説明

電子機器

【課題】本体装置内で発生する熱を迅速に放熱させることができ、動作のための電力を要せず、軽量で熱輸送性能および信頼性が高く、かつ製作が容易で安価な放熱機構を有する電子機器を提供する。
【解決手段】電子部品等の発熱源1を有する本体装置2と、該本体装置に連結部4を介して連結された表示装置3と、該表示装置の裏面側に設けられた放熱面5とを備え、表示装置3が連結部4において折りたたみ・展開自在となっている電子機器であり、少なくとも連結部4に対応する部分が柔軟性を有する熱伝導性シート6を、本体装置2から放熱面5に亘って配設されている。熱伝導性シート6としては、上記連結部対応部分が銅繊維を織り込んだ布状体からなるものが用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折りたたみ可能な表示装置の裏側に放熱面を備えた電子機器(携帯情報端末、携帯電話、携帯ゲーム機等)に関し、特に、折りたたみ可能な表示装置の裏側に放熱面を備えたノートブック型ノートパソコンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、折りたたみ可能な表示装置を備えた電子機器、例えばノートブック型パソコンにおいては、発熱源である電子部品等の発熱は、本体装置に設けられた自然空冷のヒートシンクや放熱板、あるいは空冷ファンを備えたヒートシンクや放熱板によって放熱が行われている例が多い(例えば、下記特許文献1〜3参照)。
【0003】
また、ヒートシンクや放熱板の放熱効率を上げる目的で、あるいは電子部品と離れた場所にあるヒートシンクに熱を輸送する目的で、ヒートパイプが用いられることもある(例えば、下記特許文献4参照)。
【0004】
また、電子部品等の発熱を輸送するヒートパイプを、表示装置の裏側に配設された別のヒートパイプに、ヒンジ機能を有する摺動接触式熱交換器を介して接続するとともに、表示装置の裏側に放熱面を設けた構造の放熱装置も提案されている(例えば、下記特許文献5〜8参照)。
【0005】
また、ポンプを用いて冷却水を循環する流体ループを、本体と表示装置の裏側に設けた放熱面に亘って配設し、電子部品等の発熱を放熱面に輸送するようにした構造の放熱装置も提案されている(例えば、下記特許文献9〜13参照)。
【0006】
ヒートシンクや空冷ファンを、折りたたみ可能に取り付けられた表示装置を有する電子機器の本体装置下部に設置した構造も知られているが、これでは携帯性を著しく損なうため実用的ではなかった(例えば、下記特許文献14参照)。
【0007】
ヒートシンクや空冷ファンを、折りたたみ可能に取り付けられた表示装置を有する電子機器の本体装置に設ける場合、空間容積上の制約があり、また本体装置の表面にはキーボードが設けられているため、有効な放熱面が得難いという問題があり、十分な放熱能力を得ることができなかった。
【0008】
このため、表示装置が本体装置から分離され、本体装置が比較的大きな容積を持つ、いわゆるデスクトップ型電子機器に比較すると、ノートブック型ノートパソコンでは、消費電力が小さく、性能がそれほど高くない電子部品しか搭載することができなかった。
【0009】
また、冷却能力を大きくするために冷却空気の流量を増やすと、ファンの騒音および消費電力が大きくなるという問題があった。
【0010】
このように、本体装置だけでは十分な放熱能力が得られず、またファンの騒音や消費電力の問題があるため、本体装置に搭載された電子部品等の発熱を効率的に、表示装置の裏側に設けた放熱面に輸送し、放熱することができる放熱装置が求められていた。
【0011】
しかしながら、単一のヒートパイプを本体装置と表示装置の裏側に設けた放熱面に亘って配設した構造では、表示装置を折り畳むとき、あるいは展開するときにヒートパイプが変形し、そのまま変形が残ってしまう場合があった。
【0012】
また、表示装置の折り畳み・展開に対応することができる、十分な柔軟性を有するヒートパイプはこれまでに得ることができず、単一のヒートパイプを本体装置と表示装置の裏側に設けた放熱面とに亘って配設することはできなかった。
【0013】
この問題を解決するため、本体装置と表示装置の裏側に設けた放熱面とに各々ヒートパイプを設け、これらのヒートパイプを、ヒンジ機能を有する摺動接触式熱交換器を介して接続した構造の放熱装置が提案されている(例えば、特許文献7,9(前出))。
【0014】
しかし、2本のヒートパイプを、ヒンジ機能を持つ摺動接触式熱交換器を介して接続した放熱装置は、単一のヒートパイプを配設した放熱装置と比較すると、各々のヒートパイプの熱抵抗が加算されるだけでなく、摺動接触式熱交換器との接触熱抵抗が付加されるため、放熱性能が低下するという問題があった。
【0015】
また部品点数が増え、構造が複雑になるのに加えて、重量や容積の増加、トラブルの増加、価格の上昇を招くという問題があった。
【0016】
また本体装置の発熱を、表示装置の裏側に設けた放熱面に輸送して放熱する放熱装置としては、ポンプを用いた流体ループ構造の放熱装置が知られている(例えば、特許文献9〜13(前出))。
【0017】
しかし、ポンプを用いた流体ループにはポンプや水タンクなどが必要であり、部品点数が多く、構造が複雑であり、機械的な可動部分を有するため重量や体積の増加、トラブルの増加、価格の上昇を招くという問題があった。
【0018】
また、ポンプを駆動するための電力が必要であり、消費電力による発熱の増加、バッテリ稼働時間の減少を招くという問題があった。
【0019】
また下記特許文献15には、少なくともCPUを収納した本体装置と、この本体装置に折りたたみ可能に取り付けられた表示装置とを有するコンピュータにおいて、コンテナの少なくとも一部分がフレキシビリティを有する自励振動ヒートパイプを、本体装置と表示装置の裏側に設けた放熱面とに亘って配設したコンピュータが提案されている。
【0020】
しかしながら、このコンピュータでは、本体装置に表示装置を連結するための連結部をコイル状等に形成したうえ、多数のパイプを、前記連結部を経由して配管する必要があるため構造的に複雑となる問題があった。
【0021】
このように、ヒートパイプを用いた従来の放熱装置では、表示装置の裏側に設けた放熱面に熱を十分輸送することができず、大きな放熱能力を得るのが難しかった。このため従来、本体装置に搭載された電子部品等の発熱を、表示装置の裏側に設けた放熱面に効率良く輸送し、放熱することが可能な放熱装置が求められていた。また、ヒートパイプを使用した従来の放熱構造では、本体装置・表示装置間のデータ伝送経路を別途用意する必要があるため、データ伝送経路を一体化した放熱装置が求められていた。
【0022】
【特許文献1】特開2002−26560号公報
【特許文献2】特開2004−104148号公報
【特許文献3】特開2004−199675号公報
【特許文献4】特開2001−237582号公報
【特許文献5】特許第3107730号公報
【特許文献6】特開平10−254583号公報
【特許文献7】特開2001−5567号公報
【特許文献8】特開2004−127288号公報
【特許文献9】特開2002−182797号公報
【特許文献10】特許第3452059号公報
【特許文献11】特開2004−193438号公報
【特許文献12】特開2003−263244号公報
【特許文献13】特開2001−24372号公報
【特許文献14】特開2004−102754号公報
【特許文献15】特開2004−5397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、従来技術の上記事情に鑑みなされたもので、その目的は、本体装置内で発生する熱量増加への的確な対応が可能であり、動作のための電力を要せず、軽量で熱輸送性能および信頼性が高く、かつ製作が容易で安価な放熱機構(放熱構造)を有する電子機器を提供することにある(請求項1など)。
【0024】
また本発明の目的は、上記放熱機構とデータ伝送経路を組み合わせることによって、本体装置から表示装置へのデータ伝送を行うための空間を、従来に比べて縮小することが可能となる、ケーブル型データ伝送路を有する電子機器を提供することである(請求項7など)。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記目的達成のため本発明は、発熱源を備えた本体装置と、この本体装置に折りたたみ可能に取り付けられた表示装置とを備え、かつこの表示装置の裏側に放熱面を有する電子機器であって、本体装置の発熱源と上記放熱面を、従来技術に係るヒートパイプに比べて伝熱面積を大きくすることができ、しかも熱抵抗がより小さい熱伝導性のシート状部材で接続したものである。
【0026】
すなわち請求項1に係る発明は、発熱源を備えた本体装置と、該本体装置に連結部(例えばヒンジ部)を介して連結された表示装置と、該表示装置の裏面側に設けられた放熱面とを備え、表示装置が連結部において折りたたみ・展開自在となっている電子機器であって、少なくとも前記連結部に対応する部分、すなわち連結部対応部分が柔軟性を有する熱伝導性シート状部材を、本体装置から放熱面に亘って配設したことを特徴とする電子機器である。本発明に係る電子機器の典型例としては、いわゆるノートブック型パソコンが挙げられる。
【0027】
本発明において、熱伝導性シート状部材の柔軟性とは、表示装置の折りたたみ・展開が、このシート状部材を電子機器の本体装置から表示装置に亘って配設した状態で可能であり、折りたたみ・展開動作に順応して変形することができるとともに、折りたたみ・展開動作を多数回繰り返しても、このシート状部材に発生する応力によって機能劣化が生じることがない特性をいう。
【0028】
上記発熱源としては、例えばCPU等の電子部品、燃料電池ユニット、その他が挙げられる。上記放熱面は例えば銅、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン等の熱伝導率の大きな金属材料により形成される。具体的には表示装置の背面側に銅板を取り付けることで放熱面を形成する。また、上記した「表示装置が前記連結部において折りたたみ・展開自在」とは、「表示装置が前記連結部において本体装置に対し開閉自在」という意味である。上記熱伝導性シート状部材としては、例えば布状体やシート(フィルムの場合を含む。なお「フィルム」は、肉厚が「シート」より薄い物を意味する。
【0029】
請求項2に係る発明において前記熱伝導性シート状部材は、少なくとも前記連結部対応部分が、熱伝導性繊維を織り込んで構成した布状体からなることを特徴とする請求項1に記載の電子機器である。上記布状体としては、例えば織物、編み物、不織布が挙げられる。また、上記「織り込み」の一例としては、いわゆる交織が挙げられる。
【0030】
請求項3に係る発明は、前記熱伝導性繊維が金属繊維であることを特徴とする請求項2に記載の電子機器である。
請求項4に係る発明は、前記熱伝導性繊維が銅繊維または銅合金繊維であることを特徴とする請求項3に記載の電子機器である。銅繊維および銅合金繊維を除くそれ以外の金属繊維としては、例えばNi−Cr繊維(繊維状のニクロム線)、アルミニウム繊維、ステンレス鋼の繊維、チタン繊維などが挙げられる。また本発明に係る熱伝導性シート状部材の代表的な構造としては、銅繊維を布状のシートに織り込んだものがあり、その具体例としては銅繊維を織り込んで構成した布もしくは幅広の半田吸い取り線や、セルロース繊維等の半合成繊維あるいは合成繊維と銅繊維を交織した布が挙げられる。
【0031】
請求項5に係る発明は、前記熱伝導性繊維が熱伝導性のある非金属繊維であることを特徴とする請求項2に記載の電子機器である。このような非金属繊維としては、例えばピッチ系炭素繊維が挙げられる。
【0032】
請求項6に係る発明は、前記熱伝導性シート状部材が、少なくとも前記連結部対応部分が超弾性合金製または超弾塑性合金製のシートで構成されていることを特徴とする請求項1記載の電子機器である。
【0033】
請求項7に係る発明は、前記熱伝導性シート状部材の前記連結部対応部分に、柔軟性を有するケーブルが設けられ、該ケーブルにより本体装置と表示装置の間でデータ伝送が可能であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電子機器である。
請求項8に係る発明は、前記ケーブルがフレキシブル基板であることを特徴とする請求項7に記載の電子機器である。
請求項9に係る発明は、前記ケーブルがフラットケーブルであることを特徴とする請求項7に記載の電子機器である。
【0034】
請求項10に係る発明において前記本体装置では、熱伝導性シート状部材の熱伝導性繊維が、前記発熱源または発熱源の放熱部に、直接または熱伝導性材料を介して接続されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の電子機器である。
【0035】
請求項11に係る発明において前記本体装置では、熱伝導性シート状部材を構成する超弾性合金製または超弾塑性合金製のシートが、前記発熱源または発熱源の放熱部に、直接または熱伝導性材料を介して接続されていることを特徴とする請求項6に記載の電子機器である。請求項10,11の発明では、上記熱伝導性材料として、例えば銅線が使用される。
【0036】
上記半田吸い取り線は、金属細線(例えば銅の細線)を網状に撚ったもので、基板上に電子部品等を半田付けした後、溶けた半田を吸収することにより半田付け状態の修正を行うために使用される。
【0037】
また本発明では、(1)前記熱伝導性シート状部材として、少なくとも前記連結部対応部分が超弾性合金製または超弾塑性合金製のシートの両面にプラスチックフィルムを積層してなる積層体を使用すること、(2)熱伝導性シート状部材として、少なくとも前記連結部対応部分が銅または銅合金からなるシートの両面にプラスチックフィルムを積層してなる積層体を使用すること、(3)熱伝導性シート状部材として、少なくとも前記連結部対応部分が銅、銅合金などの金属の微粒子を分散したプラスチックシートからなるものを使用すること、(4)前記熱伝導性繊維が超弾性合金または超弾塑性合金からなる繊維である熱伝導性シート状部材を用いることも可能である。
【0038】
上記超弾性合金としては、例えばTi−Ni合金、特開2001−20026号公報に開示された金属材料を、上記超弾塑性合金としては例えば「ゴムメタル」(登録商標)を、それぞれ使用することができる。
【0039】
上記特開2001−20026号公報の発明に係る所定組成のCu−Al−Mn系合金は、高い形状記憶特性及び超弾性を持つもので、(a)この合金に複数の冷間圧延加工及び溶体化処理を施すことで極細線や、例えば厚さ0.01〜3mmの箔ないし板材を作製することができる。(b)また、これら箔等の形状記憶特性では、形状回復率が実質的に100%であり、またこれら箔等の超弾性に関しては、付与した歪みが8%でも、変形開放後の形状回復率が90%以上となるものである。なお、上記形状回復率(%)=100×(付与歪み−残留歪み)/(付与歪み)である。
【発明の効果】
【0040】
本発明(請求項1〜11)に係る電子機器は、所定の連結部対応部分が柔軟性を有する熱伝導性シート状部材を、本体装置から表示装置裏面側の放熱面に亘って配設したことを特徴とする電子機器であり、上記熱伝導性シート状部材と放熱面とからなる放熱機構を有することにより、本体装置内で発生する熱量増加への的確な対応が可能であり、またこの放熱動作のための電力を要せず、軽量で、熱輸送性能(放熱機能)および信頼性が高く、しかも製作が容易で、安価に提供することができる。すなわち、本発明に係る上記放熱機構は、ポンプを駆動するなどのための動力を要せず、受動的に動作して放熱機能を発揮するので、ポンプを用いて冷却水を循環する、流体ループ型の放熱装置と比較すると電力の増加を招かないという利点がある。
【0041】
また、上記熱伝導性シート状部材は、熱伝導のための流体が不要であるから作製が容易である。また、上記熱伝導性シート状部材は十分な柔軟性を有するから、本体装置に対する表示装置の折りたたみ・展開操作に対応して的確に変形するとともに、もとの形状に回復することが可能である。
【0042】
また、上記熱伝導性シート状部材による放熱機構は、(i)フレキシビリティを有する自励振動ヒートパイプによる放熱装置、(ii)2本のヒートパイプを、ヒンジ機能を有する摺動接触式熱交換器を介して接続した構造の放熱装置あるいは、(iii)冷却水をポンプで循環する流体ループを用いた放熱装置と比較して構成が単純であるため、製作が容易であるうえ軽量であり、しかも使用時のトラブルが少ないという利点を有する。
【0043】
また、上記熱伝導性シート状部材を用いた放熱機構では、このシート状部材による伝熱面積を、ヒートパイプを使用する従来の放熱装置に比べて、容易に大きくすることができるため、このヒートパイプによる放熱装置と比較すると高い熱輸送性能を得ることができる。また、熱伝導性シート状部材とシート型データ伝送路を組み合わせることによって、データ伝送専用の空間を縮小することが可能になるという長所がある。
【0044】
また本発明は、折りたたみ可能な表示装置を備えた電子機器において、上記熱伝導性シート状部材を用いるとともに、表示装置の裏面側に放熱面を設けることにより、伝熱性能および放熱性能を十分高くすることが可能となるため、本体装置内の電子部品等の発熱量の増加に的確に対応することができるので、本発明に係る電子機器には、高性能で消費電力の大きい電子部品を搭載することが可能となる。したがって本発明によれば、空冷ファンを用いず、騒音の少ない折りたたみ可能な表示装置を備えた、高い放熱機能を有する電子機器を提供することができる。
【0045】
請求項2〜5に係る電子機器では、熱伝導性シート状部材における連結部対応部分が、熱伝導性繊維を織り込んだ布状体からなるため十分な柔軟性を有するから、本体装置に対する表示装置の折りたたみ・展開操作に対応して的確に変形するとともに、もとの形状に回復することが可能である。また、上記熱伝導性繊維として銅繊維または銅合金繊維を用いることにより、本体装置側の熱を表示装置側に特に効率良く伝導伝熱させることができる。
【0046】
また、請求項6に係る電子機器では、熱伝導性シート状部材における連結部対応部分が超弾性合金製または超弾塑性合金製のシートで構成されているから、本体装置に対する表示装置の折りたたみ・展開操作に対応して的確に弾性変形するとともに、もとの形状に弾性回復することが可能であるうえ、本体装置側の熱を表示装置側に迅速に伝導伝熱させることができる。
【0047】
また、請求項7〜9に係る電子機器は、放熱機構とシート型データ伝送路を組み合わせたものであり、上記熱伝導性シート状部材における連結部対応部分に、柔軟性を有するケーブルが設けられ、該ケーブルにより本体装置と表示装置の間でデータ伝送が可能となっているから、動作のための電力を要せず、軽量で熱輸送性能および信頼性が高く、かつ製作が容易で安価なデータ伝送路を有する放熱機構を備え、しかも折りたたみ可能な表示装置を備えた電子機器となりうるものである。
【0048】
さらに、請求項10,11に係る電子機器では、所定の構成としたから、本体装置で発生する熱を表示装置裏面側に、極めて効率良く伝熱させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、本発明の実施形態を、図面をもとに説明する。図1は本発明に係る電子機器としてのノートブック型パソコンの一部切断斜視図である。この図において、電子部品等の発熱体1(例えばCPU)を有する本体装置2と、表示装置3とが、蝶番状の連結部4によって接続されており、表示装置3の裏側には放熱面5が設けられている。この放熱面5は実質的全体が外部に露出している。
【0050】
熱伝導性シート6は、本体装置2に配設されたシート部分7と、放熱面5に配設されたシート部分8と、連結部4に配設されたシート部分9とから成り、このシート部分9は、上記シート部分7とシート部分8を接続している。
【0051】
また熱伝導性シート6には、本体装置2からのデータを表示装置3に表示させるためのシート型データ伝送路10が設けられる。このシート型データ伝送路10は本体装置2、表示装置3にそれぞれコネクタ(図略)で結合されている。さらに、熱伝導性シート6では、本体装置2に表示装置3を連結しているヒンジ等(図略)の物理的に接合不可能な部分を除いて、すべてのシート部分が互いに連なった構造となっている。
【0052】
電子部品等の発熱体1は、シート部分7に対する伝熱特性が良い状態で実装されており(請求項10,11を参照)、発熱体1からの発熱は、シート部分7からシート部分9およびシート部分8を介して放熱面5に輸送され、そこで放熱される。
【0053】
シート部分9およびシート型データ伝送路10は柔軟性を有する形状に構成されているか、あるいは柔軟性を有する材料で構成されており、表示装置3は連結部4において、言い換えると連結部4の回動により折りたたみ・展開が可能である。
【0054】
シート部分9を構成する柔軟性材料の例としては、銅繊維を布状のシートに織り込んだもの、例えば銅繊維を織り込んで構成した布もしくは幅広の半田吸い取り線や、セルロース繊維等の半合成繊維、あるいは合成繊維と銅繊維を交織した布が挙げられる。
【0055】
さらに、熱伝導性シート6としては、布状のシートに金属繊維を織り込んだものに限定されず、例えば超弾性合金あるいは超弾塑性合金(ゴムメタル:登録商標)で構成されたシートを使用することもできる。
【0056】
また、図1の熱伝導性シート6では、シート部分7,8,9のうちシート部分9のみが柔軟性シートとなっており、シート部分7,8は比較的硬質なものに構成されているが、シート6全体を柔軟性材料で構成してもよい。要するに、熱伝導性を阻害することなく、熱伝導性シート6が特に連結部4に対応する上記シート部分9において柔軟性を有していればよい。
【0057】
放熱面5の形状や、表示装置3裏側への放熱面5の取り付け構造は、特に限定されるものではない。たとえば、放熱面5を表示装置3の裏側に直接ではなく、隙間を設けて取り付けてもよいし、表示装置3のケース自体が放熱板であってもよい。また、この放熱板の形状は平面でなくてもよいし、放熱板を1枚だけではなく複数枚取り付けて放熱性能を更に高めてもよい。要するに折りたたみ・展開が可能な放熱面5を表示装置3の裏側に設ければよい。
【0058】
シート型データ伝送路10を構成する、柔軟性を有するケーブルの例としてはフレキシブル基板やフラットケーブルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えばシート型データ伝送路10全体を、柔軟性を有するケーブルで構成してもよい。要するに、データ伝送を阻害することなく、シート型データ伝送路10が上記連結部4において柔軟性を有していればよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係るノートブック型パソコンの一部切断斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
1 電子部品等の発熱体
2 本体装置
3 表示装置
4 連結部
5 放熱面
6 熱伝導性シート
7 本体装置に配設されたシート部分
8 放熱面に配設されたシート部分
9 連結部に配設されたシート部分
10 シート型データ伝送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱源を有する本体装置と、該本体装置に連結部を介して連結された表示装置と、該表示装置の裏面側に設けられた放熱面とを備え、前記表示装置が前記連結部において折りたたみ・展開自在となっている電子機器であって、
少なくとも前記連結部に対応する部分(以下、連結部対応部分)が柔軟性を有する、熱伝導性のシート状部材(以下、熱伝導性シート状部材)を、前記本体装置から前記放熱面に亘って配設したことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記熱伝導性シート状部材は、少なくとも前記連結部対応部分が、熱伝導性繊維を織り込んだ布状体からなることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記熱伝導性繊維は、金属繊維であることを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記熱伝導性繊維は、銅繊維または銅合金繊維であることを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記熱伝導性繊維は、熱伝導性のある非金属繊維であることを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項6】
前記熱伝導性シート状部材は、少なくとも前記連結部対応部分が超弾性合金製または超弾塑性合金製のシートで構成されていることを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項7】
前記熱伝導性シート状部材の前記連結部対応部分に、柔軟性を有するケーブルが設けられ、該ケーブルにより本体装置と表示装置の間でデータ伝送が可能となっていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電子機器。
【請求項8】
前記ケーブルがフレキシブル基板であることを特徴とする請求項7に記載の電子機器。
【請求項9】
前記ケーブルがフラットケーブルであることを特徴とする請求項7に記載の電子機器。
【請求項10】
前記本体装置では、熱伝導性シート状部材を構成する熱伝導性繊維が、前記発熱源または発熱源の放熱部に、直接または熱伝導性材料を介して接続されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の電子機器。
【請求項11】
前記本体装置では、熱伝導性シート状部材を構成する超弾性合金製または超弾塑性合金製のシートが、前記発熱源または発熱源の放熱部に、直接または熱伝導性材料を介して接続されていることを特徴とする請求項6に記載の電子機器。

【図1】
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【公開番号】特開2006−216878(P2006−216878A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−30054(P2005−30054)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】