説明

電子機器

【課題】機器を大型化させることなく、複数の回動部材の開閉を1つの光センサで検出することができる電子機器を提供すること。
【解決手段】光センサ40は、空間63を隔てて対向配置された発光素子64及び65を有する。光センサ40により回動状態が光学的に検出される第1検出子61及び第2検出子62は、スキャナ部3及び開閉扉72にそれぞれ連動して光センサ40の空間63に出入される。第1検出子61は、スキャナ部3の開動作に連動して発光素子64と受光素子65間の光路を遮断し、スキャナ部3の閉動作に連動して光路を開放する。第2検出子62は、開閉扉72の開動作に連動して光路を遮断し、開閉扉72の閉動作に連動して光路を開放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器本体に対して個別に開閉される複数の回動部材の開閉を一つの光センサにより検出可能な電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、カバーや扉等の2つの回動部材の開閉を1つの検出手段で検出可能な装置が考案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。この種の装置は、1つのマイクロスイッチと、マイクロスイッチのスイッチ作動子を加圧位置と圧解除位置との間で動作させる1つの作動部材と、を備えている。そして、2つの回動部材が共に閉鎖されているときにはスイッチ作動子を加圧位置に押圧し、少なくともどちらか一方の回動部材が開放されたときにはスイッチ作動子を圧解除位置へ復帰させるように作動部材が配置されている。したがって、スイッチ作動子が加圧位置にあるか又は圧解除位置にあるかに基づいて、2つの回動部材の開閉を検出することができる。
【0003】
【特許文献1】特開平10−199364号公報
【特許文献2】特開平11−249365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1及び特許文献2の装置では、マイクロスイッチ等の接触式のセンサが使用されているが、センサの寿命等を考えると、非接触式のセンサである光センサ等を使用されることが好ましい。また、特許文献1及び特許文献2に開示されている構成では、2つの回動部材の開閉を1つのセンサで検出可能であるが、個別に開閉される3つ以上の回動部材の開閉を1つのセンサで検出することは困難である。仮に、3つ以上の回動部材の開閉を検出可能に構成できたとしても、構成が複雑となり、装置が大型化するという問題点がある。
【0005】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、機器を大型化させることなく、複数の回動部材の開閉を1つの光センサで検出することができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係る電子機器は、機器本体に対して開閉される複数の回動部材と、各回動部材の開閉にそれぞれ連動して回動される複数の検出子と、検出子の回動状態を光学的に検出する光センサと、を具備してなる電子機器であって、上記光センサは、空間を隔てて対向配置された発光素子及び受光素子を有し、上記複数の検出子は、上記光センサの空間にそれぞれ出入され、対応する回動部材の開動作に連動して上記発光素子と上記受光素子間の光路を遮断し、対応する回動部材の閉動作に連動して上記光路を開放するものである。
【0007】
複数の回動部材は、それぞれ、機器本体に対して開閉される。複数の検出子は、それぞれ対応する回動部材の開閉に連動して回動される。光センサは、空間を隔てられて対向配置された発光素子と受光素子とを有している。この空間に、複数の検出子がそれぞれ出入される。そして、これらの検出子の回動状態が光センサによって光学的に検出される。
【0008】
回動部材が閉じられている場合、それに対応する検出子は、光センサの空間を離脱した位置にある。したがって、全ての回動部材が閉じられていれば、発光素子からの光が受光素子により受光される。この状態からいずれか1つでも回動部材が開かれると、それに対応する検出子は、回動部材の開動作に連動して光センサの空間に進入する。そして、発光素子と受光素子間の光路は、進入した検出子により遮断される。これにより、発光素子からの光が受光素子により受光されなくなる。開かれた回動部材が閉じられると、それに対応する検出子は、回動部材の閉動作に連動して光センサの空間から離脱する。そして、光路は、検出子の離脱に伴って開放され、発光素子からの光が受光素子により受光される。つまり、全ての回動部材が閉じられていれば光路は開放され、いずれか1つでも回動部材が開かれると光路が遮断される。したがって、1の光センサの光路が開放されているか否かに基づいて、複数の回動部材の開閉を検出することができ、複数の回動部材の開閉を複数の光センサでそれぞれ検出する場合に比べて、コストを削減できる。なお、発光素子と受光素子との間の空間は、複数の検出子が出入可能な間隔があればよいので、小型の光センサで複数の回動部材の開閉を検出することができる。
【0009】
(2) 上記検出子は、機器本体に軸支される軸部と、上記回動部材が当接されることにより該軸部回りに回動される被接部と、該被接部とともに上記軸部回りに回動されて上記光センサの空間に出入される遮蔽部と、を有するものであってもよい。
【0010】
検出子は、軸部によって機器本体に軸支されている。回動部材が閉じられている状態では、それに対応する検出子の被接部には、回動部材が当接されている。被接部が回動部材に押圧された状態において、遮蔽部は、光センサの空間から離脱した位置にある。この状態から回動部材が開かれると、それに対応する検出子の被接部は、回動部材から離れる。被接部に付与されていた回動部材による押圧力が除去されるので、検出子の被接部と遮蔽部は、軸部回りに回動される。これにより、回動した遮蔽部が光センサの空間に進入し、光路が遮断される。
【0011】
(3) 上記検出子は、上記遮蔽部が上記光センサの空間に進入する方向へ弾性付勢されているものであってもよい。回動部材が閉じられた状態では、それに対応する検出子の被接部に対して、遮蔽部が光センサの空間から離脱する方向へ押圧力が付与されている。付勢力よりも押圧力の方が強いため、検出子の遮断部は、光センサの空間から離脱した位置にある。回動部材が開かれ、それに対応する検出子の被接部への押圧力が除去されると、付勢力により検出子が回動されて遮蔽部が光センサの空間へ進入する。したがって、回動部材が開かれた場合に、遮蔽部を光センサの空間に確実に進入させて光路を遮断させることができる。また、付勢力によりチャタリングを抑制して光センサの誤検出を防止することができる。
【0012】
(4) 上記各検出子の各遮蔽部は、回動方向に拡がる平面を有する平板形状であり、各遮蔽部は、上記光センサの空間において上記各平面が光路とそれぞれ直交する配置で平行に並べられたものであってもよい。
【0013】
各検出子の遮蔽部は、回動方向に拡がる平面を有する平板形状に形成されている。各遮蔽部は、光センサの空間において各遮蔽部の平面が光路とそれぞれ直交する配置で平行に並べられている。つまり、各遮蔽部は、光路方向に突出しない形状及び配置となっている。そのため、発光素子と受光素子との間隔を狭くすることができ、光センサを小型化することが可能となる。
【0014】
(5) 上記各検出子の各遮蔽部が上記光センサの空間の所定位置に出入するように案内するガイドを有することが好ましい。各検出子の各遮蔽部は、光センサの空間の所定位置に出入するようにガイドによって案内される。所定位置は、各遮蔽部毎に異なる位置に設定されている。これにより、検出子の遮蔽部が光センサの空間に対して出入する際に、他の遮蔽部と接触して検出子の回動状態を正確に検出できなくなることが防止される。
【0015】
(6) 上記各検出子は、上記光センサを挟んだ対向位置に一対が配置されたものであり、各検出子の各遮蔽部は、上記光路を開放する位置において、該光路を遮断する位置にある他の遮蔽部と光路方向に対してオーバーラップされたものであることが好ましい。これにより、2つの遮蔽部が回動方向に重なって互いの検出子が回動できなくなることが防止される。
【0016】
(7) 上記各検出子の遮蔽部に、上記光センサに当接して遮蔽部を所定の遮断位置に位置決めするストッパが設けられていてもよい。これにより、遮蔽部が光センサの空間に進入する方向に検出子が回動された場合に、ストッパが光センサに当接する。この状態では、遮蔽部が所定の遮断位置にある。したがって、所定の遮断位置が遮蔽部により光路を確実に遮断できる位置となるようにストッパを設けておくことにより、遮蔽部が光センサの空間に進入する方向に検出子が回動された場合に、光路を確実に遮断できる。
【0017】
(8) 上記機器本体は、原稿の画像データを読み取るスキャナ部と、被記録媒体に画像記録を行うプリンタ部とが上下二段に配置されたものであり、上記複数の回動部材の少なくとも一つが、上記プリンタ部に対して回動可能に配設された上記スキャナ部であり、上記複数の回動部材の少なくとも一つが、上記プリンタ部の内部にアクセスするために該プリンタ部の筐体に対して開閉される扉であってもよい。これにより、スキャナ部の開閉と、例えばインク交換やジャム処理のために開かれる扉の開閉と、を1つの光センサで検出することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る電子機器によれば、1つの光センサの光路が開放されているか否かに基づいて、複数の回動部材の開閉を検出することができ、例えば複数の回動部材の開閉を複数の光センサでそれぞれ検出する場合に比べて、コストを削減できる。なお、発光素子と受光素子との間の空間は、複数の検出子が出入可能な間隔があればよいので、小型の光センサで複数の回動部材の開閉を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。なお、各実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態が適宜変更されてもよいことは勿論である。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る複合機1(本発明の電子機器に相当)の外観構成を示す斜視図である。図2は、この複合機1の内部構成を示す断面図である。
【0021】
複合機1は、高さより横幅及び奥行きが大きい幅広薄型の概ね直方体の外形を有する装置本体10(機器本体)を備えている。この装置本体10は、原稿の画像データを読み取るスキャナ部3と、被記録媒体に画像記録を行うプリンタ部2とが上下二段に配置されたものであり、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、電話通信機能、ファクシミリ機能等を有する。
【0022】
本実施形態に係る複合機1の特徴とするところは、装置本体10に対して個別に開閉される複数の回動部材を具備しており、これら複数の回動部材の開閉を1つの光センサ40(図5及び図6参照)により検出するところにある。すなわち、複合機1は、プリンタ部2に対して回動可能に配設されたスキャナ部3と、プリンタ部2の内部にアクセスするためにプリンタ部2の筐体11に対して開閉される扉である開閉扉72の2つの回動部材を備えている。つまり、本実施形態においては、複数の回動部材の少なくとも一つが、プリンタ部2に対して回動可能に配設されたスキャナ部3であり、複数の回動部材の少なくとも一つが、プリンタ部2の内部にアクセスするためにプリンタ部2の筐体11に対して開閉される開閉扉72である。そして、スキャナ部3と開閉扉72の開閉が1つの光センサ40により検出され得るようになっている。光センサ40及び光センサ40の周辺構造については、後に詳述される。
【0023】
装置本体10のプリンタ機能においては、装置本体10が主に不図示のコンピュータと接続され、プリンタ部2がこのコンピュータから送信された画像データや文書データに基づいて記録用紙その他の被記録媒体(以下、単に「記録用紙」と称される。)に画像や文書を記録する。また、プリンタ部2は、装置本体10に接続されたデジタルカメラ等の外部機器から出力される画像データを記録用紙に記録することもできる。さらに、プリンタ部2は、装置本体10に装着されたメモリカード等の各種記憶媒体に記憶された画像データ等を記録用紙に記録することもできる。
【0024】
装置本体10のスキャナ機能においては、スキャナ部3により読み取られた原稿の画像データがコンピュータに送信される。また、この画像データは、メモリカード等の各種記憶媒体に記憶されることも可能である。装置本体10のコピー機能においては、スキャナ部3により読み取られた画像データがプリンタ部2において記録用紙に記録される。
【0025】
装置本体10の電話通信機能においては、不図示の電話回線を通じて音声が電気信号として送受信され、ファクシミリ機能においては、スキャナ部3により読み取られた画像データが電気信号として上記電話回線を通じてファクシミリ送信される。また、受信されたファクシミリデータは、プリンタ部2により記録用紙に記録される。装置本体10の側面13に局線が接続される接続部14が設けられている。
【0026】
装置本体10の下部がプリンタ部2である。プリンタ部2は、正面に開口15が形成されている。この開口15の内部に、給紙トレイ20及び排紙トレイ21が設けられている。給紙トレイ20には、被記録媒体である記録用紙が収容される。給紙トレイ20は、A4サイズ以下のB5サイズ、はがきサイズ等の各種サイズの記録用紙を収容可能である。図1には示されていないが、給紙トレイ20は、装置正面側にスライドされることによりトレイ面が拡張されるようになっている。拡張された給紙トレイ20は、リーガルサイズの記録用紙を収容することも可能である。給紙トレイ20に収容された記録用紙は、後述のようにプリンタ部2の内部へ給送されて所望の画像が記録され、排紙トレイ21へ排出される。
【0027】
装置本体10の上部がスキャナ部3である。スキャナ部3は、所謂フラットベッドスキャナとして構成されている。装置本体10は、原稿カバー30を備えている。この原稿カバー30は、装置本体10の天板として機能し、開閉自在に設けられている。この原稿カバー30の下側にプラテンガラス31及びコンタクトイメージセンサ32が設けられている。プラテンガラス31には、画像読取りを行う原稿が載置される。プラテンガラス31の下方には、装置本体10の奥行き方向を主走査方向とするコンタクトイメージセンサ32が、装置本体10の幅方向(図2の紙面に垂直方向)に往復動可能に設けられている。
【0028】
装置本体10は、操作パネル6を備えている。操作パネル6は、プリンタ部2やスキャナ部3を操作するためのものであり、装置本体10の正面上部に配置されている。操作パネル6は、各種操作ボタン35や液晶ディスプレイ36から構成されている。装置本体10は、操作パネル6からの操作指示に基づいて動作される。なお、装置本体10が外部のコンピュータに接続されている場合には、このコンピュータからプリンタドライバ又はスキャナドライバを介して送信される指示に基づいても装置本体10が動作される。
【0029】
装置本体10は、スロット部7を備えている。スロット部7は、装置本体10の正面に配置されており、記憶媒体である各種小型メモリカードがスロット部7に装填される。操作パネル6において所定の操作が行われることにより、スロット部7に装填された小型メモリカードに記憶された画像データが読み出される。読み出された画像データに関する情報は、例えば液晶ディスプレイ36に表示され、操作ボタン35の操作に基づいて任意に選択された画像がプリンタ部2により記録用紙に記録される。
【0030】
図2に示されるように、装置本体10の底側に給紙トレイ20が配置されている。この給紙トレイ20は、同図において左右方向(図1において矢印137の方向)に挿抜されるようになっている。給紙トレイ20が装置内部に挿入されると、記録用紙は、後述される給紙ローラ25によって図2において右方向(記録用紙の搬送方向)へ引き出され、用紙搬送路23に沿って画像記録ユニット24側へ送られる。また、ユーザーが給紙トレイ20を装置内部から引き抜くことによって、ユーザーは、給紙トレイ20に記録用紙を補充することができるようになっている。
【0031】
給紙トレイ20の奥側に分離傾斜板22が設けられている。この分離傾斜板22は、装置背面側へ倒れるように傾斜している。分離傾斜板22は、給紙トレイ20から給送された記録用紙を分離して上方へ案内する。分離傾斜板22の上方に上記用紙搬送路23が形成されている。この用紙搬送路23は、分離傾斜板22から上方へ向かった後、正面側へ曲がっている。さらに、用紙搬送路23は、装置本体10の背面側から正面側へと延び、画像記録ユニット24を通過して排紙トレイ21へ通じている。給紙トレイ20に収容された記録用紙は、用紙搬送路23によって下方から上方へUターンするように案内されて画像記録ユニット24に至り、この画像記録ユニット24により画像記録が行われた後、排紙トレイ21に排出される。
【0032】
以下に、スキャナ部3がプリンタ部2に対して開閉される構造、及び、開閉扉72がプリタ部2の筐体11に対して開閉される構造について詳述される。図3は、スキャナ部3がプリンタ部2に対して開かれ、開閉扉72がプリンタ部2の筐体11に対して開かれた状態の複合機1を示す外観斜視図である。なお、操作パネル6は、装置本体10に固定されるものであるが、ここでは、上記光センサ40が配設された検出部4を示すために取り外された状態で示されている。
【0033】
図3に示されるように、スキャナ部3のケーシング60が、装置背面側を軸としてプリンタ部2に回動可能に支持されている。これにより、スキャナ部3は、装置正面側を自由端としてプリンタ部2に対して上側へ開かれる。操作パネル6は、プリンタ部2側に固定されており、スキャナ部3とともに開閉されない。スキャナ部3が開かれることにより、プリンタ部2の内部が露出され、ジャム処理などのメンテナンス作業が行われる。
【0034】
プリンタ部2とスキャナ部3との間には、支持部材71が設けられている。支持部材71は、装置奥行きより若干短い長さの平板形状であり、基端がプリンタ部2の上部であって装置正面側に回動自在に連結されている。支持部材71は、装置奥行き方向に延出されている。支持部材71の装置背面側は回動先端であり、ケーシング60に摺動自在に連結されている。支持部材71は、スキャナ部3がプリンタ部2に対して開かれた状態において、図3に示されるように、筋交いの如く、スキャナ部3を支持する。
【0035】
図4は、プリンタ部2の筐体10に対して開かれた状態の開閉扉72及びその周辺を示す拡大斜視図である。図3及び図4に示されるように、プリンタ部2は、リフィルユニット70(図10参照)を備えている。このリフィルユニット70は、図に示されるように、プリンタ部2の筐体10の前方側、すなわち前面パネル16側に内蔵されている。本実施形態では、リフィルユニット70は4つのインクカートリッジ52(図10参照)を収容保持することができる。各インクカートリッジ52には、ブラック(Bk)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の各色のインクがそれぞれ貯留される。これらインクカートリッジ52に貯留された各色のインクは、インクチューブ41(図9参照)を介して記録ヘッド39(図8参照)へ供給されるように構成されている。
【0036】
プリンタ部2の筐体11は、その前面パネル16に開閉扉72を有している。この開閉扉72は、前面パネル11の幅方向の一方の端部(本実施形態では右端部)に設けられた開口73を開閉するものである。この開閉扉72は、プリンタ部2の内部にアクセスするためにプリンタ部2の筐体11に対して開閉される扉である。具体的には、開閉扉72は、前方へ倒伏することによって上記開口73を開いて該開口73からリフィルユニット70を露出させる姿勢(開放姿勢)と、上記開口73を閉じてリフィルユニット70を収容する姿勢(閉塞姿勢)との間で回動自在となっている。開閉扉72の開閉動作は、該開閉扉72の下端が回動軸となって装置前面側に回動することにより達成される。なお、プリンタ部2の筐体11は、嵌合孔12を備えており、開閉扉72の係合部材121が嵌合孔12に係合されることによって、開閉扉72が閉じられた状態でプリンタ部2の筐体11に支持されるようになっている。
【0037】
図5は、スキャナ部3及び開閉扉72の開閉を検出する検出部4を示す拡大斜視図である。図6は、検出部4に配設される光センサ40、第1検出子61、及び、第2検出子62を示す分解斜視図である。図7は、スキャナ部3の下面に設けられた第1押圧部34を示す拡大斜視図である。
【0038】
図3及び図5に示されるように、プリンタ部2の筐体11の上面における装置前面側の右端部には、検出部4が設けられている。スキャナ部3(複数の回動部材の一つ)及び開閉扉72(複数の回動部材の一つ)の開閉は、この検出部4によって検出されるようになっている。検出部4には、光センサ40、第1検出子61(複数の検出子の一つ)、及び、第2検出子62(複数の検出子の一つ)が配設されている。
【0039】
光センサ40は、後述される第1検出子61及び第2検出子62の回動状態を光学的に検出するものである。光センサ40は、図6に示されるように、空間63を隔てて対向配置された発光素子64及び受光素子65を有する。この光センサ40の空間63に、第1検出子61及び第2検出子62がそれぞれ出入される。すなわち、空間63は、少なくとも、第1検出子61が出入される空間と、第2検出子が出入される空間とを有する。
【0040】
発光素子64は、電流を流すことによって発光する光半導体であり、例えばLED(Light Emitting Diode)が使用される。発光素子64としては、可視光に比べて赤外光の方が発光出力が大きい等の理由から、赤外光を発するものが使用される。また、発光素子64の点灯方式は、直流電流により点灯する直流点灯と、パルス電流により点灯するパルス点灯とのいずれであってもよい。
【0041】
受光素子65は、受光した光の強度に応じた電流を出力するものである。受光素子65としては、フォトダイオードと集積回路とが組み合わされてなるフォトICや、フォトダイオードとトランジスタとが組み合わされてなるフォトトランジスタ等が使用される。受光素子65は、空間63を隔てて発光素子64と対向するように配設されている。空間63が開放されている場合には、発光素子64からの光が受光素子65によって受光される。このようにして発光素子64から受光素子65への光の光路が開放されている場合、受光素子65によって受光された光の強度に応じた電流が受光素子65から出力される。逆に、空間63が開放されていない場合には、発光素子64からの光は受光素子65によって受光されない。このように、発光素子64から受光素子65への光の光路が遮断されている場合、受光素子65からは電流が出力されない。
【0042】
空間63には、上記のように第1検出子61又は第2検出子62が出入されるようになっている。したがって、上記の説明から明らかなように、光センサ40は、空間63に第1検出子61又は第2検出子62が進入して発光素子64から受光素子65への光の光路が遮断されることにより第1検出子61又は第2検出子62を検出する、所謂透過型のフォトインタラプタ(Photointerrupter)である。
【0043】
第1検出子61及び第2検出子62は、各回動部材にそれぞれ連動して回動されるものである。すなわち、第1検出子61は、スキャナ部3の開閉に連動して回動され、第2検出子62は、開閉扉72の開閉に連動して回動されるものである。第1検出子61は、光センサ40の空間63に出入されるものであり、対応する回動部材であるスキャナ部3の開動作に連動して発光素子64と受光素子65間の光路を遮断し、スキャナ部3の閉動作に連動してその光路を開放する。また、第2検出子63は、光センサ40の空間63に出入されるものであり、対応する回動部材である開閉扉72の開動作に連動して発光素子64と受光素子65間の光路を遮断し、開閉扉72の閉動作に連動してその光路を開放する。
【0044】
第1検出子61は、図6に示されるように、軸部83、被接部84、及び、遮蔽部85を有するものである。軸部83は、装置本体10に軸支されている。具体的には、軸部83は、軸部83の両端が、プリンタ部2の筐体11の上面であって装置正面側の右端部に設けられた軸受け部86(図5参照)によって回動自在に支持されている。被接部84は、スキャナ部3が当接されるものである。具体的には、被接部84は、スキャナ部3の下面における装置前面側の右端部から下方に突設された第1押圧部34(図7参照)が当接される。また、被接部84は、軸部83の回転中心軸から放射方向に伸びるように設けられている。したがって、被接部84は、スキャナ部3の第1押圧部34が当接されることにより軸部83回りに回動される。言い換えれば、被接部84は、第1押圧部34からの押圧力の有無により軸部83回りに回動される。なお、被接部84は、第1押圧部34が当接されるものであるため、ここでは、軸部83の軸方向に拡がる平板形状に形成されている。
【0045】
遮蔽部85は、軸部83の回転中心軸から放射方向に伸びるように設けられており、ここでは、軸部83の一端側から軸部83に対して被接部84とは反対側に突出するように形成されている。これにより、遮蔽部85は、被接部84とともに軸部83回りに回動されて光センサ40の空間63に出入される。なお、遮蔽部85は、図6に示されるように、回動方向に拡がる平面を有する平板形状に形成されている。遮蔽部85には、光センサ40に当接して遮蔽部85を所定の遮断位置に位置決めするストッパ89が設けられている。このストッパ89は、遮蔽部85の一方の面に垂設されている。ストッパ89は、ここでは、遮蔽部85において、後述する第2検出センサ62の遮蔽部94と対向する面とは反対側の面に垂設されている。遮蔽部85が光センサ40の空間63に進入する方向へ第1検出子61が回動されると、ストッパ89が光センサ40の受光素子65に当接する(図5参照)。この状態では、遮蔽部85が所定の遮断位置にある。したがって、所定の遮断位置が遮蔽部85により光路を確実に遮断できる位置となるようにストッパ89を設けておくことにより、遮蔽部85が光センサ40の空間63に進入する方向に第1検出子61が回動された場合に、光路を確実に遮断できる。
【0046】
なお、遮蔽部85が設けられている側の軸部83を支持する軸受け部86は、遮蔽部85の回動方向と垂直な方向へ遮蔽部85の移動が規制されるように形成されている(図5参照)。これにより、軸受け部86は、第1検出子61の遮蔽部85が光センサ40の空間63の所定位置に出入するように案内するガイドとしても機能する。
【0047】
第1検出子61には、ネジリコイルバネ90が付設されている。ネジリコイルバネ90は、その巻回部分に軸部83が挿通されると共に、アームの一端側が筐体11の上面に当接し、アームの他端側が被接部84の側方に設けられた係止片91に係止されている。したがって、第1検出子61は、このネジリコイルバネ90によって遮蔽部85が光センサ40の空間63に進入する方向へ弾性付勢されている。
【0048】
第2検出子62は、軸部92、被接部93、及び、遮蔽部94を有するものである。軸部92は、装置本体10に軸支されている。具体的には、軸部92は、軸部92の両端が、プリンタ部2の筐体11の上面であって装置正面側の右端部に設けられた軸受け部95(図5参照)によって回動自在に支持されている。被接部93は、開閉扉72が当接されるものである。具体的には、被接部93は、開閉扉72の自由端側から開閉扉72の内側へ向けて突設された第2押圧部77(図4参照)が当接される。また、被接部93は、軸部92の回転中心軸から放射方向へ伸びるように設けられている。被接部93は、開閉扉72の第2押圧部77が当接されることにより軸部92回りに回動される。言い換えれば、被接部93は、第2押圧部77からの押圧力の有無により軸部92回りに回動される。なお、被接部93が第2押圧部77により押圧された状態で第2押圧部77の先端側が挿入されるように、被接部93には開口96が形成されている。プリンタ部2の筐体11は、挿通孔66(図4及び図5参照)を備えており、開閉扉72の係合部材121が嵌合孔12に係合されると共に、第2押圧部77が挿通孔66を挿通される。このようにして挿通孔66を挿通された第2押圧部77によって被接部93が押圧されるようになっている。
【0049】
遮蔽部94は、軸部92の回転中心軸から放射方向へ伸びるように設けられており、ここでは、軸部92の一端側から軸部92に対して被接部93とは反対側に突出するようにアーム97を介して形成されている。これにより、遮蔽部94は、被接部93とともに軸部92回りに回動されて光センサ40の空間63に出入される。なお、遮蔽部94は、図6に示されるように、第1検出子61の遮蔽部85と同様に、回動方向に拡がる平面を有する平板形状に形成されている。遮蔽部85及び遮蔽部94は、光センサ40の空間63において各平面が発光素子64と受光素子65間の光路とそれぞれ直交する配置で平行に並べられている(図5参照)。すなわち、遮蔽部85及び遮蔽部94は、光センサ40の光路方向に突出しない形状及び配置となっている。そのため、発光素子64と受光素子65との間隔(空間63)を狭くすることができ、光センサ40を小型化することが可能である。
【0050】
遮蔽部94には、光センサ40に当接して遮蔽部94を所定の遮断位置に位置決めするストッパ98が設けられている。このストッパ98は、遮蔽部94の一方の面に垂設されている。ストッパ98は、ここでは、遮蔽部94における第1検出センサ61の遮蔽部85と対向する面とは反対側の面に垂設されている。遮蔽部94が光センサ40の空間63に進入する方向へ第2検出子62が回動されると、ストッパ98が光センサ40の発光素子64に当接する。この状態では、遮蔽部94が所定の遮断位置にある。したがって、所定の遮断位置が遮蔽部94により光路を確実に遮断できる位置となるようにストッパ98を設けておくことにより、遮蔽部94が光センサ40の空間63に進入する方向に第2検出子62が回動された場合に、光路を確実に遮断できる。
【0051】
図5に示されるように、筐体11における検出部4の所定の位置には、遮蔽部94の回動方向と垂直な方向へ遮蔽部94及びアーム97が移動することを規制するガイド99が設けられている。ガイド99は、アーム97が回動される方向に沿ってスリットが形成されたものである。すなわち、このスリットに沿ってアーム97が回動される。なお、ここではアーム97が長尺に形成されているため、ガイド99は、図5に示されるように、2つのスリットを有するものである。これにより、遮蔽部94は、光センサ40の空間63の所定位置に出入するようにガイド99によって案内される。なお、遮蔽部85が出入される光センサ40の所定位置と、遮蔽部94が出入される光センサ40の所定位置とは、異なる位置に設定されている。これにより、第2検出子62の遮蔽部94が光センサ40の空間63に対して出入する際に、第1検出子61の遮蔽部85と接触して、第1検出子61及び第2検出子62の回動状態を正確に検出できなくなることが防止される。
【0052】
第2検出子62には、ネジリコイルバネ100が付設されている。ネジリコイルバネ100は、その巻回部分に軸部92が挿通されると共に、アームの一端側がプリンタ部2の筐体11の上面に当接し、アームの他端側が被接部93の側方に設けられた係止片110に係止されている。したがって、第2検出子62は、このネジリコイルバネ100によって遮蔽部94が光センサ40の空間63に進入する方向へ弾性付勢されている。
【0053】
上記のように、スキャナ部3及び開閉扉72は、それぞれ、装置本体10に対して開閉される。第1検出子61及び第2検出子62は、それぞれ対応する回動部材の開閉に連動して回動される。すなわち、第1検出子61は、スキャナ部3の開閉に連動して回動され、第2検出子62は、開閉扉72の開閉に連動して回動される。光センサ40は、空間63を隔てられて対向配置された発光素子64と受光素子65とを有している。この空間63に、第1検出子61及び第2検出子62がそれぞれ出入される。そして、これらの検出子61,62の回動状態が光センサ40によって光学的に検出されるようになっている。なお、本実施形態においては、第1検出子61及び第2検出子62は、光センサ40を挟んだ対向位置に一対が配置されたものであるが(図5参照)、3つ以上の検出子を配置することも当然可能である。
【0054】
図8は、プリンタ部2の主要構成を示す部分拡大断面図である。図8に示されるように、給紙トレイ20の上側には、給紙ローラ25が設けられている。給紙ローラ25は、給紙トレイ20に積載された記録用紙に圧接して最上位置の記録用紙を分離傾斜板22へ給送する。給紙ローラ25は、給紙アーム26の先端に軸支されている。給紙ローラ25は、複数のギアが噛合されてなる駆動伝達機構27により、図に示されていないモータの駆動が伝達されて回転される。
【0055】
給紙アーム26は、基軸28を回動軸として、給紙トレイ20に接離可能に上下動される。図8に示されるように、給紙アーム26は、自重により給紙トレイ20に接触するように下側に回動され、給紙ローラ25が給紙トレイ20に接触される。給紙トレイ20及び排紙トレイ21が開口15から挿抜される際に、給紙アーム26が上側へ退避される。給紙ローラ25が給紙トレイ20上の記録用紙の表面に圧接された状態で回転されると、給紙ローラ25のローラ面と記録用紙との間の摩擦力によって最上位置の記録用紙が分離傾斜板22へ給送される。記録用紙は、その先端が分離傾斜板22に当接して上方へ、つまり用紙搬送路23へ案内される。給紙ローラ25によって最上位置の記録用紙が送り出される際に、その直下の記録用紙が摩擦や静電気の作用によって共に送り出される場合があるが、該記録用紙は分離傾斜板22との当接によって制止される。
【0056】
用紙搬送路23は、画像記録ユニット24等が配設されている箇所以外は、所定間隔で対向する外側ガイド面と内側ガイド面とから構成されている。例えば、複合機1の背面側の用紙搬送路23は、外側ガイド部材18と内側ガイド部材19とがフレーム内に固定されることにより構成されている。外側ガイド部材18には、搬送コロ17が設けられている。搬送コロ17は、外側ガイド部材18のガイド面からローラ面が露出されて、用紙搬送路23の幅方向を軸方向として外側ガイド部材18に回転自在に支持されている。搬送コロ17によって、用紙搬送路23がU字に曲がっている箇所において外側ガイド面に接触する記録用紙の搬送が円滑となる。
【0057】
図8に示されるように、用紙搬送路23には、画像記録ユニット24が設けられている。画像記録ユニット24は、記録ヘッド39を搭載して主走査方向へ往復動するキャリッジ38を備えている。記録ヘッド39は、複合機1内の前面パネル16の右端部側に設けられたリフィルユニット70(図10参照)内のインクカートリッジ52(図10参照)からインクチューブ41(図9参照)を通じてシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)の各色インクが供給され、各インクを微小なインク滴として選択的に吐出する。キャリッジ38が往復動される間に、記録ヘッド39からインク滴が選択的に吐出されることにより、プラテン42上を搬送される記録用紙に画像記録が行われる。
【0058】
図9は、プリンタ部2の主要構成を示す平面図である。図9に示されるように、用紙搬送路23の上側において記録用紙の搬送方向(図9の上下方向)に所定距離を隔てられて、一対のガイドレール43,44が記録用紙の搬送方向と直交する方向(図9の左右方向)に延設されている。キャリッジ38は、ガイドレール43,44を跨ぐようにして記録用紙の搬送方向と直交する水平方向に往復動可能に載置されている。記録用紙の搬送方向の上流側に配設されたガイドレール43は、用紙搬送路23の幅方向の長さがキャリッジ38の往復動範囲より長い平板状のものである。ガイドレール43の搬送方向下流側の上面がガイド面43Aであり、ガイド面43Aがキャリッジ38の上流側の端部を摺動可能に支持する。
【0059】
記録用紙の搬送方向の下流側に配設されたガイドレール44は、用紙搬送路23の幅方向の長さがガイドレール43とほぼ同じ長さの平板状のものである。ガイドレール44において、上流側の縁部45は、上方へ向かって略直角に曲折されている。ガイドレール44の搬送方向下流側の上面がガイド面44Aであり、ガイド面44Aがキャリッジ38の下流側の端部を摺動可能に支持する。また、キャリッジ38は、縁部45を図示されていないローラ等により狭持する。これにより、キャリッジ38が、ガイドレール43,44のガイド面43A,44A上に摺動自在に担持され、ガイドレール44の縁部45を基準として、記録用紙の搬送方向と直交する水平方向に往復動可能となる。
【0060】
ガイドレール44の上面には、ベルト駆動機構46がガイドレール44に沿って設けられている。ベルト駆動機構46は、用紙搬送路23の幅方向の両端付近にそれぞれ設けられた駆動プーリ47と従動プーリ48との間に、内側に歯が設けられた無端環状のタイミングベルト49が張り渡されたものである。タイミングベルト49とキャリッジ38とが連結されることにより、ベルト駆動機構46の動作に基づいてキャリッジ38が往復動される。
【0061】
駆動プーリ47は、ガイドレール44のガイド面44Aと直交する方向を軸として、ガイドレール44の上面の一方端(図9では右端)に回転自在に設けられている。つまり、駆動プーリ47の軸は鉛直方向である。図9には表れていないが、ガイドレール44の下側にはモータが設けられており、該モータから駆動プーリ47の軸に駆動力が入力される。これにより、駆動プーリ47が回転される。
【0062】
図9に示されるように、駆動プーリ47及び従動プーリ48には、タイミングベルト49が張り渡されている。図9には表れていないが、駆動プーリ47の外周にはタイミングベルト49の内歯と噛合する平歯が形成されている。これにより、駆動プーリ47の回転がタイミングベルト49に確実に伝達され、タイミングベルト49が周運動される。なお、本実施形態では無端環状のタイミングベルト49が用いられているが、これに代えて有端のタイミングベルトが用いられてもよい。その場合、タイミングベルトの両端がキャリッジ38に連結される。
【0063】
キャリッジ38は、タイミングベルト49に連結されている。タイミングベルト49が周運動されると、キャリッジ38が縁部45を基準としてガイドレール43,44上を往復動する。キャリッジ38に記録ヘッド39が搭載されることにより、記録ヘッド39が、用紙搬送路23の幅方向を主走査方向として往復動可能となっている。
【0064】
ガイドレール44の縁部45に沿って、リニアエンコーダのエンコーダストリップ54が配設されている。リニアエンコーダは、エンコーダストリップ54をキャリッジ38に搭載されたフォトインタラプタ55により検出するものである。リニアエンコーダの検出信号に基づいて、キャリッジ38の往復動が制御される。
【0065】
図9に示されるように、用紙搬送路23の下側には、記録ヘッド39と対向してプラテン42が配設されている。プラテン42は、キャリッジ38の往復動範囲のうち、記録用紙が通過する中央部分に渡って配設されている。プラテン42の幅は、搬送可能な記録用紙の最大幅より十分に大きいものであり、記録用紙の両端は常にプラテン42の上を通過する。
【0066】
記録用紙が通過しない範囲、すなわち記録ヘッド39による画像記録範囲外には、パージ機構56や廃インクトレイ57等のメンテナンスユニットが配設されている。パージ機構56は、記録ヘッド39のノズル(不図示)から気泡や異物を吸引除去するためのものである。パージ機構56は、記録ヘッド39のノズルを覆うキャップ58と、キャップ58を通じて記録ヘッド39に接続されるポンプ機構と、キャップ58を記録ヘッド39のノズルに接離させるための移動機構とからなる。なお、図9においては、ポンプ機構及び移動機構は、ガイドレール43,44及びキャップ58の下方にあるため図に表れていない。記録ヘッド39の気泡等の吸引除去を行う際には、記録ヘッド39がキャップ58上に位置するようにキャリッジ38が移動され、その状態でキャップ58が上方へ移動されて記録ヘッド39の下面のノズルを密閉するように密着し、キャップ58と連結されたポンプにより記録ヘッド39のノズルからインクが吸引される。
【0067】
廃インクトレイ57は、フラッシングと呼ばれる記録ヘッド39からのインクの空吐出を受けるためのものである。廃インクトレイ57は、キャリッジ38の往復動範囲内であって画像記録範囲外に、プラテン42と一体に設けられている。これらメンテナンスユニットにより、記録ヘッド39内の気泡や混色インクの除去等のメンテナンスが行われる。
【0068】
記録ヘッド39には、リフィルユニット70に保持されたインクカートリッジ52(図10参照)と連結されたインクチューブ41を通じてインクが供給される。インクカートリッジ52はインク色毎に設けられており、各色毎に独立したインクチューブ41により記録ヘッド39へ各色インクが供給される。各インクチューブ41は、合成樹脂製のチューブであり、キャリッジ38の往復動に従って撓む可撓性を有する。
【0069】
インクカートリッジ52と連結された各インクチューブ41は、装置の幅方向に沿って中央付近まで引き出されて、装置フレームの固定クリップ59に固定されている。なお、図9では、固定クリップ59からインクカートリッジ52側へ延出されるインクチューブ41は省略されている。固定クリップ59からキャリッジ38までにおいて、インクチューブ41は装置フレーム等に固定されておらず、キャリッジ38の往復動に追従して姿勢変化する。すなわち、キャリッジ38が往復動方向の一端(図9の左側)へ移動するに従い、各インクチューブ41は、U字形状の湾曲部分の曲げ半径が小さくなるように撓みながら、キャリッジ38の移動方向へ移動する。一方、キャリッジ38が往復動方向の他端(図9の右側)へ移動するに従い、各インクチューブ41は、湾曲部分の曲げ半径が大きくなるように撓みながら、キャリッジ38の移動方向へ移動する。
【0070】
図8に示されるように、画像記録ユニット24の上流側には、搬送ローラ67が設けられている。図8には表れていないが、搬送ローラ67の対向位置にはピンチローラが設けられている。ピンチローラは、搬送ローラ67に圧接可能に付勢されている。搬送ローラ67とピンチローラとの間に記録用紙が進入すると、ピンチローラは記録用紙の厚み分だけ退避して該記録用紙を搬送ローラ67とともに狭持する。これにより、搬送ローラ67の回転力が確実に記録用紙へ伝達される。そして、該記録用紙がプラテン42上へ搬送される。
【0071】
画像記録ユニット24の下流側には、排紙ローラ68が設けられている。排紙ローラ68の対向位置には、拍車ローラ69が設けられている。拍車ローラ69は、排紙ローラ68に圧接されており、排紙ローラ68及び拍車ローラ69により、記録済みの記録用紙が狭持されて搬送される。拍車ローラ69も排紙ローラ68に対して上記ピンチローラと同様に圧接可能に付勢されたものであるが、記録済みの記録用紙と圧接するので、記録用紙に記録された画像を劣化させないようにローラ面が拍車状に凹凸されている。
【0072】
搬送ローラ67及び排紙ローラ68は、図示されていないモータから駆動力が伝達されて、所定の改行幅で間欠駆動される。搬送ローラ67及び排紙ローラ68の回転は同期されており、搬送ローラ67に設けられたロータリーエンコーダが、搬送ローラ67とともに回転するエンコーダディスク51をフォトインタラプタで検出することにより、搬送ローラ67及び排紙ローラ68の回転が制御される。
【0073】
図10は、リフィルユニット70の斜視図である。リフィルユニット70は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)の各色に対応する4つのインクカートリッジ52を保持するものであり、図3に示されるように、プリンタ部2の前面パネル16の右端部に形成された開口73の奥部に配設されている。具体的には、インクカートリッジ52の交換作業を容易にするべく、リフィルユニット70は、前面パネル16側に設けられており、ケース75の前面79と前面パネル16とがほとんど同一面となるように配設されている。なお、もちろん、開閉扉72による上記開口73の開閉は妨げられない。
【0074】
リフィルユニット70は、図10に示されるように、ユニット本体74を備えている。インクカートリッジ52は、このユニット本体74に挿抜されるようになっており、インクカートリッジ52がユニット本体74に挿入されたときは、当該ユニット本体74に確実に保持されるようになっている。
【0075】
インクカートリッジ52は、予めインクを貯留しておくためのものである。本実施形態では、リフィルユニット70が4つのインクカートリッジ52を収容可能なように、4つの収容室78がリフィルユニット70に設けられている。各インクカートリッジ52には、そのインクタンク内に、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの各色のインクがそれぞれ貯留されている。インクカートリッジ52の本体は、幅細の直方体状、言い換えれば、幅方向に細く、縦長で、奥行き方向に長い形状に形成されている。ただし、図4や図10から明らかなように、ブラックインクを貯留するインクカートリッジ52(装置正面に向かって左のインクカートリッジ)のみが他のインク色のインクカートリッジ52(装置正面に向かって右3つのインクカートリッジ)に比べて僅かに幅方向に大きく構成されている。これは、一般的に言ってブラックインクの需要が最も多く、大量に消費されるからである。
【0076】
上記ユニット本体74は、インクカートリッジ52が挿抜されるケース75と、ケース75に設けられた扉76と、扉76に設けられた引出部材とを備えている。ケース75は、例えば樹脂からなり、全体としてほぼ直方体状に形成されている。ケース75は、図10には表れていないが、底板部と、この底板部の左右両側に立設された一対の側板部81と、各側板部81間に架け渡すように配置された天板部82とを備えている。このケース75の内部に、インクカートリッジ52が収容される収容室78が各色ごとに区画形成されている。
【0077】
図10に示されるように、ケース75の前面79に開口88が設けられている。この開口88は、各収容室78に対応して設けられている。換言すれば、これら各開口88にそれぞれ連続してケース75内に上記各収容室78が設けられている。上記4つのインクカートリッジ52それぞれは、この開口88を通じて上記前面79側から各収容室78に挿入され、抜脱されるようになっている。なお、各収容室78の内壁面形状は、インクカートリッジ52の外周面形状に対応されている。そのため、各インクカートリッジ52は、がたつくことなく確実にケース75に保持される。
【0078】
スキャナ部3は、原稿カバー30を備えており、図2に示されるように、原稿カバー30は、FBS(Flatbed Scanner)として機能する装置本体10の筐体に対して背面側の蝶番を介して開閉自在に取り付けられている。原稿カバー30は、装置本体10に対して閉じられた状態において、複合機1の上面の一部を構成する。なお、この原稿カバー30に自動原稿搬送機構(ADF:Auto Document Feeder)が設けられていてもよい。
【0079】
原稿カバー30が閉じられることにより、プラテンガラス31は原稿カバー30に覆われる。原稿カバー30の下面には、スポンジ及び白板等からなる押さえ部材(不図示)が配設されている。プラテンガラス31は、原稿が載置されるものであり、例えば透明なガラス板やアクリル板等である。このプラテンガラス31には、A4サイズやリーガルサイズ以下の原稿が載置可能である。A4サイズやリーガルサイズ以下の原稿は、プラテンガラス31上に載置されて原稿カバー30が閉じられることにより、当該原稿がプラテンガラス31上に固定される。この状態で、画像読取ユニット222がプラテンガラス31に沿って走査されることにより、FBSによる原稿の画像読取りが行われる。
【0080】
図11は、スキャナ部3の筐体を構成する上カバーが取り外された状態のスキャナ部3の内部構造を示す平面図である。
【0081】
装置本体10の筐体内に画像読取ユニット222が配設されている。この筐体には、プラテンガラス31を支持するための支持リブ223が、画像読取ユニット222の移動範囲を囲繞するように設けられている。支持リブ223により、プラテンガラス31が水平に支持される。上記上カバーが取り付けられると、この上カバーに設けられた開口からプラテンガラス31が露出する。プラテンガラス31が露出した領域がFBSにおける画像読取領域である。
【0082】
画像読取ユニット222は、コンタクトイメージセンサ(Contact Image Sensor、以下「CIS」という。)32、キャリッジ224、ガイドシャフト225及びベルト駆動機構226から構成されている。画像読取ユニット222にCIS32を採用することにより、イメージセンサが小型軽量化されて、スキャナ部3の小型化及び薄型化が実現される。
【0083】
CIS32は、図示されていないが、LED、集光レンズ、受光素子等を有している。LEDから光が出射されると、その光は、プラテンガラス31(図2参照)上の原稿に照射され、その反射光が集光レンズにより受光素子に集光される。受光素子は反射光の強度に応じた電気信号を出力する所謂光電変換素子であり、反射光強度に応じた電気信号を出力する。CIS32の筐体の長手方向は、画像読取りにおける主走査方向である。この主走査方向の長さ、すなわちCIS32の筐体の長手方向の長さは、CIS32が読取り可能な最大サイズの原稿に対応した長さである。CIS32は、筐体の長手方向を読取ラインとして画像読取りを行い、読取ライン毎の電気信号を出力する。本実施形態では、プラテンガラス31にはA4サイズやリーガルサイズの原稿が載置できるので、CIS32の読取ラインはA4サイズやリーガルサイズの原稿に対応されている。
【0084】
スキャナ部3においてプラテンガラス31に原稿が載置され、読取開始命令が入力されると、この原稿に対して上記CIS32が走査されて画像読取りが行われる。CIS32は、キャリッジ224に搭載されている。キャリッジ224は、ベルト駆動機構226の駆動を受けてガイドシャフト225上をプラテンガラス31に対して平行に移動される。つまり、CIS32は、キャリッジ224とともにプラテンガラス31に平行に移動される。CIS32は、プラテンガラス31を通じて主走査方向の読取ラインで画像読取りを行い、副走査方向へスライド移動される。
【0085】
なお、本実施形態では、スキャナ部3がFBSとして実現されているため、イメージセンサとしてCIS32が採用されているがCCDイメージセンサ (Charge Coupled Device Image Sensor) が採用されてもよいことは勿論である。また、本実施形態では、ADF(Auto Document Feeder)が設けられていないが、これが搭載されていてもよい。さらに、本実施形態では、スキャナ部3はFBSとして機能するが、シートフィーダタイプのものでもよい。
【0086】
図12は、複合機1の制御部101の構成を示すブロック図である。
【0087】
制御部101は、プリンタ部2のみでなくスキャナ部3も含む複合機1の全体動作を制御するものである。
【0088】
制御部101は、同図に示されるように、CPU(Central Processing Unit)102、ROM(Read Only Memory)103、RAM(Random Access Memory)104、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)105を主とするマイクロコンピュータとして構成されており、バス106を介してASIC(Application Specific Integrated Circuit)107に接続されている。
【0089】
ROM103は、複合機1の各種動作を制御するためのプログラム等を格納している。RAM104は、CPU102が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記憶する記憶領域又は作業領域として使用される。また、EEPROM105には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
【0090】
ASIC107は、CPU102からの指令に従ってプリンタ部2を制御する。具体的には、ASIC107は、給紙ローラ25(図8参照)等の回転制御や、キャリッジ38(図8及び図9参照)の往復動の制御、記録用紙にインクを吐出する記録ヘッド39(図8参照)の駆動制御等を行う。
【0091】
また、例えばASIC107は、CPU102からの指令に従ってスキャナ部3を制御する。すなわち、ASIC107は、CIS32のスキャン動作を制御する。
【0092】
また、ASIC107は、CPU102からの指令に従って光センサ40を動作させるための信号を生成する。ASIC107は、この信号を光センサ40に付与して光センサ40の動作制御を行っている。これにより、光センサ40が所定のタイミングで動作し、ASIC107は、受光素子65から電流が出力されるか否かに基づいて、スキャナ部3及び開閉扉72の開閉を検出する。ASIC107により、スキャナ部3又は開閉扉72が開放されていることが検出された場合、制御部101により操作パネル6からの操作入力が禁止される。これにより、スキャナ部3によるスキャン及びプリンタ部2によるプリントが禁止される。
【0093】
また、ASIC107には、複合機1の操作指示を行うための操作パネル6、各種小型メモリカードが挿入されるスロット部7、パソコン等の外部機器とパラレルケーブルやUSBケーブルを介してデータの送受信を行うためのパラレルインタフェース108及びUSBインタフェース109等が接続されている。
【0094】
さらに、ASIC107には、ファクシミリ機能及び電話通信機能を実現するためのNCU(Network Control Unit)117及びモデム(MODEM)118が接続されている。図1に示されるように、装置本体10の接続部14に局線が接続されるようになっている。これにより、当該局線がNCU117に電気的に接続される。
【0095】
本実施形態に係る複合機1では、スキャナ部3及び開閉扉72の開閉が以下のように検出される。図13は、スキャナ部3及び開閉扉72が共に閉じられた状態の複合機1の断面図である。図14は、図13の要部拡大断面図である。
【0096】
図13及び図14に示されるように、第1検出子61は、軸部83によって装置本体10に軸支されている。スキャナ部3が閉じられている状態では、それに対応する第1検出子61の被接部84は、スキャナ部3の第1押圧部34が当接されている。これにより、遮蔽部85が光センサ40の空間63から離脱する方向へ押圧力が付与されている。また、第1検出子61は、遮蔽部85が光センサ40の空間63(図5及び図6参照)に進入する方向へネジリコイルバネ90(図5参照)によって弾性付勢されている。これにより、遮蔽部85が光センサ40の空間63へ進入する方向へ付勢力が付与されている。ここでは、ネジリコイルバネ90による付勢力よりも第1押圧部34による押圧力の方が強いため、第1検出子61の遮蔽部85は、光センサ40の空間63から離脱した位置にある。
【0097】
第2検出子62は、軸部92によって装置本体10に軸支されている。開閉扉72が閉じられている状態では、それに対応する第2検出子62の被接部93は、開閉扉72の第2押圧部77が当接されている。これにより、遮蔽部94が光センサ40の空間63から離脱する方向へ押圧力が付与されている。また、第2検出子62は、遮蔽部94が光センサ40の空間63に進入する方向へネジリコイルバネ100(図5参照)によって弾性付勢されている。これにより、遮蔽部94が光センサ40の空間63へ進入する方向へ付勢力が付与されている。ここでは、ネジリコイルバネ100による付勢力よりも第2押圧部77による押圧力の方が強いため、第2検出子62の遮蔽部94は、光センサ40の空間63から離脱した位置にある。
【0098】
したがって、図13及び図14に示されるように、スキャナ部3及び開閉扉72が共に閉じられている場合、光センサ40の空間63が開放されているので、発光素子64からの光が受光素子65により受光される。これにより、受光素子65によって受光された光の強度に応じた電流が受光素子65から出力されるので、制御部101は、第1検出子61及び第2検出子62により光センサ40の光路が開放されている、換言すれば、スキャナ部3及び開閉扉72が共に閉じられていると判断することができる。
【0099】
図15は、スキャナ部3が開かれ、開閉扉72が閉じられた状態の複合機1の断面図である。図16は、図15の要部拡大断面図である。図15及び図16に示されるように、プリンタ部2のメンテナンス等のためにスキャナ部3が開かれると、それに対応する第1検出子61の被接部84は、スキャナ部3の第1押圧部34が当接されなくなる。これにより、被接部84に付与されていた押圧力が除去される。図5及び図6に示されるように、第1検出子61は、遮蔽部85が光センサ40の空間63に進入する方向へネジリコイルバネ90によって弾性付勢されている。第1検出子61には、第1押圧部34による押圧力が除去されてネジリコイルバネ90による付勢力が作用しているので、付勢力により第1検出子61が回動されて遮蔽部85が光センサ40の空間63へ進入する。その際、ストッパ89が光センサ40の受光素子65に当接して、遮蔽部85が所定の遮断位置に位置決めされる。これにより、発光素子64から受光素子65への光の光路が確実に遮断され、発光素子64からの光が受光素子65により受光されなくなる。
【0100】
図17は、スキャナ部3が閉じられ、開閉扉72が開かれた状態の複合機1の断面図である。図18は、図17の要部拡大断面図である。図17及び図18に示されるように、インクカートリッジ52の交換等のために開閉扉3が開かれると、それに対応する第2検出子62の被接部93は、開閉扉72の第2押圧部77が当接されなくなる。これにより、被接部93に付与されていた押圧力が除去される。図5及び図6に示されるように、第2検出子62は、遮蔽部94が光センサ40の空間63に進入する方向へネジリコイルバネ100によって弾性付勢されている。第2検出子62には、第2押圧部77による押圧力が除去されてネジリコイルバネ100による付勢力が作用しているので、付勢力により第2検出子62が回動されて遮蔽部94が光センサ40の空間63へ進入する。その際、ストッパ98(図6参照)が光センサ40の発光素子64に当接して、遮蔽部94が所定の遮断位置に位置決めされる。これにより、発光素子64から受光素子65への光の光路が確実に遮断され、発光素子64からの光が受光素子65により受光されなくなる。
【0101】
検出部4には、光センサ40を挟んだ対向位置に一対の検出子(第1検出子61及び第2検出子62)が配置されている。そして、各検出子の遮蔽部は、光路を開放する位置において、光路を遮断する位置になる他の遮蔽部と光路方向に対してオーバーラップされたものである。すなわち、図18に示されるように、第1検出子61の遮蔽部85は、光路を開放する位置において、光路を遮断する位置にある第2検出子62の遮蔽部94と光路方向に対してオーバーラップされたものである。換言すれば、光路を開放する位置にある遮蔽部85の下端が、光路を遮断する位置にある遮蔽部94の上端よりも空間63側に突出するように第1検出子61、第2検出子62等が設計されている。また、図16に示されるように、第2検出子62の遮蔽部94は、光路を開放する位置において、光路を遮断する位置にある第1検出子61の遮蔽部85と光路方向にオーバーラップされたものである。換言すれば、光路を開放する位置にある遮蔽部94の下端が、光路を遮断する位置にある遮蔽部85の上端よりも空間63側に突出するように第1検出子61、第2検出子62等が設計されている。これにより、2つの遮蔽部85及び遮蔽部94が回動方向に重なって互いの検出子61,62が回動できなくなることが防止される。
【0102】
図19は、スキャナ部3及び開閉扉72が共に開かれた状態の複合機1の断面図である。図20は、図19の要部拡大断面図である。図19及び図20に示されるように、スキャナ部3が開かれると、それに対応する第1検出子61の被接部84は、スキャナ部3の第1押圧部34が当接されなくなる。これにより、第1検出子61には、第1押圧部34による押圧力が除去されてネジリコイルバネ90による付勢力が作用しているので、付勢力により第1検出子61が回動されて遮蔽部85が光センサ40の空間63へ進入する。その際、ストッパ89が光センサ40の受光素子65に当接して、遮蔽部85が所定の遮断位置に位置決めされる。
【0103】
開閉扉72が開かれると、それに対応する第2検出子62の被接部93は、開閉扉72の第2押圧部77が当接されなくなる。これにより、第2検出子62には、第2押圧部77による押圧力が除去されてネジリコイルバネ100による付勢力が作用しているので、付勢力により第2検出子62が回動されて遮蔽部94が光センサ40の空間63へ進入する。その際、ストッパ98(図6参照)が光センサ40の発光素子64に当接して、遮蔽部94が所定の遮断位置に位置決めされる。
【0104】
このように、スキャナ部3と開閉扉72がどちらか一方でも開かれると、その開動作に連動して第1検出子61と第2検出子62の少なくとも一方が光センサ40の空間63に進入する。これにより、発光素子64から受光素子65への光の光路が遮断される。受光素子65によって受光されていた光が受光されなくなるので、受光素子65から電流が出力されなくなる。制御部101は、この電流変化に基づいて、第1検出子61又は第2検出子62により光センサ40の光路が遮断されたこと、換言すれば、スキャナ部3及び開閉扉72の少なくとも一方が開かれたと判断することができる。制御部101は、スキャナ部3又は開閉扉72が開かれていると判断した場合、プリンタ部2によるプリント及びスキャナ部3によるスキャンを禁止する制御を行う。
【0105】
開かれた回動部材が閉じられると、それに対応する検出子は、回動部材の閉動作に連動して光センサ40の空間63から離脱する。すなわち、スキャナ部3が閉じられた場合には、第1押圧部34によって被接部84が押圧されて第1検出子61が軸部83回りに回動する。これにより、遮蔽部85が光センサ40の空間63から離脱する。また、開閉扉72が閉じられた場合には、第2押圧部77によって被接部93が押圧されて第2検出子62が軸部92回りに回動する。これにより、遮蔽部94が光センサ40の空間63から離脱する。そして、光センサ40の光路は、遮蔽部85及び遮蔽部94の離脱に伴って開放され、発光素子64からの光が受光素子65により受光される。制御部101は、受光素子65からの出力電流に基づいてスキャナ部3及び開閉扉72が閉じられたと判断した場合、プリンタ部2によるプリント及びスキャナ部3によるスキャンを許可する。
【0106】
このように、スキャナ部3及び開閉扉72が共に閉じられていれば光路は開放され、スキャナ部3及び開閉扉72がどちらか一方でも開かれると光路が遮断される。したがって、1つの光センサ40の光路が開放されているか否かに基づいて、個別に開閉される複数の回動部材(ここでは、スキャナ部3及び開閉扉72)の開閉を検出することができる。これにより、複数の回動部材の開閉を複数の光センサでそれぞれ検出する場合に比べて、コストを削減できる。なお、発光素子64と受光素子65との間の空間63は、第1検出子61及び第2検出子62が出入可能な間隔があればよいので、小型の光センサ40でスキャナ部3及び開閉扉72の2つの回動部材の開閉を検出することができる。
【0107】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、以下の形態であってもよい。すなわち、被接部84,93に対する押圧力が除去された場合に、遮蔽部85,94が例えば自重等により空間63に進入する方向へ回動可能であれば、遮蔽部85,94は必ずしも空間63に進入する方向へ弾性付勢されていなくてもよい。ただし、遮蔽部85,94が弾性付勢されている場合、遮蔽部85,94を光センサ40の空間63に確実に進入させて光路を遮断させることができ、チャタリングを抑制して光センサ40の誤検出を防止できるので、遮蔽部85,94は弾性付勢されていることが好ましい。
【0108】
また、遮蔽部85,94が、回動方向に拡がる平面を有する平板形状であり、光センサ40の空間63において各平面が光路とそれぞれ直交する配置で平行に並べられたものである形態について説明したが、遮蔽部85,94は、他の形態のものであってもよい。ただし、遮蔽部85,94が、回動方向に拡がる平面を有する平板形状であり、光センサ40の空間63において各平面が光路とそれぞれ直交する配置で平行に並べられたものである場合、空間63を小さくすることができるので好適である。結果として、光センサ40を小型化することができる。
【0109】
また、本実施形態においては、プリンタ部2の内部にアクセスするためにプリンタ部2の筐体11に対して開閉される扉が、インク交換のために開かれる開閉扉72である形態について説明したが、筐体11に対して開閉される扉は、例えば、ジャム処理のために開閉される扉であってもよい。また、プリンタ部2の開口15を開閉する扉を設け、この扉を複数の回動部材の一つとしてもよい。また、本実施形態においては、プリンタ部2が記録用紙にインクを吹き付けて画像を記録する所謂インクジェットプリンタである形態について説明したが、プリンタ部2は、筐体11に対して開閉される回動部材を有していれば、例えばレーザプリンタ等であってもよい。
【0110】
また、本実施形態においては、1つの光センサ40により2つの検出子61,62の回動状態が光学的に検出される形態について説明したが、検出子の数は2つに限定されるものではなく、3つ以上の検出子の回動状態を検出することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る複合機1の外観構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、複合機1の内部構成を示す断面図である。
【図3】図3は、スキャナ部3がプリンタ部2に対して開かれ、開閉扉72がプリンタ部2の筐体11に対して開かれた状態の複合機1を示す外観斜視図である。
【図4】図4は、プリンタ部2の筐体10に対して開かれた状態の開閉扉72及びその周辺を示す拡大斜視図である。
【図5】図5は、スキャナ部3及び開閉扉72の開閉を検出する検出部4を示す拡大斜視図である。
【図6】図6は、検出部4に配設される光センサ40、第1検出子61、及び、第2検出子62を示す分解斜視図である。
【図7】図7は、スキャナ部3の下面に設けられた第1押圧部34を示す拡大斜視図である。
【図8】図8は、プリンタ部2の主要構成を示す部分拡大断面図である。
【図9】図9は、プリンタ部2の主要構成を示す平面図である。
【図10】図10は、リフィルユニット70の斜視図である。
【図11】図11は、スキャナ部3の筐体を構成する上カバーが取り外された状態のスキャナ部3の内部構造を示す平面図である。
【図12】図12は、複合機1の制御部101の構成を示すブロック図である。
【図13】図13は、スキャナ部3及び開閉扉72が共に閉じられた状態の複合機1の断面図である。
【図14】図14は、図13の要部拡大断面図である。
【図15】図15は、スキャナ部3が開かれ、開閉扉72が閉じられた状態の複合機1の断面図である。
【図16】図16は、図15の要部拡大断面図である。
【図17】図17は、スキャナ部3が閉じられ、開閉扉72が開かれた状態の複合機1の断面図である。
【図18】図18は、図17の要部拡大断面図である。
【図19】図19は、スキャナ部3及び開閉扉72が共に開かれた状態の複合機1の断面図である。
【図20】図20は、図19の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0112】
1・・・複合機(電子機器)
2・・・プリンタ部
3・・・スキャナ部(複数の回動部材の一つ)
4・・・検出部
10・・・装置本体(機器本体)
11・・・筐体
34・・・第1押圧部
40・・・光センサ
61・・・第1検出子(複数の検出子の一つ)
62・・・第2検出子(複数の検出子の一つ)
63・・・空間
64・・・発光素子
65・・・受光素子
72・・・開閉扉(複数の回動部材の一つ)
77・・・第2押圧部
83,92・・・軸部
84,93・・・被接部
85,94・・・遮蔽部
89,98・・・ストッパ
90,100・・・ネジリコイルバネ
99・・・ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器本体に対して開閉される複数の回動部材と、
各回動部材の開閉にそれぞれ連動して回動される複数の検出子と、
検出子の回動状態を光学的に検出する光センサと、を具備してなる電子機器であって、
上記光センサは、空間を隔てて対向配置された発光素子及び受光素子を有し、
上記複数の検出子は、上記光センサの空間にそれぞれ出入され、対応する回動部材の開動作に連動して上記発光素子と上記受光素子間の光路を遮断し、対応する回動部材の閉動作に連動して上記光路を開放するものである電子機器。
【請求項2】
上記検出子は、機器本体に軸支される軸部と、上記回動部材が当接されることにより該軸部回りに回動される被接部と、該被接部とともに上記軸部回りに回動されて上記光センサの空間に出入される遮蔽部と、を有するものである請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
上記検出子は、上記遮蔽部が上記光センサの空間に進入する方向へ弾性付勢されているものである請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
上記各検出子の各遮蔽部は、回動方向に拡がる平面を有する平板形状であり、各遮蔽部は、上記光センサの空間において上記各平面が光路とそれぞれ直交する配置で平行に並べられたものである請求項2又は3に記載の電子機器。
【請求項5】
上記各検出子の各遮蔽部が上記光センサの空間の所定位置に出入するように案内するガイドを有するものである請求項2から4のいずれかに記載の電子機器。
【請求項6】
上記各検出子は、上記光センサを挟んだ対向位置に一対が配置されたものであり、
各検出子の各遮蔽部は、上記光路を開放する位置において、該光路を遮断する位置にある他の遮蔽部と光路方向に対してオーバーラップされたものである請求項4又は5に記載の電子機器。
【請求項7】
上記各検出子の遮蔽部に、上記光センサに当接して遮蔽部を所定の遮断位置に位置決めするストッパが設けられたものである請求項6に記載の電子機器。
【請求項8】
上記機器本体は、原稿の画像データを読み取るスキャナ部と、被記録媒体に画像記録を行うプリンタ部とが上下二段に配置されたものであり、
上記複数の回動部材の少なくとも一つが、上記プリンタ部に対して回動可能に配設された上記スキャナ部であり、
上記複数の回動部材の少なくとも一つが、上記プリンタ部の内部にアクセスするために該プリンタ部の筐体に対して開閉される扉である請求項1から7のいずれかに記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−268864(P2007−268864A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97788(P2006−97788)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】