電子機器
【課題】第2キャビネットに一体に成形した1つのシール部材で正面側及び背面側の複数箇所の封止を確実に行えるようにして部品点数及び組立工数を削減しながら、コンパクトな電子機器を得る。
【解決手段】正面側キャビネット3(第1キャビネット)の背面側を背面側キャビネット4(第2キャビネット)で覆い、この背面側キャビネット4の背面側を電池蓋5(第3キャビネット)で覆う。背面側キャビネット4に、その正面側で正面側キャビネット3に当接して正面側キャビネット3と背面側キャビネット4との間を封止する正面側シール部11と、この正面側シール部11に連続し、背面側で電池蓋5に当接して電池蓋5と背面側キャビネット4との間を封止する背面側シール部12とを有するシール部材10を一体に設ける。
【解決手段】正面側キャビネット3(第1キャビネット)の背面側を背面側キャビネット4(第2キャビネット)で覆い、この背面側キャビネット4の背面側を電池蓋5(第3キャビネット)で覆う。背面側キャビネット4に、その正面側で正面側キャビネット3に当接して正面側キャビネット3と背面側キャビネット4との間を封止する正面側シール部11と、この正面側シール部11に連続し、背面側で電池蓋5に当接して電池蓋5と背面側キャビネット4との間を封止する背面側シール部12とを有するシール部材10を一体に設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のキャビネット間を封止する防水機能を有する電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、結合及び分離可能な第一及び第二筐体からなる電子機器の筐体において、第一筐体の周縁に設けた溝に防水パッキンを嵌め込んで、第一筐体と第二筐体との間を防水することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献2のように、装置本体と、この装置本体に着脱自在に構成される充電池と、この充電池と装置本体との間に設けられるとともに、充電池の外周とほぼ同形状の環状部と、この環状部に所定の間隔を隔てて一体的に形成された係止舌片とからなる弾性を有する防水部材とを備えた携帯型電子機器が知られている。この携帯型電子機器では、充電池を覆う電池蓋用に専用の防水部材を必要としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−130382号公報
【特許文献2】特開平9−4715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように筐体の周縁に溝を設け、その溝に防水パッキンを嵌め込む構造では、溝を設けるための幅が必要となり、電子機器のサイズが大きくなってしまう。また、溝に防水パッキンを捩れることなく嵌め込むには手間がかかる。
【0006】
さらには、特許文献1のような第一筐体及び第二筐体だけでなく、特許文献2のような電池蓋を備える電子機器では、第一筐体と第二筐体との間及び第二筐体と電池蓋との間でそれぞれ別々のシール部材を備える必要があり、部品点数が増えると共に、組付工数が増えるという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、一体に成形した1つのシール部材で複数箇所の封止を確実に行えるようにして部品点数及び組立工数を削減しながら、コンパクトな電子機器が得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、第2キャビネットの正面側及び背面側を封止可能な封止部材を第2キャビネットと一体に形成するようにした。
【0009】
具体的には、第1の発明の電子機器は、
第1キャビネットと、
上記第1キャビネットの背面側を覆う第2キャビネットと、
上記第2キャビネットの背面側を覆う第3キャビネットと、
上記第2キャビネットに一体に設けられ、該第2キャビネットの正面側で上記第1キャビネットに当接して該第1キャビネットと該第2キャビネットとの間を封止する正面側シール部及び該正面側シール部に連続し、上記第2キャビネットの背面側で上記第3キャビネットに当接して該第3キャビネットと該第2キャビネットとの間を封止する背面側シール部を有するシール部材とを備えている。
【0010】
上記の構成によると、シール部材を第2キャビネットに一体に設けているので、従来のような防水パッキンを溝に嵌め込む場合に比べて省スペースが図られると共に、面倒なシール部材の組付が不要となる。また、複雑な形状のシール部材でも成形できて防水機能が格段に向上すると共に、正面側シール部と背面側シール部とが連続して一体に成形されているので、部品点数が減る上、シール部材の組付手間の削減効果が倍増する。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、
上記正面側シール部と、上記背面側シール部とは、上記第2キャビネットに設けた連続形成用貫通孔で連続して形成されている。
【0012】
上記の構成によると、連続形成用貫通孔を通して溶融したシール部材を一方側から他方側へ充填させることができるので、一体成形が極めて容易となる。
【0013】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
上記第2キャビネットの正面側には、基板が装着され、
上記連続形成用貫通孔は、上記第2キャビネットの背面側に取り付けられる取付部品と、上記基板とを電気的に接続するための貫通孔を含む。
【0014】
上記の構成によると、第2キャビネットの背面側に基板に接続するための取付部品を取り付ける場合でも、1つの防水部材で、その接続用の貫通孔の周縁も封止できるので、部品点数が減ると共に、防水効果が向上する。
【0015】
第4の発明では、第3の発明において、
上記取付部品は、アンテナであり、該アンテナの接点が上記貫通孔を通って上記基板に接続されるようになっており、
上記シール部材は、上記貫通孔周縁全体を覆い、上記取付部品と上記貫通孔周縁との間を封止している。
【0016】
上記の構成によると、アンテナは、できるだけ筐体の外側に設ける必要があり、基板から離さなければならない場合でも、シール部材が貫通孔周縁全体を覆っているので、取付部品と貫通孔周縁との間が簡単且つ確実に封止される。
【0017】
第5の発明では、第1乃至第4のいずれか1つの発明において、
上記正面側シール部は、上記第1キャビネットと上記第2キャビネットとを締結する締結部材を挿通させる挿通孔周縁を覆い、該挿通孔を通って水が上記第1キャビネット側へ流れ込むのを防止している。
【0018】
上記の構成によると、従来のように締結部材の頭部にOリングを取り付けても防水できない頭部の反対側の挿通孔周縁もシール部材で覆うことができるので、確実に防水できると共に、Oリングも不要となる。
【0019】
第6の発明では、第1乃至第5のいずれか1つの発明において、
上記第1キャビネットは、正面側に表示部が装着されると共に、背面側に充電池が装着される正面側キャビネットであり、
上記第2キャビネットは、上記正面側キャビネットの背面を覆うと共に、上記充電池を囲む充電池用開口が形成された背面側キャビネットであり、
上記第3キャビネットは、上記充電池用開口から露出する上記充電池を覆う電池蓋であり、
上記背面側シール部は、上記充電池用開口周縁を覆っている。
【0020】
上記の構成によると、1つのシール部材で、通常分解することのない正面側キャビネットと背面側キャビネットとの間だけでなく、厚さのある充電池を収容するために必要な充電池用開口と電池蓋との間も簡単且つ確実に封止することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、第2キャビネットに一体に成形した1つのシール部材で正面側及び背面側の複数箇所の封止を確実に行えるようにして部品点数及び組立工数を削減しながら、コンパクトな電子機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態の携帯電話機にかかる図8のI−I線拡大断面図である。
【図2】携帯電話機を正面側から見た斜視図である。
【図3】携帯電話機を背面側から見た斜視図である。
【図4】携帯電話機の電池蓋及びアンテナ部品を分解した斜視図である。
【図5】背面側キャビネットを正面側から見た斜視図である。
【図6】背面側キャビネットを背面側から見た斜視図である。
【図7】蓋部材の正面側を示す斜視図である。
【図8】携帯電話機の正面図である。
【図9】図8のIX−IX線拡大断面図である。
【図10】図8のX−X線拡大断面図である。
【図11】アンテナ部品を正面側から見た拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図2〜図4は、本発明の実施形態の電子機器としての携帯電話機1を示し、この携帯電話機1は、表面側にタッチパネルを有する表示部2が設けられている。携帯電話機1は、表示部2を表面側に内蔵する第1キャビネットとしての正面側キャビネット3と、この正面側キャビネット3の背面側を覆う第2キャビネットとしての背面側キャビネット4と、この背面側キャビネット4の背面側を覆う第3キャビネットとしての電池蓋5とを備えている。これら正面側キャビネット3と背面側キャビネット4と電池蓋5とは、例えばそれぞれガラス強化繊維を含むポリアミド樹脂などの樹脂成形品よりなる。
【0025】
図4に示すように、電池蓋5を取り外すと、背面側キャビネット4の背面には、充電池6と、取付部材としてのアンテナ7とが露出している。なお、図2に示すように、携帯電話機1の下端には、3つの操作ボタン8が配置され、その周囲が装飾板9で覆われている。
【0026】
そして、背面側キャビネット4には、シール部材10が一体に設けられている。シール部材10は、図5にハッチングで示すように、背面側キャビネット4の正面側で正面側キャビネット3に当接して正面側キャビネット3と背面側キャビネット4との間を封止するように、背面側キャビネット4の正面側周縁にそって一体形成された正面側シール部11を備えている。また、図6にハッチングで示すように、シール部材10は、背面側キャビネット4の充電池6を収容するための充電池用開口4aの背面側周縁に、電池蓋5の正面側に略矩形板状に立設した枠部5a(図7に示す)の外周面に当接して電池蓋5と背面側キャビネット4との間を封止する背面側シール部12を備えている。
【0027】
詳しくは図示しないが、このシール部材10は、例えば、成形後の背面側キャビネット4を射出成形型に嵌め込み、背面側に設けた複数の円形貫通孔よりなるゲート13から、溶融したシリコン等の、流動性が高くて背面側キャビネット4と接着性のよい材料を充填することで、正面側シール部11と背面側シール部12とを一度に連続して一体成形している。シール部材10と背面側キャビネット4との接着性をよくするために、背面側キャビネット4におけるシール部材10の接着部分にプライマリーを塗布してもよい。
【0028】
この一体成形を確実にするために、図1、図5及び図9に示すように、背面側キャビネット4には、矩形状などの複数の連続形成用貫通孔14が貫通形成されている。正面側からゲート13を通じて射出されたシリコン等の溶融材料が、この連続形成用貫通孔14を通って確実に正面側へも流れ込むので、正面側シール部11と背面側シール部12とが連続して形成されるようになっている。
【0029】
図9及び図10に示すように、背面側キャビネット4の正面側(厳密には、正面側キャビネット3の背面側)には、基板15が装着されている。一方、図11に示すように、アンテナ7は、樹脂成形品本体7aの外周に金属製の受信部7bが形成され、その正面側には、基板15に電気的に接続するための一対の接点7cが設けられている。
【0030】
図9及び図10に示す連続形成用貫通孔14は、このアンテナ7と基板15とを電気的に接続するための貫通孔の役割を果たしている。この連続形成用貫通孔14の正面側及び背面側を含む周縁全体がシール部材10によって覆われている。
【0031】
また図10に示すように、正面側シール部11は、正面側キャビネット3と背面側キャビネット4とを締結する締結部材としてのビス16を挿通させる挿通孔17の正面側周縁を覆い、挿通孔17を通って水が正面側キャビネット3側へ流れ込むのを防止している。
【0032】
このように、シール部材10を背面側キャビネット4に一体に設けているので、従来のような防水パッキンを溝に嵌め込む場合に比べて省スペースが図られると共に、面倒なシール部材10の組付が不要となる。また、外周に沿う環状部分だけでなく、貫通孔周縁などの複雑な形状のシール部材10でも成形できて防水機能が格段に向上すると共に、正面側シール部11と背面側シール部12とが連続して一体に成形されているので、部品点数が減る上、シール部材10の組付手間の削減効果が倍増する。
【0033】
また、ゲート13を通して溶融したシール部材10を射出したときに、連続形成用貫通孔14を通して溶融したシール部材10を背面側から正面側へ充填させることができるので、一体成形が極めて容易である。
【0034】
また、アンテナ7をできるだけ背面側キャビネット3の外側に設ける必要があり、基板15から離さなければならないような場合でも、シール部材10が接続用の連続形成用貫通孔14の周縁全体を覆っているので、アンテナ7と連続形成用貫通孔14周縁との間が簡単且つ確実に封止される。
【0035】
また、1つのシール部材10で、通常分解することのない正面側キャビネット3と背面側キャビネット4との間だけでなく、厚さのある充電池6を収容するために必要な充電池用開口4aの周縁を封止して電池蓋5と背面側キャビネット4との間も簡単且つ確実に封止することができる。
【0036】
さらに、従来のようにビス16の頭部にOリングを取り付けても防水できない頭部と反対側(正面側)の挿通孔17周縁もシール部材10で覆うことができるので、確実に防水できると共に、Oリングも不要となる。
【0037】
したがって、本実施形態にかかる携帯電話機1によると、背面側キャビネット4に一体に成形した1つのシール部材10で正面側及び背面側の複数箇所の封止を確実に行えるようにして部品点数及び組立工数を削減しながら、コンパクトな携帯電話機1を得ることができる。
【0038】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0039】
すなわち、上記実施形態では、シール部材10による防水機能を中心に説明したが、シリコン等よりなるシール部材10により、防水機能だけでなく、防塵及び防振効果が発揮される。
【0040】
上記実施形態では、第1〜第3キャビネットを携帯電話機1の筐体を構成するキャビネットとしたが、PHS(Personal Handy-phone System )、PDA(Personal Digital Assistant)、スマートフォン、パソコン、モバイルツール、電子辞書、電卓、ゲーム機等の携帯端末だけでなく、デスクトップパソコン、AV機器等の防水、防塵又は防振効果を発揮できる電子機器を構成するキャビネットであってもよい。
【0041】
上記実施形態では、取付部材は、アンテナ7としたが、特にこれに限定されず、背面側キャビネット3を貫通する貫通孔を通過する部品であれば特に限定されない。
【0042】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0043】
1 携帯電話機(電子機器)
2 表示部
3 正面側キャビネット(第1キャビネット)
4 背面側キャビネット(第2キャビネット)
4a 充電池用開口
5 電池蓋(第3キャビネット)
5a 枠部
6 充電池
7 アンテナ(取付部品)
7a 接点
10 シール部材
11 正面側シール部
12 背面側シール部
13 ゲート
14 連続形成用貫通孔
15 基板
16 ビス
17 挿通孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のキャビネット間を封止する防水機能を有する電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、結合及び分離可能な第一及び第二筐体からなる電子機器の筐体において、第一筐体の周縁に設けた溝に防水パッキンを嵌め込んで、第一筐体と第二筐体との間を防水することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献2のように、装置本体と、この装置本体に着脱自在に構成される充電池と、この充電池と装置本体との間に設けられるとともに、充電池の外周とほぼ同形状の環状部と、この環状部に所定の間隔を隔てて一体的に形成された係止舌片とからなる弾性を有する防水部材とを備えた携帯型電子機器が知られている。この携帯型電子機器では、充電池を覆う電池蓋用に専用の防水部材を必要としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−130382号公報
【特許文献2】特開平9−4715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように筐体の周縁に溝を設け、その溝に防水パッキンを嵌め込む構造では、溝を設けるための幅が必要となり、電子機器のサイズが大きくなってしまう。また、溝に防水パッキンを捩れることなく嵌め込むには手間がかかる。
【0006】
さらには、特許文献1のような第一筐体及び第二筐体だけでなく、特許文献2のような電池蓋を備える電子機器では、第一筐体と第二筐体との間及び第二筐体と電池蓋との間でそれぞれ別々のシール部材を備える必要があり、部品点数が増えると共に、組付工数が増えるという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、一体に成形した1つのシール部材で複数箇所の封止を確実に行えるようにして部品点数及び組立工数を削減しながら、コンパクトな電子機器が得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、第2キャビネットの正面側及び背面側を封止可能な封止部材を第2キャビネットと一体に形成するようにした。
【0009】
具体的には、第1の発明の電子機器は、
第1キャビネットと、
上記第1キャビネットの背面側を覆う第2キャビネットと、
上記第2キャビネットの背面側を覆う第3キャビネットと、
上記第2キャビネットに一体に設けられ、該第2キャビネットの正面側で上記第1キャビネットに当接して該第1キャビネットと該第2キャビネットとの間を封止する正面側シール部及び該正面側シール部に連続し、上記第2キャビネットの背面側で上記第3キャビネットに当接して該第3キャビネットと該第2キャビネットとの間を封止する背面側シール部を有するシール部材とを備えている。
【0010】
上記の構成によると、シール部材を第2キャビネットに一体に設けているので、従来のような防水パッキンを溝に嵌め込む場合に比べて省スペースが図られると共に、面倒なシール部材の組付が不要となる。また、複雑な形状のシール部材でも成形できて防水機能が格段に向上すると共に、正面側シール部と背面側シール部とが連続して一体に成形されているので、部品点数が減る上、シール部材の組付手間の削減効果が倍増する。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、
上記正面側シール部と、上記背面側シール部とは、上記第2キャビネットに設けた連続形成用貫通孔で連続して形成されている。
【0012】
上記の構成によると、連続形成用貫通孔を通して溶融したシール部材を一方側から他方側へ充填させることができるので、一体成形が極めて容易となる。
【0013】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
上記第2キャビネットの正面側には、基板が装着され、
上記連続形成用貫通孔は、上記第2キャビネットの背面側に取り付けられる取付部品と、上記基板とを電気的に接続するための貫通孔を含む。
【0014】
上記の構成によると、第2キャビネットの背面側に基板に接続するための取付部品を取り付ける場合でも、1つの防水部材で、その接続用の貫通孔の周縁も封止できるので、部品点数が減ると共に、防水効果が向上する。
【0015】
第4の発明では、第3の発明において、
上記取付部品は、アンテナであり、該アンテナの接点が上記貫通孔を通って上記基板に接続されるようになっており、
上記シール部材は、上記貫通孔周縁全体を覆い、上記取付部品と上記貫通孔周縁との間を封止している。
【0016】
上記の構成によると、アンテナは、できるだけ筐体の外側に設ける必要があり、基板から離さなければならない場合でも、シール部材が貫通孔周縁全体を覆っているので、取付部品と貫通孔周縁との間が簡単且つ確実に封止される。
【0017】
第5の発明では、第1乃至第4のいずれか1つの発明において、
上記正面側シール部は、上記第1キャビネットと上記第2キャビネットとを締結する締結部材を挿通させる挿通孔周縁を覆い、該挿通孔を通って水が上記第1キャビネット側へ流れ込むのを防止している。
【0018】
上記の構成によると、従来のように締結部材の頭部にOリングを取り付けても防水できない頭部の反対側の挿通孔周縁もシール部材で覆うことができるので、確実に防水できると共に、Oリングも不要となる。
【0019】
第6の発明では、第1乃至第5のいずれか1つの発明において、
上記第1キャビネットは、正面側に表示部が装着されると共に、背面側に充電池が装着される正面側キャビネットであり、
上記第2キャビネットは、上記正面側キャビネットの背面を覆うと共に、上記充電池を囲む充電池用開口が形成された背面側キャビネットであり、
上記第3キャビネットは、上記充電池用開口から露出する上記充電池を覆う電池蓋であり、
上記背面側シール部は、上記充電池用開口周縁を覆っている。
【0020】
上記の構成によると、1つのシール部材で、通常分解することのない正面側キャビネットと背面側キャビネットとの間だけでなく、厚さのある充電池を収容するために必要な充電池用開口と電池蓋との間も簡単且つ確実に封止することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、第2キャビネットに一体に成形した1つのシール部材で正面側及び背面側の複数箇所の封止を確実に行えるようにして部品点数及び組立工数を削減しながら、コンパクトな電子機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態の携帯電話機にかかる図8のI−I線拡大断面図である。
【図2】携帯電話機を正面側から見た斜視図である。
【図3】携帯電話機を背面側から見た斜視図である。
【図4】携帯電話機の電池蓋及びアンテナ部品を分解した斜視図である。
【図5】背面側キャビネットを正面側から見た斜視図である。
【図6】背面側キャビネットを背面側から見た斜視図である。
【図7】蓋部材の正面側を示す斜視図である。
【図8】携帯電話機の正面図である。
【図9】図8のIX−IX線拡大断面図である。
【図10】図8のX−X線拡大断面図である。
【図11】アンテナ部品を正面側から見た拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図2〜図4は、本発明の実施形態の電子機器としての携帯電話機1を示し、この携帯電話機1は、表面側にタッチパネルを有する表示部2が設けられている。携帯電話機1は、表示部2を表面側に内蔵する第1キャビネットとしての正面側キャビネット3と、この正面側キャビネット3の背面側を覆う第2キャビネットとしての背面側キャビネット4と、この背面側キャビネット4の背面側を覆う第3キャビネットとしての電池蓋5とを備えている。これら正面側キャビネット3と背面側キャビネット4と電池蓋5とは、例えばそれぞれガラス強化繊維を含むポリアミド樹脂などの樹脂成形品よりなる。
【0025】
図4に示すように、電池蓋5を取り外すと、背面側キャビネット4の背面には、充電池6と、取付部材としてのアンテナ7とが露出している。なお、図2に示すように、携帯電話機1の下端には、3つの操作ボタン8が配置され、その周囲が装飾板9で覆われている。
【0026】
そして、背面側キャビネット4には、シール部材10が一体に設けられている。シール部材10は、図5にハッチングで示すように、背面側キャビネット4の正面側で正面側キャビネット3に当接して正面側キャビネット3と背面側キャビネット4との間を封止するように、背面側キャビネット4の正面側周縁にそって一体形成された正面側シール部11を備えている。また、図6にハッチングで示すように、シール部材10は、背面側キャビネット4の充電池6を収容するための充電池用開口4aの背面側周縁に、電池蓋5の正面側に略矩形板状に立設した枠部5a(図7に示す)の外周面に当接して電池蓋5と背面側キャビネット4との間を封止する背面側シール部12を備えている。
【0027】
詳しくは図示しないが、このシール部材10は、例えば、成形後の背面側キャビネット4を射出成形型に嵌め込み、背面側に設けた複数の円形貫通孔よりなるゲート13から、溶融したシリコン等の、流動性が高くて背面側キャビネット4と接着性のよい材料を充填することで、正面側シール部11と背面側シール部12とを一度に連続して一体成形している。シール部材10と背面側キャビネット4との接着性をよくするために、背面側キャビネット4におけるシール部材10の接着部分にプライマリーを塗布してもよい。
【0028】
この一体成形を確実にするために、図1、図5及び図9に示すように、背面側キャビネット4には、矩形状などの複数の連続形成用貫通孔14が貫通形成されている。正面側からゲート13を通じて射出されたシリコン等の溶融材料が、この連続形成用貫通孔14を通って確実に正面側へも流れ込むので、正面側シール部11と背面側シール部12とが連続して形成されるようになっている。
【0029】
図9及び図10に示すように、背面側キャビネット4の正面側(厳密には、正面側キャビネット3の背面側)には、基板15が装着されている。一方、図11に示すように、アンテナ7は、樹脂成形品本体7aの外周に金属製の受信部7bが形成され、その正面側には、基板15に電気的に接続するための一対の接点7cが設けられている。
【0030】
図9及び図10に示す連続形成用貫通孔14は、このアンテナ7と基板15とを電気的に接続するための貫通孔の役割を果たしている。この連続形成用貫通孔14の正面側及び背面側を含む周縁全体がシール部材10によって覆われている。
【0031】
また図10に示すように、正面側シール部11は、正面側キャビネット3と背面側キャビネット4とを締結する締結部材としてのビス16を挿通させる挿通孔17の正面側周縁を覆い、挿通孔17を通って水が正面側キャビネット3側へ流れ込むのを防止している。
【0032】
このように、シール部材10を背面側キャビネット4に一体に設けているので、従来のような防水パッキンを溝に嵌め込む場合に比べて省スペースが図られると共に、面倒なシール部材10の組付が不要となる。また、外周に沿う環状部分だけでなく、貫通孔周縁などの複雑な形状のシール部材10でも成形できて防水機能が格段に向上すると共に、正面側シール部11と背面側シール部12とが連続して一体に成形されているので、部品点数が減る上、シール部材10の組付手間の削減効果が倍増する。
【0033】
また、ゲート13を通して溶融したシール部材10を射出したときに、連続形成用貫通孔14を通して溶融したシール部材10を背面側から正面側へ充填させることができるので、一体成形が極めて容易である。
【0034】
また、アンテナ7をできるだけ背面側キャビネット3の外側に設ける必要があり、基板15から離さなければならないような場合でも、シール部材10が接続用の連続形成用貫通孔14の周縁全体を覆っているので、アンテナ7と連続形成用貫通孔14周縁との間が簡単且つ確実に封止される。
【0035】
また、1つのシール部材10で、通常分解することのない正面側キャビネット3と背面側キャビネット4との間だけでなく、厚さのある充電池6を収容するために必要な充電池用開口4aの周縁を封止して電池蓋5と背面側キャビネット4との間も簡単且つ確実に封止することができる。
【0036】
さらに、従来のようにビス16の頭部にOリングを取り付けても防水できない頭部と反対側(正面側)の挿通孔17周縁もシール部材10で覆うことができるので、確実に防水できると共に、Oリングも不要となる。
【0037】
したがって、本実施形態にかかる携帯電話機1によると、背面側キャビネット4に一体に成形した1つのシール部材10で正面側及び背面側の複数箇所の封止を確実に行えるようにして部品点数及び組立工数を削減しながら、コンパクトな携帯電話機1を得ることができる。
【0038】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0039】
すなわち、上記実施形態では、シール部材10による防水機能を中心に説明したが、シリコン等よりなるシール部材10により、防水機能だけでなく、防塵及び防振効果が発揮される。
【0040】
上記実施形態では、第1〜第3キャビネットを携帯電話機1の筐体を構成するキャビネットとしたが、PHS(Personal Handy-phone System )、PDA(Personal Digital Assistant)、スマートフォン、パソコン、モバイルツール、電子辞書、電卓、ゲーム機等の携帯端末だけでなく、デスクトップパソコン、AV機器等の防水、防塵又は防振効果を発揮できる電子機器を構成するキャビネットであってもよい。
【0041】
上記実施形態では、取付部材は、アンテナ7としたが、特にこれに限定されず、背面側キャビネット3を貫通する貫通孔を通過する部品であれば特に限定されない。
【0042】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0043】
1 携帯電話機(電子機器)
2 表示部
3 正面側キャビネット(第1キャビネット)
4 背面側キャビネット(第2キャビネット)
4a 充電池用開口
5 電池蓋(第3キャビネット)
5a 枠部
6 充電池
7 アンテナ(取付部品)
7a 接点
10 シール部材
11 正面側シール部
12 背面側シール部
13 ゲート
14 連続形成用貫通孔
15 基板
16 ビス
17 挿通孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1キャビネットと、
上記第1キャビネットの背面側を覆う第2キャビネットと、
上記第2キャビネットの背面側を覆う第3キャビネットと、
上記第2キャビネットに一体に設けられ、該第2キャビネットの正面側で上記第1キャビネットに当接して該第1キャビネットと該第2キャビネットとの間を封止する正面側シール部及び該正面側シール部に連続し、上記第2キャビネットの背面側で上記第3キャビネットに当接して該第3キャビネットと該第2キャビネットとの間を封止する背面側シール部を有するシール部材とを備えている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
上記正面側シール部と、上記背面側シール部とは、上記第2キャビネットに設けた連続形成用貫通孔で連続して形成されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子機器において、
上記第2キャビネットの正面側には、基板が装着され、
上記連続形成用貫通孔は、上記第2キャビネットの背面側に取り付けられる取付部品と、上記基板とを電気的に接続するための貫通孔を含む
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電子機器において、
上記取付部品は、アンテナであり、該アンテナの接点が上記貫通孔を通って上記基板に接続されるようになっており、
上記シール部材は、上記貫通孔周縁全体を覆い、上記取付部品と上記貫通孔周縁との間を封止している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の電子機器において、
上記正面側シール部は、上記第1キャビネットと上記第2キャビネットとを締結する締結部材を挿通させる挿通孔周縁を覆い、該挿通孔を通って水が上記第1キャビネット側へ流れ込むのを防止している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の電子機器において、
上記第1キャビネットは、正面側に表示部が装着されると共に、背面側に充電池が装着される正面側キャビネットであり、
上記第2キャビネットは、上記正面側キャビネットの背面を覆うと共に、上記充電池を囲む充電池用開口が形成された背面側キャビネットであり、
上記第3キャビネットは、上記充電池用開口から露出する上記充電池を覆う電池蓋であり、
上記背面側シール部は、上記充電池用開口周縁を覆っている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
第1キャビネットと、
上記第1キャビネットの背面側を覆う第2キャビネットと、
上記第2キャビネットの背面側を覆う第3キャビネットと、
上記第2キャビネットに一体に設けられ、該第2キャビネットの正面側で上記第1キャビネットに当接して該第1キャビネットと該第2キャビネットとの間を封止する正面側シール部及び該正面側シール部に連続し、上記第2キャビネットの背面側で上記第3キャビネットに当接して該第3キャビネットと該第2キャビネットとの間を封止する背面側シール部を有するシール部材とを備えている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
上記正面側シール部と、上記背面側シール部とは、上記第2キャビネットに設けた連続形成用貫通孔で連続して形成されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子機器において、
上記第2キャビネットの正面側には、基板が装着され、
上記連続形成用貫通孔は、上記第2キャビネットの背面側に取り付けられる取付部品と、上記基板とを電気的に接続するための貫通孔を含む
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電子機器において、
上記取付部品は、アンテナであり、該アンテナの接点が上記貫通孔を通って上記基板に接続されるようになっており、
上記シール部材は、上記貫通孔周縁全体を覆い、上記取付部品と上記貫通孔周縁との間を封止している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の電子機器において、
上記正面側シール部は、上記第1キャビネットと上記第2キャビネットとを締結する締結部材を挿通させる挿通孔周縁を覆い、該挿通孔を通って水が上記第1キャビネット側へ流れ込むのを防止している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の電子機器において、
上記第1キャビネットは、正面側に表示部が装着されると共に、背面側に充電池が装着される正面側キャビネットであり、
上記第2キャビネットは、上記正面側キャビネットの背面を覆うと共に、上記充電池を囲む充電池用開口が形成された背面側キャビネットであり、
上記第3キャビネットは、上記充電池用開口から露出する上記充電池を覆う電池蓋であり、
上記背面側シール部は、上記充電池用開口周縁を覆っている
ことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−90117(P2013−90117A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228521(P2011−228521)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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