説明

電子機器

【課題】ディスプレイデバイスの背面に対向して位置する回路基板上にアンテナ(放射素子)を配置する場合に指向性パターンの改善を図る。
【解決手段】ディスプレイデバイス12は、電子機器1のケース2内に配置され、開口20を通じて外部から視認可能な表示面120、及び導電性のシールドケース121で覆われた背面を有する。回路基板3は、ディスプレイデバイス12の背面に対向するようにケース2内に配置されている。放射素子101は、電子機器1の正面側から見た場合にディスプレイデバイス12と重ならないフレーム領域に位置するように回路基板3上に配置され、無線通信回路11と給電線により接続されている。寄生素子102は、その少なくとも一部が、電子機器1の正面側から見た場合にフレーム領域に位置するとともに、電子機器1の側面側から見た場合にディスプレイデバイス12の背面より表示面120側に位置するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナを有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話端末及びポータブルコンピュータ等の携帯型の電子機器の分野においても、寄生素子(無給電素子)を有するアンテナを用いることが知られている(例えば特許文献1及び2を参照)。寄生素子は、給電線と接続された放射素子(寄生素子)から使用周波数の電気長1/4波長ほど離間して配置される。寄生素子は、導波器又は共振器として機能し、アンテナの指向性パターンの改善、高利得化、又は広帯域化に寄与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−243916号公報
【特許文献2】特開2009−004875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
携帯型の電子機器の場合、ユーザの持ち方が限定されていないことが多い。また、電子機器は、鞄に入れられている間も送受信を継続的に行う場合がある。例えば、電子機器は、電子機器がどの方向を向いているかに関わらず、GPS(Global Positioning System)衛星からの電波を継続的に受信することが要求される場合がある。このような電子機器に搭載されるアンテナは、指向性の少ない指向性パターンを持つことが要求される。
【0005】
一方で、電子機器のサイズの小型化及び薄型化に伴い、電子機器内にアンテナを配置する際の実装上の制約が増大している。この実装上の制約は、特に、電子機器の主要な表面の大部分がディスプレイデバイスの表示面によって占有されている電子機器、例えばスマートフォン及びタブレットPC、において顕著である。この実装上の制約に対処するために、本願の発明者は、無線通信回路(i.e. トランスミッタ、レシーバ、又はトランシーバ)及びマイクロプロセッサ等の半導体電子部品が実装されるプリント回路基板上にアンテナの放射素子(給電素子)を配置する構成について検討を行った。
【0006】
プリント回路基板上に放射素子を配置する場合、プリント配線パターンを利用してアンテナを形成してもよいが、実装面積を小さくするためにはチップアンテナの利用が効果的である。チップアンテナは、プリント回路基板の表面に実装できるようにモジュール化されたアンテナ製品であり、比誘電率及び比透磁率の大きい(つまり波長短縮効果の大きい)素材を基材として利用することで小サイズ化が図られている。
【0007】
しかしながら、上述したスマートフォン及びタブレットPC等の電子機器においては、ディスプレイデバイスの背面と対向する位置にプリント回路基板が配置されることが一般的である。ディスプレイデバイスの背面及び側面は、金属製のシールドケースによって覆われている。このため、放射素子をプリント回路基板に配置する場合、放射素子から放射された電界がディスプレイデバイスのシールドケースによって歪められてしまい、指向性パターンが劣化する問題が生じることが分かった。
【0008】
この問題は、ディスプレイデバイスのシールドケースがアンテナ(導波器または反射器)として機能し、シールドケースから放射される電界が相対的に強くなるために生じると考えられる。この結果、シールドケースが存在していない方向に向けて放射される電界が相対的に弱くなってしまう。例えば、GPS及び無線LAN等のギガヘルツ帯又はこれより高周波数帯を用いる場合、ディスプレイデバイスの背面を覆うシールドケースの一辺の長さ又は周囲長は、使用周波数における電気長1/4波長より長くなるため、この問題が発生し得る。さらに、プリント回路基板に設けられたグランド配線パターンもアンテナとして機能し、指向性パターンに影響を与える。
【0009】
本発明は、本願の発明者による上述した検討に基づいてなされたものであって、ディスプレイデバイスの背面に対向して位置する回路基板上にアンテナ(放射素子)を配置する場合に指向性パターンの改善を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、電子機器を含む。当該電子機器は、ケース、ディスプレイデバイス、回路基板、並びに第1及び第2のアンテナ素子を有する。前記ケースは、開口を有する。前記ディスプレイデバイスは、前記ケース内に配置され、前記開口を通じて外部から視認可能な表示面、及び導電性のシールド材で覆われた背面を有する。前記回路基板は、前記ディスプレイデバイスの前記背面に対向するように前記ケース内に配置され、無線通信回路を含む電子部品が実装されている。前記第1のアンテナ素子は、前記表示面に垂直な前記電子機器の正面側から見た場合に前記ディスプレイデバイスと重ならないフレーム領域に位置するように前記回路基板上に配置され、前記無線通信回路と給電線により接続されている。前記第2のアンテナ素子は、前記正面側から見た場合にその少なくとも一部が前記フレーム領域に位置するとともに、前記電子機器の側面側から見た場合に前記少なくとも一部が前記ディスプレイデバイスの前記背面より前記表示面側に位置するように配置された無給電の寄生素子である。
【0011】
上述した本発明の一態様において、前記第1のアンテナ素子は細長の形状を有し、前記第2のアンテナ素子の前記少なくとも一部は、前記第1のアンテナ素子の長手方向と実質的に平行に配置されてもよい。
【0012】
上述した本発明の一態様において、前記フレーム領域は、前記開口を囲む4辺を有してもよい。また、前記第2のアンテナ素子は、L字型の形状を有し、前記正面側から見た場合に前記フレーム領域の隣接する2辺に跨って配置されてもよい。
【0013】
上述した本発明の一態様において、前記第2のアンテナ素子は、前記ケースの外側表面に接して設けられてもよい。
【0014】
上述した本発明の一態様において、前記ケースは、前記開口を囲むフレーム部材を備えてもよい。また、前記第2のアンテナ素子の前記少なくとも一部は、前記フレーム部材のうち前記上面視において前記第1のアンテナ素子の上方に位置する部分に接して設けられてもよい。
【0015】
上述した本発明の一態様において、前記第2のアンテナ素子は、前記ケースに貼り付けられた導電性フィルムであってもよい。
【0016】
上述した本発明の一態様において、前記電子機器は、前記ケースのうち少なくとも前記第2のアンテナ素子が設けられた部分を覆う誘電性のカバー部材をさらに有してもよい。
【0017】
上述した本発明の一態様において、前記第1のアンテナ素子は、前記回路基板の2つの主面のうち、前記ディスプレイデバイスと対向しない面に配置されてもよい。
【0018】
上述した本発明の一態様において、前記第1のアンテナ素子と前記第2のアンテナ素子の間隔は、使用周波数における電気長1/4波長以下とするとよい。
【0019】
上述した本発明の一態様において、前記第2のアンテナ素子の長手方向の長さは、前記使用周波数における電気長1/2波長以下とするとよい。
【発明の効果】
【0020】
上述した本発明の一態様によれば、ディスプレイデバイスの背面に対向して位置する回路基板上にアンテナ(放射素子)を配置する場合に指向性パターンの改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電子機器の機能的な構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る電子機器の外観構成例を示す投影図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る電子機器の(A)正面透視図及び(B)断面透視図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る電子機器の外観構成例を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る電子機器のアンテナ指向性(yz面)の測定結果を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る電子機器のアンテナ指向性(zx面)の測定結果を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る電子機器のアンテナ指向性(xy面)の測定結果を示す図である。
【図8】比較例に係る電子機器のアンテナ指向性(yz面)の測定結果を示す図である。
【図9】比較例に係る電子機器のアンテナ指向性(zx面)の測定結果を示す図である。
【図10】比較例に係る電子機器のアンテナ指向性(xy面)の測定結果を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態2に係る電子機器の(A)正面透視図及び(B)断面透視図である。
【図12】本発明の実施の形態2に係る電子機器のアンテナ指向性(yz面)の測定結果を示す図である。
【図13】その他の実施の形態に係る電子機器の(A)正面透視図及び(B)側面透視図である。
【図14】その他の実施の形態に係る電子機器の(A)正面透視図及び(B)側面透視図である。
【図15】その他の実施の形態に係る電子機器の(A)正面透視図及び(B)断面透視図である。
【図16】その他の実施の形態に係る電子機器の(A)正面透視図及び(B)側面透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0023】
<発明の実施の形態1>
本実施の形態にかかる電子機器1は、無線通信回路を有する可搬型の電子機器である。電子機器1は、例えば、スマートフォン又はタブレットPCである。始めに図1及び図2(A)〜(C)を参照して、電子機器1の機能及び外観の概略的な説明を行う。
【0024】
図1は、電子機器1の機能的な構成例を示すブロック図である。図1において、無線通信回路11は、無線トランスミッタ、無線レシーバ、又は無線トランシーバである。つまり、無線通信回路11は、無線通信に関するプロトコル処理および信号処理を行い、アンテナ10を用いて無線信号の送信及び受信の少なくとも一方を行う。無線通信回路11は、例えば、GPS受信機チップ、又は無線LAN(Local Area Network)チップである。
【0025】
ディスプレイデバイス12は、画像表示可能な表示面を有する。ディスプレイデバイス12の具体例は、LCD(Liquid Crystal Display)、及び有機EL(Electroluminescence)ディスプレイを含む。ディスプレイデバイス12は、表示パネル(e.g. 液晶パネル又は有機ELパネル)と、表示パネルを駆動するドライバを含む半導体電子部品が搭載された回路基板とが導電性のシールドケース内に収容された構造を有する。つまり、ディスプレイデバイス12の表示面に対向する背面と、ディスプレイデバイス12の側面は、導電性のシールド材によって覆われている。
【0026】
入力デバイス13は、電子機器1に対するユーザの操作を受け付けるためのデバイスである。入力デバイス13の具体例は、物理的な実体のある操作ボタン及びスイッチ、タッチパネル、マイクロフォン、並びにカメラを含む。入力デバイス13がタッチパネルである場合、当該タッチパネルは、ディスプレイデバイス12の表示面上に一体的に配置される。
【0027】
マイクロプロセッサ14は、OS(Operating System)及びアプリケーションプログラムを実行し、電子機器1の全体制御、ユーザが希望する機能の提供を行う。OS及びアプリケーションプログラムは、ROM(Read Only Memory)16又はフラッシュメモリ17からRAM(Random Access Memory)15にロードされる。マイクロプロセッサ14は、RAM15にロードされたプログラムを実行する。
【0028】
上述した無線通信回路11、マイクロプロセッサ14、RAM15、ROM16、及びフラッシュメモリ17を含む半導体電子部品は、1つのプリント配線基板上に一体的に配置されてもよいし、複数のプリント配線基板上に分散して配置されてもよい。
【0029】
図2(A)〜(C)は、電子機器1の外観構成例を示す投影図である。図2(A)は、ディスプレイデバイス12の表示面120側から見た正面図である。また、図2(B)は左側面図、図2(C)は上面図である。図2に示されている3つのボタン130は、入力デバイス13の具体例である。ケース2は、開口20と、開口20を囲むフレーム部材21〜24を有している。ケース2は、例えば、合成樹脂、又は炭素繊維強化樹脂によって形成されている。ケース2は、フレーム部材21〜24によって開口20を有するキャビティが形成されている。ケース2のキャビティ内には、ディスプレイデバイス12と、無線通信回路11を含む半導体電子部品が搭載された回路基板が配置される。
【0030】
より具体的に述べると、ディスプレイデバイス12は、開口20を通じて外部から表示面120が視認できるようにケース2のキャビティ内に配置されている。なお、図2では記載が省略されているが、表示面120は、可視光を透過するガラス又は合成樹脂によって形成されたフロントパネル(不図示)によって保護されてもよい。無線通信回路11を含む半導体電子部品が搭載された回路基板は、ディスプレイデバイス12の背面に対向するようにケース2のキャビティ内に配置される。
【0031】
続いて以下では、本実施の形態のアンテナ10の構成及び配置の詳細について説明する。アンテナ10は、放射素子(給電素子)101と無給電の寄生素子102を含む。
【0032】
放射素子101は、無線通信回路11が搭載されたプリント回路基板に配置される。放射素子101は、回路基板の表面に実装されるチップアンテナでもよいし、プリント配線によって回路基板に形成されたアンテナパターンであってもよい。放射素子101は、回路基板上に配置された無線通信回路11と基板上のパターンで形成された給電線によって接続されている。放射素子101の偏波特性は、直線偏波でもよいし、円偏波でもよい。
【0033】
寄生素子102は、放射素子101から離間して配置される。寄生素子102は、金属などの導電性材料で形成された薄板(例えば、板金)又はフィルム(例えば、金属を薄くして、のりをつけた金属テープ)とすればよい。放射素子101と寄生素子102の間隔は、所望の指向性パターンが得られるように適宜調整すればよい。具体的には、寄生素子102が導波器として効果的に機能するように、放射素子101と寄生素子102の間隔は、使用周波数の電気長1/4波長、又はそれ以下とすればよい。
【0034】
次に、放射素子101及び寄生素子102とディスプレイデバイス12の位置関係について説明する。図3(A)及び(B)は、放射素子101及び寄生素子102の配置の具体例を示す図である。図3(A)は、電子機器1の正面方向から見た透視図である。図3(A)では、ケース2、ディスプレイデバイス12、及びボタン130が破線で示されており、ケース2及びディスプレイデバイス12の下方に位置する回路基板3、放射素子101、及び寄生素子102が図示されている。図3(B)は、図3(A)の切断線Iでケース2を切断した場合のキャビティ内を示す断面透視図である。なお、図3(B)ではケース2の図示を省略している。図3(B)に示されたシールドケース121は、ノイズ防止のために、ディスプレイデバイス12の側面及び背面を覆う導電性のシールド材である。
【0035】
回路基板3は、無線通信回路11、マイクロコントローラを含む半導体電子部品が実装されたプリント回路基板である。放射素子101は、回路基板3に配置され、無線通信回路11と給電線30によって接続されている。図3(A)及び(B)の例では、放射素子101は、回路基板3に表面実装されるチップアンテナである。図3(A)から明らかであるように、放射素子101は、表示面120に垂直な電子機器1の正面側から見た場合にディスプレイデバイス12と重ならないフレーム領域に配置されている。具体的には、放射素子101は、図3(A)の紙面左側に位置するフレーム部材21の下方に位置している。
【0036】
寄生素子102は、その少なくとも一部がフレーム領域(つまり、正面側から見た場合にディスプレイデバイス12と重ならない領域)に配置されている。さらに、図3(B)から明らかであるように、寄生素子102は、電子機器1の側面側から見た場合に、少なくとも一部がディスプレイデバイス12のシールドケース121で覆われた背面より上方の表示面120側に位置するように配置されている。
【0037】
上述したように、本実施の形態では、放射素子101及び寄生素子102をフレーム領域に配置しているため、放射素子101及び寄生素子102とシールドケース121との距離を遠ざけることができる。このため、放射素子101とシールドケース121の結合によってシールドケース121が導波器又は反射器として動作することを抑制できる。加えて、本実施の形態では、寄生素子102をディスプレイデバイス12の背面より上方の表示面120側に位置するように配置している。このため、導波器として機能する寄生素子102は、図3(A)の紙面左側方向に向けて効率よく電界を放射できる。したがって、電子機器1は、図3(A)の紙面左側方向において、電子機器1の正面、側面、及び背面を含む一様な指向性パターンを得ることができる。
【0038】
上述した放射素子101及び寄生素子102とディスプレイデバイス12との位置関係に加えて、指向性パターンの改善のためにさらに以下のように工夫してもよい。まず、上述した寄生素子102の少なくとも一部は、細長形状を持つ放射素子101の長手方向と実質的に平行に配置するとよい。これにより、放射素子101と寄生素子102との結合を強めることができる。なお、「実質的に平行」とは、厳密に平行でなくてもよいことを意味する。
【0039】
また、寄生素子102の長さは、使用周波数の電気長1/2波長程度とすればよい。なお、一般的に、寄生素子の電気長が1/2波長よりわずかに(概ね5%程度)短い場合に寄生素子が導波器として効果的に機能することが知られている。したがって、本実施の形態に係る寄生素子102の長さは、使用周波数の電気長1/2波長よりわずかに(概ね5%程度)短くするとよい。
【0040】
また、放射素子101は、図3(B)に示すように、回路基板3の2つの主面のうちディスプレイデバイス12の背面と対向しない面に配置するとよい。これにより、放射素子101とディスプレイデバイス12の背面を覆うシールドケース121との距離をさらに離すことができるため、放射素子101とシールドケース121の結合を弱めることができる。
【0041】
また、寄生素子102は、ケース2(つまりフレーム部材21)の内側又は外側に接するように配置されてもよい。より具体的に述べると、寄生素子102は、導電性フィルム又は導電性の薄板をケース2(つまりフレーム部材21)の内側又は外側に貼り付けることによって配置してもよい。図4は、寄生素子102として導電性フィルムを使用し、寄生素子102をケース2の外側に貼り付けた状態を示している。図4に示すように、寄生素子102のうち金属テープをケース2の外側に貼り付ける形態を採用することによって、作業性が向上し、かつ指向性パターンの微調整が容易となる。また、図4に示すように、金属テープを用いることで、寄生素子102の厚みを抑えることができるため、電子機器1の限られたスペースに寄生素子102を配置できる。さらにまた、金属テープを用いることで、様々な形状に加工することができ、凹凸面への貼り付けもできるため、作業性がより一層向上し、かつ指向性パターンの微調整がより一層容易となる。
【0042】
なお、寄生素子102をケース2の外側に貼り付ける場合、図4に示すように、カバー25によって寄生素子102を覆うとよい。カバー25は、ケース2のうち少なくとも寄生素子102が設けられた部分を覆うことができるように構成されている。これにより、寄生素子102の損傷を防止できる。
【0043】
さらに、カバー25は合成樹脂等の誘電性材料によって形成するとよい。これにより、アンテナ10(放射素子101及び寄生素子102)を受信アンテナとして使用する場合に、カバー25による波長短縮効果が得られる。このため、寄生素子102が露出した状態とする場合に比べて寄生素子102の長さを短くすることができ、寄生素子102の配置に要するスペースを削減できる。
【0044】
続いて以下では、寄生素子102を設けることによる指向性パターンの改善効果を測定結果に基づいて説明する。ここでは、アンテナ10をGPS受信アンテナとした場合の測定結果を示す。使用周波数は、GPS信号に対応する1575.42MHzである。放射素子101は、電気長1/4波長のヘリカル構造を持つチップアンテナである。寄生素子102は、図4に示すように、導電性フィルムをフレーム部材21の外側に貼り付けられた導電性フィルムである。また、カバー25によって寄生素子102を覆う構成を採用した。いま、使用周波数における1/2波長は約95mmであるが、カバー25及び導電性フィルム材による波長短縮効果が得られるため、寄生素子102の長さは49mmとした。
【0045】
図5(B)及び(C)は、本実施の形態にかかる電子機器1の指向性パターンを示す図である。図5(B)及び(C)は、表示面120に対して水平なyz面(図5(A))の測定結果を示している。図5(B)は垂直偏波の測定結果、図5(C)は水平偏波の測定結果である。
【0046】
同様に、図6(B)及び(C)は、本実施の形態にかかる電子機器1の指向性パターンを示す図である。図6(B)及び(C)は、表示面120に対して垂直なzx面(図6(A))の測定結果を示している。図6(B)は垂直偏波の測定結果、図6(C)は水平偏波の測定結果である。
【0047】
図7(B)及び(C)は、本実施の形態にかかる電子機器1の指向性パターンを示す図である。図7(B)及び(C)は、表示面120に対して垂直なxy面(図7(A))の測定結果を示している。図7(B)は垂直偏波の測定結果、図7(C)は水平偏波の測定結果である。
【0048】
一方、図8(B)及び(C)は、寄生素子102を有していない比較例の指向性パターンを示す図である。比較例は、寄生素子102を有していないことを除いて、電子機器1と同じ構成を持つ。図8(B)及び(C)は、表示面120に対して水平なyz面(図8(A))の測定結果を示している。図8(B)は垂直偏波の測定結果、図8(C)は水平偏波の測定結果である。
【0049】
同様に、図9(B)及び(C)は、比較例の指向性パターンを示す図である。図9(B)及び(C)は、表示面120に対して垂直なzx面(図9(A))の測定結果を示している。図9(B)は垂直偏波の測定結果、図9(C)は水平偏波の測定結果である。
【0050】
図10(B)及び(C)は、比較例の指向性パターンを示す図である。図10(B)及び(C)は、表示面120に対して垂直なxy面(図10(A))の測定結果を示している。図10(B)は垂直偏波の測定結果、図10(C)は水平偏波の測定結果である。
【0051】
寄生素子102による効果は、図5(C)に示したzx面の水平偏波の測定結果において顕著である。図5(C)と図8(C)を比べると、図5(C)では、300度から0度方向の利得が5dB程度向上している。また、寄生素子102による効果は、図6(B)に示したzx面の垂直偏波の測定結果においても顕著である。図6(B)と図9(B)を比べると、図6(B)では、0度から60度方向、及び300度から0度方向の利得が4〜5dB程度向上しており、指向性パターンが改善されている。
【0052】
<発明の実施の形態2>
上述した発明の実施の形態1では、図3(A)及び(B)に示したように、寄生素子102を直線形状とする具体例を示した。本実施の形態では、寄生素子102の形状をL字形とした変形例について説明する。なお、本実施の形態にかかる電子機器4の構成は、寄生素子102の形状を除いて、実施の形態1で説明した電子機器1と同様である。
【0053】
図11(A)及び(B)は、本実施の形態にかかる電子機器4における放射素子101及び寄生素子102の配置の具体例を示す図である。図11(A)に示すように、本実施の形態の寄生素子102は、L字形状を有し、正面側から見た場合に表示面120を囲むフレーム領域の隣接する2辺に跨って配置されている。図11(A)の例では、寄生素子102は、隣接する2辺のフレーム部材21及び22によって形成されるフレーム領域に跨って配置されている。なお、実施の形態1でも述べたように、寄生素子102の全体がフレーム領域に位置している必要は無く、その少なくとも一部がフレーム領域に位置していればよい。
【0054】
図12(B)は、電子機器4の指向性パターンを示す図である。図12(B)は、表示面120に対して水平なyz面(図12(A))の測定結果を示している。つまり、図12(B)は、実施の形態1の図5(C)に対応する。図12(B)と図5(C)を比べると、図12(B)では、300度から0度方向の利得がさらに5dB程度向上している。
【0055】
上述したように、L字形状の寄生素子102をフレーム領域の2辺に跨って配置することで、指向性パターンをより一層改善することができる。なお、本実施の形態で説明したL字形状の寄生素子102は、図11(A)のように直角に折り曲げた形状だけでなく、折り曲げ角度が90度より大きい素子及び小さい素子を含む。さらに、本実施の形態で説明したL字形状の寄生素子102は、折り曲げ部分が曲線とされた素子も含む。
【0056】
<その他の実施の形態>
図13〜図16は、寄生素子102の形状に関するその他のバリエーションを示している。図13(A)及び(B)に示す電子機器5は、ケース2の側面上に貼り付けられた寄生素子102を有する。図14(A)及び(B)に示す電子機器6は、ケース2の隣接する2つの側面に跨って貼り付けられたL字形状の寄生素子102を有する。図15(A)及び(B)に示す電子機器7は、フレーム部材21の上面から隣接するフレーム部材22の側面に跨って貼り付けられたL字形状の寄生素子102を有する。図16(A)及び(B)に示す電子機器8は、フレーム部材21の側面から隣接するフレーム部材22の上面に跨って貼り付けられたL字形状の寄生素子102を有する。指向性パターンの図示は省略するが、直線形状の寄生素子102を持つ電子機器5は、実施の形態1で説明した電子機器1と同様の原理によって、指向性パターンの改善を図ることができる。また、L字形状の寄生素子102を持つ電子機器6〜8は、実施の形態2で説明した電子機器4と同様の原理よって、指向性パターンの改善を図ることができる。
【0057】
上述した各実施の形態では、寄生素子102の形状の具体例として直線形状およびL字形状を示したが、寄生素子102の形状はその他の形状(例えばミアンダ形状)であってもよい。
【0058】
上述した各実施の形態では、1つの放射素子101に対して1つの寄生素子102を配置する例を示したが、1つの放射素子101に対して複数個の寄生素子102を配置してもよい。
【0059】
さらに、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、既に述べた本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
1、4〜8 電子機器
2 ケース
3 プリント回路基板
10 アンテナ
11 無線通信回路
12 ディスプレイデバイス
13 入力デバイス
14 マイクロプロセッサ
15 RAM(Random Access Memory)
16 ROM(Read Only Memory)
17 フラッシュメモリ
20 開口
30 給電線
21〜24 フレーム部材
25 カバー
101 放射素子(第1のアンテナ素子)
102 寄生素子(第2のアンテナ素子)
120 表示面
121 シールドケース
130 ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
開口を有するケースと、
前記ケース内に配置され、前記開口を通じて外部から視認可能な表示面、及び導電性のシールド材で覆われた背面を有するディスプレイデバイスと、
前記ディスプレイデバイスの前記背面に対向するように前記ケース内に配置され、無線通信回路を含む電子部品が実装された回路基板と、
前記表示面に垂直な前記電子機器の正面側から見た場合に前記ディスプレイデバイスと重ならないフレーム領域に位置するように前記回路基板上に配置され、前記無線通信回路と給電線により接続された第1のアンテナ素子と、
前記正面側から見た場合にその少なくとも一部が前記フレーム領域に位置するとともに、前記電子機器の側面側から見た場合に前記少なくとも一部が前記ディスプレイデバイスの前記背面より前記表示面側に位置するように配置された無給電の第2のアンテナ素子と、
を備える電子機器。
【請求項2】
前記第1のアンテナ素子は細長の形状を有し、
前記第2のアンテナ素子の前記少なくとも一部は、前記第1のアンテナ素子の長手方向と実質的に平行に配置されている、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記フレーム領域は、前記開口を囲む4辺を有し、
前記第2のアンテナ素子は、L字型の形状を有するとともに、前記正面側から見た場合に前記フレーム領域の隣接する2辺に跨って配置されている、請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記第2のアンテナ素子は、前記ケースの外側表面に接して設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記ケースは、前記開口を囲むフレーム部材を備え、
前記第2のアンテナ素子の前記少なくとも一部は、前記フレーム部材のうち前記上面視において前記第1のアンテナ素子の上方に位置する部分に接して設けられている、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記第2のアンテナ素子は、前記ケースに貼り付けられた導電性フィルムである、請求項4又は5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記ケースのうち少なくとも前記第2のアンテナ素子が設けられた部分を覆う誘電性のカバー部材をさらに備える、請求項4〜7のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項8】
前記第1のアンテナ素子は、前記回路基板の2つの主面のうち、前記ディスプレイデバイスと対向しない面に配置されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項9】
前記第1のアンテナ素子と前記第2のアンテナ素子の間隔は、使用周波数における電気長1/4波長以下である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項10】
前記第2のアンテナ素子の長手方向の長さは、前記使用周波数における電気長1/2波長以下である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−235224(P2012−235224A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101275(P2011−101275)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】