説明

電子機器の冷却システム

【課題】できるだけ自然循環が停止しないようにして強制循環する時間を短くすることができると共に、自然循環から強制循環への切り換えをスムーズに行って安定運転を行うことができる。
【解決手段】蒸発器20と凝縮器22との間をガス配管26と液配管24とでつなぎ、液配管24の途中に迂回流路として設けられたバイパス配管28と、バイパス配管28に設けられ、自然循環機構で必要な冷媒量を強制的に循環させるポンプ30と、バイパス配管28によってバイパスされる液配管24のバイパス対応部分に設けられた逆流防止機構27と、凝縮器22内に流入する冷媒ガス圧力を測定する冷媒ガス圧力センサ32Aと、凝縮器22内から流出する冷媒液圧力を測定する冷媒液圧力センサ32Bと、冷媒ガス圧力センサ32Aの測定値Aと冷媒液圧力センサ32Bの測定値BとがA>Bになった場合にポンプ30を駆動するコントローラ17と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器の冷却システムに係り、特に、サーバルームに配置されたコンピュータやサーバ等の電子機器を、蒸発器と凝縮器とを備えた冷却システムで局所的に冷却する電子機器の冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
サーバルームには、コンピュータやサーバ等の電子機器が集約された状態で多数設置される。電子機器は一般にラックマウント方式、すなわち、電子機器を機能単位別に分割して収納するラック(筐体)をキャビネットに段積みする方式で設置され、キャビネットはサーバルームの床上に多数整列配置される。
【0003】
これらの電子機器は、正常な動作をするために一定の温度環境が必要とされ、高温状態になるとシステム停止等のトラブルを引き起こすおそれがある。このため、サーバルームは空調機によって一定の温度環境に管理されている。しかし、近年では、電子機器の処理速度や処理能力の急激な上昇に伴い、電子機器からの発熱量が上昇の一途をたどっており、空調機のランニングコストも大幅に増加している。
【0004】
このような背景から、電子機器を効率的に冷却するための様々な技術が提案されている。たとえば、特許文献1に記載されている空調システムは、冷媒を動力なしで自然循環させる冷媒自然循環型の空調システムであり、蒸発器と、この蒸発器よりも高所の凝縮器とを、ガス配管及び液配管で接続することによって構成されている。そして蒸発器で気化された冷媒の気体がガス配管を介して凝縮器に送られ、凝縮器で液化された冷媒の気体が液配管を介して蒸発器に送られることによって、冷媒が自然循環され、蒸発器で冷却作用を得ることができる。このような冷媒自然循環型の空調システムを、電子機器の局所冷却に適用することによって、前述したランニングコストを削減することが期待される。たとえば、蒸発器を電子機器の排気口の近傍に配置するとともに、凝縮器として建屋の屋上に冷却塔を設置し、この冷却塔で外気を利用して冷媒を冷却することによって、ランニングコストを大幅に削減することが可能となる。
【0005】
しかし、電子機器の冷却システムに関する場合には、省エネによるランニングコスト抑制のニーズに加えて、冷却システムの安定性が要求されており、さまざまな方法が提案されている。たとえば、冷媒自然循環による冷却システムと圧縮機による冷凍サイクル運転システムを併用し、切り換え可能な制御をすることで高い安定性を確保することができる。特許文献2に記載されている空調システムでは、外気温度と室内温度、電子機器の負荷、冷却能力を測定し、外気温度が室内温度よりも高い場合には圧縮機による冷凍サイクル運転を行い、低い場合には冷媒自然循環による冷却システム運転を行うことを基本とし、冷却能力が電子機器の負荷に対して不足している場合には、冷却能力が満足するどちらかの運転に切り替えるシステムであり、高い安定性が確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−252834号公報
【特許文献2】特開平11−287524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記に示すような冷媒自然循環サイクルによる冷却システムと圧縮機による冷凍サイクル運転システムを切り換える運転では、外気温度の低下が著しい場合には、駆動源をもたない冷媒自然循環サイクルによる冷却システムで、凝縮器内への冷媒貯留等が発生し、蒸発器の能力低下が引き起こされる場合がある。例えば、外気温度の低下時には冷媒冷却塔内部の凝縮圧力が低下して、流下する冷媒液体を引っぱってしまうので、うまく流下しなくなり、冷媒冷却塔内部に冷媒液が貯留される。この場合、冷媒冷却塔からの冷媒液流下量が冷媒自然循環サイクル運転に必要な冷媒量以下となるため、蒸発器の冷却能力の低下が生じる。そのため、外気温度が低下しているにもかかわらず、圧縮機による冷凍サイクル運転を行ってしまう場合もある。
【0008】
したがって、ランニングコストを抑えるためには、できるだけ自然循環サイクルが停止しないようにして強制循環する時間を短くすると共に、強制循環する場合においても、圧縮機による冷凍サイクル運転を行うのではなく・自然循環サイクルにより運転を行って安定運転を行うことで無駄なエネルギーを消費しないことが重要になる。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、できるだけ自然循環を活用して強制循環する時間を短くすることを可能とすると共に、非定常時でも自然循環から強制循環への切り換えをスムーズに行い、安定運転を実現することができるので、自然循環と強制循環との両方を備えても省エネで且つ運転の安全性の高い電子機器の冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、電子機器からの高温排気との熱交換によって冷媒を気化させると共に該高温排気を冷却する蒸発器と、前記蒸発器よりも高所に設置され、前記気化された冷媒を液化させる凝縮器と、前記蒸発器と前記凝縮器との間を、前記蒸発器で気化した冷媒ガスを前記凝縮器に送るガス配管と、前記凝縮器で液化した冷媒液体を前記蒸発器に送る液配管と、でつなぎ、前記冷媒を自然循環させる自然循環機構と、を備える電子機器の冷却システムであって、前記液配管又は前記ガス配管の途中に迂回流路として設けられたバイパス配管と、前記バイパス配管に設けられ、前記自然循環機構で必要な冷媒量を強制的に循環させる強制循環手段と、前記バイパス配管によってバイパスされる液配管のバイパス対応部分に設けられた逆流防止機構と、前記凝縮器内に流入する冷媒ガス圧力を測定する冷媒ガス圧力センサと、前記凝縮器内から流出する冷媒液圧力を測定する冷媒液圧力センサと、前記冷媒ガス圧力センサの測定値Aと冷媒液圧力センサの測定値BとがB>Aになった場合に前記強制循環手段を駆動するコントローラと、を備えることを特徴とする電子機器の冷却システムを提供する。
【0011】
本発明は、強制循環のための強制循環手段を液配管又はガス配管のバイパスラインに設け、自然循環をしなくなったときのみ駆動できるようにした。
【0012】
具体的には、凝縮器内に流入する冷媒ガス圧力を測定する冷媒ガス圧力センサと、凝縮器内から流出する冷媒液圧力を測定する冷媒液圧力センサと、を設け、冷媒ガス圧力センサの測定値Aと冷媒液圧力センサの測定値BとがB>Aになった場合にコントローラで強制循環手段を駆動する。
【0013】
それにより、できるだけ自然循環を活用して強制循環する時間を短くすることを可能とすると共に、非定常時でも自然循環から強制循環への切り換えをスムーズに行い、安定運転を実現することができるので、自然循環と強制循環との両方を備えても省エネで且つ運転の安全性の高い電子機器の冷却システムを提供することができる。
【0014】
さらに、前記目的を達成するために、電子機器からの高温排気との熱交換によって冷媒を気化させると共に該高温排気を冷却する蒸発器と、前記蒸発器よりも高所に設置され、前記気化された冷媒を液化させる凝縮器と、前記蒸発器と前記凝縮器との間を、前記蒸発器で気化した冷媒ガスを前記凝縮器に送るガス配管と、前記凝縮器で液化した冷媒液体を前記蒸発器に送る液配管と、でつなぎ、前記冷媒を自然循環させる自然循環機構と、を備える電子機器の冷却システムであって、前記液配管又は前記ガス配管の途中に迂回流路として設けられたバイパス配管と、前記バイパス配管に設けられ、前記自然循環機構で必要な冷媒量を強制的に循環させる強制循環手段と、前記バイパス配管によってバイパスされる液配管のバイパス対応部分に設けられた逆流防止機構と、前記液配管の途中に該液配管に連通して設けられ、前記冷媒液体を貯留すると共にヘッドスペースを有するタンクと、冷媒液面の位置を測定する液面センサと、前記電子機器の排気空気温度を測定する温度センサと、前記液面センサと前記温度センサとの測定値から、前記温度センサにより測定した前記電子機器の排気温度に対し、該排気空気を冷却するのに必要な冷媒液面高さを算出し、前記液面センサにより測定された冷媒液面高さが計算値より低い場合には前記矯正旬間手段を駆動するコントローラと、を備えることを特徴とする電子機器の冷却システムを提供する。
【0015】
本発明では、液配管の途中に該液配管に連通して設けられ、冷媒液体を貯留すると共にヘッドスペースを有するタンクと、冷媒液面の位置を測定する液面センサと、電子機器の排気空気温度を測定する温度センサと、を設け、液面センサと温度センサとの測定値から、温度センサにより測定した前記電子機器の排気温度に対し、排気空気を冷却するのに必要な冷媒液面高さを算出し、前記液面センサにより測定された冷媒液面高さが計算値より低い場合にコントローラで強制循環手段を駆動する。
【0016】
それにより、できるだけ自然循環を活用して強制循環する時間を短くすることを可能とすると共に、非定常時でも自然循環から強制循環への切り換えをスムーズに行い、安定運転を実現することができるので、自然循環と強制循環との両方を備えても省エネで且つ運転の安全性の高い電子機器の冷却システムを提供することができる。
【0017】
さらに、前記目的を達成するために、電子機器からの高温排気との熱交換によって冷媒を気化させると共に該高温排気を冷却する蒸発器と、前記蒸発器よりも高所に設置され、前記気化された冷媒を液化させる凝縮器と、前記蒸発器と前記凝縮器との間を、前記蒸発器で気化した冷媒ガスを前記凝縮器に送るガス配管と、前記凝縮器で液化した冷媒液体を前記蒸発器に送る液配管と、でつなぎ、前記冷媒を自然循環させる自然循環機構と、を備える電子機器の冷却システムであって、前記液配管又は前記ガス配管の途中に迂回流路として設けられたバイパス配管と、前記バイパス配管に設けられ、前記自然循環機構で必要な冷媒量を強制的に循環させる強制循環手段と、前記バイパス配管によってバイパスされる液配管のバイパス対応部分に設けられた逆流防止機構と、前記蒸発器の冷媒液圧力を測定する冷媒液圧力センサと、前記凝縮器の圧力を測定する凝縮器圧力センサと、前記電子機器の排気空気温度を測定する温度センサと、 前記温度センサにより測定した排気温度に対応する必要冷媒液圧力を算出し、前記冷媒液圧力センサにより測定された冷媒液圧力と前記凝縮器圧力センサにより測定された圧力との差から求めた液柱高さより低い場合に前記強制循環手段を駆動するコントローラと、を備えることを特徴とする電子機器の冷却システムを提供する。
【0018】
本発明では、蒸発器の冷媒液圧力を測定する圧力センサと、電子機器の排気空気温度を測定する温度センサと、を設け、温度センサにより測定した排気温度に対応する必要液柱高さを算出し、圧力センサにより測定された測定値から算出した液柱高さが該必要液柱高さより低い場合にコントローラで強制循環手段を駆動する。
【0019】
それにより、できるだけ自然循環を活用して強制循環する時間を短くすることを可能とすると共に、非定常時でも自然循環から強制循環への切り換えをスムーズに行い、安定運転を実現することができるので、自然循環と強制循環との両方を備えても省エネで且つ運転の安全性の高い電子機器の冷却システムを提供することができる。
【0020】
上記において、前記凝縮器は、冷媒冷却塔又は熱交換器であることが好ましい。
【0021】
さらに、前記目的を達成するために、電子機器からの高温排気との熱交換によって冷媒を気化させると共に該高温排気を冷却する蒸発器と、前記蒸発器よりも高所に設置され、前記気化された冷媒を液化させる冷媒冷却塔と、前記蒸発器と前記冷媒冷却塔との間を、前記蒸発器で気化した冷媒ガスを前記冷媒冷却塔に送るガス配管と、前記冷媒冷却塔で液化した冷媒液体を前記蒸発器に送る液配管と、でつなぎ、前記冷媒を自然循環させる自然循環機構と、を備える電子機器の冷却システムであって、前記液配管又は前記ガス配管の途中に迂回流路として設けられたバイパス配管と、前記バイパス配管に設けられ、前記自然循環機構で必要な冷媒量を強制的に循環させる強制循環手段と、前記バイパス配管によってバイパスされる液配管のバイパス対応部分に設けられた逆流防止機構と、外気温度を測定する温度センサと、外気湿度を測定する湿度センサと、前記温度センサの測定温度と前記湿度センサの測定湿度から外気の湿球温度を算出し、該外気湿球温度が設定値よりも低くなった場合に前記強制循環手段を駆動するコントローラと、を備えることを特徴とする電子機器の冷却システムを提供する。
【0022】
本発明では、外気温度を測定する温度センサと、外気湿度を測定する湿度センサと、を設け、温度センサの測定温度と湿度センサの測定湿度から外気の湿球温度を算出し、外気湿球温度が外気利用計画温度よりも低くなった場合に強制循環手段を駆動する。
【0023】
それにより、できるだけ自然循環を活用して強制循環する時間を短くすることを可能とすると共に、非定常時でも自然循環から強制循環への切り換えをスムーズに行い、安定運転を実現することができるので、自然循環と強制循環との両方を備えても省エネで且つ運転の安全性の高い電子機器の冷却システムを提供することができる。
【0024】
上記の本発明において、前記強制循環手段は、前記バイパス配管が前記液配管に設けられた場合にはポンプ、前記バイパス配管が前記ガス配管に設けられた場合には圧縮機、である。
【0025】
さらに前記目的を達成するために、前記蒸発器の出口空気温度を測定する出口温度センサを備え、該出口温度センサの測定値が蒸発器出口設定値以上の場合のみポンプを駆動することが好ましい。
【0026】
即ち、蒸発器の出口空気温度を測定する出口空気温度を測定する出口温度センサを設置し、温度センサにより測定した蒸発器の出口空気温度が蒸発器出口温度設定値以上の場合にのみ強制循環手段を駆動する。
【0027】
それにより、冷却塔内部に冷媒液が貯留した場合で、かつ蒸発器の出口空気温度が設定値以上と冷却性能が発揮されない場合のみ強制循環手段を駆動することが可能となり、不要な強制循環手段の駆動を防止でき、より省エネな冷却システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように本発明の電子機器の冷却システムによれば、できるだけ自然循環を活用して強制循環する時間を短くすることを可能とすると共に、非定常時でも自然循環から強制循環への切り換えをスムーズに行い、安定運転を実現することができるので、自然循環と強制循環との両方を備えても省エネで且つ運転の安全性の高い電子機器の冷却システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の電子機器の冷却システムの第1の実施の形態の全体構成を説明する概念図
【図2】本発明の電子機器の冷却システムの第2の実施の形態の全体構成を説明する概念図
【図3】本発明の電子機器の冷却システムの第3の実施の形態の全体構成を説明する概念図
【図4】本発明の電子機器の冷却システムの第4の実施の形態の全体構成を説明する概念図
【図5】本発明の電子機器の冷却システムの第1の実施の形態の第1の変形例の全体構成を説明する概念図
【図6】本発明の電子機器の冷却システムの第1の実施の形態の第2の変形例の全体構成を説明する概念図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面に従って本発明に係る電子機器の冷却システムの好ましい実施の形態について詳説する。
【0031】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施形態の電子機器の冷却システム10の全体構成を示す概念図である。
【0032】
同図に示す冷却システム10は、サーバルーム12に設けられたサーバラック14、14の近傍を局所的に冷却するシステムである。なお、図1では、サーバルーム12に、2台のサーバラック14、14を図示しているが、実際には、多数のサーバラック14が床面13上に配置されている。更に、サーバラック14には通常、サーバ14A、14B、14C、…が段積み収納されることによって、サーバルーム12内に設置される。また、以下の説明で符号に付すXは図の左側に示した冷却システムに係わる部材であり、Yは右側に示した冷却システムに係わる部材である。
【0033】
サーバ14A、14B、14C、…には、エアの吸引口及び排気口を備えるとともに、内部にファン16を備え、このファン16を駆動することによって、吸引口からエアが吸引され、排気口からサーバ14A、14B、14C、…の排熱を伴った排気空気21が排気される。これにより、サーバ14A、14B、14C、…を冷却することができる。一方、排気空気21をそのままサーバルーム12に排気すると、サーバルーム12の室温が上昇し、サーバ14A、14B、14C、…に吸い込む空気温度が高くなってしまう。したがって、排熱空気を蒸発器20X、20Yで冷却してからサーバルーム12に排気する必要がある。
【0034】
冷却システム10は、主として蒸発器20X、20Y、凝縮器22、液配管24、ガス配管26からなる冷媒の自然循環機構を基本構成とし、これに冷媒の強制循環のための強制循環機構を付加したものである。
【0035】
蒸発器20X、20Yはそれぞれ、サーバ排気口の近傍に設けられ、蒸発器20X、20Yの内部には不図示のコイルが設けられる。このコイルの外側を、サーバ排気口から排出された排気空気21が流れ、コイルの内側を冷媒液体が流れて熱交換される。この結果、コイル内の冷媒液体が排熱空気から気化熱を奪って蒸発するので、サーバルーム12に排気される排気空気が冷却される。これにより、吹出口からサーバルーム12に吹き出される空調エアと相まって、サーバルーム12の温度環境を、サーバ14A、14B、14C、…が正常に動作をするために必要な温度環境に設定できる。
【0036】
凝縮器22は、蒸発器20X、20Yで気化した冷媒を冷却して凝縮させる装置であり、蒸発器20X、20Yよりも高い位置、例えばサーバルーム12の建屋屋上等に設置される。
【0037】
凝縮器22としては色々な態様を採用することができる。図1では、冷媒冷却塔を示しており、凝縮器22において冷媒と、外気と、の間で熱交換することによって冷媒ガスを凝縮して液化するように構成したものである。
【0038】
蒸発器20X、20Yと凝縮器22は、液配管24(分岐管24X、24Yを含む)とガス配管26(分岐管26X、26Yを含む)によって接続される。ガス配管26の上端は凝縮器22内のコイル22Aの一端に接続されており、ガス配管26の下端は、分岐管26X、26Yに分岐され、その分岐管26X、26Yが蒸発器20X、20Yのコイル(不図示)の一端に接続されている。一方、液配管24の上端は、凝縮器22内のコイル22Aの他端に接続されており、液配管24の下端は、分岐管24X、24Yに分岐され、その分岐管24X、24Yが蒸発器20X、20Yのコイル(不図示)の他端に接続されている。したがって、蒸発器20X、20Yで気化された冷媒気体はガス配管26を上昇して凝縮器22に自然に送られ、この凝縮器22で液化された後、液化された冷媒は液配管24を流下して蒸発器20X、20Yに自然に送られる。これにより、冷媒の自然循環が行われる。循環する冷媒としては、フロン、あるいは代替フロンとしてのHFC(ハイドロフロロカーボン)等を使用することができる。また、大気圧よりも低い圧力で使用するならば、水を使用することも可能である。ここで、液配管24やガス配管26はサーバルーム12の床面13の下の床下18を通るようにすると良い。
【0039】
そして、自然循環する冷媒の流量を制御することにより、サーバ14A、14B、14C、…から排気された高温空気を蒸発器20X、20Yで冷却した後の空気温度、即ちサーバラック14から蒸発器を介してサーバルーム12に排気される排気空気温度を冷却し、サーバルーム12をサーバ14A、14B、14C、…に適した温度環境に維持する。
【0040】
上記した自然循環のための基本構成に以下説明する強制循環のための構成が付加される。即ち、液配管24の途中には迂回流路としてバイパス配管28が設けられ、バイパス配管28に冷媒を強制循環させるポンプ30が設けられる。即ち、自然循環をしなくなったときのみポンプ30を駆動できるようにしている。
【0041】
さらに、バイパス配管28によってバイパスされる液配管24のバイパス対応部分24Aには逆流防止機構27が設けられ、ポンプ30の駆動時に液配管24の冷媒液体の逆流を防止して、ショートサーキットが生じないようにしている。
【0042】
そして、凝縮器22に流入する冷媒ガス圧力を測定する冷媒ガス圧力センサ32Aと、冷媒冷却塔から流出する冷媒液圧力を測定する冷媒液圧力センサ32Bと、を設けている。冷媒ガス圧力センサの測定値Aと冷媒液圧力センサの測定値BとがB>Aになった場合にコントローラ17でポンプ30を駆動する。冷媒液圧力が冷媒ガス圧力よりも高ければポンプ30により強制的に冷媒を循環させ、低ければポンプ30を停止する。
【0043】
これにより、できるだけ自然循環を活用して強制循環する時間を短くすることを可能とすると共に、非定常時でも自然循環から強制循環への切り換えをスムーズに行い、安定運転を実現することができるので、自然循環と強制循環との両方を備えても省エネで且つ運転の安全性の高い電子機器の冷却システムを提供することができる。
【0044】
(第2の実施の形態)
図2は、第2の実施形態の電子機器の冷却システム10の全体構成を示す概念図である。
【0045】
本実施形態では、図1の構成において、冷媒ガス圧力センサ32Aと、冷媒液圧力センサ32Bと、の代わりに、液配管24の途中に冷媒液体を貯留すると共にヘッドスペースを有するタンク35と、冷媒液面の位置を測定する液面センサ36と、電子機器(この図の場合、サーバ)の排気空気温度を測定する温度センサ34X、34Yと、を設けたものである。その他の構成は図1と同様である。
【0046】
このタンク35は、冷媒液体を貯留されると共に、冷媒液体の液面上方にヘッドスペースが形成される。即ち、タンク35のヘッドスペースに、凝縮器22側の液配管24が接続され、タンク35の底部に蒸発器20側の液配管24が接続される。このタンク35を配置することにより、冷媒液体中に冷媒ガスが混在していても冷媒ガスはヘッドスペースに分離されるので、ポンプ30に冷媒ガスが流入することがない。これにより、ポンプ30駆動時にキャビテーションによってポンプ30が空回りすることがない。したがって、逆流防止機構27による冷媒液体の逆流防止と相まって自然循環から強制循環へスムーズな切り換えを行うことができると共に、強制循環時にポンプ30がキャビテーションに起因する無駄なエネルギーを消費しないようにできる。
【0047】
また、このタンク35は、強制循環時にのみ効果を発揮するのではなく、自然循環時にも効果を発揮する。即ち、凝縮器22の凝縮温度が低下した場合には、凝縮器22からの冷媒液流下量が減少する可能性があり、その場合は液配管24に高い液柱を確保できなくなり自然循環が停止してしまうが、タンク35に冷媒液体を貯留することで、凝縮器22の凝縮温度が低下した場合であっても高い液柱を維持することができる。これにより、自然循環が停止する機会が少なくなるので、強制循環に切り換えざるを得ない時間を短くすることができる。
【0048】
本実施形態では、液面センサ36と温度センサ34X、34Yとの測定値から、温度センサにより測定した電子機器の排気温度に対し、排気空気を冷却するのに必要な冷媒液面高さを算出し、液面センサにより測定された冷媒液面高さが計算値より低い場合にコントローラ17でポンプ30を駆動する。
【0049】
これにより、できるだけ自然循環を活用して強制循環する時間を短くすることを可能とすると共に、非定常時でも自然循環から強制循環への切り換えをスムーズに行い、安定運転を実現することができるので、自然循環と強制循環との両方を備えても省エネで且つ運転の安全性の高い電子機器の冷却システムを提供することができる。
【0050】
(第3の実施の形態)
図3は、第3の実施形態の電子機器の冷却システム10の全体構成を示す概念図である。
【0051】
本実施形態では、図1の構成において、冷媒ガス圧力センサ32Aと、冷媒液圧力センサ32Bと、の代わりに、蒸発器20X、20Yの蒸発圧力を測定する圧力センサ32X、32Yと、電子機器の排気空気温度を測定する温度センサ34X、34Yと、を設けたものである。その他の構成は図1と同様である。
【0052】
本実施形態では、温度センサ34X、34Yにより測定した排気温度に対応する必要蒸発圧力を算出し、圧力センサにより測定された蒸発圧力が該算出蒸発圧力より低い場合にコントローラ17でポンプ30を駆動する。
【0053】
それにより、できるだけ自然循環を活用して強制循環する時間を短くすることを可能とすると共に、非定常時でも自然循環から強制循環への切り換えをスムーズに行い、安定運転を実現することができるので、自然循環と強制循環との両方を備えても省エネで且つ運転の安全性の高い電子機器の冷却システムを提供することができる。
【0054】
(第4の実施の形態)
図4は、第4の実施形態の電子機器の冷却システム10の全体構成を示す概念図である。
【0055】
本実施形態では、図1の構成において、冷媒ガス圧力センサ32Aと、冷媒液圧力センサ32Bと、の代わりに、外気温度を測定する温度センサ34と、外気湿度を測定する湿度センサ40と、を設けたものである。その他の構成は図1と同様である。
【0056】
本実施形態では、本発明では、温度センサ34の測定温度と湿度センサ40の測定湿度から外気の湿球温度を算出し、外気湿球温度が外気利用計画温度よりも低くなった場合にコントローラ17でポンプ30を駆動する。
【0057】
それにより、できるだけ自然循環を活用して強制循環する時間を短くすることを可能とすると共に、非定常時でも自然循環から強制循環への切り換えをスムーズに行い、安定運転を実現することができるので、自然循環と強制循環との両方を備えても省エネで且つ運転の安全性の高い電子機器の冷却システムを提供することができる。
【0058】
(第1の変形例)
第1〜第3の実施形態の電子機器の冷却システム10においては、凝縮器22は冷媒冷却塔を示しているが、凝縮器22としては色々な態様を採用することができる。
【0059】
図5は、第1の実施形態の電子機器の冷却システム10において、冷却装置23(例えば冷凍機や冷却塔)を別途設け、熱交換器において冷却装置23の冷媒を循環するように構成したものである。
【0060】
(第2の変形例)
第1〜第4の実施形態の電子機器の冷却システム10においては、液配管24の途中に迂回流路として設けられたバイパス配管28と、バイパス配管に設けられ、自然循環機構で必要な冷媒量を強制的に循環させるポンプ30と、バイパス配管によってバイパスされる液配管24のバイパス対応部分に設けられた逆流防止機構27と、の変わりに、ガス配管26の途中に迂回流路として設けられたバイパス配管38と、バイパス配管に設けられ、自然循環機構で必要な冷媒量を強制的に循環させる圧縮機37と、バイパス配管38によってバイパスされる液配管24のバイパス対応部分に設けられた逆流防止機構27と、にすることも可能である。この場合、コントローラ17は圧縮機37を駆動させる。
【0061】
図6は、第1の実施形態の電子機器の冷却システム10において、上記の構成を示したものである。
【0062】
また、本発明は電子機器を対象とした冷却システムであるが、その応用例としては、発熱を伴う機器類であれば応用可能である。
【符号の説明】
【0063】
10…電子機器の冷却システム、12…サーバルーム、13…床面、14…サーバラック、14A、14B、14C…サーバ、16…ファン、17…コントローラ、18…床下、20X、20Y…蒸発器、21…排気空気、22…凝縮器(冷媒冷却塔、熱交換器)、23…冷却装置、24…液配管、24X、24Y…分岐管、26…ガス配管、26X、26Y…分岐管、27…逆流防止機構(逆止弁)、28…バイパス配管、30…ポンプ(強制循環手段)、32A、32B…圧力センサ、32X、32Y…圧力センサ、34…温度センサ、34X、34Y…温度センサ、37…圧縮機(強制循環手段)、38…バイパス配管、40…湿度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器からの高温排気との熱交換によって冷媒を気化させると共に該高温排気を冷却する蒸発器と、
前記蒸発器よりも高所に設置され、前記気化された冷媒を液化させる凝縮器と、
前記蒸発器と前記凝縮器との間を、前記蒸発器で気化した冷媒ガスを前記凝縮器に送るガス配管と、前記凝縮器で液化した冷媒液体を前記蒸発器に送る液配管と、でつなぎ、前記冷媒を自然循環させる自然循環機構と、を備える電子機器の冷却システムであって、
前記液配管又は前記ガス配管の途中に迂回流路として設けられたバイパス配管と、
前記バイパス配管に設けられ、前記自然循環機構で必要な冷媒量を強制的に循環させる強制循環手段と、
前記バイパス配管によってバイパスされる液配管のバイパス対応部分に設けられた逆流防止機構と、
前記凝縮器内に流入する冷媒ガス圧力を測定する冷媒ガス圧力センサと、
前記凝縮器内から流出する冷媒液圧力を測定する冷媒液圧力センサと、
前記冷媒ガス圧力センサの測定値Aと冷媒液圧力センサの測定値BとがB>Aになった場合に前記強制循環手段を駆動するコントローラと、を備えることを特徴とする電子機器の冷却システム。
【請求項2】
電子機器からの高温排気との熱交換によって冷媒を気化させると共に該高温排気を冷却する蒸発器と、
前記蒸発器よりも高所に設置され、前記気化された冷媒を液化させる凝縮器と、
前記蒸発器と前記凝縮器との間を、前記蒸発器で気化した冷媒ガスを前記凝縮器に送るガス配管と、前記凝縮器で液化した冷媒液体を前記蒸発器に送る液配管と、でつなぎ、前記冷媒を自然循環させる自然循環機構と、を備える電子機器の冷却システムであって、
前記液配管又は前記ガス配管の途中に迂回流路として設けられたバイパス配管と、
前記バイパス配管に設けられ、前記自然循環機構で必要な冷媒量を強制的に循環させる強制循環手段と、
前記バイパス配管によってバイパスされる液配管のバイパス対応部分に設けられた逆流防止機構と、
前記液配管の途中に該液配管に連通して設けられ、前記冷媒液体を貯留すると共にヘッドスペースを有するタンクと、
冷媒液面の位置を測定する液面センサと、
前記電子機器の排気空気温度を測定する温度センサと、
前記液面センサと前記温度センサとの測定値から、前記温度センサにより測定した前記電子機器の排気温度に対し、該排気空気を冷却するのに必要な冷媒液面高さを算出し、前記液面センサにより測定された冷媒液面高さが計算値より低い場合には前記強制循環手段を駆動するコントローラと、を備えることを特徴とする電子機器の冷却システム。
【請求項3】
電子機器からの高温排気との熱交換によって冷媒を気化させると共に該高温排気を冷却する蒸発器と、
前記蒸発器よりも高所に設置され、前記気化された冷媒を液化させる凝縮器と、
前記蒸発器と前記凝縮器との間を、前記蒸発器で気化した冷媒ガスを前記凝縮器に送るガス配管と、前記凝縮器で液化した冷媒液体を前記蒸発器に送る液配管と、でつなぎ、前記冷媒を自然循環させる自然循環機構と、を備える電子機器の冷却システムであって、
前記液配管又は前記ガス配管の途中に迂回流路として設けられたバイパス配管と、
前記バイパス配管に設けられ、前記自然循環機構で必要な冷媒量を強制的に循環させる強制循環手段と、
前記バイパス配管によってバイパスされる液配管のバイパス対応部分に設けられた逆流防止機構と、
前記蒸発器の冷媒液圧力を測定する冷媒液圧力センサと、
前記凝縮器の圧力を測定する凝縮器圧力センサと、
前記電子機器の排気空気温度を測定する温度センサと、
前記温度センサにより測定した排気温度に対応する必要冷媒液圧力を算出し、前記冷媒液圧力センサにより測定された冷媒液圧力と前記凝縮器圧力センサにより測定された圧力との差から求めた液柱高さより低い場合に前記強制循環手段を駆動するコントローラと、を備えることを特徴とする電子機器の冷却システム。
【請求項4】
前記凝縮器は、冷媒冷却塔又は熱交換器であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1に記載の電子機器の冷却システム。
【請求項5】
電子機器からの高温排気との熱交換によって冷媒を気化させると共に該高温排気を冷却する蒸発器と、
前記蒸発器よりも高所に設置され、前記気化された冷媒を液化させる冷媒冷却塔と、
前記蒸発器と前記冷媒冷却塔との間を、前記蒸発器で気化した冷媒ガスを前記冷媒冷却塔に送るガス配管と、前記冷媒冷却塔で液化した冷媒液体を前記蒸発器に送る液配管と、でつなぎ、前記冷媒を自然循環させる自然循環機構と、を備える電子機器の冷却システムであって、
前記液配管又は前記ガス配管の途中に迂回流路として設けられたバイパス配管と、
前記バイパス配管に設けられ、前記自然循環機構で必要な冷媒量を強制的に循環させる強制循環手段と、
前記バイパス配管によってバイパスされる液配管のバイパス対応部分に設けられた逆流防止機構と、
外気温度を測定する温度センサと、
外気湿度を測定する湿度センサと、
前記温度センサの測定温度と前記湿度センサの測定湿度から外気の湿球温度を算出し、該外気湿球温度が外気利用計画温度よりも低くなった場合に前記強制循環手段を駆動するコントローラと、を備えることを特徴とする電子機器の冷却システム。
【請求項6】
前記強制循環手段は、前記バイパス配管が前記液配管に設けられた場合にはポンプ、前記バイパス配管が前記ガス配管に設けられた場合には圧縮機、であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1に記載の電子機器の冷却システム。
【請求項7】
前記蒸発器の出口空気温度を測定する出口温度センサを備え、該出口温度センサの測定値が蒸発器出口設定値以上の場合のみポンプを駆動することを特徴とする請求項1〜6の何れか1に記載の電子機器の冷却システム

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−204154(P2011−204154A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73135(P2010−73135)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】