説明

電子装置、画像形成装置および電源制御プログラム

【課題】電源投入後における主制御部の立ち上がり時間が、主制御部により制御される副制御部の立ち上がり時間より長い場合でも、主制御部と副制御部との間で不整合が発生することを防ぐ。
【解決手段】電源装置11は、節電制御信号30がオフの場合には電源をエンジンコントローラ13に供給し、節電制御信号30がオンの場合には電源供給を停止する。メインコントローラ12は、低消費電力状態に移行する際にのみ節電制御信号30を使用するのではなく、電源装置11からの電源が投入されて立ち上がり処理が終了した場合、この節電制御信号30を介して、電源装置11に対してエンジンコントローラ13への電源供給を停止するよう指示し、予め設定された時間経過後(例えば、300ms後)に電源装置11に対してエンジンコントローラ13への電源供給を再開するよう指示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置、画像形成装置および電源制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、立ち上がり時間が異なる複数のCPUボードを有するシステムにおいて、各CPUボードの電源供給経路に遅延回路を設けることにより、各CPUボードの立ち上がり時間を制御するようにした装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−6676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、電源投入後における主制御部の立ち上がり時間が、主制御部により制御される副制御部の立ち上がり時間より長い場合でも、主制御部と副制御部との間で不整合が発生することを防ぐことが可能な電子装置、画像形成装置および電源制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[電子装置]
請求項1に係る本発明は、特定の機能を実行する部位の動作を制御するための副制御手段と、
前記副制御手段に対して電源を供給する電源供給手段と、
前記副制御手段に対する制御を行う主制御手段とを備え、
前記主制御手段は、電源が投入されて立ち上がり処理が終了した場合、前記電源供給手段に対して前記副制御手段への電源供給を停止するよう指示し、予め設定された時間経過後に前記電源供給手段に対して前記副制御手段への電源供給を再開するよう指示する電子装置である。
【0006】
請求項2に係る本発明は、前記主制御手段が、低消費電力状態に移行するための制御信号を用いて、前記電源供給手段に対して前記副制御手段への電源供給の停止および再開を指示する請求項1記載の電子装置である。
【0007】
[画像形成装置]
請求項3に係る本発明は、印刷用紙上に画像を印刷するための印刷手段と、
前記印刷手段の動作を制御するための印刷制御手段と、
前記印刷制御手段に対して電源を供給する電源供給手段と、
前記印刷制御手段に対する制御を行う主制御手段とを備え、
前記主制御手段は、電源が投入されて立ち上がり処理が終了した場合、前記電源供給手段に対して前記印刷制御手段への電源供給を停止するよう指示し、予め設定された時間経過後に前記電源供給手段に対して前記印刷制御手段への電源供給を再開するよう指示する画像形成装置である。
【0008】
[プログラム]
請求項4に係る本発明は、特定の機能を実行する部位の動作を制御するための副制御手段と前記副制御手段に対する制御を行う主制御手段に対する電源供給を開始するステップと、
電源が投入されたことにより前記主制御手段において立ち上がり処理が終了した場合、前記副制御手段に対して電源を供給する電源供給手段に対して前記副制御手段への電源供給を停止するよう指示するステップと、
予め設定された時間経過後に前記電源供給手段に対して前記副制御手段への電源供給を再開するよう指示するステップとをコンピュータに実行させるための電源制御プログラムである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る本発明によれば、電源投入後における主制御手段の立ち上がり時間が、主制御手段により制御される副制御手段の立ち上がり時間より長い場合でも、主制御手段と副制御手段との間で不整合が発生することを防ぐことができる電子装置を提供することができる。
【0010】
請求項2に係る本発明によれば、請求項1に係る本発明により得られる効果に加えて、電源供給手段に対して副制御手段への電源供給の停止および再開を指示するための新たな制御信号を設けないですむという効果が得られる電子装置を提供することができる。
【0011】
請求項3に係る本発明によれば、電源投入後における主制御手段の立ち上がり時間が、主制御手段により制御される副制御手段の立ち上がり時間より長い場合でも、主制御手段と副制御手段との間で不整合が発生することを防ぐことができる画像形成装置を提供することができる。
【0012】
請求項4に係る本発明によれば、電源投入後における主制御部の立ち上がり時間が、主制御手段により制御される副制御手段の立ち上がり時間より長い場合でも、主制御手段と副制御手段との間で不整合が発生することを防ぐことができるプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態の画像形成装置10の構成を示すブロック図である。
【図2】図1中のメインコントローラ12のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】図1中の電源装置11の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるメインコントローラ12の電源投入時における動作を示すフローチャートである。
【図5】電源投入時における本発明の一実施形態の画像形成装置10の動作を説明するためのシーケンスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[背景]
まず、本発明の理解を助けるために、その背景及び概略を説明する。
【0015】
各種の動作を行う電子装置では、1つのコントローラにより装置全体の動作を制御するような構成ではなく、特定の機能を実行する部位の動作を制御するサブコントローラ(副制御部)を設け、装置全体の動作を制御しているメインコントローラ(主制御部)の制御の元にこのサブコントローラが動作するようにした構成を採用する場合がある。
【0016】
このような構成の電子装置では、メインコントローラがサブコントローラの動作状態を常に把握しておく必要がある。しかし、1つの電源装置によりメインコントローラやサブコントローラに対して電源供給を行うような場合、メインコントローラにおける立ち上がり処理時間がサブコントローラよりも長いと、メインコントローラとサブコントローラに同時に電源供給を開始した場合、サブコントローラの立ち上がり処理が終了した後にメインコントローラの立ち上がり処理が終了することとなる。
【0017】
しかし、このような状況では、サブコントローラにおいて立ち上がり処理が完了した時点でメインコントローラが動作可能な状態とはなっていないため、メインコントローラはサブコントローラの動作状態を把握できずにサブコントローラとメインコントローラとの間で不整合が生じてしまう可能性がある。
【0018】
このような不整合の発生を防ぐために、電源ラインに遅延回路等のハードウェア回路を設けて、メインコントローラやサブコントローラの立ち上がり時間を調整することが考えられる。
【0019】
[実施形態]
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施形態では、電子装置の一例としてプリンタ等の画像形成装置に対して本発明を適用した場合を用いて説明する。図1は本発明の一実施形態の画像形成装置10の構成を示すブロック図である。
【0020】
本発明の一実施形態の画像形成装置10は、図1に示されるように、電源装置(電源供給手段)11と、メインコントローラ12と、エンジンコントローラ13と、画像処理コントローラ14と、プリントエンジン21と、画像処理部22とを備えている。
【0021】
画像処理部22は、印刷を指示された画像データを印刷データに変換する等の各種画像処理を行っている。プリントエンジン21は、画像処理部22において画像処理された印刷データに基づいて、印刷用紙上に画像を印刷する処理を実行する印刷手段である。
【0022】
画像処理コントローラ14は、画像処理部22における動作を制御している。また、エンジンコントローラ13は、プリントエンジン21における動作を制御している。具体的には、エンジンコントローラ13は、プリントエンジン21における定着器、現像器、各種モータ等の動作を制御することにより印刷用紙上における画像の印刷動作を制御している。
【0023】
そして、メインコントローラ12は、エンジンコントローラ13、画像処理コントローラ14に対する制御を行っており、画像形成装置10全体の動作を管理している。
【0024】
電源装置11は、エンジンコントローラ13およびメインコントローラ12に対して電源を供給する。また、電源装置11からエンジンコントローラ13に供給された電源の一部は、エンジンコントローラ13を経由して画像処理コントローラ14に対して供給されている。
【0025】
メインコントローラ12から電源装置11に対しては節電制御信号30が入力されており、メインコントローラ12は、この節電制御信号30により電源装置11に対してエンジンコントローラ13への電源供給を停止したり、電源供給を再開することを指示できるようになっている。この節電制御信号30は、画像形成装置10の動作状態を低消費電力状態(スリープモード)に移行させるための制御信号である。
【0026】
例えば、画像形成装置10に対する印刷ジョブ等の指示が一定時間無い場合、メインコントローラ12は、この節電制御信号30をオンにして電源装置11に対して電源停止を指示する。すると、電源装置11からエンジンコントローラ13への電源供給が停止し、エンジンコントローラ13から画像処理コントローラ14への電源供給も停止する。ただし、この低消費電力状態においても電源装置11からメインコントローラ12への電源供給は継続して行われている。
【0027】
そして、新たな印刷ジョブ等を受信した場合、メインコントローラ12は、節電制御信号30をオフにして電源装置11からエンジンコントローラ13への電源供給再開を指示する。その結果、画像処理コントローラ14にもエンジンコントローラ13経由にて電源供給が再開されることとなる。
【0028】
なお、本実施形態の画像形成装置10では、メインコントローラ12が電源投入から立ち上がり処理を終了するまでの時間が、エンジンコントローラ13や画像処理コントローラにおける立ち上がり処理時間よりも長くなっている。
【0029】
そのため、本実施形態におけるメインコントローラ12は、低消費電力状態に移行する際にのみ節電制御信号30を使用するのではなく、電源装置11からの電源が投入されて立ち上がり処理が終了した場合、この節電制御信号30を介して、電源装置11に対してエンジンコントローラ13への電源供給を停止するよう指示し、予め設定された時間経過後(例えば、300ms後)に電源装置11に対してエンジンコントローラ13への電源供給を再開するよう指示する。
【0030】
次に、図1に示したメインコントローラ12のハードウェア構成を図2に示す。
【0031】
メインコントローラ12は、図2に示されるように、CPU31、メモリ32、ハードディスクドライブ(HDD)等の記憶装置33、タッチパネル又は液晶ディスプレイ並びにキーボードを含むユーザインタフェース(UI)装置34、ネットワークを介して外部の装置等との間でデータの送信及び受信を行う通信インタフェース(IF)35を有する。これらの構成要素は、制御バス36を介して互いに接続されている。
【0032】
CPU31は、メモリ32または記憶装置33に格納された制御プログラムに基づいて所定の処理を実行して、画像形成装置10の動作を制御する。なお、本実施形態では、CPU31は、メモリ32または記憶装置33内に格納された制御プログラムを読み出して実行するものとして説明したが、当該プログラムをCD−ROM等の記憶媒体に格納してCPU31に提供することも可能である。
【0033】
次に、図1に示した電源装置11の構成を図3を参照して説明する。電源装置11は、図3に示されるように、電圧生成回路41と、スイッチ回路42とを備えている。
【0034】
電圧生成回路41は、図示されていない電源に基づいて所定の電圧の電源を生成する。この電圧生成回路41により生成された電源は、メインコントローラ12とスイッチ回路42に出力される。スイッチ回路42には、節電制御信号30に基づいて制御されており、節電制御信号30がオフの場合には、電圧生成回路41からの電源をエンジンコントローラ13に出力し、節電制御信号30がオンの場合には、電圧生成回路41からの電源を遮断する。
【0035】
次に、本実施形態の画像形成装置10の動作を図面を参照して詳細に説明する。
【0036】
先ず、本実施形態におけるメインコントローラ12の電源投入時における動作を図4のフローチャートを参照して説明する。
【0037】
画像形成装置10全体の電源が投入され電源装置11からメインコントローラ12およびエンジンコントローラ13への電源供給が開始すると、メインコントローラ12では、立ち上がり処理(初期設定処理)が実行される(ステップS101)。
【0038】
そして、メインコントローラ12では、立ち上がり処理が終了すると、次に、節電制御信号30をオンにして電源装置11に対してエンジンコントローラ13への電源供給を停止させるよう指示する(ステップS102)。
【0039】
そして、節電制御信号30をオンにしてから一定時間が経過した場合(ステップS103)、メインコントローラ12は、節電制御信号30をオフにして電源装置11に対してエンジンコントローラ13への電源供給を再開させるよう指示する(ステップS104)。
【0040】
ここで、節電制御信号30をオンしてからオフにするまでの一定時間は、エンジンコントローラ13や画像処理コントローラ14に供給されている電源が完全にオフとなる時間に設定する必要がある。本実施形態では、この一定時間の一例として約300msの時間経過後にメインコントローラ12は節電制御信号30をオフにしている。
【0041】
次に、電源投入時における本実施形態の画像形成装置10の動作を図5のシーケンスチャートを参照して説明する。
【0042】
時刻t1において電源装置11が電源の供給を開始すると、メインコントローラ12、エンジンコントローラ13、画像処理コントローラ14では、それぞれ立ち上がり処理が開始される。しかし、コントローラ12の立ち上がり処理時間は、エンジンコントローラ13や画像処理コントローラ14の立ち上がり処理時間よりも長い。そのため、エンジンコントローラ13および画像処理コントローラ14では、時刻t2において立ち上がり処理が終了しているが、メインコントローラ12では、時刻t3になってようやく立ち上がり処理が終了する。
【0043】
すると、メインコントローラ12は、立ち上がり処理が終了した後の時刻t4において、節電制御信号30をオンにする。そのため、電源装置11からエンジンコントローラ13に供給される電源は遮断され、併せて画像処理コントローラ14に供給される電源も遮断される。
【0044】
そして、メインコントローラ12は、例えば300msという一定時間経過後に節電制御信号30をオフにし、エンジンコントローラ13、画像処理コントローラ14への電源供給が再開される(時刻t5)。そのため、エンジンコントローラ13、画像処理コントローラ14の立ち上げ処理が再度実行され、時刻t6において立ち上げ処理が終了して通常の動作状態となる。
【0045】
このような動作が行われることにより、本実施形態の画像形成装置10では、エンジンコントローラ13、画像処理コントローラ14が通常動作を開始する時刻t6において、メインコントローラ12は動作可能状態となっていることがわかる。つまり、本実施形態では、メインコントローラ12の立ち上がり処理時間が、エンジンコントローラ13や画像処理コントローラ14の立ち上がり処理時間よりも長い場合であっても、エンジンコントローラ13や画像処理コントローラ14が動作可能となって時点において、メインコントローラ12が動作可能となっている。
【0046】
[変形例]
上記実施形態では、主制御部であるメインコントローラ12の制御に基づいて、特定の機能を実行する部位の動作を制御するための副制御部としてエンジンコントローラ13や画像処理コントローラ14が動作している場合を用いて説明を行なった。しかし、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、エンジンコントローラ13や画像処理コントローラ14以外の副制御部がメインコントローラ12による制御に基づいて動作するような場合でも同様に適用可能である。また、副制御部により制御される機能も印刷機構による機能や画像処理機能に限定されるものではない。
【0047】
また、上記実施形態では、画像形成装置に対して本発明を適用した場合を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。特定の機能を実行する部位の動作を制御するための副制御部、この副制御部に対する制御を行う主制御部および、副制御部や主制御部に対して電源を供給する電源装置を備えたような電子装置であれば本発明を同様に適用することができるものである。
【符号の説明】
【0048】
10 画像形成装置
11 電源装置
12 メインコントローラ
13 エンジンコントローラ
14 画像処理コントローラ
21 プリントエンジン
22 画像処理部
30 節電制御信号
31 CPU
32 メモリ
33 記憶装置
34 ユーザインタフェース(UI)装置
35 通信インタフェース(IF)
36 制御バス
41 電圧生成回路
42 スイッチ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の機能を実行する部位の動作を制御するための副制御手段と、
前記副制御手段に対して電源を供給する電源供給手段と、
前記副制御手段に対する制御を行う主制御手段とを備え、
前記主制御手段は、電源が投入されて立ち上がり処理が終了した場合、前記電源供給手段に対して前記副制御手段への電源供給を停止するよう指示し、予め設定された時間経過後に前記電源供給手段に対して前記副制御手段への電源供給を再開するよう指示する電子装置。
【請求項2】
前記主制御手段は、低消費電力状態に移行するための制御信号を用いて、前記電源供給手段に対して前記副制御手段への電源供給の停止および再開を指示する請求項1記載の電子装置。
【請求項3】
印刷用紙上に画像を印刷するための印刷手段と、
前記印刷手段の動作を制御するための印刷制御手段と、
前記印刷制御手段に対して電源を供給する電源供給手段と、
前記印刷制御手段に対する制御を行う主制御手段とを備え、
前記主制御手段は、電源が投入されて立ち上がり処理が終了した場合、前記電源供給手段に対して前記印刷制御手段への電源供給を停止するよう指示し、予め設定された時間経過後に前記電源供給手段に対して前記印刷制御手段への電源供給を再開するよう指示する画像形成装置。
【請求項4】
特定の機能を実行する部位の動作を制御するための副制御手段と前記副制御手段に対する制御を行う主制御手段に対する電源供給を開始するステップと、
電源が投入されたことにより前記主制御手段において立ち上がり処理が終了した場合、前記副制御手段に対して電源を供給する電源供給手段に対して前記副制御手段への電源供給を停止するよう指示するステップと、
予め設定された時間経過後に前記電源供給手段に対して前記副制御手段への電源供給を再開するよう指示するステップとをコンピュータに実行させるための電源制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−66534(P2012−66534A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214720(P2010−214720)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】