説明

電子装置

【課題】 筐体内の所定位置にスピーカー等の電子機器が取り付け保持される電子装置において、装置の落下や衝撃があっても、筐体内のスピーカーの位置ずれがなく、防水性、機密性、音漏れ防止性、ビリつき防止性などの基本的な性能を確保できる電子装置を提供する。
【解決手段】 筐体内の所定位置に電子機器が配設される電子装置において、電子機器の外周部を保持するため、この外周部の形状に合わせられた保持部を有する枠体形状のパッキング部材と、パッキング部材の外周部を保持するため、この外周部の形状に合わせられた内周部を有して筐体内に形成されるホルダー部と、電子機器を拘束して筐体との位置ずれを防ぐための取り付け金具と、を備え、パッキング部材は、電子機器の外周部が当接する側壁部を有する断面L字形の保持部位と、側壁部のない保持部位とが相互に配置される枠体形状を成す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカー、マイク、モーター等の電子機器を、筐体(ケース)内に固定また取り付けするための部材保持構造を備える電子装置にかかり、より具体的には、携帯電話機等に用いられる受話用スピーカー等の電子機器を、パッキング部材を介在させて筐体内の所定位置に配設するのに適する部材保持構造を備えた電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図2は、携帯電話機の筐体(ケース)10内の所定位置に受話用スピーカー30を据え付ける場合の従来における部材保持構造100を示す図であって、図2(2a)は分解した構成部材を含む外観斜視図であり、図2(2b)は部材保持構造100のAA断面図である。
このような、携帯電話機等の筐体内にスピーカーを配置して保持するための構造では、防水性確保、機密性確保、音漏れの防止、筐体にスピーカーが接触することにより発生するビリつきの防止などの諸性能が満足されることが要求されており、筐体内にスピーカーが直接接触しないように、ゴムパッキング部材を介在させてスピーカーを保持する構造となっていた。
【0003】
図2(2a)の部材保持構造100では、円形偏平形状のスピーカー30は、これが受け入れて保持される構造を有する円環枠体形状のパッキング部材20を介して、筐体10内の同じく円環形状のホルダー部11に据え付けられる。ここで、パッキング部材20がスピーカー30を受け入れて保持するために、パッキング部材20の外周部20Aの内側に、円環形状で断面L字状のスピーカーの受け入れ部21が設けられている。
【0004】
また、このパッキング部材20の外周部20Aは、ホルダー部11の受け入れ部11Aの形状に合致する構造となっており、この外周部20Aおよび円環底部20Bを有して、ホルダー部11の受け入れ部11Aおよび底部11Bに密接して配置設定がなされるように、その形状が設定されている。
そして、ここで配置保持されるスピーカー30には、その上部の外周側を押さえて固定保持するための取り付け金具40が取り付けられ、図2(2b)に示すごとく、筐体10のホルダー部11上に、パッキング部材20/スピーカー30/取り付け金具40が積層されて相互に密接した配置設定がなされるよう設計されている。
【0005】
次の図3(3a)と図3(3b)とは、図2に示した従来の部材保持構造100に従って、そのスピーカー30を携帯電話機の筐体10の内側に取り付けたときの問題点を説明するための断面図である。
図2に示した従来の部材保持構造100では、スピーカー30の外周部31の全周に渡って、柔らかいゴムパッキング部材30で固定保持される構造である。このため、落下・衝突・揺動などにより装置に衝撃が与えられたときには、スピーカー30自体が所定位置から大きく移動される可能性がある。
【0006】
図3(3a)は、衝撃等によって筐体内に配置されたスピーカー30が所定位置から移動されたために、スピーカー30がゴムパッキング部材20からズレてしまって隙間が発生し、防水性と機密性(音漏れ性)とが保てなくなった状況を示している。なお、図3(3a)において、M1はスピーカー30の動きの様子を示す矢印であり、またS1は、スピーカー30が動いたために隙間が生じた状況を示すものである。
【0007】
また、図3(3b)の状況はつぎのとおりである。筐体内に配設されたスピーカー30が、図3(a)の場合よりさらに強い力で所定位置から動かされたために、筐体10のホルダー部11の所定位置に密接して配置されていたゴムパッキング部材20は、ホルダ部11の外へ位置ズレして、はみ出すこととなる(20Hの箇所)。そのとき、スピーカー30も所定位置から脱落してしまって、筐体10の底部の内壁に直接接触することになるが(S2の箇所)、このことは、ビリつきなどの不具合を起こす原因である。
【0008】
本発明による電子装置の技術分野にかかわる公知の特許文献としては、例えば、次のようなものがある。
【特許文献1】実用新案登録第3010449号公報
【特許文献2】特開2000−332876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、筐体内の所定位置にスピーカー等の電子機器が据え付けられて保持される電子装置において、その電子装置が落下されたり衝撃を受けたりしたときであっても、筐体内に取り付けられたスピーカー等の電子機器がその位置からずれることがなく、装置の防水性、機密性、音漏れ防止性、ビリつき防止性などの基本的な性能を確保できる部材保持構造を有する電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電子装置は、上述の課題を解決して目的を達成するために、次のような手段を用いる。
(1)筐体内の所定位置に電子機器が配設される電子装置において、
前記電子機器の外周部を保持するため、この外周部の形状に合わせられた保持部を有する枠体形状のパッキング部材と、
前記パッキング部材の外周部を保持するため、この外周部の形状に合わせられた内周部を有して前記筐体内に形成されるホルダーと、
前記電子機器を拘束して前記筐体との位置ずれを防ぐための取り付け金具と、を備え、
前記パッキング部材は、前記電子機器の外周部が当接する側壁部を有する断面L字形の保持部位と、側壁部のない保持部位とが交互に配置される枠体形状を成す、電子装置とした。
【0011】
(2)(1)の電子装置において、
前記ホルダー部は、前記パッキング部材の側壁部のない保持部位に係合するためのリブ状部位を備える。
(3)(1)または(2)の電子装置において、
前記電子機器は、スピーカー、マイク、モーターのいずれかから構成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電子装置によれば、装置が落下されたり衝撃を受けたりしたときであっても、装置筐体内に配設されたスピーカー等の電子機器が所定位置からずれることがなく、装置の防水性、機密性、音漏れ防止性、ビリつき防止性などの基本的な性能を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図1を参照して詳細に説明する。なお、図2および図3に示す従来の電子装置と同一部分には同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
図1は本発明の一実施形態を示す図であり、携帯電話機の筐体(ケース)50内の所定位置に、電子機器である受話用スピーカー30を据え付ける場合の電子装置の部材保持構造200を示す図である。ここで、図1(1a)は分解した構成部材を含む外観斜視図であり、図1(1b)は部材保持構造200のBB断面図である。
【0014】
図1(a)の部材保持構造200では、円形偏平形状のスピーカー30は、これを受け入れて保持される構造を有する円環形状のパッキング部材60を介して、筐体50内に設けられた同じく円環形状のホルダー部51に据え付けられる。
ここで、スピーカー30がパッキング部材60に受け入れられて保持される関係とするにあたり、円環枠体形状のパッキング部材60がスピーカー30の外周部31を保持するよう、この外周部31の形状に合わせた形状からなる保持部61を具備させる。
【0015】
また、筐体50内に形成されたホルダー部51とパッキング部材60との係合関係については、ホルダー部51は、パッキング部材60の外周部60aを保持するため、この外周部60aの形状に合わせて形成された内周部51Aを備える。このホルダー部51の内周部51Aは、内面に凹凸が設けられたリブ付内周面51rとリブのない内周面51fとの2種類がある。この図1では、これらのリブ付内周面51rとリブなしの内周面51fとは、その数と大きさと形状とが1種類に統一されており、これらが規則的に交互に配置された円環状の内周帯として一体的に形成されている。
さらに、筐体50内に配置されて保持されたスピーカー30が位置ずれしないように、スピーカー30の外周部31の側を上方から押さえて、これを拘束するための取り付け金具40を備えている。
【0016】
このパッキング部材60において、スピーカー30を保持するための保持部61は、図1で明らかなように、スピーカー30の外周部31が当接する側壁部w1を有する断面L字形の保持部位61Lと、側壁部のない断面バー形の保持部位61Bとが、規則的に交互に配置された円環枠体形状を成している。そして、保持部位61Lは複数個数あるが、ここではこれらの円周に沿った長さや形状は全て同じものに統一されており、また、保持部位61Bについても保持部位61Lと同じ数だけ設けられているが、それら複数の保持部位61Bについてもその大きさや形状は全て同じように統一されている。
【0017】
なお、このパッキング部材60での保持部位61Lと保持部位61Bとについては、通常は部位61Lと部位61Bの数は同じ数になるものの、部位61Lと部位61Bの設定数は自由に選択することかできるし、大きさや形状もすべての部位を同じように統一する必要はなく、このあたりは当業者の設計選択的な事項に過ぎないものである。図1のパッキング部材60では同じものを採用することとしたが、これらの部位61Lと部位61Bの設定数、大きさ、形状については、設計者が適宜に選択して採用すればよいことであり、これらに合わせて、ホルダー部51の内周部51Aの形状や大きさ等が設定されるとよい。
【0018】
ここで、ホルダー部51とパッキング部材60との係合関係については、パッキング部材60の側壁部w1を有する断面L字形の保持部位61Lは、側壁部w1が側方と上方に突出しているので、ホルダー部51のリブのない内周面51fと係合する位置になるよう設定配置される。また、パッキング部材60の側壁部のない断面バー形の保持部位61Bは、ホルダー部51のリブ付内周面51rと係合する位置になるよう設定配置される。このように、ホルダー部51とパッキング部材60とは、正確に組み合わせられた係合配置設定がなされるように、これら二部材間の寸法や形状などが厳密に設計されることが望まれる。
【0019】
図1のように、各部材の相互に組み合わされる配置設定によって、このパッキング部材60の外周部60aは、ホルダー部51の内周部51Aの形状に合致した構造となっている。ここで、パッキング部材60がホルダー部51に嵌め込まれたときに、パッキング部材60の外周部60aと底部60bとが、ホルダー部51の内周部51Aおよび底部51Bと密接した配置設定がなされるように構成されている。
【0020】
そして、部材保持構造200でのスピーカー30には、このスピーカー30の上部外周側を押さえて保持するための平板リング状の取り付け金具40が、筐体50に支持固定されて取り付けられるので、図1に示すように、筐体50に設けられたホルダー部51上に、パッキング部材60/スピーカー30/取り付け金具40が積層して配置設定されるような構造で複数の部材保持がなされる。
【0021】
図1に示した電子装置の部材保持構造200によれば、ここでのパッキング部材60については、パッキング部材60の側壁部w1を有する断面L字形の保持部位61Lは、ホルダー部51の凹凸のない内周面51fと係合するように設定され、また、パッキング部材60の側壁部のない断面バー形の保持部位61Bは、ホルダー部51のリブ付内周面51rと係合するように設定される。このように、パッキング部材60とホルダー部51との部材の関係が定められるよう、それぞれの部材の設計がなされる。
【0022】
ここで、パッキング部材60は、側壁部w1がある断面L字形の保持部位61Lと、側壁部のない断面バー形の保持部位61Bとが、交互に組み合わされて連結された円環状の枠体部材である。このパッキング部材60のリング状枠体の全体から見ると、側壁部のない断面バー形の保持部位61Bを「切り欠き部」と見ることができ、このとき、この円環枠体状のパッキング部材60を、「切り欠き部」を規則的に複数個数設けた「ギア部材」として捉えることもできる。
【0023】
筐体50に配設されたホルダー部51の内周面51Aとしては、凹凸があるリブ付内周面51rと、リブがなく平坦曲面の内周面51fとの2種類があるが、「ギア部材」に見立てられるこのパッキング部材60の外周部60aにも、このホルダー部51の内周部に合わせられた形状と寸法で形成された保持部位61Lと保持部位61Bとの2種類の保持部を備えているので、このパッキング部材60とこのホルダー部51とが緊密に係合する保持関係が実現される。
【0024】
また、パッキング部材60を介したスピーカー30とホルダー部51との配置関係については、図1(1b)に示すように、このパッキング部材60の側壁部w1がある断面L形の保持部位61Lには、スピーカー30の外周部31が直接接触するものの、側壁部のない断面バー形の保持部位61Bでは、スピーカー30の外周部31がホルダー部51のリブ付内周面51rの位置に配置されて、ホルダー部51との間に隙間S3が形成されることとなり、この隙間はビリ付きのない構造とするのに大いに寄与できる。
【0025】
このように、本発明の電子装置では、ホルダー部51/パッキング部材60/スピーカー30/取り付け金具40を含む構成部材を、リブ手段を含んで積層的に組み合わせて係合し、柔軟で衝撃を吸収しやすい特有な部材保持構造が形成される。これにより、スピーカー30は電子装置内に安定した状態で保持されることができ、電子装置が落下されたり衝突されたりした場合でも、内部のスピーカー30は大きな衝撃を受けることなく、電子装置内でずれたり移動したりするということもない。
【0026】
また、本発明による電子装置は、スピーカー30/ゴム製のパッキング部材60/ホルダー部51の間とには、複数のリブ手段を含んだ柔軟で密接な係合構造が形成されているので、各部材相互のズレや移動を抑えることができ、さらに、防水性や機密性(音漏れ性)の面にも極めて有効であり、パッキング部材60がホルダー部51からはみ出すこともなくなり、びりつきもなくなる。さらに、本発明では、従来の構造に比べて部品点数を増やすこともなく、簡明な構造のままで、低コストにして製造することができる。
【0027】
本実施の形態では、電子装置の一例として、スピーカーを搭載する携帯電話機を取り上げて説明を行ってきたが、これに限られるものではなく、マイクやモーター等の電子機器を内蔵する電子装置についても、本明細書に従えば容易に構成することができる。また、ここでは、電子機器として丸形薄厚の形状を成しているスピーカーを搭載する電子装置について説明してきたが、電子機器の形状や大きさについて限定されることはなく、マイクやモーター等の他の電子機器を搭載または内蔵する電子装置についても、その形状や大きさを適宜なものを用いて、本発明のように構成することができるのは、言うまでもないことである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、筐体内の所定位置に電子機器が据え付けられて保持される構造を備える電子装置に関するものであり、電子装置としては、携帯電話機やPDAなどの携帯端末装置のほか、携帯型パソコン、オーディオ機器などにも適用が可能であり、また、電子機器としては電子装置が搭載するスピーカー、マイク、モーターなどの構成部材に適用が可能であって、本発明の産業上の利用可能性は極めて大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態による電子装置において、その部材保持構造200を示す分解図(1a)と断面図(1b)である。
【図2】従来の電子装置において、その部材保持構造100を示す分解図(2a)と断面図(2b)である。
【図3】従来の電子装置における問題点を説明するための断面図(3a)(3b)である。
【符号の説明】
【0030】
200、100 電子装置の部材保持構造
30 スピーカー(電子機器)
31 スピーカーの外周部
40 取り付け金具
50 筐体(ケース)
51 ホルダー部
51A ホルダー部の内周部
51r ホルダー部のリブ付内周面
51f ホルダー部のリブなし内周面
60 パッキング部材
60a パッキング部材の外周部
60b パッキング部材の底部
w1 側壁部
61L 側壁部のある断面L字形の保持部位
61B 側壁部のない断面バー形の保持部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内の所定位置に電子機器が配設される電子装置において、
前記電子機器の外周部を保持するため、この外周部の形状に合わせられた保持部を有する枠体形状のパッキング部材と、
前記パッキング部材の外周部を保持するため、この外周部の形状に合わせられた内周部を有して前記筐体内に形成されるホルダー部と、
前記電子機器を拘束して前記筐体との位置ずれを防ぐための取り付け金具と、を備え、
前記パッキング部材は、前記電子機器の外周部が当接する側壁部を有する断面L字形の保持部位と、側壁部のない保持部位とが交互に配置される枠体形状を成す、ことを特徴とする電子装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子装置において、
前記ホルダー部は、前記パッキング部材の側壁部のない保持部位に係合するためのリブ状部位を備える、ことを特徴とする電子装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子装置において、
前記電子機器は、スピーカー、マイク、モーターのいずれかから構成される、ことを特徴とする電子装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−186726(P2006−186726A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−378879(P2004−378879)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】