説明

電子機器、カバー及び構造体

【課題】
外観品質を保持しつつ構造体の強度や成形性を向上させることができる電子機器、カバー及び構造体を提供すること。
【解決手段】
構造体1の外側に取り付けられるとともに、周縁部2bの一部が内面側に折り曲がったカバー2を有する電子装置において、カバー2は、その内面の折り目2dを含む所定の領域から突出するとともに、カバー2の内面側から見て折り目2dと交叉する線形成分を有する第1の部位と、当該第1の部位と交叉する線形成分を有する第2の部位とが一体となった1又は複数のリブ2aを有し、構造体1は、リブ2aと対応する位置に当該リブ2aと嵌合する穴部1aを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース、フレームなどの構造体の外側に取り付けられたカバーを有する電子機器、カバー及び構造体に関し、特に、外観品質を保持することができる電子機器、カバー及び構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等の電子機器では、ケース(構造体)の外側にさらにデザインが施されたカバーを取り付け、意匠的な変化を持たせて着せ替えのような遊び心を演出するものや、基本のケースのカバー取付部分を共通化してカバーだけの色違い品を複数用意して、製造上で簡単にカラーバリエーション展開を実現しようとするものがある(例えば、特許文献1参照)。これらの構成では、カバーは、一般に周縁部の一部が内面側に折り曲がった(湾曲したものを含む)ものがある。このようなカバーは、薄肉の成形品となるので、周縁部の反りや浮きが発生しやすい。そのため、図6のようにカバー102を第1のケース101の外側に取り付ける場合、図7のようにカバー102の成形時の反りによって、カバー102の周縁部分と第1のケース101の間に開き(隙間)が発生し、(第1のケース101と組み合わさる)第2のケース103の周縁部分で段差が発生し、外観上問題が生じていた。
【0003】
このような問題を解決する手段として、図8のようにカバー102内側角部に折り目方向と直交する縦リブ102aを複数配設したものがあり、縦リブ102aによってカバー102自体の反りを防止(矯正)するとともに、曲げ強度を上げるようにしている。また、図9のようにカバー102内側角部に折り目方向に沿って連続的に配された横リブ102bを配設し、第1のケース101における横リブ102bに対応する位置に溝部101bを形成したものがあり、溝部101bに横リブ102bを嵌め込むことで、カバー102の周縁部の開きを抑えている。
【0004】
【特許文献1】実用新案登録3063050号公報
【特許文献2】実開昭58−166078号公報
【特許文献3】特開2003−32342号公報
【特許文献4】特許第2771518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、図8のような構成では、カバー102の成形上の反りを完全には抑えることができない。また、縦リブ102aと対応させるために、第1のケース101には大きな穴部101aを形成する必要があり、第1のケース101の強度や成形性に問題があった。
【0006】
また、図9のような構成では、第1のケース101に溝部101bを形成することによって内側方向へケース周囲の厚みが増えてしまうので、内蔵実装部品のスペース確保が問題であった。
【0007】
本発明の第1の目的は、外観品質を保持しつつ構造体の強度や成形性を向上させることができる電子機器、カバー及び構造体を提供することである。
【0008】
本発明の第2の目的は、外観品質を保持しつつ内蔵実装部品のスペースを確保することができる電子機器、カバー及び構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の視点においては、電子機器において、構造体の外側に取り付けられるとともに、少なくとも周縁部の全体又は一部が内面側に折り曲がったカバーを有する電子装置において、前記カバーは、その内面の折り目の一部を含む所定の領域から突出するとともに、前記カバーの内面側から見て前記折り目と交叉する(線形成分を有する)第1の部位と、当該第1の部位と交叉する(線形成分を有する)第2の部位とが一体となった1又は複数のリブを有し、前記構造体は、前記リブと対応する位置に当該リブと嵌合する穴部を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の前記電子機器において、前記リブは、前記カバーの内面側から見てT字若しくはL字又はΩ字形状に形成されていることが好ましい。
【0011】
本発明の前記電子機器において、前記リブの前記第1の部位は、前記折り目より端部側の前記カバーの面と接合することが好ましい。
【0012】
本発明の前記電子機器において、前記リブの前記第2の部位は、前記折り目より中央側の前記カバーの面と接合することが好ましい。
【0013】
本発明の前記電子機器において、前記リブは、先端部の近傍に爪部を有し、前記構造体は、前記爪部と対応する位置に当該爪部と掛合する掛合部を有することが好ましい。
【0014】
本発明の前記電子機器において、前記電子機器は、携帯電話機であることが好ましい。
【0015】
本発明の第2の視点において、構造体の外側に取り付けられるとともに、少なくとも周縁部の全体又は一部が内面側に折り曲がったカバーにおいて、内面の折り目の一部を含む所定の領域から突出するとともに、前記カバーの内面側から見て前記折り目と交叉する(線形成分を有する)第1の部位と、当該第1の部位と交叉する(線形成分を有する)第2の部位とが一体に構成され、前記構造体の所定の部位と嵌合する1又は複数のリブを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の第3の視点において、少なくとも周縁部の全体又は一部が内面側に折り曲がったカバーが取り付けられる構造体において、外面の角部を含む所定の領域に凹設されるとともに、前記構造体の外面側から見て前記角部の稜線と交叉する(線形成分を有する)第1の部位と、当該第1の部位と交叉する(線形成分を有する)第2の部位とが一体に構成され、前記カバーの所定の部位と嵌合する1又は複数の穴部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明(請求項1〜8)によれば、薄肉のカバーであっても、カバー自体の剛性が向上し、かつ、カバーの周縁部の反り(浮き、開き)を防止できるので、構造体とカバーの周囲の段差がなく良好な外観品質を実現できる。
【0018】
本発明(請求項1〜6)によれば、組み立て後にカバーの外側中央付近が押されても、カバーの周縁部の開きを防止できるので外観品質を保持できる。
【0019】
本発明(請求項1〜6)によれば、カバー周囲全体にリブを配設する必要がないので、内臓部品のスペースを確保することができる。
【0020】
本発明(請求項1〜4)によれば、構造体とカバーを組み合わせたときに、リブの第2の部位が構造体の穴部と嵌合してリブが外側に倒れないので、リブの第1の部位を介してカバーが外側に開くことを防止することができる。
【0021】
本発明(請求項1〜4)によれば、リブをカバーの適当な位置に複数個配設することにより、構造体への取り付け前にカバーの反りが発生していても、取り付け後に構造体の形状に沿って矯正されるので、カバーの周縁部が外側に広がらず、カバーの端部で構造体との段差が発生せず良好な合わせ面を形成できる。
【0022】
本発明(請求項5)によれば、リブの爪部が構造体の掛合部に掛合することにより、カバー周縁部でカバーと構造体を固定することができるため、構造体から離れる方向におけるカバーの浮きを最小限に抑えることができる。また、カバーを取り外す必要のある、例えば着せ替えカバーに利用すれば、カバーの反りを矯正しつつ小スペースでカバーのロック機構を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施形態1について図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施形態1に係る電子装置の構成を模式的に示した展開斜視図である。図2は、本発明の実施形態1に係る電子装置の構成を模式的に示した(a)部分断面図、及び(b)A−A間の部分断面図である。図3は、本発明の実施形態1に係る電子装置のカバーの構成を模式的に示した部分斜視図である。図4は、本発明の実施形態1に係る電子装置のケースの構成を模式的に示した部分斜視図である。
【0024】
電子装置は、薄肉のカバーが構造体(ケース、フレームなど)に嵌合される筐体を有する携帯電話機、電化製品、OA機器などの電子装置である。また、電子装置は、大型で金属製の薄肉のカバーのキャビネットや建造物に適用してもよい。実施形態1では、携帯電話機を例に説明する。
【0025】
図2を参照すると、電子装置は、第1のケース1と、カバー2と、第2のケース3と、を有する。
【0026】
第1のケース1は、第2のケース3と組み合わさる構造体の一部材であり、カバー2が外面側から取り付けられる。第1のケース1は、カバー2を取り付けるための複数の穴部1aを有する。穴部1aは、カバー2のリブ2aと嵌合する有底の穴部である。穴部1aは、第1のケース1の外面の角部を含む所定の領域に凹設されており、第1のケース1の外面側から見て角部の稜線1cと交叉する線形成分を有する第1の部位と、当該第1の部位と交叉する線形成分を有する第2の部位とが一体に構成されており、実施形態1では第1のケース1の外面側から見てT字形状に構成されている。穴部1aは、第1のケース1の外面側から見てT字形状に構成する以外にも、L字、Ω字形状に構成してもよい。
【0027】
カバー2は、第1のケース1の外面側に取り付けられる。カバー2の周縁部2bは、第1のケース1の側端部に沿う領域においてカバー2の内面側に連続的に折り曲がっている(湾曲している場合を含む)。カバー2は、内面側の所定の位置に複数のリブ2aを有する。リブ2aは、内面側の折り目2dを含む所定の領域から突出しており、カバー2の内面側から見て折り目2dと交叉する線形成分を有する第1の部位(例えば、T字の縦線の部位)と、当該第1の部位と交叉する線形成分を有する第2の部位(例えば、T字の横線の部位)とが一体に構成されており、実施形態1ではカバー2の内面側から見てT字形状に形成されている。穴部1aは、第1のケース1の外面側から見てT字形状に構成する以外にも、L字、Ω字形状に構成してもよい。リブ2aは、第1のケース1の穴部1aに拘束される(遊びが小さい)ものであれば、穴部1aとの間に多少の隙間があってもかまわない。例えば、リブ2aがΩ字形状で、穴部1aが菱形形状であれば、Ω字の丸部分の外面と菱形形状の4箇所の内形面で、線接触して拘束されるようにしてもよい。
【0028】
第2のケース3は、第1のケース1と組み合わさる構造体の一部材である。
【0029】
実施形態1によれば、リブ2aの第2の部位が穴部1aで規制され、カバー2の外形の外側方向に倒れないので、リブ2aの第1の部位を介してカバー2の周縁部2bが外側に広がることを防止することができる。また、組み立て後にカバー2の上部(外面側中央付近)が押されても、カバー2の周縁部2bの開きを防止できるので外観品質を保持できる。さらに、リブ2aは、第1の部位でカバー2の周縁部2bの開きを強制的に押さえ込むことができ、カバー2の周囲全体に設置する必要がないので、内臓部品のスペースを確保することも可能である。
【0030】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について図面を用いて説明する。図5は、本発明の実施形態2に係る電子装置の構成を模式的に示した部分断面図である。実施形態2に係る電子装置では、リブ2aの先端部近傍に爪部2cを設け、第1のケース1における爪部2cと対応する位置に当該爪部2cと掛合する掛合部1bを設けている。その他の構成については実施形態1と同様である。実施形態2によれば、カバー2の外周近傍でカバー2と第1のケース1を固定することができるため、カバー2の上方向(第1のケース1の反対側の方向)の浮きも最小限に抑えることができる。また、カバー2を取り外す必要のある電子装置(例えば、カバーの着せ替え可能な電子装置)に利用すれば、カバー2の反りを矯正しつつ小スペースでカバーのロック機構を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態1に係る電子装置の構成を模式的に示した展開斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る電子装置の構成を模式的に示した(a)部分断面図、及び(b)A−A間の部分断面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る電子装置のカバーの構成を模式的に示した部分斜視図である。
【図4】本発明の実施形態1に係る電子装置のケースの構成を模式的に示した部分斜視図である。
【図5】本発明の実施形態2に係る電子装置の構成を模式的に示した部分断面図である。
【図6】従来例1に係る電子装置の構成を模式的に示した展開斜視図である。
【図7】従来例1に係る電子装置の構成を模式的に示した部分断面図である。
【図8】従来例2に係る電子装置の構成を模式的に示した部分展開斜視図である。
【図9】従来例3に係る電子装置の構成を模式的に示した部分展開斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1、101 第1のケース(構造体)
1a 穴部
1b 掛合部
1c 稜線
2、102 カバー
2a リブ
2b 周縁部
2c 爪部
2d 折り目
3、103 第2のケース(構造体)
101a 穴部
101b 溝部
102a 縦リブ
102b 横リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体の外側に取り付けられるとともに、少なくとも周縁部の全体又は一部が内面側に折り曲がったカバーを有する電子装置において、
前記カバーは、その内面の折り目の一部を含む所定の領域から突出するとともに、前記カバーの内面側から見て前記折り目と交叉する第1の部位と、当該第1の部位と交叉する第2の部位とが一体となった1又は複数のリブを有し、
前記構造体は、前記リブと対応する位置に当該リブと嵌合する穴部を有することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記リブは、前記カバーの内面側から見てT字形状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記リブの前記第1の部位は、前記折り目より端部側の前記カバーの面と接合することを特徴とする請求項1又は2記載の電子機器。
【請求項4】
前記リブの前記第2の部位は、前記折り目より中央側の前記カバーの面と接合することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の電子機器。
【請求項5】
前記リブは、爪部を有し、
前記構造体は、前記爪部と対応する位置に当該爪部と掛合する掛合部を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載の電子機器。
【請求項6】
前記電子機器は、携帯電話機であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載の電子機器。
【請求項7】
構造体の外側に取り付けられるとともに、少なくとも周縁部の全体又は一部が内面側に折り曲がったカバーにおいて、
内面の折り目の一部を含む所定の領域から突出するとともに、前記カバーの内面側から見て前記折り目と交叉する第1の部位と、当該第1の部位と交叉する第2の部位とが一体に構成され、前記構造体の所定の部位と嵌合する1又は複数のリブを備えることを特徴とするカバー。
【請求項8】
少なくとも周縁部の全体又は一部が内面側に折り曲がったカバーが外面側から取り付けられる構造体において、
外面の角部を含む所定の領域に凹設されるとともに、前記構造体の外面側から見て前記角部の稜線と交叉する第1の部位と、当該第1の部位と交叉する第2の部位とが一体に構成され、前記カバーの所定の部位と嵌合する1又は複数の穴部を備えることを特徴とする構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−86279(P2006−86279A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−268370(P2004−268370)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】