説明

電子機器用複合樹脂成形部品の製造方法

【課題】表面処理を施すことなく、電磁波遮蔽特性および導電性を備えた樹脂成形品を製造すること。
【解決手段】二色成形法により、電磁波遮蔽特性を備えた第2樹脂からなる第2成形部として、電子機器の外側に露出する外面1と、電子機器の内側に面する内面2と、この内面2に形成された凹部3とを備えた成形品4を成形し、次に、絶縁性を備えた第1樹脂からなる第1成形部として、凹部3内に充填され、電子機器の内側に露出している表面5を備えた成形品6を成形する。成形品4(第2成形部)の外面1により電子機器の外観特性が確保され、成形品6(第1成形部)により、電磁波遮蔽特性が確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器のシールドケース、コネクタなどのように電磁波遮蔽特性および絶縁特性の双方を必要とする部品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来において、樹脂成形品に電磁波遮蔽特性と絶縁性を共に持たせる場合には、絶縁性の樹脂成形品の表面に、導電塗装あるいは蒸着を施し、電磁波遮蔽特性を付与している。あるいは、導電性の樹脂成形品の表面に絶縁塗装を施すようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の方法では、樹脂成形品の射出成形工程と、塗装、蒸着、めっきなどの表面処理工程の2工程が必要であり、表面処理工程では複雑なマスキングが必要となる。したがって、製造効率が悪いという課題がある。
【0004】
また、導電塗装、蒸着、めっきなどの表面処理が施された樹脂製品では、樹脂に不純物が混入し、混入した不純物によって樹脂材料の物性が低下してしまう。このため、そのリサイクルが困難であるという問題点がある。
【0005】
一方、導電性を確保するために表面処理の代わりに、導電性が付与された樹脂を用いる方法もある。しかし、導電性樹脂は充填材が多く混入しているので、外観特性が悪く、外装ケースとして用いるには適していない場合がある。外観品位の低下を回避あるいは抑制するために充填材を減らすと、導電性が低下し、電磁波遮蔽特性が劣化してしまう。これに加えて、充填材が多い樹脂は溶着性に劣るという問題もある。
【0006】
次に、通信用電子機器においては、内蔵アンテナを保護しているケース部分には、送受信のために、特定波長帯域の通過特性を備えた波長選択性のあるシールド特性が要求される。また、電子機器の内部において電磁波が乱反射することを防止するための電磁波吸収性能、乱反射防止性能が要求される場合もある。しかし、従来の樹脂製品では、このような多様なシールド特性の要求に対応できない。
【0007】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、二色成形法により異なる特性の樹脂からなる成形部を一体成形することにより、外観特性、電磁波遮蔽特性、絶縁性、溶着性、電磁波透過特性、電磁波吸収特性などのうちの二つ以上の特性を合わせ持つ電子機器用複合樹脂成形品の製造方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の電子機器用複合樹脂成形品の製造方法は、
二色成形法により、第1樹脂からなる第1成形部と、第2樹脂からなる第2成形部とを、一方が他方を少なくとも部分的に包み込む状態に成形し、
前記第1樹脂として、電磁波遮蔽性あるいは導電特性を備えた樹脂を用い、
前記第2樹脂として、電磁波透過性あるいは電気絶縁性を備えた樹脂を用いることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、外観特性、電磁波遮蔽特性、絶縁性、溶着性、電磁波透過特性、電磁波吸収特性などのうちの二つ以上の特性を合わせ持つ電子機器用複合樹脂成形品を、導電塗装、蒸着、めっきなどの表面処理を行うことなく製造できる。
【0010】
すなわち、本発明によれば次の効果を得ることができる。
(1)導電塗装、蒸着、めっきなどの電磁波遮蔽用の表面処理工程を施すことなく、電磁波遮蔽特性を備えた樹脂成形品を得ることができる。
(2)表面処理が不要で、同一材質樹脂を用いて、絶縁材と、導電性を付与するための添加材が含まれる導電材を得ることができる。よって、各成形部は不純物の分離作業が不要であるので、後に粉砕、再ペレット化して簡単にリサイクルできる。
(3)絶縁性を付与する成形部は、充填材を含まず、充填材を含む場合でも外観特性に影響のない充填量にできるので、電磁波遮蔽特性、導電特性と、外観性に優れた成形品を得ることができる。
(4)特定の部位に特定波長帯域の電磁波を誘導可能な電磁波透過あるいは遮蔽特性を備えた成形品を簡単に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した実施の形態を説明する。
【0012】
[実施の形態1]
図1は本発明を適用した電子機器のシールドケースの製造方法を示す説明図である。本例では、二色成形法により、電磁波遮蔽特性を備えた第2樹脂からなる第2成形部として、電子機器の外側に露出する外面1と、電子機器の内側に面する内面2と、この内面2に形成された凹部3とを備えた成形品4を成形し、次に、絶縁性を備えた第1樹脂からなる第1成形部として、凹部3内に充填され、電子機器の内側に露出している表面5を備えた成形品6を成形する。成形品4(第2成形部)の外面1により電子機器の外観特性が確保され、成形品6(第1成形部)により、電磁波遮蔽特性が確保される。
【0013】
たとえば、第1樹脂としてはポリカABS樹脂を用いることができ、第2樹脂としてはPBT樹脂を用いることができる。これらの樹脂は熱膨張率がほぼ等しく、密着性にも優れている。
【0014】
[実施の形態2]
図2は本発明を適用した電子機器のコネクタの製造方法を示す説明図である。本例では、二色成形法により、絶縁性の第2樹脂からなる第2成形部として、導電性の端子ピン11が埋め込まれた成形部12を成形し、次に、電磁波遮蔽特性を備えた第1樹脂からなる第1成形部として、成形部12における端子ピン11が露出あるいは突出している部分以外を包み込む成形部13を成形する。第2成形部12により端子ピンの絶縁性が確保される。また、第1成形部13により電磁波遮蔽特性が確保される。
【0015】
[実施の形態3]
図3は本発明を適用した電子機器のシールドケースの製造方法を示す説明図である。本例では、二色成形法により、電磁波遮蔽特性を備えた第1成形部として、電子機器の外側に露出する外面21と、電子機器の内側に面する内面22と、この内面22に開口している凹部23とを備えた成形部24を成形し、次に、第2成形部として、電磁波吸収特性を備えた第2樹脂を用いて、凹部23に充填され、電子機器の内側に露出している表面25を備えた成形部26を成形する。これにより、第1成形部24により電磁波遮蔽特性を確保し、第2成形部26により、電子機器の内部で発生する電磁波の吸収特性を確保している。この結果、電子機器の内部乱反射を防止できる。
【0016】
[実施の形態4]
図4は、本発明を適用した電子機器の内蔵アンテナを保護しているケース部品を製造する方法を示す説明図である。本例では、二色成形法により、第2成形部として、特定波長帯域の電磁波を透過可能な成形部31を成形し、次に、第1成形部として、電子機器の外側に露出する外面32および電子機器の内部に面する内面33においてそれぞれ第2成形部31の一部が露出した状態で当該第2成形部31を包み込む成形部34を成形する。
【0017】
この結果、第1成形部34により電磁波遮蔽特性が確保される。また、電子機器の内外に一部が露出している第2成形部31により特定波長帯域の電磁波の透過特性が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用した実施の形態1に係るシールドケースの製造方法を示す説明図である。
【図2】本発明を適用した実施の形態2に係るコネクタの製造方法を示す説明図である。
【図3】本発明を適用した実施の形態3に係るケース部品の製造方法を示す説明図である。
【図4】本発明を適応した実施の形態4に係るケース部品の製造方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0019】
1 外面
2 内面
3 凹部
4 成形品
5 表面
6 成形品
11 端子ピン
12 成形部
13 成形部
21 外面
22 内面
23 凹部
24 成形部
25 表面
26 成形部
31 成形部
32 外面
33 内面
34 成形部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二色成形法により、第1樹脂からなる第1成形部と、第2樹脂からなる第2成形部とを、一方が他方を少なくとも部分的に包み込む状態に成形し、
前記第1樹脂として、電磁波遮蔽特性あるいは導電特性を備えた樹脂を用い、
前記第2樹脂として、電磁波透過特性あるいは電気絶縁特性を備えた樹脂を用いることを特徴とする電子機器用複合樹脂成形部品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法により電子機器のシールドケースを製造する方法であって、
前記第2成形部として、電子機器の外側に露出する外面と、電子機器の内側に面する内面と、この内面に開口している凹部とを備えたものを成形し、
前記第1成形部として、前記凹部内に充填され、電子機器の内側に露出している表面を備えたものを成形し、
前記第2成形部により外観特性を確保し、前記第1成形部により電磁波遮蔽特性を確保することを特徴とするシールドケースの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の製造方法により電子機器のコネクタを製造する方法であって、
前記第2成形部として、導電性の端子ピンが埋め込まれたものを成形し、
前記第1成形部として、前記第2成形部における前記端子ピンが露出あるいは突出している部分以外を包み込むものを成形し、
前記第1成形部により電磁波遮蔽性を確保し、前記第2成形部により絶縁性を確保することを特徴とするコネクタの製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の製造方法により電子機器のシールドケースを製造する方法であって、
前記第1成形部として、電子機器の外側に露出する外面と、電子機器の内側に面する内面と、この内面に開口している凹部とを備えたものを成形し、
前記第2成形部として、電磁波吸収特性を備えた前記第2樹脂を用いて、前記凹部に充填され、電子機器の内側に露出している表面を備えたものを成形し、
前記第1成形部により電磁波遮蔽特性を確保し、
前記第2成形部により、電子機器の内部で発生する電磁波の吸収特性を確保して内部乱反射を防止することを特徴とするシールドケースの製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の製造方法により電子機器の内蔵アンテナを保護しているケース部品を製造する方法であって、
前記第2成形部として、特定波長帯域の電磁波を透過可能なものを成形し、
前記第1成形部として、電子機器の外側に露出する外面および電子機器の内部に面する内面において前記第2成形部の一部がそれぞれ露出した状態で当該第2成形部を包み込むものを成形し、
前記第1成形部により電磁波遮蔽特性を確保し、
電子機器の内外に一部が露出している前記第2成形部により、前記内蔵アンテナによって送受信される特定波長帯域の電磁波の透過特性を確保することを特徴とするケース部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−320179(P2007−320179A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153304(P2006−153304)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(594062879)株式会社シンセイ (5)
【Fターム(参考)】