説明

電子回路装置

【課題】本発明は、各回路部品となる回路装置をフローソルダ法によって半田付けする際の設定が容易となる電子回路装置を提供することを目的とする。
【解決手段】アナログ回路装置2、インバータ回路装置3、及びジャック4のいずれにおいても、そのプリント回路基板102の幅a及び禁止帯110a,110c間の距離bの値を等しくすることで、プリント回路基板102への半田付けにおける設定を簡単化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田ディップ槽によって半田付けが行われるプリント回路基板による電装部品により構成される電子回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回路素子が搭載されるプリント回路基板は、回路構成に応じた回路素子間の電気的な接続を行う導体パターンが形成されるとともに、回路素子の搭載部分には回路素子の端子位置に対応したランドを備える。そして、回路素子をプリント回路基板に搭載する際、回路素子の端子をランドに設置するとともに、端子とランドの間を半田付けすることによって、プリント回路基板上に搭載される回路素子を固定し、導体パターンとの電気的な接続を行う。
【0003】
この回路素子の搭載されたプリント回路基板の半田付け方法として、溶融半田を収容した半田ディップ槽を用いた半田ディップ法が使用されている。この半田ディップ法の一つとして、プリント回路基板を半田ディップ槽内の溶融半田の液面に配置して半田付けを行うフローソルダ方式がある(特許文献1参照)。このフローホルダ方式を用いた半田付けを行う際の、半田ディップ槽とプリント回路基板の関係の概要を、図3(a)に示す。
【0004】
図3(a)の断面図に示すように、半田ディップ槽100に収容された溶融半田101の液面に対して、プリント回路基板102の裏面が接触させて、ランドに設けられた半田溜まりに溶融半田を供給して、回路素子の端子をランドに半田付けする。この半田ディップ槽100では、所定の温度を維持管理できる熱源によって溶融した溶融半田101が、連続して流れ且つ循環している。そして、このように半田ディップ槽100内で循環している溶融半田101に、プリント回路基板102を接触させながら連続して通過させるため、プリント回路基板102の両側面を挟みこんで搬送する溝形状のレール103a,103bによる搬送機構を備える。
【0005】
この図3(a)のように、レール103a,103bによって両側面が固定されたプリント回路基板102が半田ディップ槽100上を通過するように搬送させる場合、プリント回路基板102では、その断面において、両側面の2点位置で支持されることとなる。このため、プリント回路基板102では、溶融半田101に接触する裏面と反対側の表面に各回路部品が搭載されるが、この搭載された回路部品及びプリント回路基板102の自重によって、その中央位置が両側面よりも位置がさがるように撓むことがある。この撓みが原因となり、プリント回路基板102の中央位置において、図3(b)の断面に示すように、基板表面まで溶融半田101に浸かってしまい、結果、基板表面に搭載される回路素子に対して溶融半田101による半田タッチが生じることがある。
【0006】
よって、半田ディップ槽100を通過させるときに、搬送機構であるレール103a,103bの2点支持による、図3(b)のようなプリント回路基板102に生じる撓みを生じさせるのを防ぐ必要がある。そのため、図3(c)のように、半田ディップ槽100には、プリント回路基板102の裏面に接触させて支持する支持機構104を設け、レール103a,103bと支持機構104とによって、プリント回路基板102を3点支持することで、プリント回路基板102の撓みを防いでいる。
【0007】
このように、図3(c)に示すようにして、プリント回路基板上に回路素子をフローソルダ法によって半田付けした場合、レール103a,103b及び支持機構104で支持される。そのため、図4に示すように、プリント回路基板102には、レール103a,103b及び支持機構104が当接する部分については、半田不可能となる禁止帯110a〜110cが形成されることとなる。
【0008】
そして、半田ディップ槽を用いたフローソルド法によって、回路素子がプリント回路基板に半田付けされることで、プリント回路基板上に固定されるとともに配線パターンとの電気的な接続がなされて、電子機器の電装部品となる電子回路装置を構成するための回路部品となる回路装置が構成される。例えば、冷陰極ランプの駆動装置が構成されるとき、図5(a)に示すように、駆動装置の各回路部品を制御するためにデジタル処理を行うデジタル回路装置201と、デジタル回路装置201で処理された信号によって変圧動作などのアナログ処理を行うアナログ回路装置202と、アナログ回路装置202によって変圧処理された電圧により発振動作を行って冷陰極ランプに電力供給するインバータ回路装置203とを備える。
【0009】
そして、この駆動装置において、アナログ回路装置202及びインバータ回路装置203が、上述のフローソルド法によって、各回路素子がプリント回路基板上に半田付けされることによって構成される。又、上述のデジタル回路装置201、アナログ回路装置202、及びインバータ回路装置203が主要基板200上に設置されることによって、駆動装置が構成される。更に、主要基板200の裏面側には、外部から供給される電源入力や冷陰極ランプに対して発振電圧を供給出力するための端子を備えたジャックが設けられる。
【特許文献1】特開平8−307019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、プリント回路基板に回路素子が半田付けされて構成される回路装置を、回路部品として主要基板上に配置することによって、一つの電装部品となる電子回路装置が構成される。しかしながら、図4に示したように、各回路部品となる回路装置において、禁止帯110a〜110cが、半田ディップ槽に対して搬送される方向であるディップ方向(図4の矢印Aによる方向)に平行となるように形成される。そのため、この禁止帯110a〜110cに回路素子の端子が設置されないように、回路素子の搭載を行う必要がある。
【0011】
更に、禁止帯110a,110bはレール103a,103bに対応した位置にあるため、プリント回路基板102の両側面近傍の固定された位置に形成されるが、禁止帯110cについては、各回路部品における設計の違いやプリント回路基板102の大きさの違いにより、その位置が異なることがある。即ち、同じ電子回路装置内に設けられる異なる回路部品の回路装置について、禁止帯110a,110cとの距離bが異なることがある。又、プリント回路基板102のディップ方向に対して垂直な方向の幅aについても、異なる幅となることがある。
【0012】
このように、異なる種類の回路部品を構成する回路装置によって、プリント回路基板102の幅a及び禁止帯110a,110cの距離bが異なるため、例えば、図5(a)のような駆動装置を構成するアナログ回路装置202及びインバータ回路装置203において、図5(b)に示すように、それぞれのプリント回路基板102a,102bにおいて、その幅がa1,a2と異なるとともに、禁止帯110a,110cの距離がb1,b2と異なることがある。
【0013】
このように、一つの電子回路装置を構成するための各回路部品において、プリント回路基板102の幅a及び禁止帯110a,110cの距離bが異なるものとなる。そのため、回路素子をプリント回路基板102上にフローソルダ法で半田付けして各回路部品を構成する際、作業者は、その回路部品の種類に応じて、プリント回路基板102の幅a及び禁止帯110a,110cの距離bに対応して、レール103a,103bの位置を設定する必要がある。そのため、一つの電子回路装置を製造する際において、複数種類の回路部品に対して半田付け工程を行う場合、各種の回路部品毎に、作業者がレール103a,103bの位置を設定することで、その作業が繁雑なものとなるだけでなく、設定時間を設ける必要があり製造工程にかかる時間が長くなる。
【0014】
このような問題を鑑みて、本発明は、各回路部品となる回路装置をフローソルダ法によって半田付けする際の設定が容易となる電子回路装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の回路部品によって構成されるとともに、プリント回路基板上に回路素子が半田ディップ槽の溶融半田によって半田付けされて固定されることで一部の前記回路部品が構成される電子回路装置において、前記プリント回路基板上に前記回路素子が半田付けされて構成される前記回路部品を第1回路部品とし、当該第1回路部品それぞれの前記プリント回路基板全てにおいて、前記半田ディップ槽上を搬送されるディップ方向に対して垂直な基板幅が等しいとともに、前記ディップ方向と平行となる帯状の半田不可能な禁止帯の配置位置が等しいことを特徴とする。
【0016】
そして、前記禁止帯が、前記プリント回路基板に対して半田付けを行う際に前記半田ディップ槽において前記プリント回路基板を支持する支持機構に当接する部分に形成される。
【0017】
又、その表面に前記第1回路部品を含む前記回路部品が配置される主要基板を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、電子回路装置を構成する各回路部品のプリント回路基板において、その幅と禁止帯の配置位置を等しいものとすることによって、半田ディップ槽による半田付けを行うときに、プリント回路基板の位置設定作業を簡単化することができる。即ち、半田ディップ槽による半田付けを行うときにプリント回路基板を搬送する搬送機構に対して、搬送機構によってプリント回路基板を支持する位置を、回路部品毎に変更する必要がなくなる。そのため、その作業の繁雑さを解消することができるとともに、回路部品毎に設定変更する作業時間が不要となり、半田ディップ槽による半田付け作業にかかる作業時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、以下では、電子回路装置として、冷陰極ランプの駆動装置を例に挙げて、各構成の特徴について説明する。図1は、本実施形態における電子回路装置となる、冷陰極ランプの駆動装置を構成する各回路部品のレイアウト状態を示すブロック図である。
【0020】
図1に示す駆動装置は、駆動装置の各回路部品を制御するためにデジタル処理を行うデジタル回路装置1と、デジタル回路装置1で処理された信号によって変圧動作などのアナログ処理を行うアナログ回路装置2と、アナログ回路装置2によって変圧処理された電圧により発振動作を行って冷陰極ランプに電力供給するインバータ回路装置3と、外部からアナログ回路装置2に供給される電源の入力や冷陰極ランプに対してインバータ回路装置3で生成した発振電圧を供給出力するための端子を備えたジャック4と、各回路装置が設置される主要基板5と、を備える。
【0021】
即ち、マイコンなどのデジタル回路装置1と、各アナログ回路素子などによって構成されるアナログ回路装置2、インバータ回路装置3、及びジャック4とが、主要基板5の表面上に設置されて、駆動装置が構成される。そして、アナログ回路装置2、インバータ回路装置3、及びジャック4は、各回路部品を構成するための回路素子が、その端子がプリント回路基板102のランドに半田付けされることで、プリント回路基板102に設けられた配線パターンと回路素子とが電気的に接続されるように固定され、駆動回路の回路部品として構成される。
【0022】
又、アナログ回路装置2、インバータ回路装置3、及びジャック4を構成するために、各回路部品を構成する回路素子の半田付けを行う方法として、図3(c)のような半田ディップ槽100を用いたフローソルダ法が用いられる。よって、本実施形態でも、図4に示すように、プリント回路基板102には、レール103a,103b及び支持機構104が当接する部分については、半田不可能となる禁止帯110a〜110cが形成される。
【0023】
本実施形態では、アナログ回路装置2、インバータ回路装置3、及びジャック4それぞれを構成するための回路素子が設置されるプリント回路基板102が、図2に示すような構成となる。即ち、アナログ回路装置2、インバータ回路装置3、及びジャック4を構成するためのいずれのプリント回路基板102においても、図4で示すプリント回路基板102の幅a及び禁止帯110a,110c間の距離bを同一とする。
【0024】
このように、アナログ回路装置2、インバータ回路装置3、及びジャック4のいずれにおいても、そのプリント回路基板102の幅a及び禁止帯110a,110c間の距離bの値を等しくすることができる。これにより、それぞれの回路部品を構成するために半田付けを行う際、図3(c)のような装置において、従来のように、それぞれの回路部品毎に、プリント回路基板102の幅及び禁止帯100cの位置に合わせて、レール103a,103bの位置を変更設定する必要がなくなる。
【0025】
即ち、アナログ回路装置2、インバータ回路装置3、及びジャック4のいずれにおいても、その回路部品を形成するために、図3(c)のような装置によって、プリント回路基板102上に回路素子を半田付けする際、全ての回路部品で等しいものとした図4で示すプリント回路基板102の幅a及び禁止帯110a,110c間の距離bに対して、レール103a,103bの位置を一度合わせるだけでよい。よって、作業者は、アナログ回路装置2、インバータ回路装置3、及びジャック4のそれぞれに対して、レール103a,103bの位置合わせを行う必要がなくなるため、作業が簡単化するとともに、位置設定にかかる作業時間だけ、作業工程にかかる時間を短縮することができる。
【0026】
このように、幅a及び禁止帯110a,110c間の距離bが同じプリント回路基板102に回路素子が半田付けされて構成されたアナログ回路装置2、インバータ回路装置3、及びジャック4は、主要基板5の表面に、デジタル回路装置1とともに設置される。このとき、各回路部品は、その回路部品を構成するプリント回路基板102における禁止帯103a〜103cと平行な方向の長さcによって、主要基板5の表面上での配置関係が決定される。
【0027】
即ち、図1に示すように、その長さcがデジタル回路装置1と同等の長さとなるアナログ回路装置2は、デジタル回路装置1と平行となるように、主要基板5上に配置される。そして、アナログ回路装置2の横には、ジャック3が配置される。図1のレイアウト例では、アナログ回路装置2及びジャック3それぞれのプリント回路基板102における禁止帯103cの位置が、ほぼ同等の位置とされる。
【0028】
又、インバータ回路装置3は、アナログ回路装置2に対して、ジャック3とは逆側となる位置に配置される。そして、このインバータ回路装置3は、プリント回路基板102の長さcが長いため、プリント回路基板102における禁止帯103cが、アナログ回路装置2及びジャック3それぞれのプリント回路基板102における禁止帯103cに対して垂直となるように、主要基板5上に配置される。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、プリント回路基板上に回路素子が半田付けされて構成される回路部品を複数備えた電子回路装置であって、構成要素として備える回路部品の回路素子がディップ槽の溶融半田によってプリント回路基板に半田付けされるものに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】は、本発明の実施形態における電子回路装置となる駆動装置内での各回路部品のレイアウト状態を示すブロック図である。
【図2】は、図1の駆動装置内の各回路部品の構成を示す図である。
【図3】は、フローホルダ方式を用いた半田付けを行う際の半田ディップ槽とプリント回路基板の関係を示す図である。
【図4】は、プリント回路基板における禁止帯の関係を説明する図である。
【図5】は、従来の冷陰極クランプの駆動装置内での各回路部品のレイアウト状態や構成を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1,201 デジタル回路装置
2,202 アナログ回路装置
3,203 インバータ回路装置
4 ジャック
5,200 主要基板
100 半田ディップ槽
101 溶融半田
102,102a,102b プリント回路基板
103a,103b レール
104 支持機構
110a〜110c 禁止帯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回路部品によって構成されるとともに、プリント回路基板上に回路素子が半田ディップ槽の溶融半田によって半田付けされて固定されることで一部の前記回路部品が構成される電子回路装置において、
前記プリント回路基板上に前記回路素子が半田付けされて構成される前記回路部品を第1回路部品とし、
当該第1回路部品それぞれの前記プリント回路基板全てにおいて、前記半田ディップ槽上を搬送されるディップ方向に対して垂直な基板幅が等しいとともに、前記ディップ方向と平行となる帯状の半田不可能な禁止帯の配置位置が等しいことを特徴とする電子回路装置。
【請求項2】
前記禁止帯が、前記プリント回路基板に対して半田付けを行う際に前記半田ディップ槽において前記プリント回路基板を支持する支持機構に当接する部分に形成されることを特徴とする請求項1に記載の電子回路装置。
【請求項3】
その表面に前記第1回路部品を含む前記回路部品が配置される主要基板を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−244127(P2008−244127A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−82396(P2007−82396)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】