説明

電子回路用基板

【課題】メイン基板にサブ基板を取り付ける電子回路用基板の加工方法において、基板の加工にルーターを用いた場合でも、基板外形のコーナー及び挿入孔のコーナーに円弧を形成することなしに、メイン基板にサブ基板を精度良く取り付けることが可能な電子回路用基板及びその加工方法を提供すること。
【解決手段】サブ基板2は、該サブ基板2の一辺の一部から延設された突起部を有し、前記突起部の側面と、前記サブ基板2の一辺と交差するコーナーの位置からサブ基板の一辺に沿って切り欠き部5を有するように、回転工具であるルーターで加工し、メイン基板10は、サブ基板2を挿入するための挿入孔11を有し、該挿入孔11は、前記サブ基板2の突起部の長さ及び厚みに相当する角穴と前記角穴のコーナーから角穴の長辺に沿って切り込み部12を有するように、回転工具であるルーターで加工するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メイン基板にサブ基板を取り付ける電子回路用基板及びその加工方法に関し、特に、メイン基板にサブ基板を精度良く取り付けることが可能な電子回路用基板及びその加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メイン基板にサブ基板を取り付けるには、メイン基板にサブ基板を挿入する穴を設け、また、サブ基板には差込脚部を設け、メイン基板の穴に差込脚部を挿入している。差込脚部には、端子用のパターンが設けられており、サブ基板をメイン基板に組み込み後、差込脚部の端子用のパターンとメイン基板のパターンとを半田接合して電子回路用基板を構成するようにしている。
【0003】
メイン基板にサブ基板を取り付ける構造に関しては、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1によれば、サブ基板の取付け部に弾性部を設けるとともに、弾性部の弾性により取付け部がメイン基板に設けた穴部の周囲に押し付けられるように、穴部の長さを設定する。これにより、サブ基板をメイン基板に立てた状態で取り付ける際のサブ基板の傾きを防止するようにしたものである。
【0004】
また、特許文献2には、メイン基板にサブ基板を組み込んで半田付けを行う際に、溶融半田からサブ基板としての金属絶縁基板に伝わる伝熱量を最小限に抑えるべく、サブ基板の端部の形状を舌片状の差込脚部を設けた複合形混成集積回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−304044号公報
【特許文献2】特開平5−48262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
メイン基板上にサブ基板を挿入するための挿入孔を設けて、メイン基板上にサブ基板を組み込む電子回路用基板では、サブ基板のメイン基板の挿入孔に組み込まれる差込脚部の加工状態及びメイン基板の挿入孔の形状及び加工の精度が重要となる。基板の差込脚部等の外形加工及び挿入孔の加工に金型を用いる場合には、基板の外形及び挿入孔のコーナーは直角、又はそれに近い形状に加工するのは可能であり、また、高い加工精度を維持することもできる。
【0007】
しかしながら、電子部品等を実装する基板の試作、基板の少量生産等では、金型を使用せずにルーターを用いて、基板の外形加工及び基板上の挿入孔(挿入穴)の加工が行われる。ルーターは、先端のドリルを回転させて基板を加工する工具であり、多様な加工が可能であり、また、汎用性に優れており基板の試作、基板の少量生産に適している。
【0008】
図8は、ルーターによる加工の例を示す図であり、(a)はサブ基板の加工、(b)はメイン基板上の挿入穴の加工の例を示す図である。ルーターによる基板の加工では、ルーターの先端に取り付けたドリルを回転させて基板の加工を行うため、基板の外形のコーナー、挿入穴等、本来、直角又はそれに近い形状に加工しなければならない箇所でも、ルーターのドリルによって円弧状になってしまうことがある。例えば、図8(a)に示すように、サブ基板30の外形における点線の円で示すコーナーでは円弧状に加工されている。また、図8(b)に示すように、メイン基板40の挿入穴41の形状は、角穴ではなく長穴であり、挿入穴41における点線の円で示す両端部分は、円弧状に加工されている。
【0009】
このため、円弧が障害となりサブ基板がメイン基板に挿入出来ない等の問題が発生していた。例えば、図8(b)に示すメイン基板40に挿入穴41を介して図8(a)に示すサブ基板30を取り付けると、メイン基板40及びサブ基板30の点線の円で示す円弧の個所が干渉して、サブ基板30が取り付けられなかったり、メイン基板40の挿入穴41の端面が潰れたり、変形してサブ基板30の取り付けの位置精度が低下したりしていた。
【0010】
また、円弧が付くことを前提としてメイン基板40の挿入穴41の長さを長くしたり、サブ基板30の挿入部分の長さを調整しても、メイン基板40とサブ基板30の取り付け部分は円弧同士の組み合わせとなり、このため、円弧上での接触する位置が一定せず、また、メイン基板40とサブ基板30の位置ずれなどの問題が発生していた。
【0011】
このように、ルーターによる従来の加工では、基板の外形のコーナー、挿入穴を直角又はそれに近い形状に加工することが難しいため、メイン基板にサブ基板を取り付ける際の円弧同士の干渉等による接触部分の変形、サブ基板の位置ずれ等の問題が発生していた。
【0012】
そこで本発明は、基板の加工にルーターを用いた場合でも、基板の外形のコーナー及び挿入穴のコーナーに形成されていた円弧をコーナー以外の位置に設けるようにして、基板の外形のコーナー及び挿入穴のコーナーに円弧を形成することなしに、メイン基板にサブ基板を精度良く取り付けることが可能な電子回路用基板及びその加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目標達成のため、本発明の電子回路用基板は、メイン基板にサブ基板を取り付ける電子回路用基板において、前記サブ基板は、該サブ基板から延設された突起部を有し、前記突起部の側面と、前記サブ基板の一側面と交差するコーナーの位置から前記サブ基板の一側面に沿って形成されている切り欠き部を有し、前記メイン基板は、前記サブ基板を挿入するための挿入孔を有し、該挿入孔は、前記サブ基板の突起部の長さ及び厚みに相当する角穴と、該角穴のコーナーに設けられた切り込み部を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の電子回路用基板の前記サブ基板の切り欠き部は、円弧状に形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の電子回路用基板の前記メイン基板の切り込み部は、前記角穴の長辺に対して略垂直方向に円弧状に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電子回路用基板のサブ基板の外形及びメイン基板の挿入孔の加工にルーターを使用した場合でも、従来基板の外形及び挿入穴のコーナーに形成されていた円弧を、コーナー以外の位置に設けるようにして、メイン基板の挿入孔でのサブ基板との接触する個所を直線的に保つようにしたことにより、サブ基板の位置ズレ等の発生を防止し、サブ基板をメイン基板の所定の位置に精度良く取り付けることができる。
【0017】
また、基板の試作、少量の基板生産では、基板の外形及び挿入孔の加工を行うための金型を必要としないため、金型の製作が不要となり、基板を安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は、本発明による電子回路用基板の斜視図であり、(b)は、(a)に示す点線の円内を拡大した図である。
【図2】本発明による電子回路用基板のサブ基板の表面を示す図である。
【図3】本発明による電子回路用基板のサブ基板の突起部のコーナー付近を拡大した図である。
【図4】ルーター加工によるサブ基板の切り欠き部の形成の工程を示す図であり、(a)は、ルーターの加工用ドリルをサブ基板本体部の一辺での突起部を形成する位置まで移動させて、サブ基板を切り欠く工程を示し、(b)は、加工すべき突起部の側面でルーターの加工用ドリルの中心をサブ基板本体部の一辺まで移動させて、切り欠く工程を示し、(c)は、ルーターで加工された切り欠き部を示す図である。
【図5】本発明による電子回路用基板のメイン基板の表面を示す図である。
【図6】本発明による電子回路用基板のメイン基板の挿入孔の一部を拡大した図である。
【図7】ルーター加工によるメイン基板の切り込み部の形成の工程を示す図であり、(a)は、ルーターの加工用ドリル移動させて、メイン基板の挿入孔を設ける位置に、長穴を設ける工程を示し、(b)は、挿入孔の一方の側面からルーターの加工用ドリルの中心を挿入孔の幅hの1/2に相当する量を上方に、h/2に相当する量を下方に移動させる工程を示し、(c)は、ルーターで加工された切り込み部を示す図である。
【図8】ルーターによる従来の加工例を示す図であり、(a)はサブ基板の加工、(b)はメイン基板上の挿入穴の加工の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下図面を参照して、本発明による電子回路用基板及びその加工方法を実施するための形態について説明する。なお、本発明による電子回路用基板及びその加工方法は、基板の加工にルーターを用いた場合でも、基板の外形及び挿入穴のコーナーに形成されていた円弧をコーナー以外の位置に設けるようにして、基板の外形のコーナー及び挿入孔のコーナーに円弧を形成することなしに、メイン基板にサブ基板を精度良く取り付けることができるようにしたものである。
【0020】
図1(a)は、本発明による電子回路用基板の斜視図であり、図1(b)は、図1(a)に示す点線の円内を拡大した図である。図2は、本発明による電子回路用基板のサブ基板の表面を示す図、図3は、本発明による電子回路用基板のサブ基板の突起部のコーナー付近を拡大した図である。
【0021】
[電子回路用基板の概要]
図1(a)に示すように、電子回路用基板1は、メイン基板10とサブ基板2から構成されており、メイン基板10にサブ基板2を垂直に取り付けた構造となっている。尚、図1(a)に示す電子回路用基板1は、メイン基板10に電子部品14a、及びサブ基板2に電子部品14bを実装し、メイン基板10の筐体等に取り付けるための取付穴を省略しており、説明に必要な基板の構成を例示したものである。電子回路用基板1の構成は、この例示に限定されるものではない。
【0022】
電子回路用基板1のサブ基板2は、メイン基板10に設けられている挿入孔11(図5に示す)を介して取り付けられており、また、メイン基板10と電気的に接続することも可能である。すなわち、サブ基板2の突起部4(図2に示す)をメイン基板10の挿入孔11に挿入して、その後、サブ基板2の突起部4に設けられたランドとメイン基板10の挿入孔11の周囲に設けられているランドとを半田付けして、メイン基板10とサブ基板2とが電気的に接続することも可能である。
【0023】
図1(b)は、図1(a)に示す点線の円内を拡大した図である。図1(b)に示すように、サブ基板2とメイン基板10とが結合し、接触している個所の近傍に、サブ基板2には切り欠き部5が設けられており、メイン基板10には切り込み部12が設けられている。尚、サブ基板2の切り欠き部5及びメイン基板10の切り込み部12に関する詳細は、後述する。
【0024】
[サブ基板の切り欠き部]
最初に、電子回路用基板のサブ基板について図2及び図3を用いて説明する。サブ基板2は、電子部品を実装し、メイン基板10に組み込むものであり、絶縁部材としてのガラスエポキシ樹脂材等からなる。また、図2に示すように、サブ基板2は、電子部品等を実装するサブ基板本体部3と、メイン基板10(図5に示す)と結合するための突起部4を有している。サブ基板本体部3の表面及び裏面には、配線パターン(図示せず)、スルーホール(図示せず)、電子部品の実装用のホール(図示せず)、ランド(図示せず)等が設けられている。
【0025】
突起部4は、サブ基板本体部3の一辺の一部から延設されて設けられており、長方形の形状を有している。尚、図2に示すように、突起部4の片面又は両面には、メイン基板10と電気的に接続するための接続端子4aを設けることも可能である。接続端子4aを設けることにより、サブ基板2は、突起部4の接続端子4aを介して、メイン基板10からの電源の供給を受け、また、メイン基板10への信号の受け渡しを行うことが可能となる。
【0026】
図2に示すように、サブ基板2は、突起部4の両端面cと、サブ基板本体部3の突起部4を有する端面bを結んだ仮想の直線(図2に点線で示す直線)とが交差するコーナーの位置(図2に示すa)からサブ基板本体部3の端面bに沿って円弧状の切り欠き部5を有している。突起部4の両端面cは、サブ基板本体部3の一辺の両端を結んだ仮想の直線に対して垂直に、かつ直線状に形成されている。これにより、突起部4は、メイン基板10の挿入孔11(図5に示す)に対して図2に示すaの位置まで確実に挿入することができる。
【0027】
図3は、図2に示すサブ基板の点線の円で示す突起部のコーナー付近を拡大した図である。図3に示すように、切り欠き部5の形状は円弧を成している。図3に示す切り欠き部5の深さeは、サブ基板本体部3の部品配置や配線パターン領域をなるべく減少しないように、基板の加工に用いるルーターの加工用ドリル22(図4に示す)の半径の1倍から2倍が好適である。また、切り欠き部5の長さである切り欠き長さfは、基板の加工に用いるルーターの加工用ドリル22(図4に示す)の半径の2倍から4倍が好適である。
【0028】
[切り欠き部の加工]
次に、ルーターによるサブ基板の切り欠き部の形成工程について説明する。サブ基板2の切り欠き部の形成は、ルーターを用いて行う。ルーターを用いたサブ基板の加工では、ルーター又はサブ基板を固定し、ルーターを固定した場合には、サブ基板をXY軸の2次元に移動可能に構成し、サブ基板を固定した場合には、ルーターをXY軸の2次元に移動可能に構成するようにする。また、ルーターは上下方向(Z軸)に移動可能に構成する。
【0029】
図4は、ルーター加工によるサブ基板の切り欠き部の形成の工程を示す図である。尚、
図4に示す斜線は、サブ基板2の基板であり、サブ基板上の点線はルーターによる加工の経路、実線はルーターにより加工された個所をそれぞれ示す。
【0030】
図4(a)に示すように、最初に、矢印で示すように、ルーターの加工用ドリル22をサブ基板本体部3の一辺での突起部を形成する位置まで移動させて、サブ基板2を切り欠く。これにより、図2に示すサブ基板本体部3のbからaまでの辺が形成される。その後、図4(b)に示すように、加工すべき突起部4の側面を矢印で示すように、ルーターの加工用ドリル22の中心をサブ基板本体部3の一辺まで移動させて、切り欠くようにする。これにより、図2に示すcからaまでの突起部4の端面及び切り欠き部5が形成される。以上により、図4(c)に示すように、ルーターの加工用ドリル22の半径の円弧状の切り欠き部5が形成される。同様に、サブ基板本体部3の一辺に他の切り欠き部5を形成する。
【0031】
図4に示す加工においては、ルーターにより形成される切り欠き部5の深さe(図3に示す)は、加工用ドリル22の半径の大きさと同一であり、切り欠き部5の切り欠き長さf(図3に示す)は、加工用ドリル22の半径の2倍の大きさを有している。尚、サブ基板2の切り欠き部5の形成は、加工すべき突起部4の側面に沿ってルーターの加工用ドリル22の中心をサブ基板本体部3の一辺まで移動させて、切り欠き、その後、加工用ドリル22をサブ基板本体部3の一辺での突起部を形成する位置まで移動させて、切り欠くようにしてもよい。
【0032】
従来のルーターによる基板の外形加工では、直角又はそれに近い形状に加工しなければならない箇所でも、図8に示すように、ルーターで使用するドリルの円弧が付いてしまい、このため、円弧が障害になりサブ基板のメイン基板への挿入位置が安定しなかった。
【0033】
本発明の加工方法により、従来突起部のコーナーに形成されていた円弧を、コーナー以外の位置に設けるようにしたことにより、コーナーに円弧を形成する必要がなくなる。
【0034】
このため、本発明の電子回路用基板のサブ基板は、突起部の両端がサブ基板の一辺まで直線状に形成することができるため、サブ基板のメイン基板への挿入位置が一定となり、メイン基板は、常に安定した挿入位置を確保できる。
【0035】
[メイン基板の切り込み部]
次に、サブ基板を取り付ける電子回路用基板のメイン基板について説明する。図5は、本発明による電子回路用基板のメイン基板の表面を示す図である。図6は、本発明による電子回路用基板のメイン基板の挿入孔の一部を拡大した図である。メイン基板10は、電子部品、サブ基板等を組み込んで電子回路用基板1(図1に示す)を構成するものである。メイン基板10は、絶縁部材としてのガラスエポキシ樹脂材等からなり、図5に示すように、メイン基板10の表面及び裏面には、サブ基板を挿入して取り付けるための挿入孔11、スルーホール(図示せず)、配線パターン(図示せず)等が設けられている。メイン基板10の挿入孔11は、基板を貫通した状態で設けられている。
【0036】
また、図5に示すように、メイン基板10の裏面の挿入孔11の周囲に、サブ基板と電気的に接続するための点線で示すランド15を設けることも可能である。メイン基板10にランド15を設けることにより、サブ基板2の突起部4に設けた接続端子4a(図2に示す)を介して、サブ基板への電源の供給、信号の受け渡しを行うことができる。
【0037】
図5に示すように、メイン基板10の挿入孔11は上面視において、サブ基板の突起部4の長さ及び厚みに相当する角穴11aと、角穴11aのコーナーから角穴11aの長辺に沿って形成されている切り込み部12を有している。角穴11aは、サブ基板の突起部4の長さに相当する長さwを有し、突起部4の厚みに相当する幅hを有している。また、切り込み部12は、角穴11aのコーナーから角穴11aの長辺に対して略垂直方向に円弧状に形成されている。
【0038】
図6は、図5に示すメイン基板の点線の円で示す挿入孔の一部を拡大した図である。図6に示すように、切り込み部12の形状は円弧を成している。図6に示す切り込み部12の深さjは、メイン基板10の部品配置や配線パターン領域をなるべく減少しないように、基板の加工に用いるルーターの加工用ドリル22(図7に示す)の半径の1倍から2倍が好適である。また、切り込み部12の長さである切り込み長さgは、基板の加工に用いるルーターの加工用ドリル22(図7に示す)の半径の2倍から4倍が好適である。
【0039】
このように、メイン基板10の挿入孔11は、角穴11a(長方形)と角穴11aのコーナーから角穴11aの長辺に対して略垂直方向に設けられ円弧状の形状を成す切り込み部12からなる。
【0040】
[切り込み部の加工]
次に、ルーターによるメイン基板10の切り込み部12の形成工程について図7を用いて説明する。メイン基板10の切り込み部12の形成は、ルーターを用いて行う。ルーターを用いたメイン基板の加工では、ルーター又はメイン基板を固定し、ルーターを固定した場合には、メイン基板をXY軸の2次元に移動可能に構成し、メイン基板を固定した場合には、ルーターをXY軸の2次元に移動可能に構成するようにする。また、ルーターは上下方向(Z軸)に移動可能に構成する。
【0041】
図7は、ルーター加工によるメイン基板の切り込み部の形成の工程を示す図である。尚、図7に示す斜線は、メイン基板10の基板であり、メイン基板上の点線はルーターによる加工の経路、実線はルーターにより加工された個所をそれぞれ示す。メイン基板10の挿入孔11をルーターを用いる加工は、最初に、図7(a)に示すように、ルーターの加工用ドリル22を矢印の方向に移動させて、メイン基板10の挿入孔11を設ける位置に、図5に示す長さw、幅hに相当する長穴を設ける。尚、長穴は、図8に示す挿入穴41と同様の形状を有している。この時に形成される挿入孔の両端は、円弧状に形成される。その後、図7(b)に示すように、挿入孔11の一方の側面からルーターの加工用ドリル22の中心を挿入孔11の幅h(図5に示す)の1/2に相当する量を上方に、h/2に相当する量を下方に矢印で示すように移動させる。これにより、図7(c)に示すように、ルーターの加工用ドリル22の半径の円弧状の切り込み部12が挿入孔11両端の上下に形成される。同様に、挿入孔11の他方の側面に切り込み部12を形成する。これにより、メイン基板10の挿入孔11の両端は、切り込み部12を挟んで直線的に形成される。
【0042】
図7に示す加工においては、ルーターにより形成される切り込み部12の深さj(図6に示す)は、加工用ドリル22の半径の大きさと同一であり、切り込み部12の切り込み長さg(図6に示す)は、加工用ドリル22の半径の2倍の大きさを有している。
【0043】
従来のルーターによる基板の穴加工では、直角又はそれに近い形状に加工しなければならない箇所でも、ルーターで使用するドリルの円弧が付いてしまい、このため、円弧が障害になりサブ基板のメイン基板への挿入位置が安定しなかった。
【0044】
本発明の加工方法により、従来挿入孔のコーナーに形成された円弧を、コーナー以外の位置に設けるようにしたことにより、コーナーに円弧を形成する必要がなくなり、メイン基板の挿入孔におけるサブ基板の突起部4の両端と接触する端面が、直線状に形成される。このため、サブ基板との干渉が無くなり、サブ基板の挿入位置が一定となり、常に安定したサブ基板の挿入位置を確保できる。
【0045】
[電子回路用基板の組み立て]
次に、サブ基板、メイン基板の加工後に、各基板に電子部品等を実装して、その後、図1に示すように、メイン基板に挿入孔を介してサブ基板を取り付ける。サブ基板をメイン基板に取り付け後、メイン基板の裏面を半田リフローして、半田付けを行う。半田付けによりメイン基板の挿入孔の周囲に設けられているランドとサブ基板の端子用パターンが半田によって接合される。尚、半田付けの工程では、サブ基板の突起部はメイン基板の挿入孔と密着しているので、サブ基板が傾いたり、位置ずれを起こすことなく安定した姿勢を保つことができる。これにより、半田付けが均一に行われる。
【0046】
以上述べたように、本発明によれば、電子回路用基板のサブ基板の外形及びメイン基板の挿入孔の加工にルーターを使用した場合でも、従来基板の外形及び挿入穴のコーナーに形成されていた円弧を、コーナー以外の位置に設けるようにして、メイン基板の挿入孔でのサブ基板との接触する個所を直線的に保つようにしたことにより、サブ基板の位置ズレ等の発生を防止し、サブ基板をメイン基板の所定の位置に精度良く取り付けることができる。
【0047】
また、基板の試作、少量の基板生産では、基板の外形及び挿入孔の加工を行うための金型を必要としないため、金型の製作が不要となり、基板を安価に製造することができる。
【0048】
尚、本発明は、電子回路用基板のサブ基板及びメイン基板の加工に、ルーターを使用した実施形態について説明したが、ルーターに限らず他の加工機器であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 電子回路用基板
2、30 サブ基板
3 サブ基板本体部
4 突起部
4a 接続端子
5 切り欠き部
10、40 メイン基板
11 挿入孔
11a 角穴
12 切り込み部
15 ランド
20 半田
22 加工用ドリル
41 挿入穴(挿入孔)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メイン基板にサブ基板を取り付ける電子回路用基板において、前記サブ基板は、該サブ基板から延設された突起部を有し、前記突起部の側面と、前記サブ基板の一側面が交差するコーナーの位置から前記サブ基板の一側面に沿って形成されている切り欠き部を有し、
前記メイン基板は、前記サブ基板を挿入するための挿入孔を有し、該挿入孔は、前記サブ基板の突起部の長さ及び厚みに相当する角穴と、該角穴のコーナーに設けられた切り込み部を有することを特徴とする電子回路用基板。
【請求項2】
前記サブ基板の切り欠き部は、円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子回路用基板。
【請求項3】
前記メイン基板の切り込み部は、前記角穴の長辺に対して略垂直方向に円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子回路用基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−253835(P2011−253835A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124535(P2010−124535)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(390013723)TDKラムダ株式会社 (272)
【Fターム(参考)】