説明

電子部品、パッケージおよび赤外線センサ

【課題】 素子を基体表面上に直接配設することにより、電子部品をある程度低背化させることができる。しかしながら、一方で、素子を基体表面上に直接配設しているため、電子部品の製造時および使用時に基体から発生する気体分子の影響を素子が大きく受け、素子の特性が低下する可能性がある。
【解決手段】 主面に第1の凹部5を有する基体3と、第1の凹部5内に配設された素子7と、第1の凹部5を封止するように基体3上に配設された蓋体9とを備え、基体3が、素子7の下に位置する部分に第2の凹部11を有し、第2の凹部11の開口部が素子7の下に位置する部分と素子7の周囲に位置する部分とを有していて、第2の凹部11において基体3が素子7から部分的に離隔し、第2の凹部11内に配設されたゲッター材13を更に備えた電子部品1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度センサ素子、赤外線センサ素子、ジャイロセンサ素子および水晶振動子のようなデバイスを真空封止する電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加速度センサ素子、赤外線センサ素子、ジャイロセンサ素子および水晶振動子のような素子が内部に封止された電子部品においては、上記の素子の特性を高めるため、電子部品内に存在する気体分子の量を少なくすることが求められている。この気体分子の量を少なくするため、特許文献1に開示されているように、電子部品内にゲッター材を配設することが知られている。ゲッター材を配設することにより、電子部品内に存在する気体分子がゲッター材に吸着されるので、電子部品内に存在する気体分子の量を少なくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−251239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている電子部品では、気体分子を吸着するためのゲッター材が、蓋体の内面上に配設されているため、電子部品の低背化(小型化)が困難となっていた。素子を基体表面上に直接配設することにより、電子部品をある程度低背化させることができる。しかしながら、一方で、素子を基体表面上に直接配設しているため、電子部品の製造時および使用時に基体から発生する気体分子の影響を素子が大きく受け、素子の特性が低下する可能性がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、素子の特性を高めつつ小型化が可能な電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子部品は、主面に第1の凹部を有する基体と、前記第1の凹部内に配設された素子と、前記第1の凹部を封止するように前記基体上に配設された蓋体とを備えた電子部品であって、前記基体は、前記素子の下に位置する部分に第2の凹部を有し、該第2の凹部を平面視した場合に、前記第2の凹部の開口部が前記素子の下に位置する部分と前記素子の周囲に位置する部分とを有していて、前記第2の凹部において前記基体が前記素子から部分的に離隔しているとともに、前記第2の凹部内に配設されたゲッター材を更に備えていることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の電子部品は、上記構成において、前記ゲッター材と電気的に接続され、前記ゲッター材を通電加熱する端子を更に備えていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の電子部品は、上記構成において、前記基体中の前記ゲッター材の下に位置する部分に埋設されたヒータを更に備えていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の電子部品は、上記構成において、前記第2の凹部の開口部が、前記素子の周囲に位置する部分を複数有していることを特徴とするものである。
【0010】
本発明のパッケージは、主面に素子が配設される第1の凹部を有する基体を備えたパッケージであって、前記基体が前記素子から部分的に離隔するように前記素子の配設領域に第2の凹部を有し、該第2の凹部を平面視した場合に、前記第2の凹部の開口部が前記素子の下に位置する部分と前記素子の周囲に位置する部分とを有していて、前記第2の凹部内に配設されたゲッター材を更に備えていることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の赤外線センサは、基板と、該基板上に配設された請求項1に記載の電子部品と、前記素子に通電する通電部材とを備え、前記素子が赤外線センサ素子であるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電子部品によれば、基体が、素子の下に位置する部分に第2の凹部を有し、第2の凹部を平面視した場合に、第2の凹部の開口部が素子の下に位置する部分と素子の周囲に位置する部分とを有していて、第2の凹部において基体が素子から部分的に離隔し、加えて、第2の凹部内に配設されたゲッター材を更に備えていることから、電子部品のサイズを小型化しつつ、電子部品の製造時および使用時における基体から発生する気体分子の素子への影響を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる電子部品を示す断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態にかかる電子部品を示す断面図である。
【図3】本発明の第3の実施形態にかかる電子部品を示す断面図である。
【図4】図3に示す実施形態にかかる電子部品のA−A断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態にかかる電子部品の変形例を示すA−A断面図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかる赤外線センサを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の電子部品およびパッケージについて図面を用いて詳細に説明する。図1〜図6において、1は電子部品、3は基体、3aは主面、5は第1の凹部、7は素子、9は蓋体、11は第2の凹部、13はゲッター材、15は接続部材、17は端子、19はヒータ、21はパッケージ、23は赤外線センサ、25は基体、27は通電部材、29は配線導体、31は引出電極である。
【0015】
図1に示す例のように、本発明の第1の実施形態にかかる電子部品1は、主面3aに第1の凹部5を有する基体3と、第1の凹部5内に配設された素子7と、第1の凹部5を封止するように基体3上に配設された蓋体9とを備えている。
【0016】
また、基体3は、素子7の下に位置する部分に第2の凹部11を有し、第2の凹部11を平面視した場合に、第2の凹部11の開口部が素子7の下に位置する部分と素子7の周囲に位置する部分とを有している。また、第2の凹部11において基体3が素子7から部分的に離隔している。そして、本実施形態にかかる電子部品1は、第2の凹部11内に配設されたゲッター材13を更に備えている。
【0017】
本実施形態にかかる電子部品1は、素子7を基体3の凹部内に配設しているため、電子部品1の低背化が可能であるので、電子部品1のサイズを小型化することができる。また、基体3が素子7の下に位置する部分に第2の凹部11を有し、また、第2の凹部11において基体3が素子7から部分的に離隔していることから、基体3と素子7との接触面積を小さくすることができるので、電子部品1の製造時および使用時における基体3から発生する気体分子の素子7への影響を小さくすることができる。
【0018】
さらに、本実施形態にかかる電子部品1は、第2の凹部11内に配設されたゲッター材13を更に備えているため、ゲッター材が蓋体の内面上に配設されている場合と比べて、広い面積を有する第2の凹部11の底面にゲッター材を配置していることから、ゲッター材の表面積を大きくすることができるので、より多くの気体分子を吸着することができる。また、第2の凹部11の開口部の一部が素子7の周囲に位置しているので、第2の凹部11内に存在する気体分子だけでなく、第1の凹部5内に存在する気体分子もゲッター材13によって吸着することができる。従って、電子部品1の製造時および使用時における基体3から発生する気体分子の素子7への影響をさらに小さくすることができる。このように、本実施形態にかかる電子部品1は、従来の電子部品と比較して、電子部品のサイズを小型化しつつ、電子部品から素子へ伝わる熱を抑制して素子7への熱による影響を小さくすることができる。
【0019】
また、第2の凹部11内に配設されたゲッター材13を備えていることにより、電子部品1の、蓋体9によって封止された封止空間である第1の凹部内および第2の凹部内の圧力をより小さくすることができる。これは、電子部品1内に存在する気体分子がゲッター材13に吸着されるからである。なお、第1の凹部内および第2の凹部内に存在する気体分子としては、電子部品1の製造時および使用時において、基体3および蓋体9のような電子部品1を構成する部材から発生するガスや製造時に混入するHOなどの気体が挙げられる。
【0020】
言い換えれば、本実施形態にかかる電子部品1は、主面3aに素子7が配設される第1の凹部5を有する基体3を備え、基体3が素子7から部分的に離隔するように素子7の配設領域に第2の凹部11を有し、第2の凹部11内に配設されたゲッター材13を更に備えたパッケージ21を具備している。このようなパッケージを用いることで、第2の凹部11内に、従来のパッケージよりも広い面積でゲッター材13を配置できるので、内部の圧力がより低い電子部品1を作製するうえで有効である。
【0021】
さらに、本実施形態にかかる電子部品1は、第1の凹部5を封止するように基体3上に配設された蓋体9と、第1の凹部5内における配設領域に配設された素子7とを更に具備している。
【0022】
本実施形態にかかる電子部品1は、主面3aに第1の凹部5を有する基体3を備えている。この第1の凹部5内に、後述する素子7を配設するとともに、蓋体9を用いて第1の凹部5を封止することにより、電子部品1として用いることができる。
【0023】
基体3としては、絶縁性の部材を用いることが好ましい。具体的には、例えば、アルミナセラミックスおよびムライトセラミックスのようなセラミックス材料を主成分としたものを用いることができる。
【0024】
本実施形態にかかる電子部品1は、第1の凹部5内に配設された素子7を備えている。素子7としては、加速度センサ素子、赤外線センサ素子、ジャイロセンサ素子および水晶振動子のようなデバイスを用いることができる。例えば、赤外線センサを作製する場合には、素子7として赤外線センサ素子を第1の凹部5内に配設すればよい。また、加速度センサを作製する場合には、素子7として加速度センサ素子を第1の凹部5内に配設すればよい。
【0025】
本実施形態にかかる電子部品1は、第1の凹部5を封止するように基体3上に配設された蓋体9を備えている。蓋体9としては、接合面にメタライズが形成されたセラミックスまたはガラスのような絶縁部材や、金属部材およびシリコンを用いることが好ましい。セラミックスの場合には、例えば、アルミナセラミックスおよびムライトセラミックスのようなセラミックス材料を主成分としたもの並びにガラス部材を用いることができる。
【0026】
蓋体9は、接合部材15を介して基体3と接合されている。接合部材15を用いて基体3と蓋体9とを接合することにより、基体3と蓋体9との間を封止することができる。接合部材15としては、Au,Ag,Zn,Sn,Cuおよびこれらの合金を主成分とするものを用いることができる。
【0027】
また、基体3は、主面3aに垂直な断面において、素子7の下に位置する部分に第2の凹部11を有している。そして、第2の凹部11において基体3が素子7から部分的に離隔している。このため、基体3と素子7の接触面積を小さくすることができるので、基体3と素子7が接する部分で、基体3から素子7へ伝わる熱を抑制して素子7への熱による影響を小さくすることができる。
【0028】
第2の凹部11の深さはゲッター材13の厚みよりも0.1mm以上深いことが好ましい。これは、第2の凹部11の深さをゲッター材13の厚みよりも0.1mm以上深くすることにより、ゲッター材13の表面に10〜20μm程度の凹凸が生じても、素子7とゲッター材13とが接触する可能性を小さくすることができるからである。また、第2の凹部11の幅はゲッター材13の幅よりも0.1mm以上広いことが好ましい。第2の凹部11の幅はゲッター材13の幅よりも0.1mm以上広くすることにより、ゲッター材13を配置する位置がずれても、第2の凹部11の内壁面とゲッター材13とが接触する可能性を小さくすることができるからである。そのため、加熱時におけるゲッター材13の活性の均一性を高めることができる。
【0029】
また、基体3の寸法が縦5mm〜50mm,横5mm〜50mm,厚さ0.5mm〜5mmであって、第1の凹部5の寸法が縦3.5mm〜48mm,横3.5mm〜48mm,深さ0.2mm〜4.5mmの場合であれば、第2の凹部11の寸法は、縦2.5mm〜46mm,横2.5mm〜46mm,深さ0.1mm〜4mmに形成されていることが好ましい。例えば、基体3の寸法が縦15mm,横15mm,厚さ2mmであって、第1の凹部5の寸法が縦10mm,横10mm,深さ1mmの場合であれば、第2の凹部11の寸法は、縦8mm,横8mm,深さ0.5mmである。
【0030】
また、本実施形態にかかる電子部品1のように、主面3aに垂直な1つの断面において、主面3aに平行な方向に対する素子7の幅L1が、主面3aに平行な方向に対する第2の凹部11の開口部の幅L2よりも大きい。これにより、基体3と素子7の接合面積を小さくしつつも、基体3によって素子7を安定して支持することができるので、素子7の位置ずれが生じる可能性を抑制することができる。具体的には、図1に示す例のように、主面3aに垂直な断面において、素子7の一方の端部および他方の端部が基体3により支持されていることが好ましい。
【0031】
また、このとき図1に示す例のように、素子7は、底面だけでなく側面の少なくとも一部においても基体3により支持されていることが好ましい。これにより、素子7の位置ずれが生じる可能性をさらに抑制することができるので、基体3によって素子7をさらに安定して支持することができる。
【0032】
電子部品1は、第2の凹部11内に配設されたゲッター材13を備えている。
【0033】
ゲッター材13としては、化学的に活性な部材を用いることが好ましい。具体的には、Ti,Zr,FeおよびVを主成分とする金属粉末を、ニトロセルロース樹脂およびエチルセルロース樹脂等の有機溶剤と混合して、導体ペーストを作製し、スクリーン印刷法等の印刷方法によってゲッター材13となる導体ペーストを所望の位置および厚さに印刷する。その後、不活性ガス雰囲気中(例えば、アルゴン雰囲気中)や真空雰囲気で200℃〜300℃で加熱して、有機溶剤を蒸発させて除去することによってゲッター材を配設することができる。配設の方法としては、一般的な蒸着方法,スパッタリング方法またはゲッター部材22をタブレット状にして接着剤などを用いて接着させる方法によって形成しても良い。また、ゲッター材13は縦2.4mm〜45mm,横2.4mm〜45mm,厚さ0.5μm〜1mmであることが好ましい。ゲッター材13の厚みが0.5μm以上である場合には、安定してガス吸着の効果をゲッター材13から得ることができる。また、ゲッター材13の厚みが1.0μm以下である場合には、ゲッター材13の熱容量が過度に大きくなることを抑制することができるので、ゲッター材13の加熱時におけるゲッター材13の活性の均一性を高めることができる。
【0034】
これは、ゲッター材13の表面に吸着したガスとの化合物による酸化膜のような皮膜が形成されている場合、ゲッター材13による気体分子を吸着する効果が小さくなる。しかしながら、ゲッター材13を加熱することにより、ゲッター材13の表面に存在するガスとの化合物をゲッター材13の内部に拡散させることができる。これにより、ゲッター材13の表面に新しい活性面を形成することができるので、ゲッター材13による気体分子を吸着する効果を再び向上させることができる。なお、ゲッター材13の表面に新しい活性面を効率良く形成するためには、ゲッター材13は250〜500℃で加熱することが好ましい。
【0035】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0036】
図2に示す例のように、本実施形態の電子部品1は、第1の実施形態と比較して、ゲッター材13を加熱するためのヒータ19を更に備えている。本実施形態においてヒータ19は、基体3中のゲッター材13の下に位置する部分に埋設されている。上記のヒータ19を備えていることにより、電子部品1の第1の凹部5および第2の凹部11の内圧をさらに小さくできるからである。
【0037】
ヒータ19は、例えば、タングステンの金属粉末を、ニトロセルロース樹脂およびエチルセルロース樹脂等の有機溶剤と混合して、導体ペーストを作製し、スクリーン印刷法等の印刷方法によってヒータ19となる導体ペーストを基体3の内部に所望の位置に所望の厚さとなるように印刷することによって形成する。なお、このようなヒータ19は、平面視でゲッター材と同程度の寸法で10〜50μmの厚さに形成される。また、このようなヒータ19を、例えばミアンダ状のパターン等に形成することによって、同じ面積であっても大きな熱を発生させることもできる。このようなヒータ19は通電することによって発熱させることができるものである。そして、このようなヒータ19に、例えば、2〜5A程度の電流を15〜30分間印加して、ゲッター材13が250〜500℃の温度となるように加熱することによって、ゲッター材を活性化することができる。一方で、基体3および蓋体9まで加熱してしまうと、これらの部材からガスが発生して、電子部品1の内圧が大きくなるため、素子7の特性が低下する可能性がある。また、素子7が加熱されることにより、素子7の特性が低下する可能性もある。
【0038】
従って、本実施形態にかかる電子部品1では、ヒータ19が、基体3中のゲッター材13の下に位置する部分に埋設されていることから、ゲッター材13を効率良く加熱するとともに、基体3、蓋体9および素子7への加熱を抑制することができる。これにより、基体3および蓋体9からのガスの発生を抑制しつつ、ゲッター材13の表面に新しい活性面を効率良く形成することができる。
【0039】
特に、主面3aに垂直な基体3の断面において、ヒータ19が、ゲッター材13における主面3aに平行な方向の幅の範囲内に位置していることが好ましい。これにより、ヒータ19で発生した熱がゲッター材13に十分に伝わると共に、ゲッター材13により伝わることによって、素子7へ熱が伝わることをさらに抑制することができるからである。
【0040】
次に、本発明の第3の実施形態について説明をする。
【0041】
図3および図4に示す例のように、本実施形態の電子部品1は、第1の実施形態と比較して、素子7が配置された第2の凹部11を平面視した場合に、第2の凹部11の開口部が、素子7の下に位置する部分と、素子7の周囲に位置する部分とを複数有している。このように、第2の凹部11の開口部が、素子7の周囲に複数位置していることにより、第1の凹部5内に存在する気体分子と第2の凹部11内に存在する気体分子とが循環しやすくなるので、第1の凹部5内に存在する気体分子および第2の凹部11内に存在する気体分子をより効率よくゲッター材13に吸着させることができる。
【0042】
より具体的には、図4に示す例のように、平面視で素子7の上方および下方のそれぞれにおいて、第2の凹部11の開口部が、第1の凹部5に向かって開口していることにより、第1の凹部5内に存在する気体分子を、より効率良くゲッター材13に吸着させることができる。
【0043】
また、図5に示す例のように、素子7が平面視で矩形状であって、素子7の四隅がそれぞれ基体3により支持されているとともに、素子7の4つのそれぞれの側面において、第2の凹部11の開口部が、第1の凹部5に向かって開口している実施形態においても図4に示す例の場合と同様に、第1の凹部5内に存在する気体分子を、より効率良くゲッター材13に吸着させることができる。
【0044】
また、図5に示す例のように、平面視で矩形状の素子7と基体3とが素子7の角部で接合されていて、第2の凹部11の内壁面のうち、素子7の角部付近に対応する部分が平面視で曲線である場合には、素子7と基体3との接合面に加わる応力を緩和させることができるので好ましい。
【0045】
次に、本発明の電子部品の製造方法について詳細に説明する。
【0046】
まず、主面3a上に第1の凹部5および第2の凹部11を有する基体3を準備する。具体的には、アルミナセラミックスおよびムライトセラミックス等のセラミックス材料を主成分とするセラミックグリーンシートを積層して、第1の凹部5および第2の凹部11を有するように積層体を作製する。そして、この積層体を焼成することにより、本実施形態にかかる基体3を作製することができる。なお、上記実施形態においては、セラミックグリーンシートに予め第1の凹部5および第2の凹部11を形成しているが、セラミックグリーンシートを積層焼成した後に第1の凹部5および第2の凹部11を形成してもよい。
【0047】
次に、第1の凹部5の底面に、第2の凹部11上に位置するように素子7を配設する。
【0048】
次に、第1の凹部5を封止するように基体3の上面に蓋体9を配設する。蓋体9としては、基体3の主面3a上に配設され、凹部を封止することができるものであればよい。例えば、アルミナセラミックスおよびムライトセラミックスのようなセラミックス材料を主成分とした板状の部材、ガラスを主成分とする板状の部材、金属を主成分とする板状の部材、およびシリコンを主成分とする板状の部材の部材を用いることができる。
【0049】
このとき、接合部材15を用いて、基体3と蓋体9とを接合すればよい。接合部材15としては、例えば、クラッドされたもの、プリフォームされたものおよびペースト状のものを用いることができる。また、このような接合部材15は、メタライズによって基体3と蓋体9との接合面に配設してもよいし、ペースト状の接合部材15を用いて印刷によって基体3および蓋体9における上記接合面に配設してもよい。そして、基体3および蓋体9における上記接合面に配設された接合部材15を加熱溶融させることによって、基体3と蓋体9とを接合部材15を介して接合する。
【0050】
上記、蓋体9を用いて第1の凹部5を封止する工程は、常圧よりも低い圧力の下で行うことが好ましい。電子部品1の内圧を常圧よりも低くすることができるからである。より具体的には、真空チャンバーのような減圧装置を用いることにより、常圧よりも低い圧力の下で、第1の凹部5を封止することができる。このときの真空度は、減圧装置を用いることによって要求される電子部品1の内圧に応じて適宜設定すればよい。
【0051】
以上のような製造方法によって、本実施形態にかかる電子部品1を製造することができる。
【0052】
なお、上記電子部品1を製造する過程において、ゲッター材13を加熱する工程を備えていることが好ましい。ゲッター材13の表面に新しい活性面を形成することができるので、ゲッター材13による気体分子を吸着する効果を再び向上させることができるからである。
【0053】
特に、蓋体9と基体3とを接合する工程において上記ゲッター材13を加熱することによって、ゲッター材13を活性化することが好ましい。蓋体9と基体3とを接合する工程においては、基体3および蓋体9を加熱することによって基体3と蓋体9とを接合するので、基体3、蓋体9および接合部材15からガスが発生しやすい。そのため、蓋体9と基体3とを接合する工程においてゲッター材13を活性化させることにより、ゲッター材13による気体分子を吸着する効果を高め、電子部品1の内圧をより小さくすることができるからである。
【0054】
次に、本発明の一実施形態にかかる赤外線センサについて説明する。
【0055】
図6に示す例の、赤外線センサ23は、基板25と、基板25上に配設された上記実施形態に代表される電子部品1と、電子部品1が具備する素子7に通電する通電部材27とを備えている。また、本実施形態における電子部品1が具備する素子7は、赤外線センサ素子である。
【0056】
本実施形態の赤外線センサ23によれば、電子部品1が、第2の凹部11内に配設されたゲッター材13を更に備えていることから、電子部品1の製造時および使用時における基体3から発生する気体分子の赤外線センサ素子への影響をさらに小さくすることができる。そのため、長期間の使用においても性能の低下が抑制された高性能の赤外線センサ23とすることができる。
【0057】
本実施形態における基板25としては、電子部品1を保持することが可能な部材であればよく、具体的には、セラミックス板、樹脂板および金属板を用いることができる。また、本実施形態にかかる赤外線センサ23は、赤外線センサ素子に通電する通電部材27を備えている。本実施形態においては、通電部材27として、第1の凹部5から赤外線センサ23の外表面に引き出される引出電極31と、引出電極31と赤外線センサ素子とを電気的に接続する配線導体29と、を備えた通電部材27を用いている。
【0058】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を行うことは何ら差し支えない。
【符号の説明】
【0059】
1・・・電子部品
3・・・基体
3a・・・主面
5・・・第1の凹部
7・・・素子
9・・・蓋体
11・・・第2の凹部
13・・・ゲッター材
15・・・接合部材
17・・・端子
19・・・ヒータ
21・・・パッケージ
23・・・赤外線センサ
25・・・基板
27・・・通電部材
29・・・配線導体
31・・・引出電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面に第1の凹部を有する基体と、前記第1の凹部内に配設された素子と、前記第1の凹部を封止するように前記基体上に配設された蓋体とを備えた電子部品であって、前記基体は、前記素子の下に位置する部分に第2の凹部を有し、該第2の凹部を平面視した場合に、前記第2の凹部の開口部が前記素子の下に位置する部分と前記素子の周囲に位置する部分とを有していて、前記第2の凹部において前記基体が前記素子から部分的に離隔しているとともに、前記第2の凹部内に配設されたゲッター材を更に備えていることを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記ゲッター材と電気的に接続され、前記ゲッター材を通電加熱する端子を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記基体中の前記ゲッター材の下に位置する部分に埋設されたヒータを更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項4】
前記第2の凹部の開口部が、前記素子の周囲に位置する部分を複数有していることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項5】
主面に素子が配設される第1の凹部を有する基体を備えたパッケージであって、前記基体が前記素子から部分的に離隔するように前記素子の配設領域に第2の凹部を有し、該第2の凹部を平面視した場合に、前記第2の凹部の開口部が前記素子の下に位置する部分と前記素子の周囲に位置する部分とを有していて、前記第2の凹部内に配設されたゲッター材を更に備えていることを特徴とするパッケージ。
【請求項6】
基板と、該基板上に配設された請求項1に記載の電子部品と、前記素子に通電する通電部材とを備え、前記素子が赤外線センサ素子である赤外線センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−251702(P2010−251702A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292213(P2009−292213)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】