説明

電子回路収納ケース及びその製造方法

【課題】信頼性の高い換気穴を備えた電子回路収納ケースを得る。
【解決手段】電子回路基板7を収納するケース部1bと、ケース部1bの基板取付面1cに対して垂直方向に延在し、コネクタが内蔵されるコネクタ部1aとを有する樹脂製のハウジング1を備え、内部開口穴21aと外部開口穴1eとの底部が連通穴21bで連通され、ケース部1bの内部からコネクタ部1aの外部へ通じる換気穴3がハウジング1の中実部内に形成された電子回路収納ケースにおいて、内部開口穴21a及び連通穴21bは、ハウジング1を構成する一次樹脂成形部21にL字状に屈曲して形成され、外部開口穴1eは、一次樹脂成形部21を内包しコネクタ部1a及びケース部1bを形成するハウジング1の二次樹脂成形部に、L字状の一端の連通穴21bと略垂直に連通して形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、周囲の温度変化に伴う樹脂製ケースの内圧変化を緩和する通気手段を備えた電子回路収納ケース、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のエンジンルーム内に設置される電子制御装置に使用する電子回路収納ケースは、実使用環境において高温下に晒された場合、周囲の温度上昇に伴いケース部内の圧力が上昇する。このとき、防水型のケース部は密閉構造になっていることから、圧力の逃げ場がない場合は、ケース部材の肉厚の薄い箇所や結合部等に応力が集中し破損する可能性がある。そこでこの圧力を緩和するために、一般的に、ケース部の内部と外部が繋がった換気穴が設けられている。
【0003】
ただしケース部から直接外部に圧力を逃がす構造としてしまうと、防水構造の意に反するため、例えばコネクタ部を利用して内部に換気穴をつなげる必要がある。
また内燃機関のエンジンルーム内に用いられる各種電子制御装置は、狭いスペースに配置されることからレイアウトが限定される。それに伴いコネクタの挿入方向も制約されるため、電子制御装置本体に対してコネクタ部の向きを屈曲させる必要がある。
【0004】
通気手段を設けた電子回路収納ケースの従来技術としては、例えば、特許文献1のような技術が知られている。まず、ケースを成形する金型で3方向に開口した開口孔を有する連通孔を形成し、樹脂が冷却固化した後、金型から取り出す。次に、成形とは別の二次加工作業において、3方向に開口した開口孔の一ヶ所に対し、加熱した治具を用いて開口近傍の樹脂を溶かし込むことにより、開口を塞ぐものである。更に、塞いだ開口の上部及びその周囲に接着剤を塗布し、硬化させる手法が採られていた。こうして、コネクタの外部側からケースの内部に連通し、内部において略直角に曲がった2つの曲がりを有する構造の連通口が形成されている。
【0005】
また、他の従来技術として、例えば特許文献2では、ケース部の樹脂中実部内に2ヶ所の屈曲部を持って連通し、外部の2方向へ間隔を置いた2つの開口穴を持った換気穴を備えたものにおいて、2つの屈曲間を連通する換気穴の一端を延長してケース部の外部に開口する開口部を設け、この開口部近傍の樹脂を予熱して押し込ことにより、当該開口部を塞ぐ方法が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−55829号公報(第5−6頁、図6−7参照)
【特許文献2】特開2008−182089号公報(第4−6頁、図4−14参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献1や特許文献2に示された従来技術のように、3方向に開口した開口穴の1ヶ所を、開口部周辺の樹脂を溶融して開口穴を塞ぐ方法では、次のような問題点がある。すなわち、開口穴から過溶融した樹脂が換気穴に充填され、さらに当該開口穴を通過した樹脂が換気穴内まで侵入する虞がある。
ここで、開口穴や換気穴は電子制御装置の内部の限られたスペースに構成する必要があるため、通常φ1〜2mm程度の小さな通路断面で構成されている。従って、換気穴に侵入した溶融樹脂が微量でも換気穴を閉塞してしまう。更に塞いだ開口穴の上部及び周囲に
接着剤を塗布するような場合は、前工程で、開口部周辺の溶融した樹脂で開口穴が完全に塞がれてなく少しでも樹脂に隙間があると、前記前工程完了後、接着剤を塗布する際、その隙間から接着剤が浸み込み、開口穴内の樹脂部を通過して換気穴内に侵入し、その換気穴を閉塞する虞があるという問題が起こる。これら何れの場合においても、ケース部内が密閉状態となり温度変化が生じた際の内圧変化を緩和できないため、換気穴の本来の目的を達成することができない虞があるという問題点があった。
【0008】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、周囲の温度変化に伴う樹脂製ケースの内圧変化を緩和する換気穴を、比較的簡便で信頼性の高い手段により構成した電子回路収納ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る電子回路収納ケースは、電子回路基板を収納するケース部と、ケース部の基板取付面に対して垂直方向に延在し、コネクタが内蔵されるコネクタ部とを有する樹脂製のハウジングを備え、ケース部の内部側へ開口する内部開口穴と、コネクタ部の外部側へ開口する外部開口穴との底部が連通穴で連通され、ケース部の内部からコネクタ部の外部へ通じる換気穴がハウジングの中実部内に形成された電子回路収納ケースにおいて、内部開口穴及び連通穴は、ハウジングを構成する一次樹脂成形部にL字状に屈曲して形成され、外部開口穴は、一次樹脂成形部を内包しコネクタ部及びケース部を形成するハウジングの二次樹脂成形部に、L字状の一端の連通穴と略垂直に連通して形成されているものである。
【0010】
また、上記電子回路収納ケースの製造方法は、ハウジングを形成する一次樹脂成形工程で、L字状に屈曲した内部開口穴及び連通穴を有する一次樹脂成形部を成形し、二次樹脂成形工程において、一次樹脂成形部を金型内の所定位置に保持して樹脂を注入し、L字状の一端の連通穴と略垂直に繋がる外部開口穴と共にコネクタ部及びケース部を含むハウジング全体を形成するものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明による電子回路収納ケースによれば、ケース部の内部からコネクタ部の外部へ通じる換気穴がハウジングの中実部内に形成された電子回路収納ケースにおいて、内部開口穴及び連通穴は、ハウジングを構成する一次樹脂成形部にL字状に屈曲して形成され、外部開口穴は、一次樹脂成形部を内包しコネクタ部及びケース部を形成するハウジングの二次樹脂成形部に、L字状の一端の連通穴と略垂直に連通して形成されているので、ケース部とコネクタ部を、2つの屈曲部をもって連通する換気穴が、成形のみで容易に確実に形成でき、ケースの内圧変化を緩和することができるため、信頼性の高い換気穴を備えた電子回路収納ケースを得ることができる。
【0012】
また、この発明による電子回路収納ケースの製造方法によれば、ハウジングを形成する一次樹脂成形工程で、L字状に屈曲した内部開口穴及び連通穴を有する一次樹脂成形部を成形し、二次樹脂成形工程において、一次樹脂成形部を金型内の所定位置に保持して樹脂を注入し、L字状の一端の連通穴と略垂直に繋がる外部開口穴と共にコネクタ部及びケース部を含むハウジング全体を形成したので、上記と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1による電子回路収納ケースを使用する流量測定装置の側断面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図1におけるハウジングの構成部品である一次樹脂成形部の成形工程を説明する断面図である。
【図4】図3の一次樹脂成形工程で製造された一次樹脂成形部を示す図である。
【図5】図1におけるハウジングの構成部品である二次樹脂成形部の成形時の金型配置を示す断面図である。
【図6】図5の要部詳細断面図である。
【図7】図5の矢印B−B方向に見た断面図で外部開口穴の成形工程を説明する説明図ある。
【図8】この発明の実施の形態1による流量測定装置の二次樹脂成形後のハウジング全体を示す側面断面図である。
【図9】この発明の実施の形態2による流量測定装置の、ハウジングに電子回路基板を搭載したプレートが接着された後の要部正面図である。
【図10】この発明の実施の形態3による流量測定装置の、ハウジングのコネクタ部を含む要部正面図である。
【図11】図10のハウジングのコネクタ部を二次樹脂成形によって成形する場合の金型の配置を示す正面図である。
【図12】図11のC−C方向に見た側面断面図である。
【図13】図11において、コネクタ部の内側を成形する金型と外部開口穴形成ピンの型開き動作を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
以下、この発明の各実施の形態を、図に基づいて説明するが、各図において同一、または相当部材や部位については、同一符号を付して説明する。また、電子回路収納ケースの具体例として、内燃機関の吸入空気流量を測定する流量測定装置のケースを例に挙げて説明する。
図1は、この発明の実施の形態1による流量測定装置の側面断面図であり、図2は、図1の流量測定装置をコネクタ開口部側から見た正面図、図3は図1におけるハウジングの構成部品である一次樹脂成形部の成形工程を説明する説明図、図4は図3で作られた一次樹脂成形部を示す図、図5は図1におけるハウジングを製作する二次樹脂成形時の金型配置を示す断面図、図6は図5の要部断面図、図7は図5を矢印B−B方向に見たコネクタ部の二次樹脂成形工程を説明する断面図、また、図8は二次樹脂成形後のハウジング全体を示す側面断面図である。
【0015】
先ず、図1及び図2により流量測定装置の全体構成から説明する。
ハウジング1は、外部と電気信号の授受を行う防水型のコネクタ部1aと、後述する電子回路基板7の収容部となるケース部1bとを一体成形した樹脂成形品である。コネクタ部1aは、電子回路基板7の基板取付面1cに対して垂直方向に延在し、コネクタ部開口面2は基板取付面1cに対して略並行になるように形成されている。更に、ハウジング1には、内燃機関の吸気配管(図示せず)に取り付けられ、ネジ等により固定されるフランジ部1dも一体成形されている。
なお、電子回路基板7は、厳密には後述するプレート6を介してケース部1bに取り付けられているが、説明の便宜上、ケース部1bの内面側を基板取付面1cと呼ぶことにする。
【0016】
本願発明の特徴点として、ハウジング1は、その成形過程において、一次樹脂成形工程と二次樹脂成形工程に分けて成形されている。詳細は後述するが、一次樹脂成形工程によって成形された一次樹脂成形部21が、コネクタ部1aとケース部1bの中間部近傍に配置され、二次樹脂成形工程において、一次樹脂成形部21を内包して、コネクタ部1a,ケース部1b,フランジ部1dとなる部分が一体に成形される。これら全体でハウジング1が構成されている。
【0017】
ハウジング1には、周囲の温度変化に伴うケース部1bの内圧変化を緩和するために、ケース部1bの内部からコネクタ部1aの外部に通じる換気穴3が設けられている。
この換気穴3は、コネクタ部1aの、内部側からコネクタ部1aの開口面2側に向けて形成されたた有底の外部開口穴1eと、一次樹脂成形部21に形成されて、基板取付面1cに対して垂直方向にケース部1aの内部側へ開口する有底の内部開口穴21aと、同じく一次樹脂成形部21に形成されて、外部開口穴1eと内部開口穴21aの底部をつなぐ連通穴21bとで構成されている。したがって、換気穴3は内部に2箇所の屈曲部を有し、外部開口穴1eと内部開口穴21aは並行方向に開口し、図1の断面方向に見てコの字状に屈曲した形になっている。内部開口穴21aの開口面4は、基板取付面1cに対して略並行である。なお、連通穴21bが外部開口穴1eと繋がる側の開口面5の形状については後述する。
【0018】
次に、組立手順に沿って、さらに流量測定装置の構成を説明する。
図1に示すように、ハウジング1のケース部1bの内側には、プレート6が接着固定されている。プレート6の基板載置面には電子回路基板7が載置固定され、また、その隣には流量検出素子8が載置固定されている。一方、ハウジング1に一体に成形された一次樹脂成形部21には、上述した内部開口穴21aと連通穴21bが形成されている他に、コネクタターミナル9がインサートされており、図2に示すように、一端側がコネクタ部1a内にあって外部と接続される外部接続端子9a、他端側が電子回路基板7の端子部と接続される内部接続端子9bとなっている。
内部接続端子9bと電子回路基板7の端子部とは、ワイヤ10でワイヤボンディングにより接続されている。また、電子回路基板7と流量検出素子8もワイヤ10で同様に接続されている。なお、この電気的な接続は、溶接、はんだ付け等でもよい。
【0019】
ワイヤボンディング接続部や電子回路基板7の部品表面は、一般的に防湿保護用の熱硬化型の液状のゲル11でコーティングされている。このとき、塗布したゲル11が、内部開口穴21aの開口部から内部に侵入しないように、内部開口穴21aの開口面4の高さは、ゲル11の塗布面より高く突出するように、内部開口穴21aの開口端部を煙突状に突き出した形状の開口壁22が設けられている(後述する図4参照)。
次に、一次樹脂成形部21の上面と電子回路基板7の上面を覆うように、ハウジング1のケース部1bに、カバー12を接着固定する。このカバー12の内面側には、空気の流通が可能なバイパス通路溝12aが形成されている。カバー12の接着には、熱硬化性の接着材を使用するが、エポキシ系やその他の接着剤を使用してもよい。
【0020】
一次樹脂成形部21を内包したハウジング1と、プレート6と、カバー12とで、電子回路を収納した流量測定装置のケースが構成されている。すなわち、この部分が本願の電子機器収納ケースに相当する。
電子回路基板7が収納されたケース部1b内は密閉構造となっているので、ケース部1b周辺の温度上昇に伴いケース部1bの内部内圧は上昇するが、上述のように、換気穴3を設けているため、内圧上昇を緩和することができる。
【0021】
次に、図3〜図7により、本実施の形態の流量測定装置のケースのうち、特に、ハウジング1とそれに組み合わされる一次樹脂成形部21の製造方法について説明する。
先ず、図3により一次樹脂成形部21の成形工程を説明する。(a)のように、一次樹脂成形部21を成形する金型に、内部開口穴21aを形成するための内部開口穴形成ピン31と、連通穴21bを形成するための連通穴形成ピン32を、図のように、略垂直方向から挿入して先端部を突き合わせてセットする。
この状態で、キャビティ内に成形樹脂を充填する。成形樹脂が冷却、固化した後、(b)のように、両形成ピン31,32を引き抜くことで、内部に内部開口穴21aと連通穴21bが形成された一次樹脂成形部21が完成する。
【0022】
図4は図3で作られた一次樹脂成形部21を示す図であり、(a)は側面図、(b)は(a)を上面から見た平面図である。なお、(a)は、(b)の矢印A−Aから見た断面を示している。
先の図3では、内部開口穴21aと連通穴21bを成形する部分を中心に説明したが、一次樹脂成形部21の全体は図4に示すような形状である。すなわち、一端部にコネクタ部1a側に収容される外部接続端子9aを有し、他端部に電子回路基板7側と接続される内部接続端子9bを有する金属製のコネクタターミナル9が、樹脂と一体成形されて保持されている。コネクタターミナル9は、断面が1mm角程度の複数本の細長い金属棒で構成されている。外部接続端子9a側は、内部接続端子9b側に対して略90度折り曲げられており、その途中までが上記の一次樹脂成形工程で一体に樹脂モールドされている。
【0023】
また、先に説明したように、内部開口穴21aの開口端側は、周囲より一段高くなった開口壁22が設けられており、電子回路基板7が取り付けられ、防湿保護用のゲル11が塗布されたとき、ゲル11が内部開口穴21aに入らないようになっている。つまり、開口壁22の突出高さは、それを考慮して決められている。
【0024】
コネクタターミナル9は、上記のように細い導体で構成されており、外部接続端子9aは相手側コネクタの接続端子と電気的接続を行う勘合部なので所望の位置精度が求められる。また電子回路基板7との接続端子となる内部接続端子9bも電子回路基板7とワイヤボンディングにて接続されるため、各接続端子には所望の位置精度が求められる。
もし、樹脂容量の大きなハウジング1全体と一体に樹脂成形するとすれば、成形樹脂圧に押されて接続端子が変形しやすく位置精度が確保しにくいという問題が発生する。
しかしながら、本実施の形態のように、一次樹脂成形の段階で、両接続端子周辺を保持固定し、少ない樹脂量で一体成形しているので、成形樹脂圧によってコネクタターミナル9が押し曲げられることないため、両接続端子9a,9bの位置精度を確保した一次樹脂成形部21を得ることができる。
【0025】
なお、一次樹脂成形工程において、換気穴3の一部を構成する内部開口穴21aと連通穴21bを形成する工程と、コネクタターミナル9を樹脂で保持固定する工程とを、別工程で行うことも可能である。しかし、内燃機関に使用されるような電子制御装置は、スペースが限られることから、上記二つの工程を同時に一次樹脂成形部21として一体樹脂成形することで、部品点数削減やコスト低減、小型化を実現することが可能である。
【0026】
次に、外部開口穴1eを含むハウジング1全体を形成する二次樹脂成形工程について説明する。図5は、二次樹脂成形時の金型配置を示す断面図であり、図6は図5の要部断面図、また、図7は、コネクタ部1aの成形過程を説明する図である。
二次樹脂成形工程では、図5に示すように、ハウジング1の成形金型A33と、成形金型B34と、成形金型C35を上下横から組み合わせ、組み合わせた金型内の所定位置に、先に製作しておいた一次樹脂成形部21を保持して固定する。このとき、ハウジング1のコネクタ部1aの内面と、外部開口穴1eとを同時に形成するために、成形金型A33には、コネクタ部1aの内部を形成するコネクタ内面形成部33aと、外部開口穴1eを形成する外部開口穴形成ピン33bとが一体に突設されている。
【0027】
図6に示すように、外部開口穴形成ピン33bの先端は、成形樹脂が流れ込まないように、一次樹脂成形で形成された一次樹脂成形部21の連通穴21bの開口面5を塞ぐように配置される。実施の形態1の例では、開口面5は連通穴21bの穴方向に対して垂直とし、平面状にしている。こうすることで、連通穴21bの開口面5と外部開口穴形成ピン33b先端部との嵌合面も平面状になり、平面同士の勘合となるため勘合面が精度良く密着し、成形樹脂が連通穴21b内に侵入しにくくなる。
また、成形金型A33は、一次樹脂成形部21の内部開口穴21aの開口面4も塞ぐように構成されている。
図5の状態で、金型のキャビティ内に成形樹脂を充填する。このとき、上記のように金型で一次樹脂成形部21の開口面4,5を塞いでいるので、成形樹脂が開口面4から内部開口穴21aへ侵入したり、開口面5から連通穴21bへ浸入したりするのを防止することができる。
【0028】
図7は、図5を矢印B−B方向から見た、コネクタ部1aの成形過程を示す図である。ハウジング1のフランジ部1dの図示は省略している。(a)に示すように、外部開口穴形成ピン33bは、その先端部で連通穴21bの開口面5を塞ぐようにコネクタ部1aの内部に配置されている。このとき、外部開口穴形成ピン33bの幅方向の寸法は、少なくとも連通穴21bの外径寸法と同じ幅があれば良い。しかし、より確実に連通穴21bの開口面5を塞ぐために、外部開口穴形成ピン33bの幅方向の寸法を連通穴21bの外径より大きくしておくのが望ましい。結果的に、外部開口穴1eの通路断面積を連通穴21bの通路断面積より大きくすればよい。
こうすることで、二次樹脂成形時に成形樹脂が連通穴21bに流れ込むことを確実に防ぐことができる。
【0029】
次に、成形樹脂の充填完了から冷却、固化した後、先の図5中に太矢印で示すように、成形金型A33、成形金型B34、及び成型金型C35を型開きする。この型開きにより、図7(b)に示すように、成形金型A33に構成されたコネクタ内面形成部33aと外部開口穴形成ピン33bも引き抜かれ、図8に示すような二次樹脂成形完了後のハウジング1が完成する。図8において、一次樹脂成形部21以外の部分、すなわち、コネクタ部1a,ケース部1b,フランジ部1cを含む外形部分が二次樹脂成形部である。
完成したハウジング1には、図8に示すように、一次樹脂成形工程と二次樹脂成形工程により、ハウジング1のケース部1bの内部からコネクタ部1aの外部へ連通する2つの垂直な曲り部をもった換気穴3が形成されている。
【0030】
また、コネクタ部1a側の外部接続端子9a及び電子回路基板7と接続する内部接続端子9bは、一次樹脂成形において位置決めされ、コネクタターミナル9の周囲に所望の樹脂部が形成されているため、二次樹脂成型時にコネクタターミナル9が成形樹脂圧により変形することがなく、二次樹脂成形後にも所定の位置に精度よく位置決めされている。
【0031】
以上のように、実施の形態1の電子回路収納ケースによれば、ケース部の内部からコネクタ部の外部へ通じる換気穴がハウジングの中実部内に形成された電子回路収納ケースにおいて、内部開口穴及び連通穴は、ハウジングを構成する一次樹脂成形部にL字状に屈曲して形成され、外部開口穴は、一次樹脂成形部を内包しコネクタ部及びケース部を形成するハウジングの二次樹脂成形部に、L字状の一端の連通穴と略垂直に連通して形成されているので、ケース部とコネクタ部を2つの屈曲部をもって連通する換気穴を、成形のみで容易に確実に形成でき、樹脂製ケースの内圧変化を緩和することができるため、信頼性の高い換気穴を備えた電子回路収納ケースを得ることができる。
【0032】
また、一次樹脂成形部には、一端にコネクタ部側の外部接続端子を有し他端に電子回路基板側の内部接続端子を有するコネクタターミナルが、一体にモールドされているので、二次樹脂成形時にコネクタターミナルが成形樹脂圧により変形することがなく、上記効果に加え、ハウジングにコネクタターミナルを精度よく位置決めすることが可能となり、また、製作コストの低減と、ケースの小型化を実現することができる。
【0033】
また、ケース部に収納された電子回路基板の電子部品搭載部及び接続部に防湿保護用のゲルが塗布されたとき、内部開口穴の開口面がゲルの塗布面より高くなるように、一次樹
脂成形部の内部開口穴の周囲に開口壁が設けられているので、電子回路基板が取り付けられ、防湿保護用のゲルが塗布されたとき、ゲルが内部開口穴に侵入するのを防止することができる。
【0034】
また、一次樹脂成形部に形成された連通穴の通路断面積より、二次樹脂製部に形成された外部開口穴の通路断面積の方を大きくしたので、二次樹脂成形過程において外部開口穴と連通穴が塞がることなく確実に連通させることができるため、信頼性の高い換気穴を有する電子回路収納ケースを得ることができる。
【0035】
また、外部開口穴と連通する側の連通穴の開口面は、連通穴の穴方向に対して垂直に形成されているので、二次樹脂成形部を成形する際に、外部開口穴形成ピンと連通穴の開口面が平面同士の勘合となるため、勘合面が精度良く密着し、成形樹脂が連通穴内に侵入するのを確実に防止できる。
【0036】
更に、上記の電子回路収納ケースの製造方法において、ハウジングを形成する一次樹脂成形工程で、L字状に屈曲した内部開口穴及び連通穴を有する一次樹脂成形部を成形し、二次樹脂成形工程において、一次樹脂成形部を金型内の所定位置に保持して樹脂を注入し、L字状の一端の連通穴と略垂直に繋がる外部開口穴と共にコネクタ部及びケース部を含むハウジング全体を形成するようにしたので、ケース部とコネクタ部を2つの屈曲部をもって連通する換気穴を、成形のみで容易に確実に形成でき、樹脂製ケースの内圧変化を緩和することができるため、信頼性の高い通気手段を持った電子回路収納ケースを得ることができる。
【0037】
実施の形態2.
図9はこの発明の実施の形態2による流量測定装置の要部正面図である。基本的には実施の形態1の図1及び図2と同じであり、図9は図2に相当する部分であるが、カバー12は取り外して内部が見える状態を示している。ハウジング1に電子回路基板7を搭載したプレート6が接着された後の正面図である。図1及び図2と同等部分の説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0038】
実施の形態1の場合と同様に、ハウジングの一次樹脂成形部21には内部開口穴21aを有し、その開口部には開口壁22設けられており、コネクタターミナル9の内部接続端子9bと電子回路基板7との接続部や電子部品面には防湿保護のためのゲル11が塗布されている。
本実施の形態の特徴部は、ハウジング1の内部開口穴21a近傍にゲル11の流れ止めのための隔壁23を有している点である。隔壁23は、開口壁22とは離間して配置されている。
【0039】
ゲル11は、通常、熱硬化型で液状の接着剤を使用している。そのため、液状のゲル11は高温下で粘度が下がり周囲に濡れ広がる。本実施の形態の構成により、電子回路基板7やワイヤ10にゲル11を塗布した際に、周囲に広がることを防止でき、高温下で濡れ広がったとしても隔壁23により塞き止められるので、内部開口穴21aにゲル11が達することがないため、内部開口穴21aからゲル11が浸入し、換気穴3を塞ぐことやコネクタ部1aの外部にゲル11が流出することを防止できる。
なお、隔壁23は、図9のように、開口壁22と共に形成するのがより効果的であるが、いずれか一方のみでも、ゲル侵入防止の効果は期待できる。
【0040】
以上のように、実施の形態2の電子回路収納ケースによれば、ケース部に収納された電子回路基板の電子部品搭載面及び接続部に防湿保護用のゲルが塗布されたとき、内部開口穴にゲルが流れ込むのを防止するために、一次樹脂成形部の内部開口穴の近傍に隔壁が設
けられているので、電子回路基板やワイヤにゲルを塗布した際に、ゲルが周囲に流れ広がるのを、隔壁により塞き止められて内部開口穴にゲルが達することがないため、換気穴を塞ぐことやコネクタ部の外部にゲルが流出することを防止できる。
【0041】
実施の形態3.
図10はこの発明の実施の形態3の流量測定装置のハウジングの一部を切り取った正面図、図11は図10におけるハウジングの二次樹脂成形時のコネクタ部1aの内側を成形する金型部の配置を示す正面図、図12は図11におけるハウジング1のC−C断面図、図13は図12におけるコネクタ部1aの内側を成形する金型部が型開きする時の断面図である。図示以外は、実施の形態1又はと同等である。
【0042】
図10のように、ハウジング1の二次樹脂成形工程によって、外部開口穴1eが形成されるが、本実施の形態では、外部開口穴1eの内壁の一部は、コネクタ部1aの内壁の一部と同一面に形成された内壁部を有している。図中に太線で示す部分である。
そして、ハウジング1の一次樹脂成形にて形成された連通穴21bの、外部開口穴1eと連通する開口面5は、やはり外部開口穴1eの太線で示す内壁部と同一面に形成されている。
すなわち、コネクタ部1aの内壁の一部と外部開口穴1eの内壁の一部と開口面5とが同一面となっている。これは、次のようにして形成されている。
【0043】
金型A33には、コネクタ部1aの内側を成形するコネクタ内面形成部33aと、その先端側に設けられた外部開口穴形成ピン33bが一体に構成されているのは先に説明した通りであるが、図11に示すように、コネクタ内面形成部33aの外面の一部と外部開口穴形成ピン33bの外面の一部を同一面に合わせた金型を用意する。これは、コネクタ内面形成部33aの一部をコネクタ部1aの奥行き方向へ延長させるだけで良いので、金型の製作が容易になる。
連通穴21bの開口面5の形状も、外部開口穴形成ピン33bの上記外面と同一面になるように形成しておく。こうすることで、図12に示すように、外部開口穴形成ピン33bの先端部で、連通穴21bの開口面5を塞いでおくことができる。
図12のように金型を配置した状態で成形樹脂を充填し、冷却、固化を経たのち、図13に示すように、矢印方向に金型33のコネクタ内面形成部33aと共に外部開口穴形成ピン33bを型開きすることで、連通穴21bが塞がることなく外部開口穴1eが形成される。
【0044】
以上のように、実施の形態3の電子回路収納ケースによれば、外部開口穴は、コネクタ部の内壁の一部と同一面に形成された内壁部を有し、外部開口穴と連通する側の連通穴の開口面は、その内壁部と同一面に形成されているので、二次樹脂成形部を成形する際の金型作製が容易になる。
【0045】
なお、これまで説明した実施の形態1〜3では、電子回路収納ケースとして流量測定装置を例に挙げて説明したが、電子回路を収納するケースを構成部品とする各種電子制御装置の電子回路収納ケースに利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 ハウジング 1a コネクタ部
1b ケース部 1c 基板取付面
1d フランジ部 1e 外部開口穴
2 コネクタ部開口面 3 換気穴
4,5 開口面 6 プレート
7 電子回路基板 8 流量検出素子
9 コネクタターミナル 9a 外部接続端子
9b 内部接続端子 10 ワイヤ
11 ゲル 12 カバー
12a バイパス通路溝
21 一次樹脂成形部 21a 内部開口穴
21b 連通穴 22 開口壁
23 隔壁
31 内部開口穴形成ピン 32 連通穴形成ピン
33 成形金型A 33a コネクタ内面形成部
33b 外部開口穴形成ピン 34 成型金型B
35 成型金型C。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路基板を収納するケース部と、前記ケース部の基板取付面に対して垂直方向に延在し、コネクタが内蔵されるコネクタ部とを有する樹脂製のハウジングを備え、前記ケース部の内部側へ開口する内部開口穴と、前記コネクタ部の外部側へ開口する外部開口穴との底部が連通穴で連通され、前記ケース部の内部から前記コネクタ部の外部へ通じる換気穴が前記ハウジングの中実部内に形成された電子回路収納ケースにおいて、
前記内部開口穴及び前記連通穴は、前記ハウジングを構成する一次樹脂成形部にL字状に屈曲して形成され、前記外部開口穴は、前記一次樹脂成形部を内包し前記コネクタ部及び前記ケース部を形成する前記ハウジングの二次樹脂成形部に、前記L字状の一端の前記連通穴と略垂直に連通して形成されていることを特徴とする電子回路収納ケース。
【請求項2】
請求項1記載の電子回路収納ケースにおいて、
前記一次樹脂成形部には、一端に前記コネクタ部側の外部接続端子を有し他端に前記電子回路基板側の内部接続端子を有するコネクタターミナルが、一体にモールドされていることを特徴とする電子回路収納ケース。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電子回路収納ケースにおいて、
前記ケース部に収納された前記電子回路基板の電子部品搭載部及び接続部に防湿保護用のゲルが塗布されたとき、前記内部開口穴の開口面が前記ゲルの塗布面より高くなるように、前記一次樹脂成形部の前記内部開口穴の周囲に開口壁が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子回路収納ケース。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の電子回路収納ケースにおいて、
前記ケース部に収納された前記電子回路基板の電子部品搭載面及び接続部に防湿保護用のゲルが塗布されたとき、前記内部開口穴に前記ゲルが流れ込むのを防止するために、前記一次樹脂成形部の前記内部開口穴の近傍に隔壁が設けられていることを特徴とする電子回路収納ケース。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電子回路収納ケースにおいて、
前記一次樹脂成形部に形成された前記連通穴の通路断面積より、前記二次樹脂製部に形成された前記外部開口穴の通路断面積の方が大きいことを特徴とする電子回路収納ケース。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の電子回路収納ケースにおいて、
前記外部開口穴と連通する側の前記連通穴の開口面は、前記連通穴の穴方向に対して垂直に形成されていることを特徴とする電子回路収納ケース。
【請求項7】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の電子回路収納ケースにおいて、
前記外部開口穴は、前記コネクタ部の内壁の一部と同一面に形成された内壁部を有し、前記外部開口穴と連通する側の前記連通穴の開口面は、前記内壁部と同一面に形成されていることを特徴とする電子回路収納ケース。
【請求項8】
電子回路基板を収納するケース部と、前記ケース部の基板取付面に対して垂直方向に延在し、コネクタが内蔵されるコネクタ部とを有する樹脂製のハウジングを備え、前記ケース部の内部側へ開口する内部開口穴と、前記コネクタ部の外部側へ開口する外部開口穴との底部が連通穴で連通され、前記ケース部の内部から前記コネクタ部の外部へ通じる換気穴が前記ハウジングの中実部内に形成された電子回路収納ケースの製造方法において、
前記ハウジングを形成する一次樹脂成形工程で、L字状に屈曲した前記内部開口穴及び前記連通穴を有する一次樹脂成形部を成形し、二次樹脂成形工程において、前記一次樹脂成形部を金型内の所定位置に保持して樹脂を注入し、前記L字状の一端の前記連通穴と略垂
直に繋がる前記外部開口穴と共に前記コネクタ部及び前記ケース部を含む前記ハウジング全体を形成することを特徴とする電子回路収納ケースの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−234894(P2012−234894A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100985(P2011−100985)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】