説明

電子部品の帯電防止用包装材

【課題】透明性と長期寿命の特性を満足する帯電防止用包装材を提供する。
【解決手段】内側層1と、この内側層1を挟むように配置される一対の外側層2とで帯電防止用包装材10を構成し、内側層1が単独重合型のポリプロピレン系樹脂で形成され、外側層2が共重合型のポリプロピレン系樹脂に高分子型帯電防止剤を配合してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品の帯電防止用包装材に関し、更に詳しくは、多層構造を持つ帯電防止用包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品に対して静電破壊を引き起こす要因となる静電気への対策は、電子部品製造時の品質管理における必須事項である。特に、電子部品の保護のために使用される包装材は、作業者が触れる機会が多いために、帯電する頻度も高い。
【0003】
従来、ポリプロピレンなどの電気絶縁性を持つ樹脂を用いた帯電防止性樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。この帯電防止性樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂と、ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体などの高分子型帯電防止剤と、充填剤の合計を100重量%とするとき、ポリプロピレン系樹脂が5〜30重量%、高分子型帯電防止剤が50〜80重量%、充填剤が20〜50重量%の割合で配合されている。そして、このような帯電防止性樹脂組成物で形成された帯電防止層を、熱可塑性樹脂層の少なくとも片面に、積層して作製した多層シートがある。
【0004】
この他に、内層として、Mw/Mn(高分子の分子量分布の広がり程度を表す)が3以下のシングルサイト触媒により重合されたプロピレン−αオレフィン共重合体100〜50重量%と、ポリオレフィン系樹脂0〜50重量%とからなるシートを有し、このシートを挟む外層のいずれかにポリプロピレン系樹脂に、高分子帯電防止剤の濃度が12.2〜35.0重量%の割合の範囲で配合されたHaze値が20以下である帯電防止用シートを積層したものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−239635号公報
【特許文献2】特開2008−274031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1、2に記載の帯電防止用の樹脂組成物を用いたシートを包装材とした場合、経年劣化を起こす虞があり、また、透明性と経年劣化との関係も把握されていないものであった。特に、電子部品を包装する場合は、帯電防止用包装材の透明性と長期寿命の特性を満足することが重要である。
【0007】
そこで、本発明の目的は、透明性と長期寿命の特性を満足する帯電防止用包装材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴は、帯電防止用包装材であって、単独重合型のポリプロピレン系樹脂でなる内側層と、この内側層を挟むように両側に配置される、共重合型のポリプロピレン系樹脂に高分子型帯電防止剤を配合してなる一対の外側層と、を備えることを要旨とする。
【0009】
プロピレンのみを重合してなる単独重合型のポリプロピレン系樹脂は剛性が高く、共重合型のポリプロピレン系樹脂は透明性が高い性質を有する。本発明では、単独重合型のポリプロピレン系樹脂で、芯材となる内側層を形成したことにより、3層構造を有する帯電防止用包装材全体の剛性を保つことができる。また、外側層を共重合型のポリプロピレン系樹脂で形成したことにより、帯電防止用包装材の透明性を保つことができる。
【0010】
また、高分子型帯電防止剤は、共重合型のポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、15〜30重量部配合されていることが好ましい。高分子帯電防止剤の配合重量部数範囲を15〜30重量部とすることで、透明性および帯電防止性能および長期寿命の特性を兼ね備えることができる。
【0011】
さらに、外側層の厚さは0.03〜0.05mm、かつ内側層の厚さは0.10〜0.14mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、透明性および帯電防止性能および長期寿命の特性を兼ね備えた帯電防止用包装材を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る帯電防止用包装材の断面説明図である。
【図2】本発明の実施例2に係る帯電防止用包装材の予測寿命を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る帯電防止用包装材について図1を用いて説明する。本実施の形態に係る帯電防止用包装材10は3層構造をなす。
【0015】
図1に示すように、帯電防止用包装材10は、内側層1と、この内側層1を挟むように配置される一対の外側層2とで構成されている。内側層1は、単独重合型のポリプロピレン系樹脂で形成されている。外側層2は、共重合型のポリプロピレン系樹脂に高分子型帯電防止剤を配合してなる。
【0016】
単独重合型のポリプロピレン系樹脂として、プロピレンホモポリマー(プロピレン単独の重合体)を用いる。共重合型のポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンコポリマー(プロピレン系共重合体)であってもよい。コポリマーとしては、プロピレンとα−オレフィン類[例えば、エチレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチルペンテン、4−メチルペンテン、4−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセンなどのプロピレン以外のα−C2−16オレフィン(特にα−C2−6オレフィン)など]との共重合体、例えば、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・ブテンランダム三元共重合体などが挙げられる。共重合体の形態は、ブロック共重合体、ランダム共重合体のいずれでもよい。
【0017】
高分子型帯電防止剤は、ポリエーテルエステルアミド系、エチレンオキシド−エピクロルヒドリン系、ポリエーテルエステル系、ポリスチレンスルホン酸系、四級アンモニウム塩基含有アクリレート重合体系のうちから選ばれることが好ましい。
【0018】
また、高分子型帯電防止剤は、共重合型のポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、15〜30重量部配合されていることが好ましい。高分子帯電防止剤の配合重量部数範囲を15〜30重量部とすることで、透明性および帯電防止性能および長期寿命の特性を兼ね備えることができる。
【0019】
さらに、外側層の厚さは0.03〜0.05mm、内側層の厚さは0.10〜0.14mmであることが好ましい。
【0020】
単独重合型のポリプロピレン系樹脂は剛性が高く、共重合型のポリプロピレン系樹脂は透明性が高い性質を有する。単独重合型のポリプロピレン系樹脂で、芯材となる内側層を形成したことにより、3層構造を有する帯電防止用包装材全体の剛性を保つことができる。また、外側層を共重合型のポリプロピレン系樹脂で形成したことにより、帯電防止用包装材の透明性を保つことができる。
【0021】
したがって、本実施の形態に係る帯電防止用包装材によれば、透明性および帯電防止性能および長期寿命の特性を兼ね備えるため、電子部品を包装したときに、経年劣化を抑制でき、電子部品の視認性を高めることができる。
【0022】
[実験例]
次に、実験例について説明する。この実験例では、上記実施の形態に係る帯電防止用包装材10の内側層1と外側層2の材料および厚み、帯電防止剤の材料および配合量を互いに変えた実施例1〜5および比較例1〜12を用意して、表面抵抗値およびHaze(濁度)の測定を行った。表面抵抗値は、JIS K6723に準拠して測定した。また、Haze(濁度)は、JIS K7195に準拠して測定した。
【0023】
(実施例1〜5)
実施例1〜5では、内側層として単独重合型のポリプロピレン系樹脂(プライムポリプロF113G;プライムポリマー社製)を用い、外側層として共重合型のポリプロピレン系樹脂(プライムポリプロF227D;プライムポリマー社製)を用いた。なお、このポリプロピレン系樹脂(プライムポリプロF227D;プライムポリマー社製)は、プロピレンと1−ブテンとの共重合体であり、共重合体の形態はランダム型である。高分子帯電防止剤は、共重合型のポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、15重量部、30重量部配合したものを用いた。
【0024】
実施例1〜5では、内側層の厚みを0.10〜0.14mm、外側層の厚みを0.03〜0.05mmとした。因みに、3層構造の帯電防止用包装材としては、実施例1〜5全て0.20mmとした。
【0025】
(比較例1〜12)
比較例1〜12では、内側層と外側層のうち、一方が単独重合型のポリプロピレン系樹脂(プライムポリプロF113G;プライムポリマー社製)でなり、他方が共重合型のポリプロピレン系樹脂(プライムポリプロF227D;プライムポリマー社製)でなる。なお、このポリプロピレン系樹脂(プライムポリプロF227D;プライムポリマー社製)は、プロピレンと1−ブテンとの共重合体であり、共重合体の形態はランダム型である。高分子帯電防止剤は、内側層を構成するベース樹脂100重量部に対して、0〜15重量部、30〜40重量部配合したものを用いた。また、これら比較例1〜12では、内側層の厚みを0.08、0.10、0.14、0.16mm、外側層の厚みを0.02〜0.06とした。因みに、3層構造の帯電防止用包装材としては、実施例1〜5全て0.20mmとした。
【0026】
以下に、この実験例で用いた内側層、外側層および帯電防止剤の材料について下表1に示す。また、比較例1〜6および実施例1〜3を下表2に、実施例4、5、および比較例7〜12を下表3に示す。さらに、実施例1〜5および比較例1〜12の帯電防止性能、透明度、および総合判定の結果を表4に示す。
【表1】

【0027】
なお、上記表1に記載された高分子型帯電防止剤であるペレスタットは、ポリエーテルエステルアミド系であり、ENTIRA ASはポリスチレンスルホン酸系である。
【表2】

【表3】

【表4】

【0028】
以上の実験例の結果から判るように、実施例1〜5では、単独重合型のポリプロピレン系樹脂で、芯材となる内側層を形成したことにより、3層構造を有する帯電防止用包装材全体の剛性を保つことができる。また、外側層を共重合型のポリプロピレン系樹脂で形成したことにより、帯電防止用包装材の透明性を保つことができる。
【0029】
また、高分子型帯電防止剤は、共重合型のポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、15〜30重量部配合されていることが好ましい。高分子帯電防止剤の配合重量部数範囲を15〜30重量部とすることで、透明性および帯電防止性能および長期寿命の特性を兼ね備えることができる。
【0030】
さらに、外側層の厚さは0.03〜0.05mm、かつ内側層の厚さは0.10〜0.14mmであることが好ましいことが判った。帯電防止用包装材の厚みは0.16〜024mmの範囲となることが好ましく、特に実施例1〜5では0.2mmに設定したことにより、電子部品の包装材として十分な剛性を保つことができた。なお、帯電防止用包装材を構成する各層の厚みは、上記範囲より薄すぎると帯電防止用包装材が軟らかくなりすぎ、上記範囲より厚くなると透明性が低下する。
【0031】
(経年劣化評価)
ここで、実施例2を用いて、経年劣化に伴う表面抵抗値の低下を加速度試験により測定し、実施例2が気温40℃状況下で良判定基準以下になるまでの予測寿命をアレニウスプロットを用いて計算した。
【0032】
試験方法は、80℃、72℃、64℃に設定したギヤオーブンに、実施例2の帯電防止用包装材を投入し、表面抵抗値が1.0×1011以上になるまで放置した。
【0033】
この結果、図2に示すように、40℃環境下で約300,000時間(35年間)の寿命があることが予測された。
【0034】
以上のように、実施例1〜5に係る帯電防止用包装材では、透明性および帯電防止性能および長期寿命の特性を兼ね備えた帯電防止用包装材を実現することができる。
【符号の説明】
【0035】
10…帯電防止用包装材
1…内側層
2…外側層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単独重合型のポリプロピレン系樹脂でなる内側層と、
前記内側層を挟むように両側に配置される、共重合型のポリプロピレン系樹脂に高分子型帯電防止剤を配合してなる一対の外側層と、
を備えることを特徴とする帯電防止用包装材。
【請求項2】
前記高分子型帯電防止剤は、ポリエーテルエステルアミド系、エチレンオキシド−エピクロルヒドリン系、ポリエーテルエステル系、ポリスチレンスルホン酸系、四級アンモニウム塩基含有アクリレート重合体系のうちから選ばれることを特徴とする請求項1に記載の帯電防止用包装材。
【請求項3】
前記高分子型帯電防止剤は、共重合型のポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、15〜30重量部配合されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の帯電防止用包装材。
【請求項4】
前記外側層の厚さは0.03〜0.05mm、前記内側層の厚さは0.10〜0.14mmであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の帯電防止用包装材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−105330(P2011−105330A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260631(P2009−260631)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】