説明

電子時計

【課題】連続運針によって指針が滑らかに動くアナログ電子時計の歩度測定と非接触通信とを容易に実現して、確実な歩度測定と高精度な歩度調整を可能とする電子時計を提供する。
【解決手段】モータ10と、モータ10を駆動するモータ駆動回路29と、各種タイミング信号を作成するタイミング信号作成回路23と、モータ10を駆動するための駆動パルスP10を作成し出力する駆動パルス成形回路24と、歩度パルスP11を作成し出力する歩度パルス成形回路25と、リューズ3の操作により外部操作信号P1を出力する外部入力回路26と、外部操作信号P1によって駆動パルスP10と歩度パルスP11のモータ駆動回路29への出力を切り替え制御する制御回路27とを有する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続運針のアナログ電子時計における歩度測定および外部装置との非接触通信の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、指針表示を備えたアナログ式電子時計の運針は、1秒周期で行われることが一般的である。また、最近見直されつつある指針を滑らかに動かす連続運針(スイープ運針と呼ばれる)のアナログ時計も開示されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1で開示されているアナログ電子時計は、通常は1秒間に8ステップでの運針が行われ、時刻が遅れているときは、スイッチを操作して1秒間に16ステップの運針にして遅れを修正する。また、時刻が進んでいるときは、スイッチを操作して1秒間に4ステップの運針にして進みを修正するものである。これにより、指針の動きが視覚的に連続して動いているように見えると共に、簡単な操作で時刻修正が可能であることが示されている。
【0003】
また、近年、電子時計は高精度化が進み、時計の遅れ進みの誤差を1年を単位として示す、所謂、年差時計も製品化されている。この年差時計は、時計の歩度を高精度に調整する必要があるために、搭載される時間基準となる水晶振動子の発振周波数に合わせて歩度調整を行う手段を備え、ムーブメントの完成時に、高精度な歩度調整を行い、その調整データを内部回路のメモリに記憶する方式が一般的である。しかし、歩度調整されたムーブメントを時計外装に組み込むと、回路の浮遊容量等の変化や水晶振動子への応力の変化で、水晶振動子の発振周波数が変動し、完成時計の歩度にずれが生じる問題がある。
【0004】
このため、ムーブメントを外装に組み込んだ後に、最終的な歩度調整を行う必要があり、この問題を解決するために、非接触によって時計と外部装置が通信して歩度調整(周波数調整)を行う通信システムが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
この特許文献2で開示されている電子時計の送受信システムは、アナログ電子時計のモータコイルと外部装置のコイルを近接して磁気結合させ、モータを駆動する駆動パルスの合間を使って、時計と外部装置との間でデータの送受信を行う非接触通信技術であり、歩度調整などを目的としている。ここで、外部装置は、アナログ時計の1秒運針による駆動パルスのタイミングに同期してデータを送信する。一方、アナログ時計は、送信されるタイミングに合わせてモータのコイルをハイインピーダンスにし、コイルに誘起される起電力によってデータ受信を行う。
【0006】
これにより、時計は非接触によって外部装置とデータ通信が出来るので、時計の外装にムーブメントを組み込んだ状態での通信が可能となり、外装に組み込まれ完成品となった時計の歩度調整が可能となることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭55―16238号公報(第2頁、第3図)
【特許文献2】特開平11−84028号公報(第4頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1で開示された連続運針のアナログ電子時計は、広く用いられているアナログ電子時計の歩度測定器によって、時計の歩度を測定することが難しいとい
う問題がある。すなわち、一般に用いられているアナログ電子時計の歩度測定器は、1秒に1回(1Hz)の運針を想定し、1秒ごとに出力される駆動パルスで駆動されるモータから漏れる電磁パルスを検出して歩度測定を行っている。また、時計によっては、歩度測定のために駆動パルスの直前に歩度パルスが出力される場合もあるが、この歩度パルスも1秒に1回の信号である。
【0009】
しかし、連続運針の場合は、時計のモータから漏れる電磁パルスは、1秒間に数多く(たとえば8回または16回)発生する。一方、一般的な歩度測定器は、前述したように、1秒に1回の運針を想定して設計されているので、周期の短い電磁パルスを検出することが出来ない。また、仮に検出できたとしても、周期の短い電磁パルスはノイズ成分として認識されやすく、安定した歩度測定が困難である。
【0010】
また、特許文献2の電子時計の送受信システムも同様に、アナログ時計の運針を1秒に1回と想定して、1秒に1回出力される駆動パルスの合間を用いて、外部装置と通信を行うことが前提となっている。しかし、連続運針のアナログ時計の場合は、駆動パルスが頻繁に出力されるので、駆動パルスの合間を用いた通信は、時間的な余裕が無く困難である。また、モータコイルには頻繁に駆動電流が流れるので、これによって電気的なノイズが多く発生し、通信の障害となる。また、仮に通信が出来たとしても、1秒運針のアナログ時計を前提とした従来の外部装置の改造が必要となり、新たな設備投資が不可欠である。
【0011】
本発明の目的は上記課題を解決し、連続運針のアナログ時計において、歩度測定とモータコイルによる非接触通信が容易に実現できる電子時計を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の電子時計は、下記記載の構成を採用する。
【0013】
本発明の電子時計は、モータと、該モータを駆動するモータ駆動回路と、各種タイミング信号を作成するタイミング信号作成回路と、該タイミング信号作成回路より出力されるタイミング信号を入力して、モータを駆動するための駆動パルスを作成し出力する駆動パルス成形回路と、該タイミング信号作成回路より出力されるタイミング信号を入力して、歩度を測定するための歩度パルスを作成し出力する歩度パルス成形回路と、外部操作部材の操作により外部操作信号を出力する外部入力回路と、外部操作信号によって、駆動パルスと歩度パルスのモータ駆動回路への出力状態を制御する制御回路と、を有することを特徴とする。
【0014】
これにより、外部操作部材を操作することで、駆動パルスと歩度パルスの出力を制御できるので、時計の歩度測定を行う場合に、駆動パルスを停止して歩度パルスのみを出力できる。これによって、時計の歩度測定を確実に実施することが可能となる。
【0015】
また、駆動パルスは1秒より短い周期で出力され、歩度パルスはN秒(Nは、N≧1の自然数)周期で出力され、制御回路は、外部操作信号の入力により、駆動パルスの出力を停止し、歩度パルスを出力することを特徴とする。
【0016】
これにより、駆動パルスは、1秒より短い周期で出力されるので連続運針を行うことが出来る。また、歩度パルスは1秒、または1秒より長い周期で出力されるので、一般的な歩度測定器によって時計の歩度を確実に測定することが出来る。
【0017】
また、外部装置からの信号をモータにより受信するための通信パルスを、タイミング信号作成回路より出力されるタイミング信号を入力して作成し、モータ駆動回路に出力する通信パルス作成回路を有し、該通信パルス作成回路は、外部操作信号の入力により通信パ
ルスの出力を許可されることを特徴とする。
【0018】
これにより、外部装置からの信号をモータによって受信出来るので、非接触による通信が可能となる。これによって、ムーブメントを時計外装に入れた状態で、周波数調整が可能となり、時計の高精度な歩度調整を実現することが出来る。
【0019】
また、モータが二極ステップモータであり、モータ駆動回路が該二極ステップモータ駆動用の2端子を有し、歩度パルスと通信パルスが該2端子の同一の端子から出力され、かつ、該2端子の内の一方の端子からのみ出力されることを特徴とする。
【0020】
これにより、モータ駆動回路の2端子の特性差を排除出来るので、安定した歩度測定と非接触通信を実現することが出来る。
【0021】
また、外部操作部材がリューズであり、該リューズを通常位置と異なる位置に操作すると、外部操作信号が外部入力回路から出力されることを特徴とする。
【0022】
これにより、リューズの簡単な操作で、歩度測定や非接触通信を実施出来るので、時計の調整工程での作業性が改善され、また、時計が市場に出回ったときのメンテナンス性にも優れている。
また、リューズ2段引き等の操作による指針の停止と時刻合わせの機能は、一般的なアナログ電子時計の略全てに搭載されているので、本発明は、特別な外部操作部材や仕様の追加無しに実現することが可能である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の電子時計によれば、最近、見直されつつある連続運針によって指針が滑らかに動くアナログ時計の歩度測定と非接触通信とを容易に実現して、確実な歩度測定と高精度な歩度調整が可能な電子時計を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態の電子時計の内部構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態の電子時計の外観図である。
【図3】本発明の実施形態の動作順序を説明するフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態の動作を説明するタイミングチャートである。
【図5】本発明の実施形態の駆動パルスを説明するタイミングチャートである。
【図6】本発明の実施形態の歩度パルスと通信パルスを説明するタイミングチャートである。
【図7】本発明の実施形態の非接触通信の動作順序を説明するフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態の非接触通信の基本原理を説明するタイミングチャートである。
【図9】本発明の実施形態の電子時計と外部装置との関係を説明する斜視図である。
【図10】本発明の実施形態の非接触通信動作の変形例を説明するフローチャートである。
【図11】本発明の実施形態の非接触通信動作の他の変形例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
[実施形態の電子時計の内部構成説明:図1]
まず、実施形態の電子時計の全体構成の一例を図1を用いて説明する。図1において、1は実施形態の電子時計である。電子時計1は、時間基準信号を発生する水晶振動子2、
外部操作部材としてのリューズ3、電池5、秒針、分針、時針等によって成る表示部6、表示部6を駆動するモータ10、及び、電子回路20などによって構成される。なお、電子時計1には、モータ10からの回転力を表示部6に伝達する輪列などがあるが、図示は省略している。
【0026】
100は外部装置であり、歩度測定器、または、歩度調整装置などで構成され、ここでは図示しないが、外部装置100の内部のコイルと電子時計1のモータ10とが、磁束Mによって電磁結合し、非接触で信号の送信または受信を行う。
【0027】
水晶振動子2は、一例として32,768Hzの発振周波数を有し、電子回路20に接続される。外部操作部材としてのリューズ3は、リューズ3の操作位置に応じた信号を出力して電子回路20に入力する。なお、外部操作部材はリューズに限定されず、押しボタンスイッチなどでも良い。電池5は所定の電圧を出力し、電子回路20に供給されて電子回路20を駆動する電源となる。モータ10は二極ステップモータであり、2端子のコイル11を有し、電子回路20からコイル11の2端子に後述する駆動信号が出力される。
【0028】
次に、電子回路20の内部構成を説明する。電子回路20は、電子時計1のすべての制御を担当し、ワンチップICによって構成されるが、機能別に複数のチップによって構成しても良い。21は発振回路であり、水晶振動子2に接続して発振を行い、32,768Hzの基準信号P2を出力する。なお、発振回路21は、後述する制御信号によって内蔵コンデンサ(図示せず)を切り替えて、発振周波数を微調整する機能を備えている。
【0029】
22は分周回路であり、基準信号P2を入力して所定の分周比で分周し、分周信号P3を出力する。なお、分周回路22は、後述する制御信号によって分周比を切り替え、出力である分周信号P3の周波数を調整する機能を備えている。23はタイミング信号作成回路であり、分周信号P3を入力して複数のタイミング信号P4、P5、P6を出力する。
【0030】
24は駆動パルス成形回路であり、タイミング信号P4と後述する回転検出信号P7を入力して、モータ10を駆動するための駆動パルスP10を出力する。なお、駆動パルスP10は指針を連続運針するために、1秒より早い周期のパルス群で構成されるが、詳細は後述する。
【0031】
25は歩度パルス成形回路であり、タイミング信号P5を入力して、歩度を測定するための1秒周期の歩度パルスP11を出力する。26は外部入力回路であり、リューズ3からの信号を入力して、リューズ3の操作に応じた外部操作信号P1を出力する。また、外部入力回路26は、図示しないがリューズ3以外に外部操作部材があれば、その部材からも信号を入力して外部操作信号P1を出力する。ここで、外部操作信号P1は、外部操作部材ごとの複数の信号でも良く、また、シリアルデータ等に変換された信号でも良い。
【0032】
27は制御回路であり、外部操作信号P1と駆動パルスP10と歩度パルスP11とを入力し、外部操作信号P1に応じて駆動パルスP10、または、歩度パルスP11のどちらかのパルスを選択してモータ信号P12として出力する。
【0033】
28は通信パルス作成回路であり、タイミング信号P6と外部操作信号P1を入力し、通信パルスP13を出力する。この通信パルスP13は、外部装置100と非接触通信を行うための信号である。なお、通信パルス作成回路28は、外部操作信号P1の入力によって、通信パルスP13の出力を許可するように動作する。
【0034】
29はモータ駆動回路であり、モータ信号P12と通信パルス信号P13を入力し、二つの駆動端子OUT1とOUT2から駆動信号をそれぞれ出力する。このモータ駆動回路
29は、低インピーダンス出力の二つのバッファー回路(図示せず)を内蔵し、その出力が駆動端子OUT1、OUT2に接続される。また、二つのバッファー回路は、通信パルス信号P13が入力されると、駆動端子OUT1またはOUT2の一方をオープン状態にする機能を備えている。駆動端子OUT1とOUT2は、モータ10のコイル11の二つの端子にそれぞれ接続され、これにより、モータ10はモータ駆動回路29によって駆動される。
【0035】
30は起電力検出回路であり、モータ10のコイル11の両端に接続された駆動端子OUT1、OUT2からの起電力V1を入力し、コイル11からの起電力を検出して、回転検出信号P7と、外部装置100から受信した受信信号P8を出力する。
【0036】
31は通信制御回路であり、受信信号P8を入力して解読し、歩度調整データを取得して、分周回路22の分周比を制御する分周制御信号P14と、発振回路21のコンデンサ(図示せず)を切り替える発振制御信号P15を出力する。なお、通信制御回路31は、図示しないが内部に不揮発性メモリを備えており、受信信号P8を解読して得た歩度調整データを記憶する。
【0037】
ここで、電子回路20の特徴は制御回路27にある。すなわち、制御回路27は、外部操作信号P1によって、駆動パルスP10と歩度パルスP11のモータ駆動回路29への出力状態を制御し、リューズ3の操作位置に応じて、駆動パルスP10を出力するか、歩度パルスP11を出力するかを選択するのである。ここで、駆動パルスP10を出力する動作を通常運針モードと定義し、歩度パルスP11を出力する動作を歩度測定モードと定義する。なお、図1のブロック図の動作は、後述するフローチャート(図3)とタイミングチャート(図4〜図6など)を用いて説明する。
【0038】
[実施形態の電子時計の外観と操作説明:図2]
次に実施形態の電子時計の外観と操作の一例を図2を用いて説明する。図2において、電子時計1の外観は、表示部6、金属等によって成る外装7、リューズ3などによって構成される。また、8は使用者の腕に電子時計1を装着するためのバンドである。
【0039】
表示部6は、秒針6a、分針6b、時針6c、及び日付を表示する日板6dなどによって構成される。また、リューズ3は外装7の側面の3時方向に配設され、通常位置では外装7に近接し、その一部が外装7に嵌め込まれた位置に置かれるが、使用者(図示せず)の操作によってリューズ3が矢印Aの軸方向に押し引きされることにより、外装7よりやや離れた位置である1段引き位置、及び、外装7より最も離れた位置である2段引き位置に移動することが出来る。
【0040】
ここで、リューズ3が外装7に嵌め込まれた通常位置において、電子時計1は通常運針モードで連続運針を継続する。また、リューズ3が1段引かれた1段引き位置においては、リューズ3を回転して日板6dを動かし日付を修正出来る。また、リューズ3が2段引かれた2段引き位置においては、リューズ3を回転させて指針を動かし時刻合わせを行うことが出来る。また、リューズ3の2段引き位置においては、詳細は後述するが、連続運針を停止した歩度測定モード、及び、歩度測定モードに付加される非接触通信動作に移行する。
【0041】
なお、歩度測定モードに移行するための操作は限定されず、たとえば、リューズ3の一段引きでも良く、また、図示しないが、リューズ3以外の操作ボタンを外装7の側面などに備えて、その操作ボタンを押圧することで、歩度測定モードに移行しても良い。
【0042】
[実施形態の電子時計の基本動作フローの説明:図1、図2、図3]
次に、実施形態の基本動作フローを図3のフローチャートを用いて説明する。なお、電子時計1の内部構成は図1を参照し、外観は図2を参照する。
【0043】
図3において、電子時計1の電子回路20は、外部入力回路26によって、リューズ3の操作位置に応じて外部操作信号P1を出力し、リューズ3が2段引きされたかを判定する(ST1)。ここで、肯定判定(リューズ3は2段引き位置)であれば、次のST2へ進み、否定判定(リューズ3は通常位置)であれば、ST8へ進む。
【0044】
ST1で否定判定がなされたならば、電子時計1の動作モードは通常運針モードとなり、電子回路20の制御回路27は、駆動パルス成形回路24からの駆動パルスP10を選択してモータ信号P12として出力する。すなわち、通常運針モードにおいて、制御回路27から出力するモータ信号P12は、駆動パルスP10と同一信号である。モータ駆動回路29はモータ信号P12を入力し、駆動端子OUT1、OUT2から駆動パルスP10を交互に出力して、モータ10を一例として16Hzの速さで動かし、表示部6の秒針6aを滑らかに連続運針する(ST8)。
【0045】
電子回路20は、駆動パルスP10の出力後、再びST1に戻ってリューズ3の操作位置を確認するが、リューズ3が通常位置であれば、通常運針モードが継続し、駆動パルスP10の出力(ST8)が繰り返されるので、表示部6は連続運針を継続する。なお、駆動パルスP10の詳細な説明は後述する。
【0046】
また、ST1で肯定判定がなされたならば、電子時計1の動作モードは歩度測定モードとなり、制御回路27は、駆動パルスP10の選択をやめて歩度パルスP11を選択する。すなわち、制御回路27は外部操作信号P1によって、通常運針モードを歩度測定モードに切り替え、駆動パルスP10の出力を停止し、歩度パルスP11をモータ信号P12として出力する。これにより、駆動端子OUT1、OUT2からの駆動パルスP10の出力は停止する(ST2)。よって、表示部6は連続運針を停止する。
【0047】
次に、制御回路27は、駆動パルスP10が停止するときの最後の出力が、駆動端子OUT1から出力されたのか、駆動端子OUT2から出力されたのかを判定し、最終出力の駆動端子OUT1またはOUT2を記憶する(ST3)。
【0048】
次に、制御回路27は、動作モードが歩度測定モードに切り替わったので、歩度パルスP11をモータ信号P12として出力し、モータ駆動回路29は、駆動パルスP10が最後に出力された記憶情報に基づいて、その駆動端子から歩度パルスP11を出力する(ST4)。すなわち、ST2で駆動パルスP10が停止したとき、最後に出力された駆動パルスP10が駆動端子OUT1から出力された場合、歩度パルスP11は駆動端子OUT1から継続して出力される。また、ST2で駆動パルスP10が停止したとき、最後に出力された駆動パルスP10が駆動端子OUT2から出力された場合、歩度パルスP11は駆動端子OUT2から継続して出力される。
【0049】
これにより、歩度パルスP11は、駆動端子OUT1、OUT2のどちらか一方の端子からのみ出力されるので、モータ駆動回路29の駆動端子OUT1、OUT2の特性差を排除出来、安定した歩度測定を実現できる。また、歩度パルスP11は、最後に出力された駆動パルスP10と同じ駆動端子から出力されるので、歩度パルスP11によって、モータ10が駆動され回転することを確実に防ぐことが出来る。なお、歩度パルスの詳細な説明は後述する。
【0050】
次に、通信パルス作成回路28は、外部操作信号P1によって動作モードが歩度測定モードに切り替わったので、通信パルスP13の出力を許可されて、外部装置100との非
接触通信を実行する(ST5)。
【0051】
ここで、通信パルス作成回路28は、入力するタイミング信号P6に基づいて、歩度パルスP11に同期した複数の通信パルスP13を出力し、モータ10のコイル11を通信パルスP13のタイミングで一時的にハイインピーダンスにする。これにより、コイル11がハイインピーダンスになることで、外部装置100からの信号を非接触で受信することが出来る。なお、非接触通信動作の詳細な説明は後述する。
【0052】
次に、制御回路27は外部操作信号P1を入力して、リューズ3の2段引き状態が継続しているかを判定する(ST6)。ここで、否定判定(リューズは通常位置に戻った)であれば、ST8へ進み、通常運針モードに移行して歩度パルスP11を停止し、駆動パルスP10の出力を行い、以降、リューズ3が2段引きされるまで、通常運針モードを継続する。
【0053】
また、ST6で肯定判定(リューズは2段引き位置を継続)であれば、電子時計1は歩度測定モードを継続し、制御回路27は前回の歩度パルスP11の出力から1秒が経過したかを判定する(ST7)。ここで、1秒未満であれば、ST6とST7を繰り返して1秒が経過するまでウエイトする。
【0054】
次に、ST7で1秒経過すれば、制御回路27の制御はST4へ戻り、再び歩度パルスP11をモータ信号P12として出力し、モータ駆動回路29は、歩度パルスP11を前回と同じ駆動端子OUT1、またはOUT2から出力する(ST4)。以降、リューズ3が通常位置に戻るまで、ST4からST7の動作が繰り返される。
【0055】
すなわち、本発明の電子時計は、外部操作部材であるリューズ3が通常位置のときは、通常運針モードとして指針が滑らかに動く連続運針を行い、リューズ3が操作されて通常位置とは異なる2段引き位置となったときは、歩度測定を行うための歩度測定モードに移行し、連続運針が停止すると共に、歩度を測定するための歩度パルスP11が1秒ごとにモータ10に供給されて、一般的な1秒ごとの歩度測定を実施することが出来る。また、歩度測定モードは、外部装置100との非接触通信も行うことが出来、歩度パルスP11に同期して通信パルスP13を出力することにより、安定した非接触通信を実現することが出来る。
【0056】
[実施形態の電子時計の通常運針モードと歩度測定モードの動作説明:図1、図4]
次に、実施形態の通常運針モードと歩度測定モードでの駆動パルスと歩度パルスの一例を図4のタイミングチャートを用いて説明する。なお、電子時計1の内部構成は図1を参照する。
【0057】
図4において、外部操作信号P1が論理“0”のときは、リューズ3が通常位置にあり、電子時計1は通常運針モードである。また、リューズ3が2段引きされると、外部操作信号P1は論理“1”となり(タイミングT1)、電子時計1は歩度測定モードに移行する。
【0058】
電子時計1が通常運針モードのときは、駆動端子OUT1、OUT2から、駆動パルスP10が交互に16Hz(周期62.5mS)の間隔で連続的に出力される。なお、駆動パルスP10は、実際には複数のパルス群によって構成されるが、駆動パルスP10の詳細は後述する。ここで、駆動パルスP10は16Hzの間隔に限定されないが、連続運針であるので、1秒周期よりは短い周期で出力される。
【0059】
電子時計1が歩度測定モードのときは、駆動パルスP10が最後に出力された駆動端子
から、歩度パルスP11が1秒周期で出力される。図4においては、歩度測定モードに移行する直前、駆動パルスP10が最後に出力された駆動端子はOUT2であるので、歩度パルスP11は、駆動端子OUT2から継続して出力される。ここで、歩度パルスP11の周期は1秒に限定されないが、N秒(Nは、N≧1の自然数)周期で出力されることで、一般的な歩度測定器によって正常な歩度測定が可能となる。なお、歩度パルスP11の詳細は後述する。
【0060】
また、リューズ3が通常位置に戻ると、外部操作信号P1は再び論理“0”となり(タイミングT2)、電子時計1は通常運針モードに復帰する。通常運針モードに復帰すると、駆動パルスP10が最後に出力された駆動端子と異なる駆動端子から、最初の駆動パルスP10が出力し、以降、駆動端子OUT1、OUT2から、駆動パルスP10が交互に16Hz(周期62.5mS)の間隔で連続的に出力される。
【0061】
図4においては、タイミングT1の直前に、最後に出力された駆動パルスP10は駆動端子OUT2から出力されているので、タイミングT2で通常運針モードに復帰した最初の駆動パルスP10は、駆動端子OUT1から出力される。この動作によって、二極ステップモータであるモータ10は回転ミスを起こすことなく、駆動パルスP10が出力されるごとに順次回転することが出来る。
【0062】
[実施形態の電子時計の駆動パルスの詳細説明:図1、図5]
次に、実施形態の通常運針モードにおける駆動パルスの一例を図5のタイミングチャートを用いて詳細に説明する。なお、電子時計1の内部構成は図1を参照する。
【0063】
図5において、駆動端子OUT1から駆動パルスP10が出力する(タイミングT10)と、その後、62.5mS後に、駆動端子OUT2から次の駆動パルスP10が出力する(タイミングT20)。また、タイミングT20の62.5mS後に、駆動端子OUT1から再び駆動パルスP10が出力する(タイミングT30)。このように、駆動パルスP10は、二つの駆動端子OUT1とOUT2から交互に出力される。
【0064】
駆動パルスP10は、図示するように複数のパルスによって成り、複数のパルスを合計したパルス幅は、一例として約5mSである。また、駆動パルスP10の出力後(タイミングT11)、所定の期間が経過して後、タイミングT12から補正パルスP10aが出力する。この補正パルスP10aは、駆動パルスP10によってモータ10が回転できなかった場合、その回転状態を検出して出力される駆動パルスP10を補うパルスである。
【0065】
この補正パルスP10aも複数のパルスによって成るが、そのパルス幅は駆動パルスP10より広く、一例として約12mSである。ここで、駆動パルスP10と補正パルスP10aの間のタイミングT11からT12の期間は数十mSあり、この期間はモータ10が駆動パルスP10によって正しく回転されたかを検出するための回転検出期間Kである。
【0066】
この回転検出期間Kに、モータ10のコイル11の両端子に接続される駆動端子OUT1、OUT2の一方がオーブンとなり、起電力検出回路30は、コイル11からの起電力V1を入力してモータ10の回転状態を検出し、回転不足が判定されると回転検出信号P7を駆動パルス成形回路24に対して出力する。すなわち、図示するように、回転検出信号P7はタイミングT11とT12の間の回転検出期間Kに出力される。
【0067】
ここで、駆動パルス成形回路24は回転検出信号P7を入力すると、タイミングT12で補正パルスP10aを出力し、モータ10の回転不足を補って、モータ10が常に正常に回転するように補正を行う。この補正パルスP10aをモータ10の回転状態に応じて
出力する技術は公知であるが、駆動パルスP10が出力を開始するタイミングT10から、補正パルスP10aが出力を終了するタイミングT13までは、最大で48mS程度必要となる。
【0068】
ここで、電子時計1が連続運針して指針を滑らかに動かす場合、駆動パルスP10は、前述したように、16Hz(周期62.5mS)位で駆動することが好ましく、この場合、駆動パルスP10の開始から補正パルスP10aの終了までが約48mSであるとすれば、パルスが出力されない休止期間は、わずか約14.5mSとなる。
【0069】
ここで、従来のような1秒運針の時計であれば、この休止期間は十分に長いので、この休止期間を用いて、外部装置との非接触通信を行うことが出来る。しかし、本発明のように、秒針が滑らかに動く連続運針の場合は、このように休止期間が極めて短く、且つ、短い周期で繰り返されるので、外部装置との非接触通信を実施することは、極めて困難である。
【0070】
また、歩度測定器による歩度測定においても、図5で示すように、駆動パルスP10と補正パルスP10aが短い周期で連続的に出力されるので、モータ10からは連続した電磁パルスが発生する。このため、1秒周期で発生する電磁パルスを検出して歩度測定を行うことが前提の歩度測定器では、このような連続運針のアナログ時計の歩度測定を高精度に行うことは極めて難しいことが理解できる。
【0071】
[実施形態の電子時計の歩度パルスの詳細説明:図1、図6]
次に、実施形態の歩度測定モードにおける歩度パルスの一例を図6のタイミングチャートを用いて詳細に説明する。なお、電子時計1の内部構成は図1を参照する。歩度測定モードは、前述したように、リューズ3が2段引きされることで、連続運針の駆動パルスP10が停止し、1秒ごとの歩度パルスP11が出力されるモードである。
【0072】
図6は、歩度測定モードにおける駆動端子OUT2の出力状態を示しており、駆動端子OUT2から1秒ごとに歩度パルスP11が出力している。この歩度パルスP11は、前述したように、歩度測定モードに移行する直前の駆動パルスP10が最後に出力された駆動端子から出力される。よって、図6の例では、歩度パルスP11は駆動端子OUT2から出力しているが、駆動端子OUT1から出力される場合もある。
【0073】
この歩度パルスP11がモータ10のコイル11に供給されることによって、コイルから1秒周期の電磁パルスが発生し、歩度測定器(図示せず)は、電子時計1の歩度を測定することが出来る。また、歩度パルスP11のパルス幅は一例として約32μSであり、非常に狭いパルス幅であるが、歩度測定器は狭いパルス幅であっても、十分に電磁パルスを検出できる。また、パルス幅が狭いので、歩度パルスP11によってモータ10が動作することはなく、また、モータ10に流れる電流も少ないので、電子時計の電池寿命に影響することはない。
【0074】
また、図6において、外部装置100(図1参照)と非接触通信を行う場合は、歩度パルスP11に同期して、通信パルス作成回路28から通信パルスP13が出力する。
この通信パルスP13は、パルス幅の狭い複数のパルス群で構成され、一例として、歩度パルスP11から約125mS後に出力される。
【0075】
また、通信パルスP13のパルス幅は、一例として約32μSであり、パルスの間隔は、約1mSであり、通信パルスP13の出力開始から終了までの期間は、一例として約30mSである。この通信パルスP13がモータ駆動回路29に入力すると、モータ10のコイル11の両端子に接続される駆動端子OUT1、OUT2の一方がオーブンとなり、
起電力検出回路30は、この通信パルスP13のタイミングでコイル11からの起電力V1を駆動端子OUT1、OUT2を介して入力し、外部装置100からの信号を受信する。なお、非接触通信の詳細は、動作原理の説明として後述する。
【0076】
このように、非接触通信を行うための通信パルスP13は、歩度信号P11を基準として150mS以上の期間が必要であり、連続運針を行うアナログ時計では、通信時間が足らず、非接触通信を行うことは出来ない。しかし、本発明の電子時計では、歩度測定モードを利用して非接触通信を行うので、図6に示すように十分な余裕を持って非接触通信を実施ことが出来る。
【0077】
[実施形態の電子時計の非接触通信の動作フロー説明:図1、図7]
次に、実施形態の歩度測定モードにおける非接触通信の動作フローを図7のフローチャートを用いて説明する。なお、電子時計1の内部構成は図1を参照する。また、この電子時計の非接触通信技術は公知であり、詳細は特許文献2に開示されているので、本発明では基本的な動作フロー(図7)と基本原理(図8後述)の概略を説明する。また、本実施形態の非接触通信は、受信データによって電子時計の歩度調整を行うこと例として説明する。
【0078】
図7において、通信パルス作成回路28はタイミング信号P6によって、歩度パルスP11の出力から所定の期間の後に、複数の通信パルスP13を所定の周期で出力する(ST11)。ここで、前述したように、歩度パルスP11からの所定の期間は一例として約125mSであり、通信パルスP13の周期は、約1mSである(図6参照)。
【0079】
次に、電子回路20の起電力検出回路30は、外部装置100からの磁束Mによってモータ10から起電力V1が発生し、外部装置100からの受信を検出できるかを判定する(ST12)。ここで、起電力検出回路30が受信を検出出来れば、次のST13に進み、受信を検出出来なければ非接触通信動作を終了する。
【0080】
次に、起電力検出回路30が、ST12において外部装置100からの起電力V1を検出して受信有りと判定したならば、モータ10からの起電力V1を波形成形して受信信号P8として出力する(ST13)。ここで、受信信号P8は、通信パルスP13に同期した信号であるが、詳細は後述する図8で説明する。
【0081】
次に、電子回路20の通信制御回路31は、受信信号P8を入力して解読し、外部装置100からの受信データを取得する(ST14)。
【0082】
次に、通信制御回路31は、解読した受信データを、内蔵するメモリ(図示せず)に入力し、メモリの内容をこの新しい受信データに書き換える(ST15)。ここで、本実施形態の電子時計が、受信データによって歩度調整を実施することを例とするならば、通信制御回路31のメモリに書き換えられたデータは、歩度調整データである。なお、外部装置100からの受信データは限定されるものではなく、どのような種類のデータであっても良い。
【0083】
次に、通信制御回路31は、メモリに書き換えられた新しい歩度調整データに基づいて、分周制御信号P14と発振制御信号P15を出力し、電子時計1の歩度を調整する(ST16)。以上、ST10からST16によって非接触通信の基本動作フローが終了する。
【0084】
[実施形態の電子時計の非接触通信の動作原理の説明:図1、図8]
次に、実施形態の歩度測定モードにおける非接触通信の動作原理を図8のタイミングチ
ャートを用いて説明する。なお、電子時計1の内部構成は図1を参照する。また、この電子時計の非接触通信技術は公知であるので、ここでは基本原理の概略を説明する。
【0085】
図8において、歩度測定モードに移行した電子時計1の駆動端子OUT2から1秒ごとに歩度パルスP11が出力する。この歩度パルスP11に同期して、複数の通信パルスP13が出力されると、モータ駆動回路29は通信パルスP13によって、歩度パルスP11が出力されている側の駆動端子OUT2をオープンにし、接続されているコイル11を通信パルスP13の狭いパルス幅のタイミングで一時的にハイインピーダンスにする。すなわち、歩度パルスP11と通信パルスP13は、2端子の駆動端子のどちらか一方の同一の端子から出力される。
【0086】
一方、外部装置100は送受信のための通信コイル(後述する)を内蔵し、電子時計1の歩度パルスP11を通信コイルで検出すると、受信した歩度パルスP11のタイミングに同期して、所定の周波数の交流信号Eを通信コイルに供給し、磁束Mを発生させる。ここで、外部装置100は、送信するデータをシリアルデータとして、各ビットの論理に応じて交流信号Eの位相を変えることで、送信データを交流信号Eに乗せる位相変調方式を採用している。
【0087】
たとえば、図示するように、送信データが7ビットであって、そのデータが論理“1101101”である場合、外部装置100は、最初の論理“11”のときの交流信号Eの位相に対して、次の論理“0”のときでは交流信号Eの位相を180度反転して出力する。また、その次のデータが論理“1”であるので、交流信号Eの位相を再び180度元に戻して出力する。以下同様に送信データの論理に応じて位相を180度反転させる。
【0088】
これにより、送信データに応じて位相が180度変化する交流信号Eが外部装置100の通信コイルに供給されるので、この通信コイルに近接する位置に電子時計1が置かれるならば、電子時計1のモータ10のコイル11の両端には、外部装置100が出力する交流信号Eと位相がほぼ等しい起電力V1が発生する。
【0089】
ここで、モータ10のコイル11は、前述したように、通信パルスP13のタイミングで一時的にハイインピーダンスになるので、実際には、通信パルスP13が出力するタイミングでコイル11の両端に起電力V1がパルス状に発生し、他のタイミングでは、プラス電圧VDDと同電位に保持される。これにより、コイル11の両端に接続している駆動端子OUT1とOUT2に、通信パルスP13のタイミングで起電力V1が伝達される。
【0090】
図8では、駆動端子OUT2に伝達された起電力V1を示している。起電力検出回路30は、この通信パルスP13のタイミングで駆動端子OUT2に伝達される起電力V1を波形成形して受信信号P8として出力し、通信制御回路31は、この受信信号P8を入力して受信データとして記憶する。
【0091】
ここで、起電力検出回路30が通信パルスP13のタイミングで行う波形成形の一例を説明する。図8において、通信パルスP13のタイミングで、交流信号Eがプラス電位である場合、駆動端子OUT2に伝達される起電力V1は、プラス電圧VDDに近い電圧となるので、受信信号P8は論理“1”となって通信パルスP13に同期したパルスが生成される。また、通信パルスP13のタイミングで、交流信号Eがマイナス電位である場合、駆動端子OUT2に伝達される起電力V1は、マイナス電圧VSSに近い電圧となるので、受信信号P8は論理“0”となってパルスは生成されない。
【0092】
よって、受信データP8は、図示するように通信パルスP13の第1、第2、第4、第5、第7の各ビットでパルスが出力され、第3、第6ビットでは、パルスは出力されない
。これにより、通信制御回路31は、受信信号P8から7ビットの受信データを取得することが出来る。なお、受信データは7ビットに限定されず、実際には誤り符号等を含めて数十ビットによって構成される。
【0093】
ここで、外部装置100が非接触通信によって電子時計1の歩度調整を行う歩度調整装置であるのなら、得られた受信データは歩度調整データである。これにより、通信制御回路31は、この歩度調整データに基づいて分周制御信号P14と発振制御信号P15を出力して、分周回路22の分周比を制御し、また、発振回路21のコンデンサを切り替えて発振周波数を微調整し、高精度な歩度調整を実現することが出来る。
【0094】
[実施形態の電子時計の非接触通信の実際例:図9]
次に、実施形態の電子時計を外部装置に近接させて、非接触通信を行う場合を図9を用いて説明する。ここで説明の前提として、外部装置は電子時計の歩度を非接触通信によって調整する歩度調整装置であることとする。
【0095】
図9において、電子時計1のリューズ3を操作して、リューズ3を2段引き位置にして、電子時計1を歩度測定モードとする。次に、この状態で電子時計1を歩度調整装置100の調整エリア101に置く。歩度調整装置100の調整エリア101の下部には、通信コイル102が配置されており、電子時計1を調整エリア101に置くことによって、電子時計1のモータ10(図1参照)と通信コイル102が近接し、電磁結合することが出来る。
【0096】
これにより、歩度調整装置100は、電子時計1からの歩度パルスP11を受信し、これに同期して前述した送信データを乗せた交流信号Eを通信コイル102に出力することで、電子時計1に歩度調整データを送信することが出来る。なお、通信コイル102は、送信コイルと受信コイルの二つに分けても良い。
【0097】
以上の作業によって、外装に入った完成品の電子時計1のリューズ3を簡単に操作するだけで、歩度調整装置100との非接触通信を実施出来るので、電子時計の歩度調整工程での作業性が改善され、また、時計が市場に出回ったときのメンテナンス性にも優れている。また、外装に入れた状態で歩度調整が出来るので、水晶振動子が浮遊容量の影響や応力の変化で発振周波数に変化が生じたとしても、そのような要因を排除した高精度に歩度調整された電子時計を提供することが出来る。
【0098】
また、本発明の非接触通信は、前述したように、歩度測定モードでの1秒ごとの歩度パルスP11に同期して実施されるので、従来の1秒運針によるアナログ電子時計の非接触通信動作と同様である。これにより、歩度調整装置100は、従来の回路構成のものをそのまま使用できるので、装置の改造などの必要が無く、本発明の効果は大きい。
【0099】
また、図9では外部装置を歩度調整装置として説明したが、これに限定されず、どのような装置にでも適応できる。たとえば、電子時計1にセンサーが搭載されている場合、そのセンサーによって得られた情報を送受信する送受信装置でも良い。また、外部装置は電子時計1からの歩度パルスP11を検出して歩度を測定する歩度測定器でも良い。この歩度測定器においても、従来の1秒運針のアナログ電子時計用の歩度測定器をそのまま使用することが出来る。また、外部装置は、歩度測定器と歩度調整装置を組み合わせた装置でも良い。
【0100】
[実施形態の電子時計の非接触通信動作の変形例の説明:図10]
次に、実施形態の非接触通信動作の変形例の動作フローを図10のフローチャートを用いて説明する。なお、電子時計1の内部構成は図1を参照する。また、動作フローは受信
データによって電子時計の歩度調整を実施すること例として説明する。この非接触通信動作の変形例は、非接触通信が歩度測定モードと分離して行われることを特徴とする。
【0101】
図10において、電子時計1は、非接触通信が許可されているかどうかを判定する(ST21)。ここで、非接触通信の許可は、一例として電子時計1の外装7(図2参照)の側面に操作ボタン(図示せず)を設け、電子時計1が歩度測定モードであるときに、この操作ボタンを押圧することで、非接触通信を許可するなどの処理を行うと良い。
【0102】
ここで、ST21において肯定判定(非接触通信許可)であれば、次のST11へ進み、否定判定(非接触通信不許可)であれば、非接触通信を実施せずに非接触通信動作を終了する。また、非接触通信動作のST11からST16は、前述の図7で説明した非接触通信の基本動作フローと同一であるので説明は省略する。
【0103】
このように、非接触通信動作の変形例は、電子時計1がリューズ3の操作で歩度測定モードとなっても、非接触通信を実施しない。非接触通信を実施するには、さらに別の操作が必要となる。これにより、歩度測定と非接触通信を分離することが出来る。この結果、歩度測定だけを目的にして歩度測定モードに移行させる場合は、非接触通信を行わないので、電子時計1は不要な動作を行わずにすむ利点がある。
【0104】
ここで、非接触通信動作は、前述したように、通信パルスP13の狭いパルス幅のタイミングによって外部からの信号を受信するので、外部ノイズの影響を受けにくいが、歩度測定モードで常に非接触通信動作状態であると、外部ノイズを受信信号として受信してしまう可能性は零ではないので、誤動作が生じる危険性がある。しかし、この非接触通信動作の変形例のように、電子時計1が歩度測定モードに移行してから、さらに別操作で非接触通信を許可して非接触通信動作を行うことで、誤動作の発生を抑制することが出来る。
【0105】
[実施形態の電子時計の非接触通信動作の他の変形例の説明:図11]
次に、実施形態の非接触通信動作の他の変形例の動作フローを図11のフローチャートを用いて説明する。なお、電子時計1の内部構成は図1を参照する。また、動作フローは受信データによって電子時計の歩度調整を実施すること例として説明する。この非接触通信動作の他の変形例は、非接触通信の実施に所定の時間制限が付加されることを特徴とする。
【0106】
図11において、電子時計1は、非接触通信が許可されているかどうかを判定する(ST30)。ここで、非接触通信の許可は、非接触通信動作の他の変形例の場合は、リューズ3の操作によって電子時計1が歩度測定モードに移行したときに、同時に非接触通信が許可される。
【0107】
ここで、ST30において肯定判定(非接触通信許可)であれば、次のST31へ進み、否定判定(非接触通信不許可)であれば、非接触通信を実施せずに非接触通信動作を終了する。
【0108】
次に、通信パルス作成回路28は、ST30で肯定判定(非接触通信許可)であれば、内部のタイマ回路(図示せず)をリセットして、タイマ回路のカウントを開始する(ST31)。以降の非接触通信動作のステップST11からST16は、前述の図7で説明した非接触通信の基本動作フローと同一であるので説明は省略するが、ST12で外部装置100からの受信が検出されない場合は、ST32に進む。
【0109】
ST32では、通信パルス作成回路28の内部タイマのカウント値と所定の時間データが比較され、タイマのカウント値が所定の時間データ以下であれば、そのまま非接触通信
動作を終了する。また、タイマのカウント値が所定の時間データに達していれば(時間オーバー)、次のST33に進む(ST32)。
【0110】
次に、通信パルス作成回路28はST32で時間オーバーであれば、非接触通信を不許可(禁止)にしてから非接触通信動作を終了する(ST33)。
【0111】
このST32とST33の制御によって、非接触通信が所定の時間オーバーでない場合は、非接触通信許可が継続するので、1秒後に再び歩度パルスP11が出力して非接触通信動作が再開された場合、ST30で肯定判定されて、通信パルスP13が再び出力される。しかし、非接触通信が所定の時間オーバーになると、非接触通信動作は禁止されるので(ST33)、1秒後に再び歩度パルスP11が出力して非接触通信動作が再開された場合、ST30で否定判定されて、非接触通信は行われずに終了する。
【0112】
このように、非接触通信動作の他の変形例は、電子時計1がリューズ3の操作で歩度測定モードになれば、同時に非接触通信が許可されるが、非接触通信は受信を検出しなければ、予め決められた所定の時間で終了するタイマ動作となる。すなわち、非接触通信の動作は時間制限が付加される。これにより、歩度測定モードが継続した場合、電子時計1が外部ノイズを受信信号として受信して非接触通信が誤動作する可能性を排除することが出来る。
【0113】
以上のように、本発明の電子時計によれば、連続運針によって指針が滑らかに動くアナログ時計の歩度測定と非接触通信とを容易に実現し、信頼性に優れた歩度測定や非接触通信による高精度な歩度調整機能を備えた電子時計を提供することが出来る。
【0114】
なお、本発明の実施例で示したブロック図、フローチャート、タイミングチャート等は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を満たすものであれば、任意に変更してよい。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の電子時計は、最近見直されつつある連続運針のアナログ電子時計に好適である。
【符号の説明】
【0116】
1 電子時計
2 水晶振動子
3 リューズ
5 電池
6 表示部
6a 秒針
6b 分針
6c 時針
6d 日板
7 外装
10 モータ
11 コイル
20 電子回路
21 発振回路
22 分周回路
23 タイミング信号作成回路
24 駆動パルス成形回路
25 歩度パルス成形回路
26 外部入力回路
27 制御回路
28 通信パルス作成回路
29 モータ駆動回路
30 起電力検出回路
31 通信制御回路
100 外部装置(歩度調整装置)
101 調整エリア
102 通信コイル
P1 外部操作信号
P2 基準信号
P3 分周信号
P4、P5、P6 タイミング信号
P7 回転検出信号
P8 受信信号
P10 駆動パルス
P10a 補正パルス
P11 歩度パルス
P12 モータ信号
P13 通信パルス
P14 分周制御信号
P15 発振制御信号
M 磁束
OUT1、OUT2 駆動端子
V1 起電力


【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、該モータを駆動するモータ駆動回路と、
各種タイミング信号を作成するタイミング信号作成回路と、
該タイミング信号作成回路より出力されるタイミング信号を入力して、前記モータを駆動するための駆動パルスを作成し出力する駆動パルス成形回路と、
該タイミング信号作成回路より出力されるタイミング信号を入力して、歩度を測定するための歩度パルスを作成し出力する歩度パルス成形回路と、
外部操作部材の操作により外部操作信号を出力する外部入力回路と、
前記外部操作信号によって、前記駆動パルスと前記歩度パルスの前記モータ駆動回路への出力状態を制御する制御回路と、を有する
ことを特徴とする電子時計。
【請求項2】
前記駆動パルスは1秒より短い周期で出力され、
前記歩度パルスはN秒(Nは、N≧1の自然数)周期で出力され、
前記制御回路は、前記外部操作信号の入力により、
前記駆動パルスの出力を停止し、前記歩度パルスを出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子時計。
【請求項3】
外部装置からの信号を前記モータにより受信するための通信パルスを、
前記タイミング信号作成回路より出力されるタイミング信号を入力して作成し、
前記モータ駆動回路に出力する通信パルス作成回路を有し、
該通信パルス作成回路は、前記外部操作信号の入力により前記通信パルスの出力を許可される
ことを特徴とする請求項2に記載の電子時計。
【請求項4】
前記モータが二極ステップモータであり、
前記モータ駆動回路が該二極ステップモータ駆動用の2端子を有し、
前記歩度パルスと前記通信パルスが該2端子の同一の端子から出力され、かつ、
該2端子の内の一方の端子からのみ出力される
ことを特徴とする請求項3に記載の電子時計。
【請求項5】
前記外部操作部材がリューズであり、
該リューズを通常位置と異なる位置に操作すると、前記外部操作信号が前記外部入力回路から出力されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の電子時計。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−185831(P2011−185831A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53055(P2010−53055)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(307023373)シチズン時計株式会社 (227)
【Fターム(参考)】