説明

電子機器のノイズ防止装置及び方法

【課題】電子機器の使用状態でノイズフィルタの性能を最適化する電子機器のノイズ防止装置及び方法を提供することにある。
【解決手段】本発明に関わる電子機器のノイズ防止装置は、電子装置4と構成部品の電気特性を変更可能であるノイズを防止するフィルタ5とを備える電子機器2のノイズ防止装置Bであって、電子機器2が稼働中にフィルタ5の入力と出力間の伝搬特性を測定する伝搬特性測定手段7と、測定した伝搬特性と予め設定した伝搬特性の許容値とを比較する伝搬特性比較手段10と、測定した伝搬特性が許容値を満たさない場合に、フィルタ5の構成部品R、C1〜C4、Lの特性を制御し、電子機器2の稼働状況下での当該フィルタ5の伝搬特性を、ノイズ防止機能を最適化するように変更する変更手段6とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器のノイズを防止するノイズフィルタのノイズ防止特性を、電子機器の動作中に、最適化できる電子機器のノイズ防止装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器では外部から侵入するノイズを防止し、電子機器の誤動作を回避する必要がある。例えば、コントローラのコンピュータにノイズが侵入した場合、誤動作の原因となる。
また、電子機器から他の電子機器にノイズを伝搬させないことも重要である。これらのノイズ防止には、従来、もっぱらノイズフィルタが使用されている。
【0003】
ノイズフィルタのノイズ防止特性を評価する方法は、MIL-STD220やCISPR Pub.17規格などで規定されており、これらの規格に従ってノイズフィルタの特性が評価されている。これらの方法には、ノイズフィルタの入出力を50Ωに標準化した回路による伝搬特性を求める方法(特許文献1〜4参照)があり、50Ω体系の理想的な状態における特性を表している。
【0004】
一方、特許文献5では、模擬的にノイズフィルタに通電した状態でノイズフィルタの特性を評価、測定する方法、装置を記載している。この方法、装置では、ノイズフィルタに電子機器を模擬した擬似的な負荷を接続し、さらに、電源側に電源インピーダンスを一定とする疑似電源回路網を使用し、この接続状態でノイズフィルタに通電してノイズフィルタの特性を測定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平04−274771号公報
【特許文献2】特開平05−40139号公報
【特許文献3】特開2000−59162号公報
【特許文献4】特開2000−261205号公報
【特許文献5】特許2912339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、実際に電子機器が動作している電源系のインピーダンスは、特許文献1〜4の記載の方法でノイズフィルタの特性測定を行った50Ω体系とは異なる場合が多い。例えば、使用する電源系に接続される他の電子機器の動作状態や、接続状態などでインピーダンスは変動する。
このため、使用する電子機器のノイズフィルタの性能は、インピーダンスの変動により特性測定時における特性から変化し、期待した所期のノイズ低減効果が得られないことが多い。そのため、電子機器に対するノイズ防止装置の防止機能として十分な特性が得られない場合がある。つまり、電子機器のノイズを防止するノイズフィルタでは、ノイズフィルタ単体の特性が実際に電子機器を使用した状態での特性より劣化することがある。
そのため、電子機器のノイズを防止するノイズフィルタでは、実際に電子機器を使用した状態でノイズフィルタのノイズ防止特性を最適化する必要がある。
【0007】
特許文献5に開示された方法、装置は、ノイズフィルタに電子機器を模擬した擬似的な負荷を接続し、さらに、電源側に電源インピーダンスを一定とする疑似電源回路網を使用し、この接続状態でノイズフィルタに通電してノイズフィルタの特性を測定するものである。
この方法、装置で特性を測定したノイズフィルタを、実際の電子機器で使用する場合、フィルタ特性測定時の擬似的な負荷が実際の電子機器に変わり、疑似電源回路網はなく、電源系が実際の他の電子機器の稼働状態で変動するため、ノイズフィルタのノイズ防止性能が十分な効力を発揮しない可能性がある。
すなわち、特許文献5の構成では、電源系が実際の他の電子機器の稼働状態で変動する実用時のノイズフィルタ特性の最適化には十分な効力を発揮しない問題がある。
【0008】
本発明は上記実状に鑑み、電子機器の使用状態でノイズフィルタの性能を最適化する電子機器のノイズ防止装置及び方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、第1の本発明に関わる電子機器のノイズ防止装置は、電子装置と構成部品の電気特性を変更可能であるノイズを防止するフィルタとを備える電子機器のノイズ防止装置であって、前記電子機器が稼働中に前記フィルタの入力と出力間の伝搬特性を測定する伝搬特性測定手段と、前記測定した伝搬特性と予め設定した伝搬特性の許容値とを比較する伝搬特性比較手段と、前記測定した伝搬特性が前記許容値を満たさない場合に、前記フィルタの構成部品の特性を制御し、前記電子機器の稼働状況下での当該フィルタの伝搬特性を、ノイズ防止機能を最適化するように変更する変更手段とを備えている。
【0010】
第2の本発明に関わる電子機器のノイズ防止方法は、電子装置と構成部品の電気特性を変更可能であるノイズを防止するフィルタとを備える電子機器のノイズ防止方法であって、伝搬特性測定手段は、前記電子機器が稼働中に前記フィルタの入力と出力間の伝搬特性を測定し、伝搬特性比較手段は、前記測定した伝搬特性と予め設定した伝搬特性の許容値とを比較し、変更手段は、前記測定した伝搬特性が前記許容値を満たさない場合に、前記フィルタの構成部品の特性を制御し、前記電子機器の稼働状況下で当該フィルタの特性を、ノイズ防止機能を最適化するように変更している。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電子機器の使用状態でノイズフィルタの性能を最適化する電子機器のノイズ防止装置及び方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る実施形態のノイズ防止装置およびノイズ防止装置でノイズフィルタ特性が測定されるノイズフィルタを有する電子機器の概略構成図である。
【図2】実施形態の電子機器におけるフィルタ装置の構成例を示す図である。
【図3】実施形態の切替器の例を示す図である。
【図4】実施形態の切替器の例を示す図である。
【図5】実施形態の計算機よるフィルタ装置のフィルタ特性最適化処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
<実施形態の概要>
図1は、本発明に係る実施形態のノイズ防止装置Bおよびノイズ防止装置Bでフィルタ特性が測定されるノイズフィルタ3を有する電子機器2の概略構成図である。
実施形態の電子機器のノイズ防止装置Bは、実際の電子機器2の電子装置4と駆動電源(電源装置1)の間に設置されるノイズを除去するノイズフィルタ3の入出力間の実用時の伝搬特性を計測する。そして、この計測結果をもとに、ノイズフィルタ3を構成する電気回路素子の特性を制御することに特徴がある。
具体的には、ノイズ防止装置Bは、実際に電子機器2が稼働中に、設置したノイズフィルタ3の入力と出力間の伝搬特性を測定し、測定した伝搬特性とあらかじめ設定した伝搬特性の許容値とを比較する。測定値が許容値を満たさない場合にノイズフィルタ3のフィルタ装置5の構成部品の特性を制御してフィルタ特性を変更し、電子機器2の稼働状況下でのノイズ防止機能を最適化するものである。
【0014】
<電子機器2のノイズ防止装置Bの概略構成>
電源装置1は、電子機器2Aに商用の交流電気(100V、AC50/60Hz)を供給して、電子機器2(2A、2B、…、2E)を駆動するものであり、同じ電源装置1に電子機器2A、2B、…、2Eが複数または単数接続されている。
電子機器2(2A、2B、…、2E)は、電源装置1等から伝播するノイズを除去するノイズフィルタ3と、各種の電子装置4とを備え構成されている。なお、電子装置4としては、プラントの制御盤、圧延設備の制御盤等があるが、適宜選択される。
【0015】
ノイズフィルタ3は、ある特定の周波数帯域の信号を通す一方、これ以外の周波数帯域の信号を通しにくくする回路のフィルタ装置5と、フィルタ装置5の電気素子(コンデンサC1〜C4、抵抗R等(図2参照))を調整しフィルタ装置5のフィルタ特性を制御する制御器6とを有している。なお、図2は、実施形態の電子機器2におけるフィルタ装置5の構成例を示す図である。
図1に示すように、ノイズ防止装置Bは、実装状態の各電子機器2(2A、2B、…、2E)のフィルタ装置5を順次またはそれぞれ伝搬特性測定装置7に切替え接続する切替器8、9と、切替器8、9により接続された各電子機器2のフィルタ装置5のフィルタ特性を測定する伝搬特性測定装置7と、切替器8、9による各電子機器2への切替えを制御するとともに各電子機器2のフィルタ装置5のフィルタ特性が許容範囲にない場合に許容範囲のフィルタ特性になるよう制御するように制御器6に制御指令を送信する計算機10とを備えている。
【0016】
以下、各電子機器2のフィルタ装置5、制御器6について説明する。
<フィルタ装置5、制御器6>
フィルタ装置5は、図2に示すように、内部の回路素子として、抵抗R、コンデンサC1〜C4、および相互インダクタンスLを有しており、抵抗RとコンデンサC1〜C4を可変型としている。なお、相互インダクタンスLを可変型として制御器6で制御してもよいのは勿論である。
フィルタ装置5の端子5i1、5i2は、電源装置1側の端子であり、端子5o1、5o2は、電子装置4側の端子である(図1参照)。
抵抗Rに用いられる可変抵抗は、抵抗体の接触位置を機械的にずらすもののほか、複数の抵抗体の接続を変えるものがある。例えば、可変抵抗は、端子をスライドさせて抵抗体の長さを変化させ抵抗値を変化させるもの、長さが異なる抵抗体(異なる抵抗値をもつ抵抗体)を切り換えるもの等が適宜選択される。
【0017】
コンデンサC1〜C4に用いられる可変コンデンサは、所謂バリコン(Valuable Condensor)であり、切替方式の他、機械的に電極配置を換えて容量を変更できるものがある。例えば、可変コンデンサとして、ロータを廻すことでロータとステータとの対向面積を変化させ静電容量を連続的に変化させるものや、静電容量を切替える方式のもの等があり、適宜選択される。
制御器6は、リニアアクチュエータ、ロータリアクチュエータ等の機能を有し、例えば、端子をスライドさせて抵抗Rの抵抗体の長さを変化させ抵抗値を変化させたり、抵抗体の長さを切り換えて調整し、可変抵抗である抵抗Rの所望の抵抗値を得ている。また、制御器6は、例えば、各コンデンサC1、C2、C3、C4のロータを廻しロータとステータとの対向面積を変化させて静電容量を連続的に変化させ静電容量を変化させたり、静電容量を切替えたりして調整し、可変コンデンサであるコンデンサC1〜C4の所望の静電容量を得る。
【0018】
次に、図1に示すノイズ防止装置Bの伝搬特性測定装置7、切替器8、9、および計算機10の構成について説明する。
<伝搬特性測定装置7>
伝搬特性測定装置7は、ノイズフィルタ3のフィルタ特性を測定する装置であり、4つの測定端子7a、7b、7c、7dの各4つの入力に接続する測定点を選択する切替器8、9に接続されている。
切替器8は、伝搬特性測定装置7の測定端子7a、7bに接続されており、切替器9は、伝搬特性測定装置7の測定端子7c、7dに接続されている。
伝搬特性測定装置7は、設けられた4つの測定端子7a、7b、7c、7dからフィルタ装置5の4ヶの端子5i1、5i2、5o1、5o2にそれぞれ信号を印加し、フィルタ装置5の各端子5i1、5i2、5o1、5o2に伝搬する信号の特性を測定するものであり、公知のものが適用できる。
【0019】
伝搬特性測定装置7は、4つの測定端子7a、7b、7c、7dの散乱行列(Scattering パラメータ、S−パラメータ)を測定する。このパラメータは、例えばフィルタ装置5の端子5i1と端子5i2の間に印加された信号が、端子5o1と端子5o2にどの程度伝搬するかを測定できる。つまり、端子5i1、5i2と端子5o1、5o2間の減衰を測定できる。印加する信号の周波数を変えて測定することにより、ノイズの周波数帯域でのフィルタ装置5の減衰特性を求めることができる。逆に、端子5o1、5o2から端子5i1、5i2間に伝搬するノイズの減衰量を測定することもでき、電子装置4からフィルタ装置5を通って外部に放出されるノイズを低減させるように、制御することも可能である。
【0020】
ここで、電子機器2の稼動時、フィルタ装置5の端子5i1、5i2には、電源装置1によって商用電圧(100V、50/60Hz)が印加されている。このため、伝搬特性測定装置7の測定端子7a、7b、7c、7dは、この電源装置1による電源電圧の影響がないように注意する必要がある。
そこで、対象とするノイズ周波数が数百kHz〜数メガHzであることから、本ノイズ防止装置Bでは電源周波数(50/60Hz)と対象とするノイズ周波数(数百kHz〜数メガHz)の差異に着目し、ハイパス特性をもつコンデンサを用いて電源装置1の電源周波数の電圧が伝搬特性測定装置7の測定端子7a、7b、7c、7dに印加されないようにしている。つまり、電源周波数は100Hz以下なのに対し、ノイズ周波数は100kHz以上であるため、コンデンサのハイパス特性を用いて電源電圧を除去している。この除去機能を有する切替器8、9の例を図3、図4に示す。
【0021】
<切替器8>
図3に示すように、切替器8は、各フィルタ装置5の端子5i1、5i2に切替え接続される二つの測定線8s1、8s2を有しており、二つの測定線8s1、8s2は、コンデンサ8c1、8c2を介して、伝搬特性測定装置7に接続される。
切替器8は、二つの測定線8s1、8s2ごと、計算機10の制御によって、各フィルタ装置5の端子5i1、5i2に切り替えられる。二つの測定線8s1、8s2は、コンデンサ8c1、8c2で電源電圧を防止し、電源電圧が伝搬特性測定装置7の測定端子7a、7b(図1参照)に印加されないようにしている。
このように、切替器8は、フィルタ装置5の電源装置1側と伝搬特性測定装置7とを接続するように切り替える。
【0022】
<切替器9>
図4に示すように、切替器9は、各フィルタ装置5の端子5o1、5o2に切替え接続される二つの測定線9s1、9s2を有しており、二つの測定線9s1、9s2は、コンデンサ9c1、9c2を介して、伝搬特性測定装置7に接続される。
切替器9は、二つの測定線9s1、9s2ごと、計算機10の制御によって、各フィルタ装置5の端子5o1、5o2に切り替えられる。二つの測定線9s1、9s2は、コンデンサ9c1、9c2で電源電圧を防止し、電源電圧が伝搬特性測定装置7の測定端子7c、7d(図1参照)に印加されないようにしている。
このように、切替器9はフィルタ装置5の電子装置4側と伝搬特性測定装置7とを接続するように切り替える。
切替器8、9のそれぞれの切替数は、電子機器2(2A、……、2E)の個数準備され、必要に応じて順次、各電子機器2に切り替えて各電子機器2のノイズフィルタ3の特性を測定できる。
【0023】
<計算機10>
ノイズ防止装置Bの計算機10は、マイクロコンピュータ等のコンピュータ、A/D変換器、入出力回路の回路等で構成されるが限定されないのは勿論である。
計算機10は、図1に示すように、切替器8、9に制御指令を送信することで所望の電子機器2のフィルタ装置5に切替え制御する(図3、図4参照)。また、計算機10は、予め設定した手順に従って伝搬特性測定装置7に指令し、各ノイズフィルタ3のフィルタ装置5のフィルタ特性を測定する。そして、フィルタ装置5のノイズ減衰特性が最適になるように、フィルタ装置5の内部回路素子(抵抗R、コンデンサC1〜C4)の値を、制御器6によって変更・制御し、フィルタ装置5のノイズ減衰特性を最適に制御する。
【0024】
<計算機10によるフィルタ装置5のフィルタ特性最適化処理>
次に、計算機10によるフィルタ装置5のフィルタ特性最適化処理について、図5に従って説明する。なお、図5は、計算機10によるフィルタ装置5のフィルタ特性最適化処理のフローチャートである。
計算機10によるフィルタ特性最適化処理は、最初に、初期値として処理パラメータを設定する(S101)。なお、初期値の処理パラメータは、対象とするフィルタ装置5の数、各フィルタ装置5での測定回数、各フィルタ装置5の構成部品(コンデンサC1〜C4、抵抗R等)の変更幅等がある。また、各フィルタ装置5の許容特性も重要なパラメータであり、例えばある周波数範囲での減衰量等がある。
【0025】
続いて、所望のフィルタ装置5のフィルタ特性の測定を開始するため、切替器8、9を測定対象のフィルタ装置5と接続するように設定し(図3、図4参照)(S102)、伝搬特性測定装置7で接続したフィルタ装置5の各端子5i1、5i2、5o1、5o2からの散乱行列を測定して伝搬特性(フィルタ特性)を測定する(S103)。
続いて、測定結果が予め設定した条件を満足するか、または、測定を終了する条件までに達したかを判定する(S104)。
【0026】
S104の条件を満たさない場合(S104でNo)、フィルタ装置5の回路定数を、制御器6によってコンデンサC1〜C4の静電容量や抵抗Rの抵抗値等を変更することにより変更して(S105)、伝搬特性を測定する(S103)。
一方、S104において、測定結果が予め設定した条件を満足するか、または、測定を終了する条件までに達した場合(S104でYes)、対象とした全てのフィルタ装置5の最適化を終えたか否かを判定する(S106)。
【0027】
全てのフィルタ装置5の最適化の終了が未終了の場合(S106でNo)、測定対象のフィルタ装置5を変更して(S107)、測定動作を継続する(S102)。
一方、S106において、測定対象のフィルタ装置5を全て測定し終えた場合(S106でYes)、再測定の開始条件、例えば、一定時間ごと、または、外部要求があるのを待つ(S108)。なお、S108における再測定の開始条件の一定時間ごととは、例えば、タイマで設定される1回/半日、1回/日等である。また、S108における再測定の開始条件である外部要求があった場合とは、マニュアルで行うケースとして、例えば、雷が落ちたとき、雷が大きく鳴ったとき等の電気的変動が予測される際に作業員がマニュアルで、計算機10に対して、外部要求の入力を行うことがある。その他、S108で外部要求を自動で行う場合として、ノイズ検出手段(図示せず)を設け、該ノイズ検出手段でノイズが検出されたときに行う等のケースがある。これら外部要求は、適宜任意に行うことできる。
【0028】
S108において、再測定の開始条件があった場合(S108でYes)、S102に移行する。
一方、S108において、再測定の開始条件がない場合(S108でNo)、S108を継続する。
以上の図5に示す動作フローにより、計算機10によるフィルタ装置5のフィルタ特性の測定、および最適化が実行される。
【0029】
<作用効果>
本実施形態のノイズ防止装置Bによれば、電子機器2の使用状態、稼動状態で実用時のノイズフィルタ3の性能を最適化し、常に使用中の電子機器2に対するノイズ防止機能を確保できる。例えば、電子機器2を駆動する電源系(電源装置1)に接続される他の電子機器などの動作状態で、電源系のインピーダンス状態が変動しても、ノイズフィルタ3の特性を改善できるように制御・最適化が可能である。このため、電子機器2に電源系から侵入するノイズを確実に防止し、電子機器2のノイズによる誤動作をなくして電子機器2の信頼性を確保できる。
【0030】
なお、本実施形態では、ノイズフィルタ3を電子機器2における電源(電源装置1)と電子装置4との間に配置する場合を例示して説明したが、電源(電源装置1)と電子装置4との間以外に配置するノイズフィルタにも幅広く適用可能である。例えば、電子装置4の内部または外部にノイズフィルタを配置してもよい。なお、この場合、切替器8、9のコンデンサは、必ずしも用いなくともよい。
したがって、各種電子機器が外部から侵入するノイズを防止する一方、電子機器から外部に伝搬するノイズを防止するとともに、電子機器内で発生するノイズを防止するノイズフィルタのノイズ防止特性を、電子機器の稼働時に対し、最適化できる電子機器のノイズ防止装置及び方法が得られる。
【0031】
なお、本実施形態では、一つの同じ電源(電源装置1)で複数の電子機器2(2A、……)が駆動されている場合について説明したが、電源が異なる電子機器であっても全く同様に本発明が適用可能であることは明らかである。
また、本実施形態では、ノイズフィルタ3のコンデンサC1〜C4、抵抗Rを調整する場合を例示したが、ノイズフィルタ3のコンデンサC1〜C4、抵抗R、相互インダクタンスLのコイル等の回路構成要素のうちの少なくとも何れかを調整するように構成してもよいのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
各種電子機器では、外部から侵入するノイズを防止し、電子機器の誤動作を回避する必要がある。また、他の電子機器にノイズを伝搬させないことも重要である。これらのノイズ防止には、もっぱらノイズフィルタが使用されているが、実際の電子機器の使用環境によっては十分な効果が期待できない場合がある。本発明によれば、実際の電子機器の使用状態でノイズフィルタの性能を最適化し、常に使用中の電子機器に対するノイズ防止機能を確保できる。このため、本発明は、原子力プラント等の制御盤等の重要な電子機器のノイズによる誤動作を低減して電子機器の信頼性を確保できる産業上有効な発明である。
【符号の説明】
【0033】
1 電源装置(駆動電源)
2 電子機器
3 ノイズフィルタ
4 電子装置
5 フィルタ装置(フィルタ)
6 制御器(変更手段)
7 伝搬特性測定装置(伝搬特性測定手段)
8 切替器
9 切替器
10 計算機(伝搬特性比較手段)
B ノイズ防止装置
C1〜C4 コンデンサ(フィルタの構成部品)
L 相互インダクタンス(コイル等)(フィルタの構成部品)
R 抵抗(フィルタの構成部品)
5i1、5i2、5o1、5o2 端子(フィルタの測定点)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子装置と構成部品の電気特性を変更可能であるノイズを防止するフィルタとを備える電子機器のノイズ防止装置であって、
前記電子機器が稼働中に前記フィルタの入力と出力間の伝搬特性を測定する伝搬特性測定手段と、
前記測定した伝搬特性と予め設定した伝搬特性の許容値とを比較する伝搬特性比較手段と、
前記測定した伝搬特性が前記許容値を満たさない場合に、前記フィルタの構成部品の特性を制御し、前記電子機器の稼働状況下での当該フィルタの伝搬特性を、ノイズ防止機能を最適化するように変更する変更手段とを
備えることを特徴とする電子機器のノイズ防止装置。
【請求項2】
請求項1記載の電子機器のノイズ防止装置において、
前記フィルタは、前記電子装置とその駆動電源の間に設置される
ことを特徴とする電子機器のノイズ防止装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の電子機器のノイズ防止装置において、
前記電子装置のフィルタの測定点を他の前記電子装置のフィルタの測定点に切替える切替器を備え、
前記電子機器が稼働中に、前記切替器は、複数の前記フィルタを順次切り替え、
前記伝搬特性測定手段は、前記切り替えたフィルタの伝搬特性を測定する
ことを特徴とする電子機器のノイズ防止装置。
【請求項4】
電子装置と構成部品の電気特性を変更可能であるノイズを防止するフィルタとを備える電子機器のノイズ防止方法であって、
伝搬特性測定手段は、前記電子機器が稼働中に前記フィルタの入力と出力間の伝搬特性を測定し、
伝搬特性比較手段は、前記測定した伝搬特性と予め設定した伝搬特性の許容値とを比較し、
変更手段は、前記測定した伝搬特性が前記許容値を満たさない場合に、前記フィルタの構成部品の特性を制御し、前記電子機器の稼働状況下での当該フィルタの特性を、ノイズ防止機能を最適化するように変更する
ことを特徴とする電子機器のノイズ防止方法。
【請求項5】
請求項4記載の電子機器のノイズ防止方法において、
前記フィルタは、前記電子装置とその駆動電源の間に設置される
ことを特徴とする電子機器のノイズ防止方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5記載の電子機器のノイズ防止方法において、
前記電子機器が稼働中に、切替器は、複数の前記フィルタの測定点を順次切り替え、
前記伝搬特性測定手段は、切り替えたフィルタの伝搬特性を測定する
ことを特徴とする電子機器のノイズ防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−139217(P2011−139217A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297068(P2009−297068)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】