説明

電子源装置におけるスキャン方法および電子源装置

【目的】本発明は、電子源から放出されて加速された電子ビームを物質に照射した状態でスキャンして加熱し、対向して配置した基板上に当該物質を蒸着させる電子源装置におけるスキャン方法および電子源装置に関し、画面上で電子ビームのスキャン波形の1点を指定すると当該1点をもとにスキャン波形を作成したり、作成したスキャン波形が所望でないときは当該スキャン波形の1点を指定すると当該1点をもとにスキャン波形に部分修正を施し、顧客が簡易に試料(材料)の溶けあとが可及的に平坦で有効利用されるように調整可能にすることを目的とする。
【構成】 画面上でスキャンしようとするスキャン波形の1点が指定されると、当該1点をもとにスキャン波形を生成するステップと、生成したスキャン波形を波形発生器に送信してスキャン波形で電子ビームを物質に照射した状態でスキャンして加熱させるステップとを有する電子源装置におけるスキャン方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子源から放出されて加速された電子ビームを物質に照射した状態でスキャンして加熱し、対向して配置した基板上に当該物質を蒸着させる電子源装置におけるスキャン方法および電子源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子源装置を構成する電子源から放出されて加速された電子ビームを180度、あるいは更に回転させてルツボ内の試料に照射して当該試料を加熱・溶解して蒸発させ、対向して配置した基板上に蒸着することが行われている。この際、電子源から加速された電子ビームを180度、あるいは更に回転させてルツボ内の試料を照射するときに、通常、X方向に50Hz、Y方向に500Hzでスキャンして均一に加熱して当該試料を溶解していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、試料のサイズを大きくして電子ビームでスキャンする面積を大きくしたりした場合、例えば単に電子ビームのスキャン長さと幅を大きくしてスキャンして試料を加熱・溶解すると、溶けあとが平坦にならなくなってしまい、試料(材料)が部分的に大きく解けてしまい、蒸着回数が少なくなり試料(材料)が無駄になってしまうなどの問題があった。
【0004】
そのため、使用者が電子ビームのスキャン波形を画面上でリアルタイムに任意に作成あるいは修正を簡易に施して反映し、試料(材料)の溶けあとが可及的に平坦で有効利用されるようにすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、これらの問題を解決するため、画面上で電子ビームのスキャン波形の1点を指定すると当該1点をもとにスキャン波形を作成したり、作成したスキャン波形が所望でないときは当該スキャン波形の1点を指定すると当該1点をもとにスキャン波形に部分修正を施すことを目的としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、画面上で電子ビームのスキャン波形の1点を指定すると当該1点をもとにスキャン波形を作成したり、作成したスキャン波形が所望でないときは当該スキャン波形の1点を指定すると当該1点をもとにスキャン波形に部分修正を施し、使用者が簡易に試料(材料)の溶けあとが可及的に平坦で有効利用されるように調整することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、画面上で電子ビームのスキャン波形の1点を指定すると当該1点をもとにスキャン波形を作成したり、作成したスキャン波形が所望でないときは当該スキャン波形の1点を指定すると当該1点をもとにスキャン波形に部分修正を施すことを実現した。
【実施例1】
【0008】
図1は、本発明の1実施例構成図を示す。
図1の(a)は、スキャン波形を生成する1実施例構成図を示す。
【0009】
図1の(a)において、PC1は、パーソナルコンピュータであって、プログラムに従い各種制御、スキャン波形計算などを行うものである(図2を用いて後述する)。
【0010】
マスタ(CPU1)3は、PC1からRS232C信号線を介して送信されてきたスキャン波形を受信したり、受信したスキャン波形のうちX波形用のスキャン波形をバス4を介してCPU2に送信したり、Y波形用のスキャン波形をバス4を介してCPU3に送信したりなどするものである。
【0011】
CPU2は、X波形用のスキャン波形をDA1に設定したり、X周波数UP/DOWN SW6X、XスキャンON/OFF SW7Xが操作されたときにスキャン周波数をアップ/ダウン、オン/オフしたりなどするものである。CPU2を設けたことで、使用者はスキャン波形のX周波数を任意にアップしたり、ダウンしたり、ストップしたり、開始したり操作することが可能となる。X周波数のアップ/ダウンは、スキャン波形の各滞留する時間を短く、あるいは長くすることで周波数をアップあるいはダウンする(図6の(b),(c)参照)。Xスキャンの周波数は、例えば37Hzから500Hzの範囲内で増減可能である。
【0012】
CPU3は、Y波形用のスキャン波形をDA2に設定したり、Y周波数UP/DOWN SW6Y、YスキャンON/OFF SW7Yが操作されたときにスキャン周波数をアップ/ダウン、オン/オフしたりなどするものである。CPU3を設けたことで、使用者はスキャン波形のY周波数を任意にアップしたり、ダウンしたり,ストップしたり、開始したり操作することが可能となる。Y周波数のアップ/ダウンは、スキャン波形の各滞留する時間を短く、あるいは長くすることで周波数をアップあるいはダウンする(図6の(b),(c)参照)。Yスキャンの周波数のアップ/ダウンは、例えば340Hzから800Hzの範囲内で増減可能である。
【0013】
DA1は、設定されたスキャン波形のデータに従い、X波形用のアナログのXスキャン信号を生成するものである。
【0014】
DA2は、設定されたスキャン波形のデータに従い、Y波形用のアナログのYスキャン信号を生成するものである。
【0015】
EBスキャン回路10は、DA1、DA2から信号線9を介して送られてきたアナログのスキャン波形信号(X,Y)に従い、Xスキャンコイル13,Yスキャンコイル12にスキャン電流(X,Y)をそれぞれ供給し、電子ビーム15がルツボ18内の材料を走査して加熱させるためのものである。
【0016】
図1の(b)は、電子源装置の概略模式図を示す。
図1の(b)において、チャンバ11は、ルツボ18などの図示のものを真空中に保持するための部屋である。
【0017】
Xスキャンコイル13、Yスキャンコイル12は、図1の(a)で上述したEBスキャン回路10から供給されたスキャン電流(X、Y)でそれぞれ駆動され、電子ビーム15がルツボ内の材料をX方向およびY方向に走査して加熱し、当該材料を溶解して蒸発させるためのものである。
【0018】
フィラメント14は、電子ビーム15を発生するものであって、公知のヘアピン型のタングステンフィラメントであり、加熱して先端から熱電子を放出するものである。
【0019】
電子ビーム15は、フィラメント14から図示外のアノードに印加した電圧で加速されて放出された細く絞られた電子ビームである。電子ビーム15は、フィラメント14から放出され、図示外の静磁界によりここでは、約270°回転し、ルツボ15内の材料に照射し、加熱する。
【0020】
カメラ16は、ルツボ18内に設置した材料が電子ビーム15で溶かされて蒸発した状態を撮影し、図1の(a)のPC1の画面上に当該材料の溶けあとの画像を表示し、使用者に当該溶けあとの画像を見て、後述する図2から図6に従い、スキャン波形(X、Y)を適切に調整し、当該材料の溶けあとが可及的に平坦になるように調整するためのものである。カメラ16は、電子ビーム15で材料を照射しつつ走査して加熱しているときは、当該材料が蒸発しても当該カメラ16に付着しないように、カメラ移動機構17によって材料から見えない位置に移動したり、あるいはチャンバ11に窓を設けて当該窓の外側に配置したりする。窓の外側にカメラ16を設けたときは、電子ビーム15で材料を加熱時は窓に設けたシャッターを閉じ、加熱終了後にシャッターを開けてカメラ16で材料の溶けあとの画像を撮影する。
【0021】
蒸着材料21は、電子ビーム15を照射しつつ走査し、加熱して対向して配置した基板に蒸着するための材料である。
【0022】
次に、図2のフローチャートの順番に従い、図1の構成の動作を詳細に説明する。
図2は、本発明の動作説明フローチャートを示す。
【0023】
図2において、S1は、波形作成画面を表示する。これは、例えば後述する図3の波形作成画面を表示する。
【0024】
S2は、材料を選択する。これは、電子ビーム15で照射して加熱する材料を選択する。これは、図3の波形作成画面の図示外の材料一覧から材料を選択する。選択された材料が既知の材料(既にスキャン波形を作成済みの材料)と判明した場合には、既知の材料のデフォルト波形(既に作成されたスキャン波形)を使用し、終了する。一方、新規の材料の場合には、当該新規の材料に適したスキャン波形を使用者が作成するために、S3以降に進む。
【0025】
S3は、基本波形作成画面上で、任意の場所をマウスでクリックし、半周期分の波形作成に必要なx,yデータを取得する。これは、図3の下左の基本波形画面(ここでは、半周期を4分割したメッシュを表示した基本波形画面)上で、スキャン波形が通る1点(あるいは近傍の1点)をマウスでクリックし、当該クリックしたx,yデータを取り込む。
【0026】
S4は、x,yデータを式に代入し、半周期波形計算する。これにより、S3でクリックしたx,yデータを通る(あるいは近傍を通る、以下同一)半周期のスキャン波形、例えば後述する図5の左端の半周期のスキャン波形が計算されたこととなる。
【0027】
S5は、半周期波形を基本波形作成画面に表示する。これは、S4で計算した半周期波形を、図3の下左の基本画面上に表示する。
【0028】
S6は、半周期波形をミラーコピーし、右側のミラーコピー画面に表示する。これは、S5で図3の下左の基本画面上に半周期のスキャン波形を表示し、これをミラーコピーして右側のミラーコピー画面に表示し、結果として後述する図5の右側の1周期分のスキャン波形を表示する。
【0029】
S7は、OKか判別する。これは、S6で表示した1周期分のスキャン波形を使用者が見てOKか判別する。YESの場合には、S8に進む。NOの場合には、S3に戻り繰り返す。
【0030】
S8は、波形発生部にデータ転送する。
S9は、材料を蒸着する。これらS8、S9は、OKとなったスキャン波形をDA1,DA2に設定し、アナログのスキャン信号に変換してEBスキャン回路10に入力し、当該スキャン波形で電子ビーム15を走査して材料を加熱し、対向して配置した基板の上に蒸着する。
【0031】
S10は、溶融面を観察(肉眼あるいはカメラ画像)する。これは、蒸着を終了した後、材料の溶融面を観察してその平坦からのずれを認識したり、カメラ16で撮影した材料の溶融面の画像を画面上に表示し、これを使用者が見て平坦からのずれを認識する。
【0032】
S11は、OKか判別する。これは、S10で材料の溶融面がほぼ平坦でスキャン波形が適切でOKか判別する。YESの場合には、終了する。NOの場合には、S3に戻り繰り返したり、あるいは、後述する図6に示すように、ミラーコピー画面上でスキャン波形を表示して修正したい点をマスクでクリックして当該クリックした点(あるいは近傍の点)になるようにスキャン波形を部分的に修正し、S7に戻り繰り返す。
【0033】
以上によって、使用者は図3の基本波形画面上でスキャン波形の通る1点(あるいは近傍の1点)をマスクでクリックすると、自動的に当該1点(あるいは近傍)を通る半周期のスキャン波形を作成し、更に、これをミラーコピーして1周期分のスキャン波形を自動作成して表示し、使用者がOKとしたときに当該スキャン波形で電子ビーム15をスキャンして材料を加熱し、蒸着する。蒸着終了後に、材料の溶融面を直接に肉眼で見る、あるいはカメラで撮影した画像を見て、材料の溶融面が平坦でなく不適切と判明したときは、図3の下段の基本波形画面上でスキャン波形を再度作成しなおす、あるいは、図3の下段のミラーコピー画面上で図6に示すようにしてスキャン波形の修正したい近傍をマウスでクリックすると当該クリックした点(あるいは近傍)を通るように一部分を修正した半周期のスキャン波形を生成し、左側にミラーコピーして1周期分のスキャン波形に修正する。そして、再作成したスキャン波形あるいは1部分を修正したスキャン波形をもとに、電子ビーム15をスキャンして材料を加熱し、蒸着することが可能となる。
【0034】
図3は、本発明の画面例を示す。これは、使用者がスキャン波形を作成したり、作成したスキャン波形を修正したりなどする画面例である。
【0035】
図3において、振幅調整ボタンは、スキャン波形(X,Y)の振幅(電子ビーム15の走査幅(X,Y))を調整するためのものである。
【0036】
データ送信ボタンは、作成あるいは修正した後のスキャン波形(X、Y)をスキャン発生部に送信し、実際に反映するためのものである。
【0037】
データ保存/読込ボタンは、材料毎の作成あるいは修正した後のスキャン波形(X,Y)を保存したり、保存したデータを読み込んだりするものである。
【0038】
上段のXスキャンの部分は、作成あるいは修正したXスキャン波形、振幅、周波数などを表示したり、修正したりなどするための画面である。
【0039】
中段のYスキャンの部分は、作成あるいは修正したYスキャン波形、振幅、周波数などを表示したり、修正したりなどするための画面である。
【0040】
下段の左側の基本波形画面は、使用者がマスクでクリックして作成したいスキャン波形が通る1点を指定したり、当該指定した1点(あるいは近傍)を通る半分の作成したスキャン波形を表示したりなどするものである。
【0041】
下段の右側のミラーコピー画面は、左側の半分のスキャン波形をミラーコピーしたスキャン波形を表示したり、表示されたスキャン波形について修正したいときにマスクでクリックした1点を通る(あるいは近傍を通る)スキャン波形になるように部分修正して表示およびこれをミラーコピーして左側の基本波形画面に表示したりなどするためのものである(図6参照)。
【0042】
以上のように、使用者は基本波形画面上で1点を指定すると当該1点(あるいは近傍)を通る半分のスキャン波形を作成および右側にミラーコピーしてスキャン波形を作成して表示し、データ送信ボタンを押下して波形発生部に送信して実際のスキャン波形に反映することが可能となる。そして、スキャン波形で実際に電子ビーム15を材料に照射し走査して溶解して蒸着し、蒸着終了後などに材料の溶融面を肉眼で観察、あるいはカメラで撮影した溶融面の画像を観察し、溶融面が平坦でなく不適切の場合には、ミラーコピー画面上でスキャン波形の1点をマウスでクリックしてその近傍のスキャン波形を修正および基本波形画面にミラーコピーして1周期分のスキャン波形を作成したり、基本波形画面上で再度、1点をマウスでクリックして再作成させたりすることが極めて容易に可能となった。
【0043】
尚、必要に応じて、上段のXスキャンの部分の振幅調整ボタンを押下してXスキャンの振幅を増減したり、中段のYスキャンの部分の振幅調整ボタンを押下してYスキャンの振幅を増減したり、更に、図示外の周波数ボタンを押下してそれぞれの周波数を増減したりすることが可能である。
【0044】
図4は、本発明の説明図(スキャン波形の生成)を示す。これは、図3の下左の基本波形画面上で使用者が1点をマウスでクリックして指定すると、当該1点を通る半分のスキャン波形を算出する手順の例を説明したものである。
【0045】
式(1)は、本実施例で用いるスキャン波形を計算する計算式の例を示す。図示の式(1)は、円を描く式であって、ここでは、(a)に示すように、1/4の部分を用いる。式(1)を変形すると、式(2)、式(3)に示すようになる。
【0046】
式(2)、式(3)を直感的に扱い易くかつ直感的に波形を生成するために、式(1)のa,bを式(4)、式(5)と置き、当該式(1)に代入してy,xについて変形すると式(6)、式(7)が得られる。
【0047】
ここで、既述した図3の下左の基本波形画面上で、(b)に示すように、任意の1点をマウスでクリックすると、左下を原点とし、x座標のn,y座標のmを得る(n,mは0から1の間の値)。式(6)のx1には、x座標の0から1までの間を25分割した値を代入し、yを式(7)のyに代入する。マウスでクリックした点のn,mはそれぞれ式(4)、式(5)に代入する。
【0048】
以上の手順により、スキャン波形の半周期分の波形(c−1)を作成する(図3の基本波形画面)。作成した(c−1)の半周期分の波形を、ミラーコピーして(c−2)の波形を生成し(図3のミラーコピー画面)、全体で1周期分のスキャン波形を生成する。
【0049】
以上のように、使用者が図3の基本波形画面上でマスクをクリックして1点を指定する(図4の(b))と、当該1点(あるいは近傍)を通る半分のスキャン波形を作成し(図4の(c−1)、図3の基本波形画面)、これをミラーコピーして残りの半分のスキャン波形を作成し(図4の(c−2)、図3のミラーコピー画面)、両者を合わせて1周期分のスキャン波形を自動作成することが可能となる。
【0050】
図5は、本発明のスキャン波形の生成例を示す。
左側は、図3の基本波形画面上で使用者がマスクでクリックして1点を指定する位置の例および当該1点(あるいは近傍)を通る半分の生成したスキャン波形の例を(a)から(e)にそれぞれ示す。
【0051】
中央は、左側の半分のスキャン波形をミラーコピーした半分のスキャン波形の例を(a)から(e)にそれぞれ示す。
【0052】
右側は、左側と中央とを合わせて1周期のスキャン波形の例を(a)から(e)にそれぞれ示す。
【0053】
以上のように、使用者が図3の左下の基本波形画面上でマスクでクリックして1点を指定すると、当該1点(あるいは近傍)を通る半分のスキャン波形を図4に従い自動作成して表示およびミラーコピーして1周期分の任意形状のスキャン波形を自動作成することが可能となる。
【0054】
図6は、本発明の説明図を示す。
図6の(a)は、修正例を示す。これは、既述した図2のフローチャートに従い作成した1周期分のスキャン波形について、右側のミラーコピー画面上で、修正したい場所をマスクでクリックして指定すると、図示ように、クリックした1点の近傍の波形を部分的に図示のように修正(図では持ち上げ)し、これを左側の基本波形画面にミラーコピーし、1周期分のスキャン波形を修正する。尚、修正時は、図示のように、振幅は例えば175分割、1周期は例えば50分割し、マスクでクリックした1点が最も近い分割点と判定し、各分割点の位置を図示のように部分的に修正する(例では、図示の角度の三角形の頂点をマスクでクリックした1点としてスキャン波形を持ち上げた形で修正する(三角形の頂点の角度は予め実験で求めて決めておく))。
【0055】
図6の(b)は、周波数を低くする例を示す。スキャン波形の周波数を低くするには、ここでは、各分割点で滞在する時間をそれぞれ図示の斜線のように長くして調整する。
【0056】
図6の(c)は、周波数を高くする例を示す。スキャン波形の周波数を高くするには、ここでは、各分割点で滞在する時間をそれぞれ図示の斜線のように短くして調整する。
【0057】
図7は、本発明の説明図(画像)を示す。
図7において、蒸着材料は、電子ビーム15で照射しつつ走査して加熱し、図示外の対向して配置した基板上に蒸着するための材料である。
【0058】
カメラ16は、蒸着材料のほぼ真上から当該蒸着材料の溶融面を撮影して画像を生成し、既述した図1のPC1の画面上に表示するものである。
【0059】
以上の構成のもとで、蒸着を終了した後の蒸着材料21をカメラ16で撮影してその画像をPC1の画面上に表示(例えば図3の上段の左側に表示)し、この表示された蒸着材料の溶融面の画像を使用者が見て、図3の下段の基本波形画面でスキャン波形を再作成したり、図3の下段のミラーコピー画面上で現在のスキャン波形を表示して修正したり(図6の(a))し、当該画像上で蒸着材料の溶融面が可及的に平坦で有効利用できるように修正することが可能となる。
【0060】
尚、実施例では基本波形画面上で1点を指定し、指定された1点を通る半分のスキャン波形を図4に従い作成するとしたが、これに限られることなく、指定された1点の含まれる分割点を通るとしたり、いずれにしても指定された1点の座標で決まる半分のスキャン波形を作成できればよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、使用者が簡易に試料(材料)の溶けあとが可及的に平坦で有効利用されるように調整可能にする電子源装置におけるスキャン方法および電子源装置に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の1実施例構成図である。
【図2】本発明の動作説明フローチャートである。
【図3】本発明の画面例である。
【図4】本発明の説明図(スキャン波形の生成)である。
【図5】本発明のスキャン波形の生成例である。
【図6】本発明の説明図である。
【図7】本発明の説明図(画像)である。
【符号の説明】
【0063】
1:PC
3:CPU
4:バス
6X:X周波数UP/DOWN SW
6Y:Y周波数UP/DOWN SW
7X:XスキャンON/OFF SW
7Y:YスキャンON/OFF SW
9:信号線
10:EBスキャン回路
11:チャンバ
12:Yスキャンコイル
13:Xスキャンコイル
14:フィラメント
15:電子ビーム
16:カメラ
17:カメラ移動機構
18:ルツボ
21:蒸着材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子源から放出されて加速された電子ビームを物質に照射した状態でスキャンして加熱し、対向して配置した基板上に当該物質を蒸着させる電子源装置におけるスキャン方法において、
画面上で前記スキャンしようとするスキャン波形の1点が指定されると、当該1点をもとにスキャン波形を生成するステップと、
前記生成したスキャン波形を波形発生器に送信して当該スキャン波形で前記電子ビームを物質に照射した状態でスキャンして加熱させるステップと
を有する電子源装置におけるスキャン方法。
【請求項2】
前記画面上でスキャンしようとするスキャン波形の1点の指定として、画面上でスキャンしようとするスキャン波形の半分のスキャン波形の1点を指定し、当該1点をもとに半分のスキャン波形を生成した後、当該生成した半分のスキャン波形をミラーコピーして全体のスキャン波形を生成することを特徴とする請求項1記載の電子源装置におけるスキャン方法。
【請求項3】
前記生成したスキャン波形が表示された画面上で当該スキャン波形を修正しようとする1点が指定されると、当該1点をもとにスキャン波形に部分修正するステップを更に有することを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載の電子源装置におけるスキャン方法。
【請求項4】
前記スキャン波形は、X方向のスキャン波形およびY方向のスキャン波形のいずれか1方あるいは両方について画面上でスキャンしようとするスキャン波形の1点を指定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の電子源装置におけるスキャン方法。
【請求項5】
前記電子ビームを物質に照射して加熱した後の当該物質の溶けあとをカメラで撮影してその画像を表示し、当該表示した画像を見せて前記1点を指定させることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の電子源装置におけるスキャン方法。
【請求項6】
電子源から放出されて加速された電子ビームを物質に照射して加熱し、対向して配置した基板上に当該物質を蒸着させる電子源装置において、
画面上でスキャンしようとするスキャン波形の1点が指定されると、当該1点をもとにスキャン波形を生成する手段と、
前記生成したスキャン波形を波形発生器に送信して当該スキャン波形で前記電子ビームを物質に照射した状態でスキャンして加熱させる手段と
を備えたことを特徴とする電子源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−48648(P2007−48648A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233014(P2005−233014)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(592115825)日新技研株式会社 (10)
【Fターム(参考)】