説明

電子機器

【課題】 アンテナの受信感度をより向上させる。
【解決手段】 機器モジュールには、複数枚の磁性体19が積層されたコア16及び当該コアに巻き付けられたコイル18を有するアンテナ14が備えられている。コア16の両端部のうち少なくとも一方の端部にある延出部17が耐磁板として一体形成されている。耐磁板である延出部17は、複数のモータ20のうち、少なくとも1つの第1のモータ20aを表面側から覆っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の一種として、時刻情報を含む標準電波を受信し自動的に現在時刻を修正する電波時計が知られている。このような電波時計において、標準電波を受信するアンテナとして、磁性材料であるアモルファス金属やフェライト等で構成されたコアにコイルを巻回したアンテナが広く用いられている。
【0003】
一方、モータで指針を駆動する時計の場合、外部磁気によって指針駆動に影響が出て、時計精度が低下することがある。このため、外部磁気を遮断するための耐磁板を時計ケース内に設けることによって時計精度の保持を図ることが行われている。このような耐磁対策は、指針駆動に関して一般の時計と同様の構造を有する電波時計においても、時計精度の保持のために必要とされる。
【0004】
ところで、電波時計は、時刻情報を含む標準電波を受信し、この電波に含まれている時刻情報に基づいて内部時刻を修正し、正確な時刻を表示するものであることから、外部磁気を遮断するために耐磁板でモータ等のムーブメント全体を被覆すると、今度は、標準時刻電波の受信が困難となり、その受信性能が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、従来、モータ等のムーブメントを耐磁板で被覆する一方、この耐磁板に開口を設け、この開口からアンテナにおける磁性体のコイル巻回部を露出させることによって、受信性能の低下を防ぐようにした発明が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の発明であると、耐磁板に開口を設け、その開口からアンテナのコイル巻回部を露出させる構造であるため、時計ケースの広い範囲が耐磁板で被覆されてしまうこととなり、耐磁板でアンテナのコイル巻回部までをも被覆する場合に比べれば、多少は受信感度が向上するものの、耐磁板の存在によって磁束のアンテナへの集束が制限されてしまい、さほどの受信感度の向上は望めなかった。
【0007】
これを解決すべく、近年においては、コイルが巻き付けられる磁性体のうち、コイルが巻回されない部分(モータ被覆部)によって、モータ本体を電子機器の表面側から被覆させた電子機器が開発されている。このモータ被覆部を設けることで、不要な外部磁気がモータ等に到達しにくくするとともに、モータ被覆部分がコイル巻回部と磁気的に連結されているので、モータ本体被覆部分が磁束を引き付けることにより、コイル巻回部の磁束が増大する。
【特許文献1】特開2004−294258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、受信感度の高感度化は常に求められており、上記したものよりも、さらに高めることが望まれている。
本発明の課題は、アンテナの受信感度をより向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明に係る電子機器は、
複数のモータと、
複数枚の磁性体が積層されたコア及び当該コアに巻き付けられたコイルを有するアンテナと、
前記複数のモータのうち、少なくとも1つの第1のモータを表面側から覆う耐磁板とを備え、
前記コアの両端部のうちの少なくとも一方の端部と前記耐磁板とは一体形成されていることを特徴としている。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電子機器において、
前記耐磁板のほかに、前記複数のモータのうちの少なくとも1つの第1のモータ以外の第2のモータを表面側から覆うように配置された別な耐磁板を備えていることを特徴としている。
【0011】
請求項3記載の発明に係る電子機器は、
複数のモータと、
コア及び当該コアに巻き付けられたコイルを有するアンテナと、
前記複数のモータのうち、少なくとも1つの第2のモータを表面側から覆うように配置された耐磁板とを備え、
前記コアの両端のうち、少なくとも一端は、前記第2のモータ以外の第1のモータのうちの少なくとも1つを表面側から覆うように延出していることを特徴としている。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の電子機器において、
前記耐磁板と、前記コアの少なくとも一端から延出された部分との間は、前記コアに流れる磁束の副磁路となる隙間が形成されていることを特徴としている。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の電子機器において、
前記耐磁板と前記コアとは、互いに透磁率が異なる磁性材料で形成されていることを特徴としている。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の電子機器において、
前記コアの両端から延出する延出方向に向けて透磁率が低くなるように形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、複数枚の磁性体が積層されることによりコアが形成されているので、コアを透過する磁束を各磁性体毎に捕捉することができ、受信感度が高められることになる。また、少なくとも1つの第1のモータを表面側から覆う耐磁板とコアの両端部のうちの少なくとも一方の端部とが一体形成されているので、耐磁板が磁束を引き付けて、コアの磁束も増大する。これらのことにより、アンテナの受信感度が従来よりも向上することになる
【0016】
請求項3記載の発明によれば、耐磁板が第1のモータを、コアの少なくとも一端が第2のモータを表面側から覆っているので、不要な外部磁気が第1及び第2のモータには到達しにくくなり、モータの誤作動に起因する機器本体精度の低下を防止することができる。
一方、第2のモータを覆っているのはコアの少なくとも一端であるので、この一端が磁束を引き付けることにより、コイルの磁束が増大する。従って、アンテナの受信感度が向上することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明に係るアンテナを備えた電子機器の一例である電波腕時計の概略構成を表す正面図である。図2は、電波腕時計の分解斜視図である。
これら図1,2に示すように、電波腕時計100には、ステンレスやチタン等の金属製の機器本体2が設けられている。機器本体2の上下両端部、すなわち12時方向側端部及び6時方向側端部には図示しない時計バンドが取り付けられるバンド取り付け部3が形成されている。また、機器本体2の外周部には、時刻合わせの指示などの種々の操作指示が入力される複数の操作ボタン4が設けられている。機器本体2の内部は中空になっており、この中空部分が各種部品を内蔵する収納部21となる。
【0018】
機器本体2の視認側(表側)には、視認側を閉塞するように時計ガラス5が装着されている。また、時計ガラス5よりも視認側の反対側(裏側)には、文字板6が配置されている。
【0019】
また、機器本体2の裏側には、図2に示すように、当該機器本体2の裏面を閉塞する裏蓋23が取り付けられている。
そして、機器本体2における時計ガラス5と文字板6との間には、指針軸7に取り付けられた時針や分針等の指針8が設けられていて、これら指針8は文字板6よりも裏側に設けられた運針部9により運針されるようになっている。
【0020】
運針部9には、駆動用の電子部品10や、電子部品10による動力を各指針8に伝達する歯車等の機構部品11と、電子部品10及び機構部品11を固定して、機器本体2の収納部21内に配置された機器モジュール12と、機器モジュール12の裏側及び側方を覆う枠部材13とが設けられている。
【0021】
以下、機器モジュール12について詳細に説明する。図3は、機器モジュール12の概略構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面図である。
【0022】
図3に示すように、機器モジュール12の表面側には、電波を受信するアンテナ14と、耐磁板15とが設けられている。また、機器モジュール12には、電子部品10としての複数のモータ20とが内蔵されている。
【0023】
アンテナ14は、コア16と、コア16の両端から一体的に延出する延出部17と、コア16に巻き付けられたコイル18とを備えている。このコア16及び延出部17は、逆U字状の複数の磁性体19を積層して形成されている。複数の磁性体19は、機器モジュール12の内側に行くにつれて、両端部が徐々に短くなるように形成されている。これにより、積層後の延出部17の太さは、先方に行くにつれて徐々に細くなる。透磁率は、磁性体19の太い部分の方が細い部分よりも高くなるため、上述したように複数の磁性体19を積層したことによって、透磁率がコア16の両端から延出する延出方向に向けて低くなる。
【0024】
そして、図3に示すようにアンテナ14の延出部17は、複数のモータ20のうち、少なくとも1つの第1のモータ20aを表面側から覆うように、機器モジュール12に配置されている。ここで、本実施形態ではモータ20が3つ搭載されている場合を例示しているが、3つのモータ20のうち、アンテナ14に近い1つを第1のモータ20aとし、これら第1のモータ20aよりもアンテナ14から離れているモータ20を第2のモータ20bとしている。そして、第1のモータ20aを表面側から覆う延出部17は第1のモータ20aに対する耐磁板として機能している。
【0025】
そして、機器モジュール12には、第2のモータ20bを表面側から覆う耐磁板22が、アンテナ14の延出部17間に配置されている。この耐磁板22は、アンテナ14の延出部17とは別体で設けられていて、これらの間には、コア16に流れる磁束の副磁路となる隙間Sが形成されている。
【0026】
そして、コア16、延出部17及び耐磁板22は、互いの透磁率が異なるように、フェライトや、アモルファス、パーマロイなどの磁性材料から形成されている。またはこれらを粉末にしたものを金属に塗布することで形成されている。各部の透磁率は、求める性能に応じて実験やシミュレーションにより最適な磁性材料が使用される。この場合、コア16を最も透磁率を高くしておけば、捕捉した電波がコア16に流れやすくなり、高感度化を図ることができる。
【0027】
次に、本実施形態の作用について説明する。
時刻修正時においては、アンテナ14では、延出部17で捕捉した電波によりコア16中に磁束が通過する。この磁束の通過によってコイル18中に電流が発生する。この際、耐磁板22が第2のモータ20bを表面側から覆っているので、耐磁板22により電波が遮蔽されて、第2のモータ20bに対する電波の影響が抑制されることになる。また、延出部17が第1のモータ20aを表面側から覆っているので、延出部17により電波が遮蔽されて、第1のモータ20aに対する電波の影響が抑制される。
【0028】
以上のように、本実施形態によれば、複数枚の磁性体19が積層されることによりコアが形成されているので、コアを透過する磁束を磁性体毎に捕捉することができ、受信感度が高められることになる。また、第1のモータを表面側から覆う耐磁板としての延出部17と、コアの両端部のうちの少なくとも一方の端部とが一体形成されているので、延出部17が磁束を引き付けて、コア16の磁束も増大する。これらのことにより、アンテナの受信感度が従来よりも向上することになる。
【0029】
また、本実施形態では、耐磁板として機能する延出部17のほかに、第2のモータ20bを表面側から覆うように別な耐磁板22が配置されているので、延出部17で覆えない第2のモータ20bに対する電波の影響を抑制することができる。
【0030】
また、本実施形態では、耐磁板22と、延出部17との間に、コア16に流れる磁束の副磁路となる隙間Sが形成されているので、この副磁路によって過電流が生じることを防止することが可能となる。
【0031】
そして、耐磁板22、延出部17、コア16が、互いに透磁率が異なる磁性材料で形成されているので、コア16に向かって磁束が流れやすくなるように、各部材の透磁率を設定しておけば、より高い感度を得られるとともに、耐磁特性も向上させることが可能となる。
【0032】
そして、延出部17が、延出方向に向けて透磁率が低くなるように形成されているので、延出部17の先端部から基端部、つまりコア16に向かって磁束が流れやすくなるので、受信感度をより高めることができる。
【0033】
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能である。
図4はアンテナの第1の変形例を示す図であり、コア16及び延出部17の形状をコの字とした複数の磁性体で形成した場合を示し、(a)は複数の磁性体の分解斜視図、(b)はコイル18が巻き付けられた状態を表す斜視図である。
この図4に示すように、コア16及び延出部17は、平面が略コ字状の複数の磁性体19を積層して形成されている。複数の磁性体19は、図4における下方、すなわち機器モジュール12の内側に行くにつれて、両端部が徐々に短くなるように形成されている。これにより、積層後の延出部17の太さは、先方に行くにつれて徐々に細くなる。透磁率は、磁性体19の太い部分の方が細い部分よりも高くなるため、上述したように複数の磁性体19を積層したことによって、透磁率がコア16の両端から延出する延出方向に向けて低くなる。
また、本実施形態では、複数の磁性体19が積層されることでコア16と延出部17とが形成された場合を例示して説明したが、コアと延出部とを一体成形してもよい。図5はコア16Aと延出部17Aとを一体成形したアンテナ14Aの概略を示す図であり、(a)は側面図、(b)は斜視図である。この図5に示すように、コア16Aと延出部17Aとを一体成形した場合においても、延出部17Aの太さが、先方に行くにつれて徐々に細くなるように形成していると、延出部17Aの透磁率が延出方向に向けて低くなり、コア16Aに向けて磁束が流れやすくなる。
【0034】
また、本実施形態では、耐磁板22と、延出部17とで複数のモータ20の全てを表面側から覆う場合を例示して説明したが、延出部のみで全てのモータを覆ってもよい。具体的には、図6に示す通り、延出部17Bの少なくとも一方が、全てのモータ20を覆うようにコア16Bの一端部から延出するように形成されることになる。
【0035】
また、上記実施形態では、電子機器として電波腕時計100を例示して説明したが、通信機能を有する電子機器であれば本発明を適用することは可能である。例えば、電子機器としては携帯電話やラジオ、携帯ゲーム機、デジタルオーディオプレーヤーなどが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係るアンテナを備えた電子機器の一例である電波腕時計の概略構成を表す正面図である。
【図2】図1の電波腕時計の分解斜視図である。
【図3】本実施形態の機器モジュールを示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面図である。
【図4】本実施形態のアンテナの第1の変形例を示す図であり、(a)は分解斜視図、(b)は組み立て完了を示す斜視図である。
【図5】本発明に係るアンテナの第2の変形例を示す図であり、(a)は側面図、(b)は斜視図である。
【図6】本発明に係る機器モジュールの変形例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0037】
2 機器本体
10 電子部品
11 機構部品
12 機器モジュール
14 アンテナ
15 耐磁板
16 コア
17 延出部
18 コイル
19 磁性体
20a 第1のモータ
20b 第2のモータ
21 収納部
22 耐磁板
100 電波腕時計(電子機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のモータと、
複数枚の磁性体が積層されたコア及び当該コアに巻き付けられたコイルを有するアンテナと、
前記複数のモータのうち、少なくとも1つの第1のモータを表面側から覆う耐磁板とを備え、
前記コアの両端部のうちの少なくとも一方の端部と前記耐磁板とは一体形成されていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1記載の電子機器において、
前記耐磁板のほかに、前記複数のモータのうちの少なくとも1つの第1のモータ以外の第2のモータを表面側から覆うように配置された別な耐磁板を備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項3】
複数のモータと、
コア及び当該コアに巻き付けられたコイルを有するアンテナと、
前記複数のモータのうち、少なくとも1つの第2のモータを表面側から覆うように配置された耐磁板とを備え、
前記コアの両端のうち、少なくとも一端は、前記第2のモータ以外の第1のモータのうちの少なくとも1つを表面側から覆うように延出していることを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項2又は3記載の電子機器において、
前記耐磁板と、前記コアの少なくとも一端から延出された部分との間は、前記コアに流れる磁束の副磁路となる隙間が形成されていることを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の電子機器において、
前記耐磁板と前記コアとは、互いに透磁率が異なる磁性材料で形成されていることを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の電子機器において、
前記コアの両端から延出する延出方向に向けて透磁率が低くなるように形成されていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−167165(P2008−167165A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354401(P2006−354401)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】