説明

電子機器

【課題】 画像表示面を保護して強度を確保しつつ外観デザインを損ねることがなく、しかも3次元的な曲面からなる外壁面の外観デザインを容易に変更可能な電子機器を提供する。
【解決手段】 電子機器(携帯電話機)20は、画像表示手段31の画像表示面31Sを覆う被覆部材32を備える。被覆部材32は、画像表示面31Sに表示された画像を内側表面32SAで受けて外側表面32SBまで伝達し、その外側表面を光源として出射する光伝達部材である。被覆部材32としては、内側表面から外側表面に向かって光伝送路が位置するように多数の光ファイバーを束ねて作製されたファイバープレートが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機等の電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子ペーパー等の無給電画像表示手段は、画像の表示状態が維持されている間は電力を消費しないので、画像の表示状態が維持されている間も電力を消費する一般的な表示手段に比べて省エネルギー効果が高く、注目を浴びている。そのため、このような省エネルギー効果を有効利用すべく、無給電画像表示手段の様々な活用方法が提案されている。
特許文献1には、通信回線に接続された情報管理サーバから受信した新聞記事情報等の情報をユーザーの知覚できる状態で表した画像が、電子ペーパー(無給電画像表示手段)に表示される電子機器としての情報端末が開示されている。この情報端末によれば、ユーザーが電子ペーパーに表示されている画像を見ている間、電力が消費されることがないため、上記一般的な表示手段に比べて省エネルギー化を図ることができる。
また、特許文献2では、筐体の外表面上に電子ペーパーを設け、その電子ペーパーに表示されるデザイン画像を変更可能とした電子機器が開示されている。この電子機器によれば、ユーザーの好みに応じて筐体デザインを簡単に変更することができるようになる。筐体デザインは、一般に、長い期間ずっと表示状態が維持されることを望まれるが、このような長い期間ずっと電力を消費し続けることとなれば、実用性に欠けるものとなる。上記特許文献2に開示の電子機器は、筐体デザインを表示する手段として電子ペーパーを用いているので、電力を消費せずに筐体デザインを長い期間表示し続けることができ、実用性が高いと言える。
【0003】
【特許文献1】特開2002−163257号公報
【特許文献2】特開2004−64612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の電子機器のように電子ペーパーを外壁部に設けた場合、次のような問題点があった。
上記電子ペーパーを外部にむき出しの状態で装着する場合、露出した電子ペーパーが損傷を受けやすいため、電子機器の外壁面の強度を確保するのが難しい。特に、電子ペーパーに液晶を用いると、その液晶からなる画像表示面に傷が付きやすい。強度を確保するために電子ペーパーの外側に透明の保護カバーを被せることが考えられるが、この場合は、保護カバーの内側面に画像が表示されることになる。そのため、電子機器の外側の見えやすい外観デザインというより保護カバーの内側の奥まった面のデザインとなり、デザイン性が損なわれる。
また、上記電子ペーパーの材料としてはプラスチックのプレートやフィルムを用い、一方向で湾曲した円筒外周面のような曲面にフィットさせて装着することが検討されているが、互いに直交する二方向で湾曲した半球面のような3次元的な曲面にフィットさせて装着するのは難しい。
更に、上記電子ペーパーでは、その画像表示面のまわりに、表示材料の封止や配線のための数ミリ程度のデッドスペースを確保する必要があり、デザイン性が損なわれる。
【0005】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、画像表示面を保護して強度を確保しつつ外観デザインを損ねることがなく、しかも3次元的な曲面からなる外壁面の外観デザインを容易に変更可能な電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、画像を表示する画像表示手段を備えた電子機器であって、該画像表示手段の画像表示面がある外壁部を覆う被覆部材を備え、該被覆部材は、該画像表示面に表示された画像を内側表面で受けて外側表面まで伝達し該外側表面を光源として出射する光伝達部材であることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の電子機器において、上記被覆部材は、上記内側表面から上記外側表面に向かって光伝送路が位置するように多数の光ファイバーを束ねて作製されたファイバープレートであることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の電子機器において、上記被覆部材は、上記画像表示手段の画像表示面に表示された画像を受ける上記内側表面における画像受け部分の面積と、該画像受け部分で受けた画像を出射する上記外側表面における画像出射部分の面積とが異なることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1又は2の電子機器において、上記被覆部材は、上記画像表示手段の画像表示面に表示された画像を受ける上記内側表面における画像受け部分の形状と、該画像受け部分で受けた画像を出射する上記外側表面における画像出射部分の形状とが異なることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項3又は4の電子機器において、上記被覆部材は、上記外側表面における画像出射部分が曲面を有し、上記画像表示手段は、該被覆部材の曲面の曲率に応じて画像を変形させて表示することを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1、2、3、4又は5の電子機器において、上記画像表示手段は、画像の表示状態を無給電状態でも維持可能な無給電画像表示手段であることを特徴とするものである。
【0007】
請求項1の電子機器では、画像表示手段の画像表示面がある外壁部を被覆部材で覆うことにより、その画像表示面が損傷を受けないように保護される。そして、その被覆部材の内側表面で受けた画像表示面の画像は、被覆部材によって外側表面まで伝達され、その外側表面を光源として出射する。これにより、あたかも被覆部材の外側表面に画像が表示されているように見えるため、外観デザインを損ねることがない。しかも、その被覆部材の外側表面は、内側表面が面している画像表示面の形状の制約を受けることなく、デザイン性に優れた3次元的な曲面にすることができるとともに、この3次元的な曲面に表示しているように見える画像は、内側の画像表示面に表示される画像を変更することによって簡単に変更できる。
請求項2の電子機器では、被覆部材を構成する多数の光ファイバーのそれぞれが、画像表示面に表示されている画像の構成要素(画素)を外側表面に伝達し、その外側表面の各光ファイバーの光出射口から出射する。この各光ファイバーの光出射口が露出している外側表面には、上記画像表示面上の画像が表示されているように見える。このように、ファイバープレートを構成する多数の光ファイバーにより、画像表示面に表示されている画像を、高効率・低歪みで被覆部材の外側表面に伝達することができる。
請求項3の電子機器では、被覆部材の内側表面における画像受け部分の面積と外側表面における画像出射部分の面積とが異なることにより、画像表示面に表示された画像が拡大又は縮小された画像が、被覆部材の外側表面上に表示されているように見える。
請求項4の電子機器では、被覆部材の内側表面における画像受け部分の形状と外側表面における画像出射部分の形状とが異なることにより、画像表示面に表示された画像が変形された画像が、被覆部材の外側表面上に表示されているように見える。
請求項5の電子機器では、被覆部材の外側表面における画像出射部分の曲面の曲率に応じて部分的に変形させた画像を、画像表示手段の画像表示面に表示することにより、被覆部材の曲面の部分についても歪みのない狙いの画像を表示できる。
【0008】
請求項6の電子機器では、無給電画像表示手段の画像表示面が損傷を受けないように被覆部材で保護される。また、その無給電画像表示手段の画像表示面の画像は、被覆部材の中を通過して外側表面から出射することにより、あたかも被覆部材の外側表面に画像が表示されているように見えるので、外観デザインを損ねることがない。しかも、無給電画像表示手段の画像表示面に表示される画像を変更することにより、3次元的な曲面からなる外壁面の外観デザインを簡単に変更し、その変更後の外観デザインを無給電状態で維持できる。以上のように、損傷を受けやすい無給電画像表示手段の画像表示面を被覆部材で保護して強度を確保することできる。しかも、被覆部材の外側表面に表示されている画像は、内側の画像表示面に表示される画像を変更することによって簡単に変更できるとともに、その変更後の外観デザインを無給電状態で維持できる。
【0009】
なお、上記画像表示手段に表示する「画像」は、特定の種類の画像に限定されるものではなく、様々な種類の画像を含む。この「画像」としては、写真の画像、地図の画像、イラストの画像、アイコンの画像、文字情報の画像が挙げられる。
また、上記「電子機器」には、移動体通信端末のほか、携帯型情報端末(PDA:Personal Digital Assistance)など、画像表示手段を備える各種の電子機器が含まれる。また、上記「移動体通信端末」としては、PDC(Personal Digital Cellular)方式、GSM(Global System for Mobile Communication)方式、TIA(Telecommunications Industry Association)方式等の携帯電話機、IMT(International Mobile Telecommunications)−2000で標準化された携帯電話機、TD−SCDMA(Time Division Synchronous Code Division Multiple Access)方式の一つであるTD−SCDMA(MC:Multi Carrier)方式の携帯電話機、PHS(Personal Handyphone System)などが挙げられる。
また、上記電子機器における処理及び制御は、これに設けられたコンピュータで所定のプログラムを実行することによって実現することもできる。このコンピュータで用いるプログラムの受け渡しは、デジタル情報としてプログラムを記録したFD、CD−ROM等の記録媒体を用いて行ってもいいし、コンピュータネットワーク等の通信ネットワークを用いて行ってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、画像表示面を被覆部材で保護して強度を確保することできるとともに、その被覆部材の外側表面にあたかも画像を表示しているように見えるため、外観デザインを損ねることがない。しかも3次元的な曲面からなる外壁面の外観デザインを容易に変更することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1(a)は本実施形態における電子機器としての携帯電話機20の外観の一例を示す正面図であり、図1(b)はその携帯電話機20の背面図である。この携帯電話機20は、ヒンジ部を中心にして互いに揺動可能な蓋部29と本体部30とを有するクラムシェル(折り畳み)タイプの携帯電話機である。蓋部29は、本体部30に設けられたキー操作部のキー21〜25が操作可能な開状態(図1の状態)と、キー操作部のキー21〜25を覆った閉状態とをとり得るようになっている。上記開状態にある蓋部29の外壁部を構成するケーシングには、画像の表示状態が維持されている間も電力を消費する一般的な給電画像表示手段である液晶ディスプレイ(LCD)27、スピーカ28等が設けられている。また、上記本体部30の外壁部を構成するケーシングには、上記キー操作部を構成するキー21〜25、マイク26等が設けられている。これらのキー21〜25等からなるキー操作部、および上記給電画像表示手段(第2の表示手段)としての通常の液晶ディスプレイ(LCD)27は、利用者が操作可能な上記開状態にあるケーシングの利用者に対向する側の外壁部に設けられている。これにより、利用者は、上記液晶ディスプレイ27の画面を見ながらキー操作部のキー21〜25を操作することができる。
【0012】
また、上記閉状態のあるときに外部に露出する、上記蓋部29側の上部ケーシングの外部露出部分、すなわち上部ケーシングの相対する2つの表面部のうちLCD27側の外壁部(正面部)とは反対側の外壁部(背面部)には、図1(b)に示すように、無給電画像表示手段(第1の表示手段)を有する表示パネル33が設けられている。この表示パネル33は、上記閉状態にあるときには利用者が視認しやすい位置に位置し、上記開状態にあって利用者がキー操作部を操作するときには利用者が視認しにくい位置に位置する。
【0013】
上記表示パネル33は、表示画像を切り換えるための描画用駆動信号を受けることで表示画像が変化し、且つ、その画像の表示状態を無給電状態でも維持可能なものである。また、表示パネル33は、互いに独立に画像を表示可能な複数の表示領域33A、33B、33Cを有している。
【0014】
図2は、図1(b)におけるA−A断面を矢印方向から見た携帯電話機10の蓋部29の概略構成図である。表示パネル33の複数の表示領域33A、33B、33Cのうち、中央の表示領域33Aは、蓋部29側の上部ケーシングの外部露出部分である外壁表面の平面部に設けられ、端部の表示領域33B、33Cは、その外壁表面の曲面部に設けられている。
【0015】
また、表示パネル33は、無給電画像表示手段(第2の表示手段)としての平板状の電子ペーパー31と、その電子ペーパー31の画像表示面31Sを覆う被覆部材としてのファイバープレート32を備えている。このファイバープレート32は、電子ペーパー31の画像表示面31Sに表示された画像を内側表面32SAで受けて外側表面32SBまで伝達し、その外側表面32SBを光源として上記画像を出射する光伝達部材としての機能を有している。上記ファイバープレート32は、例えば、上記内側表面32SAから上記外側表面32SBに向かって光伝送路が位置するように多数の光ファイバーを束ねて作製される。
【0016】
図3(a)及び(b)はそれぞれ、上記ファイバープレート32の構成例を示す図であり、ファイバープレート32の外側表面32SBの一部を部分的に拡大して見た拡大平面図である。この構成例に係るファイバープレート32は、直径が数μm〜数十μm(例えば2μm〜25μm)のコアガラスからなる光ファイバー321を多数束ねたような構造をしている。各光ファイバー321の材質としては、少なくとも可視領域の光を透過させるものが好ましい。また、各光ファイバー321の断面形状は、図3(a)に示すように隙間が少ない多角形でもいいし、図3(b)に示すように外周面がなめらかな円形でもよい。各光ファイバー321の間の隙間には、光ファイバー321のコアガラスよりも屈折率が小さなクラッドガラス322が充填されている。このクラッドガラス322としては、光ファイバーから漏れた光が隣の光ファイバーに達して解像度を損なうことがないように、光ファイバーから漏れた光を吸収する材料で形成したり、かかる所定の材料を添加したりした材料が好ましい。
【0017】
図4は、ファイバープレート32の内側表面32SAから上記外側表面32SBに画像を伝達する様子を示す説明図である。ファイバープレート32を構成する光ファイバー321は、一方の端部から入射した光をクラッドガラス322と境界で全反射させながら他方の端部に伝達する。この全反射による光伝達は光ファイバー321が曲がっていても行われる。この全反射による光伝達により、各光ファイバー321は、電子ペーパー31の画像表示面31Sに表示されている画像31Iの構成要素(画素)を外側表面32SBに伝達し、その外側表面32SBにおける各光ファイバーの光出射口から出射する。この各光ファイバーの光出射口が露出している外側表面32SBに画像(図中の星図形)32Iが表示されているように浮かび上がって見える。このように、ファイバープレート32を構成する多数の光ファイバー321により、画像表示面31Sに表示されている画像を、高効率・低歪みでファイバープレート32の外側表面32SBに伝達することができる。
【0018】
図5は、ファイバープレート32の外側表面32SBが曲面で形成された端部323の縦断面図である。この端部323の光ファイバー321は、直径が外側にいくに従って大きくなるようにテーパー状に形成されている。この直径の変化率すなわちテーパーの程度は、上記外側表面の曲率半径は小さい部分ほど大きくなるように、各光ファイバーが形成されている。図5の例では、上記外側表面32SBの曲率半径が大きい中央部よりでは、直径の変化率すなわちテーパーの程度が小さい光ファイバー321Aが用いられている。一方、上記外側表面32SBの曲率半径が小さな端縁よりでは、直径の変化率すなわちテーパーの程度が大きな光ファイバー321Bが用いられている。このようにファイバープレート32の少なくとも一部でテーパー形状の光ファイバーを用いることにより、電子ペーパー31の画像表示面31Aと、ファイバープレート32の外側表面32SBにおける画像出射部分との間で、面積や形状を異ならせることができる。これにより、電子ペーパー31の画像表示面31Aに表示された画像を拡大又は縮小した画像をあたかもファイバープレート32の外側表面32SB上に表示しているように見せることができる。また、上記形状が異なる場合は、電子ペーパー31の画像表示面31Aに表示された画像を変形した画像をあたかもファイバープレート32の外側表面32SB上に表示しているように見せることができる。
【0019】
なお、ファイバープレート32の外側表面32SBの曲面部(図2の表示領域33B、33C)においても、平面部(図2の表示領域33A)と同じような拡大・縮小のない画像を表示したり、平面部(図2の表示領域33A)と同じような拡大率や縮小率で画像を表示したりすることにより、歪みのない画像を表示したい場合がある。この場合には、ファイバープレート32の外側表面32SBの対応する部分の曲率に応じて画像を変形させて電子ペーパー31の画像表示面31Aに表示するように画像データ処理を行う。例えば、電子ペーパー31の画像表示面31Aのうち、ファイバープレート32の外側表面32SBの平面部に対応する部分31A(1)については(図5参照)、図6(a)に示すように変形のない画像を表示する。一方、上記画像表示面31Aのうち、ファイバープレート32の外側表面32SBの曲面部に対応する部分31A(2)については(図5参照)、図6(b)に示すように画像を圧縮させて表示する。
【0020】
図7(a)は本実施形態の携帯電話機20における電子ペーパー31の一構成例を示す断面図である。この電子ペーパー31はコレステリック液晶を用いて形成され、蓋部29のケーシング290上に設けられている。この電子ペーパー31は、透明下基材層311、コレステリック液晶層312、透明上基材層313の3層構造となっている。透明下基材層311及び透明上基材層313としては例えばガラス薄板を用いることができる。透明下基材層311の上部すなわち携帯電話機20の外部側には、下格子電極としての行電極314が設けられており、透明上基材層313の下部すなわち携帯電話機20の内部側には、上格子電極としての列電極315が設けられている。列電極314は、携帯電話機20の横方向(図1中横方向)に平行に延びる所定ピッチの多数のライン状電極で構成されており、これらのライン状電極の端部は、後述の描画処理部200の出力端子に接続されている。また、列電極315は、携帯電話機20の縦方向(図1中縦方向)に平行に延びる所定ピッチの多数のライン状電極で構成されており、これらのライン状電極の端部も同様に描画処理部200の出力端子に接続されている。これらの行電極314及び列電極315は、電子ペーパー31の表示領域31A、31Bの全域にわたって、その電極が延びる方向が互いに直交するように配置されている。そして、後述の描画処理部200から適切なON/OFFタイミングで描画用駆動信号(電気信号)を行電極314及び列電極315に入力することにより、表示領域31A、31Bの任意の地点における行電極314と列電極315との間の電位差を制御できる。
【0021】
上記コレステリック液晶312は、図7(b)に示すように、入射した光のうち、分子配列のらせん周期Lに応じて決まる波長の光を選択的に反射させることで、フルカラー表現を可能にしている。分子配列のらせん周期Lは、一般に温度が上昇すると小さくなるので、温度コントロールにより所望の色を表現することができる。また、コレステリック液晶312は、急冷することにより分子配列のらせん周期Lを固定化することが可能である。したがって、らせん周期Lを固定化した後は、色を固定できる。このような特性から、コレステリック液晶312を用いた電子ペーパー31は、表示画像を切り換える描画処理を行う際には温度コントロール用の描画用駆動信号を供給するため電力を消費するが、一旦画像が表示された後は無電力で画像を表示し続けることができる。
【0022】
なお、上記画像の表示状態を無給電状態でも維持可能な電子ペーパーとしては、コレステリック液晶に限らず、例えば強誘電性液晶を用いたものであってもよい。
【0023】
図8は他の構成例に係る電子ペーパー31の断面図である。この電子ペーパー31は蓋部29のケーシング290上に設けられ、透明下基材層316、画像記録層317、透明上基材層318、保護層319の4層構造となっている。透明下基材層316の上部すなわち携帯電話機20の外部側には、下格子電極としての行電極314が設けられており、透明上基材層318の下部すなわち携帯電話機20の内部側には、上格子電極としての列電極315が設けられている。行電極314は、携帯電話機20の横方向(図1中横方向)に平行に延びる所定ピッチの多数のライン状電極で構成されており、これらのライン状電極の端部は、描画処理部200の出力端子に接続されている。また、列電極315は、携帯電話機20の縦方向(図1中縦方向)に平行に延びる所定ピッチの多数の電線で構成されており、これらのライン状電極の端部も同様に描画処理部200の出力端子に接続されている。これらの行電極314及び列電極315は、電子ペーパー31の表示領域31A、31Bの全域にわたって、その電極が延びる方向が互いに直交するように配置されている。そして、描画処理部200から適切なON/OFFタイミングの描画用駆動信号(電気信号)を入力することにより、表示領域31A、31Bの任意の地点における行電極314と列電極315との間の電位差を制御できる。
【0024】
上記画像記録層35としては、行電極38と列電極39との間に印加される電位差によってその地点の可視状態を制御することが可能であって、描画処理部200から電気信号の入力がなくなっても、その可視状態が維持されるものを利用することができる。例えば、透明なマイクロカプセル内に多数の白色粒子及び黒色粒子を封入し、これを行電極314と列電極315の電線とが互いに交差する全ての地点(画素点)に配置したものを、上記画像記録層317として用いることができる。この場合、各マイクロカプセル内の白色粒子と黒色粒子は互いに逆極性に帯電している。例えば、白色粒子として負極性帯電物質を用い、黒色粒子として正極性帯電物質を用いる。描画処理部200から電気信号を入力して、ある画素点における行電極314の電位を負極性とし、列電極315の電位を正極性とした場合、その画素点のマイクロカプセル内では黒色粒子が列電極315側へ電気泳動し、白色粒子が行電極314側へ電気泳動する。その結果、この画素点を携帯電話機20の外部から見たとき、その画素点は黒色に見える。逆に、行電極314の電位を正極性とし列電極315の電位を負極性とした場合の画素点は、白色に見える。このような描画制御を表示領域31A,31Bの全域にわたって行うことで、その表示領域31A,31Bに所望のモノクロ画像を表示させることができる。しかも、各マイクロカプセル内の黒色粒子と白色粒子の配置は、描画処理部200からの電気信号の入力がなくなっても維持される。したがって、本電子ペーパー31は、一旦表示した画像を無給電状態であってもそのまま維持することができる。また、描画処理部200から入力される電気信号に応じて、多階調のモノクロ画像を表示させることもできる。
【0025】
なお、ここでは、モノクロ画像について説明したが、カラー画像を表示させることも可能である。カラー画像を表示させる具体例としては、上記透明上基材層318と上記保護層319との間にカラーフィルタ層を設けたものが挙げられる。このカラーフィルタ層としてR(赤)、G(緑)、B(青)の3色のフィルターを用いた場合、行電極314と列電極315とが互いに交差する地点のうち、互いに隣接する3つの地点を1つの画素として取り扱う。そして、この3つの地点にそれぞれR、G、Bのフィルタ部分が対向するように、カラーフィルタ層を設ける。これにより、例えばある画素を赤色とする場合には、Rフィルタ部分に対向するマイクロカプセルについては白色粒子が列電極315側へ電気泳動し、Gフィルタ部分及びBフィルタ部分に対向するマイクロカプセルについては黒色粒子が列電極315側へ電気泳動するような、描画用駆動信号(電気信号)を入力する。
【0026】
また、本発明で用いることができる電子ペーパー31としては、表示画像を切替可能でかつ無給電状態でも表示画像の表示状態を維持可能なものであれば、利用することができる。例えば、表示画像を切り換えるための描画用駆動信号(電気信号)を受けることで表示画像が変化し且つその画像の表示状態を無給電状態でも維持可能な他の公知の電子ペーパーなどを利用することができる。
【0027】
図9は、上記コレステリック液晶等を用いた電子ペーパー31に所望の画像を表示させるように描画処理する描画処理手段としての描画処理部200の一構成例を示すブロック図である。この描画処理部200は、電子ペーパー31の3つの表示領域31A,31B、31Cそれぞれについて互いに独立に描画用駆動信号(駆動電圧)を供給して描画処理を行うことができる。描画処理部200は、駆動制御信号生成部201と列電極駆動部202と行電極駆動部203とを備えている。駆動制御信号生成部201は、主制御部210から送られてくる画像データ又は電子ペーパーの画面全体の各画素の描画データに基づいて、列電極駆動部202及び行電極駆動部203から電子ペーパー31に出力する描画用駆動信号を制御するための駆動制御信号を生成する。列電極駆動部202は、駆動制御信号生成部201から受けた列電極用の駆動制御信号に基づいて、所定の列電極315に描画用駆動信号を供給する。また、行電極駆動部203は、駆動制御信号生成部201から受けた行電極用の駆動制御信号に基づいて、所定の行電極314に描画用駆動信号を供給する。
【0028】
上記列電極駆動部202は、電子ペーパー31の一部分である第1の表示領域31Aに対応する第1の列電極駆動部202Aと、第2の表示領域31Bに対応する第2の列電極駆動部202Bと、第3の表示領域31Cに対応する第3の列電極駆動部202Cとを有する。
ここで、中央の平面部にある第1の表示領域31Aの表示画像を切り換えるときは、第1の列電極駆動部202Aから、表示領域31Aに対応した列電極のみに描画用駆動信号が供給される。一方、両端の曲面部にある第2の表示領域31B及び第3の表示領域31Cの表示画像を切り換えるときは、第2の列電極駆動部202B及び第3の列電極駆動部202Cから、表示領域31B,31Cに対応した列電極のみに描画用駆動信号が供給される。このように切り換え対象の表示領域部分についてのみ描画用駆動信号を供給することにより、表示領域全体に描画用駆動信号を供給して書き換える場合に比して、表示画像の切り換え処理時間を短くするともに、表示画像切り換えに要する消費電力の低減を図ることができる。
【0029】
図10は、本実施形態に係る携帯電話機20の主な構成を示すブロック図である。
この携帯電話機20は、本実施形態の携帯電話機10は、制御手段としての主制御部210と、記憶手段としての内部メモリ211と、携帯電話通信網を介して通信を行う通信手段としての無線通信部212及びアンテナ213とを備えている。更に、携帯電話機20は、前述の描画処理部200と、音信号処理部214と、表示制御部215と、操作手段としてのキー操作部216と、計時手段としての時計部217とを備えている。
【0030】
上記主制御部210は、例えばCPU、キャッシュメモリ、ROM、システムバス等で構成され、所定の制御プログラムを実行することにより、内部メモリ211、無線通信部212、時計部216等の各部との間でデータの送受信を行ったり、各部を制御したりする。この主制御部210には、音信号処理部214を介して音入力手段としてのマイク26及び音出力手段としてのスピーカ28が接続され、表示制御部215を介して一般的な給電画像表示手段である液晶ディスプレイ27が接続されている。また、主制御部210には、前述の描画処理部200を介して電子ペーパー31が接続されている。更に、主制御部210には、キー操作部216及び時計部217が接続されている。
【0031】
また、上記主制御部210は、他の携帯電話機等との間で電話したりメールを送受信したりするときに、所定の通信処理を実行するように無線通信部212や内部メモリ211等を制御する。また、主制御部210は、携帯電話通信網やインターネット上のサーバとの間でデータ通信を行い、各種コンテンツのデータをダウンロードしたり配信情報を受信したりするときに、所定の通信処理を実行するように無線通信部212や内部メモリ211等を制御する。
【0032】
上記内部メモリ211は、例えばRAMやROMなどの半導体メモリで構成され、主制御部210で実行する制御プログラムや各種データを記憶するものである。また、この内部メモリ211は、情報提供サイトなどからダウンロードした画像、音楽、プログラム等のコンテンツデータを記憶するコンテンツデータ記憶手段としても用いられる。更に、この内部メモリ211は、スピーカ109から出力する音のデータを記憶する音データ記憶手段としても用いられる。
また、上記内部メモリ211は、電子ペーパー31や液晶ディスプレイ27に表示する表示対象の画像データを記憶するための画像データ記憶手段や、電子ペーパー31や液晶ディスプレイ27の画面の全画素に対応する描画データを記憶するための描画データ記憶手段としても用いられる。
なお、これらの記憶手段としては、上記内部メモリ211ではなく、携帯電話機本体に着脱可能なメモリーカード、ICカード等の記憶媒体を用いてもよい。
【0033】
上記無線通信部212は、例えば変復調器、シンセサイザ、周波数変換器,高周波増幅器などにより構成され、携帯電話通信網を介して各種装置やサーバと通信したり他の携帯電話機等と通信したりするための処理を行う。
【0034】
上記表示制御部215は、主制御部120から送られてきた画像データや描画データに基づいてディスプレイ27に画像を表示するように制御する。
【0035】
上記スピーカ28は、音信号処理部214でデジタル信号から変換されたアナログ信号が入力され、通話中の音声を出力したり、メールの着信音、電話の呼び出し音、音楽などを出力したりする。なお、上記スピーカ28は、通話中の音声を聞くための受話器用スピーカ(レシーバ)と、着信音や音楽などを出力する外部出力用スピーカとを別々に設けて構成してもいいし、これらの受話器用スピーカ及び外部出力用スピーカを兼用するように一つのスピーカで構成してもよい。
【0036】
上記キー操作部216は、図1(a)に示すようにデータ入力キー(テンキー、*キー、#キー)21、通話開始キー22、終話キー23、スクロールキー24、多機能キー25等の複数のキーで構成されている。このキー操作部216は、利用者が通話開始、終話、メニュー選択、画面切り換え等を指示したり情報を入力したりするときに用いられるほか、電子ペーパー31に表示する画像を利用者が指定するための表示画像指定手段としても用いられる。
【0037】
上記時計部217は、正確な日時を計数し、更新処理等のための時刻情報を生成する。上記マイク26は、利用者の音声を電気信号(アナログ信号)に変換する。マイク26から出力される音声の電気信号(アナログ信号)は、音信号処理部214に入力され、デジタル信号に変換される。このマイク26により、通常の電話やテレビ電話で使用する音声を入力することができる。
【0038】
図11は、上記蓋部29及び本体部30を折り畳んだ閉状態で電子ペーパー31に表示されている画像の表示例を示す携帯電話機の外観図である。図11の表示例では、電子ペーパー31の中央の平面部にある表示領域31Aと、端部の曲面部にある2つの表示領域31B,31Cとにまたがって、画像が表示されている。この図7の表示画像は、主に携帯電話機の筺体デザインを構成するものであり、曲面部における表面の曲がりで元の画像と多少異なるような見え方をしても、筺体デザインを構成する上であまり問題がない。
【0039】
上記電子ペーパー31の各表示領域31A〜31Cは、キー操作部216を用いて利用者が指定した画像を表示するためのユーザ用表示領域として用いることができる。例えば、このユーザ用表示領域には、ユーザがメモリーカードやケーブル接続等を介して外部から取得した各種画像や、ネットワーク上のサイトからダウンロードした各種画像を表示することができる。このユーザ用表示領域の画像は、上記ダウンロード等によって一旦保存した内部メモリー211から読み出されて表示され、携帯電話機20の電源をオフにした後でも、その表示状態が維持されるため道案内用画像や電子チケット画像等として使用することができる。
【0040】
以上、本実施形態によれば、電子ペーパー31の画像表示面31Sをファイバープレート32で保護して強度を確保することできるとともに、そのファイバープレート32の外側表面32SBにあたかも画像を表示しているように見えるため、外観デザインを損ねることがない。しかも、電子ペーパー31の画像表示面31Sに表示している画像を変更することにより、ファイバープレート32の外側表面32SBにおける3次元的な曲面からなる外壁面の外観デザインを容易に変更することができ、その変更後の外観デザインを無給電状態で維持できる。
【0041】
なお、携帯電話機20を例に挙げて説明したが、本発明は、他の移動体通信端末や携帯機器等の電子機器についても同様に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】(a)は本発明の実施形態に係る携帯電話機の外観の一例を示す正面図。(b)は同携帯電話機の背面図。
【図2】図1(b)におけるA−A断面を矢印方向から見た携帯電話機の蓋部の概略構成図。
【図3】(a)及び(b)はそれぞれ、ファイバープレートの外側表面の一部を部分的に拡大して見た拡大平面図。
【図4】ファイバープレートの内側表面から外側表面に画像を伝達する様子を示す説明図。
【図5】ファイバープレートの外側表面が曲面で形成された端部の縦断面図。
【図6】(a)及び(b)は電子ペーパーの画像形成面に表示する画像の説明図。
【図7】(a)は本実施形態の携帯電話機における表示パネルの一構成例を示す断面図。(b)は同表示パネルの電子ペーパーの動作原理を示す説明図。
【図8】他の構成例に係る表示パネルの構成を示すケーシングの断面図。
【図9】描画処理部の一構成例を示すブロック図。
【図10】本実施形態に係る携帯電話機の主な構成を示すブロック図。
【図11】表示パネルの表示画像の一例を示す携帯電話機の外観図。
【符号の説明】
【0043】
20 携帯電話機
29 蓋部
30 本体部
31 電子ペーパー(無給電画像表示手段)
31A 第1の表示領域(平面部)
31B 第2の表示領域(曲面部)
31C 第3の表示領域(曲面部)
32 ファイバープレート
321 光ファイバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する画像表示手段を備えた電子機器であって、
該画像表示手段の画像表示面を覆う被覆部材を備え、
該被覆部材は、該画像表示面に表示された画像を内側表面で受けて外側表面まで伝達し該外側表面を光源として出射する光伝達部材であることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1の電子機器において、
上記被覆部材は、上記内側表面から上記外側表面に向かって光伝送路が位置するように多数の光ファイバーを束ねて作製されたファイバープレートであることを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1又は2の電子機器において、
上記被覆部材は、上記画像表示手段の画像表示面に表示された画像を受ける上記内側表面における画像受け部分の面積と、該画像受け部分で受けた画像を出射する上記外側表面における画像出射部分の面積とが異なることを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1又は2の電子機器において、
上記被覆部材は、上記画像表示手段の画像表示面に表示された画像を受ける上記内側表面における画像受け部分の形状と、該画像受け部分で受けた画像を出射する上記外側表面における画像出射部分の形状とが異なることを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項3又は4の電子機器において、
上記被覆部材は、上記外側表面における画像出射部分が曲面を有し、
上記画像表示手段は、該被覆部材の曲面の曲率に応じて画像を変形させて表示することを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5の電子機器において、
上記画像表示手段は、画像の表示状態を無給電状態でも維持可能な無給電画像表示手段であることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−178464(P2007−178464A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−373591(P2005−373591)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(501440684)ソフトバンクモバイル株式会社 (654)
【Fターム(参考)】