒートシンク5との間の熱抵抗が低減され、半導体スイッチング素子2の放熱性が向上する。
また、半導体スイッチング素子2に外力が加わった場合には、半導体スイッチング素子2の溶接部に対する応力が低減され、ヒートシンク5に対する半導体スイッチング素子2の結合性が向上する。
【0058】
また、半導体スイッチング素子2は、板バネ21によりヒートシンク5に押圧されているので、半導体スイッチング素子2とヒートシンク5とが強固に結合され、両者間の熱膨張差及び外力・振動による半導体スイッチング素子2の剥離の発生を防止することができる。
【0059】
また、板バネ21は、ハウジング3に係止されるとともに、ハウジング3を介してネジ20でヒートシンク5に固定されているので、板バネ21は、半導体スイッチング素子2をヒートシンク5に確実に押圧することができる。
【0060】
実施の形態2.
図21はこの発明の実施の形態2に係る電子制御装置1の要部を示す断面図である。
図21に示す電子制御装置1は、図15に示した構造に対して、大電流部品であるコンデンサ45が介在物45aを介してヒートシンク5と接触している点、小電流部品である、マイクロコンピュータ41、電源IC42及びドライバIC43がそれぞれ、介在物41a,42a,43aを介してカバー7と接触している。
他の構成は、実施の形態1と同じである。
【0061】
図15に示した実施の形態1の電子制御装置1では、電流部品は、配線パターン箇所でのみ回路基板4と接触し、その他の電流部品の表面は、ハウジング3、ヒートシンク5及びカバー7により形成された筐体内部の空気に曝されている。
そのため、電流部品で発生した熱の大部分はハウジング3の内部空気に放熱される。空気の熱伝導率は、常温で0.03W/mKであり、固体の熱伝導率に比べ小さい。
また、筐体の内部は密閉されており、内部で生じる空気の対流は、温度差により空気の密度に差が生じて起こる自然対流である。自然対流の流速は一般に0.1m/s以下であり、放熱効果は微小である。
即ち、電流部品周囲に空気が存在すると、熱抵抗が増加し、放熱性能が著しく悪化する。
【0062】
そこで、コンデンサ45を介在物45aを介してヒートシンク5と接触させ、マイクロコンピュータ41、電源IC42及びドライバIC43をそれぞれ介在物41a,42a,43aを介してカバー7と接触させることで、各電流部品から発生した熱を、放熱性能の低い空気の対流によらずに熱伝導により直接外部に放熱させることができる。
ただし、電流部品は半田にて回路基板4に固定されるため、電流部品の高さ精度を十分に確保することは難しい。高さが低いと十分な接触効果を得ることができず、逆に高さが高すぎると、組み立て時に無理な力がかかり電流部品を破壊してしまう。
また、仮に電流部品と、ヒートシンク5またはカバー7と接触させたとしても、電流部品の表面には微小な凹凸が多数存在するため、真実接触面積が見た目の接触面積に比べて小さくなる。接触面積が小さくなると熱抵抗が大きくなるため、結果、十分な伝熱性能を得ることが難しくなる。
【0063】
そこで、図21に示すとおり、電流部品とヒートシンク5またはカバー7とを接触させる際には、対象物の間にゲル状、または、弾性体材料を介在させて部品を接触させる手段が有効である。条件に該当する介在物としては、例えば熱伝導性のグリスや熱伝導性接着剤、伝熱シート、放熱ラバーが挙げられる。
これらの物質は、加圧により変形させることができるため、対象となる位置に介在物を塗布、または、貼り付けておくと、組み立て時に、電流部品とヒートシンク5またはカバー7とに挟まれて加圧変形することで、隙間が埋まり部品同士を接触させることができる。
【0064】
また、この実施の形態の介在物41a,42a,43a,45aは、熱伝導性のグリス、熱伝導性接着剤、伝熱シート及び放熱ラバーの何れかで構成されており、放熱性能が向上するのと併せて、電流部品の温度上昇スピードを遅らせることができる。
電子制御装置1は、ハンドルの操舵トルクを感知して作動するため、電流値が瞬間で切り替わる非定常作動を繰り返す。
即ち、瞬間的に大電流が流れることも想定されるが、熱容量が小さい小型の電流部品は、温度が急激に上昇し、不具合を起こすことが考えられる。
これに対して、電流部品と、ヒートシンク5またはカバー7とが、介在物41a,42a,43a,45aを介して接触することで、見かけ上電流部品の熱容量が増えるため、電流部品の温度上昇スピードを遅くすることができる。
同一時間内のハンドル操作であれば、介在物41a,42a,43a,45aが存在したほうが、熱容量が大きくなり、電流部品の温度上昇スピードが遅くなるので、その結果温度上昇値を低減させることができる。
【0065】
また、図15に示した実施の形態1の電子制御装置1では、電流部品は配線パターン箇所でのみ回路基板4と接触しているため、電流部品を支えているのは配線パターンのみとなる。従って、この構成では、電流部品を非常に小さい部位で支える必要があるため、外力、振動による応力、または、熱膨張による熱応力が生じ、電流部品が破損、または、剥離する可能性がある。
これに対して、この実施の形態では、介在物41a,42a,43a,45aは、ゲル状、または弾性体の特性を有しているので、電流部品を支える面積が増えるため、外力、振動により生じる応力、または、熱膨張による熱応力の影響を小さくすることができる。 また、介在物41a,42a,43a,45aのばね効果による振動の吸収、熱膨張の押さえ込み効果も生じる。
【0066】
なお、この実施の形態では、コンデンサ45は、介在物45aを介してヒートシンク5と接触しているが、ハウジング3と接触させるようにしてもよい。
また、大電流部品であるリレー46についても、コンデンサ45と同様に、ヒートシンク5、またはハウジング3と介在物を介して接触させてもよい。
【0067】
以上、この実施の形態2の電子制御装置1によれば、ハウジング3の端部にはカバー7が取り付けられて、ハウジング3、ヒートシンク5及びカバー7により筺体が構成され、この筐体内の大電流部品、小電流部品は、筺体の内壁面と熱伝導性を有する介在物41a,42a,43a,45aを介して接触しているので、各電流部品から発生した熱を放熱性能の低い空気の対流によらずに熱伝導により直接外部に放熱させることができる。
【0068】
また、介在物41a,42a,43a,45aは、ゲル状または弾性体材料であるので、組立時に、筐体と大電流部品、小電流部品との間の隙間のバラツキは変形により吸収され、無理な力が筐体、大電流部品及び小電流部品に加わることが防止される。
【0069】
なお、上記実施の形態1,2では、ヒートシンク5の外部に露出する面は、図19に示すとおり、平面としたが、図22のように放熱フィン5cを設けることで、ヒートシンク5の放熱性を向上させてもよい。
また、半導体スイッチング素子2の各端子VS,GT1,OUT,GT2,GND、及び接続端子11a,12a,13a,14aと導電板6a,6b,6c,6d,6eとの接合はレーザ溶接としたが、抵抗溶接、TIG溶接等他の溶接方法であってもよい。
また、溶接以外の超音波接合であってもよい。
また、半導体スイッチング素子2は、ハイサイドMOSFET2HとローサイドMOSFET2Lが集積されたハーフブリッジが1つのパッケージに収納されているとともに、2個1組となって電動モータ22の電流を切り替えるためのブリッジ回路を構成したが、ハイサイドMOSFET2HとローサイドMOSFET2Lが別々に構成されて4個の半導体スイッチング素子2でブリッジ回路を構成してもよい。
また、6個の半導体スイッチング素子2でブリッジ回路を構成して3相ブラシレスモータを駆動制御する構成であってもよい。
また、パワーデバイスは半導体スイッチング素子2としたが、ダイオード、サイリスタ等他のパワーデバイスであってもよい。
【0070】
また、上記実施の形態では、自動車の電動式パワーステアリング装置に適用した例について説明したが、アンチロックブレーキシステム(ABS)の電子制御装置、エアーコンディショニング関係の電子制御装置等、パワーデバイスを備えた大電流(例えば25A以上)を扱う電子制御装置にも適用が可能である。
なお、上述した各構成部品の寸法、形状及び数は、一例であり、勿論この寸法、形状及び数に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0071】
1 電子制御装置、2 半導体スイッチング素子(パワーデバイス)、3 ハウジング、3a 絶縁性樹脂、3b 保持部、3c 開口部内壁面、3d 位置決め部、3e 位置決め部、4 回路基板、5 ヒートシンク、5a 端面、5b アルマイト処理面、5c 放熱フィン、6a パワー用導電板、6b 出力用導電板、6c 信号用導電板、6d 導電板、6e 導電板、6f 保持部材、6ap〜6fp プレスフィット端子、7 カバー、車両コネクタ、9 モータコネクタ、10 センサコネクタ、11 電源コネクタ端子、12 信号コネクタ端子、13 モータコネクタ端子、14 センサコネクタ端子、20 ネジ、21 板バネ、21a 押さえ部、21b 係り止め部、21s スリット部、22 電動モータ、23 トルクセンサ、24 バッテリ、41 マイクロコンピュータ(小電流部品)、42 電源IC(小電流部品)、43 ドライバIC(小電流部品)、44 コイル(大電流部品)、45 コンデンサ(大電流部品)、46 リレー(大電流部品)、47 シャント抵抗(大電流部品)、51 ヒートシンク本体、52 アルマイト皮膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側のそれぞれの端部に開口部を有する絶縁性樹脂製のハウジングと、
複数のコネクタが側面に分散配置された前記ハウジングの一方の前記端部に取り付けられ、ハウジング側の表面にパワーデバイスが搭載されたヒートシンクと、
このヒートシンクと対向して設けられた回路基板とを備え、
前記パワーデバイスと電気的に接続された複数の前記コネクタのうちの一つのコネクタにおけるコネクタ端子の近傍に前記パワーデバイスが配置され、
前記回路基板は、一方の面に前記パワーデバイスの駆動を制御するマイクロコンピュータを含む複数の小電流部品が実装され、他方の面に前記パワーデバイスに流れる電流のリップルを吸収するコンデンサを含む複数の大電流部品が実装され、
前記大電流部品は、全て前記回路基板の周縁部で、かつ前記パワーデバイスと重ならない位置に配置されていることを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
両側のそれぞれの端部に開口部を有する絶縁性樹脂製のハウジングと、
複数のコネクタが側面に分散配置された前記ハウジングの一方の前記端部に取り付けられ、ハウジング側表面にパワーデバイスが搭載されたヒートシンクと、
このヒートシンクと対向して設けられた回路基板とを備え、
前記パワーデバイスと電気的に接続された複数の前記コネクタのうちの一つのコネクタにおけるコネクタ端子の近傍に前記パワーデバイスが配置され、
前記回路基板は、一方の面に前記パワーデバイスの駆動を制御するマイクロコンピュータを含む複数の小電流部品が実装され、他方の面に前記パワーデバイスに流れる電流を検出するシャント抵抗を含む複数の大電流部品が実装され、
前記大電流部品は、全て前記回路基板の周縁部で、かつ前記パワーデバイスと重ならない位置に配置されていることを特徴とする電子制御装置。
【請求項3】
前記回路基板は、前記パワーデバイスと対向する面の反対側の面に、前記小電流部品が実装されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記回路基板は、他方の前記面に前記パワーデバイスの駆動時に発生する電磁ノイズが外部へ流出するのを防ぐコイルが実装されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記回路基板は、他方の前記面に前記パワーデバイスに流れる電流を開閉するリレーが実装されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の電子制御装置。
【請求項6】
前記大電流部品は、前記回路基板の角部に配置されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の電子制御装置。
【請求項7】
前記回路基板は、他方の前記面に前記パワーデバイスに流れる電流を検出するシャント抵抗が前記コンデンサと近接して実装されていることを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項8】
前記ヒートシンクは、前記パワーデバイスが搭載された表面、及びその裏面の少なくとも一方に熱放射率を高めるための皮膜が形成されていることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の電子制御装置。
【請求項9】
前記ヒートシンクは、前記皮膜を有しない露出した端面が、前記ハウジングの内壁面と面接触していることを特徴とする請求項8に記載の電子制御装置。
【請求項10】
前記皮膜は、アルマイト皮膜であることを特徴とする請求項8または9に記載の電子制御装置。
【請求項11】
前記ヒートシンクの前記パワーデバイスが搭載される面の反対側の面には、放熱フィンが形成されていることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の電子制御装置。
【請求項12】
前記ヒートシンクは、ヒートシンク本体がアルミニウムまたはアルミニウム合金で構成されていることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の電子制御装置。
【請求項13】
前記パワーデバイスは、前記皮膜の表面に熱伝導性接着剤を介して固定されていることを特徴とする請求項8〜11の何れか1項に記載の電子制御装置。
【請求項14】
前記パワーデバイスは、板バネにより前記ヒートシンクに押圧されていることを特徴とする請求項1〜13の何れか1項に記載の電子制御装置。
【請求項15】
前記板バネは、前記ハウジングに係止されるとともに、前記ハウジングを介して、ネジで前記ヒートシンクに固定されていることを特徴とする請求項14に記載の電子制御装置。
【請求項16】
前記ハウジングの他方の前記端部にはカバーが取り付けられて、前記ハウジング、前記ヒートシンク及び前記カバーにより筺体が構成され、
この筐体内の前記大電流部品、前記小電流部品のうち、少なくとも一つの電流部品が前記筺体の内壁面と熱伝導性を有する介在物を介して接触していることを特徴とする請求項1〜15の何れか1項に記載の電子制御装置。
【請求項17】
前記介在物は、ゲル状または弾性体材料であることを特徴とする請求項16に記載の電子制御装置。
【請求項18】
前記パワーデバイスは、半導体スイッチング素子であることを特徴とする請求項1〜17の何れか1項に記載の電子制御装置。
【請求項19】
前記電子制御装置は、電動式パワーステアリング装置であることを特徴とする請求項1〜18の何れか1項に記載の電子制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−200141(P2012−200141A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−103364(P2012−103364)
【出願日】平成24年4月27日(2012.4.27)
【分割の表示】特願2009−138343(P2009−138343)の分割
【原出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】