説明

電子部品および電子部品の製造方法

【課題】コイル配線導体が内蔵されたセラミック積層体を有する電子部品において、積層体を構成する非磁性体と磁芯部材を磁性体の熱収縮率が異なることから、一体焼成をする際にセラミック積層体と磁芯部材との界面に応力が集中しやすい、という課題があった。
【解決手段】表面に開口する凹部を有するセラミック積層体および前記凹部の周りを周回するように前記セラミック積層体に埋設されたコイル配線導体を備えたコイル部材を準備する工程と、前記凹部に磁性体からなる磁芯部材を配設する工程と、前記凹部と前記磁芯部材との間に磁性体を含有させた樹脂部材を充填するとともに該樹脂部材により前記セラミック積層体と前記磁芯部材とを接合する工程とを備えた電子部品の製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル状の内部導体が内部に埋設された電子部品に関するものである。このような電子部品は、電子部品モジュールにおいて配線回路の一部として用いることができる。電子部品モジュールは、産業用電子機器および民生用電気製品に代表される多種多様な電子機器において、例えばインダクタ、トランス、コイル部品、LC部品または貫通コンデンサを備えたモジュール部品として用いることができる。
【背景技術】
【0002】
コイル状の内部導体が内部に埋設された電子部品としては、例えば、特許文献1に記載の複合積層トランスが知られている。特許文献1に記載の複合積層トランスでは、非磁性体層と電極層とが交互に積層してなるコイル形成部を備え、このコイル形成部の中央に磁芯として磁性体層が配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−217772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の複合積層トランスにおいては、非磁性体層および磁性体層を一体焼成することによって互いに接合している。しかしながら、積層体を構成する非磁性体層および磁芯である磁性体層の熱収縮率が異なることから、一体焼成をする際に非磁性体層と磁性体層との界面に応力が集中しやすい。そのため、非磁性体層と磁性体層との接合性が低下する可能性がある。一方、磁性体層の熱収縮率との差が小さい非磁性体層を用いた場合、非磁性体層として所望の材料を用いることが難しくなるのでインダクタンス特性が低下する可能性がある。
【0005】
本発明は、このような従来技術に鑑みてなされたものであり、積層体と磁芯との接合性の良好な電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の電子部品の製造方法は、表面に開口する凹部を有するセラミック積層体および前記凹部の周りを周回するように前記セラミック積層体に埋設されたコイル配線導体を備えたコイル部材を準備する工程と、前記凹部に磁性体からなる磁芯部材を配設する工程と、前記凹部と前記磁芯部材との間に磁性体を含有させた樹脂部材を充填するとともに該樹脂部材により前記セラミック積層体と前記磁芯部材とを接合する工程とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
上記の態様に基づく電子部品は、コイル部材と磁芯部材とを一体焼成することによって互いに接合するのではなく、別々に形成した後に磁性体を含有させた樹脂部材を介して接合している。そのため、インダクタンス特性を良好に保ちつつもコイル部材と磁芯部材との接合性を良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態の電子部品を示す斜視図である。
【図2】図1に示す電子部品の分解斜視図である。
【図3】図1に示す電子部品におけるA−A断面図である。
【図4】図1に示す電子部品の第1の変形例の斜視図である。
【図5】図4に示す電子部品の分解斜視図である。
【図6】図1に示す電子部品の第2の変形例の断面図である。
【図7】第2の実施形態の電子部品を示す斜視図である。
【図8】図7に示す電子部品の分解斜視図である。
【図9】図7に示す電子部品におけるB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態の電子部品およびその製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、下記の実施形態を構成する部材のうち、特徴的な構成を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。したがって、本実施形態の電子部品は、本明細書が参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および各部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0010】
第1の実施形態の電子部品1の製造方法は、図1〜3に示すように、下記の工程を備えている。すなわち、
(1)表面に開口する凹部を有するセラミック積層体3および凹部の周りを周回するようにセラミック積層体3に埋設されたコイル配線導体5を備えたコイル部材7を準備する工程と、
(2)凹部に磁性体からなる磁芯部材9を配設する工程と、
(3)凹部と磁芯部材9との間に磁性体を含有させた樹脂部材11を充填するとともに樹脂部材11によりセラミック積層体3と磁芯部材9とを接合する工程と、を備えている。
【0011】
このように、本実施形態の電子部品1の製造方法によれば、コイル部材7と磁芯部材9とを一体焼成することによって互いに接合するのではなく、別々に形成した後に磁性体を含有させた樹脂部材11を介して接合している。そのため、インダクタンス特性を良好に保ちつつもコイル部材7と磁芯部材9との接合性を良好に保つことができる。
【0012】
(1)コイル部材7を準備する工程
まず、セラミック積層体3を構成するセラミック層3aとなるセラミックグリーンシート(以下、単にグリーンシートともいう)を複数準備する。具体的には、ガラス粉末およびセラミック粉末を含有する原料粉末、有機溶剤並びにバインダを混ぜることにより混合部材を作製する。原料粉末としては、例えば、酸化珪素(SiO)、アルミナ(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化硼素(B)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)を用いることができる。混合部材をシート状に成形することにより複数のグリーンシートが作製される。このようにして作製されたグリーンシートを積層することによって上面に凹部を有するグリーンシート積層体が形成される。後述するように、グリーンシート積層体を焼成することによって、セラミック積層体3が形成される。
【0013】
本実施形態の電子部品1におけるセラミック積層体3は、その上面に開口する凹部を有している。このような凹部は、上記する混合部材を複数のシート状に成形した後に、これらのシートの一部を打ち抜いて形成することによって作製すればよい。具体的には、打ち抜かれていないシートの上面に一部が打ち抜かれたシートを積層することによって上面に開口する凹部を形成すればよい。また、シートの一部を打ち抜いてもよいが、上記の混合部材をシート状に成形する際に、凹部となる部分を除くようにシート状に成形してもよい。
【0014】
次に、コイル配線導体5となる導体ペーストを準備する。導体ペーストとしては、例え
ば、タングステン、モリブデン、ニッケル、銅、銀および金のような金属材料からなる金属粉末に、有機溶剤並びにバインダを混ぜた金属ペーストを用いればよい。
【0015】
このようにして準備された導体ペーストを、凹部の周りを周回するようにグリーンシート積層体の内部に埋設する。具体的には、凹部の周りを周回するようにそれぞれのグリーンシートの間に導体ペーストを配設すればよい。また、グリーンシートに貫通孔を形成して、グリーンシートの積層方向に隣り合う導体ペーストを接続するように、この貫通孔にも導体ペーストを配設する。これにより、コイル配線導体5となる導体ペーストをグリーンシート積層体に埋設することができる。
【0016】
このとき、導体ペーストの全体がグリーンシート積層体に埋設され、導体ペーストの一部が凹部の表面に露出していないことが好ましい。導体ペーストが露出していないことによって、後述する生積層体の焼成時および焼成後のコイル配線導体5が外気に触れて酸化のような変性を起こす可能性を小さくすることができるからである。
【0017】
グリーンシートの間に導体ペーストを配設するためには、例えば、スクリーン印刷法を用いてグリーンシートの表面に導体ペーストを配設するとともに、この導体ペーストの上にさらにグリーンシートを配設すればよい。また、本実施形態の電子部品1の製造方法においては、グリーンシートの上面に導体ペーストを配設することによってグリーンシート間に導体ペーストを位置させているが、例えば、コイル配線導体5の形状に対応するようにグリーンシートに貫通孔を形成して、この貫通孔に導体ペーストを配設するとともに、グリーンシート間に当該2枚の隣接するグリーンシートのコイル配線導体の始点、および、終点に該当する部分に導体ペースト部を配置した隣接するコイル部間の極薄絶縁用グリーンシートを配置したり、極薄絶縁層の代用として絶縁ペーストをコーティングすることによってコイル配線導体5を形成しても何ら問題ない。
【0018】
以上のようにして、表面(上面)に凹部を有するグリーンシート積層体と、凹部の周りを周回するようにグリーンシート積層体の内部に埋設された導体ペーストと、を備えた生積層体が形成される。このようにして形成された生積層体を焼成することによって、セラミック層3aを積層してなり、表面に開口する凹部を有するセラミック積層体3および凹部の周りを周回するようにセラミック積層体3に埋設されたコイル配線導体5を備えたコイル部材7を準備することができる。
【0019】
グリーンシートおよび導体ペーストとして用いる材料によって最適な焼成温度は異なるが、本実施形態の電子部品1の製造方法においては約850℃〜1150℃の温度で生積層体を焼成すればよい。
【0020】
なお、本実施形態の電子部品1の製造方法におけるセラミック積層体3は、その上面に開口する凹部を有しているが、特にこれに限られるものではない。例えば、図4,5に示すように、凹部がセラミック積層体3の側面に開口していてもよい。
【0021】
(2)磁芯部材9を配設する工程
次に、凹部に配設される、磁性体からなる磁芯部材9を準備する。磁芯部材9となる磁性体としては、例えば、Ni−Cu−Zn系フェライトのようなフェライト材料を用いることができる。
【0022】
まず、Ni−Cu−Zn系フェライトのようなフェライトから成る材料またはフェライト等の磁性材料を含有する原料粉末、有機溶剤ならびにバインダを混ぜることにより混合部材を作製する。このような混合部材を成形するとともに焼成することによって磁芯部材9を準備することができる。なお、混合部材を成形する際に、一旦、混合部材をシート状
に成形するとともに、このシート状の混合部材を積層することによって成形しても何ら問題ない。
【0023】
磁芯部材9となる原料粉末として用いる材料によって最適な焼成温度は異なるが、本実施形態の電子部品1の製造方法においては、約850℃〜1150℃の温度で焼成すればよい。
【0024】
このようにして作製された磁芯部材9をセラミック積層体3の凹部に配設する。また、後述するように、凹部と磁芯部材9との間に樹脂部材11を充填することによってセラミック積層体3と磁芯部材9とが接合される。そのため、磁芯部材9の大きさとしては、凹部よりも小さいことが求められる。具体的には、磁芯部材9の側面及び下面において樹脂部材11を介してセラミック積層体3に接合されるために、磁芯部材9の外形寸法が凹部の寸法よりも小さいことが好ましい。
【0025】
(3)セラミック積層体3と磁芯部材9とを接合する工程
次に、凹部と磁芯部材9との間に磁性体を含有させた樹脂部材11を充填する。このように樹脂部材11を充填することによって、樹脂部材11によりセラミック積層体3と磁芯部材9とを接合することができる。樹脂部材11としては、例えばシリコーン樹脂、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂のような樹脂を用いることができる。
【0026】
また、本実施形態の電子部品1の製造方法においては、樹脂部材11が磁性体を含有している。樹脂部材11によってセラミック積層体3と磁芯部材9とを接合するため、樹脂部材11の体積の分だけ磁芯部材9の体積を小さくする必要がある。そのため、電子部品1のインダクタンス特性が小さくなる。しかしながら、樹脂部材11が磁性体を含有していることから、単にセラミック積層体3と磁芯部材9とを接着剤を用いて接合する場合と比較して、電子部品1のインダクタンス特性を向上させることができる。
【0027】
特に、樹脂部材11に含有された磁性体が、磁芯部材9を構成する磁性体と同じ磁性材料からなる場合には、樹脂部材11のインダクタンス特性を磁芯部材9のインダクタンス特性に近づけることができるので、電子部品1を所望のインダクタンス特性に調整することが容易となる。
【0028】
また、樹脂部材11によりセラミック積層体3と磁芯部材9とを接合する際に、図3に示すように凹部が開口して磁芯部材9が露出していてもよいが、図6に示すように、樹脂部材11によって凹部の開口を封止することが好ましい。凹部の開口が樹脂部材11によって封止されている場合には、万が一、磁芯部材9が樹脂部材11から剥離してしまっても、磁芯部材9をセラミック積層体3の凹部内に留めておくことができるからである。
【0029】
また、図6に示すように、樹脂部材11によって磁芯部材9が覆われていることが好ましい。上述のように万が一、磁芯部材9が樹脂部材11から剥離してしまっても、磁芯部材9をセラミック積層体3の凹部内に留めておくことができ、また、磁芯部材9が外気に触れて劣化する可能性を小さくできるからである。
【0030】
なお、本実施形態の電子部品1の製造方法においては、磁芯部材9をセラミック積層体3の凹部に配設した後に、凹部と磁芯部材9との間に樹脂部材11を充填することによって、セラミック積層体3と磁芯部材9とを接合しているが、これに限られるものではない。すなわち、(2)磁芯部材9を配設する工程と、(3)セラミック積層体3と磁芯部材9とを接合する工程と、は同時に行っても何ら問題ない。また、セラミック積層体3の凹部に樹脂部材11を充填した後に、磁芯部材9をセラミック積層体3の凹部に配設することによってセラミック積層体3と磁芯部材9とを接合してもよい。
【0031】
以上により、セラミック層3aを積層してなり、表面に開口する凹部を有するセラミック積層体3と、凹部の周りを周回するようにセラミック積層体3に埋設されたコイル配線導体5と、凹部に配設された、磁性体からなる磁芯部材9と、凹部と磁芯部材9との間に充填された、セラミック積層体3と磁芯部材9とを接合している、磁性体を含有した樹脂部材11とを備えた本実施形態の電子部品1を作製することができる。
【0032】
既に示したように、本実施形態の製造方法によって電子部品1を作製する場合には、インダクタンス特性を良好に保ちつつもコイル部材7と磁芯部材9との接合性を良好に保つことができるが、本実施形態の製造方法においては下記のような利点もある。
【0033】
コイル部材7および磁芯部材9を備えた電子部品1におけるインダクタンス特性は、磁芯部材9の組成に依存している。コイル部材7と磁芯部材9とが一体焼成されることによって接合されている場合、予め設定されたインダクタンス特性の電子部品1にしかなり得ない。しかしながら、本実施形態の電子部品1の製造方法では、予め準備されたコイル部材7の凹部に磁芯部材9を配設していることから、所望のインダクタンス特性となるように磁芯部材9を適宜選択することが可能となる。つまり、所望のインダクタンス特性となるように磁芯部材9を適宜選択すればよいことから、コイル部材7の汎用性を高めることもできる。
【0034】
また、本実施形態の電子部品1は、セラミック積層体3の側面に位置して、コイル配線導体5に接続導体13を介して電気的に接続された一対の外部電極15を備えている。外部電極15は、リード端子などを介して外部配線(不図示)と電気的に接続するための部材である。そのため、本実施形態における外部電極15はセラミック積層体3の側面に配設されているが、特にこれに限られるものではない。例えば、セラミック積層体3の上面および下面に外部電極15が配設されていてもよい。
【0035】
外部電極15としては、コイル配線導体5と同様に導電性の良好な部材を用いることが好ましい。具体的には、例えば、銅、銀、金、白金あるいはニッケルのような金属材料粉末に絶縁材料との密着性を高めるためのガラス質を添加した導体を外部電極15として用いることができる。上記の金属材料は単一で用いてもよく、また、合金、混合物として用いてもよい。
【0036】
また、外部電極15のセラミック積層体3から露出する表面には、メッキを形成することが好ましい。外部に露出する外部電極15が劣化することを抑制できるからである。また、リード端子などを介して外部電極15と外部配線(不図示)とを電気的に接続する場合には、外部電極15とリード端子との接合性を高めることができる。メッキとしては、例えば、ニッケルメッキ、銅メッキ、銀メッキ、金メッキまたは錫メッキを用いることができる。一例として、外部電極15のセラミック積層体3から露出する表面にニッケルメッキを形成した後、さらにニッケルメッキの表面に金メッキを形成すればよい。
【0037】
次に、第2の実施形態の電子部品1およびその製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。なお、本実施形態の各構成において、第1の実施形態と同様の機能を有する構成については、同じ参照符号を付記し、その詳細な説明を省略する。
【0038】
第2の実施形態の製造方法は、図7〜9に示すように、下記の工程を備えている。すなわち、
(1)複数のセラミックグリーンシートを積層してなり、内部に空間が形成されたグリーンシート積層体、および空間の周りを周回するようにグリーンシート積層体に埋設された導体ペーストを備えた生積層体を準備する工程と、
(2)磁性体からなる磁芯部材9を生積層体の空間に設置する工程と、
(3)磁芯部材9と生積層体との間に生積層体の焼成温度では焼結しない絶縁膜17を設置する工程と、
(4)磁芯部材9および絶縁膜17が空間に設置された生積層体を焼成してセラミック積層体3およびセラミック積層体3に埋設されたコイル配線導体5を形成する工程と、
(5)セラミック積層体3と磁芯部材9との間に磁性体を含有させた樹脂部材11を充填するとともに樹脂部材11によりセラミック積層体3と磁芯部材9とを接合する工程と、を備えている。
【0039】
このように、本実施形態の電子部品1の製造方法によれば、磁芯部材9および生積層体を焼成する際に、この焼成温度では焼結しない絶縁膜17を磁芯部材9と生積層体との間に設置していることから、焼成時においてはセラミック積層体3と磁芯部材9が接合しない。そのため、セラミック積層体3と磁芯部材9との間に応力が集中することが抑制される。すなわち、第1の実施形態の電子部品1の製造方法と同様に、コイル部材7と磁芯部材9とを一体焼成することによって互いに接合するのではなく、磁性体を含有させた樹脂部材11を介して接合している。そのため、インダクタンス特性を良好に保ちつつもコイル部材7と磁芯部材9との接合性を良好に保つことができる。
【0040】
(1)生積層体を準備する工程
まず、第1の実施形態と同様に、セラミック積層体3を構成するセラミック層3aとなるグリーンシートを複数準備する。この複数のグリーンシートを積層することによって内部に空間(以下、単に内部空間ともいう)を有するグリーンシート積層体が形成される。このグリーンシート積層体を焼成することによって、セラミック積層体3が形成される。
【0041】
本実施形態の電子部品1におけるセラミック積層体3は、内部空間を有している。このような空間は、第1の実施形態の製造方法におけるセラミック積層体3の凹部と同様に、上記するグリーンシートの一部を打ち抜いて形成することによって作製すればよい。
【0042】
内部空間はグリーンシート積層体によって密閉された空間であっても良いが、後述する樹脂部材11を充填するための外部に開口する孔(貫通孔19)を有していてもよい。なお、内部空間がグリーンシート積層体によって密閉された空間である場合には、グリーンシート積層体を焼成してセラミック積層体3を形成した後に、セラミック積層体3に内部空間と外部とをつなぐ貫通孔19を形成すればよい。
【0043】
コイル配線導体5となる導体ペーストとしては、第1の実施形態における導体ペーストと同様のものを用いればよい。このようにして準備された導体ペーストを空間の周りを周回するようにグリーンシート積層体の内部に埋設する。具体的には、内部空間の周りを周回するようにそれぞれのグリーンシートの間に導体ペーストを配設すればよい。また、グリーンシートに貫通孔を形成して、グリーンシートの積層方向に隣り合う導体ペーストを接続するように、この貫通孔にも導体ペーストを配設するとともに、グリーンシート間に当該2枚の隣接するグリーンシートのコイル配線導体の始点、および、終点に該当する部分に導体ペースト部を配置した隣接するコイル部間の極薄絶縁用グリーンシートを配置したり、極薄絶縁層の代用として絶縁ペーストをコーティングする。これにより、第1の実施形態と同様に、コイル配線導体5となる導体ペーストをグリーンシート積層体に埋設することができる。
【0044】
以上のようにして、複数のセラミックグリーンシートを積層してなり、内部に空間が形成されたグリーンシート積層体、および空間の周りを周回するようにグリーンシート積層体に埋設された導体ペーストを備えた生積層体が形成される。
【0045】
(2)磁芯部材9を設置する工程
まず、第1の実施形態と同様に、磁性体からなる磁芯部材9を準備する。磁芯部材9となる磁性体としては、第1の実施形態における磁芯部材9と同様の材料を用いればよい。
【0046】
次に、磁性体からなる磁芯部材9を生積層体の空間に設置する。なお、本工程は、上記(1)工程の後に行うのではなく、後述する(3)絶縁膜17を設置する工程と併せて、上記(1)工程と同時に行うことが好ましい。
【0047】
具体的には、内部空間を形成するために一部が打ち抜かれたグリーンシートを含む複数のグリーンシートを積層することによってグリーンシート積層体を形成する際に、内部空間となる位置に磁性体からなる磁芯部材9を配設すればよい。これによって、グリーンシート積層体の内部空間に磁芯部材9を配設することができる。
【0048】
(3)絶縁膜17を設置する工程
まず、生積層体の焼成温度では焼結しない絶縁膜17を準備する。絶縁膜17としては、生積層体の焼成温度では焼結しないセラミックス部材を用いたセラミック膜、生積層体の焼成温度では溶融しない有機物質からなる有機物質層、あるいは、上記の有機物質層の表面を上記のセラミック膜で皮膜した部材を用いることができる。
【0049】
このような絶縁膜17を生積層体の内部空間であって磁芯部材9と生積層体との間に設置する。なお、既に示したように、本工程は、上記(1)工程と同時に行うことが好ましい。具体的には、内部空間を形成するために一部が打ち抜かれたグリーンシートを含む複数のグリーンシートを積層することによってグリーンシート積層体を形成する際に、内部空間となる位置に絶縁膜17を配設するとともに磁性体からなる磁芯部材9を配設すればよい。これによって、内部空間における磁芯部材9と生積層体との間に絶縁膜17を配設することができる。
【0050】
このように、この焼成温度では焼結しない絶縁膜17を磁芯部材9と生積層体との間に設置していることから、本実施形態の電子部品1の製造方法によれば、磁芯部材9および生積層体を焼成する際に、セラミック積層体3と磁芯部材9が接合しない。そのため、セラミック積層体3と磁芯部材9との間に応力が集中することが抑制される。
【0051】
(4)生積層体を焼成する工程
上記のようにして磁芯部材9および絶縁膜17が空間に設置された生積層体を焼成することにより、セラミック積層体3およびセラミック積層体3に埋設されたコイル配線導体5を形成する。
【0052】
グリーンシートおよび導体ペーストとなる原料粉末として用いる材料によって最適な焼成温度は異なるが、本実施形態の電子部品1の製造方法においては、第1の実施形態と同様に、約850℃〜1150℃の温度で焼成すればよい。
【0053】
なお、絶縁膜17はグリーンシート積層体と磁芯部材9とが焼成時に接合することを抑制するために用いられる部材であることから、生積層体を焼成する工程が完了した段階で焼失していてもよい。
【0054】
なお、本実施形態の電子部品1の製造方法においては、焼成済みの磁芯部材9をグリーンシート積層体の内部空間に配設した後に、グリーンシートを焼成しているが、絶縁膜17が配設されていることによってグリーンシート積層体と磁芯部材9とが焼成時に接合することを抑制できる。そのため、例えば、間に絶縁膜17が配設されるように未焼成の磁芯部材9をグリーンシート積層体の内部空間に配設した後に、磁芯部材9およびグリーン
シート積層体を焼成してもよい。このような場合には、一度の焼成工程で電子部品1を作製することができるので、セラミック積層体3と磁芯部材9との焼成時での接合を抑制しつつも短時間かつ低コストで電子部品1を作製することができる。
【0055】
(5)セラミック積層体3と磁芯部材9とを接合する工程
次に、内部空間におけるセラミック積層体3と磁芯部材9との間に磁性体を含有させた樹脂部材11を充填する。このように樹脂部材11を充填することによって、樹脂部材11によりセラミック積層体3と磁芯部材9とを接合することができる。樹脂部材11としては、第1の実施形態と同様の樹脂を用いることができる。樹脂部材11は、セラミック積層体3に形成された、内部空間と外部とをつなぐ上述した貫通孔19を通じて、内部空間に充填すればよい。
【0056】
また、本実施形態の電子部品1の製造方法においては、樹脂部材11が磁性体を含有している。樹脂部材11によってセラミック積層体3と磁芯部材9とを接合するため、樹脂部材11の体積の分だけ磁芯部材9の体積を小さくする必要がある。そのため、電子部品1のインダクタンス特性が小さくなる。しかしながら、樹脂部材11が磁性体を含有していることから、単にセラミック積層体3と磁芯部材9とを接着剤を用いて接合する場合と比較して、電子部品1のインダクタンス特性を向上させることができる。
【0057】
すなわち、第1の実施形態の電子部品1の製造方法と同様に、コイル部材7と磁芯部材9とを一体焼成することによって互いに接合するのではなく、磁性体を含有させた樹脂部材11を介して接合している。
【0058】
以上により、セラミック層3aを積層してなり、内部に空間が形成されたセラミック積層体3と、この空間の周りを周回するようにセラミック積層体3に埋設されたコイル配線導体5と、空間の内部に配設された、磁性体からなる磁芯部材9と、上記の空間におけるセラミック積層体3と磁芯部材9との間に充填された、セラミック積層体3と磁芯部材9とを接合している、磁性体を含有した樹脂部材11とを備えた本実施形態の電子部品1を作製することができる。
【0059】
以上の通り、各実施形態の電子部品およびその製造方法について説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば、種々の変更や実施の形態の組み合わせを施すことは何等差し支えない。
【符号の説明】
【0060】
1・・・電子部品
3・・・セラミック積層体
5・・・コイル配線導体
7・・・コイル部材
9・・・磁芯部材
11・・・樹脂部材
13・・・接続導体
15・・・外部電極
17・・・絶縁膜
19・・・貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に開口する凹部を有するセラミック積層体および前記凹部の周りを周回するように前記セラミック積層体に埋設されたコイル配線導体を備えたコイル部材を準備する工程と、
前記凹部に磁性体からなる磁芯部材を配設する工程と、
前記凹部と前記磁芯部材との間に磁性体を含有させた樹脂部材を充填するとともに該樹脂部材により前記セラミック積層体と前記磁芯部材とを接合する工程とを備えたことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂部材に含有された磁性体は、前記磁芯部材を構成する磁性体と同じ磁性材料からなることを特徴とする請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂部材によって前記凹部の前記開口を封止することを特徴とする請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂部材によって前記磁芯部材を覆うことを特徴とする請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
表面に開口する凹部を有するセラミック積層体と、
前記凹部の周りを周回するように前記セラミック積層体に埋設されたコイル配線導体と、
前記凹部に配設された、磁性体からなる磁芯部材と、
前記凹部と前記磁芯部材との間に充填された、前記セラミック積層体と前記磁芯部材とを接合している、磁性体を含有した樹脂部材とを備えたことを特徴とする電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−174967(P2012−174967A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37002(P2011−37002)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】