説明

電子部品およびその製法

【課題】溶接鑞剤の這い上がりを阻止する。
【解決手段】電子部品用コンタクトの素材または下地メッキ層を溶接鑞剤の低濡れ性物質で構成し、その表面に溶接鑞剤の高濡れ性物質で構成した仕上げメッキ層を形成し、高濡れ性仕上げメッキ層の一部領域を選択的に取り除いて低濡れ性素材表面或いは下地メッキ層表面の露出された領域を形成し、この露出された領域を、加熱溶融した溶接鑞剤が高濡れ性仕上げメッキ層に沿って這い上がり移動するのを阻止する領域として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鑞接用コンタクトを持った電子部品およびその製法に関し、特に、コンタクトに、その表面に形成される溶接鑞剤の高濡れ性皮膜である仕上げメッキ層上を這い上がる溶接鑞剤の這い上がりを阻止する領域を形成する新規な方法、及びかかる阻止領域を持った電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来例を図1及び2を参照して説明する。
電子部品10は、コンタクト11と、このコンタクト11を一体にモールド成型して保持した絶縁材料より成る端子保持部材12とから成り、コンタクト11は、配線基板2に形成される貫通孔21の内周部に形成された貫通孔メッキ層21Aに鑞付けされる端子部111と他の電子部品に電気接触する接触部112より成る。3は配線基板2の下面に形成された配線(図示せず)の鑞接パッド22に予め付与されている半田の如き溶接鑞剤を示す。
【0003】
コンタクト11の端子部111は、その表面に溶接鑞剤の高濡れ性物質である錫或いは金がメッキされている。この端子部111を配線基板2のメッキ層21Aを持った貫通孔21に挿入した状態(図1)で、配線基板2の下面に付与されている溶接鑞剤3を加熱溶融することにより、端子部111と貫通孔メッキ層21A及び鑞接パッド22は電気機械的に鑞接で接続され、電気端子1は配線基板2に実装されて、電子部品10を構成する。
この鑞付けに際して、加熱溶融した溶接鑞剤3は、端子部111の表面の高い濡れ性を持ったメッキ層を濡らしながら吸い上げられ(以下これを「這い上がり」と称する)、端子部111と貫通孔メッキ層21Aの間の接合領域における溶接鑞剤3の量が減少する。加熱の回数が複数回にも及ぶと、溶接鑞剤は不足するに到り、端子部111と貫通孔メッキ層21Aの間の電気機械的接続が不完全になる。
【0004】
溶接鑞剤の這い上がりに起因して端子部111とメッキ貫通孔21の間の溶接鑞剤が不足する問題を解消するための一方策として、図1及び2に示される如く、コンタクト11の端子部111の一部の領域に這い上がり阻止用の酸化物被膜領域113を形成することが行なわれている(特許文献1参照)。
即ち、コンタクト11の端子部111の高濡れ性領域を形成している錫メッキ層表面、或いは金メッキ層表面の一部の領域であって、溶融鑞剤が這い上がって到達する部分を帯状に強制酸化して表面層物質の酸化された被膜領域113を形成してこの領域を加熱溶融した溶接鑞剤3に濡れない低濡れ性領域にして、加熱溶融した溶接鑞剤3が越えることができない領域としている。
【0005】
しかし、この酸化物被膜は表層を構成する錫の原子或いは金の原子に酸素原子が結合したものに過ぎないので、端子部111の表面に被着された錫メッキ層或いは金メッキ層の表面に実際に酸化被膜形成処理が施されているか否か、或いは酸化被膜形成処理が端子部111の適正な位置、形状、寸法に施されているか否かを目視により確認することはできない。
コンタクトの端子部の溶接鑞剤が不足する問題を解消する他の手法として、図3a〜3cに示した如く、コンタクト11の全面にニッケルメッキ層11Aを下地層として形成した後に、接触部112と端子部111との間に所定の間隔(0.3mm)を空けて、接触部112には厚く(0.4(m)金メッキ112Aを施し、端子部111には鑞付け用として薄く(0.05(m)金メッキ111Aを施し、両者の間に残されたニッケルメッキ層の露出部11Bを陽極酸化により酸化ニッケル層113’として溶融した鑞剤の這い上がり阻止領域として形成する従来例がある(特許文献2参照)。
【0006】
この酸化ニッケル層113’も低濡れ性領域であり、加熱溶融した溶接鑞剤3が越えることができずに、これ以上這い上がり移動することはない。
ところが、図3a〜3bの従来例において、この酸化ニッケル層113’の幅を0. 2mm未満の狭い幅に形成することは困難である。
液体を用いて加工(メッキや塗布加工)することはその位置・範囲の精度が低く、特にメッキ領域の形成位置の精度は、液面を調整したりテープ或いは治具を用いてマスキングすることが必要であり1mm以下の公差で安定した加工を行うことは困難である。
【0007】
すなわち、形成される酸化ニッケル層の位置および幅の精度は、接触部112の金メッキ層の加工位置精度、端子部111の鑞付け用金メッキ層の加工位置精度の影響を受けるので、高くはなく、端子長が2mm以下の微細なコンタクトの場合に量産性に乏しくなる。
更に、形成された酸化物被膜は、その処理が行なわれているか否かを、目視により確認することができない。陽極酸化による酸化ニッケル層の加工を接触部12の金メッキ層、端子部111の鑞付け用金メッキ層の形成に先だって実施する場合も同様の問題を生ずる。
【0008】
さらに、他の形式のコンタクトでも問題があることを以下に説明する。
図4aを参照するに、これは配線基板2の表面に鑞接パッド22を形成し、鑞接パッド22上に溶接鑞剤3を載置し、この溶接鑞剤3を溶融加熱してコンタクト11の端子部111を鑞接パッド22に鑞接する従来例である。
図4aに示した従来例の場合は、溶接鑞剤3が加熱溶融されると、図4bに示される如く溶融した溶接鑞剤3が、端子部111の表面111Aを濡らしながら吸い上げられ、図4cに示される如く接触部112の表面112Aにも到達してその表面を濡らし、それだけ端子部111と鑞接パッド22の間の接合領域における溶接鑞剤3の量が不足する。なお図においてBは両表面111Aと112Aの境界線である。
【特許文献1】特開平8−213070号公報
【特許文献2】特開平10−247535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図1及び2に示された従来例では、形成された酸化物被膜は、その処理が行なわれているか否かを、目視により確認することができないという欠点がある。
図3に示された従来例では、メッキ領域の形成位置の精度が低く、安定した加工を行うことは困難であり、微細なコンタクトの場合に量産性に乏しくなる。また形成された酸化物被膜を目視により確認することはできない。
図4に示された従来例では、溶接鑞剤3の量が不足する。
このように、図1〜4に示された従来例において、溶接鑞剤3の這い上がり問題が解消されていないことを説明した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上述の溶接鑞剤の這い上がり問題を解消した電子部品およびその新規な製法を提供するものである。
本願発明の一つの観点として、コンタクト11の素材に端子部と接触部とを形成しかつ溶接鑞剤3に対する低濡れ性表面を持たせ、その表面上に溶接鑞剤3に対する高濡れ性物質で構成した仕上げメッキ層を形成し、溶融した鑞剤が這い上がってくる端子部111の高濡れ性仕上げメッキ層の一部を選択的に取り除いて素材の低濡れ性表面の露出部114を形成し、この露出部を溶融した鑞剤の這い上がりを阻止する阻止部として働かせるように構成した改良したコンタクト11を得て、この改良したコンタクト11を用いて基板に鑞接して電子部品10を構成する。
【0011】
本願発明の他の一つの観点として、コンタクト11の素材を溶接鑞剤3に対する低濡れ性物質で構成し、この素材の上に下地メッキ層を形成し、その表面に溶接鑞剤3に対する高濡れ性物質で構成した仕上げメッキ層を形成し、溶融した鑞剤が這い上がってくる端子部111の高濡れ性仕上げメッキ層の一部と、その下の下地メッキ層の一部の両方を、選択的に取り除いて低濡れ性物質の素材の露出部114を形成し、この露出部を溶融した鑞剤の這い上がり阻止部として働かせるように構成した改良したコンタクト11を得て、この改良したコンタクト11を用いて基板に鑞接して電子部品10を構成する。
【0012】
そして、コンタクト11の素材11Xを露出させて上記溶融した鑞剤の這い上がり阻止部を形成する場合には、素材の構成材料として、例えばCu、並びにCuとTi、Be、Sn、Mg、Ni、Znとの銅合金(P、Siなどの添加物を含んでも良い)が使用可能であるが、このほかにCo、Mn、Pb、Al、Fe、SUSなどの金属も使用可能である。
コンタクト11の表面に施される仕上げメッキは、たとえば金メッキ、錫或いはSnとAg、SnとCu、SnとCu及びAgとの錫合金メッキ、鉛或いはPbとSnとの鉛合金メッキ、Pd或いはPdとNiまたはPdとCoのPd合金が使用可能である。
【0013】
また、本願発明のさらに他の観点として、仕上げメッキ層の形成の前に、素材上に仕上げメッキ層の被着を助成するためのNiとP、NiとS、またはNiとBとのニッケル合金メッキ層から成る下地メッキ層を形成する。そしてこの下地メッキ層の上に高濡れ性物質の仕上げメッキ層を形成する。
この下地メッキ層の材質は、溶接鑞剤3に対して低い濡れ性を持った導電材料なので、仕上げメッキ層のみを除去して下地メッキ層を露出させて、この下地メッキ層の露出部によって上記溶融した鑞剤の這い上がり阻止部を形成することもできる。
【0014】
この場合には、素材の構成材料として導電材料に限らず、プラスチックス、セラミックス、ガラスなどの非導電材料も使用できるので、予め、これらの材料を用いて成型によって接触部と端子部をもったコンタクトを形成し、その表面全面に無電解メッキによってニッケル合金の無電解メッキ層を形成し、その上に全面に仕上げ金メッキ層を形成した後に、端子部の仕上げメッキ層の一部を除去して、下地層の露出部を以って鑞剤の這い上がり阻止部を形成する。
また、低い濡れ性を持った導電材料で構成した素材の上に高濡れ性物質で構成した下地メッキ層を形成し、その上に仕上げメッキ層を形成した場合には、仕上げメッキ層および下地メッキ層の双方を取り除いて露出部114を得る。
【0015】
コンタクト11の表面に形成された高濡れ性物質のメッキ領域の一部を選択的に取り除いて、低濡れ性表面の露出部114を形成する加工は、低濡れ性表面露出部114が形成されるべき高濡れ性物質のメッキ領域に、機械的な切削或いは研磨技術、放電加工或いは電子ビーム加工技術、レーザ加工技術を適用する。 この加工技術は、良好な加工位置精度で容易に実施することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、電子部品のコンタクトにおいて、その溶接鑞剤に対する高い濡れ性の表面層を選択的に一部除去し、低濡れ性の表面を持った下地メッキ層或いは素地を露出させることにより、低濡れ性表面の露出部114を形成し、溶接鑞剤の這い上がりをその箇所で阻止することができる。
なお、これまで素材は低濡れ性表面を有するものと言う説明において、下地メッキ層は別体として説明してきたが、下地メッキ層が素材と一体となったものを以って素材と考えることもできる。この考えによれば、下地メッキ層の表面が、素材の表面と定義できる。
【0017】
この低濡れ性表面の露出部の形成位置精度および幅精度についても、下地メッキおよび仕上げメッキ加工精度に影響を受けず、コンタクトの基準寸法から適正な低濡れ性露出部形成位置を直接に測定設定し、そこに先の加工技術を適用することにより、高濡れ性皮膜の除去位置および範囲を高精度で加工して低濡れ性露出部を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この発明の実施の形態を図5〜図9に示した電子部品を参照して説明する。なお、従来例で示したものと同一物については同一記号を付す。
図6(f)に斜視図で示したように、電子部品10は、コンタクト11とインシュレータハウジング12とからなる。
配線基板2の表面には鑞接パッド22が形成されている。周知の如く、この配線基板2には印刷配線(図示せず)が設けられ、鑞接パッド22と結合している。なお、図1の如く、印刷配線が基板の裏面(図において基板2の下側)に設けられ、貫通孔と貫通孔メッキ層とを介して基板表面の鑞接パッドに結合するように構成しても良い。
【0019】
そして、鑞接パッド22上に半田の如き溶接鑞剤3を介して電子部品10のコンタクト11の端子部111を載置し、この溶接鑞剤3を溶融加熱することにより、配線基板2の表面の鑞接パッド22に鑞接する。
コンタクト11の素材を導体で構成する場合には、銅合金で構成する。
コンタクト11の表面に施される仕上げメッキは、金メッキ、錫或いは錫合金メッキ、鉛或いは鉛合金メッキの何れかで構成する。
そして、仕上げメッキに先だって、コンタクト11を構成する金属材料に対する仕上げメッキの密着を良好にするために、素材11Xの表面に形成する下地メッキ層11Aはニッケル合金メッキ層とする。
【0020】
仕上げメッキ層を一部分除去して下地のニッケル合金メッキ層を露出させた場合、ニッケル合金メッキ層は、本来的に、或いは表面層の除去処理中に自然酸化により、低濡れ性なので、強制的に酸化させなくても、溶融溶接鑞剤3の這い上がりが阻止されることは実験的に確認されている。このため酸化被膜形成の確認作業を必要としない。
更に、低濡れ性物質の露出部114は、コンタクト11の端子部111の表面に形成された鑞接用仕上げメッキ層111Aの一部で接触部112に近い部分であって、従来鑞剤が這い上がってくる領域に帯状形状で、所定幅寸法に形成し、この露出部によって端子部の仕上げメッキ層が111A−1と111A−2とに2分される。
【0021】
このコンタクトの第1の実施例は、図5〜図6に示す。
図5(a)を参照するに、これは配線基板2の表面に形成された鑞接パッド22に溶接鑞剤3が載置され、溶接鑞剤3表面に仕上げメッキを施されたコンタクト11の端子部111が係合せしめられた非加熱の状態を示す。
図5(b)は、溶融した溶接鑞剤3が端子部111の表面を濡らしながら這い上がり始めたところを示している。なお、端子部111と接触部112とは、この実施例においては、接触部112が外部とより良好に接触するように、接触部112の仕上げメッキ層112Aの材質及びメッキ層厚を端子部111の仕上げメッキ層111Aの材質及びメッキ層厚と異ならせ、したがって、端子部111仕上げメッキ層111Aと接触部112の仕上げメッキ層112Aの間に、境界線Bがあるものとして示す。
【0022】
図6(d)は、図5(b)の5d−5d線における断面図である。
図5(c)は溶融した溶接鑞剤3が端子部111の表面を濡らし、この発明による低濡れ性露出部114に到達してこれを越えることができないことを示し、溶融した溶接鑞剤3がこれ以上這い上がり移動することはない。
図6(e)は、図5(c)の5e−5e線における断面図である。ここで、従来例の如く低濡れ性露出部114が存在しない場合、図4(c)を参照するに、端子部111の全表面に到達した溶融溶接鑞剤3は更に接触部112表面を這い上がるので、端子部111と鑞接パッド22の間の接合領域における溶接鑞剤3の量が不足するが、本願発明に依れば低濡れ性露出部114を形成することによりこの更なる這い上がり移動は阻止される。
【0023】
図7(g)〜(k)に、露出部114の各種の形成方法を示す。ここでは、低濡れ性物質で構成された下地メッキ層11Aを露出部114として露出させる場合であり、この場合には素材の材質は導体、非導体の区別なくあらゆる物質が使用できる。
この実施例においては、コンタクト11の表面に形成される高濡れ性物質で構成された仕上げメッキ層のうち、端子部111の領域111Aの一部を帯状に選択的に取り除き、端子部111の下地メッキ層を露出させて低濡れ性露出部114を形成する。
【0024】
図7(g)は、端子部111の仕上げメッキ層111Aと接触部112の仕上げメッキ層112Aとが同一材質、同一厚さに形成し、下地メッキ層の露出部114を端子部111の仕上げメッキ層111Aの領域内に形成した場合を示す。この場合には境界線Bは実際には存在しない。
図7(h)は、端子部111の仕上げメッキ層111Aと接触部112の仕上げメッキ層112Aとが異種の材質または、同一材質であっても端子部111の仕上げメッキ層111Aの膜厚を接触部112の仕上げメッキ層112Aの膜厚より薄く形成し、下地メッキ層の露出部114を端子部111の仕上げメッキ層111Aの領域内に形成した場合を示す。(この図は図6(d)と同じ)
図7(i)は、端子部111の仕上げメッキ層111Aと接触部112の仕上げメッキ層112Aとが異種の材質または、同一材質であっても端子部111の仕上げメッキ層111Aの膜厚を接触部112の仕上げメッキ層112Aの膜厚より厚く形成し、下地メッキ層の露出部114を端子部111の仕上げメッキ層111Aの領域内に形成した場合を示す。
【0025】
図7(j)は、端子部111の仕上げメッキ層111Aと接触部112の仕上げメッキ層112Aとが異種の材質または、同一材質であっても端子部111の仕上げメッキ層111Aの膜厚を接触部112の仕上げメッキ層112Aの膜厚より厚く形成し、下地メッキ層の露出部114を接触部112の仕上げメッキ層112Aの領域内に形成した場合を示す。
図7(k)は、端子部111の仕上げメッキ層111Aと接触部112の仕上げメッキ層112Aとが異種の材質または、同一材質であっても端子部111の仕上げメッキ層111Aの膜厚を接触部112の仕上げメッキ層112Aの膜厚より薄く形成し、下地メッキ層の露出部114を接触部112の仕上げメッキ層112Aの領域内に形成した場合を示す。
【0026】
図8(l)〜(p)は、低濡れ性表面を持つ素材11Xを露出部114として露出させる場合であり、端子部111の仕上げメッキ層およびその下に形成されている下地メッキ層を両方とも選択的に一部除去して素材の表面を露出させる。
この場合には素材の材質は低濡れ性の導体が望ましいが、例えばレーザー照射によるメッキ層の一部除去工程によって低濡れ性をもつに至るような物質を使用することも可能である。 また、下地メッキ層の材質は、その濡れ性に限定はない。
【0027】
図8(l)は、端子部111の仕上げメッキ層111Aと接触部112の仕上げメッキ層112Aとが同一材質、同一厚さに形成し、素材11Xの露出部を端子部111の仕上げメッキ層111Aの領域とその下の下地層を共に一部除去して形成した場合を示す。この場合には境界線Bは実際には存在しない。
図8(m)は、端子部111の仕上げメッキ層111Aと接触部112の仕上げメッキ層112Aとが異種の材質または、同一材質であっても端子部111の仕上げメッキ層111Aの膜厚を接触部112の仕上げメッキ層112Aの膜厚より薄く形成し、素材11Xの露出部114を端子部111の仕上げメッキ層111Aの領域とその下の下地層を共に一部除去して形成した場合を示す。
【0028】
図8(n)は、端子部111の仕上げメッキ層111Aと接触部112の仕上げメッキ層112Aとが異種の材質または、同一材質であっても端子部111の仕上げメッキ層111Aの膜厚を接触部112の仕上げメッキ層112Aの膜厚より厚く形成し、素地11Xの露出部114を端子部111の仕上げメッキ層111Aの領域とその下の下地層を共に一部除去して形成した場合を示す。
図8(o)は、端子部111の仕上げメッキ層111Aと接触部112の仕上げメッキ層112Aとが異種の材質または、同一材質であっても端子部111の仕上げメッキ層111Aの膜厚を接触部112の仕上げメッキ層112Aの膜厚より厚く形成し、素地11Xの露出部114を接触部112の仕上げメッキ層112Aの領域とその下の下地層を共に一部除去して形成した場合を示す。
【0029】
図8(p)は、端子部111の仕上げメッキ層111Aと接触部112の仕上げメッキ層112Aとが異種の材質または、同一材質であっても端子部111の仕上げメッキ層111Aの膜厚を接触部112の仕上げメッキ層112Aの膜厚より薄く形成し、素地11Xの露出部114を接触部112の仕上げメッキ層112Aの領域とその下の下地層を共に除去して形成した場合を示す。
なお、これら図7または図8において、下地メッキ層が存在しない場合には、仕上げメッキ層のみを削除することによって、素材11Xの露出部114を形成できることは容易に理解できるであろう。
【0030】
また、低濡れ性表面の露出部114を形成するために、本願発明では、レーザー光の照射による仕上げメッキ層の除去方法を開示したがこれ以外の除去方法も使用できることも理解できるであろう。
またここで露出部114を形成する位置、及びその形状も、帯状に限るものではない。
例えば、図9(q)〜(s)に示す如く、端子部111の領域に形成することが望ましい。
【0031】
なお、図9(s)に示した如く、露出部を複数個形成し、隣り合った露出部間に残された鑞材の流路となる高濡れ性仕上げメッキ層の狭められた領域を形成することによっても、実質的に鑞材の這い上がりを阻止することができる。
同じように、この露出部114が、帯状に形成される場合であっても、端子部111を一周することが望ましいが、完全に連続して一周することなく、不連続であっても、その不連続部が、狭められた這い上がり領域を形成していれば、這い上がり阻止の効果がある。
【0032】
図10に本願発明の他の実施例を示す。
この実施例は、図3に示した従来例のコンタクトを改良したものである。(図10(a))この実施例においても、他の図面に示したものと同一物は同一符号を付す。
この従来例が前述した如く、メッキ技術を用いて、ニッケルメッキ層の下地層11Aをコンタクト11の素材表面に形成した後、所定の間隔(0.3mm)を持った露出部11Bとして露出させるように、上記所定の間隔だけ空けて接触部112用の厚い(0.4(m)金メッキ部112Aと端子部111鑞付け用の薄い(0.05(m)金メッキ部111Aを形成し(図3(b))、その後上記ニッケルメッキ層の露出部を陽極酸化によって酸化ニッケル層113’を形成し(図3(c))、これを溶融鑞剤の這い上がり阻止領域として用いているのに対し、本願発明においては、図10(b)に示す如く、コンタクト素材11Xの表面に下地層11Aを形成した後、接触部112側には接触用の金メッキ部112Aと、端子部111側には鑞付け用の金メッキ部111Aを形成する。この時両者の間には従来例のように所定の間隔だけ空けることは要しない。
【0033】
次いで、図10(c)に示す如く、端子部側の金メッキ部111Aの接触部に近い領域にレーザ加工技術を適用して、帯状に端子部表面を一周するように金メッキ部111Aを除去して下地層11Aを露出させ低濡れ性露出部114を形成する。
これにより、金メッキ部111Aが、2つの部分111A−1と111A−2に2分される。
このコンタクトを、図2の如く貫通孔21と、貫通孔メッキ層21Aと、溶接鑞剤3とを持った基板2に装着し、鑞剤3を溶融したとき、この鑞剤3は、2分された端子部側金メッキ部の一方111A−1を這い上がってくるが、図10(d)に示す如く低濡れ性露出部114によってそれ以上の這い上がりが阻止され、2分された端子部側金メッキ部の他方111A−2及び接触部側金メッキ部112Aには到達しない。
【0034】
なお、低濡れ性露出部114の形成位置は、端子部側金メッキ部111Aと接触部側金メッキ部112Aの接合領域に形成しても、或いは、接触部側金メッキ部112Aの端子部に近い領域に形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0035】
メッキ、塗布の如く液体による加工技術と比較して、高濡れ性皮膜の除去の如く固体を取り扱う加工技術はその位置精度および、範囲の精度を高める上において好適な技術であり、量産性を向上することができる。
更に、除去形成した低濡れ性露出部の位置および範囲を目視で容易に確認することができるので、寸法管理も容易に実施することができ、量産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】1つの従来例を説明する図。
【図2】図1の部分拡大図
【図3】他の従来例を説明する図。
【図4】更なる他の従来例を説明する図。
【図5】この発明の1つの実施例を説明する図。
【図6】この発明の実施例を更に説明する図。
【図7】この発明の実施例を更に説明する図。
【図8】この発明の実施例を更に説明する図。
【図9】この発明の実施例を更に説明する図。
【図10】この発明の他の実施例を説明する図。
【符号の説明】
【0037】
2 配線基板
3 溶接鑞剤
10 電子部品
11 コンタクト
11A 下地ニッケルメッキ層
11B 下地ニッケルメッキ層の露出部
11X 素材
12 端子保持部材
21 貫通孔
21A 貫通孔メッキ層
22 鑞接パッド
111 端子部
111A、111A-1、111A-2 端子部メッキ層
112 接触部
112A、112A-1、112A-2 接触部メッキ層
114 低濡れ性物質の露出された領域
113 酸化被膜
113’ 酸化ニッケル層
B 境界線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鑞接される端子部および接触部を持ったコンタクトを具える電子部品であって、
上記コンタクトは、
上記端子部および接触部が形成されたコンタクト素材と、
上記コンタクト素材の表面上に形成され溶接鑞剤に対する低濡れ性を持った物質で構成された下地メッキ層と、
上記下地メッキ層の表面上に形成され、溶接鑞剤に対する高濡れ性を持った物質で構成された仕上げメッキ層と、
溶接鑞剤の這い上がり阻止領域として働く低濡れ性領域とを具え、
上記低濡れ性領域は、上記高濡れ性仕上げメッキ層の一部領域をレーザー加工技術により選択的に除去することにより露出した上記下地メッキ層であり、この領域を上記溶接鑞剤の這い上がり阻止領域とする
ことを特徴とする。
【請求項2】
請求項1に記載される電子部品であって、
上記下地メッキ層はニッケル合金メッキ層であることを特徴とする。
【請求項3】
鑞接される端子部および接触部を持ったコンタクトを具える電子部品であって、
上記コンタクトは、
上記端子部および接触部が形成され溶接鑞剤に対する低濡れ性を持った物質で構成されたコンタクト素材と、
上記コンタクト素材の表面上に形成された下地メッキ層と、
上記下地メッキ層の表面上に形成され、溶接鑞剤に対する高濡れ性を持った物質で構成された仕上げメッキ層と、
溶接鑞剤の這い上がり阻止領域として働く低濡れ性領域とを具え、
上記低濡れ性領域は、上記高濡れ性仕上げメッキ層の一部領域とその下の上記下地メッキ層の一部領域とを共にレーザー加工技術により選択的に除去することにより露出した上記コンタクト素材であり、この領域を上記溶接鑞剤の這い上がり阻止領域とする
ことを特徴とする。
【請求項4】
鑞接される端子部および接触部を持ったコンタクトを具える電子部品の製造方法であって、
コンタクト素材に端子部および接触部を形成し、
上記コンタクト素材の表面上に、溶接鑞剤に対する低濡れ性を持った物質で構成された下地メッキ層を形成し、
上記下地メッキ層の表面上に溶接鑞剤に対する高濡れ性を持った物質で構成された仕上げメッキ層を形成し、
上記端子部と接触部との中間部にある上記高濡れ性仕上げメッキ層の一部領域をレーザー加工技術により選択的に取り除いて、この除去部分に上記低濡れ性下地メッキ層を露出させ、この露出領域を溶接鑞剤の這い上がり阻止領域とする、
ことを特徴とする。
【請求項5】
鑞接される端子部および接触部を持ったコンタクトを具える電子部品の製造方法であって、
溶接鑞剤に対する低濡れ性を持った物質で構成されたコンタクト素材に、端子部および接触部を形成し、
このコンタクト素材表面上に下地メッキ層を形成し、
この下地メッキ層の表面上に溶接鑞剤に対する高濡れ性を持った物質で構成された仕上げメッキ層を形成し、
上記端子部と接触部との中間部にある上記高濡れ性仕上げメッキ層の一部領域と、その下の下地メッキ層の一部領域とを共にレーザー加工技術により選択的に取り除いて、この除去部分に上記低濡れ性コンタクト素材を露出させ、この露出領域を溶接鑞剤の這い上がり阻止領域とする、
ことを特徴とする。
【請求項6】
請求項4に記載される方法であって、
上記下地メッキ層としてニッケル合金を用いることを特徴とする。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−103351(P2008−103351A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−312133(P2007−312133)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【分割の表示】特願2001−129373(P2001−129373)の分割
【原出願日】平成13年4月26日(2001.4.26)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】