説明

電子機器

【課題】他の電子機器と信号ケーブルで接続されていても、自身の接地端子が確実に接地されていることを検出できる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器1において、接地端子4aと接地検出端子4bとが絶縁体4cを挟んで一体に構成された端子部4を、導体で形成されたネジ5でボディアース9に固定する。端子部4がボディアース9に固定されると、接地検出端子4bが接続された検出線3がローレベルになるので、μcom6において端子部4は接地されたと判断し、検出線3がハイレベルの場合はμcom6において端子部4は接地されていないと判断し、表示部8に接地されていないことを表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内蔵する電子回路を接地するための接地端子が設けられた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
家電製品や車載機器などの電子機器には、安全性の確保や正常動作を保障するために、内蔵する電子回路に接続されるとともに接地端子が先端に設けられた接地線が備えられ、その接地端子を車両のボディ(ボディアース)や大地などの接地部に固定して使用するものがある。
【0003】
接地端子は、例えば図1に示すように、金属などの導体で略U字状に形成されており、この接地端子101に接地線102が接続され、ネジ103でボディアースなどの接地部に接するように固定されて接地線102が設けられた図示しない電子機器(内蔵する電子回路)が接地される。
【0004】
また、電子機器が接地されているか否かを検出する検出装置としては、例えば、特許文献1に記載の検出装置が提案されている。特許文献1では機器側で電子回路上に回路を付加して接地されているかを検出している。
【特許文献1】特開2002−98726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の検出装置は単独の機器での接地検出は確実に行えるが、例えば複数の電子機器が信号ケーブルなどで接続されたシステムを構築する場合、他の機器が接地されていると、信号ケーブルを通して当該機器の電子回路も電気的には接地されてしまい、電子回路上での検出では実際と異なった結果が出てしまう可能性がある。
【0006】
さらに、信号ケーブルを通して他の機器の接地を利用する場合、電気的には接地されているが、信号ケーブルを介して過度な電流が流れることによって信号ケーブル内の接地線の断線やヒューズの溶断などが発生する可能性がある。また、当該機器自体が接地されていないので、内蔵する電子回路上がノイズなどの影響を受け易く設計どおりの性能が発揮できないこともあった。
【0007】
そこで、本発明は、他の電子機器と信号ケーブルで接続されていても、自身の接地端子が確実に接地されていることを検出できる電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の電子機器は、接地部材と、前記接地部材を接地部へ固定する導体からなる固定手段とを有する電子機器であって、前記接地部材は、導体で形成され、接地線と接続された接地端子と、導体で形成され、前記接地端子との間に絶縁体を介して配置された接地検出端子と、で構成され、前記接地部材が前記固定手段により前記接地部へ固定されるときに前記接地検出端子に生じる信号レベルの変動を前記接地検出端子に接続された検出線を介して検出する検出手段を有することを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態にかかる電子機器を説明する。本発明の一実施形態にかかる電子機器は、接地部材が導体で形成された接地端子と、同じく導体で形成されるとともに接地端子との間に絶縁体を介して配置された接地検出端子とで構成されて、検出手段が接地部材が固定手段により接地部へ固定されるときに接地検出端子に生じる信号レベルの変動を接地検出端子に接続された検出線を介して検出しているので、接地検出端子が接続された検出線の信号レベルに応じて検出手段が接地されているか否かを検出できるために、当該機器が他の機器と信号ケーブルなどで接続されていても他の機器の接地を自身の接地として誤検出してしまうことが防止でき、自身の接地端子が確実に接地されているか否かを検出することができる。
【0010】
また、接地端子と接地検出端子とは、絶縁体を介して互いに電気的に絶縁されるように一体に設けられていてもよい。このようにすることにより、接地部材が一体の部品となるために取り扱いが楽になる。
【0011】
また、検出手段が検出した結果を表示する表示手段を備えてもよい。このようにすることにより、検出手段が検出した結果をユーザ等に通知して正しく接地するなどの処置を施させることができる。
【0012】
また、検出手段が、接地検出端子が接地されていない際に、検出線の信号レベルをハイレベルに維持するプルアップ抵抗を備えてもよい。このようにすることにより、接地されていない場合、つまり、検出手段の入力が浮いている場合は信号レベルをハイレベルに維持して検出手段の入力を安定させるとともに検出手段に接地されていないことを確実に検出させることができる。
【実施例】
【0013】
本発明の一実施例にかかる電子機器1を図2乃至図4を参照して説明する。電子機器1は、図2に示すように接地腺2と、検出線3と、端子部4と、ネジ5と、μcom6と、プルアップ抵抗7と、表示部8と、を備えている。
【0014】
接地線2は、一方の端部に後述する端子部4の接地端子4aが接続されているとともに、他方の端部が図示しない電子機器1が内蔵する電子回路の接地線に接続されている。
【0015】
検出線3は、一方の端部に後述する端子部4の接地検出端子4bが接続されているとともに、他方の端部がμcom6に接続されている。
【0016】
接地部材としての端子部4は図2や図3に示すように、金属などの導体で形成された接地端子4aおよび接地検出端子4bと、絶縁体4cと、から構成されている。接地端子4aおよび接地検出端子4bは、略U字状に形成されており絶縁体4cを挟んで一体に構成されている。すなわち、端子部4は、接地端子4aと、接地端子4aと絶縁体4cを介して配置された接地検出端子4bと、で構成されている。なお、接地端子4aおよび接地検出端子4bは略U字状に限らず円環状など後述するネジ5で固定することができる形状であればよい。
【0017】
絶縁体4cは、ゴムや樹脂などで接地端子4aおよび接地検出端子4bに挟まれるように形成されているとともに、接地端子4aおよび接地検出端子4bのU字の内周部も覆うように内周部分4c1が形成されている。なお、絶縁体4cの内周部分4c1は、接地端子4aおよび接地検出端子4bの表面よりも凹んでおり、ネジ5の座面やボディアース9に接触しないように形成されている。絶縁体4cは、このように形成することによって、接地端子4aと接地検出端子4bとを互いに電気的に絶縁される。
【0018】
固定手段としてのネジ5は、金属などの導体で形成され、端子部4をボディアース9に接するように固定する。なお、固定手段としてネジ5に限らずリベットなどを用いてもよい。要するに端子部4を固定するとともにボディアース9に接しない側の接地端子4aを電気的にボディアース9に接続できる部材であればよい。
【0019】
検出手段としてのμcom6は、CPU(Central Processing Unit)やメモリなどを内蔵したマイクロコンピュータであり、本実施例では検出線3の他方の端部が接続されて、端子部4が接地されているか否か(ボディアース9に確実に固定されているか否か)を検出する。
【0020】
プルアップ抵抗7は、一方の端部が検出線3のμcom6近傍に接続され、他方の端部が電源電圧Vccに接続されており、端子部4が接地されていない際に検出線3の信号レベルをハイレベルに維持するために設けられた抵抗である。
【0021】
表示手段としての表示部8は、μcom6で検出した結果をユーザ等に表示して通知するために設けられており、液晶ディスプレイや蛍光表示管などで構成されている。また、表示部8は、接地されていないことを検出したときのみ点滅または点灯するLED(Light Emitting Diode)などによるインジケータとしてもよい。
【0022】
ボディアース9は、例えば車両のボディなどの導体で構成され、電子機器1が動作する基準電位となっている。車両などの移動体で無い場合は大地や大地に接地された導体でもよい。
【0023】
本実施例では、端子部4がネジ5でボディアース9に確実に固定されて、接地検出端子4bがボディアース9に接すると検出線3はローレベルになる。接地検出端子4bがボディアース9に接すると接地端子4aも共締めされてネジ5の座面が接地端子4aに接するため、μcom6は、検出線3がローレベルであることを検出すると端子部4(接地端子4a)が接地されたと判断する。
【0024】
接地検出端子4bがボディアース9に接していない場合は、検出線3がプルアップ抵抗7の影響によりハイレベルになる。μcom6は、検出線3がハイレベルであることを検出すると、端子部4が接地されていないと判断して表示部8に正しく接地されていないことを警告表示する。
【0025】
本実施例によれば、端子部4が、接地端子4aと接地検出端子4bとが絶縁体4cを挟んで一体に構成され、導体で形成されたネジ5で固定されるので、接地部4が確実にネジ5によって接地されたか否かを接地検出端子4bが接地されたか否かで判断することができる。また、接地端子4aと接地検出端子4bとが絶縁体4cを挟んで一体に構成されているので端子部4が従来とほぼ同等に取り扱うことができる。
【0026】
また、接地端子4aと接地検出端子4bとが絶縁体4cを挟んでいるので、例えば図4に示すように他の接地された機器10と信号ケーブル11に接続されていても自身の接地端子4aが接地されているか否かを確実に検出することができる。図4の場合、電子機器1が接地されていなくても電気的には他の接地された機器10の接地によって信号ケーブルの接地線を通して電子機器1の回路も電気的に接地されるが、この場合信号ケーブル11に過大な電流が流れることがあり、信号ケーブル11内の接地線の断線やヒューズの溶断などが発生する可能性がある。さらに、電子機器1の回路がノイズなどの影響を受け易く設計どおりの性能が発揮できないこともある。したがって、接地検出端子4bが接地されていることをμcom6で検出することで、このような信号ケーブル11内の接地線の断線やヒューズの溶断およびノイズによる性能低下などを防止することができる。
【0027】
また、μcom6は、端子部4が接地されていない場合に表示部8に接地されていないことを警告表示しているので、ユーザ等に正しく接地するなどの処置を施させることができる。
【0028】
また、検出線3にはプルアップ抵抗7が接続されているので、端子部4が接地されていない場合に検出線3をハイレベルにすることができ、μcom6の入力を安定させるとともにμcom6に接地されていないことを確実に検出させることができる。
【0029】
なお、上述した実施例では、端子部4は絶縁体4cを挟んで接地端子4aと接地検出端子4bとが一体に構成されていたが、それぞれ別に構成して、接地端子4a、絶縁体4c、接地検出端子4bの順番に上から重ねてからネジ5で固定しても良い。
【0030】
前述した実施例によれば、以下の電子機器1が得られる。
【0031】
(付記1)端子部4と、端子部4をボディアース9へ固定する導体からなるネジ5とを有する電子機器1であって、
端子部4は、導体で形成され、接地線2と接続された接地端子4aと、
導体で形成され、接地端子4aとの間に絶縁体4cを介して配置された接地検出端子4bと、で構成され、
端子部4がネジ5によりボディアース9へ固定されるときに接地検出端子4bに生じる信号レベルの変動を接地検出端子4bに接続された検出線3を介して検出するμcom6を有することを特徴とする電子機器1。
【0032】
この電子機器1によれば、接地検出端子が接続された検出線3を介してμcom6が接地されていることを検出できるために、電子機器1が他の機器と信号ケーブルなどで接続されていても自身の端子部4が確実に接地されていることを検出できる。
【0033】
なお、前述した実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施例に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】従来技術にかかる接地端子を示した斜視図である。
【図2】本発明の一実施例にかかる電子機器の構成図である。
【図3】図2に示された電子機器装置の端子部を示した斜視図である。
【図4】他の機器と接続された場合を示す構成図である。
【符号の説明】
【0035】
1 電子機器
2 接地線
3 検出線
4 端子部(接地部材)
4a 接地端子
4b 接地検出端子
4c 絶縁体
5 ネジ(固定手段)
6 μcom(検出手段)
7 プルアップ抵抗
8 表示部(表示手段)
9 ボディアース(接地部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地部材と、前記接地部材を接地部へ固定する導体からなる固定手段とを有する電子機器であって、
前記接地部材は、導体で形成され、接地線と接続された接地端子と、
導体で形成され、前記接地端子との間に絶縁体を介して配置された接地検出端子と、で構成され、
前記接地部材が前記固定手段により前記接地部へ固定されるときに前記接地検出端子に生じる信号レベルの変動を前記接地検出端子に接続された検出線を介して検出する検出手段を有することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記接地端子と前記接地検出端子とは、絶縁体を介して互いに電気的に絶縁されるように一体に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記検出手段が検出した結果を表示する表示手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記検出手段は、前記接地検出端子が接地されていない際に、前記検出線の信号レベルをハイレベルに維持するプルアップ抵抗を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−108874(P2010−108874A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282218(P2008−282218)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】