説明

電子機器用防水ケース

【課題】タッチパネルディスプレイの操作性及び視認性を確保しつつ、設計自由度の向上を図る。
【解決手段】タッチパネルディスプレイ10を有する電子機器を収納するケース部21と、ケース部21に設けられ、ケース部21の外部からケース部21に収納された電子機器のタッチパネルディスプレイ10を操作する操作機構50とを備える。操作機構50は、押しボタン51と、押しボタン51をケース部21の外側に付勢する戻しバネ52と、押しボタン51がケース部21の内側に押圧されると押圧方向に移動する移動レバー53と、移動レバー53によって押圧されると、押圧方向と略直交する方向に回動して接触部48をタッチパネルディスプレイ10の所定領域に接触させる操作レバー54とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタルスチルカメラ等のような電子機器に好適な電子機器用防水ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器用防水ケースには、その内部に収納された電子機器の操作スイッチを操作するための複数の操作部材が設けられている。この種の操作部材は、防水ケースの外面に設けられた押しボタンと、防水ケースの内面に設けられ、押しボタンが押圧操作されると電子機器の操作スイッチを押圧する接触部とを有し、各操作部材を操作することで電子機器用防水ケースに収納された電子機器を作動させる。
【0003】
また、ディジタルスチルカメラは、ディジタルスチルカメラが有する画像及び映像表示用のディスプレイパネルの表示面に透明なシート状のタッチパネルを貼り合せたタッチパネルディスプレイを有するものがある。ディジタルスチルカメラは、操作スイッチ機能をタッチパネルディスプレイに持たせることで、ディジタルスチルカメラの筐体に設ける操作スイッチの数を減らし、筐体の小型化を図りつつ、タッチパネルディスプレイの表示面の大きさを確保する傾向にある。
【0004】
このようなタッチパネルディスプレイを有するディジタルスチルカメラを上述した従来の電子機器用防水ケースに収納した場合、従来の操作部材では、複数の押しボタンを含む操作部、この操作部を支持するためのボス部及び接触部が押圧方向に一列に配置されており、これらがタッチパネルディスプレイの輪郭内に位置してしまう。よって、従来の電子機器用防水ケースでは、タッチパネルディスプレイに表示される表示内容やアイコンなどが視認しにくくなり、タッチパネルディスプレイの表示面が大型化されてもその表示内容を十分に視認しにくいという問題があった。
【0005】
このため、特許文献1の電子機器用防水ケースでは、押しボタンを含む操作部及びこの操作部を支持するためのボス部がタッチパネルディスプレイの輪郭外に位置し、弾性アームを介して輪郭内に位置する接触部を透明な樹脂で形成する技術が提案されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の電子機器用防水ケースでは、押しボタンの押し方向と接触部がタッチパネルディスプレイを押圧する方向とが同じ方向となっているので、押しボタン及びボス部をケース部のタッチパネルディスプレイと対向する視認面に配置する必要がある。更に、特許文献1の電子機器用防水ケースでは、耐圧下で押しボタンを外部に戻すための戻しバネのストロークを確保する上で、押しボタン及びボス部が視認面から大きく突出し、デザイン上の制約となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−37136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、タッチパネルディスプレイの操作性及び視認性を確保しつつ、設計自由度の向上を図る上で有利な電子機器用防水ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために本発明に係る電子機器用防水ケースは、タッチパネルディスプレイを有する電子機器を収納するケース部と、ケース部に設けられ、ケース部の外部からケース部に収納された電子機器のタッチパネルディスプレイを操作する操作機構とを備える。操作機構は、押しボタンと、押しボタンをケース部の外側に付勢する戻しバネと、押しボタンがケース部の内側に押圧されると押圧方向に移動する移動レバーと、移動レバーによって押圧されると、押圧方向と略直交する方向に回動して接触部をタッチパネルの所定領域に接触させる操作レバーとを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、押しボタンがケース部の内側に押圧されて移動レバーが押圧方向に移動され、移動レバーによって操作レバーが押圧されると、操作レバーが移動レバーに連動して押圧方向と略直交する方向に回動軸を中心に回動して、接触部を防水ケースの収納部に収納されたタッチパネルディスプレイの所定領域に接触させることができるので、タッチパネルディスプレイの輪郭外のタッチパネルディスプレイと直交する面に配置することができ、タッチパネルディスプレイの操作性及び視認性を確保することができるとともに、設計自由度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ディジタルスチルカメラの前方斜視図である。
【図2】ディジタルスチルカメラの後方斜視図である。
【図3】本発明が適用された防水ケースの前方斜視図である。
【図4】本発明が適用された防水ケースの後方斜視図である。
【図5】操作機構の斜視図である。
【図6】操作機構の分解斜視図である。
【図7】操作機構の回動前の状態を示す縦断面図である。
【図8】操作機構の回動後の状態を示す縦断面図である。
【図9】操作機構の回動前の状態を示す斜視図である。
【図10】操作機構の回動後の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明が適用された電子機器用防水ケース(以下、防水ケースという。)について、図面を参照しながら詳細に説明する。また、防水ケースに収納される電子機器がディジタルスチルカメラである場合の実施の形態について説明する。更に、説明は、以下の順番で行う。
1 ディジタルスチルカメラの外観構成
2 防水ケースの構成
3 操作機構の構成
4 操作機構の動作
5 防水ケースの作用効果
6 防水ケースの変形例
【0013】
<1 ディジタルスチルカメラ>
本発明が適用された防水ケース20に収納されるディジタルスチルカメラ1は、図1及び図2に示すように、外装を構成するカメラ本体部2を有する。
【0014】
カメラ本体部2の前面部2aの上部には、レンズ機構3と、このレンズ機構3の近傍で横並びに配設されたフラッシュ機構4と、レンズ機構3の撮影レンズ5から入力される光に基づいて被写体の映像信号を形成する図示しない撮像手段とが設けられている。また、カメラ本体部2の前面部2aの下部には、撮影レンズ5を開閉するレンズカバー6が設けられている。
【0015】
ディジタルスチルカメラ1の撮像手段は、図示しないが、カメラ本体部2の内部に収納されている。撮像手段は、例えば、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor:相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサ等であり、レンズ機構3の光軸上の後方に配置されている。
【0016】
レンズカバー6は、カメラ本体部2に対して上下方向へ摺動可能に支持されており、カメラ本体部2の前面部2aの上部に配置された撮影レンズ5とフラッシュ機構4とを開閉する。レンズカバー6が下方向に摺動されてレンズ開放位置にあるときには、撮影レンズ5とフラッシュ機構4の発光部は共に開かれ、撮影操作が可能となる。これに対して、レンズカバー6が上方向に摺動されてレンズ閉鎖位置にあるときには、撮影レンズ5と発光部が共に閉じられ、撮影操作が不能となる。
【0017】
また、カメラ本体部2の上面部2bには、電源のオン又はオフを行う電源ボタン7と、撮像を行うための撮影ボタン8と、広角側又は望遠側にズーム操作を行うためのズームレバー9とが設けられている。
【0018】
また、カメラ本体部2の背面部2cには、撮像手段で撮像された画像及び映像、既にディジタルスチルカメラ1のメモリに記憶されていた画像及び映像等を表示するタッチパネルディスプレイ10と、タッチパネルディスプレイ10の上部に、これらの画像及び映像をタッチパネルディスプレイ10に再生表示させる再生ボタン11とが設けられている。
【0019】
タッチパネルディスプレイ10は、カメラ本体部2の背面において大きく占有するように形成されている。タッチパネルディスプレイ10は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの表示面に貼り合わされた透明なシート状のタッチパネルに圧力が加わると、撮影や再生にまつわるディジタルスチルカメラ1の各種の動作や設定がなされる。
【0020】
タッチパネルディスプレイ10には、ディジタルスチルカメラ1が例えば防水ケース20に収納されて水中撮影等に用いる特殊モードに設定されると、このモードにおいて、ディジタルスチルカメラ1の操作用のアイコン12が表示される。例えば、タッチパネルディスプレイ10には、第1のアイコン12aが背面視左側上部に表示される。更に、タッチパネルディスプレイ10には、第2〜第6のアイコン12b,12c,12d,12e,12fが背面視右側部に上下に間隔をおいて直線状に並べて表示される。
【0021】
第1のアイコン12aは、例えば、カメラ1の再生ボタン11に対応する再生ボタンアイコンである。第2〜第6のアイコン12b〜12fは、ディジタルスチルカメラ1の他の動作や設定を行うためのアイコンである。例えば、第2〜第6のアイコン12b〜12fは、動画撮影か静止画撮影かを設定する撮影モード設定アイコン、フラッシュ機構4の動作モードを設定するフラッシュモード設定アイコン、マクロ撮影か通常撮影かを設定するマクロモード設定アイコン等である。
【0022】
なお、タッチパネルディスプレイ10に表示する操作用のアイコン12は、上述したものに限定されるものではなく、ディジタルスチルカメラ1の他の動作や設定を行うためのアイコンであってもよい。
【0023】
更に、カメラ本体部2の右側面部2dには、ストラップ紐などを取り付けるための金具13が設けられている。
【0024】
<2 防水ケース>
防水ケース20は、図3及び図4に示すように、ディジタルスチルカメラ1を着脱可能に収納するケース部21と、このケース部21の外部からケース部21の内部に収納されたディジタルスチルカメラ1のタッチパネルディスプレイ10を操作する操作機構50とを備える。
【0025】
ケース部21は、ヒンジ22を介して回動可能に連結されたフロントケース30及びリアケース40と、フロントケース30及びリアケース40の締込機構であるバックル23とを有している。フロントケース30及びリアケース40は、それぞれ有底箱形状に形成され、内部にそれぞれ収納凹部を有している。ケース部21は、これら収納凹部を対向させてフロントケース30及びリアケース40を重ね合わせることで、内部にディジタルスチルカメラ1が収納可能な収納部が設けられている。
【0026】
フロントケース30及びリアケース40の材質としては、例えば、PC(ポリカーボネート)が用いられる。なお、フロントケース30及びリアケース40の材質は、これに限定されるものではなく、その他の合成樹脂であってもよく、合成樹脂以外にもアルミニウム合金等の金属であってもよい。また、内部の構造が見えるように、材料として透明なPC等であってもよく、透明、半透明或いは不透明な他の合成樹脂であってもよい。
【0027】
フロントケース30は、ディジタルスチルカメラ1が収納される収納部を構成するフロント収納凹部を有する有底箱形状に形成されている。具体的に、フロントケース30は、図3に示すように、略四角形状の正面部30aと、この正面部30aの上下に連続した上面部30b及び下面部30cと、正面部30aの左右に連続した左側面部30d及び右側面部30eとを有している。
【0028】
フロントケース30の正面部30aには、略四角形状のレンズ窓31が設けられている。レンズ窓31は、防水ケース20のフロント収納凹部にディジタルスチルカメラ1が収納された際に、収納されたディジタルスチルカメラ1のレンズ機構3の撮影レンズ5と対向する位置に設けられている。また、レンズ窓31には、外部の光が自然な形でレンズ機構3に入力するようにガラス板32が装着されている。
【0029】
フロントケース30の上面部30bには、ケース側の電源ボタン33と撮影ボタン34と操作機構50とが設けられている。ケース側の電源ボタン33及び撮影ボタン34は、防水ケース20のフロント収納凹部に収納されたディジタルスチルカメラ1の電源ボタン7及び撮影ボタン8とそれぞれ対応する位置に設けられている。これにより、ケース側の電源ボタン33を押圧操作すると、カメラ側の電源ボタン7が押圧操作される。また、ケース側の撮影ボタン34を押圧操作すると、カメラ側の撮影ボタン8が押圧操作される。操作機構50については、後述する。
【0030】
リアケース40は、ディジタルスチルカメラ1が収納される収納部を構成するリア収納凹部を有する有底箱形状に形成されている。具体的に、リアケース40は、図4に示すように、略四角形状の背面部40aと、この背面部40aの上下に連続する上面部40b及び下面部40cと、背面部40aの左右に連続する左側面部40d及び右側面部40eとを有している。リアケース40は、リア収納凹部をフロントケース30のフロント収納部に対向させて重ね合わせ際に、背面部40aがフロントケース30の正面部30aと対向し、上面部40b及び下面部40cが、それぞれ上面部30b及び下面部30cと対向し、左側面部40d及び右側面部40eが、それぞれ左側面部30d及び右側面部30eと対向する。
【0031】
更に、リアケース40の背面部40aは、第1の背面部40fと、段差49を介して第1の背面部40fの略中央に外側に向けて突出するように設けられた第2の背面部40gとからなる。リアケース40の第2の背面部40gには、防水ケース20の収納部に収納されたディジタルスチルカメラ1のタッチパネルディスプレイ10を視認するための視認用窓41と、この視認用窓41を囲むように外面にケースフード42とが設けられている。
【0032】
視認用窓41は、防水ケース20の収納部にディジタルスチルカメラ1が収納された際に、タッチパネルディスプレイ10に対向する位置に設けられている。視認用窓41は、ディジタルスチルカメラ1が防水ケース20の収納部に収納されていても、ディジタルスチルカメラ1のタッチパネルディスプレイ10を外部から視認することを可能とする。
【0033】
ケースフード42は、第2の背面部40gの主面に、視認用窓41を囲むように全周に亘ってリア収納凹部とは反対側の外側に突出されて設けられている。よって、ケースフード42は、背面側から光がディジタルスチルカメラ1に入り込んでディジタルスチルカメラ1のタッチパネルディスプレイ10に照射されるのを防止する。
【0034】
更に、リアケース40の第2の背面部40gのケースフード42の側方には、防水ケース20の収納部に収納されたディジタルスチルカメラ1のタッチパネルディスプレイ10に表示された操作用のアイコン12をディジタルスチルカメラ1の外部から操作する防水ケース20側の操作ボタン43が複数個配設された操作ボタン群が設けられている。各操作ボタン43は、防水ケース20の収納部に収納されたディジタルスチルカメラ1のタッチパネルディスプレイ10に表示された操作用のアイコン12に対応するものであり、操作用のアイコン12の表示位置とそれぞれ重なり合う位置に配置されている。操作ボタン43は、特許文献1の操作機構と同様の構成を有し、押しボタンを含む操作部及びこの操作部を支持するためのボス部がタッチパネルディスプレイの輪郭外に位置され、弾性アームを介して接触部が輪郭内に位置されている。なお、各操作ボタン43についての詳細な説明は、省略する。
【0035】
また、リアケース40の第2の背面部40gの内面には、視認用窓41を囲むように収納されたディジタルスチルカメラ1のクッションとなる緩衝部材47が設けられている。緩衝部材47は、ゴム等の弾性材からなり、操作レバー54が回動軸68を中心に回動された際に防水ケース20の収納部に収納されたタッチパネルディスプレイ10の第1のアイコン12aに接触するように形成された接触部48を有している。接触部48は、凸状に形成され、防水ケース20の収納部に収納されたディジタルスチルカメラ1のタッチパネルディスプレイ10に表示された第1のアイコン12aの表示位置とそれぞれ重なり合う位置に設けられている。
【0036】
更に、リアケース40の上面部40bには、防水ケース20の収納部に収納されたディジタルスチルカメラ1のタッチパネルディスプレイ10に表示された第1のアイコン12aに当接してディジタルスチルカメラ1を外部から再生動作させる操作機構50が設けられている。
【0037】
<3 操作機構>
防水ケース20の操作機構50は、図5乃至図10に示すように、押しボタン51と、押しボタン51をケース部21の外側に付勢する戻しバネ52と、押しボタン51がケース部21の内側に押圧されると押圧方向に移動する移動レバー53と、移動レバー53によって押圧されると、押圧方向と略直交する方向に回動する操作レバー54とを有している。このような操作機構50は、リアケース40の上面部40bのボス部46に形成された取付孔44に設けられている。取付孔44は、押しボタン51及び戻しバネ52が収納される第1の収納孔44aと、第1の収納孔44aの底面に形成されて後述するシール部材58が収納される第2の収納孔44bと、第1の収納孔44a及び第2の収納孔44bとケース部21の内部とを挿通する挿通孔44cとを有している。
【0038】
押しボタン51は、ヘッド部55と、このヘッド部55と一体化され、取付孔44の挿通孔44cからケース部21内に突出される軸部56とを有している。
【0039】
ヘッド部55は、底面が例えば四角形状の箱形状に形成され、軸部56が一体化される側の下面に凹部55aを有している。この凹部55aの底面の略中央には、軸部56が連結される連結部55bが設けられている。連結部55bは、軸部56側に向けて円柱状に突出するように形成されている。連結部55bの頂面には、連結孔55cが形成され、この連結孔55cに軸部56が圧入されて、ヘッド部55と軸部56とが一体化されている。
【0040】
ヘッド部55と一体化される軸部56は、基端部56a、中間部56b、先端部56cの順に形成され、それぞれ軸方向に所定の長さを有している。軸部56の基端部56aは、ヘッド部55の連結孔55cに圧入されて、ヘッド部55と一体化されている。軸部56の中間部56bの外周には、戻しバネ52が配設されている。戻しバネ52は、例えば、内径がヘッド部55の連結部55bより大きく、外径がヘッド部55の凹部55aの内径より小さなコイルバネである。コイルバネは、一端がヘッド部55の凹部55aの内側に収納され、凹部55aの底面に当接されている。
【0041】
更に、軸部56の中間部56bの外周には、戻しバネ52をヘッド部55とで挟み込むように、バネ受け座金57が配設されている。バネ受け座金57は、内径が軸部56の外形よりやや大きく、外径が戻しバネ52より大きく、かつ、第1の収納孔44aより小さく第2の収納孔44bより大きなリング状に形成されている。バネ受け座金57は、第1の収納孔44aの底面に形成された第2の収納孔44bに係合されるように取り付けられ、戻しバネ52の他端を支持している。したがって、このようなバネ受け座金57に他端が支持された戻しバネ52は、押しボタン51を常時ケース部21の外側に付勢する。
【0042】
更に、軸部56の中間部56bの外周には、バネ受け座金57より先端部56c側に、シール部材58が配設されている。シール部材58は、例えば、Oリングであり、第2の収納孔44bに嵌合され、軸部56の外周を液密にシールする。
【0043】
更に、軸部56の先端部56cには、移動レバー53が取り付けられている。移動レバー53の材質としては、例えば、POM(ポリアセタール)等が用いられる。なお、他の合成樹脂を用いてもよい。移動レバー53は、移動レバー本体部59と、移動レバー本体部59の軸部56の基端部56a側に対応する基端に設けられ、軸部56が取り付けられる軸部取付部60とを有している。
【0044】
移動レバー本体部59は、略矩形薄板状に形成され、軸部56の先端部56c側に対応する先端に、押しボタン51がケース部21の内側に押圧されて押圧方向に移動された際に、操作レバー54を押圧する第1の押圧部61が形成されている。第1の押圧部61は、先端側に向かって移動レバー本体部59の厚さが次第に肉薄となる傾斜面61aとなるように形成されている。傾斜面61aには、操作レバー54と当接する際に摩擦を低減させるための複数個の第1の凸部61bが形成されている。第1の凸部61bは、例えば、先端側及び基端側の長さ方向と直交する幅方向に所定の間隔をあけて、傾斜面61aに沿って長さ方向に向けて2個形成されている。
【0045】
軸部取付部60は、移動レバー本体部59の基端に、移動レバー本体部59と直交するように設けられている。また、軸部取付部60は、略矩形薄板状で、移動レバー本体部59の幅より幅狭に形成されている。更に、軸部取付部60には、軸部56の先端部56cが挿通される貫通孔60aが形成されている。このような軸部取付部60には、取付孔44の挿通孔44cから突出された先端部56cが貫通孔60aに挿通された際に、軸部取付部60を挟み込むように先端部56cに設けられた第1の環状溝56d及び第2の環状溝56eとにそれぞれ止め輪62,62を係合することにより、軸部56が取り付けられている。
【0046】
また、移動レバー本体部59の軸部取付部60の両側の基端には、押しボタン51がケース部21の外側に戻りバネ52によって戻る際に、操作レバー54を押圧する第2の押圧部63,63が形成されている。各第2の押圧部63は、基端側に向かって移動レバー本体部59の厚さが次第に肉薄となる傾斜面となるように形成されている。
【0047】
更に、移動レバー本体部59の基端側の軸部取付部60の両側の主面には、押しボタン51がケース部21の外側に戻りバネ52によって戻る際に、操作レバー54と当接する当接部64,64を有している。各当接部64は、操作レバー54と当接する際に摩擦を低減させるための第2の凸部64a,64aが形成されている。
【0048】
操作レバー54は、操作レバー本体部65と、操作レバー本体部65の基端の幅方向の両端から基端側に突出された第1及び第2の突出部66,67と、第1及び第2の突出部66,67に亘って設けられた回動軸68とを有している。このような操作レバー54は、リアケース40の背面部40aの内面に第1の背面部40fと第2の背面部40gとの間の段差49に沿って形成された回動溝45に回動軸68が配設されることで、リアケース40に対して回動自在に支持されている。操作レバー54の材質としては、例えば、POM(ポリアセタール)等が用いられる。なお、他の合成樹脂を用いてもよい。
【0049】
操作レバー本体部65は、移動レバー53より幅広な略矩形薄板状に形成されている。操作レバー本体部65は、平面本体部65aと、この平面本体部65aと連続し平面本体部65aに対して傾斜する傾斜本体部65bとを有している。
【0050】
傾斜本体部65bは、図8中の矢印A方向に示すように、移動レバー53がケース部21の押圧方向に移動されると、移動レバー53の第1の押圧部61に当接されて押圧され、操作レバー54を、移動レバー53に連動して、図8中の矢印B方向に示すように、回動軸68を中心にリアケース40に対して押圧方向と直交する方向に回動させる。
【0051】
また、平面本体部65aには、収納されたディジタルスチルカメラ1のクッションとなり、リアケース40の背面部40aの収納部に臨むように設けられた緩衝部材47と係合される係合部70が設けられている。係合部70は、平面本体部65aの主面に対して凸状に形成され、緩衝部材47の係合凹部47aと係合され、緩衝部材47を操作レバー54に取り付けている。
【0052】
第1及び第2の突出部66,67は、傾斜本体部65bの基端に移動レバー53の幅より幅方向に広く離間され、操作レバー本体部65の傾斜本体部65bから基端側に突出させるように形成されている。第1及び第2の突出部66,67には、第1及び第2の突出部66,67に亘って回動軸68が設けられている。操作レバー本体部65は、傾斜本体部65bと第1及び第2の突出部66,67と回動軸68とからなる空間部71内に移動レバー53が収納され、この空間部71内で移動レバー53が押圧方向に移動される。回動軸68は、リアケース40の背面部40aの内面に第1の背面部40fと第2の背面部40gとの間の段差49に沿って形成された回動溝45に配設され、操作レバー54を、リアケース40に対して回動自在に支持させる。回動軸68は、高圧下においても撓みにくい段差49に沿って回動自在に支持されることにより、高圧下においてもリアケース40の背面部40aが変形して操作不能になることを防止することができる。
【0053】
各第1及び第2の突出部66,67の基端には、移動レバー53に当接される突出片72を有している。突出片72は、空間部71側に突出するように形成されており、操作レバー本体部65の平面本体部65aと平行な平行突出部72aと、平行突出部72aと連続し平行突出部72aに対して傾斜する傾斜突出部72bとを有している。平行突出部72aは、移動レバー53の当接部64と当接することで、移動レバー53の回動を防止する。傾斜突出部72bは、移動レバー53がケース部21の外側に移動されると、移動レバー53の第2の押圧部63に押圧されて、接触部48をタッチパネルディスプレイ10の第1のアイコン12aから離間させるように操作レバー54を、移動レバー53に連動して、回動軸68を中心に図8の反矢印B方向に回動させる。
【0054】
<4 操作機構の動作>
利用者等により押しボタン51が戻しバネ52の付勢力に対抗してケース部21の内側に押圧されると、移動レバー53は、押しボタン51とともに、図8及び図10中の矢印A方向の押圧方向に移動する。次いで、移動レバー53が押圧方向に移動するに伴い、移動レバー53の第1の押圧部61は、操作レバー54の傾斜本体部65bに当接し、傾斜本体部65bを押圧する。次いで、操作レバー54は、移動レバー53によって押圧方向に押圧されると、図8及び図10中の矢印B方向に示すように、移動レバー53に連動して回動軸68を中心にリアケース40に対して押圧方向と直交する方向に回動する。次いで、操作レバー54は、緩衝部材47の接触部48を、防水ケース20の収納部に収納されたタッチパネルディスプレイ10の第1のアイコン12aに接触させる。
【0055】
次いで、利用者等による押しボタン51の押圧が解除されると、移動レバー53は、押しボタン51とともに、戻しバネ52の付勢力により、図8及び図10中の反矢印A方向のケース部21の外側に移動する。次いで、移動レバー53が押圧方向に移動するに伴い、移動レバー53の第2の押圧部63は、操作レバー54の傾斜突出部72bに当接し、傾斜突出部72bを押圧する。次いで、操作レバー54は、移動レバー53によって反押圧方向に押圧されると、図8及び図10中の反矢印B方向に示すように、移動レバー53に連動して回動軸68を中心に接触部48が防水ケース20の収納部に収納されたタッチパネルディスプレイ10に表示された第1のアイコン12aから離間するように回動する。
【0056】
<5 防水ケースの作用効果>
本発明が適用された防水ケースは、押しボタン51がケース部21の内側に押圧されて押しボタン51とともに移動レバー53が押圧方向に移動され、移動レバー53によって操作レバー54が押圧されると、操作レバー54が移動レバー53に連動して押圧方向と略直交する方向に回動軸68を中心に回動して、接触部48を防水ケース20の収納部に収納されたタッチパネルディスプレイ10の第1のアイコン12aに接触させることができ、ケース部21の外部からケース部21の内部に収納されたディジタルスチルカメラ1のタッチパネルディスプレイ10に表示された第1のアイコン12aを操作することができる。
【0057】
また、本発明が適用された防水ケースは、上述したように押圧方向と接触部48の接触方向とが直交するように設けることができるので、操作機構50を、タッチパネルディスプレイ10の輪郭外のリアケース40の上面部40bに配置することができ、タッチパネルディスプレイ10の操作性及び視認性を確保することができるとともに、設計自由度の向上を図ることができる。
【0058】
更に、本発明が適用された防水ケースは、押しボタン51を押圧操作した際も戻しバネ52で戻った初期状態の際も、回動軸68が、常に移動レバー53とリアケース40の回動溝45の間に収まっている状態のため、抜けることを防止することができる。
【0059】
更にまた、本発明が適用された防水ケースは、回動軸68が、高圧下においても撓みにくい段差49に沿って回動自在に支持されることにより、高圧下においてもリアケース40の背面部40aが変形して操作不能になることを防止することができる。
【0060】
<6 防水ケースの変形例>
なお、本発明に係る防水ケース20は、操作機構50をリアケース40の上面部40bに配置することに限定されるものではなく、リアケース40の下面部40c、左側面部40d又は右側面部40eに配置するようなものでもよい。
【0061】
また、本発明に係る防水ケース20は、ディジタルスチルカメラに限定されるものではなく、タッチパネルディスプレイ10を有して防水ケースに収納可能なものであればよく、ビデオカメラ、ゲーム機器、携帯電話、PDA等の他の電子機器を収納するようなものでもよい。
【0062】
更に、本発明に係る防水ケース20は、緩衝部材47に接触部48を設けることに限定されるものではない。本発明に係る防水ケース20は、操作レバー54に接触部を設け、この操作レバー54の接触部が、回動軸68を中心に回動された際に防水ケース20の収納部に収納されたタッチパネルディスプレイ10の第1のアイコン12aに接触するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 ディジタルスチルカメラ、10 タッチパネルディスプレイ、20 防水ケース、21 ケース部、48 接触部、50 操作機構、51 押しボタン、52 戻しバネ、53 移動レバー、54 操作レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネルディスプレイを有する電子機器を収納するケース部と、
上記ケース部に設けられ、上記ケース部の外部から上記ケース部に収納された電子機器の上記タッチパネルディスプレイを操作する操作機構とを備え、
上記操作機構は、
押しボタンと、
上記押しボタンを上記ケース部の外側に付勢する戻しバネと、
上記押しボタンが上記ケース部の内側に押圧されると押圧方向に移動する移動レバーと、
上記移動レバーによって押圧されると、上記押圧方向と略直交する方向に回動して接触部を上記タッチパネルディスプレイの所定領域に接触させる操作レバーとを有する電子機器用防水ケース。
【請求項2】
上記押しボタンが上記押圧方向と反対方向に上記戻しバネによって戻るときに、上記移動レバーが上記操作レバーと押圧し、上記接触部を上記タッチパネルディスプレイの所定領域から離間させるように上記操作レバーを回動させる請求項1記載の電子機器用防水ケース。
【請求項3】
上記操作レバーは、回動軸を有し、
上記回動軸は、上記ケース部の段差に沿って回動支持されている請求項1又は請求項2に記載の電子機器用防水ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−138069(P2011−138069A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−299186(P2009−299186)
【出願日】平成21年12月29日(2009.12.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】