説明

電子装置の製造方法

【課題】 エンボステープの収容室に空芯コイルを滞りなく、かつ確実に収容できる技術を提供する。
【解決手段】 マルチフィーダ81の先端付近に、エアーの噴出しを行うエアーノズル91、92を設ける。エアーノズル91は、ストッパ81Bに固定された先頭の空芯コイル9に続く2番目の空芯コイル9dをエアーの噴出しによってマルチフィーダ81の下段へ吹き飛ばし、先頭の空芯コイル9と2番目の空芯コイル9dとを離間させることによって、コレットが2個の空芯コイルを吸着してしまうことを防止する。エアーノズル92は、空芯コイル9のうちの立ち上がった状態で移送されてくる空芯コイル9eをエアーの噴出しによってマルチフィーダ81の下段へ吹き飛ばす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置の製造技術に関し、特に、高周波電力増幅装置の製造に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
国際公開第WO2002/052589号パンフレット(特許文献1)には、高周波電力増幅装置の製造における空芯コイルの実装工程において、空芯コイルを安定供給できるバルクフィーダが開示されている。
【特許文献1】国際公開第WO2002/052589号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
RF(Radio Frequency)パワーモジュールのような電子装置は、配線基板上に半導体チップや受動部品のような種々の電子部品を搭載することによって形成される。近年、このような電子装置に対する小型化や薄型化の要求が高まってきている。抵抗素子、容量素子およびインダクタ素子のような受動部品は、たとえばチップ抵抗、チップコンデンサおよびチップインダクタのように素子をチップ化することで、小型化や薄型化が可能である。しかしながら、チップインダクタは許容電流が比較的小さいため、大電流が流れるような回路で用いられるインダクタ素子としては、空芯コイルを用いることが好ましい。このため、RFパワーモジュールには、半導体チップ、受動部品としてのチップ部品および空芯コイルのような様々な種類の電子部品が使用されることになる。
【0004】
上記空芯コイルは、空芯コイルを1個ずつ収納する収納室を複数有する紙テープ(以降、エンボステープと記す)に収納された状態で配線基板上への空芯コイルの搭載を行う実装機にセットされる。本発明者らは、そのエンボステープへ空芯コイルを収納するパーツフィーダについて検討している。その中で、本発明者らは以下のような課題を見出した。その課題について、図19〜図32を用いて説明する。
【0005】
図19〜図27は、本発明者らが検討したパーツフィーダであるバルクフィーダの要部各所を説明する図である。図19に示すように、本発明者らが検討したバルクフィーダは、空芯コイルを収容する収納ケース110と、この収納ケース110の下部に設けられたホッパー111と、このホッパー111から取り込まれた空芯コイルを先端の空芯コイル供給部112まで案内する搬送レール113とを有する。
【0006】
収納ケース110は薄い箱型構造を有し、その内底は両側から中央に向かって空芯コイルを集める傾斜体114となっている。この傾斜体114の中心を貫くように配置され、傾斜体114の内底部分に集められた空芯コイルを一列状態で収納ケース110から取り出すホッパー111は、図20に示すように、上端に円錐台窪み115を有するガイド116と、このガイド116を貫き中心軸に沿って空芯コイルを1個案内するガイド孔117を有する角パイプからなる供給シャフト118で形成されている。供給シャフト118の上端からガイド孔117内に空芯コイルが入るように、ガイド116は上下に振動する構造となっている。たとえば、空芯コイルの長さ(1ストローク:1st)の3倍程度の振幅をもって振動する。また、図21に示すように、ガイド孔117は断面矩形になっており、断面円形の供給シャフト118の中心に設けられている。
【0007】
このようなバルクフィーダで、空芯コイル109を供給する場合、図20および図21に示すように、いくつかの供給不良が発生してしまう。
【0008】
一つは、筒状の供給シャフト118の肉厚が厚いため、供給シャフト118の上端に空芯コイル109が乗ってしまいガイド孔117内に入らない供給不良A(図20および図21参照)である。
【0009】
一つは、ガイド116が下方に下がった時点で円錐台窪み115の傾斜面と供給シャフト118の外周面との間に隙間119が発生し、この隙間119内に空芯コイル109が挟まる供給不良B(図20参照)である。
【0010】
一つは、空芯コイル109にもその寸法上のばらつきがあることから、ガイド孔117の途中に横向きになって引っ掛かって詰まる供給不良C(図20および図21参照)である。
【0011】
また、バルクフィーダの搬送レール113は、図19に示すように、途中に継ぎ目Dが存在することから、その継ぎ目で空芯コイル109が引っ掛かり、供給不良が発生することもある。
【0012】
空芯コイル供給部112は、図22に示すような構造となり、図22〜図27で示すような動作をする。すなわち、図22に示すように、搬送レール113の先端側では、搬送レール本体125の先端上面側は一段低くなり、この低い部分に摺動子126が空芯コイル109の移送方向に沿って往復動可能な状態で取り付けられている。
【0013】
空芯コイル109を案内するガイド孔117を設けたレール127は、前記搬送レール本体125の段付き部分まで延在している。搬送レール本体125には、前記レール127のガイド孔117に入って移動してきた空芯コイル109の前端を停止させるストッパ部128を有している。このストッパ部128は、空芯コイル109の上側に接触するようになるが、その下部は部分的に開放される空間になっている。これは、空芯コイル109を真空吸引してストッパ部128に接触させるための真空吸引通路130Aを形成する。
【0014】
摺動子126は、ばね129によってその左端面が段付き部分の側面に接触するようになっている。摺動子126の左端面が段付き部分の側面に接触する状態が、ストッパ部128の空芯コイル9の位置決め位置、すなわち、位置決め基準面を形成することになる。
【0015】
摺動子126上にはシャッター131が重なり、かつ摺動子126に対して移動可能な状態になっている。シャッター131は空芯コイル109の移送方向に沿って往復動し、レール127のガイド孔117内を移動する先頭の空芯コイル109の長さよりも僅かに長い距離部分を被うようになっている。
【0016】
従って、レール127の先端部分では、ガイド孔117の上面のレール127部分が削除された構造になっている。シャッター131は摺動子126との間に真空吸引通路130Bを形成している。また、シャッター131、摺動子126および搬送レール本体125には、それぞれ孔が設けられて真空吸引通路130C、130D、130Eを形成している。摺動子126が左端に寄り、シャッター131がガイド孔117の上側を被う状態のとき、これら3つの孔は重なり、図22で示すように空芯コイル109を真空吸引して先頭の空芯コイル109をストッパ部128に接触させるようにする。この真空吸引によって、図23に示すように、後続の空芯コイル109もガイド孔117内に一列に並ぶことになる。
【0017】
図24に示すように、シャッター131を右側、すなわちガイド孔117の端末から遠ざけるように開動作させると、先頭の空芯コイル109および2番目の空芯コイル109の先頭部分の僅かの長さ部分は露出状態になる。またこの時の開動作によって、真空吸引通路130Dはシャッター131によって塞がれるため、真空吸引動作は停止する。シャッター131の移動は、たとえば、空芯コイル109の長さの3倍(3st)程移動される。図25は、これらの関係を示す拡大断面図である。
【0018】
次に、図26に示すように、コレット132が移動してきて先頭の空芯コイル109を真空吸着保持してエンボステープへ運び、空芯コイル109のエンボステープへの収容が行われる。図27は、図8の要部を拡大して示したものである。
【0019】
上記のような構造のバルクフィーダにおいては、空芯コイル109の先端の形状のばらつき等に起因して空芯コイル109が互いに絡まったりすることによって、空芯コイル109がガイド孔117内に詰まってしまう不具合を生じることがある。また、ガイド孔117の寸法は固定されていることから、寸法の異なる空芯コイル109に対しては、それぞれ空芯コイル109の寸法に適したガイド孔117を有するバルクフィーダを用意する必要が生じる課題が存在する。
【0020】
また、図28〜図30はシャッター133を用いてコレット132から空芯コイル109を分離し、空芯コイル109をエンボステープ134の収容室135へ収容する工程を説明する図である。図29および図30は図28の紙面に垂直な方向での要部断面を示したものであり、図29は図28に続く工程時の要部断面図であり、図30は図29に続く工程時の要部断面図である。
【0021】
空芯コイル109を吸着したコレット132が収容室135上まで来ると(図28参照)、コレット132の先端からはみ出した空芯コイル109の両端部にシャッター133を引っ掛け(図29参照)、空芯コイル109をシャッター133の動作によってコレット132から引き離して収容室135内へ落とす。しかしながら、空芯コイル109が小型化した場合には、空芯コイル109の両端部がコレット132の先端からはみ出さなくなりシャッター133を引っ掛けられなくなる課題が存在する。
【0022】
上記のようなシャッター133を用いた場合の課題を解決するために、本発明者らは、シャッター133を用いない他の手段について検討した。図31および図32は、その他の手段を説明する要部断面図である。
【0023】
上記シャッター133を用いない場合には、図31に示すように、収容室135上のコレット132を降下させ、エンボステープ134とコレット132との間に所定量の隙間S1(たとえば0.1mm程度)を保った状態でコレット132の降下を停止し、コレット132に吸着されている空芯コイル109の一部を収容室135内へ入れる。エンボステープ134とコレット132との間に隙間S1を保ったのは、エンボステープ134とコレット132との接触によってエンボステープ134が破損してしまうのを防ぐためである。この時、空芯コイル109のうち、図31に示す断面の半径R1以上が収容室135内に入っている場合には、エンボステープ134を移送することによって空芯コイル109が収容室135の側壁に引っ掛かり、エンボステープ134の移送を続けることによってコレット132から引き離されて収容室135内へ落下する。しかしながら、空芯コイル109が小型化し、前記半径R1以上が収容室135内に入らない場合には、コレット132に吸着された空芯コイル109がエンボステープ134の移送によってコレット132とエンボステープ134との間に挟まってしまい、収容室135内へ収容できなくなってしまうだけではなく、空芯コイル109が軟質の場合には変形してしまう課題が存在する。
【0024】
そこで、本発明者らは、図32に示すように、コレット132の先端部分を除去し、コレット132が空芯コイル109を浅く吸着するようにすることによって小型化した空芯コイル109に対応する手段を検討した。これにより、空芯コイル109は、半径R1以上が収容室135内に入ることになり、エンボステープ134の移送を続けることによってコレット132から引き離されて収容室135内へ落下する。しかしながら、エンボステープ134とコレット132との間に隙間S1を保っているために、コレット132による真空吸引が既に他の収容室135に収容されている他の空芯コイル109にも作用し、その収容済みの空芯コイル109が収容室135から飛び出してしまう課題が存在する。
【0025】
本願に開示された1つの代表的な発明の1つの目的は、エンボステープの収容室に空芯コイルを滞りなく、かつ確実に収容できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0027】
本発明による電子装置の製造方法は、以下の工程を含む:
(a)部品搬出部と、真空吸着手段と、複数の収容室を有する第1のテープと、必要に応じて前記収容室の開口部を塞ぐ装填ミス検出カバーとを備えた部品供給装置の前記部品搬出部に一列に配列して複数の電子部品を供給し、前記部品搬出部を振動させることによって前記複数の電子部品を配列方向に沿って移送し、先頭の前記電子部品を前記部品搬出部における取り出し位置まで移送する工程、
(b)前記部品搬出部における第1の吹き飛ばし位置に達した前記先頭の電子部品に連続する2番目の前記電子部品を吹き飛ばし、前記先頭の電子部品を他の前記電子部品と離間させる工程、
(c)前記先頭の電子部品を他の前記電子部品と離間させた状況下で、前記真空吸着手段によって前記取り出し位置から前記先頭の電子部品を取り出し、前記先頭の電子部品を前記複数の収容室のうちの第1の収容室内へ配置する工程、
(d)前記(c)工程時において、前記複数の収容室のうち前記第1の収容室と隣接する第2の収容室内に前記電子部品が既に配置されている場合には、前記真空吸着手段が前記先頭の電子部品を前記第1の収容室内へ配置する前に前記装填ミス検出カバーによって前記第2の収容室の開口部を塞ぐ工程、
(e)前記(a)〜(d)工程を繰り返す工程、
(f)前記(e)工程後、前記第1のテープを実装装置へ移送し、前記収容室から前記電子部品を取り出し、前記電子部品を配線基板へ実装する工程。
【0028】
また、本願に開示されたその他の概要を項に分けて簡単に説明するとすれば、以下の通りである。
項1.部品搬出部と、真空吸着手段と、複数の収容室を有する第1のテープと、必要に応じて前記収容室の開口部を塞ぐ装填ミス検出カバーとを備え、以下の工程により前記第1のテープの前記複数の収容室の各々へ電子部品を収容する製造装置:
(a)前記部品搬出部に一列に配列して複数の前記電子部品を供給し、前記部品搬出部を振動させることによって前記複数の電子部品を配列方向に沿って移送し、先頭の前記電子部品を前記部品搬出部における取り出し位置まで移送する工程、
(b)前記部品搬出部における第1の吹き飛ばし位置に達した前記先頭の電子部品に連続する2番目の前記電子部品を吹き飛ばし、前記先頭の電子部品を他の前記電子部品と離間させる工程、
(c)前記先頭の電子部品を他の前記電子部品と離間させた状況下で、前記真空吸着手段によって前記取り出し位置から前記先頭の電子部品を取り出し、前記先頭の電子部品を前記複数の収容室のうちの第1の収容室内へ配置する工程、
(d)前記(c)工程時において、前記複数の収容室のうち前記第1の収容室と隣接する第2の収容室内に前記電子部品が既に配置されている場合には、前記真空吸着手段が前記先頭の電子部品を前記第1の収容室内へ配置する前に前記装填ミス検出カバーによって前記第2の収容室の開口部を塞ぐ工程、
(e)前記(a)〜(d)工程を繰り返す工程。
項2.項1記載の製造装置において、
前記電子部品は、一部もしくは全部の表面が絶縁膜で覆われた導体線材を螺旋状に巻いて両端を電極とした空芯コイルである。
項3.項2記載の製造装置において、
前記空芯コイルは、平面において前記真空吸着手段の吸着面内に収まる大きさである。
項4.項2記載の製造装置において、
前記部品搬出部は、前記導体線材の巻き数が異なる複数種の前記空芯コイルを移送できる。
項5.項4記載の製造装置において、
前記部品供給装置は、前記複数種の空芯コイルの前記巻き数にそれぞれ対応する複数の真空吸着手段を備え、
前記部品搬出部に供給される前記空芯コイルの前記巻き数に対応した前記真空吸着手段が前記取り出し位置から前記空芯コイルを取り出す。
項6.項1記載の製造装置において、
前記複数の電子部品のうち、前記真空吸着手段が正確に吸着できない第1の姿勢で移送されてくるものは、前記部品搬出部における第2の吹き飛ばし位置にて吹き飛ばす。
【発明の効果】
【0029】
本願において開示される発明のうち、1つの代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0030】
すなわち、エンボステープの収容室に空芯コイルを滞りなく、かつ確実に収容することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本願発明を詳細に説明する前に、本願における用語の意味を説明すると次の通りである。
【0032】
パーツフィーダ(部品供給装置)とは、ワーク(本願においては電子部品)を自動的に整列させて自動機械に供給する装置を言い、主に振動部、ボウルおよびコントローラの3つの要素で形成される。振動部は、たとえば電磁石と板ばねで形成され、電磁石のON/OFFによる力を板ばねを利用して増幅し振動を発生させる。この振動は、板ばねの角度を調整することで方向性を持たせることが可能で、ボウル内に投入した部材(ワーク)を一定方向に搬出する。振動量は、電磁石の個数、板バネの形状、材質、電磁石の幅および板ばねの幅など様々な要因で変化する。ボウルは、たとえば鍋の内側に螺旋状滑り台があるような構造を有し、底に部材を投入すると、振動部で発生した振動を利用して底から上に向って螺旋状滑り台を部材が上って行く。ボウルは、円筒型および段付型等があり、円筒型は同一半径の螺旋形状(寸胴)で、段付は上部になるにつれ半径が大きくなる。(すり鉢状)。振動によって螺旋状滑り台を上ってきただけの部材は、この時点では整列されないので、たとえばアタッチメントと呼ばれる機構を取付けて部材が一定方向に整列するよう対策を行う。コントローラは、パーツフィーダの振動条件を制御するものである。
【0033】
空芯コイルとは、導体線材を円筒形に巻き、円筒の中に何も入れない、あるいはベークライトなどの非磁性体で導体線材を保持するコイルを言う。耐電力が大きく、インダクタンスが小さいため主に高周波用に用いられる。
【0034】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0035】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0036】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、実施例等において構成要素等について、「Aからなる」、「Aよりなる」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。
【0037】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0038】
また、本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0039】
また、本実施の形態で用いる図面においては、平面図であっても図面を見易くするために部分的にハッチングを付す場合がある。
【0040】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0041】
本実施の形態の電子装置は、たとえばGSM(Global System for Mobile Communication)通信系とDCS(Digital Cellular System)通信系との二つの通信系が組み込まれた携帯電話機に組み込むデュアルバンド用の高周波電力増幅装置である。
【0042】
図1に示すように、本実施の形態の高周波電力増幅装置1は、外観的には偏平な矩形体構造になっている。高周波電力増幅装置1は、セラミック配線板からなるモジュール基板(配線基板)5と、このモジュール基板5の一面側(主面側)に重ねて取り付けられたキャップ6とによって偏平矩形体構造のパッケージ7が形成された構造になっている。キャップ6は、電磁シールド効果の役割を果たす金属製であり、プレスによる成形品となっている。
【0043】
図2は、本実施の形態の高周波電力増幅装置1の回路構成を示すブロック図である。高周波電力増幅装置1は外部電極端子として、GSM用入力端子(PinGSM(1))、コントロール端子(Vapc(2))、電源電圧Vddの一方の電源電圧端子(Vdd1(3))、GSM用出力端子(PoutGSM(4))、DCS用出力端子(PoutDCS(5))、電源電圧Vddの他方の電源電圧端子(Vdd2(6))、通信バンド切り替え用端子(Vctl(7))、DCS用入力端子(PinDCS(8))、および図示しない接地電位端子(GND)を有している。端子配列は、第1図のように、モジュール基板5の手前左から右に向かって端子(1)、(2)、(3)、および(4)と並び、後方右から左に向かって端子(5)〜(8)となっている。
【0044】
DCSおよびGSM共にその増幅系は3段増幅構成になっている。DCS増幅系は1st、2ndおよび3rdで示す増幅段(amp1、amp2、amp3)で形成され、GSM増幅系は1st、2ndおよび3rdで示す増幅段(amp4、amp5、amp6)で形成されている。各増幅段は、図示はしないがシリコン基板を基にして形成される電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor;FET)によって形成されている。
【0045】
このような構成下において、PinDCS(8)はamp1に電気的に接続され、PoutDCS(5)はamp3に電気的に接続されている。PinGSM(1)はamp4に電気的に接続され、PoutGSM(4)はamp6に電気的に接続されている。
【0046】
Vapc(2)はバイアス回路2に接続されるとともに、このVapc(2)に入力された信号によってamp1〜amp6は制御される。
【0047】
Vdd1(3)は、マイクロストリップラインMS1を介してamp1に接続され、マイクロストリップラインMS4を介してamp5に接続され、インダクタL2を介してamp6に接続されている。また、高周波特性の安定化のために外付けでVdd1(3)には一端がGNDに接地される容量C1が接続されている。
【0048】
Vdd2(6)は、マイクロストリップラインMS3を介してamp4に接続され、マイクロストリップラインMS2を介してamp2に接続され、インダクタL1を介してamp3に接続されている。また、高周波特性の安定化のために外付けでVdd2(6)には一端が接地電位(GND)に接続される容量C2が接続されている。
【0049】
このように、電源電圧は二つの端子(Vdd1(3)、Vdd2(6))が用意され、一方の電源電圧端子は一方の増幅系の初段増幅段と他方の増幅系の2段および3段増幅段とに電源電圧を供給し、他方の電源電圧端子は他方の増幅系の初段増幅段と一方の増幅系の2段および3段増幅段とに電源電圧を供給する、いわゆるたすき掛け構造になっていることから、初段増幅段への後段増幅段(特に最終増幅段)からの漏れ信号の電源ラインを通しての帰還を抑止できるため発振マージンの改善ができる。
【0050】
また、インダクタL1〜L3は、インダクタンスが8nHのもので直流抵抗が20mΩとなり、従来のチップインダクタのインダクタンスが8nHのもので直流抵抗は100mΩであるのに比較して大幅に直流抵抗が小さい空芯コイルで形成されている。
【0051】
Vctl(7)は、バンド選択回路3に接続されている。このバンド選択回路3は、ソース接地される3個のnチャネル型の電界効果トランジスタQ8、Q9、Q10と、一つの抵抗R1とで構成されている。電界効果トランジスタQ8と電界効果トランジスタQ9のゲート端子はVctl(7)に接続されている。電界効果トランジスタQ10のゲート端子は電界効果トランジスタQ9のドレイン端子に接続され、ドレイン端子は抵抗R2を介してamp5の出力側に接続されている。電界効果トランジスタQ9のドレイン端子は抵抗R1を介してVdd2(6)に接続されている。電界効果トランジスタQ8のドレイン端子はインダクタL3を介してamp3の入力側に接続されている。Vctl(7)に供給される信号によってバンドの切り替えが行われ、DCS通信のための増幅またはGSM通信のための増幅が行われる。
【0052】
図3は、たとえばガラスセラミックスを積層させた低温焼成のセラミック配線板からなるモジュール基板5の表面に搭載された各電子部品を示す平面図である。
【0053】
図3に示すように、モジュール基板5の表面には4個の半導体チップ8a〜8dと、3個の空芯コイル9a〜9cと、符号は付けないが多数のチップ抵抗とチップコンデンサが搭載されている。
【0054】
モジュール基板5の表裏面はもちろんのこと内部にも導体が選択的に形成されている。そして、これら導体によって配線4が形成されている。この配線4の一部は、前記半導体チップ8a〜8dを固定するための搭載パッド4aとなり、チップ抵抗やチップコンデンサ等のチップ型電子部品や空芯コイル9a〜9cの電極を固定する電極固定用パッド4bとなり、あるいは半導体チップ8a〜8dの図示しない電極に一端が接続されるワイヤ20の他端を接続するワイヤボンディングパッド4c等を形成する。モジュール基板5の裏面には表面実装型の電極が配線4によって形成され、前述の(1)〜(8)の外部電極端子が形成されている。これら外部電極端子はLGA(ランドグリッドアレイ)構造になっている。
【0055】
半導体チップ8a〜8dはモジュール基板5の主面に設けた窪み底に固定されている。また、動作時に発熱量が大きい半導体チップにおいては、その下のモジュール基板5にはビアホールが形成されるとともに、このビアホールには前記導体が充填され、モジュール基板5の裏面に熱を伝達するようになっている。
【0056】
半導体チップ8a〜8dにおいて、半導体チップ8aには、DCS用の1stおよび2ndの半導体増幅素子が組み込まれ、半導体チップ8bにはDCS用の3rdの半導体増幅素子が組み込まれている。また、半導体チップ8cには、GSM用の1stおよび2ndの半導体増幅素子が組み込まれ、半導体チップ8dにはGSM用の3rdの半導体増幅素子が組み込まれている。
【0057】
本実施の形態の高周波電力増幅装置1におけるインダクタL1〜L3は、図3に示すように空芯コイル9a〜9cで形成してある。
【0058】
図4には、モジュール基板5に搭載された空芯コイル9a(9)を示してある。空芯コイル9は、表面が絶縁膜で被覆されたインダクタ部22と、両端の絶縁膜で被われない電極23とからなる。この空芯コイル9はインダクタ部22が6巻であり、電極23が2巻である。空芯コイル9は、その電極23がソルダ24によってモジュール基板5の配線4bに固定されることによって実装されている。なお、図5の空芯コイル9はインダクタ部22が8巻であり、電極23が1巻である場合の実装例である。
【0059】
空芯コイル9は、一例を挙げるならば、表面を絶縁膜(たとえば、ポリエチレン膜)で被った直径0.08mm程度の銅線(導体線材)を螺旋状に巻いた構造となり、外径は0.42mm程度、巻き数は8ターンから12ターンの5種類からなり、長さは0.78mm〜1.14mm程度である。螺旋に巻く前に銅線の両端部分の絶縁膜を一定の長さ除去しておき、その除去部分による捲線部分が外部電極23となる。絶縁膜で被われた部分の捲線部分がインダクタ部22となる。この空芯コイル9はその重量も0.319mg〜0.479mgと極めて軽い。このコイルは、銅線を巻いて製造することから、チップインダクタ(たとえば、電流容量が2.1A程度でインダクタンスが8nHのもので直流抵抗が100mΩ程度となるチップインダクタ)に比較して、そのコストは1/7程度と低くなる。また、電流容量が小さいチップインダクタでは、そのコストは1/2程度になる。
【0060】
次に、本実施の形態の高周波電力増幅装置1を組み込んだ携帯電話機について説明する。図6は、本実施の形態の高周波電力増幅装置1が組み込まれた携帯電話機のシステム構成を示すブロック図である。
【0061】
図6は、デュアルバンド無線通信機の一部を示すブロック図であり、高周波信号処理IC(RFlinear)50からアンテナ(Antenna)51までの部分を示す。なお、図6では、高周波電力増幅装置の増幅系はGSM用の増幅系と、DCS用の増幅系の二つを別けて示してあり、その増幅器をPA(パワーアンプ)58a、58bとして示してある。
【0062】
アンテナ51はアンテナ送受信切り替え器52のアンテナ端子Antennaに接続されている。アンテナ送受信切り替え器52は、PA58a、58bの出力を入力する端子Pout1、Pout2と、受信端子RX1、RX2と、制御端子control1、control2とを有している。
【0063】
高周波信号処理IC50からのGSM用の信号はPA58aに送られ、Pout1に出力される。PA58aの出力はカプラ54aによって検出され、この検出信号は自動出力制御回路(APC回路)53にフィードバックされる。APC回路53は上記検出信号を基に動作してPA58aを制御する。
【0064】
また、同様に高周波信号処理IC50からのDCS用の信号はPA58bに送られ、Pout2に出力される。PA58bの出力はカプラ54bによって検出され、この検出信号はAPC回路53にフィードバックされる。APC回路53は上記検出信号を基に動作してPA58bを制御する。
【0065】
アンテナ送受信切り替え器52はデュプレクサ55を有している。このデュプレクサ55は複数の端子を有し、1端子は上記アンテナ端子Antenaに接続され、他の2端子の内の一方はGSM用の送信受信切り替えスイッチ56aに接続され、他方はDCS用の送信受信切り替えスイッチ56bに接続されている。
【0066】
送信受信切り替えスイッチ56aのa接点はフィルタ57aを介してPout1に接続されている。送信受信切り替えスイッチ56aのb接点は容量C1を介して受信端子RX1に接続されている。送信受信切り替えスイッチ56aは制御端子contorol1に入力される制御信号によってa接点またはb接点との電気的接続の切り替えが行われる。
【0067】
また、送信受信切り替えスイッチ56bのa接点はフィルタ57bを介してPout2に接続されている。送信受信切り替えスイッチ56bのb接点は容量C2を介して受信端子RX2に接続されている。送信受信切り替えスイッチ56bは制御端子contorol2に入力される制御信号によってa接点またはb接点との電気的接続の切り替えが行われる。
【0068】
受信端子RX1と高周波信号処理IC50との間には、フィルタ60aと低雑音アンプ(LNA)61aが順次接続されている。また、受信端子RX2と高周波信号処理IC50との間には、フィルタ60bと低雑音アンプ(LNA)61bが順次接続されている。
【0069】
このような無線通信機によってGSM通信およびDCS通信が可能になる。
【0070】
次に、高周波電力増幅装置1の製造における空芯コイル9の実装技術について説明する。
【0071】
空芯コイル9の実装は、空芯コイル9よりも実装高さが低いチップ抵抗やチップコンデンサ等他の電子部品の搭載後に行う。これは、先に空芯コイル9の実装を行ってしまうと、空芯コイル9の実装高さよりも低い電子部品の実装時に、コレットが実装された空芯コイル9に接触する場合もある。この接触によって、たとえば、空芯コイル9の電極23と電極固定用パッド4bを接続するソルダ24部分にクラックが発生したり、あるいは分断が発生したりする。このようなことが起きないようにするためである。
【0072】
図7〜図9は空芯コイル9の実装状態を示す模式図である。空芯コイル9を、コレット71の下端の吸着面に真空吸着保持した後、図7に示すようにモジュール基板5の空芯コイルの取り付け位置まで運ぶ。なお、コレット71の吸着面は円筒形状の空芯コイルの外周に対応するように円弧状断面をした吸着面となっている。
【0073】
次に、図8に示すように、モジュール基板5の一対の電極固定用パッド4b上に空芯コイル9の一対の電極23がそれぞれ重なるように、位置決めして空芯コイル9をモジュール基板5上に載置する。
【0074】
次に、リフローによって電極固定用パッド4b上にあらかじめ設けたソルダ24を一時的に溶かして電極23をソルダ24上に固定し、図9に示すように実装を完了する。
【0075】
ところで、空芯コイル(電子部品)9は、空芯コイル9を1個ずつ収納する収容室を複数有するエンボステープに収容(テーピング)され、空芯コイル9が収容された収容室の開口部はカバーテープで被われた状態でコレット71を含む実装機へ搬送される。ここで、図10は、空芯コイル9をエンボステープへ収容するテーピング装置(部品供給装置)の説明図である。
【0076】
図10に示すテーピング装置は、マルチフィーダ(部品搬出部)81、複数のコレット82を含むロータリーヘッドユニット83、複数の電磁弁84、複数のセンサ85、シールユニット86およびバーコード表示器87等から形成されている。エンボステープ(第1のテープ)88は、供給側リール89から供給され、収容室に空芯コイル9が挿入された後にシールユニット86によってカバーテープが収容室の開口部に貼付される。空芯コイル9が詰め込まれ、カバーテープが貼付されたエンボステープ88は、収納側リール90に巻き取られる。
【0077】
マルチフィーダ81は、微細振動によって空芯コイル9を自動的に整列させつつ供給するパーツフィーダである。マルチフィーダ81によって整列された空芯コイル9のうちの先頭のものは、コレット82によるピックアップ位置まで移動して停止する。また、コレット82による空芯コイル9のピックアップが行われるマルチフィーダ81の先端部は、空芯コイル9の巻き数に合わせた規格のものを適宜交換可能な構造となっている。
【0078】
複数のコレット82は、それぞれが所定の巻き数の空芯コイル9をマルチフィーダ81からピックアップするのに用いられる真空吸着コレットである。すなわち、マルチフィーダ81から供給される空芯コイル9の巻き数に対応したコレット82が、ロータリーヘッドユニット83の回転によってマルチフィーダ81上のピックアップ位置まで移動し、そのピックアップ位置にて空芯コイル9をピックアップするものである。これら複数のコレット82による真空吸着およびリリースは、それぞれ個別に対応している複数の電磁弁84の動作によって制御することができる。また、複数のコレット82を有するロータリーヘッド83をテーピング装置に備えたことにより、複数種の巻き数の空芯コイル9のテーピング作業を1台のテーピング装置で行うことが可能となる。
【0079】
複数のセンサ85は、それぞれ、たとえば上記ピックアップ位置まで達した空芯コイル9の位置ずれの検出、上記カバーテープの有無、エンボステープ88の収容室へ空芯コイル9を挿入後においてもコレット82の吸着面に残っている空芯コイル9の検出、およびエンボステープ88の収容室へ複数個の空芯コイル9が挿入されていることの検出等を行う。
【0080】
バーコード表示器87には、マルチフィーダ81が供給している空芯コイル9の製品名、ロット番号および規格等が表示される。
【0081】
図11は、マルチフィーダ81の上記ピックアップ位置付近の要部平面図であり、図12は、図11中のA−A線に沿った要部断面図である。
【0082】
図11および図12に示すように、マルチフィーダ81の先端には、真空吸着ノズル81Aを内蔵するストッパ81Bが取り付けられている。マルチフィーダ81の微細振動によって移送されてきた空芯コイル9は、ストッパ81Bと接触して停止する。この停止した位置が前述のピックアップ位置(取り出し位置)である。停止した空芯コイル9は、真空吸着ノズル81Aによる真空吸引によってストッパ81Bに固定され、コレット82が空芯コイル9を真空吸着する際に位置ずれを起こさないようにされる。また、空芯コイル9がストッパ81Bに固定されると、レーザセンサ136が空芯コイル9を検出して、コレット82が真空状態のまま下降し、下死点(コレット82が下がりきった点)に入ったところで、真空吸着ノズル81Aの真空を切り、コレット82が非接触で確実に吸着する。
【0083】
図13は、マルチフィーダ81の先端付近におけるマルチフィーダ81および空芯コイル9の動作を示した説明図である。
【0084】
マルチフィーダ81の先端付近には、エアーの噴出しを行うエアーノズル91、92が設けられている。なお、図14は真空吸着ノズル81Aが設けられた位置におけるマルチフィーダ81(ストッパ81A)の先端部の要部断面図であり、図15はエアーノズル91が設けられた位置におけるマルチフィーダ81の要部断面図であり、図16はエアーノズル92が設けられた位置におけるマルチフィーダ81の要部断面図である。
【0085】
エアーノズル91は、ストッパ81Bに固定された先頭の空芯コイル9に続く2番目の空芯コイル9dがエアーノズル91前(第1の吹き飛ばし位置)に達すると、エアーの噴出しによってマルチフィーダ81の下段へ吹き飛ばし、先頭の空芯コイル9と2番目の空芯コイル9とを離間させることによって、コレット82が2個の空芯コイル9を吸着してしまうことを防止している。それにより、コレット82が確実に1個の空芯コイル9のみを正確な位置(ピックアップ位置)でピックアップすることが可能となる。エアーノズル91によってマルチフィーダ81の下段へ吹き飛ばされた空芯コイル9は、再びマルチフィーダ81の微細振動によって配列され、ピックアップ位置へ移送されてくる。
【0086】
エアーノズル92は、空芯コイル9のうちの立ち上がった状態(第1の姿勢)で移送されてくる空芯コイル9eがエアーノズル92前(第2の吹き飛ばし位置)に達すると、エアーの噴出しによってマルチフィーダ81の下段へ吹き飛ばすものである。このような立ち上がった状態で移送されてくる空芯コイル9eは、コレット82によって真空吸着できない虞があり、また真空吸着できた場合でも正確な位置で吸着できない虞がある。そのため、このような空芯コイル9eは、予めエアーノズル92によって排除しておく。それにより、コレット82による空芯コイル9の正確なピックアップを実施することが可能となる。
【0087】
ところで、真空吸引を用いて空芯コイルの移送を行うバルクフィーダにおいては、空芯コイルの移送が行われる通路内で空芯コイルが詰まり、バルクフィーダの稼働率を低下させてしまう不具合がある。一方、上記のような本実施の形態のマルチフィーダ81によれば、微細振動によって空芯コイル9を移送することから、バルクフィーダで起こるような空芯コイル9が詰まる不具合を防止できる。それにより、マルチフィーダ81を含むテーピング装置の稼働率を向上することができる。
【0088】
図17および図18は、コレット82が空芯コイル98をエンボステープ88の収容室(第1の収容室)88aへ収容する工程を示した説明図であり、図18は、図17と垂直な方向の断面を示している。
【0089】
空芯コイル9を吸着したコレット82は、エンボステープ88の収容室88a上まで来ると、降下を開始し、エンボステープ88とコレット82との間に所定量の隙間S1(たとえば0.1mm程度)を保った状態で降下を停止し、コレット82に吸着されている空芯コイル9の一部を収容室88a内へ入れる。エンボステープ88とコレット82との間に隙間S1を保ったのは、エンボステープ88とコレット82との接触によってエンボステープ88が破損してしまうのを防ぐためである。この時、空芯コイル9が小型化し、断面の半径R1以上(たとえば0.25mm程度以上)が収容室88a内に入っている場合には、エンボステープ88を移送することによって空芯コイル9が収容室88aの側壁に引っ掛かり、エンボステープ88の移送を続けることによってコレット82から引き離されて収容室88a内へ落下する。このような手段を適用することにより、平面で空芯コイル9がコレット82の吸着面より小さい場合でも、他の治具を用いて空芯コイル8をコレット82から引き剥がすような手段を用いることなく空芯コイル9を収容室88aへ収容することが可能となる。しかしながら、空芯コイル9が小型化し、前記半径R1以上(たとえば0.25mm程度以上)が収容室88a内に入らない場合には、コレット82に吸着された空芯コイル9がエンボステープ88の移送によってコレット82とエンボステープ88との間に挟まってしまい、収容室88a内へ収容できなくなってしまうだけではなく、空芯コイル9が軟質の場合には変形してしまう不具合が生じる。そこで、本実施の形態では、コレット82の先端部分を除去し、コレット82が空芯コイル9を浅く吸着するようにすることによって小型化した空芯コイル9に対応する。それにより、空芯コイル9は半径R1以上(たとえば0.25mm程度以上)が収容室88a内に入ることになり、エンボステープ88の移送を続けることによって空芯コイル9をコレット82から引き離して収容室88a内へ落下させることが可能となる。
【0090】
また、エンボステープ88とコレット82との間に隙間S1を保っているために、コレット82による真空吸引が隣接する他の収容室(第2の収容室)88aに既に収容されている他の空芯コイル9にも作用し、エンボステープ88が第1の収容室から第2の収容室に移送される過程で、コレット82の真空の回り込みで飛び出してしまう。そこで、本実施の形態のテーピング装置では、コレット82が空芯コイル9を収容室88aに挿入する前に、予め隣接している他の収容室88aの開口部を被うカバー治具93を備える。このカバー治具93は、たとえば装填ミスの場合検出するような、可動式カバーで形成されている。このようなカバー治具93が予め隣接している他の収容室88aの開口部を被うことにより、その他の収容室88aに既に収容されている空芯コイル9が収容室88aから飛び出してしまう不具合を防ぐことが可能となる。隣室以外の既に収納された空芯コイル9は、エンボステープ88の移送時に振動により飛び出さないように、シールユニット86の前まで固定のカバーを設置している。
【0091】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0092】
たとえば、前記実施の形態ではテーピング装置が空芯コイルをエンボステープの収容室へ収容する場合について説明したが、空芯コイル以外の半導体チップ等の電子部品をエンボステープに収容する場合でも前記実施の形態のテーピング装置を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の電子装置の製造方法は、たとえば空芯コイルを構成部品として含む高周波電力装置の製造工程にて適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の一実施の形態の電子装置である高周波電力増幅装置の斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態の電子装置である高周波電力増幅装置の回路構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施の形態の電子装置である高周波電力増幅装置を形成するモジュール基板およびそのモジュール基板の表面に搭載された各電子部品を示す平面図である。
【図4】本発明の一実施の形態の電子装置である高周波電力増幅装置を形成する空芯コイルの一例の側面図である。
【図5】本発明の一実施の形態の電子装置である高周波電力増幅装置を形成する空芯コイルの一例の側面図である。
【図6】本発明の一実施の形態の電子装置である高周波電力増幅装置が組み込まれた携帯電話機のシステム構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の一実施の形態の電子装置である高周波電力増幅装置を形成する空芯コイルの実装状態を示す説明図である。
【図8】本発明の一実施の形態の電子装置である高周波電力増幅装置を形成する空芯コイルの実装状態を示す説明図である。
【図9】本発明の一実施の形態の電子装置である高周波電力増幅装置を形成する空芯コイルの実装状態を示す説明図である。
【図10】本発明の一実施の形態の電子装置の製造工程中にて用いるテーピング装置の説明図である。
【図11】図10に示したテーピング装置に含まれるマルチフィーダの要部平面図である。
【図12】図11中のA−A線に沿った要部断面図である。
【図13】図11に示したマルチフィーダにおける空芯コイルの動作を示す説明図である。
【図14】図11に示したマルチフィーダの要部断面図である。
【図15】図11に示したマルチフィーダの要部断面図である。
【図16】図11に示したマルチフィーダの要部断面図である。
【図17】本発明の一実施の形態の電子装置の製造工程中にてコレットが空芯コイルをエンボステープの収容室へ挿入する工程を示した説明図である。
【図18】本発明の一実施の形態の電子装置の製造工程中にてコレットが空芯コイルをエンボステープの収容室へ挿入する工程を示した説明図である。
【図19】本発明者らが検討したパーツフィーダの要部を示す説明図である。
【図20】本発明者らが検討したパーツフィーダの要部断面図である。
【図21】本発明者らが検討したパーツフィーダの要部断面図である。
【図22】本発明者らが検討したパーツフィーダの要部断面図である。
【図23】図22の要部を拡大して示す断面図である。
【図24】本発明者らが検討したパーツフィーダの要部断面図である。
【図25】図24の要部を拡大して示す断面図である。
【図26】本発明者らが検討したパーツフィーダの要部断面図である。
【図27】図26の要部を拡大して示す断面図である。
【図28】本発明者らが検討したパーツフィーダの要部断面図である。
【図29】本発明者らが検討したパーツフィーダの要部断面図である。
【図30】本発明者らが検討したパーツフィーダの要部断面図である。
【図31】本発明者らが検討したパーツフィーダの要部断面図である。
【図32】本発明者らが検討したパーツフィーダの要部断面図である。
【符号の説明】
【0095】
1 高周波電力増幅装置
2 バイアス回路
3 バンド選択回路
4 配線
4a 搭載パッド
4b 電極固定用パッド
4c ワイヤボンディングパッド
5 モジュール基板(配線基板)
6 キャップ
7 パッケージ
8a〜8d 半導体チップ
9、9a〜9e 空芯コイル
20 ワイヤ
22 インダクタ部
23 電極
24 ソルダ
50 高周波信号処理IC
51 アンテナ
52 アンテナ送受信切り替え器
53 自動出力制御回路(APC回路)
54a、54b カプラ
55 デュプレクサ
56a、56b 送信受信切り替えスイッチ
57a、57b フィルタ
58a、58b PA
60a、60b フィルタ
61a、61b 低雑音アンプ
71 コレット
81 マルチフィーダ(部品搬出部)
81A 真空吸着ノズル
81B ストッパ
82 コレット
83 ロータリーヘッドユニット
84 電磁弁
85 センサ
86 シールユニット
87 バーコード表示器
88 エンボステープ(第1のテープ)
88a 収容室(第1の収容室、第2の収容室)
89 供給側リール
90 収納側リール
91、92 エアーノズル
109 空芯コイル
110 収納ケース
111 ホッパー
112 空芯コイル供給部
113 搬送レール
114 傾斜体
115 円錐台窪み
116 ガイド
117 ガイド孔
118 供給シャフト
119 隙間
125 搬送レール本体
126 摺動子
127 レール
128 ストッパ部
129 ばね
130A〜130E 真空吸引通路
131 シャッター
132 コレット
133 シャッター
134 エンボステープ
135 収容室
136 レーザセンサ
C1、C2 容量
L1、L2 インダクタ
MS1〜MS4 マイクロストリップライン
RX1、RX2 受信端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む電子装置の製造方法:
(a)部品搬出部と、真空吸着手段と、複数の収容室を有する第1のテープと、必要に応じて前記収容室の開口部を塞ぐ装填ミス検出カバーとを備えた部品供給装置の前記部品搬出部に一列に配列して複数の電子部品を供給し、前記部品搬出部を振動させることによって前記複数の電子部品を配列方向に沿って移送し、先頭の前記電子部品を前記部品搬出部における取り出し位置まで移送する工程、
(b)前記部品搬出部における第1の吹き飛ばし位置に達した前記先頭の電子部品に連続する2番目の前記電子部品を吹き飛ばし、前記先頭の電子部品を他の前記電子部品と離間させる工程、
(c)前記先頭の電子部品を他の前記電子部品と離間させた状況下で、前記真空吸着手段によって前記取り出し位置から前記先頭の電子部品を取り出し、前記先頭の電子部品を前記複数の収容室のうちの第1の収容室内へ配置する工程、
(d)前記(c)工程時において、前記複数の収容室のうち前記第1の収容室と隣接する第2の収容室内に前記電子部品が既に配置されている場合には、前記真空吸着手段が前記先頭の電子部品を前記第1の収容室内へ配置する前に前記装填ミス検出カバーによって前記第2の収容室の開口部を塞ぐ工程、
(e)前記(a)〜(d)工程を繰り返す工程、
(f)前記(e)工程後、前記第1のテープを実装装置へ移送し、前記収容室から前記電子部品を取り出し、前記電子部品を配線基板へ実装する工程。
【請求項2】
請求項1記載の電子装置の製造方法において、
前記電子部品は、一部もしくは全部の表面が絶縁膜で覆われた導体線材を螺旋状に巻いて両端を電極とした空芯コイルである。
【請求項3】
請求項2記載の電子装置の製造方法において、
前記空芯コイルは、平面において前記真空吸着手段の吸着面内に収まる大きさである。
【請求項4】
請求項2記載の電子装置の製造方法において、
前記部品供給装置の前記部品搬出部は、前記導体線材の巻き数が異なる複数種の前記空芯コイルを移送できる。
【請求項5】
請求項4記載の電子装置の製造方法において、
前記部品供給装置は、前記複数種の空芯コイルの前記巻き数にそれぞれ対応する複数の真空吸着手段を備え、
前記部品搬出部に供給される前記空芯コイルの前記巻き数に対応した前記真空吸着手段が前記取り出し位置から前記空芯コイルを取り出す。
【請求項6】
請求項1記載の電子装置の製造方法において、
前記複数の電子部品のうち、前記真空吸着手段が正確に吸着できない第1の姿勢で移送されてくるものは、前記部品搬出部における第2の吹き飛ばし位置にて吹き飛ばす。
【請求項7】
請求項2記載の電子装置の製造方法において、
前記配線基板上には、能動素子および受動素子のうちの1つ以上を含む複数の半導体チップを実装し、複数の増幅段を有する高周波電力増幅装置を形成する。
【請求項8】
請求項7記載の電子装置の製造方法において、
前記複数の増幅段は、入力端子と、出力端子と、電源電圧端子とを有し、前記入力端子と前記出力端子との間に従属接続され、前記電源電圧端子から電源電圧を供給され、
前記空芯コイルは、前記複数の増幅段のうちの最終増幅段と前記電源電圧端子との間に直列に接続する。
【請求項9】
請求項8記載の電子装置の製造方法において、
前記高周波電力増幅装置は、前記複数の増幅段を含む複数の増幅系を有し、
前記複数の増幅系の各々では、前記複数の増幅段が従属接続され、前記複数の増幅段のうちの前記最終増幅段と前記電源電圧端子との間に前記空芯コイルが直列に接続される。
【請求項10】
請求項7記載の電子装置の製造方法において、
前記高周波電力増幅装置は、前記複数の増幅段を含む2つの増幅系と2つの電源電圧端子とを有し、
前記2つの増幅系の各々では、前記複数の増幅段が従属接続され、
前記2つの電源電圧端子のうちの一方は、前記2つの増幅系のうちの一方に含まれる前記複数の増幅段のうちの初期増幅段と、前記2つの増幅系のうちの他方に含まれる前記複数の増幅段とに電気的に接続され、
前記2つの電源電圧端子のうちの前記他方は、前記2つの増幅系のうちの前記他方に含まれる前記複数の増幅段のうちの初期増幅段と、前記2つの増幅系のうちの前記一方に含まれる前記複数の増幅段とに電気的に接続され、
前記2つの増幅系の各々において、前記複数の増幅段のうちの最終増幅段と前記電源電圧端子との間には、前記空芯コイルが直列に接続される。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2007−88333(P2007−88333A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277345(P2005−277345)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】