説明

電子機器の吸音構造

【課題】電子機器の冷却性能を保持したまま電子機器の騒音を減らすことができる吸音構造を提供する。
【解決手段】送風機16からの冷却流体の流路に所定形態の吸音材17を所定の間隔で複数個配置することにより複数の貫通口18を設け、送風機16から貫通口18の貫通面に垂直に入射する音が直接的に電子機器15の外部に出ないように複数の吸音材17を配置する。貫通口は湾曲した経路、V字型の経路、あるいは、U字型の経路から成る構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は送風機によって発熱体の冷却を行う構造を持つ電子機器の吸音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に用いられる半導体、とりわけ情報処理装置のCPUに代表されるような半導体の進化はすさまじく、高発熱量・高密度化の一途をたどっているのは周知の事実である。これに伴い冷却のための送風機の実装数及び回転数の増大により、装置の騒音値も上昇傾向にある。一方で電子機器は事務室に設置される頻度が高くなり、電子機器の低騒音化の要望が強くなっている。そこで電子機器筐体内部の送風機近傍あるいは電子機器筐体外部の電子機器を搭載しているラックキャビネット等に、吸音材をもちいた吸音構造を設置することが多い。図10に示した複数の吸音材を組み合わせて吸音経路を設けたこれまでの吸音構造は、吸音構造自体の容積が大きくなってしまい設置スペースや取り扱い上での制約が多く、また複数の吸音材を組み合わせた不均衡な吸音構造のために、冷却流体の分布にバラツキを生じさせ電子機器内部を一様に冷却する上で障害となる恐れがあった。さらに、近年の電子機器はその内部の基板や板金構造は基本的に同一でありながら、内部に搭載されるCPUを入れ替えることで、複数の世代にわたって使用されることが多くなった。そのため、その世代ごとに応じた冷却性能を得るために送風機の回転数を変化させたり、許容される内部機器の流体抵抗に応じ、吸音構造の変更をその都度実施してきた。
【0003】
【特許文献1】特開平5-226864号公報
【特許文献2】実開平3-48293号公報
【特許文献3】実開昭63-145392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の一般的な電子機器の吸音構造を図10に示す。図10に示した従来の吸音構造では以下の課題があった。電子機器24の冷却の障害とならずに十分な吸音性能を得ようとした場合、十分な通風・吸音空間30をとる為に複数の吸音材26〜29をもちいて吸音経路を成形する必要があるため大きな容積が必要となっていた。また通風・吸音空間30が入口31から出口32を見通すことができるものである場合、入射する音は、通風、吸音空間を通過して吸音されない恐れがあった。さらに複数の吸音材を組み合わせた不均衡な吸音構造は、冷却流体の分布および冷却流体が通過する際の圧力損失にバラツキを生じさせ電子機器内部を一様に冷却する上で障害となる恐れがあった。また、同一の電子機器であっても使用するCPUが複数世代に渡る場合は、通風口である吸音空間を通過する際に生じる許容流体抵抗が変化するために吸音構造をその都度変更しなければならない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、送風機からの冷却流体の流路に所定形態の吸音材を所定の間隔で複数個配置することにより複数の貫通口を設ける電子機器の吸音構造であって、前記送風機から前記貫通口の貫通面に垂直に入射する音が直接的に電子機器の外部に出ないように前記複数の吸音材を配置することを特徴とする。
【0006】
又、本発明は、前記貫通口がV字型の経路から成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の吸音構造を、送風機を搭載した電子機器の筐体内部あるいは外部の入排気方向に設置することにより、電子機器の冷却性能を保持したまま電子機器の騒音を減らすことができる。さらに、吸音構造の基本吸音部材の設置位置や数量、あるいは角度を変えることで、ラックキャビネットサイズの変化への対応、電子機器内部のCPUの複数世代におよぶ必要冷却性能の変化に対応が可能となる。
【0008】
また、貫通口は冷却流体の通過口であると同時に音が衝突し吸収される空間であるため、貫通面の面積が同一であれば貫通口の経路が長いほど音の減衰も大きくなる。したがって本発明の吸音構造は、傾斜や湾曲した長い吸音経路となる貫通口を多数個持っているため、吸音構造に必要な容積をコンパクトにできる。また本発明の吸音構造は、貫通口の位置及び寸法をバランスよく設けることで、貫通口前後の冷却流体の分布および冷却流体が通過する際の圧力損失を一様とすることが可能であるため、冷却性能を妨げることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の第1の実施例の全体図を図1に示す。これは貫通面を正面から見た場合に、騒音源が見えないように貫通口に傾斜した経路を設けた吸音部材であり、図2に第1の実施例の正面図及び側面図を示す。吸音部材1はグラスウールやウレタンフォームに代表される吸音構造体で構成され、吸音部材を構成する基本単位である。これら基本吸音部材1は、両側にねじ穴等が設けられており、板材4にねじ止めされることで、まとまった吸音構造を構成する。そして貫通口2は使用する条件に応じて吸音部材1のピッチにより、開口寸法、開口率を変えられる。
【0010】
流体は吸音材の貫通口の経路3を通過する。音は貫通口の経路3で吸音され減衰する。図10に示したような従来の、通風・吸音空間30が入口31から出口32を見通すことができるものであった場合、入射する音は、通風・吸音空間29を通過して吸音されない恐れがあった。本発明の吸音材は、貫通面に対して垂直入射する音が傾斜を持った貫通口経路の斜面5に衝突し吸収される。
【0011】
本発明による第2の実施例を図3に示す。本実施例は、図1と構成基本部材は全く同じである。しかし、基本吸音部材1の数量、板材4との接合位置、板材4に対する傾き、変えており、それにより吸音効果だけでなく、流体抵抗も変化させることができる。
【0012】
本発明による第3の実施例を図4に示す。ここでの基本構成部材は貫通面を正面から見た場合に、騒音源が見えないように貫通口に湾曲した経路を設けた吸音材である。貫通面に対して垂直入射する音が湾曲した基本部材6からなる壁面7に衝突し吸収される。
【0013】
本発明による第4の実施例を図5に示す。ここでの基本構成部材は貫通面をいずれの方向から見た場合においても、騒音源が見えないように貫通口にV字型の経路を設けた吸音材である。貫通面に対して入射する音がV字型の基本吸音部材8からなる壁面9に衝突し吸収される。
【0014】
本発明による第5の実施例を図6に示す。ここでの基本構成部材10は貫通面をいずれの方向から見た場合においても、騒音源が見えないように貫通口にU字型の経路を設けた吸音材である。貫通面に対して入射する音がU字型の基本吸音部材10の面11に衝突し吸収される。
【0015】
本発明による第6の実施例の全体図を図7、側面の断面図を図8、上面の断面図を図9に示す。これは電子機器搭載用の標準ラックに、V字型の経路が設けられるように基本吸音部材を複数個搭載し、吸音構造を構成したものである。電子機器を搭載した標準ラック12において、電子機器の排気側となるラックドア全面に本発明の吸音材13を取り付けることで、電子機器の冷却性能の保持と騒音低減をコンパクトな容積で実現する。また、同じ吸音部材を用いながら数量を減少させるだけで、高さの低い標準ラックに適用することができる。
【0016】
本発明は、貫通面を正面から見た場合に送風機が見えないように、傾斜や湾曲した経路を持たせた貫通口を吸音構造部に多数個設けたものである。即ち、前記送風機から貫通面に垂直に入射する音が直接的に電子機器の外部に出ないように複数の吸音材を配置するものである。電子機器の冷却用送風機入排気方向に設置した場合、入排気は貫通口を通過するため、貫通口のない吸音材に比べて通風抵抗を低減できる。また貫通口には傾斜や湾曲した経路を持たせているので、音が貫通面から入射した場合は、そのまま通過することなく貫通口内部の傾斜部や湾曲した部分に衝突し吸収され減衰する。これにより吸音構造として大きな容積を必要としない。また、設ける貫通口の位置及び寸法をバランスよく設けることで、貫通口前後の冷却流体の分布および冷却流体が通過する際の圧力損失を一様とすることが可能となる。
【0017】
また、本吸音構造部はある基本単位毎のユニットに分けられ、吸音構造部を支える側面板と吸音部をねじ等で接合し、可動できるようにことで、基本単位の設置位置、数量、冷却流体に対しての角度を変化させることができるので、対象となる電子機器がCPUの世代交代により、許容流体抵抗が変化しても新たな部材を準備することなく、対応可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施例の全体図。
【図2】本発明の第1の実施例の正面図および側面図。
【図3】本発明の第2の実施例の正面図および側面図。
【図4】本発明の第3の実施例の正面図および側面図。
【図5】本発明の第4の実施例の正面図および側面図。
【図6】本発明の第5の実施例の正面図および側面図。
【図7】本発明の第6の実施例の全体図。
【図8】本発明の第6の実施例の側面の断面図。
【図9】本発明の第6の実施例の上面の断面図。
【図10】従来の電子機器用吸音構造の断面図。
【符号の説明】
【0019】
1 基本吸音部材
2 貫通口
3 貫通口の経路
4 板材
5 貫通口経路の斜面
6 湾曲した面をもつ基本吸音部材
7 貫通口経路内の壁面
8 V字型の面をもつ基本吸音部材
9 V字型の貫通口経路内の壁面
10 U字型の面をもつ基本吸音部材
11 U字型の貫通口経路内の壁面
12 電子機器を搭載した標準ラック
13 貫通口にV字型の経路を持たせた吸音材
14 電子機器を搭載した標準ラック側面の断面
15 電子機器側面の断面
16 電子機器内の送風機側面の断面
17 貫通口にV字型の経路を持たせた吸音材側面の断面
18 V字型の貫通口
19 電子機器を搭載した標準ラック上面の断面
20 電子機器上面の断面
21 貫通口にV字型の経路を持たせた吸音材上面の断面
22 電子機器内の送風機上面の断面
23 V字型の貫通口経路
24 電子機器の断面
25 電子機器内の送風機の断面
26 従来の吸音構造を構成する吸音材の断面
27 従来の吸音構造を構成する吸音材の断面
28 従来の吸音構造を構成する吸音材の断面
29 従来の吸音構造を構成する吸音材の断面
30 従来の吸音構造の通風・吸音空間
31 従来の吸音構造の通風・吸音空間の入口
32 従来の吸音構造の通風・吸音空間の出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機からの冷却流体の流路に所定形態の吸音材を所定の間隔で複数個配置することにより複数の貫通口を設ける電子機器の吸音構造であって、前記送風機から前記貫通口の貫通面に垂直に入射する音が直接的に電子機器の外部に出ないように前記複数の吸音材を配置することを特徴とする電子機器の吸音構造。
【請求項2】
前記貫通口は傾斜した経路から成ることを特徴とする請求項1記載の電子機器の吸音構造。
【請求項3】
前記貫通口は湾曲した経路から成ることを特徴とする請求項1記載の電子機器の吸音構造。
【請求項4】
前記貫通口はV字型の経路から成ることを特徴とする請求項1記載の電子機器の吸音構造。
【請求項5】
前記貫通口はU字型の経路から成ることを特徴とする請求項1記載の電子機器の吸音構造。
【請求項6】
各吸音材は締結部材により筐体と接続されることを特徴とする請求項1記載の電子機器の吸音構造。
【請求項7】
ラックで構成される電子機器において、請求項1記載の吸音構造を前記ラックに設けたことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
ラックで構成される電子機器において、請求項4記載のV字型の経路から成る吸音構造を排気あるいは入気側のラックドアに設けたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−235381(P2008−235381A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−69756(P2007−69756)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】