説明

電子放出素子、電子源、および、画像表示装置

【課題】より低い電界での電子放出を実現し、低電圧で高効率な電子放出が可能で、製造プロセスが容易な電界放出型の電子放出素子、電子源、及び画像表示装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る電子放出素子は、カソード電極102と、カソード電極102上に設けられた絶縁膜103と、絶縁膜103上に設けられたダイポール層104と、を有する電子放出素子であって、ダイポール層104は、前記絶縁膜をNH基で終端することにより形成されることを特徴とする。また、本発明に係る電子源は、上記電子放出素子を複数有することを特徴とする。また、本発明に係る画像表示装置は、上記電子源と、電子の照射によって発光する発光体と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子放出素子、電子源、および、画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子放出素子には、電界放出型(以下、「FE型」と称する)電子放出素子や、表面伝導型電子放出素子等がある。
【0003】
FE型電子放出素子は、カソード電極(及びその上に配置された電子放出膜)と、ゲート電極との間に電圧を印加し、該電圧(電界)によってカソード電極(或いは電子放出膜)から電子を真空中に引き出す素子である。そのため、用いるカソード電極(電子放出膜)の仕事関数やその形状などによって動作電界が大きく左右される。一般には仕事関数の小さいカソード電極(電子放出膜)を選ぶことが必要といわれている。
【0004】
従来、電子放出素子は、低電界で電子を放出できることが望まれており、放出された電子ビームは収束されていることが望まれている(勿論、製造プロセスが容易であることも望まれている)。
【0005】
表面が水素終端されたダイヤモンドは負性電子親和力を持つ材料として代表的なものである。負性電子親和力を持つダイヤモンドの表面を電子放出面として利用する電子放出素子としては特許文献1〜3、非特許文献1に開示されている。
【0006】
しかし、ダイヤモンドを大面積に均一な膜厚で成膜することは困難であり、電子放出素子を製造する過程において問題が生じる。また、ダイヤモンドの膜は表面粗さを小さくすることが困難であるため、放出された電子が広がってしまうという問題も生じる。そのため、ダイヤモンドライクカーボン、アモルファスカーボンなどの薄膜を用いた電子放出素子が開発されているが、電子放出のための電界が高く、駆動しにくいという問題がある。
【0007】
上記問題に鑑みた従来技術として、電子放出膜表面にダイポール層を形成する手法が特許文献4に開示されている。電子放出素子は、電子放出膜表面にダイポール層が形成されることにより、低い電界で電子を放出できるようになる。
【0008】
当該ダイポール層を備えた電子放出素子は、ダイポール層の分極の大きさに従った効果を有すると考えられている。
【0009】
【特許文献1】特開平9−199001号公報
【特許文献2】米国特許第5283501号明細書
【特許文献3】米国特許第5180951号明細書
【特許文献4】特開2005−26209号公報
【非特許文献1】V.V.Zhinov,J.Liu等著、「Environmental effect on the electron emission from diamond surfaces」,J.Vac.Sci.Technol.,B16(3),1998年5/6月,pp.1188−1193
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明は、より低い電界での電子放出を実現し、低電圧で高効率な電子放出が可能で、製造プロセスが容易な電界放出型の電子放出素子、電子源、及び画像表示装置を提
供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明に係る電子放出素子は、カソード電極と、前記カソード電極上に設けられた絶縁膜と、前記絶縁膜上に設けられたダイポール層と、を有する電子放出素子であって、前記ダイポール層は、前記絶縁膜をNH基で終端することにより形成されることを特徴とする。
また、本発明に係る電子放出素子は、カソード電極と、前記カソード電極上に設けられた、炭素を主成分とする材料で形成された絶縁膜と、を有する電子放出素子であって、前記絶縁膜の表面がNH基で終端されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る電子源は、上記電子放出素子を複数有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る画像表示装置は、上記電子源と、電子の照射によって発光する発光体と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、より低い電界での電子放出を実現し、低電圧で高効率な電子放出が可能で、製造プロセスが容易な電界放出型の電子放出素子、電子源、及び画像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載の無い限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係る電子放出素子の製造方法の一例を示す図である。図1において、工程1は、基板101上にカソード電極102を成膜する工程である。工程2は、カソード電極102上に絶縁膜103(電子放出膜;電子放出材)を成膜する工程である。工程3は、絶縁膜103の表面をNH基で終端する工程である。各工程の詳細については後で詳しく説明する。
【0017】
図2は、本発明の実施の形態に係る電子放出素子の製造方法の一例を示す図である。図2において、工程1は、基板201上にカソード電極202を成膜する工程である。工程2は、カソード電極202上に絶縁膜203(電子放出膜;電子放出材)を成膜する工程である。工程3は、絶縁膜203上に絶縁層204を成膜する工程である。工程4は、絶縁層204上にゲート電極205を成膜する工程である。工程5は、ゲート電極205上に、フォトレジストによるパターニングを行う工程である。工程6は、ドライエッチングによりゲート電極205と絶縁層204の一部を取り除く工程である。工程7は、ウエットエッチングにより絶縁層204の一部をさらに取り除き、ゲート電極205と絶縁層204の開口を形成する工程である。当該工程により、開口内に絶縁膜203の一部または全部が露出される。工程8は、絶縁膜203の表面の一部または全部をNH基で終端する工程である。各工程の詳細については後で詳しく説明する。
【0018】
図4は、本実施形態に係る電子放出素子の表面をNH基で終端するための表面処理装置を示す図である。図4において、401はプラズマ発生室、402は磁気コイル、403はマイクロ波導入口、404は試料室である。そして、405は処理ガス導入口A、406は処理ガス導入口B、407は直流電源A、408は表面処理サンプル、409は直流電源B、410は基板加熱ヒータ、411は排気口である。
【0019】
以下に、図1を用いて電子放出素子の作製方法について詳しく説明する。
【0020】
(工程1)
まず、表面が十分に洗浄された基板上に、カソード電極102を積層する。基板(基板101)は、石英ガラス、Na等の不純物含有量を減少させたガラス、青板ガラス、シリコン基板等にスパッタ法等によりSiOを積層した積層体、アルミナ等セラミックスの絶縁性基板などから選択すればよい。基板101の表面の粗さは、RMS(Root Mean Square)表記で基板101の膜厚の1/10より小さいことが好ましい。
【0021】
カソード電極102は一般的に導電性を有しており、蒸着法、スパッタ法等の一般的な真空成膜技術、フォトリソグラフィー技術により形成される。カソード電極102の材料は、金属、合金等から適宜選択される。金属としては、例えば、Be、Mg、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Al、Cu、Ni、Cr、Au、Pt、Pd等を用いればよく、合金もまたそれら金属を用いて生成されたものを用いればよい。カソード電極102の厚さとしては、数十nmから数mmの範囲で設定され、好ましくは数百nmから数μmの範囲で選択される。カソード電極102の表面の粗さは、RMS表記でカソード電極102の膜厚の1/10より小さいことが好ましい。具体的には、カソード電極102の表面の粗さは、RMS表記で1nm以下であることが好ましい。また、カソード電極102の表面と基板101の表面とは、互いに平行な面であることが好ましい。
【0022】
(工程2)
次に、上記カソード電極上に絶縁膜103を成膜する。絶縁膜103は、蒸着法、スパッタ法等の一般的な真空成膜技術、フォトリソグラフィー技術により形成される。絶縁膜103の材料は、炭素、炭素化合物などのように炭素を主成分とすることが好ましいが、炭素を主成分とする材料に限定する必要はない。絶縁膜103は、炭素と炭素化合物の両方を含んでいてもよい。また、絶縁膜103は、内部に導電性粒子が分散して配置されている、あるいは、導電性粒子を内包している、ことが好ましい。導電性粒子としては、金属粒子が好ましく用いられる。当該導電性粒子の大きさは、1nmから10nmの範囲で設定され、好ましくは数nm程度に設定される。導電性粒子の材料としては、例えば、Be、Mg、Mn、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Al、Cu、Ni、Cr、Co、Fe、Ni、Au、Pt、Pd等の金属、または、それら金属を用いて生成された合金を用いることができる。炭素を主成分とする材料は、例えば、ダイヤモンドライクカーボンやアモルファスカーボンから適宜選択される。これらは、sp炭素を含むので好ましい。絶縁膜103の膜厚としては、20nm以下の範囲で設定され、好ましくは10nm以下の範囲で選択される。絶縁膜103の表面の粗さは、RMS表記で絶縁膜103の膜厚の1/10より小さいことが好ましい。なお、絶縁膜103の内部に金属が分散されている場合、絶縁膜103の膜厚は、全体の厚さから当該金属の厚さを差し引いた値の内、最小の値とする。
【0023】
(工程3)
次に、絶縁膜103の表面をNH基で終端する。NH基で終端する方法を、図4を用いて説明する。図4の装置は、ECRプラズマを用いた表面処理装置である。図4に示すように、試料室の上部にはプラズマ発生室がある。プラズマ発生室内に、処理ガスを導入し、ECR条件である磁束密度875Gaussの磁界を印加し、マイクロ波を発生室に導入すると、プラズマが発生する。当該プラズマの発生は、処理ガスの電離によるものと考えられる。絶縁膜103の表面は、当該電離によって生成されたイオン(ラジカル)によって終端される。なお、図4の装置では、磁気コイルの磁界分布は試料室に向かうにしたがって低くなる発散磁界となる。
【0024】
プラズマは、高周波プラズマ、リモートプラズマ、マイクロ波プラズマなどから適宜選
択できる。処理ガスの導入には、処理ガス導入口Aと処理ガス導入口Bを使用する。本実施形態では、処理ガスは、水素と窒素の混合気体、窒素とハイドロカーボン系ガスの混合気体などのように、水素原子と窒素原子の両方を含むように適宜選択される。水素原子や窒素原子を含むガスとして、例えば、N、NH、H、CH、C、Cなどが挙げられる。なお、処理ガスは、水素原子と窒素原子を含んでいれば、混合気体でなくてもよい。処理ガスは、不活性ガスで希釈されていてもよい。処理ガスに水素原子と窒素原子の両方が含まれることにより、絶縁膜103の表面はNH基で終端される。
【0025】
なお、基板加熱ヒータ410により、サンプル(素子)を加熱してもよい。処理ガス中で、素子を加熱するだけでも、絶縁膜103の表面をNH基で終端することができる。
【0026】
上記終端処理により、絶縁膜上にダイポール層104が形成される。
【0027】
以上の工程により、電子放出素子を作製することができる。
【0028】
以下に、図2を用いて、電子放出素子の製造方法について詳しく説明する。
【0029】
(工程1)
まず、表面が十分に洗浄された基板上にカソード電極202を積層する。基板(基板201)は、石英ガラス、Na等の不純物含有量を減少させたガラス、青板ガラス、シリコン基板等にスパッタ法等によりSiOを積層した積層体、アルミナ等セラミックスの絶縁性基板などから選択すればよい。基板201の表面の粗さは、RMS(Root Mean Square)表記で基板201の膜厚の1/10より小さいことが好ましい。
【0030】
カソード電極202は、一般的に導電性を有しており、蒸着法、スパッタ法等の一般的な真空成膜技術、フォトリソグラフィー技術により形成される。カソード電極202の材料は、金属、合金等から適宜選択される。金属としては、例えば、Be、Mg、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Al、Cu、Ni、Cr、Au、Pt、Pd等を用いればよく、合金もまたそれら金属を用いて生成されたものを用いればよい。カソード電極202の厚さとしては、数十nmから数mmの範囲で設定され、好ましくは数百nmから数μmの範囲で選択される。カソード電極202の表面の粗さは、RMS表記でカソード電極202の膜厚の1/10より小さいことが好ましい。具体的には、カソード電極202の表面の粗さは、RMS表記で1nm以下であることが好ましい。また、カソード電極202の表面と基板201の表面とは、互いに平行な面であることが好ましい。
【0031】
(工程2)
次に、上記カソード電極上に絶縁膜203を成膜する。絶縁膜203は、蒸着法、スパッタ法等の一般的な真空成膜技術、フォトリソグラフィー技術により形成される。絶縁膜203の材料は、炭素、炭素化合物などのように炭素を主成分とすることが好ましいが、炭素を主成分とする材料に限定する必要はない。絶縁膜203は、炭素と炭素化合物の両方を含んでいてもよい。また、絶縁膜203は、内部に導電性粒子が分散して配置されている、あるいは、導電性粒子を内包している、ことが好ましい。導電性粒子としては、金属粒子が好ましく用いられる。当該導電性粒子の大きさは、1nmから10nmの範囲で設定され、好ましくは数nm程度に設定される。導電性粒子の材料としては、例えば、Be、Mg、Mn、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Al、Cu、Ni、Cr、Co、Fe、Ni、Au、Pt、Pd等の金属、または、それら金属を用いて生成された合金を用いることができる。炭素を主成分とする材料は、例えば、ダイヤモンドライクカーボンやアモルファスカーボンから適宜選択される。これらは、sp炭素を含むので好ましい。絶縁膜203の膜厚としては、20nm以下の範囲で設定され、好ましくは10nm以下の範囲で選択される。絶縁膜203の表面の粗さは、RMS表記で絶縁膜2
03の膜厚の1/10より小さいことが好ましい。なお、絶縁膜203の内部に金属が分散されている場合、絶縁膜203の膜厚は、全体の厚さから当該金属の厚さを差し引いた値の内、最小の値とする。
【0032】
(工程3)
次に、絶縁層204を堆積する。絶縁層204は、スパッタ法等の一般的な真空成膜法、CVD法、真空蒸着法で形成される。絶縁層204の厚さとしては、数nmから数μmの範囲で設定され、好ましくは10nmから100nmの範囲で選択される。絶縁層204の材料としては、SiO、SiN、Al、CaF、アンドープダイヤモンドなど、高電界に絶えられる耐圧性の高い材料が望ましい。
【0033】
(工程4)
次に、絶縁層204上にゲート電極205を堆積する。ゲート電極205は、カソード電極202と同様に導電性を有しており、蒸着法、スパッタ法等の一般的な真空成膜技術、フォトリソグラフィー技術により形成される。ゲート電極205の材料は、金属等から適宜選択される。金属としては、例えば、Be、Mg、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Al、Cu、Ni、Cr、Au、Pt、Pd等を用いればよく、合金もまたそれら金属を用いて生成されたものを用いればよい。ゲート電極205の厚さとしては、数nmから数十μmの範囲で設定され、好ましくは数十nmから数μmの範囲で選択される。
【0034】
(工程5)
次に、フォトリソグラフィー技術によりマスクパターン206を形成する。
【0035】
(工程6)
次に、マスクパターン206をマスクとして用い、ドライエッチングにより、ゲート電極205と絶縁層204の一部を取り除く。
【0036】
(工程7)
次に、ウエットエッチングにより絶縁層204の一部をさらに取り除く。当該ウエットエッチングによる処理は、絶縁層204のエッチングレートが、ゲート電極205及び絶縁膜203のエッチングレートと比較して高くなるような溶剤、且つ、絶縁膜203を劣化させないような溶剤を用いて行われることが望ましい。
【0037】
(工程8)
次に、絶縁膜203の表面をNH基で終端する。NH基で終端する方法を、図4を用いて説明する。図4の装置は、ECRプラズマを用いた表面処理装置である。図4に示すように、試料室の上部にはプラズマ発生室がある。プラズマ発生室内に、処理ガスを導入し、ECR条件である磁束密度875Gaussの磁界を印加し、マイクロ波を発生室に導入すると、プラズマが発生する。当該プラズマの発生は、処理ガスの電離によるものと考えられる。絶縁膜203の表面は、当該電離によって生成されたイオン(ラジカル)によって終端される。なお、図4の装置では、磁気コイルの磁界分布は試料室に向かうにしたがって低くなる発散磁界となる。
【0038】
プラズマは、高周波プラズマ、リモートプラズマ、マイクロ波プラズマなどから適宜選択できる。処理ガスの導入には、処理ガス導入口Aと処理ガス導入口Bを使用する。本実施形態では、処理ガスは、水素と窒素の混合気体、窒素とハイドロカーボン系ガスの混合気体などのように、水素原子と窒素原子の両方を含むように適宜選択される。水素原子や窒素原子を含むガスとして、例えば、N、NH、H、CH、C、Cなどが挙げられる。なお、処理ガスは、水素原子と窒素原子を含んでいれば、混合気体で
なくてもよい。処理ガスは、不活性ガスで希釈されていてもよい。処理ガスに水素原子と窒素原子の両方が含まれることにより、絶縁膜203の表面はNH基で終端される。
【0039】
なお、基板加熱ヒータ410により、サンプル(素子)を加熱してもよい。処理ガス中で、基板を加熱するだけでも、絶縁膜203の表面をNH基で終端することができる。
【0040】
上記終端処理により、絶縁膜上にダイポール層207が形成される。
【0041】
このように、本実施形態に係る電子放出素子は非常に単純な製造プロセスにより作製することができる。
【0042】
このようにして作製した電子放出素子を、図3に示すような真空容器301内にセットすることにより、電子放出が観測できる。具体的には、当該電子放出素子の上方にアノード電極302を配置し、高圧電源303により、アノード電極に電圧を印加し、ゲート電極、アノード電極に各々必要な電圧を駆動電源304により印加すると電子放出が観測できる。なお、電子放出素子が図1に示すような構成の場合には、アノード電極とカソード電極の間に電圧を印加するなど、図3に示す装置の構成を適宜変更すればよい。
【0043】
以下に、図7,8を用いて、本実施形態に係る電子放出素子の駆動原理について説明する。
【0044】
図7(a)は本実施形態に係る電子放出素子における駆動電圧が0[V]の時のバンドダイヤグラムであり、図7(b)は駆動電圧V[V]を印加した時のバンドダイヤグラムである。図7(a)において絶縁膜72は表面に形成されたダイポール層により分極されδ分電圧が印加された状態になっている。この状態にさらに電圧V[V]を印加すると上記絶縁膜72のバンドはより急峻にベンディングし、同時に真空障壁74のベンディングもより急峻となる。この状態では絶縁膜72の表面における伝導帯よりも、ダイポール層に接する真空障壁74が高い状態になっている(図7(b)参照。)。当該状態になると、カソード電極71から注入された電子76は絶縁膜72および真空障壁74をトンネリングして真空へ電子放出することができる。尚、本実施形態に係る電子放出素子における駆動電圧は好ましくは50[V]以下であり、さらに好ましくは5[V]以上、50[V]以下である。
【0045】
図8に本実施形態に係る電子放出素子におけるダイポール層の模式図を示す。図中、80はダイポール層、81は窒素原子、82は水素原子である。当該ダイポール層の形成により、絶縁膜72の表面の準位は、カソード電極71と引き出し電極73との間に駆動電圧を印加している時及び駆動電圧を印加していない時の両方において、正の電子親和力を示す。また、アノード電極に印加される電圧は,一般に十数kV〜30kV程度である。そのため、アノード電極と電子放出素子との間に形成される電界強度は、一般に、おおよそ1×10V/cm以下と考えられる。従って、この電界強度によって電子放出素子から電子が放出しないようにすることが好ましい。そのため、ダイポール層が形成された絶縁膜72の表面の電子親和力は、後述する絶縁層の膜厚も考慮して、2.5eV以上とすることが好ましい。
【0046】
絶縁膜72の膜厚は、駆動電圧によって決めることができるが、好ましくは20nm以下、さらに好ましくは10nm以下に設定される。また、絶縁膜72の膜厚の下限としては、駆動時に、カソード電極71から供給された電子76が、トンネルすべき障壁(絶縁膜72と真空バリア)を形成していれば良いが、成膜再現性などの観点から好ましくは1nm以上に設定される。
【0047】
このように、本実施形態に係る電子放出素子においては、絶縁膜72の表面が常に正の電子親和力を示すことで、選択時と非選択時での明確な電子放出量のオン・オフの比を確保することができる。
【0048】
図8の例では、ダイポール層80は、絶縁膜72の表面をNH基(窒素原子81と水素原子82)で終端した例を示している。絶縁膜72の表面をNH基で終端することにより、水素原子は僅かながら正に分極(δ+)する。これにより窒素原子81は僅かながら負
に分極(δ-)され、ダイポール層(「電気二重層」と言い換えることもできる)80が
形成される。
【0049】
これにより、図7(a)に示すように、本発明の電子放出素子においては、カソード電極71と引き出し電極73との間に駆動電圧が印加されていない状態であっても、絶縁膜の表面には、電位δ[V]が印加されているのと等価の状態が形成される。また、図7(b)に示すように、駆動電圧V[V]の印加により、絶縁膜72の表面の準位降下は進行し、これと連動して、真空障壁74も引き下げられる。本実施形態に係る電子放出素子においては、絶縁膜72の膜厚は駆動電圧V[V]によって電子が絶縁膜72をトンネルできる膜厚に適宜設定されるが、駆動回路の負担などを考慮すると10nm以下が好ましい。膜厚が10nm程度になると、駆動電圧V[V]の印加により、カソード電極71から供給された電子76の、絶縁膜72を通りぬける空間的な距離も縮めることができ、その結果、トンネル可能な状態となる。
【0050】
上述したように、駆動電圧V[V]の印加に連動して真空障壁74も下げられ、且つ、その空間的距離も絶縁膜72と同様に縮められるため、真空障壁74もトンネル可能な状態となる。これにより、真空への電子放出が実現される。
【0051】
以下、本実施形態に係る電子放出素子と従来技術とを対比する。
【0052】
特開2005−26209には、絶縁膜72の表面を水素原子82で終端することにより、水素原子を僅かながら正に分極(δ+)させる技術が開示されている。これにより絶
縁膜72の表面の原子(例えば、炭素原子)は僅かながら負に分極(δ-)され、ダイポ
ール層(「電気二重層」と言い換えることもできる)80が形成される。本実施形態では、絶縁膜72の表面を、窒素原子と水素原子という2つの原子で終端することにより、窒素原子と水素原子間に生じるダイポール、すなわち、炭素原子と水素原子間に生じるダイポールよりも分極の大きいダイポール、を形成する。そのため、上記絶縁膜72のバンドはより急峻にベンディングする。これにより、電子放出素子は、より低い駆動電圧で電子放出可能となる。
【0053】
また、特許第3607947号には、導電性のウイスカー上にNH終端を有するアモルファスあるいは微結晶窒化炭素膜が開示されている。本実施形態に係る電子放出素子は、絶縁膜の表面が平らであるため、収束した電子放出を可能とする。それにより、高精彩な画像表示装置が提供できる。また、絶縁膜が平面状であるため、半導体プロセスが利用でき、製造コストを低減することができる。
【0054】
<応用例>
本実施形態に係る電子放出素子の応用例について以下に述べる。本実施形態に係る電子放出素子は、例えば、複数個を基体上に配列することにより電子源を構成することができる。そして、当該電子源を用いて画像表示装置を構成することができる。
【0055】
(電子源)
電子放出素子の配列については、種々のものが採用される。一例として、電子放出素子
をX方向及びY方向に行列状に複数配する。同じ行に配された複数の電子放出素子の電極の一方を、X方向の配線に共通に接続し、同じ列に配された複数の電子放出素子の電極の他方を、Y方向の配線に共通に接続する。これを単純マトリクス配置という。以下単純マトリクス配置の電子源について図5を用いて詳述する。
【0056】
図5において、501は電子源基体、502はX方向配線、503はY方向配線である。504は本実施形態に係る電子放出素子である。
【0057】
X方向配線502は、Dx1,Dx2,・・・Dxmのm本の配線からなり、真空蒸着法、印刷法、スパッタ法等を用いて形成された導電性金属等で構成することができる。配線の材料、膜厚、幅は、適宜設計される。Y方向配線503は、Dy1,Dy2,・・・Dynのn本の配線よりなり、X方向配線502と同様に形成される。これらm本のX方向配線502とn本のY方向配線503との間には、不図示の層間絶縁層が設けられており、両者は電気的に分離されている(m,nは、共に正の整数)。
【0058】
不図示の層間絶縁層は、真空蒸着法、印刷法、スパッタ法等を用いて形成されたSiO等で構成される。当該相関絶縁層は、例えば、X方向配線502を形成した電子源基体501の全面或いは一部に所望の形状で形成される。当該相関絶縁層の膜厚、材料、製法は、X方向配線502とY方向配線503の交差部の電位差に耐え得るように、適宜設定される。X方向配線502とY方向配線503は、それぞれ外部端子として引き出されている。
【0059】
電子放出素子504は一対の電極(ゲート電極、カソード電極)を備える。図5の例では、ゲート電極は、n本のY方向配線503の内のいずれかと、導電性金属等からなる結線によって電気的に接続されている。カソード電極は、m本のX方向配線502の内のいずれかと、導電性金属等からなる結線によって電気的に接続されている。
【0060】
X方向配線502とY方向配線503を構成する材料、結線を構成する材料及び一対の素子電極を構成する材料は、その構成元素の一部あるいは全部が同一であっても、またそれぞれ異なってもよい。これら材料は、例えば前述の素子電極の材料より適宜選択される。素子電極を構成する材料と配線材料が同一である場合には、素子電極に接続した配線は素子電極ということもできる。
【0061】
X方向配線502には、不図示の走査信号印加手段が接続される。走査信号印加手段は、選択されたX方向配線に接続されている電子放出素子504に走査信号を印加する。一方、Y方向配線503には、不図示の変調信号発生手段が接続される。変調信号発生手段は、電子放出素子504の各列に、入力信号に応じて変調された変調信号を印加する。各電子放出素子に印加される駆動電圧は、当該素子に印加される走査信号と変調信号の差電圧として供給される。
【0062】
(画像表示装置)
上記構成においては、単純なマトリクス配線を用いて、個別の素子を選択し、独立に駆動可能とすることができる。上記電子源を用いて構成した画像表示装置について、図6を用いて説明する。図6は、画像表示装置の表示パネルの一例を示す模式図である。
【0063】
図6において、601はX方向の容器外端子、602はY方向の容器外端子、613は電子源基体、611はリアプレート、606はフェースプレート、612は支持枠である。なお、電子源基体613は電子放出素子を複数有しており、リアプレート611は電子源基体613を固定するためのものである。フェースプレート606はガラス基板603の内側(電子源基体側)の面に蛍光膜604とメタルバック605等が形成されたもので
ある。蛍光膜604は、電子の照射によって発光する発光体(画像形成部材;蛍光体)によって構成される。リアプレート611、フェースプレート606はフリットガラス等を用いて支持枠612に接続されている。外囲器617は、例えば、当該フリットガラスを、大気中または窒素中で、400〜500℃の温度範囲で10分以上焼成し、リアプレート611、フェースプレート606、支持枠612に封着することにより構成される。
【0064】
上記画像表示装置は、各電子放出素子615に、容器外端子Dox1〜Doxm、Doy1〜Doynを介して電圧を印加する。各電子放出素子615は、当該印加された電圧に応じて電子を放出する。
【0065】
高圧端子614を介してメタルバック605、あるいは透明電極(不図示)に高圧を印加することで、当該放出された電子は加速する。
【0066】
加速された電子は、蛍光膜604に衝突し、発光が生じて画像が形成される。
【0067】
本実施形態に係る画像表示装置は、テレビジョン放送の表示装置、テレビ会議システムやコンピューター等の表示装置の他、感光性ドラム等を用いて構成された光プリンターとしての画像形成装置等としても用いることが出来る。
【0068】
<実施例>
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0069】
(実施例1)
以下に、図1を用いて、本実施例の電子放出素子の具体的な製造方法について詳細に説明する。
【0070】
(工程1)
まず、基板101としての石英(SiO)を十分洗浄し、スパッタ法により、基板101上に、カソード電極102として厚さ200nmのPtを成膜した。
【0071】
(工程2)
次に、カソード電極102上に、共スパッタ法を用いて、絶縁膜103としてPt粒子を多数含むDLC膜を作製した。絶縁膜103の膜厚は約10nmとし、絶縁膜103中のPt濃度は20%程度とした。
【0072】
(工程3)
次に、図4の装置を用いて、絶縁膜103の表面をNH基で終端した。即ち、当該工程により絶縁膜103の表面にダイポール層104が形成された。当該終端処理は以下の条件で行った。
処理ガス NH(50sccm)
圧力 0.25Pa
ECRプラズマパワー 300W
処理時間 30秒
【0073】
以上の工程を経て、本実施例の電子放出素子を作製した。
【0074】
図3に示す装置においてアノード電極とカソード電極の間に電圧を印加することによって、上記作製した電子放出素子の電子放出特性を測定した。絶縁膜103に対して平行平板になるようにアノード電極を配置した。絶縁膜103とアノード電極の間の距離は100μmとした。電子放出特性を評価した結果、55V/μmの電界で約10mA/cm
の電子放出電流を得ることができた。
【0075】
(実施例2)
以下に、図1を用いて、本実施例の電子放出素子の具体的な製造方法について詳細に説明する。
【0076】
(工程1)
まず、基板101としての石英(SiO)を十分洗浄し、スパッタ法により、基板101上に、カソード電極102として厚さ200nmのPt成膜した。
【0077】
(工程2)
次に、カソード電極102上に、共スパッタ法を用いて、絶縁膜103としてCo粒子を多数含むDLC膜を作製した。絶縁膜103の膜厚は約10nmとし、絶縁膜103のCo濃度は20%程度とした。
【0078】
(工程3)
次に、図4の装置を用いて、絶縁膜103の表面をNH基で終端した。即ち、当該工程により絶縁膜103の表面にダイポール層104が形成された。当該終端処理は以下の条件で行った。
処理ガス NH(20sccm)
(30sccm)
圧力 0.25Pa
ECRプラズマパワー 400W
処理時間 30秒
【0079】
以上の工程を経て、本実施例の電子放出素子を作製した。
【0080】
図3に示す装置においてアノード電極とカソード電極の間に電圧を印加することによって、上記作製した電子放出素子の電子放出特性を測定した。絶縁膜103に対して平行平板になるようにアノード電極を配置した。絶縁膜103とアノード電極の間の距離は100μmとした。電子放出特性を評価した結果、55V/μmの電界で約10mA/cmの電子放出電流を得ることができた。
【0081】
(実施例3)
以下に、図1を用いて、本実施例の電子放出素子の具体的な製造方法について詳細に説明する。
【0082】
(工程1)
まず、基板101としての石英(SiO)を十分洗浄し、スパッタ法により、基板101上に、カソード電極102として厚さ200nmのPt成膜した。
【0083】
(工程2)
次に、カソード電極102上に、フィラメントCVD法を用いて、DLC膜を作製した。そして、イオン注入法を用いて、1atm%のCo粒子をDLC膜に注入した。当該工程により、絶縁膜103が作製された。絶縁膜の膜厚は約10nmとした。
【0084】
(工程3)
次に、図4の装置を用いて、絶縁膜103の表面をNH基で終端した。即ち、当該工程により絶縁膜103の表面にダイポール層104が形成された。当該終端処理は以下の条件で行った。
処理ガス CH(30sccm)
NH(20sccm)
圧力 0.25Pa
ECRプラズマパワー 300W
処理時間 20秒
【0085】
以上の工程を経て、本実施例の電子放出素子を作製した。
【0086】
図3に示す装置においてアノード電極とカソード電極の間に電圧を印加することによって、上記作製した電子放出素子の電子放出特性を測定した。絶縁膜103に対して平行平板になるようにアノード電極を配置した。絶縁膜103とアノード電極の間の距離は100μmとした。電子放出特性を評価した結果、40V/μmの電界で約12mA/cmの電子放出電流を得ることができた。
【0087】
(実施例4)
以下に、図2を用いて、本実施例の電子放出素子の具体的な製造方法について詳細に説明する。
【0088】
(工程1)
まず、基板201としての石英(SiO)を十分洗浄し、スパッタ法により、基板201上に、カソード電極202として厚さ200nmのPtを成膜した。
【0089】
(工程2)
次に、カソード電極202上に、共スパッタ法を用いて、絶縁膜203としてCo粒子を多数含むDLC膜を作製した。絶縁膜203中の膜厚は約10nmとし、絶縁膜203のCo濃度は25%程度とした。
【0090】
(工程3)
次に、絶縁膜203上に、原料ガスとしてSiH、NOを使用したプラズマCVD法により、絶縁層204として厚さ約1000nmのSiOを成膜した。
【0091】
(工程4)
次に、絶縁層204上に、スパッタ法を用いて、ゲート電極205として厚さ100nmのPtを成膜した。
【0092】
(工程5)
次に、フォトリソグラフィー法により、ポジ型フォトレジスト(OFPR5000/東京応化製)のスピンコーティングをし、フォトマスクパターンを露光、現像し、直径5μmの開口を有するレジストのマスクパターン206を形成した。
【0093】
(工程6)
次に、ドライエッチングによりゲート電極205と絶縁層204の一部を取り除いた。ゲート電極205(Pt)の除去は、エッチングガスがArガス、エッチングパワーが200W、エッチング圧力が1Paという条件で行った。絶縁層204の除去は、エッチングガスがCFとHの混合ガス、エッチングパワーが150W、エッチング圧力が1.5Paという条件で行った。本工程により、レジストの開口の位置に対応するゲート電極が除去された。絶縁層204のエッチングは、絶縁層204の厚さが半分程度になるまで行った。なお、ゲート電極205と同様に、絶縁層204もレジストの開口の位置に対応する部分のみが除去された。
【0094】
(工程7)
次に、残ったマスクパターンを剥離液(剥離液104/東京応化製)にて除去した。そして、BHFに浸漬させること(ウエットエッチング)により、絶縁層204(SiO)の一部をさらに取り除いた。ウエットエッチングをした後、素子を10min間水洗いし
た。本工程により、レジストの開口の位置に、ゲート電極と絶縁層の開口が形成された。また、本工程により当該開口内に絶縁膜203が露出した。
【0095】
(工程8)
次に、図4の装置を用いて、絶縁膜203の表面をNH基で終端した。即ち、当該工程により絶縁膜203の表面にダイポール層が形成された。当該終端処理は以下の条件で行った。
処理ガス CH(50sccm)
(10sccm)
NH(10sccm)
圧力 0.25Pa
RFプラズマパワー 200W
処理時間 30秒
【0096】
以上の工程を経て、本実施例の電子放出素子を作製した。
【0097】
本実施例にて作製した電子放出素子を、図3に示すように真空容器内に配置し、素子上部に蛍光体のアノード電極をセットした。アノード電極には、5kVの直流電圧を印加し、カソード電極とゲート電極間には10Vのパルス電圧を印加した。その結果は、パルス信号に同期して電子放出が観測された。即ち、本実施例の電子放出素子は応答性に優れている。なお、本電子放出素子を電子源に応用しても同様の効果が得られるものと示唆される。
【0098】
(実施例5)
実施例4の電子放出素子を用いた画像表示装置を製造した。カソード電極は、図5に示すように、X方向配線に接続した。ゲート電極205は、Y方向配線に接続した。電子放出素子は、144個の開口部を一画素とし、横30μm、縦30μmのピッチで300×200の画素分配置した。各電子放出素子の上方に蛍光体を配置した。蛍光体と電子放出素子の間の距離は1mmとした。蛍光体は電子放出素子と1:1に対応するように配置した。蛍光体には5kVの電圧を印加した。入力信号として18Vのパルス信号を入力すると、高精細な画像が表示された。
【0099】
以上説明したように、本発明は、低閾値で電子放出可能な電子放出素子を提供できる。さらに、低電圧で高効率な電子放出が可能で、製造プロセスが容易な電子放出素子を提供できる。また、本発明の電子放出素子を電子源や画像表示装置に適用すると、性能に優れた電子源および画像表示装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る電子放出素子の製造方法の一例を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係る電子放出素子の製造方法の一例を示す図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係る電子放出素子を駆動するための装置の一例を示す図である。
【図4】図4は、本実施形態に係る電子放出素子の表面をNH基で終端するための表面処理装置を示す図である。
【図5】図5は、本実施形態に係る電子放出素子の応用例である電子源の一例を示す図である。
【図6】図6は、本実施形態に係る電子放出素子の応用例である画像表示装置の一例を示す図である。
【図7】図7は、本実施形態に係る電子放出素子の駆動原理を示す図である。
【図8】図8は、本実施形態に係る電子放出素子におけるダイポール層の模式図を示す図である。
【符号の説明】
【0101】
71 カソード電極
72 絶縁膜
73 電極
74 真空障壁
76 電子
80 ダイポール層
81 窒素原子
82 水素原子
101 基板
102 カソード電極
103 絶縁膜
104 ダイポール層
201 基板
202 カソード電極
203 絶縁膜
204 絶縁層
205 ゲート電極
206 マスクパターン
207 ダイポール層
301 真空容器
302 アノード電極
303 高圧電源
304 駆動電源
401 プラズマ発生室
402 磁気コイル
403 マイクロ波導入口
404 試料室
405 処理ガス導入口A
406 処理ガス導入口B
407 直流電源A
408 表面処理サンプル
409 直流電源B
410 基板加熱ヒータ
411 排気口
501 電子源基体
502 X方向配線
503 Y方向配線
504 電子放出素子
601 X方向の容器外端子
602 Y方向の容器外端子
603 ガラス基板
604 蛍光膜
605 メタルバック
606 フェースプレート
611 リアプレート
612 支持枠
613 電子源基体
614 高圧端子
615 電子放出素子
617 外囲器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード電極と、
前記カソード電極上に設けられた絶縁膜と、
前記絶縁膜上に設けられたダイポール層と、
を有する電子放出素子であって、
前記ダイポール層は、前記絶縁膜をNH基で終端することにより形成される
ことを特徴とする電子放出素子。
【請求項2】
前記絶縁膜の厚さは、10nm以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の電子放出素子。
【請求項3】
前記絶縁膜の表面は、正の電子親和力を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電子放出素子。
【請求項4】
前記絶縁膜は、炭素を主成分とする材料で構成される
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子放出素子。
【請求項5】
カソード電極と、
前記カソード電極上に設けられた、炭素を主成分とする材料で形成された絶縁膜と、
を有する電子放出素子であって、
前記絶縁膜の表面がNH基で終端されていることを特徴とする電子放出素子。
【請求項6】
前記炭素を主成分とする材料は、sp炭素を含む
ことを特徴とする請求項4または5に記載の電子放出素子。
【請求項7】
前記絶縁膜の表面の粗さは、RMS表記で前記絶縁膜の膜厚の1/10より小さい
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電子放出素子。
【請求項8】
前記カソード電極の表面の粗さは、RMS表記で前記カソード電極の膜厚の1/10より小さい
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の電子放出素子。
【請求項9】
前記カソード電極の表面の粗さは、RMS表記で1nm以下である
ことを特徴とする請求項8に記載の電子放出素子
【請求項10】
前記カソード電極は、基板上に設けられており、
前記基板の表面の粗さは、RMS表記で前記基板の膜厚の1/10より小さい
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の電子放出素子。
【請求項11】
前記カソード電極の表面と前記基板の表面とは、互いに平行な面である
ことを特徴とする請求項10に記載の電子放出素子。
【請求項12】
前記絶縁膜が、複数の導電性粒子を内包している
ことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の電子放出素子。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の電子放出素子を複数有する
ことを特徴とする電子源。
【請求項14】
請求項13に記載の電子源と、
電子の照射によって発光する発光体と、
を有することを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−146751(P2009−146751A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323177(P2007−323177)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】