説明

電子回路基板の製造方法

【課題】基材にベアICチップを実装して、品質の高い電子回路基板を効率良く生産することができる電子回路基板の製造方法を提供する。
【解決手段】インレット用基材21のうちベアICチップ23が実装される位置に、第1接着剤41が、第1のディスペンサー31により、ベアICチップ23のバンプ25に達しない程度の量だけ塗布される。次に、超音波を印加することができるピックアップノズル15により、半導体ウェハー16を個別に切り出して形成された個々のベアICチップ23が、インレット用基材21に塗布された第1接着剤41上に各々載置される。その後、ピックアップノズル15がICチップ23に対して超音波を印加し、このことにより、ベアICチップ23のバンプ25とアンテナ22とが電気的に接合される。更に、インレット用基材21およびベアICチップ23に、第2接着剤42が、第2のディスペンサー32により、ベアICチップ23の上面全域および側面外周全域を覆うように塗布される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベアICチップを基材に実装して電子回路基板を製造する方法に関し、例えば、RFIDメディア(非接触ICタグや非接触ICカード等)用基材にベアICチップを実装して、RFIDメディア用の品質の高い電子回路基板を効率良く製造することができる電子回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベアICチップは、例えば、半導体ウエハーを個別に分離することにより形成され、ベアICチップには回路パターンが形成されている。そして、基材にベアICチップが実装されて電子回路基板が製造される。ベアICチップには、基材上に設けられた配線部と電気接合される電極が、回路パターンとともに同一面上に形成されている。ベアICチップの電極(バンプ)は、ベアICチップの周囲にパッケージを施す前に、基材の配線部に電気接合される。その後、ベアICチップと基材との間に接着材が充填され、ベアICチップの回路パターン及び基材の配線部との電気接合部分が周囲から封止される。
【0003】
従来、このような実装を行う場合、まずは、予めエッチングなどによって配線部が形成された基材上に、ピックアップノズルによりベアICチップが位置決めされて搭載される。次に、ピックアップノズルによりベアICチップに対して超音波を印加する。このことにより、ベアICチップの電極(バンプ)と基材の配線部とが電気的に接合される。次に、ベアICチップの回路パターン形成面と基材との間にディスペンサーにより接着剤が充填され、その後、乾燥炉により接着剤が加熱され硬化されて、ベアICチップが基材上に固定されて実装される。
【0004】
このような従来の方法においては、ベアICチップの回路パターンと基材の配線部との間のわずかな空隙、例えば20マイクロメートルの空隙に接着剤を封入する必要がある。このため、わずかな空隙にでも封入できるような粘度の低い接着剤、例えば粘度が5000cps以下の接着剤を用いる必要がある。また、粘度の低い接着剤を選んだとしても、ベアICチップの回路パターンと基材の配線部との間のわずかな空隙に接着剤を充填させるためには、長い時間が必要である。加えて、粘度の低い接着剤は一般に硬化するまでの時間が長いため、ベアICチップの実装に要する時間が長くなり、生産効率が悪い。
【0005】
このような問題を解決するために、超音波接合によりベアICチップのバンプを基材の配線部に電気的に接合する前に、ベアICチップあるいは基材の接合面の全域に接着剤を塗布しておく方法が提案されている(特許文献1)。この方法によれば、ベアICチップのバンプを基材の配線部に電気接合する前に接着剤を塗布するので、粘度の低い接着剤を使用する必要が無く、このため、粘度が高く硬化までの時間が短い接着剤を使用することができる。
【特許文献1】特開2005−217435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような方法においては、電気的に接合されるベアICチップのバンプと基材の配線部との間にも接着剤が介在することになる。このため、バンプと配線部とを超音波により接合する前に、超音波振動によって接着剤をバンプと配線部との間から除去する必要があり、除去に要する時間の分だけ実装にかかる時間が長くなる。また、ベアICチップと基材との間に介在している接着剤が、ベアICチップのバンプと基材の配線部とを超音波接合する際に、ベアICチップから基材に伝達される超音波振動を妨げることがあり、この場合は、超音波接合に要する時間が長くなる。加えて、超音波接合の際に接着剤がベアICチップの上面に回りこみ、ベアICチップに超音波を印加する超音波ホーンに接着剤が付着し、工程不良が生じる可能性がある。
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、基材にベアICチップを実装して、品質の高い電子回路基板を効率良く製造することができる電子回路基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、多数の配線部が設けられた基材に対して、複数のバンプを有するベアICチップをバンプが配線部側を向くよう実装して電子回路基板を製造する電子回路基板の製造方法において、予め多数の配線部が取り付けられた基材を準備する工程と、基材上のうちベアICチップが実装される位置に、ベアICチップのバンブに達しない程度の量の第1接着材を塗布する工程と、基材の第1接着剤上にベアICチップを搭載し、超音波接合により各配線部に対応するICチップのバンプを接合する工程と、各ベアICチップの少なくとも側面と基材との間に第2接着剤を塗布する工程と、を備えたことを特徴とする電子回路基板の製造方法である。
【0009】
本発明は、第1接着剤は熱硬化性接着剤であり、第2接着剤は熱硬化性接着剤またはUV硬化接着剤であることを特徴とする電子回路基板の製造方法である。
【0010】
本発明は、第2接着剤は、ベアICチップの上面全域および側面外周全域を覆うように塗布されることを特徴とする電子回路基板の製造方法である。
【0011】
本発明は、配線部は、基材に設けられたアンテナからなり、基材は、アンテナが取り付けられたインレット基材からなることを特徴とする電子回路基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基材上の各配線部のうちベアICチップが実装される位置に、ベアICチップのバンブに達しない程度の量の第1接着材が塗布され、その後、各配線部の第1接着剤上にベアICチップが搭載され、超音波接合により各配線部に各ICチップが接合された後、各ベアICチップの少なくとも側面に第2接着剤が塗布される。このため、粘度が高く短時間に硬化する接着剤を用いることができる。このことにより、短時間で基材にベアICチップを実装することができ、従って、効率良く電子回路基板を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。ここで、図1乃至図3は、本発明の実施の形態における電子回路基板の製造方法を示す図である。このうち図1は、本発明の実施の形態におけるベアICチップ実装装置を示す図であり、図2は、本発明の実施の形態において、ベアICチップを基材に実装する様子を示す図である。図3は、本発明の実施の形態において、ベアICチップが搭載された非接触ICカードを示す断面図である。また、図4は、ベアICチップの実装に要する時間が長い比較例を示す図である。
【0014】
電子回路基板、基材、配線部、ベアICチップおよび接着剤
まず図1および図2により、本発明による電子回路基板の製造方法により製造される電子回路基板26、および電子回路基板26を製造するために用いられる基材21、配線部22、ベアICチップ23および接着剤について説明する。図1に示すように、本発明による電子回路基板の製造方法によれば、多数の配線部22が配置された基材21上に、接着剤41および接着剤42を用いて各アンテナ22に対応するベアICチップ23が固定され、このようにして、電子回路基板26が製造される。
なお、図1乃至図3に示す実施の形態においては、後述するように、基材21の例としてインレット用基材21が示されており、配線部22の例としてアンテナ22が示されており、電子回路基板26の例としてインレットシート26が示されている。
【0015】
上述のように、本発明による電子回路基板の製造方法により製造される電子回路基板26としては、例えば非接触ICカードの材料となるインレットシート26が挙げられる。インレットシート26は、基材、例えばPETのような樹脂フィルムからなるインレット用基材21と、インレット用基材21上に設けられた多数の配線部、例えばアンテナ22と、アンテナ22に対応して設けられたベアICチップ23とを有している。そして、図3(a)に示すように、ホットメルト52が塗布された表面側基材51と、ホットメルト53が塗布された裏面側基材54と、表面側基材51側のホットメルト52と裏面側基材54側のホットメルト53との間に挟持されたインレットシート26とがラミネートされ、適切な寸法に切断されることにより、図3(b)に示すような、リーダ・ライタ等の外部装置と非接触で通信する非接触ICカード50を作製することができる。
【0016】
次に、インレット用基材21上に形成されている配線部22について説明する。図1に示すように、配線部22、例えばアンテナ22は、予めインレット用基材21上で略コイル状に形成されており、後述するように、ベアICチップ23のバンプ25と電気的に接続されている。なお、本実施の形態において、配線部22はアンテナ22からなり、このアンテナ22が略コイル状に形成された例を示したが、これに限定されるものではなく、配線部22は、ベアICチップ23のバンプ25と電気的に接続される電気的配線であればよい。
【0017】
また、アンテナ22は、例えば、スクリーン印刷機を用いて導電性インキをインレット用基材21上に塗布することにより、あるいはインレット用基材21上に銅やアルミニウム等からなる導電性箔を打ち抜き転写することにより、あるいはインレット用基材21上に積層された銅やアルミニウム等からなる導電性箔にエッチングを施して所望の形状にバターニングすること等によっても形成される。これらの手段を用いれば、コイル状のアンテナ22だけでなく、種々の形状を有するアンテナ22をインレット用基材21上に形成することができる。
【0018】
次に、インレット用基材21上に実装されるベアICチップ23について説明する。図1および図2に示すように、ベアICチップ23は直方体状に形成され、ベアICチップ23の厚さは、例えば150〜300μmとなっている。また、ベアICチップ23は、情報を記録するためのメモリを含み、外部装置(リーダ・ライタ等)により、アンテナ22を介してベアICチップ23に記録された情報を読み出したり、アンテナ22を介してベアICチップ23に新たな情報を書き込むことができるように形成されている。そして、ベアICチップ23は、非接触ICカードの所望の機能を発現するための回路パターンを内蔵している。
【0019】
また、ベアICチップ23の回路パターンをインレット用基材21上のアンテナ22に接続するため、ベアICチップ23の表面には複数の電極部(図示せず)が形成されている。各電極部の上には、金属製の突起であるバンプ25が形成されており、ベアICチップ23のバンプ25をインレット用基材21上のアンテナ22に押し当てた後に、ベアICチップ23に超音波を印加することにより、ベアICチップ23のバンプ25とアンテナ22とが超音波接合される。そしてこのことにより、ベアICチップ23の回路パターンがインレット用基材21のアンテナ22に電気的に接続されている。
【0020】
次に、第1接着剤41および第2接着剤42について説明する。第1接着剤41および第2接着剤42は、後述するように、インレット用基材21上にベアICチップ23を固定するために用いられている。このうち第1接着剤41としては、熱硬化性接着剤が用いられる。第2接着剤としては、UV硬化接着剤または熱硬化性接着剤を用いることができ、本実施例においてはUVおよび熱により硬化する接着剤が用いられている。
【0021】
ベアICチップ実装装置
次に、図1および図2により、ベアICチップ実装装置10について説明する。ベアICチップ実装装置10は、基材、例えばインレット用基材21を供給する基材供給ロール10と、基材供給ロール10の下流に設けられ、インレット用基材21を搬送するよう設けられた、対向する一対の基材送りローラー12、12と、インレット用基材21上にベアICチップ23を実装するために基材21に対して張力を加える基材保持ローラー13a、13bとを備えている。また、基材保持ローラー13bの下流側には、一対の基材送りローラー20、20が設けられており、インレット用基材21は、基材保持ローラー13bと一対の基材送りローラー19、19との間で、これらのローラー13b、19、19により水平面上に張架されている。
【0022】
基材保持ローラー13bと一対の基材送りローラー19、19との間には、上流側から順に、インレット用基材21上に第1接着剤41を塗布する第1のディスペンサー31と、インレット用基材21上にベアICチップ23を載置し超音波接合するピックアップノズル15と、インレット用基材21およびベアICチップ23上に第2接着剤42を塗布する第2のディスペンサー32と、第1接着剤41および第2接着剤42を乾燥して硬化させるためのUV照射機33および乾燥炉18とが設けられている。これらの機器31、15、32、33、18により、インレット用基材21上にベアICチップ23が実装され、これにより、インレットシート26が製造される。
【0023】
製造されたインレットシート26は、対向する一対の基材送りローラー19、19の下流側に設けられている基材保持ローラー20a、20bを経て、基材巻取りロール14に巻き取られる。
【0024】
さらにベアICチップ実装装置10は、基材供給ロール11、基材送りローラー12、19、基材保持ローラー13a、13b、20a、20b、基材巻取りロール14、第1のディスペンサー31、ピックアップノズル15、第2のディスペンサー32、UV照射機33、乾燥炉18を各々制御し駆動する制御装置45を有している。
【0025】
電子回路基板の製造方法
次に、図1および図2により、インレットシート26の製造方法について説明する。
【0026】
まず、図1に示すように、予めアンテナ22が表面に形成されているインレット用基材21を巻きつけて形成された基材供給ロール11が用意される。次に、インレット用基材21の図示しない先端部が、対抗する一対の基材送りローラー12、12の間、基材保持ローラー13a、13b、対抗する一対の基材送りローラー19、19の間、基材保持ローラー20a、20bを順次通して基材巻取りロール14まで送られ、このインレット用基材21の先端部が基材巻取りロール14に固定される。制御装置45は、各ロール11、14および各ローラー12、13a、13b、19、20a、20bを制御するようになっており、このことにより、基材供給ロール11から基材巻取りロール14へ向って、インレット用基材21が搬送される。
【0027】
次に、ベアICチップ23がインレット用基材21上に実装される。
【0028】
まず、図2(a)に示すように、インレット用基材21およびアンテナ22のうちベアICチップ23が実装される位置に、第1接着剤41が、第1のディスペンサー31により、ベアICチップ23が実装された際にベアICチップ23のバンプ25に達しない程度の量だけ塗布される。次に、図2(b)に示すように、超音波を印加することができるピックアップノズル15により、半導体ウェハー16を個別に切り出して形成された個々のベアICチップ23が、インレット用基材21に塗布された第1接着剤41上に各々載置される。この結果、図2(c)に示すように、ベアICチップ23により第1接着剤41が押し潰され、このようにして押し潰されて拡げられた第1接着剤41により、ベアICチップ23がインレット用基材21上に固定される。その後、ピックアップノズル15がICチップ23に対して超音波を印加し、このことにより、ベアICチップ23のバンプ25とアンテナ22とが電気的に接合される。
【0029】
このように、本実施の形態によれば、ベアICチップ23がインレット用基材21上に載置されるよりも前に、第1接着剤41がインレット用基材21およびアンテナ22上に塗布される。このため、第1接着剤41として使用する接着剤を選ぶ際、インレット用基材21上に予めベアICチップ23を実装し、インレット用基材21とベアICチップ23との間に接着剤を注入する場合に比べて、第1接着剤41として、粘度が高く短時間に硬化する接着剤を使用することができる。このことにより、図2(a)から図2(c)に示す工程において、インレット用基材21上にベアICチップ23を短時間に固定することができる。
また、上述のように第1接着剤41は、ベアICチップ23が実装される際に、ベアICチップ23のバンプ25に達しない程度の量だけインレット用基材21およびアンテナ22上に塗布される。このため、インレット用基材21上にベアICチップ23を載置し、ピックアップノズル15によりベアICチップ23およびアンテナ22に対して超音波を印加する場合、第1接着剤41がベアICチップ23の上面に回り込むことがなく、従って、第1接着剤41がピックアップノズル15に付着することがない。このため、ピックアップノズル15に起因する工程不良が改善され、高い歩留まりでインレットシート26を製造することができる。
その後、上述のように、ピックアップノズル15がICチップ23に対して超音波を印加し、このことにより、ベアICチップ23のバンプ25とアンテナ22とが電気的に接合される。
【0030】
次に、図2(d)に示すように、インレット用基材21およびベアICチップ23に、第2接着剤42が、第2のディスペンサー32により、ベアICチップ23の上面全域および側面外周全域を覆うように塗布される。その後、図2(e)に示すように、UV照射機33により、塗布された第2接着剤42に紫外線が照射され、このことにより、第2接着剤42を硬化される。この結果、ベアICチップ23がインレット用基材21に強固に固定される。最後に、乾燥炉18により、塗布された第2接着剤42が加熱され乾燥され、このようにして、第2接着剤42がさらに硬化される。この結果、図2(f)に示すように、ベアICチップ23がインレット用基材21にさらに強固に固定される。
【0031】
このように、第2接着剤42がインレット用基材21およびベアICチップ23上に塗布されるので、第2接着剤42として使用する接着剤を選ぶ際、第1接着剤41と同様に、粘度が高く短時間に硬化する接着剤を使用することができる。この場合、接着剤を硬化させる装置は乾燥炉18のみでよく、このため装置構成を簡単化することができる。また、第2接着剤42はインレット用基材21およびベアICチップ23上に塗布されて外方へ露出するので、第2接着剤42として、紫外線により硬化する接着剤を使用することができる。このことにより、図2(d)から図2(f)に示す工程において、インレット用基材21上にベアICチップ23を短時間に実装することができる。
なお、第1接着剤41は、ベアICチップ23のバンプ25に達しない程度の少ない量だけ塗布され、ベアICチップ23のバンプ25とアンテナ22とを電気的に超音波接合する工程においては、上述の量だけ塗布された第1接着剤41により、ベアICチップ23をインレット用基材21に十分に固定保持することができる。その後の工程においては、第1接着剤41に加えて、更に第2接着剤42がインレット用基材21およびベアICチップ23上に塗布されるため、第1接着剤41および第2接着剤42により、ベアICチップ23をインレット用基材21により強固に固定することができる。
【0032】
上述のようにベアICチップ23がインレット用基材21上に実装されることで、インレットシート26が形成され、その後、インレットシート26は、対向する一対の基材送りローラー19、19の下流側に設けられている基材保持ローラー20a、20bを経て、基材巻取りロール14により巻き取られる。
【0033】
このように本実施の形態によれば、基材、例えばインレット用基材21にベアICチップ23が固定される工程において、ベアICチップ23がインレット用基材21上に載置されるよりも前に、第1接着剤41がインレット用基材21およびアンテナ22上に塗布される。このため、第1接着剤41として使用する接着剤を選ぶ際、粘度が高く短時間に硬化する接着剤を使用することができる。このことにより、短時間でベアICチップ23をインレット用基材21に固定することができ、従って、インレットシート26を効率良く製造することができる。
【0034】
また、本実施の形態によれば、インレット用基材21にベアICチップ23が固定される工程において、第1接着剤41は、ベアICチップ23のバンプ25に達しない程度の量だけインレット用基材21上に塗布される。このため、インレット用基材21上にベアICチップ23を載置し、ピックアップノズル15によりベアICチップ23およびアンテナ22に対して超音波を印加する場合、第1接着剤41がベアICチップ23の上面に回り込むことはなく、従って、第1接着剤41がピックアップノズル15に付着することがない。このことにより、ピックアップノズル15に起因する工程不良が改善され、高い歩留まりでインレットシート26を製造することができる。
【0035】
さらに、本実施の形態によれば、インレット用基材21上にベアICチップ23が載置され固定された後、第2接着剤42が、インレット用基材21およびベアICチップ23上に、ベアICチップ23の上面領域および側面外周全域を覆うように塗布される。このため、第2接着剤42として使用する接着剤を選ぶ際、粘度が高く短時間に硬化する接着剤を使用することができる。また、第2接着剤42はベアICチップ23の上面全域および側面外周全域を覆って外方へ塗布されるので、第2接着剤42として、紫外線により硬化する接着剤を使用することができる。このことにより、インレット用基材21上にベアICチップ23を短時間に実装することができ、従って、効率良くインレットシート26を製造することができる。
【0036】
次に、本願発明を比較例と比較して説明する。比較例として、図4に、インレット用基材21上に予めベアICチップ23が実装され、その後、インレット用基材21とベアICチップ23との間に接着剤24が注入される方法を示す。図4に示す方法では、インレット用基材21上に予めベアICチップ23が実装されているため、わずかな空隙にでも封入できるような粘度の低い接着剤24、例えば粘度が5000cps以下の接着剤24を用いる必要がある。また、粘度の低い接着剤24を選んだとしても、ベアICチップ23とインレット用基材21のアンテナ22との間のわずかな空隙に接着剤24を充填させるためには、長い時間が必要となる。更に、粘度の低い接着剤24は一般に硬化するまでの時間が長く、このため、ベアICチップ23の実装に要する時間が長くなり、従って、効率良くインレットシート26を製造することができない。
これに対して、上述のように本願発明によれば、ベアICチップ23がインレット用基材21上に載置されるよりも前に、第1接着剤41がインレット用基材21およびアンテナ22上に塗布される。このため、第1接着剤41として使用する接着剤を選ぶ際、粘度が高く短時間に硬化する接着剤を使用することができる。このことにより、短時間でベアICチップ23をインレット用基材21に固定することができ、従って、インレットシート26を効率良く製造することができる。
また、本願発明によれば、インレット用基材21上にベアICチップ23が載置され固定された後、第2接着剤42が、インレット用基材21およびベアICチップ23上に、ベアICチップ23の上面領域および側面外周全域を覆うように塗布される。このため、第2接着剤42として使用する接着剤を選ぶ際、粘度が高く短時間に硬化する接着剤を使用することができる。また、第2接着剤42はベアICチップ23の上面全域および側面外周全域を覆って外方へ塗布されるので、第2接着剤42として、紫外線により硬化する接着剤を使用することができる。このことにより、インレット用基材21上にベアICチップ23を短時間に実装することができ、従って、効率良くインレットシート26を製造することができる。
【0037】
なお、本実施の形態において、第2接着剤42がインレット用基材21およびベアICチップ23上に、ベアICチップ23の上面領域および側面外周全域を覆うように塗布される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第2接着剤42を、ベアICチップ23の少なくとも側面と基材21との間に塗布すればよい。このことにより、インレット用基材21上にベアICチップ23を短時間に実装することができ、従って、効率良くインレットシート26を製造することができる。
【0038】
また、本実施の形態において、第1接着剤41が第1のディスペンサー31によりインレット用基材21に塗布され、第2接着剤42が第2のディスペンサー32によりインレット用基材21に塗布される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、印刷、転写などの方法により、第1接着剤41または第2接着剤42をインレット用基材21に塗布してもよい。
【0039】
さらに、本実施の形態において、UV照射機33により第2接着剤42が硬化された後に、乾燥炉18により第2接着剤42が更に硬化された例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、乾燥炉18により第2接着剤42を硬化した後に、UV照射機33により第2接着剤42を更に硬化してもよい。また、UV照射機33若しくは乾燥炉18のうちのどちらか一方のみにより、第2接着剤42を硬化させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、本発明の実施の形態におけるベアICチップ実装装置を示す図。
【図2】図2は、本発明の実施の形態において、ベアICチップを基材に実装する様子を示す図。
【図3】図3は、本発明の実施の形態において、ベアICチップが搭載された非接触ICカードを示す断面を示す図。
【図4】図4は、ベアICチップの実装に要する時間が長い比較例を示す図。
【符号の説明】
【0041】
10 実装装置
11 基材供給ロール
12 基材送りローラー
13a 基材保持ローラー
13b 基材保持ローラー
14 基材巻取りロール
15 ピックアップノズル
16 半導体ウェハー
17 ディスペンサー
18 乾燥炉
19 基材送りローラー
20a 基材保持ローラー
20b 基材保持ローラー
21 イントレット用基材
22 アンテナ
23 ベアICチップ
24 接着剤
25 バンプ
26 インレットシート
31 第1のディスペンサー
32 第2のディスペンサー
33 UV照射機
41 第1接着剤
42 第2接着剤
45 制御装置
50 非接触ICカード
51 表面側基材
52 ホットメルト
53 ホットメルト
54 裏面側基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の配線部が設けられた基材に対して、複数のバンプを有するベアICチップをバンプが配線部側を向くよう実装して電子回路基板を製造する電子回路基板の製造方法において、
予め多数の配線部が取り付けられた基材を準備する工程と、
基材上のうちベアICチップが実装される位置に、ベアICチップのバンブに達しない程度の量の第1接着材を塗布する工程と、
基材の第1接着剤上にベアICチップを搭載し、超音波接合により各配線部に対応するICチップのバンプを接合する工程と、
各ベアICチップの少なくとも側面と基材との間に第2接着剤を塗布する工程と、を備えたことを特徴とする電子回路基板の製造方法。
【請求項2】
第1接着剤は熱硬化性接着剤であり、
第2接着剤は熱硬化性接着剤またはUV硬化接着剤であることを特徴とする請求項1に記載の電子回路基板の製造方法。
【請求項3】
第2接着剤は、ベアICチップの上面全域および側面外周全域を覆うように塗布されることを特徴とする請求項1に記載の電子回路基板の製造方法。
【請求項4】
配線部は、基材に設けられたアンテナからなり、
基材は、アンテナが取り付けられたインレット用基材からなることを特徴とする請求項1に記載の電子回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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