説明

電子部品の実装装置におけるフラックスの供給・回収装置

【課題】電子部品の種類に応じて、簡易な構造で転写に必要なフラックス量を可変的に供給することのでき、且つ、フラックス自体の品質の劣化を最小限に抑える。
【解決手段】フラックスFを載置可能で一方向に進行する移送ベルト12と、移送ベルト12の表面12Aに当接可能なブレード20を有すると共に、フラックスFを貯留可能なフラックスチャンバ14と、所定の位置P1から、移送ベルト12の進行方向をX1からX2に変更するベルトガイド機構16と、ブレードと前記所定の位置との距離L1を変更する駆動機構18と、を備える。前記距離L1の変更により、前記ブレード20と移送ベルトの表面12Aとの間に間隙60を可変的に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の実装装置においてフラックスの供給・回収を合理的に行う装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI、フリップチップ、抵抗チップ、チップコンデンサーなどの電子部品を基板の所定の位置に搭載するための実装装置が開示されている。この種の実装装置は、これらの電子部品を真空吸着するノズルを有する吸着ヘッドを備え、該吸着ヘッド(具体的にはヘッドを保持しているホルダ)のX−Y方向(水平駆動)及びZ軸方向(鉛直駆動)の移動と、該ヘッド自体のZ軸周りの回転(θ駆動)を組み合わせながら、パーツフィーダに供えられた電子部品を基板に搭載する。
【0003】
電子部品の実装方法として、半田接合を採用する場合、半田の接合性を向上させる目的で、ペースト状のフラックスを電子部品上のバンプに転写する方法が広く知られている。
【0004】
電子部品のバンプの大きさは電子部品の種類によって変わる。そのため、バンプに付着させるフラックスの量(フラックスの必要転写量)は、当該バンプの大きさに応じて変更する必要がある。
【0005】
特許文献1において、この目的を達成するために、図6に示されるようなフラックスの供給装置が開示されている。この供給装置110は、転写部113に、水平な膜厚基準面113aに対してそれぞれ異なる高さで設けられた複数の平坦な塗膜面113b〜13eを形成している。ここで、スキージ114の摺接部114cを塗膜基準面113aに接触させた状態で移動させると、塗膜面113b〜113e上に複数の膜厚が異なるフラックス膜を形成できる。
【0006】
品種切り替えの際においては、この複数のフラックス膜のいずれかの部分にまで電子部品を搭載した吸着ヘッドを移動し、そこで降下することにより適正量のフラックスを転写する。
【0007】
【特許文献1】特開2003−142814
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年の電子部品の実装は、ますます少量多品種の傾向が強くなっており、且つ1個1個の製品により高度な品質が求められるようになってきている。フラックスは、一般に腐食性を有するため、転写すべきバンプに対応して、必要最小限の転写が行われる必要がある。従って、電子部品の種類に応じて、よりきめ細かに転写する際のフラックスの供給量を変更・調整したいというニーズが高まっている。
【0009】
しかしながら、上述した特許文献1に係るフラックスの供給装置にあっては、膜厚の変更範囲、あるいは1段当たりの膜厚変化量が限定されてしまうため、多種類の膜厚を得ようとした場合には、装置がその分、比例的に大きく且つ複雑になってしまうという問題があった。
【0010】
また、装置の構造上、常にフラックスを広い平面に薄く塗布した状態に維持しておく必要があり、フラックス自体の品質が劣化しやすい、という問題もあった。
【0011】
本発明は、このような従来の問題を解消するためになされたものであって、電子部品の種類に応じて、簡易な構造で転写に必要なフラックス量を可変的に供給あるいは回収することができ、且つ、フラックス自体の品質の劣化を最小限に抑えることのできるフラックスの供給・回収装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、電子部品の実装装置におけるフラックスの供給装置において、フラックスを載置可能な所定の幅を有し、一方向に進行する移送ベルトと、該移送ベルトの表面に被さるように配置され、移送ベルトの表面に当接可能なブレードを有すると共に、フラックスを貯留可能なフラックスチャンバと、所定の位置から、前記移送ベルトの進行方向を、前記フラックスチャンバが存在する側と反対の側に変更するベルトガイド機構と、前記ブレードと前記所定の位置との距離を変更する駆動機構と、を備え、該駆動機構による前記距離の変更により、前記ブレードと該移送ベルトの表面との間に間隙を可変的に形成し、前記フラックスチャンバからフラックス転写部に対して、前記移送ベルトの表面上にフラックスを連続的に載置・供給可能としたことにより、上記課題を解決したものである。
【0013】
本発明においては、フラックスを載置した移送ベルトを特定の方向に進行させ、フラックス転写部に供給する。移送ベルトに載置されるフラックスの厚さは、フラックスチャンバに供えられたブレードと移送ベルトの表面との間に形成される間隙によって可変的に制御される。本発明では、この間隙の制御を、一般的な「ブレードの先端をフラックスの厚さ方向(ベルトの進行方向と直角の方向、またはその成分を含む方向)に移動する」という手法によってではなく、「所定の位置から移送ベルトの進行方向をフラックスチャンバが存在する方向と逆の方向に変え、この所定の位置とブレードとの相対的な距離を変える」という手法を採用している。これにより、結果として、ブレードと移送ベルトの表面との間隙が調整可能とされ、非常にデリケートな微調整を簡易な構造で実現することができる。
【0014】
また、転写に必要なフラックスのみをフラックス転写部に供給し、基本的に、大部分のフラックスがフラックスチャンバ内において貯留されるため、経時的な劣化を最小限に抑えることができる。
【0015】
本発明は、種々のバリエーションが考えられる。
【0016】
例えば、前記フラックスチャンバを、前記移送ベルトの進行方向を傾斜させた部分に配置すると共に、前記所定の位置に配置され前記ベルトガイド機構を構成するアイドラローラによって該移送ベルトの進行方向を水平に変更し、この水平部分に前記フラックス転写部を配置する構成としてもよい。
【0017】
前記ブレードと前記所定の位置との距離を変更する駆動機構が、前記所定の位置に対して、前記フラックスチャンバの前記移送ベルト上の配置位置を、前記ブレードごと移動させる構成とされていてもよい。
【0018】
前記移送ベルトの進行方向を変更するベルトガイド機構が、アイドラローラによって構成され、且つ、前記ブレードと前記所定の位置との距離を変更する駆動機構が、該アイドラローラの回転支持位置を前記ブレードに対して移動させる構成とされていてもよい。
【0019】
本発明は、また、電子部品の実装装置におけるフラックスの供給・回収装置において、フラックスを載置可能な所定の幅を有し、エンドレスに進行する移送ベルトと、該移送ベルトの表面に被さるように配置され、フラックスを貯留すると共に前記移送ベルト上に供給可能なフラックスチャンバと、を備え、フラックスの転写後に移送ベルト上に残存するフラックスを、前記フラックスチャンバの上流側に形成した回収口から、フラックスチャンバ内に回収可能としたことにより、同じく上記課題を解決したものである。
【0020】
この場合、例えば、前記フラックスチャンバの配置位置が、前記移送ベルトの表面に沿ってより上流側へ移動可能とされ、この移動に伴って前記回収口が開口する構成とされているとよい。
【0021】
本発明は、また、電子部品の実装装置におけるフラックスの供給・回収装置において、フラックスを載置可能な所定の幅を有し、エンドレスに進行する移送ベルトと、該移送ベルトの表面に被さるように配置され、移送ベルトの表面に当接可能なブレードを有すると共に、フラックスを貯留可能なフラックスチャンバと、所定の位置から、前記移送ベルトの進行方向を、前記フラックスチャンバが存在する側と反対の側に変更するベルトガイド機構と、前記フラックスチャンバを前記ブレードごと前記移送ベルトの表面に沿って移動可能とする駆動機構と、を備え、転写工程時に、前記フラックスチャンバを前記ブレードごと前記移送ベルト上の下流側へ移動させ、前記ブレードの前記所定の位置からの距離を調整することにより、ブレードと移送ベルトとの間にフラックスを供給可能な間隙を形成可能とし、転写工程完了後に、前記フラックスチャンバを前記ブレードごと前記移送ベルト上の上流側へ移動させ、前記所定の位置からブレードを遠ざけることによって該ブレードを移送ベルトの表面に当接させると共に、移送ベルト上に残存するフラックスを前記フラックスチャンバの上流側に形成した回収口から完全回収可能としたことにより、同じく上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0022】
電子部品の種類に応じて、簡易な構造で転写に必要なフラックス量を可変的に供給或いは回収することができ、且つ、フラックス自体の品質の劣化を最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下図面に基づいて本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0024】
図2は、本発明の実施形態に係るフラックスの供給・回収装置が適用されたフラックスの転写装置の一例を示す全体概略図、図3は、図2の矢視III方向から見た斜め平面図であり、図1は、図2の矢視I付近の要部拡大図である。
【0025】
このフラックスの転写装置10は、移送ベルト12と、フラックスチャンバ14と、ベルトガイド機構16と、駆動機構18と、を備える。
【0026】
前記移送ベルト12は、フラックスFを載置可能な所定の幅W1を有し(図3参照)、エンドレスに所定の方向Xに進行可能である。前記フラックスチャンバ14は、移送ベルト12の表面12Aに被さるように配置され、移送ベルト12の表面12Aに当接可能なブレード20を有する共に、フラックスFを貯留可能である。前記ベルトガイド機構16は、移送ベルト12の進行方向をフラックスチャンバ14が存在する側と反対の側に角度αだけ変更するもので、具体的にはアイドラローラ22によって構成されている。移送ベルト12の進行方向Xは、これにより、所定の位置P1以降、図のX1の方向からX2の方向(水平方向)へと変更される。前記駆動機構18は、フラックスチャンバ14をブレード20ごと移送ベルト12の表面12Aに沿って図のX1の方向に往復動させ、ブレード20と前記所定の位置P1との距離L1を変更する。
【0027】
以下、各部の構成についてより詳細に説明する。
【0028】
フレーム30には、モータM1に連結された駆動ローラ32及び従動ローラ34が設けられている。従動ローラ34の回転により、アイドラローラ36及び前述したアイドラローラ22を介して移送ベルト12がほぼ3角形状にエンドレスに回転する。移送ベルト12はアイドラローラ36の軸36Aに付いているテンショナねじ38により一定の張力で張られている。移送ベルト12の幅W1は、フラックスチャンバ14の幅W2より大きく設定されている(図3参照)。
【0029】
アイドラローラ36、22の間における移送ベルト12の内側にはバックアッププレート40が配置されている。このバックアッププレート40は、アイドラローラ36を基点として傾斜しており、その上面はアイドラローラ36及び22との接線上に位置決めされている。フラックスチャンバ14は、この移送ベルト12の進行方向XがX1の方向(角度)に傾斜された部分に配置されている。
【0030】
また、アイドラローラ22と従動ローラ34との間の移送ベルト12の内側にはバックアッププレート42が水平に配置されている。このバックアッププレート42は、その上面がアイドラローラ22と従動ローラ34との接線上に且つ水平に位置決めされている。フラックス転写部Aは、このアイドラローラ22によって移送ベルト12の進行方向が水平のX2方向に変更された部分に配置されている。
【0031】
フラックスチャンバ14にはベルト進行方向をX1に対して前面壁46、上面壁48、右面壁50、左面壁52の4面を有し、下面側は移送ベルト12に対して開口している。
このうち前面壁46は、前記ブレード20と一体化され、後面壁は後述する回収ゲート72が兼用している。フラックスチャンバ14の下面の開口部は、ベルト進行方向下流側(供給側)はW3、上流側(回収側)はW4であって、上流側の方が広く形成されている。チャンバヒンジ54がチャンバフック部55に引っ掛かることで、フラックスチャンバ14がフレーム30に対して位置決めされている。
【0032】
チャンバヒンジ54の両端にはスプリング58がかけられている。スプリング58は、チャンバヒンジ54及びチャンバフック部55を介してフラックスチャンバ14をバックアッププレート40上を通る移送ベルト12側に押し付ける機能を有し、フラックスチャンバ14はフラックスベルト12の表面12Aに密着している。
【0033】
フラックスチャンバ14は、前記駆動機構18の主たる構成要素であるチャンバ移動モータM2及びチャンバ移動ねじ59により、バックアッププレート40の上面に倣って(ブレード20ごと)往復動する。フラックスチャンバ14が下流側に移動してブレード20の先端20Aが前記所定の位置P1を超えてアイドラローラ22のR部にさしかかると、移送ベルト12の表面12Aとの間に間隙60が生ずる構成とされている。フラックスチャンバ14の移動量、すなわちブレード20の先端20Aと所定の位置P1との距離(先端20Aの所定の位置P1からのオーバーハング)L1に応じて、間隙60の高さS(フラックス膜Ffの厚さtに相当)を任意に調整できる。
【0034】
なお、移送ベルト12が回転すると、フラックスチャンバ14内のフラックスFは移送ベルト12に粘着しながら間隙60を通過する。フラックス膜Ffは、間隙60とフラックス供給側の開口幅W3によって規制されため、移送ベルト12上に間隙60の高さSに相当する厚さtで、幅が供給側の開口幅W3のシート状に整形された状態でフラックスチャンバ14から供給されることになる。
【0035】
アイドラローラ22の下流側には、間隙60から出てくるフラックス膜Ffの厚さtを検出するための膜厚検出センサ62が配置されている。膜厚検出センサ62で計されたフラックス膜Ffの厚さtが転写対象のバンプに最適な膜厚と異なっている場合には、チャンバ移動モータM2をフィードバック制御し、オーバーハングL1を変更することによって間隙60の高さSを調整する構成とされている。
【0036】
チャンバ移動フレーム64は、ガイドレール66によってガイドされ、チャンバ移動モータM2により待機位置からフラックス膜形成位置までバックアッププレート40と平行に往復動する。フラックスチャンバ14が該チャンバ移動フレーム64と連動して上流側に移動すると、回収ゲートピン68がゲートスプリング69の付勢力に逆らって回収ゲート開閉カム70により押し上げられるようになっている。この結果、回収ゲートピン68と一体化されている回収ゲート72がゲートヒンジ73を中心として押し開かれ、フラックス回収口74を介して戻ってきたフラックス(転写後に移送ベルト上に残存するフラックス)Fをフラックスチャンバ14内に回収する構成とされている。
【0037】
なお、図2の符号78は吸着ヘッド、80はノズル、82は電子部品、84はバンプをそれぞれ示している。
【0038】
次にこのフラックスの転写装置10の作用を説明する。
【0039】
フラックスチャンバ14は、図4(A)で示す待機位置では、間隙60は閉じており、また回収ゲート74も閉じており、フラックスFの乾燥を防ぐために密閉状態となっている。移送ベルト12は、この時点では回転していない。フラックス転写を行うべき電子部品82が選択されると、吸着ヘッド78が、図示せぬ部品供給装置から該当する電子部品82を吸着し、フラックス転写部Aに搬送する。フラックス転写部Aでは、チャンバ移動モータM2によりフラックスチャンバ14が図4(B)で示すフラックス膜形成位置にまで移動し、ブレード20の先端20Aがアイドラローラ22の軸心に対応する所定の位置P1を通過すると、移送ベルト12との間に間隙60が生ずるようになる。所定の位置P1とブレード20の先端20との距離(オーバーハング)L1に応じて間隙60の高さSが変化する。ここで移送ベルト12が回転を始める。
【0040】
一方、電子部品82のバンプ84の大きさに応じたフラックス膜Ffの形成厚さtに関するデータが図示せぬ制御部から贈られ、必要とされる厚さt(幅W3)のフラックス膜Ffが形成される。膜厚検出センサ62がフラックスチャンバ14から出てくるフラックス膜Ffの厚さtを測定し、チャンバ移動モータM2の制御部へフィードバックしてオーバーハングL1を調整し、間隙60の高さSをコントロールするため、精度の高いフラックス膜Ffを形成することができる。
【0041】
膜厚検出センサ62によって形成されたフラックス膜Ffの厚さtが意図する値に安定したことが確認されると、移送ベルト12を停止して吸着ヘッド78を下降させ、電子部品82のバンプ84を移送ベルト12に接触するまで下降する。フラックス転写部Aにおける移送ベルト12は、バックアッププレート42によって水平にバックアップされているため、電子部品82がノズル80に対して若干斜めに吸着されているような場合であっても、このバックアッププレート42側からの反力を受けて電子部品82は正しく水平に矯正された状態でフラックスFの転写を受けることができる。
【0042】
転写が完了すると、吸着ヘッド78は上昇し、バンプ84は移送ベルト12から離れる。図4(B)は、転写が完了してバンプ84にフラックスFが転写された状態を示している。移送ベルト12が回転すると、新しいフラックス膜Ffが次々と連続的に形成されるため、フラックス転写は連続して行うことができる。また、転写すべき電子部品が変わって形成すべきフラックス膜Ffの厚さtが異なっても、チャンバ移動モータM2の駆動によってオーバーハングL1を変更し、間隙60の高さSを変えることにより、容易に対応できる。
【0043】
一連の転写工程が終了すると、フラックスチャンバ14は、図4(C)に示すフラックス回収位置に移動し、間隙60を閉じる。従って、新たなフラックス膜Ffの形成がここで中止される。しかしながら、この位置では、回収ゲートピン68が回収ゲート開閉カム70によって押し上げられた状態とされているため、回収ゲート72がゲートヒンジ73を中心として開かれた状態を維持しているため、フラックス回収口74から戻ってきたフラックスFが回収される。
【0044】
移送ベルト12が一周分以上回転してフラックスFの回収が完了すると、フラックスチャンバ14は図4(A)に示す待機状態に戻り、フラックス回収口74がゲートスプリング69の作用によって閉じられ、フラックスチャンバ14が密閉される。このように、フラックスチャンバ14内のフラックスFは、基本的に必要なときにのみ移送ベルト12上に載置されるが、1周するたびにフラックスチャンバ14に回収され、転写工程が終了すると完全に密閉された状態に保管されることになる。そのため、品質劣化を最小限に抑えることができる。
【0045】
なお、上記実施形態においては、移送ベルト12が傾斜している部分にフラックスチャンバ14の配置を配置し、アイドラローラ22に移送ベルト12のエンドレスの回転機構の一部を構成する機能と移送ベルト12の進行方向を変更するためのベルトガイド機構を構成する機能とを兼用させるようにして、構成の簡略化を図っていたが、本発明に係るフラックスの供給・回収措置は、フラックスチャンバを必ずしも傾斜させた部分に配置する必要はない。例えば、図5に示されるように、フラックスチャンバ90自体は水平を維持した状態で配置し、アイドラローラ92によって水平より下側(フラックスチャンバ90が存在する側と反対の側)に向けて進行方向を変更する(X3→X4)ようにしても、オーバーハングL2の調整により間隙94の高さを調整することができ、同様な作用効果が得られる。
【0046】
この実施形態の場合、フラックスチャンバ90が水平に配置されているため、フラックスFの粘度(或いはちょう度)によっては、該フラックスFを、より確実にフラックスチャンバ90内に収容することができる。なお、この構成を採用する場合、下降部分96にはバックアッププレート98を配置するとよい。
【0047】
また、上記実施形態においては、ブレード20の先端20Aと移送ベルト12の進行方向の変更が開始される所定の位置P1との距離(オーバーハング)L1を変更するために、所定の位置P1に対してブレード20を含むフラックスチャンバ14が移動するようにしていた。しかしながら、この距離(オーバーハング)は、例えば、図5の矢印Xpで示されるように、フラックスチャンバ90を固定的に配置した状態で、アイドラローラ92の軸心位置92Aを変更するようにしても調整可能である。なお、この場合、アイドラローラ92の軸心92Aとバックアッププレート98、更にはアイドラローラ99等を一緒に移動させるようにするのが好ましい。アイドラローラ92の軸心92Aの位置を変更すると、移送ベルト12の張力が変化するが、この点に関しては、図示せぬスプリング等を有する公知の自動張力調整機構を適宜に組み合わせればよい。この構成は、可動部分が少ないため、より低コスト化が実現できる場合がある。なお、回収ゲート95は、図示せぬ別途のモータ等で開閉する。
【0048】
更に、上記実施形態においては、移送ベルト12の進行方向の変更を、アイドラローラ22を利用して行うようにしていたが、本発明においては、移送ベルトの進行方向をフラックスチャンバが存在する側と逆の側に変更する構成についても、この方法に限定されない。例えば、図5のアイドラローラ92に代え、摩擦係数の小さな素材で所望の(変更させようとする)形状に形成したバックアッププレート(図示略)を、この位置に移送ベルト12の背面側から当接させるようにしても進行方向を変更することができる。この方法は、特に間隙94付近の移送ベルト12の挙動を安定させることができるため、間隙94の高さ調整を、より正確且つ少ないばらつきで行うことができる。
【0049】
また、上記実施形態では、転写の際、移送ベルト12を停止させるようにしていたが、これを停止させずに、吸着ヘッド78を移送ベルト12の進行と同期して移動させながら降下させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
電子部品の実装装置において該電子部品のバンプにフラックスを転写する装置に適応できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態に係るフラックスの供給・回収装置が適用されたフラックス転写装置の要部拡大断面図
【図2】上記転写装置の全体概略正面図及び矢視IIA視図
【図3】上記転写装置の矢視III視図
【図4】上記転写装置におけるフラックスの供給・回収作用を説明するための工程図
【図5】本発明の他の実施形態に係るフラックス供給・回収装置の構成例を示す要部概略正面図
【図6】従来のフラックス供給装置の構成を示す斜視図
【符号の説明】
【0052】
12…移送ベルト
14…フラックスチャンバ
16…ベルトガイド機構
18…駆動機構
20…ブレード
22…アイドラローラ
30…フレーム
32…駆動ローラ
34…従動ローラ
36…アイドラローラ
38…テンショナねじ
40、42…バックアッププレート
60…間隙
70…回収ゲート開閉カム
72…回収ゲート
74…フラックス回収口
82…電子部品
84…バンプ
P1…所定の位置
L1…距離(オーバーハング)
F…フラックス
Ff…フラックス膜
S…間隙の高さ
t…フラックス膜の厚さ
W3…フラックス膜の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の実装装置におけるフラックスの供給装置において、
フラックスを載置可能な所定の幅を有し、一方向に進行する移送ベルトと、
該移送ベルトの表面に被さるように配置され、移送ベルトの表面に当接可能なブレードを有すると共に、フラックスを貯留可能なフラックスチャンバと、
所定の位置から、前記移送ベルトの進行方向を、前記フラックスチャンバが存在する側と反対の側に変更するベルトガイド機構と、
前記ブレードと前記所定の位置との距離を変更する駆動機構と、を備え、
該駆動機構による前記距離の変更により、前記ブレードと該移送ベルトの表面との間に間隙を可変的に形成し、前記フラックスチャンバからフラックス転写部に対して、前記移送ベルトの表面上にフラックスを連続的に載置・供給可能とした
ことを特徴とする電子部品の実装装置におけるフラックスの供給装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記フラックスチャンバを、前記移送ベルトの進行方向を傾斜させた部分に配置すると共に、前記ベルトガイド機構を構成するアイドラローラによって該移送ベルトの進行方向を水平に変更し、この水平部分に前記フラックス転写部を配置した
ことを特徴とする電子部品の実装装置におけるフラックスの供給装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記ブレードと前記所定の位置との距離を変更する駆動機構が、前記所定の位置に対して、前記フラックスチャンバの前記移送ベルト上の配置位置を、前記ブレードごと移動させる構成とされている
ことを特徴とする電子部品の実装装置におけるフラックスの供給装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記移送ベルトの進行方向を変更するベルトガイド機構が、アイドラローラによって構成され、且つ、
前記ブレードと前記所定の位置との距離を変更する駆動機構が、該アイドラローラの回転支持位置を前記ブレードに対して移動させる構成とされた
ことを特徴とする電子部品の実装装置におけるフラックスの供給装置。
【請求項5】
電子部品の実装装置におけるフラックスの供給・回収装置において、
フラックスを載置可能な所定の幅を有し、エンドレスに進行する移送ベルトと、
該移送ベルトの表面に被さるように配置され、フラックスを貯留すると共に前記移送ベルト上に供給可能なフラックスチャンバと、を備え、
フラックスの転写後に移送ベルト上に残存するフラックスを、前記フラックスチャンバの上流側に形成した回収口から、フラックスチャンバ内に回収可能とした
ことを特徴とする電子部品の実装装置におけるフラックスの供給・回収装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記フラックスチャンバの配置位置が、前記移送ベルトの表面に沿ってより上流側へ移動可能とされ、この移動に伴って前記回収口が開口する構成とされた
ことを特徴とする電子部品の実装装置におけるフラックスの供給・回収装置。
【請求項7】
電子部品の実装装置におけるフラックスの供給・回収装置において、
フラックスを載置可能な所定の幅を有し、エンドレスに進行する移送ベルトと、
該移送ベルトの表面に被さるように配置され、移送ベルトの表面に当接可能なブレードを有すると共に、フラックスを貯留可能なフラックスチャンバと、
所定の位置から、前記移送ベルトの進行方向を、前記フラックスチャンバが存在する側と反対の側に変更するベルトガイド機構と、
前記フラックスチャンバを前記ブレードごと前記移送ベルトの表面に沿って移動可能とする駆動機構と、を備え、
転写工程時に、前記フラックスチャンバを前記ブレードごと前記移送ベルト上の下流側へ移動させ、前記ブレードの前記所定の位置からの距離を調整することにより、ブレードと移送ベルトとの間にフラックスを供給可能な間隙を形成可能とし、
転写工程完了後に、前記フラックスチャンバを前記ブレードごと前記移送ベルト上の上流側へ移動させ、前記所定の位置からブレードを遠ざけることによって該ブレードを移送ベルトの表面に当接させると共に、移送ベルト上に残存するフラックスを前記フラックスチャンバの上流側に形成した回収口から完全回収可能とした
ことを特徴とする電子部品の実装装置におけるフラックスの供給・回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−103865(P2007−103865A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−295307(P2005−295307)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】