説明

電子部品の半田付け方法及び装置

【課題】 局所的な半田付けエリアに対し、誘導加熱により、非接触でプリント基板の半田付け領域を局所的に加熱し、加熱領域の内の温度均一性を確保して高品質の半田付けを実現する、電子部品の半田付け方法及び装置を提供する。
【解決手段】 筒状の外側フェライトコア2の外側に外側コイル1を設置し、外側フェライトコアの内側に内側コイル3と内側フェライトコア4を設置して、外側コイルと内側コイルに高周波電流を印加することにより、被加熱体の加熱領域7を半田の溶融温度まで加熱し、かつ加熱領域の面内温度均一性を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板上に塗布若しくは印刷された半田を溶融させ、プリント基板に電子部品を実装する半田付け方法において、特に誘導加熱により被加熱体であるプリント基板に対して非接触で、かつ局所的に半田を溶融させる、電子部品の半田付け方法及び装置に関するものである。さらに、半田付けを高品質に行うために必要な、半田付けを行う加熱領域の高い温度精度、及び半田付けを加熱領域内の高い温度均一性を要求される電子部品の半田付け方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
誘導加熱を用い、かつ被加熱体に対して非接触で半田付けを行う従来方法として、特許文献1に示す装置を用いて半田付けを行う方法がある。図14は、前記特許文献1に記載された従来の半田付け方法を示すものである。
【0003】
図14において、106aは平行加熱コイルを表す。チップ状電子部品102cを搭載したフープ状の電子部品102aは、平行加熱コイル106aの上方を搬送され、その搬送時に半田により接合されるものである。誘導加熱方式を用い、平行加熱コイル106aに1〜5MHzの周波数の電流を印加することにより、半田に渦電流を発生させて加熱し、半田を溶融させる。
【0004】
この構成により短時間での加熱が可能であり、リフロー炉を用いた場合の課題である、トラブルが発生した場合の不良となる電子部品の数の低減や、ランプ加熱を用いた場合の課題である加熱した金属端子部よりもその周辺の樹脂が高温になって溶けることの防止に対して効果的であり、生産歩留まりを著しく高めることができる構成となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−150142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、半田付け対象として、プリント基板上に電子部品を半田付けするとき、特にプリント基板の一部のエリア、例えば100mm×100mmの加熱範囲内のみ部品を半田付けする場合を考える。例えば、半田付けする電子部品のうち、一部の部品が熱に対して弱い場合、通常のリフローの温度220℃で耐えられる部品はリフロー炉にて実装を行い、熱に弱い部品のみ低温半田を用いて後付けで半田付けが行われる。この例は、熱に弱い部品である弱耐熱部品の例であるが、弱体熱部品に限らず、通常温度の半田付けも半田付け対象に含めると、半田付けエリアのみ局所的に半田の融点である150℃〜230℃まで加熱し、かつその範囲内の温度均一性を±3%以内にすることが要求される。温度仕様は、半田の溶融温度に依存し、温度均一性は、加熱エリアにある複数の半田付け対象(端子)に対して、同じ温度プロファイルを適用するために必要な仕様である。
【0007】
しかし、従来の技術を用いた場合、平行加熱コイル106aのU字形の行きと帰りの部分をまたぐように平行加熱コイル106aの上方に基板を設置した場合、平行加熱コイル106a上はよく加熱されるが、平行加熱コイル106aの行きと帰りの間の部分は加熱が弱く、温度均一性に問題が発生する。
【0008】
本発明は、前記従来の技術を用いた場合の課題を解決するものであり、局所的な半田付けエリアに対し、誘導加熱により、非接触でプリント基板の半田付け領域を局所的に加熱し、加熱領域内の温度均一性を確保して高品質の半田付けを実現する、電子部品の半田付け方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0010】
本発明の1つの態様によれば、 局所加熱対象領域に保持された電子部品を有するとともにレイヤーに金属箔を有するプリント基板の前記加熱対象領域に対して、前記加熱対象領域から前記プリント基板の面方向と垂直の方向に一定距離だけ離れて配置され、筒状に形成された外側フェライトコアと、前記加熱対象領域から前記プリント基板の前記面方向と垂直の方向に一定距離だけ離れて配置され、前記外側フェライトコアと同心であり、前記外側フェライトコアの外側に配置された外側コイルと、前記加熱対象領域から前記プリント基板の前記面方向と垂直の方向に一定距離だけ離れて配置され、前記外側フェライトコアと同心であり、前記加熱対象領域から前記外側フェライトコアの内側に配置された内側コイルと、前記加熱対象領域から前記プリント基板の前記面方向と垂直の方向に一定距離だけ離れて配置され、前記外側フェライトコアと同心であり、前記内側コイルの内側に配置された内側フェライトコアとで構成される加熱コイルを接近させ、
前記外側コイルと前記内側コイルに交流電流を印加して前記プリント基板の金属箔に誘導電流を発生させ、前記プリント基板を加熱して、前記プリント基板上に塗布若しくは印刷された半田を溶融させて前記プリント基板に前記電子部品を実装する、電子部品の半田付け方法を提供する。
【0011】
本発明の別の態様によれば、局所加熱対象領域に保持された電子部品を有するとともにレイヤーに金属箔を有するプリント基板の前記加熱対象領域に対して加熱コイルを接近させて前記加熱コイルで加熱して半田付けを行なう電子部品の半田付け装置であって、
前記加熱コイルは、前記加熱対象領域から前記プリント基板の面方向と垂直の方向に一定距離だけ離れて配置され、筒状に形成された外側フェライトコアと、前記加熱対象領域から前記プリント基板の前記面方向と垂直の方向に一定距離だけ離れて配置され、前記外側フェライトコアと同心であり、前記外側フェライトコアの外側に配置された外側コイルと、前記加熱対象領域から前記プリント基板の前記面方向と垂直の方向に一定距離だけ離れて配置され、前記外側フェライトコアと同心であり、前記加熱対象領域から前記外側フェライトコアの内側に配置された内側コイルと、前記加熱対象領域から前記プリント基板の前記面方向と垂直の方向に一定距離だけ離れて配置され、前記外側フェライトコアと同心であり、前記内側コイルの内側に配置された内側フェライトコアとで構成され、
さらに、前記外側コイルと前記内側コイルに電流を印加するためのアンプと、
前記プリント基板の温度を測定する温度計と、
前記温度計の出力を入力し、前記プリント基板の温度が設定温度に追従するよう前記外側コイルと前記内側コイルに印加する電流値をそれぞれ演算し、制御信号を前記アンプに出力する補償器とを備えることを特徴とする、電子部品の半田付け装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明の電子部品の半田付け方法及び装置によれば、プリント基板上の局所的なエリアに対して、所定の半田付け温度まで加熱を行うことが可能であり、かつ加熱領域内の温度均一性を確保し、適切な温度プロファイルで高品質な半田付けを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】本発明の第1実施形態における半田付け方法を説明する説明図
【図1B】本発明の第1実施形態における半田付け装置の構成図
【図2】本発明の第1実施形態にプリント基板の構造図
【図3】本発明の第1実施形態における空芯コイルの電磁界解析モデルを示す図
【図4】本発明の第1実施形態における外側フェライトコアを設置した場合の電磁界解析モデルを示す図
【図5】本発明の第1実施形態における空芯コイルの電磁界解析結果を示す図
【図6】本発明の第1実施形態における外側フェライトコアを設置した場合の電磁界解析結果を示す図
【図7】本発明の第1実施形態における磁界の経路を示す説明図
【図8】本発明の第1実施形態におけるコイルとフェライトコアの半径を示す説明図
【図9】本発明の第1実施形態における加熱コイルの電磁界解析モデルを示す図
【図10】本発明の第1実施形態における加熱コイルにおいて、内側フェライトコアを設置しない場合の電磁界解析モデルを示す図
【図11】本発明の第1実施形態における加熱コイルの電磁界解析結果を示す図
【図12】本発明の第1実施形態における加熱コイルにおいて、内側フェライトコアを設置しない場合の電磁界解析結果を示す図
【図13】本発明の第2実施形態における半田付け装置の構成図
【図14】従来の半田付け装置の構造図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図1A〜図13を参照しながら説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1A及び図1Bは、本発明の第1実施形態における電子部品の半田付け方法を示す説明図及び半田付け装置の構成図である。プリント基板8に1つ以上の部品を実装する。プリント基板8には、熱に弱い部品である弱耐熱部品11が搭載されていて、この弱耐熱部品11は、220℃程度の温度雰囲気により半田付けを行うリフロー装置を通すことができない。そのため、リフロー装置を通して半田付けを行う部品12を先に実装した後に、弱耐熱部品11を半田付けする手順となる。
【0016】
ここで、弱耐熱部品11を半田付けするエリアを加熱領域(加熱対象領域、被加熱体)7とする。加熱領域7のみ局所的に加熱するための加熱方法として、誘導加熱を用いる。誘導加熱は、交流電流によって被加熱体の表面付近に高密度の渦電流を発生させ、そのジュール熱で被加熱体の表面を発熱させる直接加熱であり、被加熱体の単位面積に供給される単位時間当りのエネルギーが大きいので、高速加熱及び高温加熱が可能である。被加熱体そのものを加熱するので、熱損失が小さく、加熱効率が高いなどの特徴がある。
【0017】
プリント基板8へ電子部品を実装する場合、被加熱体として金属(図示せず)を用い、その金属とプリント基板8の加熱領域7とを接触させる。その後、一旦、誘導電流で金属を加熱した後、熱伝導によりプリント基板8の加熱領域7を加熱する接触式の方法がある。また、別の方式として、プリント基板8内に構成されている銅箔に誘導電流を発生させ、銅箔を加熱させることにより、プリント基板8の加熱領域7を加熱する非接触式とがある。前記接触式の場合、プリント基板8の加熱領域7と前記金属とを密着させる必要があるが、プリント基板8に反りなどがある場合には、加熱領域7の全面と前記金属との密着性が保てず、加熱領域7の面内の温度均一性が確保できない。
【0018】
プリント基板8の構造の例を図2に断面図で示す。図2において、21は電子部品が実装され、導体である銅箔により配線パターンが形成されている表面である。22は電子部品が実装され、導体である銅箔により配線パターンが形成されている裏面である。加熱領域7では、裏面22は配線パターンのみである。また、23は銅箔で形成され、グランド又は電源が一面に配置されている内層である。そして、各層21,23,22間、すなわち、表面21と上側の内層23との間、上側の内層23と下側の内層23との間、下側の内層23と裏面22との間には、絶縁層24がそれぞれ配置されている。
【0019】
プリント基板8上又はプリント基板8内の配線パターンは、紙又はガラス基材に樹脂を含浸させ、銅箔を片面又は両面に加熱プレスして接着した銅箔積層板の銅箔の不要部分をエッチングで除去するなどの方法で行われる。銅箔の厚みとしては、例えば、18μm、35μm、70μmなどの厚みが使われる。前記非接触の方式の場合は、内層23のグランド層の銅箔に誘導電流を発生させることにより、加熱領域7を加熱し、表面21の半田を溶融させる。
【0020】
この第1実施形態にかかる電子部品の半田付け装置は、外側フェライトコア2と、外側コイル1と、内側コイル3と、内側フェライトコア4とで構成されている。
【0021】
筒状の外側フェライトコア2は、プリント基板8の加熱領域7から、プリント基板8の面方向と垂直(図1Aではプリント基板8の下)方向に一定距離だけ離れた位置に配置する。また、外側コイル1は、プリント基板8の加熱領域7の下方(プリント基板8の下面であって加熱領域7に対応する領域)から一定距離だけ離れた位置に、外側フェライトコア2と同心で、外側フェライトコア2の外側に配置する。また、内側コイル3は、プリント基板8の加熱領域7の下方(プリント基板8の下面であって加熱領域7に対応する領域)から一定距離だけ離れた位置に、外側フェライトコア2と同心で、外側フェライトコア2の内側に配置する。また、内側フェライトコア4は、プリント基板8の加熱領域7の下方(プリント基板8の下面であって加熱領域7に対応する領域)から一定距離だけ離れた位置に、外側フェライトコア2と同心であり、内側コイル3の内側に配置する。
【0022】
外側コイル1と外側フェライトコア2と、内側コイル3と、内側フェライトコア4とで構成される部分を、加熱コイル9とする。
【0023】
誘導加熱に用いるフェライトコア2,4としては、それぞれ、透磁率が高く、高周波数領域での渦電流損失が小さいフェライトが望ましい。外側フェライトコア2と内側フェライトコア4とには、例えば、スピネルフェライト(マンガン亜鉛フェライト、ニッケル亜鉛フェライト)をそれぞれ用いる。また、外側フェライトコア2と内側フェライトコア4としては、高周波電流を流すことによりフェライトが発熱するため、キュリー温度が高いフェライトが望ましい。
【0024】
外側コイル1と内側コイル2とには、それぞれ独立して、外側コイル用及び内側コイル用高周波電源6,5により高周波電流が印加される。
【0025】
外側コイル1と内側コイル3に流す電流の周波数はそれぞれ50KHz以上であり、表皮効果によりコイル線表面に電流が集中するため、コイル線の表面積を大きくする必要があり、外側コイル1と内側コイル3とには、それぞれ撚り線を使用することが望ましい。数十A〜数百Aといった大電流を流さずに局所的に加熱するために適するコイルと被加熱体との構成としては、ソレノイドコイルの開口部から一定距離だけ離れた位置に被加熱体を置く方法、又は、電磁調理器で多く用いられている渦巻き状のコイルの上方の一定距離だけ離れた位置に被加熱体を置く方法などがある。しかし、どちらの場合も、小さい加熱領域を局所的に加熱するために小型のコイル形状にすると、数Aでは半田を溶融するまでの温度上昇にはならない。そこで、空芯コイルの内側にフェライトを設置することにより、内側のフェライトに磁束を集中させ、強い磁束を被加熱体に鎖交させる。これにより、空芯コイルの場合よりも被加熱体の温度が上昇する。
【0026】
図3は、空芯コイル(外側コイル1のみで構成されたコイル)の開口部から一定距離だけ離れた位置に被加熱体10を設置したときに、被加熱体10に発生する誘導電流を電磁界解析するためのモデルである。被加熱体10には銅板を使用している。
【0027】
図4は、図3の空芯コイル(外側コイル1)の内側に外側フェライコア2を設置したときの電磁界解析を行うためのモデルである。同じ電流でかつ同じ周波数での図3及び図4の装置の解析結果を図5及び図6に示す。
【0028】
図5は、図3に示す解析モデルの解析結果であり、図6は図4に示す解析モデルの解析結果である。外側フェライトコア2を設置した場合(図4の場合)と、外側フェライトコア2を設置しない場合(図3の場合)と比較して、倍以上の誘導電流が発生している。
【0029】
実際に解析モデルと同じ形状の加熱コイルを製作して加熱実験を行った結果、被加熱体10である銅箔の温度が、半田が溶融する150℃以上まで上昇した。
【0030】
しかし、図6に示す解析結果は、加熱領域7において、誘導電流の分布に差があることがわかる。具体的には、被加熱体10に鎖交する磁界が強い部分(フェライトコア2の上部)の周りに誘導電流が発生するため、フェライトコア2の上方からその内部(半径方向)にかけては誘導電流が発生していない。この誘導電流の分布は、加熱面の温度分布と相関があり、誘導電流の分布により温度分布を予測できる。つまり、誘導電流が均一でない場合は、温度分布も均一ではない。従って、温度分布を均一化するためには、誘導電流の分布を均一化する必要がある。
【0031】
図1A及び図1Bにおける内側コイル3と内側フェライトコア4とは、加熱領域7における外側フェライトコア2より内部の領域にも誘導電流を発生させるために設置している。
【0032】
図7に磁界の経路を示す。図7に示すように、外側コイル1に高周波電流を印加すると、外側フェライトコア2の内部を通り、被加熱体であるプリント基板8のグランド層に鎖交し、外側コイル1の外側を通って外側フェライトコア2に戻る磁界が発生する。また、内側コイル3に高周波電流を印加すると、内側フェライトコア4の内部を通り、被加熱体であるプリント基板8のグランド層に鎖交し、外側フェライトコア2の内部を通って内側フェライトコア4に戻る磁界が発生する。外側コイル1と内側コイル3とを巻く方向が同方向の場合で、かつ、外側コイル1と内側コイル3に印加する電流の位相を同相とした場合には、外側コイル1と内側コイル3に同時に高周波電流を印加すると、図7の実線の磁界が発生する。それに伴い、被加熱体であるプリント基板8のグランド層における内側フェライトコア4から外側コイル1との間に対応する部分に、誘導電流が発生する。また、外側コイル1と内側コイル3とを巻く方向が逆方向の場合には、外側コイル1と内側コイル3とに印加するどちらかの電流の位相を180degとすると、同様に図7の実線の磁界が発生し、同様に誘導電流が発生する。
【0033】
次に、誘導電流の分布を均一化するための外側コイル1と、内側コイル3と、内側フェライトコア4との位置関係を説明する。
【0034】
図8に示すように、外側コイル1の半径をr、内側コイル3の半径をr、内側フェライトコア4の半径をrとする。
【0035】
空芯コイルの外側の磁界はコイルからの距離が離れるほど磁界の強さが減衰するため、内側コイル3の半径rは、
外側フェライトコアの内径/2 ≦ r ≦ 外側フェライトコアの内径
の範囲で設置する。
【0036】
また、コイルのターン数をn、コイルに流す電流をI、真空の透磁率をμ、磁束密度をB、磁束をφとした場合、磁束φは次の(1)式であらわされる。
【数1】

【0037】
外側コイル1の断面積SはS=2π・r1、内側コイル3の断面積SはS=2π・rであるので、内側コイル3と外側コイル1とのターン数が同じ場合に、内側コイル3で発生する磁束が外側コイル1で発生する磁束を超えないようにするためには、内側コイル3に印加する電流は外側コイル1に印加する電流より大きく、外側コイル1の電流×(r/r以下の範囲で設定する。
【0038】
また、内側フェライトコア4の飽和磁束密度をB、内側コイル3が作る磁界をHとしたとき、内側フェライトコア4が設置されないときに半径rにおける断面積内に発生した磁界が半径rの内側フェライトコア4内に集中したとした場合、内側フェライトコア4を貫く磁束が内側フェライトコア4の飽和磁束密度Bを超えることが無いようにするため、内側フェライトコア4の半径rは、

>μ×H×(r/r

を満たすように設定する。このように設定することにより、加熱エリア7の面内温度均一性を最適化が可能である。
【0039】
さらに、内側フェライトコア4の半径rは前記条件を満たす範囲内で小さいものが望ましい。
【0040】
上記設定において、図9に示す内側コイル3と内側フェライトコア4とを設置した図1A及び図1Bと同様の構成、及び、図10に示す内側フェライトコア4を設置しない場合の構成における電磁界解析を行った。被加熱体10に発生する誘導電流の解析結果を図11及び図12に示す。図11は図9に示す解析モデルの解析結果であり、図12は図10に示す解析モデルの解析結果である。被加熱体10は銅板を使用している。図11に示すように、被加熱体10の加熱領域7内での誘導電流の均一性が向上している。また、図12に示すように、内側フェライトコア4が配置されない場合は、被加熱体10の内側コイル3内の誘導電流が小さくなり、誘導電流の均一性が確保できなくなっている。
【0041】
第1実施形態によれば、図1A及び図1Bに示す構成により、内側コイル3と内側フェライトコア4とを設置しているので、被加熱体10の加熱領域7内での誘導電流の分布を均一化することができて、温度分布も均一化することができる。よって、被加熱体であるプリント基板8を半田が溶融する150℃以上まで加熱することが可能であり、さらに、加熱領域7内の温度均一性を確保することが可能となる。
【0042】
特に、従来の技術を用いた場合、図14の平行加熱コイル106a上にプリント基板を設置すると、平行加熱コイル106aの上に半田付け対象エリア以外の部分が位置するここともあり、半田付け対象エリア以外の部分も平行加熱コイル106aからの磁界により加熱され、加熱の必要のない部分が加熱されてしまう問題が発生していた。これに対して、第1実施形態では、加熱領域7のみ局所的に加熱するための加熱方法として、外側と内側のフェライトコア2,4による誘導加熱を用いているため、加熱の必要のある領域7のみ加熱され、前記下不具合は解消される。
【0043】
また、加熱対象以外の部分に搭載されている部品に対して、熱による影響に加えて電磁界に対する影響もある。電磁界の影響としては、例えば、半導体部品の内部にはチップが半田付けされているため、この半田付けに対しての影響が考えられる。これに対して、第1実施形態では、加熱コイルと電子部品の間に被加熱体である銅箔があり、磁界が減衰して電子部品に鎖交し、電子部品の内部に電子部品を破損するような誘導電流が発生しないため、半導体部品の内部への不具合は解消される。
【0044】
また、ターン数の少ない加熱コイルを誘導加熱に用いる場合、数十A〜数百Aといった大電流を印加する必要があり、電流を流すためのアンプが大型化し、電力消費量が大きいという問題が発生していた。これに対して、第1実施形態では、外側コイル1の内側に外側フェライコア2を配置することにより、内側のフェライトコア4に磁束を集中させ、強い磁束を被加熱体8に鎖交させることができる。これにより、外側コイル1のみの従来の場合よりも、小さい電流でも、被加熱体8の温度を上昇させることができる。
【0045】
また、特許文献1には、他の実施の形態として、螺旋状加熱コイルの螺旋内部に加熱対象を通す方法が記載されている。螺旋内部にプリント基板を通した場合、加熱効率は高いが、やはり加熱対象以外の部分も加熱され熱による影響を受けるとともに電磁界の影響を受け、部品が破損することが考えられる。これに対して、第1実施形態では、前記装置構成とすることにより、プリント基板8の加熱領域7に加熱コイル9を接近させるだけでよく、前記した従来の不具合は解消される。
【0046】
(第2実施形態)
第1実施形態の半田付け方法を用いて、被加熱体の温度を設定温度に追従させるものである。加熱コイル9は第1実施形態と同様である。図13は、本発明の第2実施形態における半田付け装置を示す構造図である。
【0047】
図示していないが、本装置の前工程にはプリント基板8のランドにクリーム半田を印刷する半田印刷機又はクリーム半田を塗布するディスペンサが配置され、プリント基板8上のランドに半田を印刷又は塗布する。さらに、プリント基板8に実装するための部品を設置するためのマウンターが設置されている。この前工程からコンベア又はロボットなどの搬送装置(図示せず)により本半田付け装置にプリント基板8が搬送される。
【0048】
図13の31は、外側コイル1の両端と内側コイル3の両端とがそれぞれ接続され、外側コイル1と内側コイル3に電流をそれぞれ印加するためのアンプである。アンプ31の構成としては、例えばコイルのLとコンデンサC(図示せず)によるLC共振により、コイルに電流を流す方法がある。また、アンプ31の別の構成としては、高周波リニアアンプを使用し、外部から信号発生器(図示せず)を高周波リニアアンプに接続し、設定周波数、印加する電流値を設定して電流を流す方法がある。
【0049】
図13の33は加熱領域7の例えば上方に配置された温度計ヘッド、34は温度計ヘッド33に接続された温度計アンプである。温度計ヘッド33と温度計アンプ34とで、プリント基板8の加熱領域7の温度を測定する温度計44を構成している。温度計44としては、接触式の熱電対、又は、物体から放射される赤外線若しくは可視光線の強度を測定して、物体の温度を測定する放射温度計を用いる。プリント基板8は搬送装置(図示せず)により加熱位置まで搬送されて来るため、生産ラインにおいては、接触式の温度計よりも非接触式の放射温度計を用いる方が望ましい。また、プリント基板8の温度は表面21側を温度計44で測定してもよいし、裏面22側を温度計44で測定してもよい。どちらを温度計44で測定するかは、加熱エリアと実装する部品の面積又は温度計ヘッド33の設置スペースに依存し、測定しやすい位置に温度計44を設置する。
【0050】
温度計アンプ34の出力は補償器32に入力する。補償器32は、プリント基板8の温度が設定温度に追従するように外側コイル1と内側コイル3に印加する電流値を演算する。温度計44にて測定した温度と設定温度との偏差を補償器32で演算し、偏差信号に対して例えば比例・積分・微分器(PID補償器)により補償器32で演算し、電流値を補償器32で決定する。補償器32としては、PIDに限らず、比例(P)、比例・積分(PI)、又は、比例・微分(PD)などでもよい。補償器32の演算結果に対して、第1実施形態で説明した外側コイル1と内側コイル3との電流の設定比に基づいて外側コイル1と内側コイル3の電流値を補償器32で決定し、外側コイル1と内側コイル3の電流値を補償器32からアンプ31に出力する。補償器32の演算には、オペアンプに代表されるアナログ演算器を用いて構成する方法と、MPU(Micro Processing Unit)を用いるディジタル補償器により構成する方法とがある。ディジタル補償器を用いる場合は、温度計アンプ34の信号をアナログ/ディジタル変換(A/D変換)(図示せず)によりアナログ信号をディジタル信号に変換し、ディジタル変換した信号に対して設定温度との偏差を演算し、偏差信号に対してPIDなどの補償演算を行う。アンプ31への演算結果は、ディジタル/アナログ変換(D/A変換)(図示せず)を行い出力される。
【0051】
この構成により、プリント基板8の加熱領域7の温度をフィードバック制御し、加熱領域7の温度を設定温度に追従させることが可能となる。
【0052】
なお、上記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の加熱領域7の温度を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の電子部品の半田付け方法及び装置は、温度均一性が要求される部品の加熱又は熱硬化性の接着材料を加熱する用途に適用できる。また、本半田付け方法又は装置を複数組み合わせ、大面積を加熱する用途にも適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 外側コイル
2 外側フェライトコア
3 内側コイル
4 内側フェライトコア
5 高周波電源
6 高周波電源
7 加熱領域
8 プリント基板
9 加熱コイル
10 被加熱体
11 弱耐熱部品
12 リフロー装置を通して半田付けを行う部品
21 表面
22 裏面
23 内層
24 絶縁層
31 アンプ
32 補償器
33 温度計ヘッド
34 温度計アンプ
44 温度計
102a フープ状の電子部品
102c チップ状電子部品
106a 平行加熱コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所加熱対象領域に保持された電子部品を有するとともにレイヤーに金属箔を有するプリント基板の前記加熱対象領域に対して、前記加熱対象領域から前記プリント基板の面方向と垂直の方向に一定距離だけ離れて配置され、筒状に形成された外側フェライトコアと、前記加熱対象領域から前記プリント基板の前記面方向と垂直の方向に一定距離だけ離れて配置され、前記外側フェライトコアと同心であり、前記外側フェライトコアの外側に配置された外側コイルと、前記加熱対象領域から前記プリント基板の前記面方向と垂直の方向に一定距離だけ離れて配置され、前記外側フェライトコアと同心であり、前記加熱対象領域から前記外側フェライトコアの内側に配置された内側コイルと、前記加熱対象領域から前記プリント基板の前記面方向と垂直の方向に一定距離だけ離れて配置され、前記外側フェライトコアと同心であり、前記内側コイルの内側に配置された内側フェライトコアとで構成される加熱コイルを接近させ、
前記外側コイルと前記内側コイルに交流電流を印加して前記プリント基板の金属箔に誘導電流を発生させ、前記プリント基板を加熱して、前記プリント基板上に塗布若しくは印刷された半田を溶融させて前記プリント基板に前記電子部品を実装する、電子部品の半田付け方法。
【請求項2】
前記外側コイルと前記内側コイルに電流をそれぞれ印加することにより発生する磁界の方向が同一であることを特徴とする請求項1に記載の電子部品の半田付け方法。
【請求項3】
前記内側コイルの半径をr、前記外側コイルの半径をrとしたとき、前記内側コイルの半径は
/2 ≦ r ≦ 外側フェライトコアの内径
であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子部品の半田付け方法。
【請求項4】
前記内側コイルの半径をr、前記外側コイルの半径をrとしたとき、前記内側コイルに印加する電流は、前記外側コイルに印加する電流より大きく、外側コイル電流×(r/r以下とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の電子部品の半田付け方法。
【請求項5】
前記内側コイルの半径をr、前記内側フェライトコアの半径をr、前記内側フェライトコアの飽和磁束密度をB、前記内側コイルが作る磁界をHとしたとき、B>μ×H×(r/rを満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の電子部品の半田付け方法。
【請求項6】
局所加熱対象領域に保持された電子部品を有するとともにレイヤーに金属箔を有するプリント基板の前記加熱対象領域に対して加熱コイルを接近させて前記加熱コイルで加熱して半田付けを行なう電子部品の半田付け装置であって、
前記加熱コイルは、前記加熱対象領域から前記プリント基板の面方向と垂直の方向に一定距離だけ離れて配置され、筒状に形成された外側フェライトコアと、前記加熱対象領域から前記プリント基板の前記面方向と垂直の方向に一定距離だけ離れて配置され、前記外側フェライトコアと同心であり、前記外側フェライトコアの外側に配置された外側コイルと、前記加熱対象領域から前記プリント基板の前記面方向と垂直の方向に一定距離だけ離れて配置され、前記外側フェライトコアと同心であり、前記加熱対象領域から前記外側フェライトコアの内側に配置された内側コイルと、前記加熱対象領域から前記プリント基板の前記面方向と垂直の方向に一定距離だけ離れて配置され、前記外側フェライトコアと同心であり、前記内側コイルの内側に配置された内側フェライトコアとで構成され、
さらに、前記外側コイルと前記内側コイルに電流を印加するためのアンプと、
前記プリント基板の温度を測定する温度計と、
前記温度計の出力を入力し、前記プリント基板の温度が設定温度に追従するよう前記外側コイルと前記内側コイルに印加する電流値をそれぞれ演算し、制御信号を前記アンプに出力する補償器とを備えることを特徴とする、電子部品の半田付け装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−243903(P2012−243903A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111496(P2011−111496)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】