説明

電子機器の押し釦装置

【課題】 記号や文字などを表示して識別される複数の押し釦の各押し釦の組み込み時に対応するタクトスイッチの位置に、確実に且つスムーズに組み付けることができ、押し釦ががたついたり、傾斜したり、回転したりせず、違和感なくON/OFF操作できる、電子機器の押し釦装置を提供する。
【解決手段】 配線基板上の各タクトスイッチに対向して配設され、各押し釦7をスライド可能に支持する枠状開口部8を備えた支持板5と、各枠状開口部8内に配置され、押し釦7をその押し込み方向に抗するように弾性的に支持する押圧部10とを備え、各押し釦7の裏面には、枠状開口部8内に嵌挿可能なガイド枠部材7bを突設するとともに、支持板5の枠状開口部8の下端周縁に係止可能な係止具7dを備えた係止片7cを突設し、各押し釦7の裏面に、少なくとも1本の位置決めピン11を突設するとともに、支持板5の各枠状開口部8の近傍に位置決めピン11を嵌挿可能なピン孔12を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急告知放送受信機やラジオやインターホンの親機などの電子機器における押し釦装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電子機器の押し釦装置では、図8または図9に示すように、押し釦51または61に対向して位置するようにタクトスイッチ52または62が配線基板53または63上に設けられている。そして、押し釦51または61の中央を押すことで押圧部54または64にてタクトスイッチ52または62が押されてONされ、電子機器が所定の動作を行うようになっている。
【0003】
また、そのような押し釦装置では、図8または図9に示すように押し釦51または61が、正面カバー部材55または65の開口部周壁55aまたは凹状のガイド枠65aにて取り囲まれており、押し釦51または61の回転が規制されるとともに、押し釦51または61を押したときに開口部周壁55aまたはガイド枠65aに沿ってガイドされることにより、スイッチがONされ、電子機器が所定の動作が行われるだけでなく、使用者にスイッチがONされたことを知らせるために押し釦の、機能などを表示した表示部をLEDで照明するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
そのような装置では、配線基板上の、押し釦に対向する位置にLEDが設けられ、そのLEDを点灯させてそのLEDの発光にて押し釦の表示部を表示させるスイッチは、押し釦に対して偏倚して設けられている。このようにLEDを点灯させるためのスイッチが押し釦に対して偏倚して設けられていると、使用者が、押し釦の、スイッチが設けられている側の端部を押す場合と、押し釦の中央部分を押す場合と、押し釦の、スイッチが設けられていない側の端部を押す場合とで、タクトスイッチをONさせるために必要とされる押圧力が異なる。そのため、押し釦を押すときに使用者の受ける感触が異なることになり、使用者が違和感を感じるおそれがある。
【0005】
そこで、押し釦による押圧部、LEDおよびタクトスイッチの位置関係を工夫することにより、押し釦の表示部に影を生じさせることなく、押し釦のいずれの位置を押してもほぼ同じ押圧力でタクトスイッチをONすることができる電子機器における押し釦装置が提供されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平06−171345号公報
【特許文献2】特開平09−139136号公報
【特許文献3】特開2006−79940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば上記した緊急告知放送用受信機では、緊急告知放送の受信以外に、FMラジオ、時計機能、アラーム機能など多数の機能を備えるのが一般的であり、このような場合、機能を切り替えるのをはじめ、多数の切替操作が必要になることから、複数(例えば5〜6以上)のスイッチを操作するための押し釦が具備される。また、受信機の構造を簡略にして薄型化を図る上ではタクトスイッチが有利である。しかし、タクトスイッチはON/OFF操作時のストロークが0.2mm〜0.3mm程度と非常に短いことから、押し釦のガイド部と被ガイド部間に僅かな隙間があっても操作時に押し釦ががたついたり、傾斜したり、回転したりするおそれがある。そこで、上記の特許文献1〜3に記載の装置では、押し釦が傾いたり回転したりしないように規制する開口部周壁やガイド枠が、筐体の表面において押し釦の周囲に設けられている。
【0007】
一方、そのようなガイド枠を設けると、装置全体の厚みが増し構造が複雑になるほか、押し釦を開口部内やガイド枠内に収める必要があるために、押し釦の大きさがかなり制限される。そこで、複数の各押し釦を筐体の表面に露呈させた状態で配置すれば、押し釦の大きさを拡大できる。また、押し釦の表面には、その機能や種類などを識別できるように記号や文字などが表示される。このような場合、押し釦の組み付け時に組み付け方向(上下あるいは左右)を規制したり、タクトスイッチとの関係で誤挿入を防止したりしなければならない。さらに、複数の押し釦を限られた位置にできるだけコンパクトに配置し、デザイン的にも見栄えの良いものにするために、例えば板状の矩形にし、並べて配置しようとすると、隣接する押し釦の隙間を一定にし且つ平行に保つ必要がある。また、上記のように、タクトスイッチはON/OFF操作時のストロークが極めて短いことから、操作性を良好にするためにはストロークをある程度伸ばす必要がある。さらに、押し釦を押してタクトスイッチを操作する際にスムーズに操作できるようにするには、押し釦をガイドするための、押し釦側のガイド部と相手方の被ガイド部との間に、ある程度の隙間を設ける必要がある。このような場合、押し釦の周囲には枠がないから、押し釦の回り止めが必要になる。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、表面に露呈した状態で並べて配置され、記号や文字などを表示して識別される複数の押し釦を備えた電子機器において、各押し釦の組み込み時に対応するタクトスイッチの位置に、確実に且つスムーズに組み付けることができ、組み付け状態で隣接する押し釦間の隙間を一定に且つ平行に保持でき、ON/OFF操作時に押し釦ががたついたり、傾斜したり、回転したりせず、誰もが違和感なくON/OFF操作できる、押し釦装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために本発明に係る電子機器の押し釦装置は、機器ケーシング内に配線基板が設けられ、この配線基板上に複数のタクトスイッチが間隔をあけて配置され、前記各タクトスイッチをこれらのタクトスイッチに対応する押し釦を介してそれぞれON/OFFする電子機器の押し釦装置において、前記配線基板上の前記各タクトスイッチに対向して配設され、前記各押し釦をスライド可能に支持する枠状開口部を備えた支持板と、前記各枠状開口部内に配置され、前記押し釦をその押し込み方向に抗するように弾性的に支持する押圧部とを備え、前記各押し釦の裏面には、前記枠状開口部内に嵌挿可能なガイド枠部材を突設するとともに、前記支持板の枠状開口部の下端周縁に係止可能な係止具を備えた係止片を突設し、前記各押し釦の裏面に、少なくとも1本の位置決めピンを前記ガイド枠部材から離して突設するととも、前記支持板の各枠状開口部の近傍に前記位置決めピンを嵌挿可能なピン孔を設けたことを特徴とする。
【0010】
上記の構成を有する本発明に係る電子機器の押し釦装置によれば、前記各押し釦は裏面に突設されたガイド枠部材が支持板の各枠状開口部内にスライド可能に挿入され且つ弾性的に支持されているので、各押し釦の周囲をガイド枠や開口部で取り囲んだりして支持する必要がなく、各押し釦を板状に形成して大きくし、装置の表面に露呈させた状態で並べて配置することができ、したがって構造が簡略化され、厚みを薄くでき、デザイン上も優れている。また、押し釦をその押し込み方向に抗するように弾性的に支持し、タクトスイッチとの間に一定のクリアランスを確保する押圧部を備えているので、タクトスイッチ自体の操作ストロークに比べて押し釦の押し込み時のストロークを大きくすることができ、スイッチ操作が確実に且つ違和感なく行える。さらに、各押し釦の裏面に少なくとも1本の位置決めピンを前記ガイド枠部材から離して突設するととも、前記支持板の各枠状開口部の近傍に前記位置決めピンを嵌挿可能なピン孔を設けているので、各押し釦の周囲をガイド枠や開口部で取り囲んだりしない状態で、つまり各押し釦を電子機器の表面に露呈させた状態で配置した場合でも、押し釦の裏面側のガイド枠部材と支持板の枠状開口部との間に比較的大きな隙間をあけて押し釦が円滑にスライドできるようにしても、押し釦の回転が位置決めピンにより確実に阻止される。すなわち、押し釦のガイド枠部材と支持板の枠状開口部との嵌入構造で押し釦をスライド可能に支持する一方、押し釦の位置決めピンと支持板のピン孔との挿入構造で押し釦の回転を阻止すると同時に、押し釦ごとに位置決めピンの取付位置や取付方向や本数などを変えることにより、支持板の枠状開口部への誤挿入を防ぐことができる。
【0011】
請求項2に記載のように、前記支持板の前記各枠状開口部の形状を一部または全部共通にするとともに、前記各押し釦のガイド枠部材の形状を一部または全部共通にし、前記ガイド枠部材の形状が共通する前記各押し釦は、前記位置決めピンの突設位置を相互に異ならせ、それらの各位置決めピンに対応させて前記支持板にピン孔を設けることができる。
【0012】
このように構成すれば、各押し釦の表面に押し釦の機能や種類を識別するための表示を施す場合に、押し釦の裏面に突設するガイド枠部材の向きなどとともに位置決めピンの位置や本数を押し釦ごとに変更することで、押し釦を取り付ける支持板の枠状開口部が特定され、押し釦を誤って他の枠状開口部内に取り付けたり、押し釦の取り付ける向きを間違ったりすることが防止されるうえに、押し釦を取り付けるべき枠状開口部の位置や押し釦向きなどを確認する必要がないので、組み付け作業が容易で作業効率が向上する。
【0013】
請求項3に記載のように、前記各枠状開口部内に前記押し釦に対応して弾性アーム片の基端を連設し、この弾性アーム片の先端部に前記押圧部を前記タクトスイッチに対向させて設けることが望ましい。
【0014】
このように構成すれば、各タクトスイッチの押圧部を支持板と別体の付勢部材により押し釦の押し込み方向に抗するように付勢するのに比べて、構造が簡略化され、また弾性アーム片や押圧部を支持板の枠状開口部と一体に形成することにより、部品点数が大幅に削減される。さらに、各押し釦は押圧部を介して弾性アーム片により、押し込み方向に抗するように弾性的に支持されるので、複数の押し釦のいずれでも押し込み操作時の感触が常に良好で一定しており、押し釦の表面からタクトスイッチの頭部までの距離を最小限に短縮できるから、より一層薄くすることができる。
【0015】
請求項4に記載のように、前記各押し釦の裏面に、常態(非操作状態)で対応する前記押圧部に当接する突起部を突設することができる。
【0016】
このように構成することで、押し釦の押し込み方向におけるがたつきがなくなり、操作性がより良好になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る電子機器の押し釦装置は上記の構成からなるから、下記のような優れた効果がある。すなわち、
複数の押し釦を露呈した状態で並べて配置し、各押し釦の表面に記号や文字などを表示し、スイッチ操作する機能や種類などを押し釦の表示部で識別できるようにした場合においても、複数の押し釦を間違いなく所定の枠状開口部内に、いいかえれば対応するタクトスイッチの位置に確実に且つスムーズに組み付けることができ、その組み付け作業を効率よく行えるとともに、組み付け状態で隣接する押し釦間の隙間を一定に且つ平行に保持でき、ON/OFF操作時に押し釦ががたついたり、傾斜したり、回転したりせず、各タクトスイッチをON/OFF操作できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る電子機器の押し釦装置について実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明の実施例に係る電子機器の押し釦装置を備えた緊急告知放送端末機器において、押し釦を取り外した状態を示すやや右側方寄り正面視斜視図、図2は図1の緊急告知放送端末機器において、正面より見てやや右側方寄り背面視斜視図、図3は押し釦装置を構成する支持板と押し釦の、正面より見てやや右側方寄り背面視斜視図である。図4は押し釦装置の一部を切断した状態の、やや右側方寄り正面視斜視図、図5は図4のA−A線断面図で、押し釦を押していない状態を表し、図6は図4のA−A線断面図で、一の押し釦を押した状態を表している。
【0020】
図1に示すように、緊急告知放送端末機器(電子機器)1は、機器ケーシング3の正面に正面カバー部材4が嵌合され、機器ケーシング3内に配線基板15が収納されている。正面カバー部材4には多数の小孔が穿設され、機器ケーシング3内に収納されたスピーカー(図示せず)からの音声が聞こえるようになっている。緊急告知放送端末装置1の正面カバー部材4において、その中央部分に4隅部を円弧状に形成した略長方形状の開口部17(図5参照)が形成され、この開口部の下の配線基板15(図5参照)上に、図3に示すように4隅部を円弧状に形成した略長方形状の支持板5が裏面側に突出する4本の取付部材5aを介してネジ(図示せず)で取り付けられている。支持板5の上部には、図1・図2に示すように表示パネル6が組み込まれ、下部には複数(本例では6コ)の押し釦7が3コずつ横並びに上下2列に配列される。このため、支持板5の下部には、図1・図3に示すように6コの各押し釦7に対応してそれぞれ枠状開口部8が開口されている。ここで、枠状開口部8とは、正面側開口8aに連通する枠状部8bを裏面側に一体に突設した構造をいうものとする。なお、図2に示すように、機器ケーシング3の背面には、上部の一対の壁掛け用掛け止め具21が突設され、その下方に端末機器1を机上等に立てて載置するためのスタンドアーム22が起伏可能に取り付けられている。また、ケーブルテレビ局などからの緊急告知信号や通信データを受信するための同軸ケーブル用接続端子23とAC電源コード用接続端子24が下部中央に設けられている。なお、その両側部には、乾電池ケースのカバー25がそれぞれ着脱可能に取り付けられている。
【0021】
本実施例に係る押し釦装置2では、支持板5に開口される各枠状開口部8は大小の正方形状開口を二段に積み重ね横向きにして一連に開口した形状からなり、図1・図3に示すように、正面より見て左側と中央の2つは上下2段ともに小さい方の正方形状開口(以下、小型正方形状開口という)8dを大きい方の正方形開口(以下、大型正方形状開口という)8cに対し右向きに、右側の上下2段は小型正方形状開口8dを大型正方形状開口8cに対し左向きにそれぞれ配置している。また、下段の右側と左側とは、それぞれ支持板5の下辺両隅の円弧状に対応して、大型正方形状開口8cの隅角部を45°に傾斜する一辺で面取りした五角形状開口8c’に形成している。そして、各枠状開口部8内において、小型正方形状開口8d内の一端中央位置に弾性アーム片9の先端を大型正方形状開口8c・8c’の中心部に向けてその基端を連設し、この弾性アーム片9の先端部に円柱状押圧部10を一体に上向き突設している。
【0022】
一方、6コの各押し釦7は、矩形または略矩形の板状部7aと、板状部7aの裏面に突設され枠状開口部8内に嵌挿可能なガイド枠部材7bと、板状部7aの裏面に突設され枠状開口部8の(枠状部8b)下端周縁に係止可能な係止具7dを先端に設けた係止片7cとを備えている。各押し釦7の板状部7aの表面には、図1のように上段の左側から順に二重丸(◎)、上向き三角形(△)、プラス(+)、下段の左側から順に一重丸(○)、下向き三角形(▽)、マイナス(−)の各記号が表示されている。また6コの押し釦7うち、下段の左側と右側の各押し釦7の板状部7aは、図3のように支持板5の下辺両隅の円弧状に対応して下側隅角部がそれぞれ円弧状に形成している。また、上段の左側と右側の押し釦7の、各板状部7aの外縁には下向きの枠辺7eを延設し、下段の3コの押し釦7の、各板状部7aの外縁にも下向きの枠辺7eを延設している。
【0023】
また、各押し釦7のガイド枠部材7bについては、図3のように嵌挿される枠状開口部8の形状に対応し、正方形状または五角形状に形成している。さらに、各ガイド枠部材7bの対向する上下の各辺7fは中央部分を切り欠いており、この切り欠き部7g内に外向きの係止具7dを先端に一体に形成した係止片7cを板状部7aの裏面から突設している。この係止片7cは樹脂製で、ガイド枠部材7bの成型時に一体に形成されるが、細幅にして弾力性が十分に生じるようにし、先端の係止具7dが支持板5の枠状開口部8の(枠状部8bの)下端周縁に確実に係止されるようにしている。さらにまた、各ガイド枠部材7bの左または右の一辺には、弾性アーム片9に対応させて凹所7b’を形成している。また、各ガイド枠部材7b内において十字形の突起部7hを板状部7aの裏面に一体に突設しているが、この突起部7hの高さ(突出量)は、押し釦7のガイド枠部材7bを支持板5の枠状開口部8内に嵌挿し、一対の係止片7cの係止具7dを枠状開口部8の下端周縁(枠状部8bの下縁)に係止させて取り付けた状態で、図5に示すように突起部7hが弾性アーム片9の押圧部10に当接し、その押圧部10が押し釦7を弾性的に上向きに支持し、この状態では弾性アーム片9は下向きに変形しない、つまり弾性アーム先端の押圧部10とタクトスイッチ16の頭部16aとのクリアランスが一定に保たれるように設定するのが好ましい。このように設定することで、図4〜図6に示すように各押し釦7は支持板5の対応する枠状開口部8内に取り付けられた状態で、弾性アーム片9を介して押圧部10により上向きに付勢され、がたつきがない。
【0024】
また、各押し釦7の板状部7aの裏面に、本実施例では図3に示すようにそれぞれ1本の位置決めピン11をガイド枠部材7bから離間させて突設しているが、少なくとも正方形のガイド枠部材7bを備えた4コの押し釦7については、位置決めピン11を突設する位置が一致しないように、ガイド枠部材7bに対する向きあるいは離間距離などを変えている。また、五角形のガイド枠部材7bを備えた2コの押し釦7についても、ガイド枠部材7bに対する位置決めピン11の位置が相互に一致しないようにガイド枠部材7bに対する向きおよび離間距離を変えている。一方、支持板5には、図3に示すように各押し釦7の位置決めピン11に対応して各枠状開口部8の近傍にピン孔12を穿設している。このように構成した結果、6コの各押し釦7は、配線基板15(図4参照)に配置される6コのタクトスイッチ16(図5参照)の、板状部7aに表示された記号(図1)に対応するタクトスイッチ16の真上に、確実に配置される。いいかえれば、作業者が緊急告知放送端末機器1(の押し釦装置2)を組み立てる際に、押し釦7を間違った位置に取り付けることがない。つまり、本実施例では各押し釦7は、図1において6コの押し釦7の1コでも、支持板5の6コの枠状開口部8において間違った枠状開口部8に取り付けようとしても取り付けることができないだけでなく、取り付ける枠状開口部8が正しい場合でも押し釦7の取り付け方向が間違っていれば、取り付けることができない。なお、図4〜図6における符号26は乾電池である。
【0025】
以上のようにして構成される本発明の実施例に係る押し釦装置2および同押し釦装置2を備えた緊急告知放送端末機器1について、その動作態様を説明する。
【0026】
図4・図5に示すように、各押し釦7は非操作状態(常態)で、弾性アーム片9および押圧部10により弾性的に支持され、上方に付勢されている。そして、この状態で、弾性アーム片9先端の押圧部10は、タクトスイッチ16の頭部16aとに一定のクリアランスが設けられている。つまり、このクリアランス(離間距離)に相当するストロークが押し釦7の操作ストロークにプラス(+)されることにより、押し釦7によるタクトスイッチ16の操作性を向上し、スイッチ操作時の感触を良好にしている。また、非操作時は各押し釦7の押圧部10とタクトスイッチ16の頭部16aとの間にクリアランスがあるので、各タクトスイッチ7が誤動作でONすることはない。
【0027】
そして、任意の押し釦7が押されると、図6に示すように押し釦7は枠状ガイド部材7bが枠状開口部8によってガイドされ、ほぼ垂直に押し込まれる。また、各押し釦7は露呈し板状部7aの周囲に枠が設けられていないが、同時に押し釦7側の位置決めピン11がピン孔12でガイドされることにより、押し釦7の無用な回転が阻止される。したがって、図4・図5に示すように6コの押し釦7は隣接する押し釦7と隙間が一定に保たれ、縦方向の隙間は相互に平行になっている。そして、押し釦7から押し下げ力が取り除かれると、弾性アーム片9の下向きに変形を元の状態に戻そうとする復元力にて上向きの付勢力が生じ、押し釦7は図5に示される元の位置に確実に戻される。
【0028】
なお、緊急告知放送端末機器1の動作は、図1に示すように◎表示の(ラジオ電源用)押し釦7を押すと、ラジオの電源が入り、表示パネル6傍のラジオ電源ランプ27が点灯するとともに、表示パネル6の時刻表示がFM受信周波数を表示する。△表示または▽表示の(選局用)押し釦7を押すことにより、受信周波数が変わって所望の放送番組を選曲できる。また、+表示または−表示の(音量用)押し釦7を押すことで、音量を調整できる。◎表示の押し釦7を再び押すと、ラジオの電源が切れ、ラジオ電源ランプ27が消えると同時に、表示パネル6に現在時刻が表示される。気象庁からの緊急地震速報データを受信すると、正面カバー部材4の周囲に配設されたフラッシュライト28が点滅し、表示パネル6には予測震度が表示される。○表示の押し釦7は選択ボタンである。
【0029】
上記に本発明の電子機器における押し釦装置について緊急告知放送端末機器1に適用した一実施例を示したが、下記のように変更して実施することも可能である。
【0030】
1) 弾性アーム片9は片持ち支持構造にしているが、両端支持構造にしてその中央部に押圧部10を設けて押し釦7を支持する構成とすることも可能である。
【0031】
2) 上記実施例における位置決めピンを2本にし、各押し釦7で位置決めピン11の位置や向きを変えることで、支持板5の枠状開口部8に対する押し釦7の取付や向きの誤りを防ぐようにしてもよい。
【0032】
3) 支持板5の枠状開口部8およびこれに対応するガイド枠部材7bを円形または楕円形にすることも可能である。この場合には、位置決めピン11だけで回り止めすることになるが、押し釦のスライド操作は一層スムーズになる。
【0033】
4) 押し釦7を支持板5の枠状開口部8内に一体に形成した弾性アーム片9で弾性的に支持する代わりに、支持板5やその枠状開口部8とは別体のスプリング部材で押圧部10を介して押し釦7を弾性的に支持することもできる。
【0034】
5) 配列される押し釦7の数は限定されるものではなく、2コ以上から例えば、9コ、12コ、20コなど、1列に3コずつ3段、1列に3コまたは4コずつ4段または3段、1列に4コまたは5コずつ5段または4段配列することができ、押し釦7の数が増えるほど有効である。
【0035】
6) 上記実施例では、6コのほぼ同一形状の押し釦7を上下2段に3コずつ横長矩形状に配列したが、例えば図7に示すように、一部形状の異なる複数の押し釦7を円形状(図7(a)参照)や楕円形状(図7(b)参照)に配列することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例に係る電子機器の押し釦装置を備えた緊急告知放送端末機器において、押し釦を取り外した状態を示すやや右側方寄り正面視斜視図である。
【図2】図1の緊急告知放送端末機器において、正面より見てやや右側方寄り背面視斜視図である。
【図3】押し釦装置を構成する支持板と押し釦の、正面より見てやや右側方寄り背面視斜視図である。
【図4】押し釦装置の一部を切断した状態の、やや右側方寄り正面視斜視図である。
【図5】図4のA−A線断面図で、押し釦を押していない状態を表している。
【図6】図4のA−A線断面図で、一つの押し釦を押した状態を表している。
【図7】図7(a)は複数の押し釦を円形状に配列した例を示す正面図、図7(b)は複数の押し釦を楕円形状に配列した例を示す正面図である。
【図8】従来例の説明図である。
【図9】別の従来例の説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 緊急告知放送端末機器(電子機器)
2 押し釦装置
3 機器ケーシング
4 正面カバー部材
5 支持板
5a取付部材
6 表示パネル
7 押し釦
7a板状部
7bガイド枠部材
7b’凹所
7c係止片
7d係止具
7e枠辺
7g切り欠き部
7h突起部
8 枠状開口部
8a正面側開口
8b枠状部
8c大型正方形状開口
8c’五角形状開口
8d小型正方形状開口
9 弾性アーム片
10 押圧部(円柱状押圧部)
11 位置決めピン
12 ピン孔
15 配線基板
16 タクトスイッチ
16a頭部
21 壁掛け用掛け止め具
22 スタンドアーム
23 同軸ケーブル用接続端子
24 AC電源コード用接続端子
25 乾電池ケースのカバー
26 乾電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器ケーシング内に配線基板が設けられ、この配線基板上に複数のタクトスイッチが間隔をあけて配置され、前記各タクトスイッチをこれらのタクトスイッチに対応する押し釦を介してそれぞれON/OFFする電子機器の押し釦装置において、
前記配線基板上の前記各タクトスイッチに対向して配設され、前記各押し釦をスライド可能に支持する枠状開口部を備えた支持板と、前記各枠状開口部内に配置され、前記押し釦をその押し込み方向に抗するように弾性的に支持する押圧部とを備え、
前記各押し釦の裏面には、前記枠状開口部内に嵌挿可能なガイド枠部材を突設するとともに、前記支持板の枠状開口部の下端周縁に係止可能な係止具を備えた係止片を突設し、
前記各押し釦の裏面に、少なくとも1本の位置決めピンを前記ガイド枠部材から離して突設するとともに、前記支持板の各枠状開口部の近傍に前記位置決めピンを嵌挿可能なピン孔を設けたことを特徴とする電子機器の押し釦装置。
【請求項2】
前記支持板の前記各枠状開口部の形状を一部または全部共通にするとともに、前記各押し釦のガイド枠部材の形状を一部または全部共通にし、前記ガイド枠部材の形状が共通する前記各押し釦は、前記位置決めピンの突設位置を相互に異ならせ、それらの各位置決めピンに対応させて前記支持板にピン孔を設けたことを特徴とする請求項1記載の電子機器の押し釦装置。
【請求項3】
前記各枠状開口部内に前記押し釦に対応して弾性アーム片の基端を連設し、この弾性アーム片の先端部に前記押圧部を前記タクトスイッチに対向させて設けたことを特徴とする請求項1または2記載の電子機器の押し釦装置。
【請求項4】
前記各押し釦の裏面に、常態で対応する前記押圧部に当接する突起部を突設したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の電子機器の押し釦装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−146708(P2009−146708A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322417(P2007−322417)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】