説明

電子部品の固定用ばね具及び放熱構造体

【課題】
電子部品を放熱部材に密着固定する場合に、ねじで固定する場合は、ねじ穴作製時の精度の問題、ねじ止めによる、組立時の締め付け時に亀裂の発生、組立後のねじの緩みが発生する恐れがある。
【解決手段】
電子部品を当該電子部品と当接する平面を有する放熱部材に対して固定させるための固定ばね具であって、前記放熱部材は係止穴を有し、前記固定ばね具は、水平方向に拡がる座部と、当該座部の対向する2辺から両翼の水平方向に対して側方に延伸するように設けられ、前記電子部品を前記放熱部材に対して押圧する保持部と、前記座部の他の対向する2辺から鉛直下方に延伸するように設けられた脚部と、前記脚部から延伸する脚部胴体と、前記脚部胴体は先端に爪部を有し、前記爪部と前記係止穴とが係止することで、前記保持部が前記電子部品を下方向に付勢し前記放熱部材に固定する固定ばね具を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に搭載される半導体等の電子部品である、トランジスタ、ダイオード等の発熱量の多い電子部品を、放熱部材に固定するための固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に搭載される半導体等の電子部品を、放熱部材に固定する固定具として、電子部品を保持する固定具が用いられており、例えば、特許文献1及び特許文献2が開示されている。
【0003】
特許文献1では、ホルダーを用いた電子部品を放熱板に固定する発明が開示されている。ホルダーは、取付孔が設けられている座と、座の両側部から一対の略L字状の押え片が延長形成されており、押え片の根元部から先端に向かって下方に傾斜を有して形成されており、また、座の前面部から延長形成された回動規制片の先端部は、下方に折り曲げられ、折曲部が形成されている。このように構成されたホルダーを用いて電子部品を放熱板に固定する場合には、ホルダーを上方より被せる。このとき、回動規制片の折曲部を放熱板の端縁に係合させることにより、座のねじ孔と電子部品の取付孔とを位置決めし、放熱板の下方より、ねじを取付孔に挿通し、ねじ孔に螺合させる。このように、ホルダーを放熱板に取付けると、回動規制片の折曲部が放熱板の端縁に係合しているので、ホルダーはずれることがなく、また、先端が下方に傾斜していた押え片は、電子部品の表面を押圧することにより水平状態となり、また、下方向にスプリングバックの力が生じて電子部品は放熱板に強固に密着して固定され、電子部品全体に均一な力が加わる発明が開示されている。
【0004】
特許文献2では、基板と、熱伝導性材料により形成され少なくとも該基板の一側面から突出した放熱体と、前記基板の一側面上に設けられ前記配線パターンに接続される電子部品と、該電子部品を前記放熱体に熱伝導可能に固定する固定手段とからなる電子部品の固定装置の発明が開示されている。
【0005】
トランジスタの固定手段としてのクランプ11が示され、前記クランプ11は合成樹脂等の弾性材料から略「F」字状に形成され、クランプ11に形成された12はケーシング1の側壁部1Aと平行に配設された腕部を示し、該腕部12の中間部には軸部13が側壁部1Aに向けて垂直に突出形成され、その先端側は側壁部1Aに穿設された挿通穴14を介してケーシング1の外側面に突出する係止部15が形成され、腕部12の両端側には、軸部13を挟んで後述の挟持部16および挟持補強部17が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5−46086号公報
【特許文献2】特開平9−293981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1では、ホルダーを使用する際に、使用する電子部品の厚みによって、放熱部材に密着固定される部分(座)と電子部品を保持する押え片との間に生じる段差が異なるので、工程毎に異なる電子部品を使用することで、電子部品の厚みが異なる場合や、製造誤差による電子部品の厚みの相違に合わせて、高さの誤差を調整する必要がある。また、ねじで固定する場合は、ねじ穴作製時の精度の問題、ねじ止めによる、組立時の締め付け時に亀裂の発生、組立後のねじの緩みが発生する恐れがある。
【0008】
また、特許文献2では、クランプ11が略「F」字状の特殊な形状であり、加工が容易でないこと、また、1つのクランプでは、1つのトランジスタしか固定できないこと、また、挟持補強部17の高さが一定であり、高さの異なるトランジスタには、固定具を別途設計し直さなければならない問題を有している。
【0009】
そこで、本発明では、固定具の先端部に留め具を形成し、電子部品を放熱部材に取り付ける際に、放熱部材に形成された穴に固定具に形成された留め具を嵌入することで、容易に電子部品を放熱部材に取り付けることができ、部品数の減少や、ねじ止めによる問題を解決することができる、半導体の固定ばね金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る固定用ばね具は、電子部品を当該電子部品と当接する平面を有する放熱部材に対して固定させるための固定ばね具であって、前記放熱部材は係止穴を有し、前記固定ばね具は、水平方向に拡がる座部と、当該座部の対向する2辺から両翼の水平方向に対して側方に延伸するように設けられ、前記電子部品を前記放熱部材に対して押圧する保持部と、前記座部の他の対向する2辺から鉛直下方に延伸するように設けられた脚部と、前記脚部から延伸する脚部胴体と、前記脚部胴体は先端に爪部を有し、前記爪部と前記係止穴とが係止することで、前記保持部が前記電子部品を下方向に付勢し前記放熱部材に固定することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る固定用ばね具は、前記放熱部材を固定時に、前記保持部と前記放熱部材間の距離が前記電子部品の高さよりも短いことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る固定用ばね具の、前記座部に設けられた前記脚部は左右1対からなり、前記脚部胴体は、1の前記脚部に対して2本設けられたことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る固定用ばね具の、前記座部に設けられた前記脚部は左右1対であり、前記脚部胴体は、1の前記脚部に対して1本設けられたことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る固定用ばね具の、前記1本設けられた前記脚部胴体の前記爪部は、他の前記1本設けられた前記脚部胴体の前記爪部と対になり、1の前記係止穴に係止することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る固定用ばね具の、 前記保持部の先端に、前記電子部品を面状に接触して固定するための、固定部を有することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る固定用ばね具は、前記脚部胴体に複数の前記爪部を設けることによって、前記固定ばね具と前記放熱部材の係止位置を変えられることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る固定用ばね具の、前記爪部は前記脚部胴体の先端部を折り曲げることにより形成されたものであり、前記脚部胴体の先端部を折り曲げる位置を変えることによって、前記固定ばね具と前記放熱部材の係止位置を変えられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、固定用ばね具に設けられた係止用爪と、放熱部材に設けられた係止穴を嵌合することで、電子部品を挟み込んで放熱部材に固定することができる。そのため、位置決めを容易にすることがでる。
【0019】
また、位置決め後の組立工程は、嵌合のみであるので、ねじ止めにより発生する部品の亀裂や歪みが発生することなく、組立工程及び作業工程を簡略化、効率化を図ることができる。
【0020】
また、固定用ばね具は、その構造が簡易であるので、複雑な製造工程を必要とせず、製造工程を簡略化することができ、量産性に優れる。また、ねじ等を使用しないため、部品数の削減及び製造工程の簡略化を計ることができる。
【0021】
また、1つの固定用ばね具で、複数の電子部品を放熱部材に係止することができる。固定用ばね具の脚部の数を変更することで、放熱部材に固定する電子部品の個数を調整することができる。
【0022】
また、電子部品が放熱部材と当接し、及び固定用ばね具の脚部と放熱部材とが当接するので、固定ばね具に不意に過剰な圧力がかかっても、前記圧力は前記脚部と前記電子部品に分散されるので、電子部品に対して過剰な押圧がかかることがなく、電子部品の破壊を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る、第1の実施例の分解斜視図である。
【図2】本発明に係る、第1の実施例の斜視図である。
【図3】本発明に係る、第1の実施例の留め具と係止穴の嵌合状態を示す図である。
【図4】本発明に係る、第1の実施例の側面図である。
【図5】図5(A)は、本発明に係る、第1の実施例の固定用ばね具の斜視図である。図5(B)は、図5(A)の固定用ばね具を裏面から見た斜視図である。
【図6】本発明に係る、第2の実施例の分解斜視図である。
【図7】本発明に係る、第2の実施例の側面図である。
【図8】図8(A)は、本発明に係る、第2の実施例の固定用ばね具の斜視図である。図8(B)は、図8(A)の固定用ばね具の裏面斜視図である。
【図9】図9(A)は、本発明に係る、第3の実施例の側面図である。図9(B)は、本発明に係る、第4の実施例の側面図である。
【図10】図10(A)は、本発明に係る、放熱部材の実施例の斜視図である。図10(B)は、本発明に係る、放熱部材の他の実施例の斜視図である
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1の実施例]
以下本発明の第1の実施例を図1乃至図5を用いて説明する。図1は本発明に係る発明の、第1の実施例の分解斜視図、図2は斜視図、図3は留め具と係止穴の嵌合状態を示す図、図4は、図2の側面図、図5(A)は、第1の実施例の固定用ばね具の斜視図、図5(B)は、図5(A)の固定用ばね具を裏面から見た斜視図である。
【0025】
[放熱構造体の構成]
図1乃至図5に示す放熱構造体1は、電子部品の発熱を効率よく放熱するためのものであり、電源装置等を初めとする電気機器の回路基板に用いられる電子部品に放熱部材の密着固定を実現するものである。放熱構造体1は、固定用ばね具10と、放熱部材20と、放熱部材20上に配置される電子部品41、42から構成される。
【0026】
電子部品41、42は、トランジスタ、ダイオード等の電子部品である。電子部品41、42は端子411、421を有し、当該端子411、421は半田付け等で回路基板に接続することで、電気的接続をする。これらの電子部品41、42は電圧が印加されることによって、動作を行うと共に、大量の発熱をする。電子部品41、42は、温度上昇によって性能が低下するので、放熱手段を設けることよりその温度を低下させる必要がある。短時間で、効率よく、放熱するためには、電子部品と放熱器との接触面積を大きくして密着させて熱伝導の効率を上げることが望ましい。このため、電子部品41、42の底面が放熱部材20に面接触で密着するように設置する必要がある。
【0027】
図5に示したように、固定用ばね具10は、水平方向に拡がる矩形状の座部11と、座部11の対向する2辺から鉛直下方(放熱部材20側)に延伸するように設けられた脚部13、14を有する。脚部は固定用ばね具10と放熱部材20とを係止(位置決め)させるためには少なくとも一本以上あれば良い。本発明に係る第1の実施例では、脚部13、14にそれぞれ2本の脚部胴体13a、13b、14a、14bを有する例を示す。
【0028】
脚部13(14)は、座部11と連接する立設部130(140)と、立設部に連接し座部11と反対方向に延伸する脚部胴体13a、13b(14a、14b)と前記脚部胴体の先端に設置された係止用爪131a、131b(141a、141b)から成る。
【0029】
立設部130(140)は、座部11の対向する2辺から鉛直下方(放熱部材20側)に延伸するように設けられ、立設部130(140)の左右端部から、それぞれ脚部胴体13a、13b(14a、14b)が設置されている。
【0030】
脚部胴体13a、13bは立設部130(140)の左右端部から、鉛直下方(放熱部材20側)に延伸するように設けられ、さらに、座部11と保持部15、16との境界線と平行する方向(立設部130、140と直交する方向)にほぼ直角に折り曲げられ形成されている。
【0031】
また、脚部胴体13a、13b(14a、14b)の先端部には、係止用爪131a、131b(141a、141b)が設置され、脚部胴体13a、13b(14a、14b)と直交する方向(立設部130と平行方向)に折り曲げられている。また、脚部胴体13a、13b(14a、14b)には、係止用爪131a、131b(141a、141b)の反対方向に延伸する小爪132a、132b(142a、142b)が設置される。
【0032】
保持部15、16は、座部11の2辺から、座部11と同じ幅で、電子部品41、42を放熱部材20側に押圧するべく、水平方向(側方)、詳しくは水平方向に対して斜め下方向に伸びるように設けられ、保持部15、16の先端にはそれぞれ、固定部17、18が配されている。保持部15、16の斜め下方向への傾斜角は、固定する電子部品41、42の高さとの関係や、材質との関係により、0度乃至90度の任意の範囲でよいが、固定ばね具10と放熱部材20を組み立てた場合の保持部15、16の高さ位置h0は、電子部品41、42の高さh1寄りも低いため、保持部15、16が電子部品41、42を固定する場合は、電子部品41、42が下方向に付勢される(図4のPに示す)。このため、高さh1が多少異なる電子部品41、42であっても、前記付勢によって、保持部15、16は電子部品41、42を放熱部材20に固定することができる。
【0033】
当該固定部17、18は、電子部品41、42に密着して、当該電子部品41、42を放熱部材20へ面状に接触して押圧固定を行うものであり、そのため、当該固定部17、18は、電子部品41、42との十分な接触を確保するべく、本実施例では、当該電子部品41、42の形状に対応して、水平方向に折り曲げられて、電子部品41、42との間で面状接触を確保している。また、電子部品41、42の放熱部材20への十分な接触が可能であれば、固定部17、18を設けず、保持部15、16の先端部による電子部品への押圧固定も可能である。
【0034】
放熱部材20と固定用ばね具10が係止された際に、保持部15、16は座部11の中心を重心として弾性部材としての機能を有し、先端部の固定部17、18は、電子部品41、42を下方向(図4矢印Pに示す)に押圧し、放熱部材20と電子部品41、42を密接に面接触させ、固定する機能を有する。
【0035】
固定用ばね具10の材質は固定用ばね具に加工できる金属板、樹脂板であればよく、特に指定しない。また、金属板の場合、一枚の金属をプレス加工して作製することができるため、作製が容易である。
【0036】
放熱部材20は、電子部品41、42との密着固定を確保するべく、当該電子部品41、42と密着(当接)する平面を有するように構成され、放熱部材20上に配置される電子部品で発生する熱を放熱する機能を有する。放熱部材20の材質は、放熱のために熱伝導の良い金属、例えば、アルミニウム、銅等の使用が好適である。放熱部材20は、固定用ばね具10の係止用爪131a、131b、141a、141bが係止するための係止穴23、24が設けられている。
【0037】
係止穴23(24)は、放熱部材20に設けられ、係止用爪131a、131b(141a、141b)が係止穴23(24)の縁部に係止される。がたつき防止の為、2以上の係止用爪が1の係止穴に係止されていることが望ましい。係止穴23(24)の形状は、凸の字状に形成され、脚部13(14)を挿入する位置が広く、係止用爪131a、131b(141a、141b)を位置決めする係止穴当接部153a、153b(154a、154b)を有する部分が狭くなっている。
【0038】
係止穴23、24の形状は、係止用爪が係止し、がたつきが生じなければ、凸の字状のみならず、四辺形、楕円、円形でも良い。また、係止用爪2本によって係止する場合は、係止穴を2つ(23、24)備え、放熱部材20の長辺方向に沿って係止穴を2つ平行して設けても良いし(図1参照)、放熱部材20の長辺方向と直角方向に係止穴を2つ平行して設置しても良い(図10(A)参照)。または、係止穴の面積を拡大し、1つの係止穴25に4つの係止用爪が係止される構成でもよい(図10(B)参照)。この場合、係止穴25の形状は、係止用爪が係止し、がたつきが生じなければ、四辺形、楕円、円形でも良い。
【0039】
[放熱構造体の組立方法]
次に、図1乃至図4を参照して、固定用ばね具10を用いて電子部品を固定する手順を説明する。
【0040】
まず、放熱部材20の上面に、電子部品41、42を搭載する。放熱部材20と電子部品41、42の間隙には絶縁シート(図示せず)を挟んでもよい。
【0041】
次に、固定用ばね具10と放熱部材20を嵌め合わせる。脚部13の先端の係止用爪131a、131bの先端部を係止穴23に、脚部14の先端の係止用爪141a、141bを係止穴24にそれぞれ嵌入させる。この時、係止穴23、24の凸の字状の穴の広い部分に係止用爪131a、131b、141a、141bを挿入する。
【0042】
ここで、脚部13a、13bを係止穴23に嵌入する場合は、図4に示すように、脚部13a、13bは、係止穴23の縁部によって、一旦P3の方向に押圧されて変形される。次に脚部13a、13bが係止穴23に嵌入し、脚部当接部135a、135b(145a、145b)と係止穴当接部153a、153b(154a、154b)が当接する位置に設置されると、P3方向への押圧が解消され、また、脚部13a、13bの弾性力によって、外方向(P2の方向)に付勢される。そして、脚部当接部135a、135b(145a、145b)と、前記係止穴の係止穴当接部153a、153b(154a、154b)とがそれぞれ圧接されて固定される。また、係止用爪131a、131b(141a、141b)及び小爪132a、132b(142a、142b)が係止穴23(24)の縁部より外側にはみ出し、放熱部材20に係止し、外れなくなり、固定される。
【0043】
また、脚部当接部135a、135b、145a、145bの形状と、係止穴当接部153a、153b、154a、154bの形状が一致するように係止穴23、24を成形することで、より圧接の効果が生じ、さらにがたつきが生じなくなる。
【0044】
このとき、固定部17は電子部品41の上面に接触し、固定部18は電子部品42の上面に接触するようにそれぞれ配置される。脚部13、14が放熱部材20と当接し、固定用ばね具10からの押圧が分散するので、固定部17、18は電子部品41、42に対して過剰な押圧力がかかることがなくなり、破損の恐れが無くなる。
【0045】
[第2の実施例]
本発明に係る第2の実施例を図6乃至図8を参照して説明する。第2の本実施例では、前記固定用ばね具の前記脚部にそれぞれ1本の脚部胴体を有する例を示す。図6は、本発明に係る、第2の実施例の分解斜視図、図7は、本発明に係る、第2の実施例の側面図、図8(A)は、本発明に係る、第2の実施例の固定用ばね具の斜視図、図8(B)は、図8(A)の固定用ばね具を裏面から見た斜視図である。
【0046】
[放熱構造体の構成]
図6乃至図8に示す放熱構造体1は、電子部品の発熱を効率よく放熱するためのものであり、電源装置等を初めとする電気機器の回路基板に用いられる電子部品に放熱部材の密着固定を実現するものである。放熱構造体1は、固定用ばね具50と、放熱部材60と、放熱部材60上に配置される電子部品71、72、73、74から構成される。
【0047】
電子部品71、72、73、74は、トランジスタ、ダイオード等の電子部品であり、電子部品41、42と同一の構造、機能、熱に対する特性を有する。このため、電子部品71、72、73、74もまた、底面が放熱部材60に面接触で密着するように設置する必要がある。
【0048】
固定用ばね具50は、水平方向に拡がる矩形状の座部51と、座部51の保持部55、56との境界に隣接する端部に、前記境界と平行して鉛直下方(放熱部材60側)に延伸するように設けられた脚部53、54を有する。本発明に係る第2の実施例では、脚部53、54がそれぞれ一本の脚部胴体53a、54aを有する例を示す。
【0049】
脚部53(54)は、座部51と連接する立設部230(240)と、立設部に連接し座部51と反対方向に延伸する脚部胴体53a(54a)と脚部胴体の先端に設置された係止用爪231(241)から成る。
【0050】
立設部230(240)は、座部51の対向する2辺から鉛直下方(放熱部材60側)に延伸するように設けられ、立設部230(240)の左(右)端部から、脚部胴体53a(54a)が設置されている。
【0051】
また、脚部胴体53a、53b(54a、54b)は立設部230(240)の左(右)端部から、鉛直下方(放熱部材60側)に延伸するように設けられ、さらに、座部51と保持部55、56との境界線と平行する方向(立設部230、240と直交する方向)まで、ほぼ直角に折り曲げて形成されている。
【0052】
また、脚部胴体53aの先端部には、係止用爪231が設置され、脚部胴体53a(54a)と直交する方向(立設部230と平行方向)に折り曲げられている。また、脚部胴体53a(54a)には、係止用爪231(241)の反対方向に延伸する小爪232(242)が設置される。
【0053】
保持部55、56、当該固定部57、58、放熱部材60及び係止穴63、64は、それぞれ第1の実施例の保持部15、16、当該固定部17、18、放熱部材20及び係止穴23、24と同一の機能、用途を有する。
【0054】
また、係止穴63、64は、放熱部材60に設けられ、係止用爪231、241が係止穴63、64の縁部に係止される。形状及び機能は、係止穴23、24と同一である。本実施例では、後述するように、2つの固定用ばね具50からそれぞれ1本ずつ係止用爪が係止穴に嵌入され、係止される。
【0055】
[放熱構造体の組立方法]
次に、図6及び図7を参照して、固定用ばね具50を用いて電子部品を固定する手順を説明する。
【0056】
まず、放熱部材60の上面に電子部品71、72を、下面に電子部品73、74を搭載する。放熱部材60と電子部品71乃至74の間隙には絶縁シート(図示せず)を挟んでもよい。
【0057】
次に、固定用ばね具50を放熱部材60の上側から嵌め合わせる。脚部53の先端の係止用爪231を係止穴63に、脚部54の先端の係止用爪241を係止穴64にそれぞれ嵌入させる。この時、係止穴63、64の凸の字状の穴の広い部分に係止用爪231、241、241bを挿入する。
【0058】
また、固定用ばね具50と同一の固定用ばね具50’とを倒置して配置し、固定用ばね具50の脚部胴体53a、54aと固定用ばね具50’の脚部胴体53a’、54a’脚部が図6及び図7に示すように、放熱部材60を挟んでお互いに対向するように配置する。
【0059】
そして固定用ばね具50’を放熱部材60の下側から嵌め合わせる。脚部53’の先端の係止用爪231’を係止穴63に、脚部54’の先端の係止用爪241’を係止穴64にそれぞれ嵌入させる。この時、係止穴63、64の凸の字状の穴の広い部分に係止用爪231’、241’を挿入する。よって、係止穴63には、係止用爪231及び係止用爪231’が一組となり嵌入されて係止し、係止穴64には係止用爪241及び係止用爪241’が一組となり嵌入されて係止される。
【0060】
このとき、放熱部材60の上面では、固定用ばね具50の固定部57は電子部品71の上面に接触し、固定部58は電子部品72の上面に接触し、放熱部材60の下面では、固定用ばね具50’の固定部57’は電子部品74の上面に接触し、固定部58’は電子部品73の上面に接触するようにそれぞれ配置される。
【0061】
このようして、図7に示すように、固定用ばね具50を2個使用し、放熱部材60の上面と下面にそれぞれ2個、合計4個の電子部品を固定することができる。
【0062】
[第3の実施例]
図9を用いて、本発明に係る第3の実施例を説明する。図9(A)に示すように、電子部品43、44の高さがh2と、電子部品41、42の高さh1(図4に示す)と異なる場合、脚部胴体13a、13b(14a、14b)に、立設部130(140)と係止用爪131a、131b(141a、141b)の間に、第二係止用爪138a、138b(148a、148b)を設置する。第二係止用爪138a、138b(148a、148b)を係止穴23(24)の辺に係止する。このように、組立完成時の座部11と放熱部材20の間隔をH2に調整し、電子部品43、44を固定することができる。
【0063】
[第4の実施例]
図9を用いて、本発明に係る第4の実施例を説明する。図9(B)に示すように、電子部品45、46の高さがh3と、電子部品41、42の高さh1(図4に示す)と異なる場合、係止用爪131a、131b(141a、141b)に代えて、脚部先端部139a、139b(149a、149b)を設置しても良い。脚部先端部は脚部胴体13a、13b(14a、14b)の先端を延伸したものであり、折り曲げが可能となっている。
【0064】
脚部先端部139a、139b(149a、149b)を係止穴23(24)に嵌入し、高さh3に適合するように、脚部先端部139a、139b(149a、149b)を折り曲げ、係止する。このように、組立完成時の座部11と放熱部材20の間隔をH3に調整し、電子部品45、46を固定することができる。また、脚部先端部139a、139b(149a、149b)の折り曲げ位置を任意に設定することができるので、電子部品45、46の高さh3がどの様な寸法の場合でも、柔軟に使用し、電子部品を固定することができる。
【0065】
また、係止穴23(24)の周辺(係止用爪が係止される部分)の放熱部材20の板厚を変えることにより、放熱部材20との間隔を調整してもよい。
【0066】
[他の実施例]
また、その他の実施例として、固定部17、18(57、58)を設けずに、保持部15、16(55、56)の端部で、電子部品41、42(71、72、73、74)を固定するようにしても良い。固定部17、18(57、58)の作製、材料等に係る負担を低減することができる。
【0067】
以上述べたように、本発明によれば、固定用ばね具に設けられた係止用爪と、放熱部材に設けられた係止穴を嵌合することで、電子部品を挟み込んで放熱部材に固定することができる。そのため、位置決めを容易にすることがでる。
【0068】
また、位置決め後の組立工程は、嵌合のみであるので、ねじ止めにより発生する部品の亀裂や歪みが発生することなく、組立工程及び作業工程を簡略化、効率化を図ることができる。
【0069】
また、固定用ばね具は、その構造が簡易であるので、複雑な製造工程を必要とせず、製造工程を簡略化することができ、量産性に優れる。また、ねじ等を使用しないため、部品数の削減及び製造工程の簡略化を計ることができる。
【0070】
また、1つの固定用ばね具で、複数の電子部品を放熱部材に係止することができる。固定用ばね具の脚部の数を変更することで、放熱部材に固定する電子部品の個数を調整することができる。
【0071】
また、電子部品が放熱部材と当接し、及び固定用ばね具の脚部と、放熱部材とが当接するので、固定ばね具に不意に過剰な圧力がかかっても、前記圧力は前記脚部と前記電子部品に分散されるので、電子部品に対して過剰な押圧がかかることがなく、電子部品の破壊を防ぐことができる。
【0072】
この発明は、その本質的特性から逸脱することなく数多くの形式のものとして具体化することができる。よって、上述した実施形態は専ら説明上のものであり、本発明を制限するものではないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0073】
1 放熱構造体
10 固定用ばね具
11 座部
13、14 脚部
13a、13b、14a、14b 脚部胴体
15、16 保持部
17、18 固定部
20 放熱部材
23、24、25 係止穴
41、42 電子部品
50 固定用ばね具
51 座部
53、54 脚部
53a、53b、54a、54b 脚部胴体
55、56 保持部
57、58 固定部
60 放熱部材
63、64 係止穴
71、72、73、74 電子部品
130、140 立設部
131a、131b、141a、141b 係止用爪
132a、132b、142a、142b 小爪
135a、135b、145a、145b 脚部当接部
136a、136b、146a、146b 脚部第二当接部
138a、138b 第二係止用爪
139a、139b 脚部先端部
153a、153b、154a、154b 係止穴当接部
230、240 立設部
231、241 係止用爪
232、232 第二係止用爪
411、421 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を当該電子部品と当接する平面を有する放熱部材に対して固定させるための固定ばね具であって、
前記放熱部材は係止穴を有し、
前記固定ばね具は、水平方向に拡がる座部と、
当該座部の対向する2辺から両翼の水平方向に対して側方に延伸するように設けられ、前記電子部品を前記放熱部材に対して押圧する保持部と、
前記座部の他の対向する2辺から鉛直下方に延伸するように設けられた脚部と、前記脚部から延伸する脚部胴体と、前記脚部胴体は先端に爪部を有し、
前記爪部と前記係止穴とが係止することで、前記保持部が前記電子部品を下方向に付勢し前記放熱部材に固定すること
を特徴とする固定ばね具。
【請求項2】
前記放熱部材を固定時に、前記保持部と前記放熱部材間の距離が前記電子部品の高さよりも短いことを特徴とする請求項1に記載の固定ばね具。
【請求項3】
前記座部に設けられた前記脚部は左右1対からなり、前記脚部胴体は、1の前記脚部に対して2本設けられたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の固定ばね具。
【請求項4】
前記座部に設けられた前記脚部は左右1対であり、前記脚部胴体は、1の前記脚部に対して1本設けられたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の固定ばね具。
【請求項5】
前記1本設けられた前記脚部胴体の前記爪部は、他の前記1本設けられた前記脚部胴体の前記爪部と対になり、1の前記係止穴に係止することを特徴とする請求項4に記載の固定ばね具。
【請求項6】
前記保持部の先端に、前記電子部品を面状に接触して固定するための、固定部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1に記載の固定ばね具。
【請求項7】
前記脚部胴体に複数の前記爪部を設けることによって、前記固定ばね具と前記放熱部材の係止位置を変えられることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1に記載の固定ばね具。
【請求項8】
前記爪部は前記脚部胴体の先端部を折り曲げることにより形成されたものであり、前記脚部胴体の先端部を折り曲げる位置を変えることによって、前記固定ばね具と前記放熱部材の係止位置を変えられることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1に記載の固定ばね具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−21083(P2013−21083A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152274(P2011−152274)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】