説明

電子機器用プッシュボタン

【課題】 パッキンを設けてもキートップの設計の自由度を向上させる電子機器用プッシュボタンを提供する。
【解決手段】 電子機器用プッシュボタン1は、外装ケース10と、外装ケース10に収納されるプッシュボタン20と、回転性を有し、外装ケース10を介してプッシュボタン20を押圧するキートップ30と、外装ケース10とキートップ30の間に配置され、防水性と弾力性を有するパッキン40を有し、パッキン40は、例えばシリコンゴムや軟質合成樹脂等によって形成され、下部フランジ42によってボス11を締め付けさせ、上部フランジ43によって軸部32を締め付けさせることで中空部41を気密封止し、プッシュボタン20を防水する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器を作動させための電子機器用プッシュボタン、特に屋外で使用される電子機器に用いられる防水性を有する電子機器用プッシュボタンに関する。
【背景技術】
【0002】
屋外で使用される携帯無線器や携帯電話機等の電子機器は防水性を有する必要があり、内蔵されるスイッチを作動させる電子機器用プッシュボタンも防水性を有する必要がある。
【0003】
防水型の電子機器用プッシュ釦の構造は、例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平09−198952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に開示される防水型の電子機器用プッシュ釦の構造において、キートップであるツマミとケースの間には、防水パッキンが挿設されおり、ツマミは、防水パッキンと当接している。そのため、ツマミは、防水パッキンとの当接部である外周壁において、防水パッキンの形状に合わせて厚み(段差)を有する必要がある。よってツマミにおける設計の自由度が狭まってしまう。
【0005】
そのため本発明は、上記事情に鑑み、防水パッキンを設けてもキートップの設計の自由度を向上させる電子機器用プッシュボタンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は目的を達成するために、円筒部を有する外装ケースと、前記外装ケースに収納され、前記円筒部の下方に配置されているプッシュボタンと、前記円筒部の上方に配置される頭部と、前記頭部の中央に配置され、前記円筒部を貫通して前記プッシュボタンに押圧する軸部と、を有するキートップと、前記円筒部の外周を締め付ける第1の締付部と、前記軸部の外周を締め付ける第2の締付部と、を有するパッキンと、を具備することを特徴とする電子機器用プッシュボタンを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、防水パッキンを設けてもキートップの設計の自由度を向上させる電子機器用プッシュボタンを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。図1Aと、図1Bと図2を参照して実施形態について説明する。図1Aは、押し下げられる前の状態における電子機器用プッシュボタンの断面図である。図1Bは、押し下げられた後の状態における電子機器用プッシュボタンの断面図である。図2は、電子機器用プッシュボタンの分解斜視図である。
【0009】
図1Aに示すように電子機器用プッシュボタン1は、外装ケース10と、外装ケース10に収納されるプッシュボタン20と、外装ケース10を介してプッシュボタン20を押圧するキートップ30と、外装ケース10とキートップ30の間に配置されるパッキン40を有する。
【0010】
図1Aに示すように外装ケース10には、円筒部であるボス11が突設されている。ボス11の中心には、キートップ30の軸部32が貫通可能な貫通孔12が形成されている。またボス11の周囲には、ボス11と同心に環状の溝15が設けられている。この溝15内には、パッキン40の下部フランジ42(詳細については後述する)がボス11を締め付けるように嵌合配置可能で、さらにボス11と同心に環状の溝14が設けられている。溝14は、下部フランジ42と略同じ高さを有している。溝15には、後述するキートップ30の先端32aが貫通孔12に挿入されると、キートップ30における外周壁部33が挿入配置される。また溝15の周囲には、外周壁部33が遊嵌可能な側壁16が設けられている。側壁16は、外周壁部33と例えば同形状を有し、外周壁部33との間には所望する間隔が設けられる。
【0011】
外装ケース10に収納されるプッシュボタン20は、貫通孔12の下方に配置される。
【0012】
キートップ30は、外装ケース10より露出し、操作部でありボス11の上方に配置される逆椀状の頭部31と、頭部31の中央部に配置され、貫通孔12を貫通し、先端32aがプッシュボタン20を押圧する例えば円柱形状の軸部32と、を有している。
【0013】
頭部31は、頭部31の外周において外装ケース10に向かって延設され、且つ軸部32の周囲に配置される外周壁部33と、軸部32と外周壁部33の間に配置され、外装ケース10に対向する面35を有している。
【0014】
キートップ30は軸部32の長手軸方向に移動可能であり、これにより先端32aがプッシュボタン20を押圧する。またキートップ30は、軸部32の長手軸に対して周方向に回転可能である。このようにキートップ30は、回転性を有している。
【0015】
軸部32は、キートップ30が外装ケース10から抜けることを防止する抜け止めピン32bを有している。抜け止めピン32bは、貫通孔12の直径よりも長く形成され、外装ケース10の内面に係止されることによりキートップ30が外装ケース10から抜けることを防止する。またキートップ30がプッシュボタン20を押圧する方向に移動し、さらに所定の方向に回転すると、抜け止めピン32bは外装ケース10の内面に設けられた凸部17に係止される。これによりキートップ30は、プッシュボタン20を押圧した状態で保持される。
【0016】
本発明に係る電子機器用プッシュボタン1が例えば図示しない無線端末に適用され、プッシュボタン20がPTT(Push(Press) To Talk)のオン・オフを行うボタンである場合、キートップ30を図1Bに示す位置に保持することにより、操作者は通話を継続することができる。
【0017】
外周壁部33は、先端32aがプッシュボタン20を押圧する際、溝15に当接し、後述するパッキン40の外面45と側壁16の間で遊嵌する。そのため外面45と外周壁部33の間、及び外周壁部33と側壁16の間には、それぞれ所望する間隙が設けられている。
【0018】
図1Aに示すように外装ケース10とキートップ30の間には、図2に示すパッキン40が配置されている。パッキン40は、弾力性を有し、水分を吸収しない材質、例えばシリコンゴムや軟質合成樹脂等によって形成される。パッキン40は、図1Aと図1Bに示すようにパッキン40の軸方向に沿って弾性変形(伸縮)可能である。つまりパッキン40は、押圧されるキートップ30の動作に追従して弾性変形する。本実施形態におけるパッキン40は、半球形状であり、中空部41を有している。
【0019】
図1Aと図2に示すようにパッキン40の底面部には、パッキン40の軸に対して外向きと内向きに張り出される環状の下部フランジ42が設けられている。下部フランジ42の中央部には、ボス11と同形状を有し、中空部41と連通し、ボス11が貫通可能な貫通孔42aが設けられている。この下部フランジ42は、上述したように溝14に嵌合配置され、貫通孔42aに差し込まれたボス11の外周に密着し、ボス11の外周を締め付ける。このように下部フランジ42は、ボス11の外周を締め付ける第1の締付部である。なおボス11は、貫通孔42aを貫通し、中空部41に配置され、パッキン40の内周面46に当接しない。また下部フランジ42には、外周壁部33が溝15に当接した際、図1Bに示すように外周壁部33が当接する。
【0020】
また図2に示すようにパッキン40の頂部には、パッキン40の軸に向かって内向きに張り出される上部フランジ43を有している。上部フランジ43の中央部には、軸部32と同形状を有し、中空部41と連通し、軸部32が貫通可能な貫通孔43aが設けられている。環状の上部フランジ43は、内向きに張り出されるため、図1Aに示すように貫通孔43aに差し込まれた軸部32に密着し、軸部32の外周を締め付け、また面35に当接する。このように上部フランジ43は、軸部32を締め付ける第2の締付部である。なお軸部32が締め付けられた状態においても、キートップ30は上述したように軸部32の長手軸に対して周方向に回転可能である。
貫通孔43aは、貫通孔42aよりも小さく、貫通孔12の上方に配置される。
【0021】
このようにパッキン40は、下部フランジ42によってボス11の外周を締め付けさせ、上部フランジ43によって軸部32を締め付けさせることで中空部41を気密封止する。これによりパッキン40は、外部から中空部41を防水し、軸部32と外装ケース10を介してプッシュボタン20を防水する。なお本実施形態のパッキン40の防止機能は、キートップ30がいかなる操作状態にあってもIPX5の保護等級を維持することが可能である。
【0022】
次に本実施形態のキートップの押圧の動作方法について図1Aと図1Bを参照して説明する。
図1Bに示すように頭部31が電子機器用プッシュボタン1の操作者によって押圧されると、パッキン40はパッキン40の軸方向に沿って圧縮されて弾性変形する。このとき、パッキン40の上部フランジ43は、軸部32を締め付けた状態を保持し、防水性を維持する。なおキートップ30は、外周壁部33の底面が溝15に当接するまで押圧可能である。
【0023】
キートップ30が押圧された状態から解放されると、パッキン40は圧縮される元の形状に戻る。その際、キートップ30は、パッキン40の弾性力により、押し上げられ、キートップ30とパッキン40とプッシュボタン20は、図1Aに示す状態に戻る。
【0024】
なおパッキン40が弾性変形し、上部フランジ43の位置が変化しても、上部フランジ43は断面視円形を呈するため、軸部32との接触が確保される。またパッキン40は半球形状を有しているため、図1Bに示すようにパッキン40が弾性変形(圧縮)しても、上部フランジ43は、外側に膨らむことを抑制され、軸部32を確実に締め付ける。
【0025】
このように本実施形態は、パッキン40にて防水するために、弾力性を有する上部フランジ43に軸部32を締め付けさせ、上部フランジ43を軸部32と面35に当接させている。よって外周壁部33には、上部フランジ43が当接しないため、外周壁部33の設計上の制約は生じない。また、外周壁部33の形状を簡素化できるため、コスト的にも有利である。またパッキン40の上部フランジ43を内向きに張り出させ、軸部32を締め付けるようにしているため、上部フランジ43を嵌合させる嵌合部材を軸部32に設ける必要がない。
【0026】
このように本実施形態は、防水のためにパッキン40を設けてもキートップ30の形状を簡素にでき、キートップ30の設計の自由度を向上させることができ、安価にすることができる。
【0027】
また本実施形態は、キートップ30を押し上げ、押し下げ、回転させても、上部フランジ43における軸部32との接触面積は、変化していない。これにより本実施形態は、キートップ30を押し上げ、押し下げ、回転させる際、パッキン40がどのように変形しても上部フランジ43に対する軸部32における抵抗の変化が生じないために、操作者に均一な操作感覚を得させることができる。
【0028】
また本実施形態は、パッキン40を半球形状とし、上部フランジ43を内向きに張り出させているために、パッキン40が縮んだ際、パッキン40がキートップ30に当接することを抑制できるため、スムーズに操作させることができる。
【0029】
また本実施形態は、上部フランジ43に例えば潤滑剤を塗布してもよい。これにより本実施形態は、キートップ30の操作性を向上させることができる。
【0030】
また本実施形態は、パッキン40の弾性力により、キートップ30を押し上げることができるため、バネなどの他の部材を用いることなくキートップ30を図1Aに示す状態に戻すことができる。
【0031】
また本実施形態は、図1Bに示すように先端32aがプッシュボタン20を押圧する際、キートップ30の外周壁部33の底面を溝15(外装ケース10)に当接させることで、操作者に先端32aによるプッシュボタン20の押圧動作が完了したことを判別させることができる。
【0032】
なお本実施形態において、パッキン40は、半球形状を有しているが、プッシュボタン20を防水することができれば、例えば円筒形状やコの字形状でも良く、その形状は限定されない。
【0033】
このように本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1A】図1Aは、押し下げられる前の状態における電子機器用プッシュボタンの断面図である。
【図1B】図1Bは、押し下げられた後の状態における電子機器用プッシュボタンの断面図である。
【図2】図2は、電子機器用プッシュボタンの分解斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1…電子機器用プッシュボタン、10…外装ケース、11…ボス、12…貫通孔、14,15…溝、16…側壁、17…凸部、20…プッシュボタン、30…キートップ、31…頭部、32…軸部、32a…先端、32b…ピン、33…外周壁部、35…面、40…パッキン、41…中空部、42…下部フランジ、42a…貫通孔、43…上部フランジ、43a…貫通孔、45…外面、46…内周面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒部を有する外装ケースと、
前記外装ケースに収納され、前記円筒部の下方に配置されているプッシュボタンと、
前記円筒部の上方に配置される頭部と、前記頭部の中央に配置され、前記円筒部を貫通して前記プッシュボタンを押圧する軸部と、を有するキートップと、
前記円筒部の外周を締め付ける第1の締付部と、前記軸部の外周を締め付ける第2の締付部と、を有するパッキンと、
を具備することを特徴とする電子機器用プッシュボタン。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−70657(P2009−70657A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236843(P2007−236843)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000166650)株式会社日立国際電気エンジニアリング (100)
【Fターム(参考)】