説明

電子機器の空調装置及びその空調方法等

【課題】電子機器の内部に冷気を導入して電子部品の動作を安定化させることができ、暖房時に電子機器の余分な熱を有効利用することのできる電子機器の空調装置を提供する。
【解決手段】本体ケース1A及び前面パネル2からなる筐体の一側に配置され、かつ前記筐体内の空気を当該筐体外に排出する第1の送風部材10と、前記筐体の他側に配置され、かつ前記筐体内及び前記筐体外の空気を排出及び導入する第2の送風部材12とを備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、例えばカーステレオ、カーナビゲーション等の車載用電装機器やノートパソコン等のような各種民生用の電子機器の空調装置及びその空調方法等の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、カーステレオ、カーナビゲーション等の車載用電装機器やノートパソコン等の各種民生用の電子機器は、小型化及び薄型化が要求されている。
【0003】
図1は一般のカーステレオを車両のインストルメントパネルに取り付けた状態を示す縦断面図である。
【0004】
図1に示すように、カーステレオの本体ケース1には、その前面パネル2が車両のインストルメントパネル3とほぼ同一面となるように取り付けられている。本体ケース1の内部は、DVDメカユニット4、チューナーユニット5、電子部品6が実装された複数枚(図1では2枚)の基板ユニット7等の構造物により構成されている。また、本体ケース1内部の背面側には、基板8と、それに取り付けられたコネクタ9、軸流ファンを用いた空冷用ファン10、車両側電源ハーネスに取り付けるためにケーブルを引き出すケーブル取付用コネクタ11等の構造物が配置されている。なお、カーステレオの機種によっては、モニタ駆動部等の他の構造物が取り付けられているものもある。
【0005】
このようなカーステレオ、カーナビゲーション等の車載用電装機器では、上記のような構造物が本体ケース1内において立体的に互いに重なり合った状態で組み込まれているため、これらの構成物によって非常に高密度に内部空間が占められている。また、本体ケース1内には、発熱量の大きなICやLSI等の電子部品6が散在しており、多くの電子部品6がその冷却対策を施している。
【0006】
図1では、その一例として軸流ファンを用いた空冷用ファン10を本体ケース1の背面側に配置した場合を示している。この空冷用ファン10を駆動させて前面パネル2に開口した空気の流入口2aから矢印で示すように本体ケース1内部に空気を流入させ、空冷用ファン10から本体ケース1外部(インストルメントパネル3内)へ排出させている。すなわち、図1では、空気を本体ケース1内部に吸気して流動させることにより、冷却対象となる電子部品6から放熱させ、高温による動作停止を抑制している。
【0007】
他方、特許文献1に開示された発明は、内部に発熱する電子デバイス及び内部の空気を排気する送風部材が取り付けられた電子機器において、該電子機器の本体ケースに設けられた開口部と該電子機器が設置される室内に設けられる冷気発生機器とを可撓性パイプにて着脱可能に接続し、該冷気発生機器から吹き出される冷気を電子機器内に導入して電子デバイスを冷却するようにしたものである。
【特許文献1】特開2000−349474公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図1に示す従来技術では、空冷用ファン10を回転駆動させて本体ケース1外部(インストルメントパネル3内)へ放熱していることから、その本体ケース1外部が高温の場合、空冷用ファン10による放熱では不十分となり、電子部品6の動作を停止させてしまうことになる。加えて、図1に示す従来技術では、本体ケース1内部の構造物の高密度化に伴って、発熱する電子部品6周辺の空気の流動性が十分にとれない場合が多くなってきていることから、その空気の流動性が低い部分は、放熱性が悪い箇所として電子部品6の安定動作に支障を来たすことになる。
【0009】
また、図1に示す従来技術では、車室内の温度を上昇させたい場合、エアコンディショナ(以下、エアコンと略称する。)によって暖気を送り出しているだけであり、車載用電装機器の余分な熱を有効利用されていないのが現状である。
【0010】
他方、特許文献1に開示された発明では、電子機器の外部に可撓性パイプが必要なため、車載用電装機器で同様なことを実現するにはエアコンディショナ等との規模の大きな接続構造体が必要になってしまい、装置が大掛かりになるという問題がある。
【0011】
本願は、上記の事情を考慮してなされたもので、その課題の一例としては、電子機器の内部に冷気を導入して電子部品の動作を安定化させることができ、暖房時に電子機器の余分な熱を有効利用することのできる電子機器の空調装置及びその空調方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の電子機器の空調装置は、筐体内に複数の電子部品を実装した電子機器であって、前記筐体の一側に配置され、かつ前記筐体内の空気を当該筐体外に排出する第1の送風部材と、前記筐体の他側に配置され、かつ前記筐体内及び前記筐体外の空気を排出及び導入する第2の送風部材と、を備えることを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するために、請求項7に記載の電子機器の空調方法は、筐体の一側に配置され、かつ前記筐体内の空気を当該筐体外に排出する第1の送風部材と、前記筐体の他側に配置され、かつ前記筐体内及び前記筐体外の空気を排出及び導入する第2の送風部材とを備え、前記筐体の内部の温度を第1の温度センサにより検出する第1の検出工程と、前記筐体の外部の温度を第2の温度センサにより検出する第2の検出工程と、前記第1の検出工程及び前記第2の検出工程により検出された温度に基づいて前記第1の送風部材及び前記第2の送風部材をオン、オフ制御する制御工程と、を備えることを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するために、請求項8に記載の電子機器の空調用プログラムは、筐体の一側に配置され、かつ前記筐体内の空気を当該筐体外に排出する第1の送風部材と、前記筐体の他側に配置され、かつ前記筐体内及び前記筐体外の空気を排出及び導入する第2の送風部材とを備える電子機器の空調装置に含まれるコンピュータを、前記筐体の内部の温度を第1の温度センサにより検出する第1の検出手段、前記筐体の外部の温度を第2の温度センサにより検出する第2の検出手段、前記第1の検出手段及び前記第2の検出手段により検出された温度に基づいて前記第1の送風部材及び前記第2の送風部材をオン、オフ制御する制御手段、として機能させることを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決するために、請求項9に記載の記録媒体は、請求項8に記載の空調用プログラムがコンピュータ読み取り可能に記録されていることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本願の最良の実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、車両内に搭載された電子機器としてカーステレオ、カーナビゲーションに対して本願を適用し、当該カーステレオ、カーナビゲーション内に実装された電子部品を冷却するか、又は車室内に電子部品の余分な熱を送り出す場合の実施形態である。また、以下に説明する各実施形態において図1と同一又は対応する部分には、同一の符号を用いて説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図2〜図6を参照して、本願の第1実施形態における電子機器の空調装置について説明する。
【0018】
図2〜図4は本願の第1実施形態における空調装置を取り付けたカーステレオを示す側面図、図5は本願の第1実施形態における空調回路を示すブロック図、図6は図5のコントローラの動作を示すフローチャートである。
【0019】
なお、図2は車両のインストルメントパネル内に放熱する場合、図3は車室内に放熱する場合、図4は車室内の冷気で本体ケース内を冷却する場合をそれぞれ示している。
【0020】
図2〜図4に示すように、電子機器であるカーステレオの本体ケース1Aは、その前面パネル2が車室内のインストルメントパネル3とほぼ同一面となるように取り付けられている。この前面パネル2には、複数のスリット(図示せず)が形成され、このスリットを通して本体ケース1Aと車室内との間を空気の流通を可能としている。なお、これら本体ケース1A及び前面パネル2により本願の筐体が構成される。本体ケース1Aの内部には、図示しないが図1と同様に、DVDメカユニット、チューナーユニット、ICやLSI等の電子部品が実装された複数枚の基板ユニット等の構造物が実装されている。
【0021】
また、本体ケース1Aの内部の背面側(筐体の一側)には、図示しないが図1と同様に、基板と、それに取り付けられたコネクタ、軸流ファンを用いた第1の送風部材としての空冷用ファン10、車両側電源ハーネスに取り付けるためのケーブルを引き出すケーブル取付用コネクタ等の構造物が配置されている。
【0022】
ところで、本実施形態では、図2〜図4に示すように本体ケース1Aの内部の前面側(筐体の他側)であって、車室内側に軸流ファンを用いた第2の送風部材としての吸排気用ファン12が配置されている。この吸排気用ファン12は、正方向及び逆方向に回転駆動可能なファンである。なお、図示しないが、上記車室内には、冷暖房を行うエアコンが設置されている。
【0023】
したがって、本実施形態では、図2に示すように空冷用ファン10を回転駆動することにより、本体ケース1A内で発生した余分な熱をインストルメントパネル3内に放出することができる。また、上記エアコンの暖房時には、図3に示すように吸排気用ファン12を逆方向に回転駆動することにより、本体ケース1A内で発生した余分な熱を車室内に送り込み、本体ケース1A内の熱を有効利用することで、上記エアコンの負荷を低減させることができる。特に、冬場等で車室内を早期に暖めたいときには、吸排気用ファン12を逆方向に回転駆動させ、本体ケース1A内の熱を車室内へ送り出すように制御し、暖房効果を助長することが可能である。
【0024】
さらに、上記エアコンの冷房時には、図4に示すように空冷用ファン10を回転駆動するとともに、吸排気用ファン12を正方向に回転駆動することにより、本体ケース1A外部の車室内から導入した冷却空気を温度上昇した電子部品に強制的に送り込み、インストルメントパネル3内に放出することで、本体ケース1A内の温度を低下させ、上記電子部品を冷却することができる。
【0025】
また、上記エアコンがオフ(停止)状態であって、車両に対する環境温度(季節、地域、標高による)が低いことから車室内の温度が低く、かつ本体ケース1A内の温度が高く、その本体ケース1A内の温度を低下させたい場合には、上記と同様に吸排気用ファン12を正方向に回転駆動することにより、本体ケース1A外部の車室内から導入した冷却空気を温度上昇した電子部品に強制的に送り込み、インストルメントパネル3内に放出することで、本体ケース1A内の温度を低下させ、上記電子部品を冷却することが可能となる。
【0026】
したがって、本実施形態の空調装置によれば、正方向及び逆方向に回転可能な吸排気用ファン12を本体ケース1Aの車室内側に配置したことにより、上記エアコンの暖房時には、吸排気用ファン12を逆方向に回転駆動することにより、本体ケース1A内の熱を有効利用することで、上記エアコンの負荷を低減させることができる。その結果、環境への負荷も低減することが可能となる。
【0027】
また、上記エアコンの冷房時には、空冷用ファン10を回転駆動するとともに、吸排気用ファン12を正方向に回転駆動させることにより、冷却空気を温度上昇した電子部品に強制的に送り込むことで、本体ケース1A内の温度を低下させ、電子部品の冷却効果を高めることが可能となり、電子部品の動作を常に安定化させることができる。
【0028】
次に、本実施形態における空調回路を図5に基づいて説明する。
【0029】
図5に示すように、車室(キャビン)13内には、上述したように冷暖房を行うエアコン14が設置されている。第2の温度センサとしての温度センサ16は、例えばインストルメントパネル3の車室13側に取り付けられ、本体ケース1A外の車室13内の温度を検出する。また、第1の温度センサとしての温度センサ17は、本体ケース1A内におけるターゲットエリアである温度上昇領域に配置され、この温度上昇する領域として例えばピックアップ近傍の周囲温度を検出する。これらの温度センサ16,17には、例えば小型のチップタイプのサーミスタや、白金薄膜温度センサ等が使用される。なお、温度センサ16は、インストルメントパネル3に限らず、車室13内であれば、如何なる場所に取り付けるようにしてもよい。
【0030】
コントローラ18は、制御手段としての機能を有し、温度センサ16,17により検出された温度検出信号を取り込み、空冷用ファン10,12のオン、オフ制御を行う。なお、コントローラ18は、A/Dコンバータ機能内蔵の8ビットマイコン等を使用することが望ましい。コントローラ18は、空冷用ファン10,12のオン、オフ制御に限らず、電圧制御によるファン風量の調整を行うようにしてもよい。この場合は、電圧値を複数の段階に切り替えてファンの回転数を段階的に変える等の制御を行う。また、コントローラ18は、本体ケース1Aの空きスペースに比較的自由に配置することができるものの、このように別途新規に設けることなく、予め設置されているカーステレオの制御系のコントローラを用いることもできる。
【0031】
次に、本実施形態における空調方法を図6のフローチャートに基づいて説明する。なお、図6に示すフローチャートは、本実施形態の空調装置をオンにすることで開始し、オフすることにより終了する。また、図6に示すフローチャートでは、本体ケース1A内におけるターゲットエリア(温度上昇領域)温度をTaとし、車室(キャビン)13内の温度をTcとし、エアコン(AC)14の設定温度をTsとしている。
【0032】
まず、ステップS1では、コントローラ18は、エアコン(AC)14の設定がオンであるかを判定する。エアコン14の設定がオンの場合(ステップS1;Yes)には、ステップS2に進み、このステップS2でエアコン14の設定温度Tsの信号をコントローラ18に取り込む。
【0033】
一方、エアコン14の設定がオフの場合(ステップS1;No)には、ステップS3に進み、このステップS3で車室(キャビン)13内の温度Tcの信号をコントローラ18に取り込む。
【0034】
そして、ステップS4で車室13内の温度Tcが5℃未満であるかを判定する。車室13内の温度Tcが5℃以上の場合(ステップS4;No)には、後述するステップS15で温度のサンプリング時間の間、待機する処理に移行する。また、車室13内の温度Tcが5℃未満である場合(ステップS4;Yes)には、後述するステップS6に移行する。
【0035】
ここで、ステップS1,ステップS3,ステップS4及びステップS6の処理は、エアコン14がオフであり、車室13内の温度Tcが5℃未満である場合に車室13内を暖房するための処理である。この5℃未満という値は、エアコン14がオフであって、車室13内に暖房が必要とされる温度の一例であり、暖房が必要とされる値であれば、他の温度に設定してもよい。
【0036】
さらに、ステップS5では、コントローラ18がエアコン14の設定温度Tsから車室13内の温度Tcを減算し、その値が正(+)であるかを判定する。すなわち、エアコン14の設定温度Tsより車室13内の温度Tcが低い場合(ステップS5;Yes)であるか、エアコン14の設定温度Tsより車室13内の温度Tcが高い場合(ステップS4;No)であるかを判定する。具体的には、車室13内を暖房する場合(ステップS5;Yes)であるか、冷房する場合(ステップS4;No)であるかを判定する。
【0037】
車室13内を暖房する場合(ステップS5;Yes)には、ステップS6に進み、このステップS6で本体ケース1A内におけるターゲットエリア(温度上昇領域)の温度Taをコントローラ18に取り込む。このステップS6の処理から以下に説明するステップS11までの処理は、車室13内を暖房している状態を前提とする。
【0038】
次いで、ステップS7では、ターゲットエリア(温度上昇領域)温度Taが車室(キャビン)13内の温度Tcより低いかを判定する。ターゲットエリア温度Taが車室13内の温度Tcより低い場合(ステップS7;Yes)には、ステップS8に進む。このステップS8では、コントローラ18は、空冷用ファン10,12の双方がオフになるように制御する。この場合は、ターゲットエリア温度Taが適温であり、電子部品を冷却する必要がない状態である。
【0039】
一方、ターゲットエリア温度Taが車室13内の温度Tc以上の場合(ステップS7;No)には、ステップS9に進む。このステップS9では、コントローラ18は、ターゲットエリア(温度上昇領域)の温度Taが車室13内の温度Tc以上であって、70℃以下であるかを判定する。この70℃以下であるという値は、電子部品の設計の仕様による。例えば、車室13内の温度Tcが18℃とすると、18℃≦Ta≦70℃となり、ターゲットエリア(温度上昇領域)温度Taが18℃〜70℃の範囲内である否かを判定することになる。
【0040】
ターゲットエリア(温度上昇領域)温度Taが車室13内の温度Tc(例えば18℃)〜70℃の範囲内である場合(ステップS9;Yes)には、ステップS10に進む。このステップS10では、コントローラ18は、吸排気用ファン12を逆方向に回転駆動するように制御して本体ケース1A内で発生した18℃〜70℃の範囲内の余分な熱を車室13内に送り込むように送風して暖房効果を助長する。同時に、コントローラ18は、空冷用ファン10をオフにするか、排気するように制御する。この排気する場合は、図2に示すように空冷用ファン10を回転駆動し、本体ケース1A内で発生した余分な熱をインストルメントパネル3内に放出する。
【0041】
一方、ターゲットエリア(温度上昇領域)温度Taが車室13内の温度Tc(例えば18℃)〜70℃の範囲内でない場合(ステップS9;No)、つまりターゲットエリア(温度上昇領域)温度Taが70℃を超えている場合には、ステップS11に進む。このステップS11では、コントローラ18は、吸排気用ファン12を正方向に回転駆動するように制御するとともに、空冷用ファン10を回転駆動するように制御する。
【0042】
したがって、吸排気用ファン12を正方向に回転駆動すると、図3に示すように本体ケース1A外部の車室13内からの空気を導入し、この空気を温度上昇した電子部品に強制的に送り込み、また空冷用ファン10を回転駆動すると、本体ケース1A内の温度上昇した空気をインストルメントパネル3内に放出することで、本体ケース1A内の温度を低下させ、本体ケース1A内を冷却する。
【0043】
また、ステップS5において、車室13内を冷房する場合(ステップS5;No)には、ステップS12に進む。このステップS12では、コントローラ18は、ターゲットエリア(温度上昇領域)の温度Taが70℃未満であるか否かを判定する。ここで、このステップS12の処理から以下に説明するステップS14の処理までは、車室13内を冷房している状態を前提とする。
【0044】
ターゲットエリア(温度上昇領域)の温度Taが70℃以下である場合(ステップS12;Yes)には、ステップS13に進む。このステップS13では、ターゲットエリア(温度上昇領域)の温度Taが設定温度内であるとみなし、コントローラ18は、吸排気用ファン12をオフになるように制御するとともに、空冷用ファン10をオフにするか、又は排気するように制御する。この排気の場合は、空冷用ファン10が回転駆動して本体ケース1A内の温度上昇した空気をインストルメントパネル3内に放出する。
【0045】
一方、ステップS12において、ターゲットエリア(温度上昇領域)の温度Taが70℃を超えている場合(ステップS12;No)には、ステップS14に進む。このステップS14では、ターゲットエリア(温度上昇領域)の温度Taが設定温度を超えていることから、吸排気用ファン12を正方向に回転駆動し、図4に示すように本体ケース1A外部の車室13内からの冷却空気を導入して温度上昇した電子部品に強制的に送り込み、また空冷用ファン10を回転駆動し、本体ケース1A内の温度上昇した空気をインストルメントパネル3内に放出することで、本体ケース1A内を冷却し、温度上昇した電子部品の温度を低下させる。
【0046】
そして、上記ステップS4,S8,S10,S11,S13,S14の処理が終了すると、ステップS15に進み、このステップS15では、サンプリング時間の間、待機状態とする。すなわち、このステップS15では、一定周期でターゲットエリア(温度上昇領域)の温度Taを監視し、コントローラ18の設定時間の間、待機状態となる。
【0047】
次いで、ステップS16では、ターゲットエリア(温度上昇領域)の温度Taが制限を超えているか否かを判定する。具体的には、ターゲットエリアの温度Taが85℃を超えているか、又は−40℃未満であるかを判定する。これらの設定値は、温度上昇領域に配置された電子部品等の仕様による。
【0048】
ターゲットエリアの温度Taが制限を超えていない場合(ステップS16;No)には、ステップS1に戻り、再び上記の処理を実行する。
【0049】
ターゲットエリアの温度Taが制限を超えている場合(ステップS16;Yes)には、ステップS17に進む。このステップS17では、電子部品の使用温度範囲を超えているので、例えばブザー、ランプ等で警報を発し、電源をオフにする等のエマージェンシー処理を実行した後、全体の処理を終了する。
【0050】
なお、図6に示すフローチャートに対応するプログラムを、ハードディスク(本実施形態の電子機器に搭載される場合もある。)等の情報記録媒体に記録させておき、或いは当該プログラムをインターネット等のネットワークを介して取得した後に記録しておき、これらを汎用のマイクロコンピュータなどにより読み出して実行することにより、当該マイクロコンピュータを本実施形態に係るコントローラ18として機能させることが可能である。
【0051】
このように本実施形態によれば、吸排気用ファン12を本体ケース1Aの車室内側に配置し、この吸排気用ファン12を正方向及び逆方向に回転可能としたことにより、エアコン14の暖房時には、吸排気用ファン12を逆方向に回転駆動することにより、本体ケース1A内の熱を有効利用することで、エアコン14の負荷を低減させることができる。その結果、環境への負荷も低減することが可能となる。
【0052】
また、エアコン14の冷房時には、空冷用ファン10を回転駆動するとともに、吸排気用ファン12を正方向に回転駆動させることにより、冷却空気を温度上昇した電子部品に強制的に送り込むことで、本体ケース1A内の温度を低下させ、電子部品を冷却することができる。その結果、本体ケース1A内に実装された電子部品の動作を安定化させることができる。
【0053】
さらに、本実施形態によれば、吸排気用ファン12を正方向及び逆方向に回転可能としたことにより、正方向に回転可能なファンと逆方向に回転可能なファンの双方を設置することがなくなり、構造を簡素化することができる。
【0054】
なお、本実施形態において、吸排気用ファン12にダクトの一端を接続し、このダクトの他端を車室内のシートの下方に配置するように構成すれば、吸排気用ファン12を逆方向に回転駆動することにより、本体ケース1A内の余分な熱を乗員の足元に導くことができ、暖房効果を一段と高めることができる。
【0055】
(第2実施形態)
図7は本願の第2実施形態における空調装置を取り付けたカーナビゲーションを示す側面図である。なお、前記第1実施形態と同一又は対応する部分には同一の符号を付して、前記第1実施形態と異なる構成及び作用についてのみ説明する。
【0056】
本実施形態は、本願の空調装置をカーナビゲーションに適用した例を示している。すなわち、本実施形態は、開閉タイプの車載用電装機器であって、前面パネルにスリットを形成できないものに適用している。
【0057】
図7に示すように、カーナビゲーションの本体ケース1Bには、開閉パネルとしての開閉モニタ20がインストルメントパネル3とほぼ同一面となるように開閉可能に取り付けられている。なお、これら本体ケース1B及び開閉モニタ20により本願の筐体が構成される。また、本体ケース1B内には、前記第1実施形態と同様に電子部品等の各種構造物が実装されている。
【0058】
開閉モニタ20は、引出し部21に対し連結軸22を介して傾斜可能に連結されている。つまり、開閉モニタ20は、引出し部21が車室13側に突出すると、開閉モニタ20が連結軸22を中心として回動することにより、傾斜(チルト)するように構成されている。したがって、開閉モニタ20は、傾斜(チルト)して開くことにより、本体ケース1Bとの隙間から本体ケース1Bと車室13内との間で空気を流通させることができる。
【0059】
次に、本実施形態の作用及び効果を説明する。
【0060】
エアコン14の暖房時、開閉モニタ20をチルトさせ、吸排気用ファン12を逆方向に回転駆動することにより、本体ケース1B内の熱を本体ケース1Bとの隙間を通して車室13内に放熱することで、車室13内を暖めることができる。この場合は、本体ケース1B内の温度、つまり上述したようにターゲットエリア温度Taが車室13内の温度Tcを超えている必要がある。
【0061】
また、本体ケース1B内に設置された温度センサ17が例えば70℃を超えていることを検出した場合には、開閉モニタ20をチルトさせ、吸排気用ファン12を正方向に回転駆動することにより、車室13内の冷却空気を上記隙間を通して本体ケース1B内に取り込み、本体ケース1B内の温度を低下させることができる。
【0062】
このように本実施形態によれば、前面にスリットを形成できない開閉タイプの車載用電装機器であっても、開閉モニタ20をチルトさせ、本体ケース1B内の熱を開閉モニタ20と本体ケース1Bとの隙間を通して車室13内に放熱することで、本体ケース1B内の熱を有効利用することができ、エアコン14の負荷を低減させることができる。
【0063】
また、開閉モニタ20をチルトさせ、車室13内の冷却空気を本体ケース1B内に取り込むことにより、本体ケース1B内の温度を低下させ、本体ケース1B内に実装された電子部品の動作を安定化させることができる。本実施形態においてその他の構成及び効果は、前記第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0064】
なお、本願は、上記各実施形態に限定することなく、種々の変更が可能である。例えば上記各実施形態では、本願を電子機器の一例としてカーステレオやカーナビゲーションに適用した例について説明したが、これに限定することなく、カーオーデイオ等の他の車載用電装機器やノートパソコン等のような各種民生用の電子機器にも適用可能である。なお、ノートパソコンに適用した場合には、上記車室内に代えて室内となり、当該室内に対して吸排気用ファン12を回転駆動させて吸気、排気を行うことになる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】一般のカーステレオを車両のコンソールパネルに取り付けた状態を示す縦断面図である。
【図2】本願の第1実施形態の空調装置を取り付けたカーステレオにおいてインストルメントパネル内に放熱する場合を示す側面図である。
【図3】本願の第1実施形態の空調装置を取り付けたカーステレオにおいて車室内に放熱する場合を示す側面図である。
【図4】本願の第1実施形態の空調装置を取り付けたカーステレオにおいて車室内の冷気で本体ケース内を冷却する場合を示す側面図である。
【図5】本願の第1実施形態における空調回路を示すブロック図である。
【図6】図5のコントローラの動作を示すフローチャートである。
【図7】本願の第2実施形態における空調装置を取り付けたカーナビゲーションを示す側面図である。
【符号の説明】
【0066】
1A,1B:本体ケース
2:前面パネル
3:コンソールパネル
10:空冷用ファン
12:吸排気用ファン
13:車室
14:エアコン
16:温度センサ
17:温度センサ
18:コントローラ
20:開閉モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に複数の電子部品を実装した電子機器であって、
前記筐体の一側に配置され、かつ前記筐体内の空気を当該筐体外に排出する第1の送風部材と、
前記筐体の他側に配置され、かつ前記筐体内及び前記筐体外の空気を排出及び導入する第2の送風部材と、
を備えることを特徴とする電子機器の空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器の空調装置において、
前記筐体は、車室内のインストルメントパネルに取り付けられていることを特徴とする電子機器の空調装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電子機器の空調装置において、
前記第2の送風部材は、正方向及び逆方向に回転可能なファンであることを特徴とする電子機器の空調装置。
【請求項4】
請求項2乃至3のいずれか一項に記載の電子機器の空調装置において、
前記第2の送風部材は、前記筐体の前記車室内側に配置されていることを特徴とする電子機器の空調装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電子機器の空調装置において、
前記筐体には、開閉可能な開閉パネルが取り付けられ、当該開閉パネルを開いたときに前記筐体との隙間から空気を流通させることを特徴とする電子機器の空調装置。
【請求項6】
請求項1に記載の電子機器の空調装置において、
前記筐体の内部の温度を検出する第1の温度センサと、
前記筐体の外部の温度を検出する第2の温度センサと、
前記第1の温度センサ及び前記第2の温度センサの検出温度に基づいて前記第1の送風部材及び前記第2の送風部材をオン、オフ制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする電子機器の空調装置。
【請求項7】
筐体の一側に配置され、かつ前記筐体内の空気を当該筐体外に排出する第1の送風部材と、
前記筐体の他側に配置され、かつ前記筐体内及び前記筐体外の空気を排出及び導入する第2の送風部材とを備え、
前記筐体の内部の温度を第1の温度センサにより検出する第1の検出工程と、
前記筐体の外部の温度を第2の温度センサにより検出する第2の検出工程と、
前記第1の検出工程及び前記第2の検出工程により検出された温度に基づいて前記第1の送風部材及び前記第2の送風部材をオン、オフ制御する制御工程と、
を備えることを特徴とする電子機器の空調方法。
【請求項8】
筐体の一側に配置され、かつ前記筐体内の空気を当該筐体外に排出する第1の送風部材と、前記筐体の他側に配置され、かつ前記筐体内及び前記筐体外の空気を排出及び導入する第2の送風部材とを備える電子機器の空調装置に含まれるコンピュータを、
前記筐体の内部の温度を第1の温度センサにより検出する第1の検出手段、
前記筐体の外部の温度を第2の温度センサにより検出する第2の検出手段、
前記第1の検出手段及び前記第2の検出手段により検出された温度に基づいて前記第1の送風部材及び前記第2の送風部材をオン、オフ制御する制御手段、として機能させることを特徴とする電子機器の空調用プログラム。
【請求項9】
請求項8に記載の空調用プログラムがコンピュータ読み取り可能に記録されていることを特徴とする記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−117474(P2009−117474A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−286379(P2007−286379)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】