説明

電子負荷装置および電池の内部抵抗測定装置

【課題】定電圧動作時における電池の内部抵抗(インピーダンス)を測定可能とする。
【解決手段】電池1の内部抵抗を交流抵抗計2にて測定する際、電池1の両電極間に接続される電子負荷装置10において、電池1から流される負荷電流を定電流とする定電流回路11と、電池1の端子間電圧が所定の定電圧となるように定電流回路11に流れる負荷電流の電流値を制御する制御部13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池(特には、燃料電池)の内部抵抗を測定する際に、その電池に接続される電子負荷装置および電子負荷装置を含む電池の内部抵抗測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池の内部抵抗(インピーダンス)には、実効抵抗成分と反応抵抗成分とが含まれるが、その内部抵抗を測定するにあたっては、例えば特許文献1に記載され、図3に示すように、燃料電池1に対して、四端子法による交流抵抗計2と電子負荷装置3とがそれぞれ並列的に接続される。
【0003】
電子負荷装置3は、燃料電池1から負荷電流を取り出すために用いられ、これにより燃料電池1の実際の使用状態が疑似的に作り出され、その状態での内部インピーダンスを測定することができる。
【0004】
通常、電子負荷装置3には、定電流動作(CC動作)モードと、定電圧動作(CV動作)モードの2つの動作モードが用意されており、必要に応じて、その動作モードが選択されるが、一般的に、定電流動作モードでは、電子負荷装置3の内部インピーダンスは大きく、定電圧動作モードでは、電子負荷装置3の内部インピーダンスは小さい。
【0005】
したがって、図3のような接続で、電子負荷装置3を定電流動作させて、燃料電池1の内部抵抗を交流抵抗計2で測定する場合、電子負荷装置3の内部インピーダンスが大きいため、燃料電池1の内部抵抗を正確に測定することができる。
【0006】
これに対して、電子負荷装置3を定電圧動作させて、燃料電池1の内部抵抗を交流抵抗計2で測定する場合には、電子負荷装置3の内部インピーダンスが測定値に大きく影響し、測定誤差が大きくなる。
【0007】
そのため、従来では、電子負荷装置3を定電流動作モードとして、燃料電池1の内部抵抗を測定するようにしている。しかしながら、ユーザーによっては、定電圧動作時における燃料電池の内部抵抗を測定したい場合があるが、原理上、それができないという問題がある。この問題は、燃料電池特有の問題ではなく、2次電池などについても言えることである。
【0008】
【特許文献1】特開2003−223918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の課題は、定電圧動作時における電池の内部抵抗(インピーダンス)を測定可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、請求項1に記載されているように、電池の内部抵抗を交流抵抗計にて測定する際、上記電池の両電極間に接続される電子負荷装置において、上記電池から流される負荷電流を定電流とする定電流回路と、上記電池の端子間電圧が所定の定電圧となるように上記定電流回路に流れる上記負荷電流の電流値を制御する制御部とを備えていることを特徴としている。
【0011】
本発明には、請求項2に記載されているように、上記電池の端子間電圧を測定する電圧測定手段をさらに備え、上記制御部は、定電流動作状態のもとで上記電圧測定手段にて測定される上記電池の端子間電圧が所定の定電圧となるように上記定電流回路に流れる上記負荷電流の電流値を制御する態様も含まれる。
【0012】
本発明において、請求項3に記載されているように、上記電池の端子間電圧が所定の定電圧となるように上記定電流回路に流れる上記負荷電流の電流値を制御する擬似的な定電圧動作モードのほかに、定電流動作モードを備えていることが好ましい。
【0013】
また、請求項4に記載されているように、被測定電池の両電極間にそれぞれ並列的に接続される交流抵抗計と電子負荷装置とを含み、上記被測定電池から上記電子負荷装置に負荷電流を流した状態で、上記交流抵抗計にて上記被測定電池の内部抵抗を測定する電池の内部抵抗測定装置において、上記電子負荷装置として、請求項1ないし3のいずれか1項に記載されている電子負荷装置を用いることを特徴とする電池の内部抵抗測定装置も本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、定電流動作状態のもとで、被測定物である電池の端子間電圧が所定の定電圧となるように、定電流回路に流れる負荷電流の電流値を制御するようにしたことにより、見掛け上、定電圧動作が可能となる。この場合において、回路構成は定電流動作時と同じで電子負荷装置の内部インピーダンスが高く保たれることになるため、定電圧動作状態で電池の内部抵抗をより正確に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、図1および図2により、本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の実施形態に係る電子負荷装置を示す模式図、図2は上記電子負荷装置の具体的な構成例を示す回路図である。
【0016】
なお、この実施形態の説明においても、被測定物は先の図3の従来例で説明した燃料電池1であるが、2次電池などであってもよい。また、燃料電池1の内部抵抗測定手段には、上記従来例と同じく、四端子法による交流測定計2が用いられてよい。
【0017】
図1に示すように、本発明による電子負荷装置10は、燃料電池1の内部抵抗を測定するにあたって、交流測定計2とともに燃料電池1に対して並列的に接続される。
【0018】
この実施形態において、電子負荷装置10は、燃料電池1の両電極間に接続される定電流回路11と、燃料電池1の端子間電圧を測定する電圧計(電圧測定手段)12と、定電流回路11を制御する制御部13とを含み、動作モードとして、擬似的な定電圧(CV)動作モードと定電流(CC)動作モードの2つの動作モードを備えている。
【0019】
定電流回路11には、燃料電池1から負荷電流が流されるが、擬似的な定電圧動作モード時には、電圧計12にて燃料電池1の端子間電圧が測定される。測定された端子間電圧(測定電圧値)は、制御部13に入力される。制御部13には、あらかじめユーザーが所望とする燃料電池1の定電圧値(設定電圧値)が設定されている。
【0020】
制御部13は、測定電圧値と設定電圧値とを比較し、測定電圧値が設定電圧値になるように、定電流回路11に流れる負荷電流を制御する。このように、測定電圧値と設定電圧値とを比較して、負荷電流の制御にフィードバックをかけることにより、擬似的に(見掛け上)、電子負荷装置10は定電圧動作状態となる。
【0021】
これによれば、回路構成は定電流動作時と同じで電子負荷装置10の内部インピーダンスが高く保たれることになるため、定電圧動作状態で燃料電池1の内部抵抗をより正確に測定することができる。
【0022】
図2を参照して、図1の定電流回路11は、基本的な構成として、オペアンプ11aと、オペアンプ11aの出力側に接続される半導体素子(この例では、NPNトランジスタ)11bとにより構成される。
【0023】
NPNトランジスタ11bのコレクタは、燃料電池1の正極側に接続され、NPNトランジスタ11bのエミッタは、電流検出抵抗Rを介して燃料電池1の負極側に接続され、かつ、接地される。なお、rは燃料電池1の内部抵抗である。
【0024】
オペアンプ11aの−入力端子には、NPNトランジスタ11bのエミッタと電流検出抵抗Rとの接続点が接続される。オペアンプ11aの+入力端子には、電圧可変の直流電圧Vrefが印加される。これにより、定電流回路11は、燃料電池1の負荷電流が(Vref/R)となるように動作する。
【0025】
オペアンプ12aが図1の電圧計12に相当し、オペアンプ12aの+入力端子は、燃料電池1の正極側に接続される。オペアンプ12aの出力端子と−入力端子とが接続されるので、オペアンプ12aは、ボルテージフォロワとして動作し、燃料電池1の正極の電圧、すなわち燃料電池1の端子間電圧を測定する。
【0026】
オペアンプ12aにて測定された燃料電池1の端子間電圧(測定電圧)は、図1の制御部13に入力される。制御部13は、測定電圧値と設定電圧値とを比較し、測定電圧値=設定電圧値となるように、オペアンプ11aの+入力端子に印加される直流電圧Vrefの電圧値を制御する。これにより、定電流回路11は、燃料電池1の端子間電圧が設定電圧値となるように、負荷電流(Vref/R)を制御する。
【0027】
なお、この電子負荷装置10では、上記直流電圧Vrefは例えば次のように設定されるように動作する。燃料電池1の無負荷時の電圧をVo,負荷電流をIとすると、燃料電池1の端子間電圧(測定電圧)は次式(1)で表される。
Vo−I×r=Vo−(Vref/R)×r…(1)
【0028】
制御部13は、この測定電圧が設定電圧値になるように上記直流電圧Vrefを制御する。まず、動作開始時に微少な負荷電流Iを流し、上記式(1)から内部抵抗rを予測する。その内部抵抗rの値に基づいて、上記直流電圧Vrefを設定電圧値になるように設定する。以後は、上記式(1)で内部抵抗rの値を計算し直しながら、上記直流電圧Vrefを制御する。
【0029】
このようにして、本発明によれば、擬似的な定電圧動作モードが作り出されるため、定電圧動作状態で燃料電池1の内部抵抗をより正確に測定することができる。なお、定電流動作モードで燃料電池1の内部抵抗を測定する場合には、オペアンプ12aの出力をオフとして、オペアンプ11aの+入力端子に印加される直流電圧Vrefを任意に決めればよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係る電子負荷装置を示す模式図。
【図2】上記電子負荷装置の具体的な構成例を示す回路図。
【図3】燃料電池の内部抵抗を測定する従来の測定系を示す模式図。
【符号の説明】
【0031】
1 燃料電池
2 交流抵抗計
10 電子負荷装置
11 定電流回路
11a オペアンプ
11b トランジスタ
12 電圧計
12a オペアンプ
13 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の内部抵抗を交流抵抗計にて測定する際、上記電池の両電極間に接続される電子負荷装置において、
上記電池から流される負荷電流を定電流とする定電流回路と、上記電池の端子間電圧が所定の定電圧となるように上記定電流回路に流れる上記負荷電流の電流値を制御する制御部とを備えていることを特徴とする電子負荷装置。
【請求項2】
上記電池の端子間電圧を測定する電圧測定手段をさらに備え、上記制御部は、定電流動作状態のもとで上記電圧測定手段にて測定される上記電池の端子間電圧が所定の定電圧となるように上記定電流回路に流れる上記負荷電流の電流値を制御することを特徴とする請求項1に記載の電子負荷装置。
【請求項3】
上記電池の端子間電圧が所定の定電圧となるように上記定電流回路に流れる上記負荷電流の電流値を制御する擬似的な定電圧動作モードのほかに、定電流動作モードを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子負荷装置。
【請求項4】
被測定電池の両電極間にそれぞれ並列的に接続される交流抵抗計と電子負荷装置とを含み、上記被測定電池から上記電子負荷装置に負荷電流を流した状態で、上記交流抵抗計にて上記被測定電池の内部抵抗を測定する電池の内部抵抗測定装置において、
上記電子負荷装置として、請求項1ないし3のいずれか1項に記載されている電子負荷装置を用いることを特徴とする電池の内部抵抗測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−109375(P2009−109375A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−282802(P2007−282802)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】