説明

電子物品監視装置

【課題】タグ検出装置における応答信号の検知レベルを自動的に変化させ、外来ノイズ又は環境の変化に対応してメンテナンスを一部自動化することができる電子物品監視装置を提供すること。
【解決手段】共振タグ40からのタグ応答波BEを検出するレベルを低レベルモード動作時の第1検知レベルL1´と高レベルモード動作時の第2検知レベルL2´との2段階に設定することにより、第1及び第2検知レベルL1´,L2´が自動調整されるだけでなく、第2検知レベルL2´に設定しても所定頻度の第2検知レベルL2´を超えるタグ応答波BEを検出する場合は、警報装置ARを停止させ、警報音が発生しないようにすることができる。これにより、外来ノイズ又は環境の変化によって生じうる誤報に電子物品監視装置100内で自動的に対応することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振タグを用いた電子物品監視装置に関し、特に外来ノイズ又は環境の変化による誤報を防止する電子物品監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子物品監視装置として、複数のバーストを送信し、バーストを送信しない休止期間中に電磁信号を受信し、この電磁信号が所定レベルを超えた場合に、警報手段を起動する受発信型のタグ検出装置が存在する(特許文献1参照)。
【特許文献1】特公平6−97476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような電子物品監視装置では、外来ノイズ又は環境の変化によって所定レベルを超えた電磁信号がタグ検出装置に受信された場合でも警報が発生してしまうという問題がある。そのため、このような誤報に対し、メンテナンス要員が出向いて電磁信号検知レベルの調整等の電子物品監視装置のメンテナンスをしなければならないという手間が生じる。
【0004】
そこで、本発明は、タグ検出装置における応答信号の検知レベルを自動的に変化させ、外来ノイズ又は環境の変化に対応してメンテナンスを一部自動化することができる電子物品監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の電子物品監視装置は、(a)共振タグが応答可能な信号を発信して共振タグからの応答信号を検出するとともに、2段階以上の複数の検知レベルに設定可能なタグ検出装置と、(b)タグ検出装置による複数の判定レベルの応答信号の検出に対応して警報音を発生可能な警報装置と、(c)タグ検出装置おいて、低レベルモードの動作中に複数の検知レベルのうち例えば相対的に低い一方の検知レベルを超える応答信号が所定検知期間に所定回数検出された場合、検知レベルを上昇させ複数の検知レベルのうち例えば相対的に高い他方の検知レベルに設定する高レベルモードの動作を実行させ、高レベルモードでの動作中にタグ検出装置において他方の検知レベルの応答信号が所定検知期間に所定回数検出された場合、警報装置の動作を強制的に停止させる警報停止モードを設定する制御装置と、を備える。
【0006】
上記電子物品監視装置では、共振タグからの応答信号を検出するレベルを2段階以上に設定し、設定した検知レベルにおける信号検出頻度に応じて警報装置の動作を制御することができる。つまり、2段階以上の検知レベルが自動調整されるだけでなく、検知レベルを高レベルモードに設定しても所定頻度の検知レベルを超える応答信号を検出する場合は、警報装置を停止させ、警報音が発生しないようにすることができる。これにより、外来ノイズ又は環境の変化によって生じうる誤報に電子物品監視装置内で自動的に対応することができ、メンテナンス要員が出向くことによる経済的負担、時間的遅延を軽減することができる。
【0007】
本発明の具体的な態様によれば、上記電子物品監視装置において、複数の検知レベルは、複数の判定レベルと指定率との積である。ここで、判定レベルとは、警報装置において警報音を発生させる応答信号レベルのことをいう。この場合、検知レベルを基準として事前に誤報の原因となる応答信号を検出することにより、不必要に警報音を発生させないようにすることができる。
【0008】
本発明の別の態様によれば、制御装置が、警報停止モードが設定された高レベルモードの動作中に、タグ検出装置において他方の検知レベルの応答信号の検出が所定検知期間に所定回数を下回った場合、高レベルモードを解除して低レベルモードに移行させる。この場合、警報停止モードを維持したまま高レベルモードから低レベルモードへと移行することにより、警報停止モードを解除する際にタグ検出装置をより安定した状態にすることができる。
【0009】
本発明のさらに別の態様によれば、制御装置が、警報停止モードが設定された低レベルモードの動作中に、タグ検出装置による一方の検知レベルの応答信号の検出が所定検知期間に所定回数を下回った場合、警報停止モードを解除する。この場合、低レベルモード動作時の検知レベルにおいて応答信号検出が上記所定回数に対応する頻度以下であれば警報停止モードを維持する必要性がなくなり、警報停止モードを解除することができる。
【0010】
本発明のさらに別の態様によれば、制御装置が、タグ検出装置による検知レベルの応答信号を検出する際に、設定されている検知レベルで所定検知期間に継続して応答信号の検出を行って検知レベルの応答信号の検出回数を積算する。この場合、所定検知期間の履歴を取ることによって所定検知期間での応答信号の検出回数により平均化し安定した値として応答信号の検出頻度を算出することができる。
【0011】
本発明のさらに別の態様によれば、制御装置が、タグ検出装置による検知レベルの応答信号を検出する際に、所定検知期間よりも短い所定更新周期での検知レベルの応答信号の検出回数として計測値を更新し、計測値の履歴に基づいて所定検知期間の検知レベルの応答信号の検出回数を積算して頻度を計測する。この場合、所定更新周期で更新される履歴を取ることにより、各所定検知期間において最新の応答信号の検出状態を反映させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る電子物品監視装置の構成を説明するブロック図である。この電子物品監視装置100は、タグ検出装置TRと制御装置CRと警報装置ARとを備える。なお、タグ検出装置TRの送受信ユニット30と制御装置CRとは、共通の基板上に設けられている。
【0013】
タグ検出装置TRは、受発信型のタグ検出送受信装置であり、共振タグが応答可能な信号を発信するとともに共振タグ40からの応答信号を検出する。タグ検出装置TRは、アンテナ20と、アンテナ20に接続される送受信ユニット30とを備える。送受信ユニット30は、アンテナ20に給電し、このアンテナ20から高周波のバーストである送信波TWを周囲の所定方向に放射させる。この送信波TWは、その伝搬に伴って高周波の電磁界を形成し、周囲の所定方向に存在するLC型の共振タグ40が共振条件を満たすものである場合、送信波TWのエネルギーが電磁波吸収体である共振タグ40に供給される。エネルギーの供給を受けた共振タグ40は、これに内蔵された共振回路により、一定の遅延時間で減衰する応答信号としてタグ応答波BEを放射する。共振タグ40から放出される応答信号であるタグ応答波BEは、アンテナ20を介して送受信ユニット30で検出され適当な処理が施される。送受信ユニット30は、タグ応答波BEを検出した場合、制御装置CRにこの検出結果を出力する。制御装置CRは、この検出結果を判定結果として処理し、警報装置ARに出力する。
【0014】
ここで、送受信ユニット30は、送信波TWのもとになる送信信号を形成する送信部50と、タグ応答波BEを選択的に検出する受信部60と、アンテナ20を送信部50及び受信部60のいずれかに切り替えて接続するスイッチ70とを備える。
【0015】
図2は、図1に示す電子物品監視装置100の具体的な回路構成を説明する図である。
タグ検出装置TRの送受信ユニット30において、送信部50は、バースト型の高周波を断続して生成するためのバースト送信部であり、高周波発振装置51と、電力増幅回路53とを備える。
【0016】
高周波発振装置51は、ダイレクト・ディジタル・シンセサイザ等で構成され、基準発振部、演算部、波形メモリ、D−Aコンバータ等を有する。また、電力増幅回路53は、高周波発振装置51からの高周波出力を電力増幅してバースト信号を生成する。このバースト信号は、スイッチ70を介してアンテナ20に送出され、送信波TWが放射される。前者の高周波発振装置51は、制御装置CRの制御下で、基準発振部から出力される搬送波を直接FM変調することにより、例えば7.7MHz〜8.7MHzの帯域の高周波を掃引するように発生する。つまり、送信波TWの元になる高周波は、所定周波数範囲内で周波数偏移するように変調される。この際、高周波発振装置51から出力される高周波は、例えば20kHz単位で周波数が漸増する。具体的に説明すると、受発信型のタグ検出装置TRは、10mSの周期又はサイクルで同様のトランシーバ動作(スキャン動作)を繰り返す。各スキャン動作において、高周波発振装置51は、7.7MHzからスタートして、0.2mSごとに周波数を20kHzだけ増加させ、10μSのバースト信号の高周波を繰り返し出力する。この場合、50ステップの周波数増加によって、全周波数の掃引が10mSで完了する。
【0017】
なお、送信部50は、制御装置CRの制御下で動作しており、制御装置CRからの送信イネーブル信号をゲートとして、スイッチ70やアンテナ20への電力供給タイミングを調整することができるようになっている。
【0018】
受信部60は、応答信号を受信する部分であり、同調回路61と、高周波増幅器62と、局部発振装置63と、混合回路64と、中間周波増幅器65と、絶対値変換器66と、AD変換器67とを備える。ここで、同調回路61は、アンテナ20で受信した電波からタグ応答波BEに同調する適当な波長帯域(具体的には、例えば波長7.7MHz〜8.7MHzの帯域)の信号を選択的に検出し、高周波増幅器62は、同調回路61からの高周波出力を電力増幅して混合回路64に出力する。局部発振装置63は、高周波発振装置51と類似した構造を有し、制御装置CRの制御下で、基準発振部から発信される搬送波を直接FM変調することにより、例えば6.5MHz〜7.5MHzの高周波を掃引するように発生する。具体的に説明すると、例えば10mSの周期又はサイクルのトランシーバ動作(スキャン動作)中において、局部発振装置63は、6.5MHzからスタートして、0.2mSごとに周波数を20kHzだけ増加させた高周波を出力する。この場合も、50ステップの周波数増加によって、全周波数の掃引が10mSで完了する。混合回路64は、所謂スーパーヘテロダインと呼ばれる中間周波形成用の回路で、高周波増幅器62からの高周波出力と、局部発振装置63からの局部発振出力との混合により、両者の周波数差に対応する振幅信号を得る。具体的には、上述した高周波発振装置51からの出力が電力増幅回路53で電力増幅されアンテナ20から放射され、アンテナ20の付近に共振タグ40が存在する場合、その存在がタグ応答波BEとしてアンテナ20で受信されるが、混合回路64により、同調回路61から高周波増幅器62を経た受信信号と、局部発振装置63からの局部発振出力とを混合(MIX)させた結果として、1.2MHzの中間周波数信号が得られる。
【0019】
なお、局部発振装置63は、高周波発振装置51に兼用させることもできる。つまり、制御装置CRの制御下で高周波発振装置51を時分割で動作させ、受信時に高周波発振装置51を局部発振装置63として機能させることができる。
【0020】
中間周波増幅器65は、混合回路64から出力される中間周波数信号を必要なレベルまで増幅するとともに不要な周波数の信号成分を除去する。具体的には、1.2MHzの中間周波数信号が応答検出信号として選択的に増幅され、共振タグ40の存在可能性を示す信号として利用される。絶対値変換器66は、中間周波増幅器65で増幅された応答検出信号から所謂検波と同様の処理を行う部分であり、応答検出信号の振幅の絶対値が取り出される。AD変換器67は、絶対値変換器66から出力された応答検出信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する。このAD変換器67から出力されたデジタル応答検出信号は、各種演算処理を行うための制御装置CRに出力される。なお、この信号は、後述する制御装置CRにより、低レベルモードと高レベルモードとの少なくとも2段階の検知レベルで検知可能となっており、各モードの設定すなわち信号処理の内容を環境や動作状況に応じて変更することができる。また、この信号は、各モードに対応付けて設定されている判定レベルによって警報の要否の判定に利用される。
【0021】
なお、受信部60は、制御装置CRの制御下で動作しており、制御装置CRからの受信イネーブル信号をゲートとして、アンテナ20やスイッチ70からの検出信号の受信タイミングや増幅タイミングを調整することができるようになっている。
【0022】
制御装置CRは、例えばマイクロコンピュータで構成され、プロセッサやメモリを備える。この制御装置CRは、上述のように送受信ユニット30と同一の回路基板上に形成されており、サイクル調整部91とフィルタ92と検知レベル設定部93とを有する(図2参照)。サイクル調整部91は、送信イネーブル信号を送信部50に出力するタイミングや、受信イネーブル信号を受信部60に出力するタイミングを調整している。また、制御装置CRは、受信部60から出力されるデジタル応答検出信号の強度値が所定の閾値を越えた場合に、共振タグ40が存在することを示す判定信号を出力するだけでなく、各種のフィルタ92により、受信部60から出力されるデジタル応答検出信号に適当なフィルタ処理を施して共振タグ40の誤検出等を防止している。具体的には、フィルタ92において、デジタル応答検出信号に対して例えばコムフィルタ処理が施される。このコムフィルタ処理では、高周波発振装置51等が例えば100Hzのサイクルで周波数を変化させることを利用して、このサイクルに関して、受信部60から出力されるデジタル応答検出信号のうちN次周期成分のみを選択的に増幅することができる。このようなコムフィルタ処理により、デジタル応答検出信号の検出感度を高めることができ、存在する共振タグ40の検出不能や、存在しない共振タグ40の誤検出を確実に防止・低減することができる。
【0023】
また、制御装置CR中の検知レベル設定部93は、所定レベルに達したタグ応答波BEの有無や検出頻度に応じて制御され、同調回路61の信号の検知レベルや判定レベルの設定を行う。すなわち、制御装置CRは、タグ検出装置TRのタグ応答波BEの検知レベル等の設定を、マニュアル操作だけでなく、受信状況に応じて自動的に制御することができる。制御装置CRは、タグ検出装置TRにおいて、低レベルモードの動作中に第1検知レベルL1´(後述する図4(C)参照)を超えるタグ応答波BEが所定の検知期間に所定回数検出された場合、検知レベルを上昇させ第2検知レベルL2´(図4(C)参照)に設定する高レベルモードの動作を実行させる。また、高レベルモードでの動作中にタグ検出装置TRにおいて第2検知レベルL2´を超えるタグ応答波BEが所定の検知期間に所定回数検出された場合、後述する警報装置ARの動作を強制的に停止させる警報停止モードを設定する。ここで、第1及び第2検知レベルL1´,L2´は、それぞれ第1判定レベルL1及び第2判定レベルL2の2段階を基準に設定される(図4(C)参照)。第1判定レベルL1は、低レベルモード動作時に警報装置ARにおいて警報音を発生させる応答信号レベルであり、第2判定レベルL2は、高レベルモード動作時に警報装置ARにおいて警報音を発生させる応答信号レベルである。第1検知レベルL1´は、2段階の判定レベルのうち第1段階(低レベルモード動作時)に固定的に設定された第1判定レベルL1と、設置者やメンテナンス要員が調整できる指定率との積で与えられる。また、第2検知レベルL2´は、2段階の判定レベルのうち第2段階(高レベルモード動作時)で固定的に設定された第2判定レベルL2と、設置者やメンテナンス要員が調整できる指定率との積で与えられる。具体的には、例えば判定レベルは、低レベルモードに対応する第1判定レベルL1において1ビット256段階のうち50デジット、高レベルモードに対応する第2判定レベルL2において100デジットとなっている。指定率は、例えば70%となっており、指定率70%の場合の検知レベルは、低レベルモードにおいて35デジットの第1検知レベルL1´、高レベルモードにおいて70デジットの第2検知レベルL2´となる。
【0024】
また、制御装置CRは、タグ検出装置TRによる警報音発生用の第1又は第2判定レベルL1,L2のタグ応答波BEの有無を検出する際に、設定されている第1又は第2検知レベルL1´,L2´で所定の検知期間に継続してタグ応答波BEの検出を行い、第1又は第2検知レベルL1´,L2´のタグ応答波BEの検出回数を積算する。この際、制御装置CRは、所定の検知期間よりも短い所定の更新周期での第1又は第2検知レベルL1´,L2´のタグ応答波BEの検出回数として計測値を更新し、この計測値の履歴に基づいて所定の検知期間の第1又は第2検知レベルL1´,L2´のタグ応答波BEの検出回数を積算して頻度を計測する。具体的には、図3に示すように、例えば検知期間は60秒間、更新周期は10秒間となっている。各検知期間(例えば、図3の検知期間nt(−5)〜nt(−0))において、第1又は第2検知レベルL1´,L2´のタグ応答波BEの検知回数のカウントは、更新周期の1周期分、すなわち10秒間ずらして行われる。この場合、検知期間nt(−1)のうち最近の5周期分の更新周期の履歴が、次の検知期間nt(−0)に反映され、これらの更新周期に新しくカウントした1周期分の更新周期NRを追加したものが検知期間nt(−0)となる。
【0025】
警報装置ARは、警報音発生部81と、警報表示ランプ駆動部82と、警報停止モード表示ランプ駆動部83とを有する(図2参照)。警報音発生部81は、例えばタグ検出装置TRによる各モードにおける第1又は第2判定レベルL1,L2のタグ応答波BEの検出に対応して警報音を発生する。警報表示ランプ駆動部82は、警報音の発生に伴い不図示の警報表示ランプを点灯又は点滅させる。警報停止モード表示ランプ駆動部83は、制御装置CRからの外部出力イネーブル(例えば、メモリ上のフラグとして設定される)がオフの状態の場合は、警報停止モードが設定され、不図示の警報停止モード表示ランプを点灯し、外部出力イネーブルがオンの状態の場合は、警報停止モードが解除され、警報停止モード表示ランプを消灯する。ここで警報装置ARにおいて、各モードにおける第1又は第2検知レベルL1´,L2´のタグ応答波BEの検出結果に応じて警報停止モードのオン/オフの切り替えが行われる。つまり、警報装置ARは、第1又は第2検知レベルL1´,L2´のタグ応答波BEを所定の検知期間に所定回数未満検出した場合には警報停止モードがオフの状態となり、第1又は第2判定レベルL1,L2のタグ応答波BEの検出時に警報音を発生及び警報表示ランプを点灯又は点滅するようになっている。一方、第1又は第2検知レベルL1´,L2´のタグ応答波BEを所定の検知期間に所定回数以上検出した場合には警報停止モードがオンの状態となり、第1又は第2判定レベルL1,L2のタグ応答波BEの検出時に警報音が発生しないようになっている。
【0026】
図4(A)〜4(F)は、送受信ユニット30の動作例を説明するタイミングチャートである。
図4(A)は、制御装置CRから送信部50に出力される送信イネーブル信号であり、送信イネーブル信号がオンのタイミングに対応して、送信部50からアンテナ20に対して断続的にバースト用の電力が供給される。この場合、例えば100Hzの各スキャン動作を構成する多数の識別サイクル中においてバースト期間中に、1つの送信イネーブル信号が形成される。このスキャン動作期間中、例えば50回の識別サイクルを実施し、各識別サイクルにおいて1回のバーストを発生させる。図4(B)は、送信部50から出力される高周波すなわちアンテナ20から放射される送信波TWに対応する送信波形が示されている。図4(C)は、共振タグ40からのタグ応答波BEに対応するものであり、各識別サイクルにおいて休止期間中の初期段階に出現する。図4(D)は、制御装置CRから受信部60に出力される受信イネーブル信号であり、休止期間の初期所定期間中と、休止期間中の後期所定期間中とにオンとなる。これらは、バースト期間中のバーストに起因するタグ応答波BEと、バックグラウンドノイズとを選択的に検出するための窓となっている。図4(E)は、受信部60に設けたAD変換器67を動作させるタイミングを示しており、図4(D)の受信イネーブル信号に対応したものとなっている。ここで、AD変換器67によるサンプリングのタイミングは、バーストの受信イネーブル中の待機時間t1経過後の第1検知期間(応答信号検出用)と、バーストの受信イネーブル中の待機時間t2経過後の第2検知期間(バックグラウンドノイズ検出用)とで構成される。図4(F)は、制御装置CRでの処理の一例を示すものである。このタグ差分出力Aは、デジタル応答検出信号のad1,ad2の双方が正常である場合に対応する。タグ差分出力Aは、例えば以下の演算式(1)
ad=ad1−ad2 … (1)
によって与えられる。この判別値adが所定値、すなわち各モードにおける第1又は第2判定レベルL1,L2を超えると、制御装置CRは、通常であれば、電子物品監視装置100近くに共振タグ40が存在し、物品の不正な持ち出し等が行われていると判断するが、他の条件も参酌して物品の不正な持ち出し等が行われていないと判断することもある。
【0027】
図5及び図6は、電子物品監視装置100の動作を説明するフローチャートである。図5は、電子物品監視装置100のサブの動作である警報音の発生条件の制御を説明するフローチャートであり、図6は、電子物品監視装置100のメインの動作である警報音の発生動作を説明するフローチャートである。電子物品監視装置100は、サブの動作である警報音の発生条件を制御しつつ(図5参照)、メインの動作である警報音の発生動作(図6参照)を行っている。なお、図5及び図6の両動作は定期的な割り込み処理として周期的に繰り返される。
【0028】
まず、図5に示す電子物品監視装置100のサブの動作について説明する。制御装置CRは、一定期間内にタグ応答波BEが低レベルモード動作時の検知レベル(第1判定レベルL1×指定率)、すなわち第1検知レベルL1´以上になったか否かに基づいて、第1検知レベルL1´のタグ応答波BEの検知回数をモニタリングする(ステップS11)。ここで、一定期間とは、図3に示す検知期間であり、例えば60秒となっている。また、ステップS11の段階において、電子物品監視装置100は、初期化処理によって、低レベルモード動作の状態となっており、外部出力イネーブルもオン状態となっている。
【0029】
制御装置CRは、上記一定期間内における第1検知レベルL1´のタグ応答波BEの検知回数が指定回数(指定頻度)以上か否か判断する(ステップS12)。検知回数が指定回数、例えば10回以上である場合は、外来ノイズ又は環境の変化による誤報防止として判定レベルを上げる(ステップS13)。例えば、本実施形態の場合、第1判定レベルL1(50デジット)から第2判定レベルL2(100デジット)へ移行し、高レベルモード動作の状態となり、閾値が50デジット増加する。この判定レベルの上昇に伴い、検知レベルが第1検知レベルL1´(第1判定レベル50デジット,指定率70%)の35デジットから、第2検知レベルL2´(第2判定レベル100デジット,指定率70%)の70デジットとなる。なお、高レベルモードにおける判定レベルや検知レベルの上昇は、例えばメモリ上のフラグとして設定される。一方、検知回数が10回未満の場合、正常な警報状態又は非警報状態としてさらに一定期間モニタリングを継続し(ステップS14)、ステップS12に戻る。
【0030】
外来ノイズ又は環境の変化による誤報防止として判定レベル等や検知レベルを上げたステップS13の後、制御装置CRは、一定期間内にタグ応答波BEが高レベルモード動作時の検知レベル(第2判定レベルL2×指定率)、すなわち第2検知レベルL2´以上になったか否かに基づいて、タグ応答波BEの検知回数をモニタリングする(ステップS15)。
【0031】
制御装置CRは、上記一定期間内における第2検知レベルL2´のタグ応答波BEの検知回数が指定回数(指定頻度)以上か否か判断する(ステップS16)。検知回数が指定回数、例えば10回以上である場合は、外来ノイズ又は環境の変化による誤報の完全防止の状態として外部出力イネーブルをオフにする(ステップS17)。このように外部出力イネーブルがオフの状態になると、警報装置ARは警報停止モードに設定された状態となる。
【0032】
制御装置CRは、ステップS17後、一定期間、第2検知レベルL2´のタグ応答波BEをモニタリングしつつ(ステップS18)、一定期間内における第2検知レベルL2´のタグ応答波BEの検知回数が指定回数以上か否かを判断する(ステップS19)。検知回数が10回未満の場合、高レベルモード動作時における外来ノイズ又は環境の変化による誤報の完全防止の状態から復帰したとして、判定レベルを下げる(ステップS20)。例えば、本実施形態の場合、第2判定レベルL2(100デジット)から第1判定レベルL1(50デジット)へ移行し、低レベルモード動作の状態となり、閾値が50デジット減少する。この判定レベルの降下に伴い、検知レベルが第2検知レベルL2´(第2判定レベル100デジット,指定率70%)の70デジットから、第1検知レベルL1´(第1判定レベル50デジット,指定率70%)の35デジットとなる。一方、検知回数が10回以上の場合、外来ノイズ又は環境の変化による誤報の完全防止の状態が維持される必要があると判断してステップS18に戻り再度一定期間モニタリングを行う(ステップS18)。
【0033】
なお、ステップS19において第2検知レベルL2´のタグ応答波BEの検知回数が10回未満であると判断された場合だけでなく、ステップS16においてタグ応答波BEの検知回数が10回未満であると判断された場合にも、第2判定レベルL2を第1判定レベルL1に下げる(ステップS20)。
【0034】
ステップS20の後、一定期間、第1検知レベルL1´のタグ応答波BEの検知回数をモニタリングし(ステップS21)、一定期間内における検知回数が指定回数以上か否かを判断する(ステップS22)。検知回数が10回未満の場合、第1判定レベルL1における外来ノイズ又は環境の変化による誤報防止の状態から脱したものとして外部出力イネーブルをオンの状態にして警報音が発生可能な状態に復帰する(ステップS23)。つまり、第1又は第2判定レベルL1,L2のタグ応答波BEを検出した場合は、後述するように外部出力がオンとなり、警報音が発生する(図6のステップS34)。ただし、第1検知レベルL1´のタグ応答波BEの検知回数が10回以上の場合、高レベルモード動作の状態にさせ、判定レベルや検知レベルを上げる(ステップS13)。
【0035】
次に、図6に示す電子物品監視装置100のメインの動作について説明する。装置起動後、初期化によって、電子物品監視装置100は警報音の発生が可能な状態である外部出力イネーブルオンの状態となっている(ステップS31)。この状態で、制御装置CRは、タグ検出装置TRにおいて検出したタグ応答波BEが、低レベルモード動作時又は高レベルモード動作時の状態で、それぞれ設定されている第1判定レベルL1、第2判定レベルL2以上であるか否かを判断する(ステップS32)。タグ応答波BEが現在設定されている第1又は第2判定レベルL1,L2以上である場合、外部出力イネーブルがオンの状態か否か判断し(ステップS33)、オンの場合、外部出力をオンにし、電子物品監視装置100を警報状態とする(ステップS34)。外部出力がオンとなった場合、例えば警報装置ARの警報音発生部81は警報音を発生し、警報表示ランプ駆動部82は警報表示ランプを点灯又は点滅させる。なお、この際、警報装置ARは、警報停止モードが解除された状態となっている。一方、タグ応答波BEが現在設定されている第1又は第2判定レベルL1,L2未満である場合や外部出力イネーブルがオフの場合は、ステップS32に戻る。
【0036】
以上の説明から明らかなように、本発明の電子物品監視装置100では、共振タグ40からのタグ応答波BEを検出するレベルを低レベルモード動作時の第1検知レベルL1´と高レベルモード動作時の第2検知レベルL2´との2段階に設定し、設定した第1又は第2検知レベルL1´,L2´におけるタグ応答波BEの検出頻度に応じて警報装置ARの動作を制御することができる。つまり、第1及び第2検知レベルL1´,L2´が自動調整されるだけでなく、第2検知レベルL2´に設定しても所定頻度の第2検知レベルL2´を超えるタグ応答波BEを検出する場合は、警報装置ARを停止させ、警報音が発生しないようにすることができる。これにより、外来ノイズ又は環境の変化によって生じうる誤報に電子物品監視装置100内で自動的に対応することができ、メンテナンス要員が出向くことによる経済的負担、時間的遅延を軽減することができる。
【0037】
また、第1又は第2検知レベルL1´,L2´を基準として、事前に誤報の原因となる応答信号を検出することにより、不必要に警報音を発生させないようにすることができる。また、警報停止モードを維持したまま高レベルモードから低レベルモードへと移行することにより、警報停止モードを解除する際にタグ検出装置TRをより安定した状態にすることができる。また、低レベルモード動作時の第1検知レベルL1´においてタグ応答波BEの検出が所定頻度以下であれば警報停止モードを維持する必要性がなくなり、警報停止モードを解除することができる。また、所定更新周期の履歴を取ることにより、各所定検知期間において最新のタグ応答波BEの検出状態を反映させつつ、所定検知期間でのタグ応答波BEの検出回数により平均化し安定した値としてタグ応答波BEの検出頻度を算出することができる。
【0038】
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、上記実施形態では、低レベルモード動作時の第1検知レベルL1´を35デジット、高レベルモード動作時の第2検知レベルL2´を70デジットとしたが、この第1及び第2検知レベルL1´,L2´は、単なる例示であり、電子物品監視装置100の設置環境に応じた判定レベルによって調整することができる。
【0039】
また、上記実施形態において、検知期間を60秒間、更新周期を10秒間としているが、これらの期間は電子物品監視装置100の設置環境に応じて適宜変更してもよい。
【0040】
また、上記実施形態において、第1及び第2検知レベルL1´,L2´を超えた頻度を検出するため、検知所定回数として10回を閾値としてタグ応答波BEの検出の判定を行っているが、この回数は電子物品監視装置100の設置環境に応じて適宜変更してもよい。
【0041】
また、上記実施形態において、タグ応答波BEの検知レベルを第1検知レベルL1´及び第2検知レベルL2´の2段階で設定したが、2段階以上の検知レベルを設定してもよい。例えば3段階の検知レベルとした場合、第1段階で所定頻度を超えた場合、検知レベルを第2段階に移行させる。さらに、第2段階で所定頻度を超えた場合、検知レベルを第3段階に移行させる。さらに、第3段階で所定頻度を超えた場合、外部出力イネーブルをオフの状態にする。逆に、第3段階で所定頻度以下となった場合、外部出力イネーブルをオフの状態に維持するとともに検知レベルを第2段階に移行させる。さらに、第2段階で所定頻度以下となった場合、外部出力イネーブルをオフの状態に維持するとともに検知レベルを第1段階に移行させる。さらに、第1段階で所定頻度以下となった場合、外部出力イネーブルをオンの状態に戻す。
【0042】
また、上記実施形態において、第1及び第2検知レベルL1´,L2´を構成する、第1及び第2判定レベルL1,L2や指定率の値は例示であり、設置環境に応じて増減させることができる。なお、指定率は、電子物品監視装置100の設置箇所において、設置者やメンテナンス要員が制御装置CRのメモリに書き込んだりディップスイッチで切り替えたりするためのものであり、設置時又は調整時に設置環境に応じた動作を確保することができる。また、指定率は調整後の第2検知レベルL2´が調整後の第1検知レベルL1´を下回らないような値となっている。
【0043】
また、上記実施形態では、タグ検出装置TRとして、受発信型のタグ検出送受信装置を用いたが、これに代えて、共振タグが共振可能な信号を発信する少なくとも1つ以上の分離型のタグ検出送信装置と、共振タグによる減衰吸収を検出する分離型のタグ検出受信装置とを有する分離型のタグ検出装置を用いることができ、このような分離型のタグ検出装置で得られる判別値によって、図5に示すような警報に関する動作を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子物品監視装置の構造を説明するブロック図である。
【図2】電子物品監視装置の回路構成を説明するブロック図である。
【図3】タグ応答波の検知期間について説明する図である。
【図4】(A)〜(F)は、送受信ユニットの動作例を説明するタイミングチャートである。
【図5】電子物品監視装置のサブの動作を説明するフローチャートである。
【図6】電子物品監視装置のメインの動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0045】
20…アンテナ、 30…送受信ユニット、 40…共振タグ、 50…送信部、 51…高周波発振装置、 53…電力増幅回路、 60…受信部、 61…同調回路、 62…高周波増幅器、 63…局部発振装置、 64…混合回路、 65…中間周波増幅器、 66…絶対値変換器、 67…AD変換器、 70…スイッチ、 81…警報音発生部、 82…警報表示ランプ駆動部、 83…警報停止モード表示ランプ駆動部、 91…サイクル調整部、 92…フィルタ、 93…検知レベル設定部、 100…電子物品監視装置、 AR…警報装置、 BE…タグ応答波、 CR…制御装置、 L1,L2…判定レベル、 L1´,L2´…検知レベル、 TR…タグ検出装置、 TW…送信波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振タグが応答可能な信号を発信して共振タグからの応答信号を検出するとともに、2段階以上の複数の検知レベルに設定可能なタグ検出装置と、
前記タグ検出装置による複数の判定レベルの応答信号の検出に対応して警報音を発生可能な警報装置と、
前記タグ検出装置おいて、低レベルモードの動作中に前記複数の検知レベルのうち一方の検知レベルを超える応答信号が所定検知期間に所定回数検出された場合、検知レベルを上昇させ前記複数の検知レベルのうち他方の検知レベルに設定する高レベルモードの動作を実行させ、前記高レベルモードでの動作中に前記タグ検出装置において前記他方の検知レベルの応答信号が前記所定検知期間に所定回数検出された場合、前記警報装置の動作を強制的に停止させる警報停止モードを設定する制御装置と、
を備える電子物品監視装置。
【請求項2】
前記複数の検知レベルは、前記複数の判定レベルと指定率との積である、請求項1記載の電子物品監視装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記警報停止モードが設定された前記高レベルモードの動作中に、前記タグ検出装置において前記他方の検知レベルの応答信号の検出が前記所定検知期間に所定回数を下回った場合、前記高レベルモードを解除して前記低レベルモードに移行させる、請求項1及び請求項2のいずれか一項記載の電子物品監視装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記警報停止モードが設定された前記低レベルモードの動作中に、前記タグ検出装置による前記一方の検知レベルの応答信号の検出が前記所定検知期間に所定回数を下回った場合、前記警報停止モードを解除する、請求項3記載の電子物品監視装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記タグ検出装置による前記検知レベルの応答信号を検出する際に、設定されている検知レベルで前記所定検知期間に継続して応答信号の検出を行って前記検知レベルの応答信号の検出回数を積算する、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の電子物品監視装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記タグ検出装置による前記検知レベルの応答信号を検出する際に、前記所定検知期間よりも短い所定更新周期での検知レベルの応答信号の検出回数として計測値を更新し、前記計測値の履歴に基づいて前記所定検知期間の前記検知レベルの応答信号の検出回数を積算して頻度を計測する請求項5に記載の電子物品監視装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−259029(P2009−259029A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107799(P2008−107799)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000108649)タカヤ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】