説明

電子機器、ケーブル巻き取り構造、およびスライド式構造体

【課題】デッドスペースの削減とデザイン性の向上とを併せて実現可能にする。
【解決手段】電子機器1は、第1の筐体4と、第1の筐体4に対してスライド可能な第2の筐体5と、第1の筐体4内に設けられ、大径部31と小径部32とを備えた段付きローラ24と、大径部31に巻き掛けられるとともに第1の筐体4内から第2の筐体5内に延びた第1の部分21aとこの第1の部分21aに繋がるとともに、小径部32に巻き掛けられ、第1の筐体4内に延びた第2の部分21bとを有したフレキシブルケーブル21と、第1の部分21aが緩む方向に第2の筐体4がスライドする時に、第1の部分21aを巻き取る向きに段付きローラ24を回転させる駆動部25とを具備した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルケーブルを巻き取る構造に係る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、互いに重ねられた第1および第2の筐体を備え、第2の筐体が第1の筐体に対してスライド可能な電子機器が提供されている。
【0003】
特許文献1は、第2の筐体が第1の筐体の上面を覆う閉成状態から第1の筐体の上面を露出させる開成状態にスライド可能な携帯機器を開示している。この携帯機器は、第2の筐体を閉成状態から開成状態になるように付勢するゼンマイバネユニットを備えている。
【0004】
特許文献2は、フラットケーブルを巻いた状態で収容する給電装置を開示している。このフラットケーブルは、電力供給用のフラットケーブルと、信号供給用のフラットケーブルに分かれている。そして、信号供給用フラットケーブルを内側に、電力供給用のフラットケーブルを外側にして2つのケーブルが重ね巻きされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−159018号公報
【特許文献2】特開2004−48849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、第1の筐体に対して第2の筐体がスライド可能な電子機器では、第1の筐体と第2の筐体との間にフレキシブルケーブルが延びている。このような電子機器は、デッドスペースの削減とデザイン性の向上とを併せて実現することが難しい。
【0007】
つまり、第1の筐体に向かう合う第2の筐体の下壁には、第1の筐体からフレキシブルケーブルが通される比較的大きな開口部が設けられている。デッドスペースを削減するためには、第1の筐体に対する第2の筐体のスライド量を大きくすることが望ましいが、スライド量を大きくすると、最大スライド時に第2の筐体の下壁の開口部が外部に露出されてしまい、デザイン性が損なわれてしまう。
【0008】
この開口部の露出を防止し、デザイン性を高めるためには、第2の筐体の下壁の開口部を比較的小さく形成する必要がある。そのためには、この比較的小さな開口部の移動に対してフレキシブルケーブルが十分に追従するように、フレキシブルケーブルの長さを長くする必要がある。
【0009】
しかしながら、長いフレキシブルケーブルを用いると、第2の筐体のスライド時にフレキシブルケーブルが大きく撓んでしまい、第1の筐体と第2の筐体との間からフレキシブルケーブルが外部にはみ出す可能性がある。そのため、長いフレキシブルケーブルを用いた電子機器では、逆にスライド量をあまり大きくとることができず、その結果デッドスペースが大きくなる。なお、例えば車両や冷蔵庫のスライドドアのような各種スライド式構造体においても同様である。
【0010】
特許文献1の構造は、ゼンマイバネにてワイヤー線の一端部を引くものであり、ケーブルのような両端部がそれぞれコネクタに接続されるものには適用できない。特許文献2の構造では、ケーブルを巻き取る付勢力が無いため、収容時のケーブルの曲率が大きくなってしまう。その結果、巻いた状態でケーブルを収容するために大きなスペースが必要になる。
【0011】
本発明の目的は、デッドスペースの削減とデザイン性の向上とを併せて実現することができるケーブル巻き取り構造、電子機器、およびスライド式構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一つの形態に係る電子機器は、第1の筐体と、前記第1の筐体に対してスライド可能な第2の筐体と、前記第1の筐体内に設けられ、大径部と小径部とを備えた段付きローラと、前記大径部に巻き掛けられるとともに前記第1の筐体内から前記第2の筐体内に延びた第1の部分とこの第1の部分に繋がるとともに、前記小径部に巻き掛けられ、前記第1の筐体内に延びた第2の部分とを有したフレキシブルケーブルと、前記第1の部分が緩む方向に前記第2の筐体がスライドする時に、前記第1の部分を巻き取る向きに前記段付きローラを回転させる駆動部とを具備した。
【0013】
本発明の一つの形態に係るケーブル巻き取り構造は、第1の部分と、この第1の部分に繋がる第2の部分とを有したフレキシブルケーブルを巻き取るケーブル巻き取り構造であって、前記第1の部分が巻き掛けられる大径部と前記第2の部分が巻き掛けられる小径部とを備えた段付きローラと、前記第1の部分が緩む方向に前記フレキシブルケーブルが移動する時に、前記第1の部分を巻き取る向きに前記段付きローラを回転させる駆動部とを具備した。
【0014】
本発明の一つの形態に係るスライド式構造体は、第1のユニットと、前記第1のユニットに対してスライド可能な第2のユニットと、前記第1のユニット内に設けられ、大径部と小径部とを備えた段付きローラと、前記大径部に巻き掛けられるとともに前記第1のユニット内から前記第2のユニット内に延びた第1の部分とこの第1の部分に繋がるとともに、前記小径部に巻き掛けられ、前記第1のユニット内に延びた第2の部分とを有したフレキシブルケーブルと、前記第1の部分が緩む方向に前記第2のユニットがスライドする時に、前記第1の部分を巻き取る向きに前記段付きローラを回転させる駆動部とを具備した。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、デッドスペースの削減とデザイン性の向上とを併せて実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電子機器の開成状態の斜視図。
【図2】図1中に示された電子機器の閉成状態の斜視図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るフレキシブルケーブルを示す平面図。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る段付きローラを示す斜視図。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る段付きローラ及びフレキシブルケーブルを示す斜視図。
【図6】図5中に示された段付きローラ及びフレキシブルケーブルを示す斜視図。
【図7】図6中に示された段付きローラ及びフレキシブルケーブルのF7−F7線に沿う断面図。
【図8】図1中に示された電子機器の開成状態の断面図。
【図9】図1中に示された電子機器の閉成状態の断面図。
【図10】本発明の第1の実施形態に係るフレキシブルケーブルの変形例を示す平面図。
【図11】本発明の第1の実施形態に係る駆動部の変形例を示す斜視図。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る駆動部を示す断面図。
【図13】本発明の第3の実施形態に係るドア構造の扉閉成状態を示す断面図。
【図14】図13中に示されたドア構造の半分開いた状態を示す断面図。
【図15】図13中に示されたドア構造の扉開成状態を示す断面図。
【図16】段付きローラを備えない電子機器の一例を示す断面図。
【図17】段付きローラを備えない電子機器の他の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
図1乃至図9は、本発明の第1の実施形態に係る電子機器1を開示している。電子機器1は、例えば比較的小型の携帯型電子機器であり、具体例としては携帯情報端末(Personal Digital Assistant;PDA)である。なお本発明は、上記に限定されるものではなく、スマートフォンやモバイル通信機器、ゲーム機、または携帯電話機などを含む種々の電子機器にはもちろん、さらに例えば冷蔵庫のような比較的大型の電子機器にも広く適用可能である。また電子機器1は、本発明でいうスライド式構造体の一例である。
【0018】
図1に示すように、電子機器1は、第1のユニット2と、第2のユニット3とを備えている。第1のユニット2は、例えば入力機能を有した本体ユニットである。第2のユニットは、例えば表示機能を有した表示ユニットである。
【0019】
図8および図9に示すように、第1のユニット2は、例えば扁平な箱状に形成された第1の筐体4を有する。第1の筐体4は、上壁4a、下壁4b、および周壁4cを有する。下壁4bは、電子機器1の底部に位置し、例えば電子機器1を机上面に置いて使用する時にその机上面に向かい合う壁部である。上壁4aは、下壁4bとの間に空間を空けて、下壁4bと略水平に広がっている。この上壁4aには、例えばキーボードやボタンなどの入力装置(図示しない)が設けられている。周壁4cは、下壁4bに対して起立し、下壁4bの縁部と上壁4aの縁部との間を繋いでいる。
【0020】
第2のユニット3は、例えば扁平な箱状に形成された第2の筐体5を有する。第2の筐体5は、上壁5a、下壁5b、および周壁5cを有する。下壁5bは、第1の筐体4の上壁4aに対向する。第2の筐体5の上壁5aは、下壁5bとの間に空間を空けて、下壁5bと略水平に広がっている。この上壁5aには、例えば表示画面を露出させる開口部5aa(図1参照)が設けられている。周壁5cは、下壁5bに対して起立し、下壁5bの縁部と上壁5aの縁部との間を繋いでいる。
【0021】
図8および図9に示すように、第2の筐体5は、図示しないスライド機構により第1の筐体4にスライド可能に連結されている。第2の筐体5は、第1の筐体4に重なり、第1の筐体4の上壁4aを覆う閉成状態(第1の状態、図9参照)と、第1の筐体4に対してずれて、第1の筐体4の上壁4aを露出させる開成状態(第2の状態、図8参照)との間で移動可能である。
【0022】
図8に示すように、第1の筐体4は、第1の端部7と、第2の端部8とを有する。第1の端部7は、開成状態にある第2の筐体5に対向する。第2の端部8は、第1の筐体4のなかで第1の端部7とは反対側に位置する。上壁4aの第1の端部7には、第2の筐体5に対向する第1の開口部9が開口している。
【0023】
一方で、第2の筐体5は、第1の端部11と、第2の端部12とを有する。第2の端部12は、開成状態にあるときに第1の筐体4の第1の端部7に対向する。第2の筐体5の第1の端部11は、第2の筐体5のなかで第2の端部12とは反対側に位置する。下壁5bの第2の端部12には、第1の筐体4の第1の開口部9に対向する第2の開口部13が開口している。
【0024】
図8に示すように、第1の筐体4には、第1の回路基板15が収容されている。第1の回路基板15は、例えばメイン回路基板である。第1の回路基板15には、第1のコネクタ16が実装されている。第2の筐体5には、第2の回路基板17が収容されている。第2の回路基板17は、第2の筐体5のなかで、例えば第2の端部12側に偏って配置されている。第2の回路基板17には、第2のコネクタ18が実装されている。
【0025】
図8に示すように、第1および第2の筐体4,5の間には、第1および第2の開口部9,13を通じてフレキシブルケーブル21が延びている。図3および図5に詳しく示すように、フレキシブルケーブル21は、例えばU字形に形成されたフラットケーブルである。フレキシブルケーブル21は、それぞれ平状に形成された、第1の部分21a、第2の部分21b、および、連結部21cを備えている。
【0026】
図8および図9に示すように、第1の部分21aは、第1の筐体4内から第2の筐体5内に延びるとともに、第2の筐体5のスライドに追従して大きく移動する部分であり、比較的大きな長さを有する。第2の部分21bは、第1の筐体4内に常に収まる部分であり、例えば第1の部分21aに比べて長さが短い。図3に示すように、第1の部分21aおよび第2の部分21bは、互いに同じ方向に延びている。連結部21cは、第1の部分21aの延伸方向に対して直交する方向に延びており、第1の部分21aの基端部21aaと、第2の部分21bの基端部21baとの間を繋いでいる。第1および第2の部分21a、21bは、連結部21cを介して互いに繋がっている。
【0027】
図1および図8に示すように、第1の筐体4内には、フレキシブルケーブル21を巻き取るケーブル巻き取り構造23が設けられている。図6に示すように、ケーブル巻き取り構造23は、段付きローラ24と、駆動部25とを備えている。
【0028】
図4乃至図6に示すように、段付きローラ24は、大径部31、小径部32、スロープ部33、および中心軸部34を備えている。大径部31、小径部32、スロープ部33、および中心軸部34は、段付きローラ24の軸方向に互いに分かれて設けられ、互いに同軸上に位置する。
【0029】
大径部31は、段付きローラ24のなかで最も大きな直径を有するとともに、フレキシブルケーブル21の第1の部分21aが巻き掛けられる。大径部31の両端部には、一対の鍔部35a,35bが起立している。鍔部35a,35bは、大径部31に巻き掛けられたフレキシブルケーブル21の第1の部分21aの両側に位置し、第1の部分21aの巻き取りをガイドする。
【0030】
図4に示すように、大径部31には、その周方向の一部に、当該大径部31の表面の一部が削られて平面が形成された平面部36が設けられている。平面部36は、例えば大径部31の全幅に亘って形成されている。大径部31とスロープ部33に間に位置する鍔部35aのなかで平面部36に隣接する部分には、切欠き部37が設けられている。これにより、大径部31の平面部36は、スロープ部33に滑らかに繋がっている。この平面部36が形成されることで、大径部31と小径部32との段差が小さくなっている。なお平面部36は必須の構成要素ではなく、適宜省略可能である。
【0031】
小径部32は、大径部31に比べて小さな直径を有するとともに、フレキシブルケーブル21の第2の部分21bが巻き掛けられている。小径部32は、第2の部分21bを支持する心棒として機能する。スロープ部33は、大径部31と小径部32との間に設けられ、大径部31から小径部32に向かうに従い直径が連続して小さくなる。
【0032】
図4に示すように、中心軸部34は、スロープ部33とは反対側から大径部31に隣り合っている。小径部32の先端と、中心軸部34の先端には、それぞれ突起38が設けられている。図1に示すように、これら突起38は、第1の筐体4内に設けられた支持部41の軸受42に係合し、回動可能に支持されている。
【0033】
図5および図6に示すように、フレキシブルケーブル21の第1および第2の部分21a,21bは、それぞれ大径部31または小径部32に対向するように互いにずれて延びている。第1の部分21aの基端部21aaは、大径部31の平面部36に合わされ、この平面部36に例えば接着または両面テープなどにより貼り付けられている。図8に示すように、第1の部分21aの先端部は、第2の筐体5内で第2のコネクタ18に接続されている。第2の筐体5の下壁5bの第2の開口部13の開口縁13aには比較的大きな丸み(ラウンド)が取られてあり、図6に示すように、この丸みに接する領域Aでフレキシブルケーブル21の第1の部分21aは緩やかに湾曲し、ストレスが掛かりにくくなっている。
【0034】
図6に示すように、第2の部分21bは、大径部31に対する第1の部分21aの巻き掛け方向と同じ向き(例えば図6中で時計回りの向き)で小径部32に巻き掛けられている。図8に示すように、第2の部分21bの先端部は、第1の筐体4内で第1のコネクタ16に接続されている。図7に示すように、連結部21cは、スロープ部33に合わされ、鍔部35aの切欠き部37を通るとともに、スロープ部33に沿って傾斜して延びている。
【0035】
図1および図2に示すように、駆動部25は、第1の部分21aが緩む方向に第2の筐体5がスライドする時に、第1の部分21aを巻き取る向きに段付きローラ24を回転させる。本実施形態に係る駆動部25は、例えばゼンマイであり、図4に示すように中心軸部34と同心状に配置され、段付きローラ24の中心軸部34の外周を囲んでいる。駆動部25は、ゼンマイの内周部が段付きローラ24の中心軸部34に固定され、外周部が第1の筐体4の支持部41に(つまり第1の筐体4の外壁に対して)固定されている。
【0036】
これにより駆動部25は、第1の部分21aが引っ張られる方向に第2の筐体5がスライドする時(例えば閉成状態に向けてスライドする時)に付勢力を蓄え、第1の部分21aが緩む方向に第2の筐体5がスライドする時(例えば開成状態に向けてスライドする時)に蓄えた付勢力により段付きローラ24を回転させる。
【0037】
次に、電子機器1の作用について説明する。
図2および図9に示すように、電子機器1が閉成状態にある時、フレキシブルケーブル21の第1の部分21aは段付きローラ24から引き出され、第1の筐体4と第2の筐体5との間を長く伸びている。また、フレキシブルケーブル21の第2の部分21bは、第1の筐体4の中である程度撓んでいる。この閉成状態では、ゼンマイである駆動部25が付勢力を蓄えた状態にある。
【0038】
そしてこの閉成状態から、図1および図8で示すような開成状態へ向けて第2の筐体5をスライドさせる時、フレキシブルケーブル21の第1の部分21aが撓もうとするが、駆動部25が段付きローラ24を回転させ、フレキシブルケーブル21が段付きローラ24に巻き取られる。ここで、大径部31と小径部32とでは軸径が異なるため、同じ巻数でも巻き取り量に違いがでる。すなわち、小径部32に比べて大径部31は、フレキシブルケーブル21をより多く巻き取ることができる。
【0039】
これにより、第2の筐体5まで延びた長い第1の部分21aが大径部31にて相対的に多く巻き取られ、第1の筐体4内に常に収まる短い第2の部分21bが小径部32にて相対的に少なく巻き取られる。これにより、第2の部分21bをあまり伸縮させることなく、第1の部分21aを大きく伸縮させることができる。さらに、第2の部分21bに対して小径部32が心棒として機能することで、第1の部分21aが大きく巻き取られる過程において、第2の部分21bの姿勢が安定しやすい。つまり、第2の部分21bに加わるストレスが小さく、断線のおそれなどが小さくなっている。
【0040】
このような構成の電子機器1によれば、デッドスペースの削減とデザイン性の向上とを併せて実現することができる。なお本明細書でいう「デッドスペース」とは、例えば電子機器の開成状態時において第1および第2の筐体4,5の互いに重なる部分であり(図16(c)中の領域D)、ボタンやその他部品を高密度に配置できない領域のことをいう。
【0041】
ここで、比較のために段付きローラを備えない電子機器を図16および図17に示す。デッドスペースDを小さくするためには、第1の筐体4に対する第2の筐体5のスライド量を大きくすることが望ましいが、スライド量を大きくすると、図16の(d)に示すように、最大スライド時に第2の筐体5の下壁の開口部13が外部に露出されてしまう。このため、デザイン性が損なわれてしまう。
【0042】
この開口部13の露出を防止し、デザイン性を高めるためには、図17(a)に示すように、第2の筐体5の下壁の開口部13を比較的小さく形成する必要がある。しかしながら、このような開口部13が比較的小さな電子機器では、図17(b)に示すように、フレキシブルケーブルの長さが十分でないと、第2の筐体5をスライドさせた際にケーブルが第2の筐体5と当たり切れてしまう。そのため、図17(c)に示すように、小さな開口部13の移動に対してもフレキシブルケーブルが十分に追従するように、フレキシブルケーブルの長さを長くする必要がある。
【0043】
しかしながら、長いフレキシブルケーブルを用いると、図17(d)に示すように、第2の筐体5のスライド時にフレキシブルケーブルが大きく撓んでしまい、第1の筐体4と第2の筐体5との間からフレキシブルケーブルが外部にはみ出してしまう。そのため、長いフレキシブルケーブルを用いた電子機器では、逆にスライド量をあまり大きくとることができず、その結果デッドスペースが大きくなる。以上のように、デッドスペースの削減とデザイン性の向上とを併せて実現することが難しい。
【0044】
一方で、本実施形態に係る電子機器1は、大径部31と小径部32とを備えた段付きローラ24と、この段付きローラ24を回転させる駆動部25とを備えている。そして、第1の筐体4内から第2の筐体5内に延び、大きく伸縮させたいフレキシブルケーブル21の第1の部分21aを段付きローラ24の大径部31に巻き掛け、常に第1の筐体4内に収まるため、大きく伸縮させる必要がないフレキシブルケーブル21の第2の部分21bを段付きローラ24の小径部32に巻き掛けている。
【0045】
これにより、第2の筐体5のスライド時に第1の部分21aだけを大きく巻き取ることができる。つまり、長いフレキシブルケーブル21を用いた電子機器1において、フレキシブルケーブル21の撓みを小さく又はほとんど無くすことができる。そのため、フレキシブルケーブル21が外部にはみ出す心配をせずに、スライド量を大きく確保することができる。これにより、デザイン性の向上を図った電子機器1(すなわち第2の筐体5の開口部9を比較的小さく形成した電子機器)において、デッドスペースを削減することができる。デッドスペースを削減できると、例えば第1の筐体4の上壁4aの操作面の面積を大きくすることができるなど好ましい。
【0046】
ここで、フレキシブルケーブル21の第2の部分21bは、第1の筐体4内に常に収められている部分であり、実質的に巻き取り不要である。そのため、第1の部分21aだけをローラに巻き掛けて、第1の部分21aだけを巻き取ることも考えられる。しかしながら第1の部分21aだけを巻き取ろうとすると、第1の部分21aを巻き取る過程において第2の部分21bが激しくねじれ、断線のおそれがあるとともに、ケーブルの寿命を縮めてしまう。
【0047】
一方、本実施形態に係る電子機器1では、実質的に巻き取り不要な第2の部分21bを小径部32に巻き掛けることで、小径部32が心棒として機能し、第1の部分21aが大きく巻き取られる過程において第2の部分21bの姿勢が安定しやすい。これにより、第2の部分21bに加わるストレスが小さく、断線のおそれなどが小さく、ケーブルの寿命が長くなる。
【0048】
大径部31および小径部32が段付きローラ24の軸方向に分かれて設けられるとともに、第1の部分21aおよび第2の部分21bがそれぞれ大径部31または小径部32に対向するように互いにずれて延びていると、簡単な構造で第1の部分21aだけを長く巻き取ることができる。
【0049】
大径部31に対する第1の部分21aの巻き掛け方向と同じ向きで第2の部分21bが小径部32に巻き掛けられていると、第1の部分21aおよび第2の部分21bの伸縮の方向が互いに同じになるため、第1の部分21aおよび第2の部分21bの姿勢がさらに安定しやすく、ストレスがかかりにくい。
【0050】
フレキシブルケーブル21が第1の部分21aと第2の部分21bとが同じ方向を向いて延びたU字形に形成されていると、段付きローラ24に対する第1の部分21aと第2の部分21bとの巻き掛け方向を揃えることができ、簡単な構造で上記効果を実現することができる。
【0051】
なお、フレキシブルケーブル21は、U字形に形成されたものに限らない。フレキシブルケーブル21としては、例えば連結部21cに対して第1の部分21aと第2の部分21bとが互いに反対方向に延びた鍵形形状(図10参照)や、その他の形状のものでもよい。
【0052】
段付きローラ24が大径部31と小径部32との間にスロープ部33を備えると、大径部31と小径部32との間に大きな段差がなくなるので、第1の部分21aと第2の部分21bとの間が大きく屈曲することが避けられる。これにより、フレキシブルケーブル21にかかるストレスを小さくすることができる。特に、第1の部分21aと第2の部分21bとの間を繋ぐ連結部21cがスロープ部33に沿って傾斜して延びていると、フレキシブルケーブル21にかかるストレスをさらに小さくすることができる。
【0053】
大径部31が第1の部分21aをガイドする鍔部35a,35bを有し、この鍔部35aが切欠き部37を有すると、第1の部分21aの巻き取りを確実に案内しつつ、フレキシブルケーブル21にかかるストレスを小さくすることができる。
【0054】
駆動部25がゼンマイであると、電源を必要としない非常に簡単な構造で、段付きローラ24を回転させ、上記効果を得ることができる。なお駆動部25としては、図11に示すような板状のゼンマイでもよい。
【0055】
ゼンマイである駆動部25が段付きローラ24の軸方向において大径部31の真横にあると、付勢力を効率的に伝えることができるとともに、ケーブル巻き取り構造23の全体を小型化することができる。
【0056】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る電子機器1について、図12を参照して説明する。なお上記第1の実施形態の構成と同一または類似の機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。また、下記に説明する以外の構成は、上記第1の実施形態と同じである。
【0057】
本実施形態に係る駆動部25は、モータである。図12に示すように、電子機器1は、第2の筐体5のスライドを検知する検知部51と、この検知部51の検知に基づいて駆動部25(モータ)の駆動を制御する制御部52とを備えている。駆動部25は、第2の筐体5のスライドに同期して段付きローラ24を回転させる。
【0058】
このような構成によっても、上記第1の実施形態と同様に、デッドスペースの削減とデザイン性の向上とを併せて実現することができる。
【0059】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係るドア構造61について、図13乃至図15を参照して説明する。なお上記第1の実施形態の構成と同一または類似の機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。また、下記に説明する以外の構成は、上記第1の実施形態と同じである。
【0060】
ドア構造61は、本発明でいうスライド式構造体の一例である。ドア構造61は、例えば車両のドアや、冷蔵庫のような家電製品のドアが具体例であるが、これらに限られるものではない。ドア構造61は、第1のユニット2(第1の扉)と、第2のユニット3(第2の扉)とを備えている。第1のユニット2は、例えば固定側のドアである。第2のユニット3は、例えば開閉側のドアである。第2のユニット3には、例えばドアセンサのような電子部品が実装されている。
【0061】
このような構成によっても、上記第1の実施形態と同様に、デッドスペースの削減とデザイン性の向上とを併せて実現することができる。
【0062】
以上、本発明の第1乃至第3の実施形態に係る電子機器1及びドア構造61について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。第1乃至第3の実施形態に係る各構成要素は、適宜組み合わせて用いることができる。また、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0063】
本発明でいうスライド式構造体は、電子機器1やドア構造61に限定されるものではなく、スライド機構を備えた構造であれば広く適用可能である。段付きローラ24を回転させる駆動部25は、ゼンマイやモータに限定されるものではない。駆動部25は、例えば第2の筐体5のスライドを段付きローラ24の回転として伝達する機械的な機構であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…電子機器、2…第1のユニット、3…第2のユニット、4…第1の筐体、5…第2の筐体、21…フレキシブルケーブル、21a…第1の部分、21b…第2の部分、21c…連結部、23…ケーブル巻き取り構造、24…段付きローラ、25…駆動部、31…大径部、32…小径部、33…スロープ部、35a,35b…鍔部、37…切欠き部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の筐体と、
前記第1の筐体に対してスライド可能な第2の筐体と、
前記第1の筐体内に設けられ、大径部と小径部とを備えた段付きローラと、
前記大径部に巻き掛けられるとともに前記第1の筐体内から前記第2の筐体内に延びた第1の部分と、この第1の部分に繋がるとともに、前記小径部に巻き掛けられ、前記第1の筐体内に延びた第2の部分とを有したフレキシブルケーブルと、
前記第1の部分が緩む方向に前記第2の筐体がスライドする時に、前記第1の部分を巻き取る向きに前記段付きローラを回転させる駆動部と、
を具備したことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1の記載において、
前記大径部および前記小径部は、前記段付きローラの軸方向に分かれて設けられ、
前記第1の部分および前記第2の部分は、それぞれ前記大径部または前記小径部に対向するように互いにずれて延びていることを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項2の記載において、
前記第2の部分は、前記大径部に対する前記第1の部分の巻き掛け方向と同じ向きで前記小径部に巻き掛けられていることを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項3の記載において、
前記フレキシブルケーブルは、前記第1の部分と前記第2の部分とが互いに同じ方向に延びたU字形をしていることを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項3の記載において、
前記フレキシブルケーブルは、前記第1の部分と前記第2の部分とが互いに反対方向に延びた鍵形をしていることを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項1の記載において、
前記段付きローラは、前記大径部と前記小径部との間に、前記大径部から前記小径部に向かうに従い直径が連続して小さくなるスロープ部を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項6の記載において、
前記フレキシブルケーブルは、前記第1の部分と前記第2の部分との間を繋ぐ連結部を有し、この連結部は前記スロープ部に沿って傾斜して延びていることを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項7の記載において、
前記大径部は、前記第1の部分の両側に起立し、前記第1の部分をガイドする鍔部を有し、この鍔部は、前記連結部が通る部位に切欠き部を有したことを特徴とする電子機器。
【請求項9】
請求項1の記載において、
前記大径部は、その周方向の一部に、前記フレキシブルケーブルが貼り付けられる平面部を有したことを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項1の記載において、
前記駆動部は、前記第1の部分が引っ張られる方向に前記第2の筐体がスライドする時に付勢力を蓄え、前記第1の部分が緩む方向に前記第2の筐体がスライドする時に前記付勢力により前記段付きローラを回転させるゼンマイであることを特徴とする電子機器。
【請求項11】
請求項1の記載において、
前記駆動部は、前記第2の筐体のスライドに同期して駆動されるモータであることを特徴とする電子機器。
【請求項12】
第1の部分と、この第1の部分に繋がる第2の部分とを有したフレキシブルケーブルを巻き取るケーブル巻き取り構造であって、
前記第1の部分が巻き掛けられる大径部と、前記第2の部分が巻き掛けられる小径部とを備えた段付きローラと、
前記第1の部分が緩む方向に前記フレキシブルケーブルが移動する時に、前記第1の部分を巻き取る向きに前記段付きローラを回転させる駆動部と、
を具備したことを特徴とするケーブル巻き取り構造。
【請求項13】
請求項12の記載において、
前記第1の部分および前記第2の部分は、互いにずれて延びており、
前記大径部および前記小径部は、それぞれ前記第1の部分または前記第2の部分に対向するように前記段付きローラの軸方向に分かれて設けられたことを特徴とするケーブル巻き取り構造。
【請求項14】
第1のユニットと、
前記第1のユニットに対してスライド可能な第2のユニットと、
前記第1のユニット内に設けられ、大径部と小径部とを備えた段付きローラと、
前記大径部に巻き掛けられるとともに前記第1のユニット内から前記第2のユニット内に延びた第1の部分と、この第1の部分に繋がるとともに、前記小径部に巻き掛けられ、前記第1のユニット内に延びた第2の部分とを有したフレキシブルケーブルと、
前記第1の部分が緩む方向に前記第2のユニットがスライドする時に、前記第1の部分を巻き取る向きに前記段付きローラを回転させる駆動部と、
を具備したことを特徴とするスライド式構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−34346(P2011−34346A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179846(P2009−179846)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(390010308)東芝デジタルメディアエンジニアリング株式会社 (192)
【Fターム(参考)】