説明

電子部品の搭載方法

【課題】ACFを用いて、電子部品を回路基板に、確実に信頼性良く導通接続し、且つ、容易に搭載できる電子部品の搭載方法を提供する。
【解決手段】転移ステーションを一対の支持ローラ13a、13bにより支持されて水平方向に搬送されるACFテープ2に対して、吸着ヘッド411先端面にドライバチップ8を吸着した熱圧着ツールを下降させ、ドライバチップ8の導通接合面81をACFテープのACF層22に押し当て、45〜55℃の範囲内の温度に加熱しつつ40〜60kgf/cm2の範囲内の圧力で約4〜6秒間だけ押圧し、導通接合面81にそれと略同じ面積のACFを型抜きするように転移させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、異方性導電接着剤を用いた電子部品の搭載方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICチップ等の半導体素子を電子回路基板に搭載する際の導通接合材料として、作業性に優れた異方性導電接着フィルム(以下、ACF:Anisotropic Conductive Filmという)が用いられている。このACFは、バインダーとしての熱硬化性樹脂中に平均粒径が5μm程度の導電性粒子を分散混合し、フィルム状に成形したものである。
【0003】
このACFを用いて半導体素子を電子回路基板に搭載する際は、通常、特許文献1に示されるように、電子回路基板上に配置する際の位置ずれを見込んで、半導体素子の導通接合面よりも大面積のACFを前記電子回路基板の搭載位置に配置し、このACFの上から前記半導体素子を載置する方法が行われている。
【特許文献1】特開平11−3910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この方法において、半導体素子をその導通接合面よりも大面積のACF上に載置し、その半導体素子を熱圧着ツールで押圧すると、導通接合面から食み出したACFが熱圧着ツールの押圧面に付着し、押圧面と半導体素子の表面との平行度を狂わせ、その結果、半導体素子の熱圧着接合に導通不良等の不具合が発生する。
【0005】
また、食み出したACFは、充分に加熱されていない為に未硬化状態であり、未硬化のACFは経時的に吸湿し易いため電子回路基板上の配線を腐食させる原因となる。
【0006】
本発明の目的は、ACFを用いて、電子部品を回路基板に、確実に信頼性良く導通接続して搭載できる電子部品の搭載方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の電子部品の搭載方法は、ベースフィルム上に熱硬化性樹脂中に導電性粒子を分散混合してなる異方性導電接着剤が被着された導通接合用テープを、所定の経路に沿って搬送する工程と、電子部品を所定の温度に加熱しつつその導通接合面を前記テープの異方性導電接着剤に所定の圧力で圧接させ、圧接したエリアの異方性導電接着剤を前記導通接合面に転移させる工程と、前記異方性導電接着剤を前記導通接合面に転移させた電子部品を、搭載対象デバイスの搭載位置に移動させて前記電子部品を前記搭載位置に載置する工程とを、有することを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に記載の電子部品の搭載方法は、請求項1の電子部品の搭載方法において、異方性導電接着剤を前記導通接合面に転移させる工程の、前記電子部品を圧接させる圧力が40〜60kgf/cm2の範囲内に、前記温度が50〜60℃の範囲内に、それぞれ設定されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電子部品の搭載方法によれば、電子部品を回路基板に、確実、且つ信頼性良く容易に導通接合することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は液晶表示モジュール製造方法における本発明の一実施形態としてのドライバチップ載置工程を示す平面図で、図2(a)〜(c)はそれぞれその要部プロセスにおける動作を段階毎に示す各段階斜視図、図3(a)、(b)はそれぞれ上記要部プロセスにおける更に要部の動作を拡大して段階毎に示す各段階説明図、図4(a)〜(c)はそれぞれ上記載置工程における各作業ステーションを示す平面図である。
【0011】
図1において、1はACFテープ2を所定の経路に沿って走行させるテープ搬送装置である。このテープ搬送装置1は、繰出しリール11と巻取りリール12及び一対の支持ローラ13a、13b等を備え、図示しない駆動装置により巻取りリール12が駆動回転され、これに追従回転する繰出しリール11からACFテープ1が繰り出され、一対の支持ローラ13a、13bを経て巻取りリール12により巻き取られる。この場合、ACFテープ2が一定速度で走行するように、巻取りリール12の回転速度が駆動制御されている。なお、一対の支持ローラ13a、13bは、ACFテープ2を弛みなく常に一定の高さで水平に走行させるために設けられている。
【0012】
ACFテープ2は、図3(a)、(b)に示されるように、セパレータを兼ねるテフロン(登録商標)製のベースフィルム21の表面に、異方性導電接着剤の表面層(以下、ACF層という)22が被着されている。この異方性導電接着剤は、バインダーとしてのエポキシ樹脂中に平均粒径が5μm程度の金メッキ処理したアクリル樹脂フィラーを導電性粒子として分散混合したものである。
【0013】
一対の支持ローラ13a、13bの中間位置には、ACFの転移ステーションが設けられている。この転移ステーションにおいては、図2(a)に示されるように、支持台3が設置されている。図3(a)に示されるように、この支持台3の表面と、支持ローラ13a、13b間を一定の張力で支持され走行するACFテープ2との間には、テープの厚さtの約3倍程度の間隙Dが確保されている。
【0014】
本実施形態の熱圧着装置4は、熱圧着ツール41とこれを昇降移動させるアクチュエータ42、及び熱圧着ツール41をアクチュエータ42を介して保持する保持ブロック43とからなる。熱圧着ツール41は、吸着ヘッド411とツール本体412からなり、図示しない真空吸着機構とヒータが内蔵されている。
【0015】
上述の熱圧着装置4は、図1に示されるように、ACFテープ2の走行経路とは直角方向に延在設置されたレール5上を往復移動可能に図示しないキャリッジ上に設置されている。また、この熱圧着装置4は、キャリッジに立設された軸44により回転自在に枢支されている。
【0016】
ACFテープ2の走行経路と平行に、液晶表示パネル6の搬送ベルト7が延在設置され、これらの間に、ドライバチップ8の搬送ベルト9が延在設置されている。これらの搬送ベルト7、9は、共に、ACFテープ2の走行方向と同じ方向に走行移動され、その動作は図示しない駆動制御装置によって所定の駆動プログラムに従い制御される。
【0017】
液晶表示パネル6の搬送ベルト7は、前記レール5の転写ステーション側とは反対側の先端部とその下方で交差し、そのレール5の先端前方がドライバチップ8の載置ステーションとなる。ドライバチップ8を搭載するために前記載置ステーションに供給される液晶表示パネル6は、搬送ベルト7上の所定位置に等間隔で載置され、所定のインターバルで間欠搬送される。
【0018】
ドライバチップ8の搬送ベルト9は、前記レール5の下方を走行し、その交差部がドライバチップ8の吸着ステーションとなる。この吸着ステーションに供給されるドライバチップ8も、搬送ベルト9上の所定位置に等間隔で載置され、所定のインターバルで間欠搬送される。
【0019】
次に、上述のように構成されたドライバチップ載置工程において実施されるチップ載置方法について、説明する。
【0020】
まず、図4(a)に示すように、熱圧着装置4をその熱圧着ツール41の吸着ヘッド411先端面がチップ吸着ステーションの上方に位置した状態で停止させ、熱圧着ツール41を所定ストローク下降させて吸着ステーションで待機するドライバチップ8をヘッド先端面に吸着した後、熱圧着ツール41を元の位置に上昇させて停止させる。
【0021】
次に、熱圧着装置4を反時計回り方向へ90度回転させた後、レール5上を転写ステーションに向けて走行させ、図2(a)に示されるように、吸着ヘッド411先端面を転写ステーションの上方に位置させて停止させる。
【0022】
この後、熱圧着ツール41を下降させ、図3(a)に示されるようにその吸着ヘッド411先端面に吸着されたドライバチップ8の導通接合面81をACFテープ2のACF層22に当接させ、更に、図3(b)に示されるようにACFテープ2のベースフィルム21裏面を支持台3に密着させる。そして、吸着ヘッド411先端面で重ね合わせたドライバチップ8とACFテープ2を支持台3に所定の圧力で約1〜2秒間押圧する。このときの押圧力は約40〜60kgf/cm2の範囲内が好ましく、その内でも、48〜52kgf/cm2の範囲内の圧力がより好ましい。
【0023】
また、ドライバチップ8は、吸着ヘッド411により吸着し転写ステーションに移動させるまでの間に、熱圧着装置4に内蔵されているヒータにより所定温度に加熱しておく。このドライバチップ8の加熱温度は、40〜60℃の範囲内が好ましく、その内でも45〜55℃の範囲内の温度がより好ましい。
【0024】
上述の温度に加熱されたドライバチップ8がACF層22に上述した圧力で約1〜2秒間押圧されることにより、ドライバチップ8の導通接合面81に当接するエリアのACF層22がドライバチップ8と略同温度に加熱されて軟化し、ドライバチップ8の導通接合面81に付着するとともに、その導通接合面81のエッジ82が食い込んだ矩形の溝を形成する。これは、ACFテープ2のチップ押圧部が間隙Dだけ支持台3側へ押し下げられることにより、一対の支持ローラ13a、13b間に張架されているACFテープ2がエッジ82の当接部で折れ曲がり、エッジ82がACF層22により深く食い込むからである。
【0025】
次に、熱圧着ツール41を、図2(b)及び図3(b)に示す押圧状態から、図2(c)で示すように下降前の元の位置に上昇させる。このとき、ドライバチップ8の導通接合面81が圧接するエリアのACF層22は適度に軟化して導通接合面81に付着し、更にそのチッブ圧接エリア部はエッジ81の食い込みにより形成された矩形溝が形成されており、且つ、ベースフィルム21は離型性に優れた(登録商標)テフロン(登録商標)製フィルムであるから、吸着ヘッド411とともにドライバチップ8が上昇することにより、その導通接合面81に付着している前記矩形溝により区分けされたエリアのACF層22が、他の部分と千切り離されるとともにベースフィルム21から剥離され、ドライバチップ8の導通接合面81に付着したまま上昇する。すなわち、ドライバチップ8の導通接合面81を圧接させたエリアのACF層22を、ACF片221としてベースフィルム21からチップ接合面81に転移させる。
【0026】
次に、熱圧着装置4を、図2(c)に示すACF層22のドライバチップ8への転移完了状態から180度回転させた後、ACF層22を転移付着させたドライバチップ8を吸着したままレール5上を載置ステーション側へ走行移動させ、図4(c)に示す載置ステーション対応位置に停止させる。なお、この段階に至るまで、ドライバチップ8に対する加熱は継続されており、その温度は前述した45〜55℃の範囲内の好適温度に維持されている。
【0027】
この後、熱圧着ツール41を下降させ、載置ステーションに待機している液晶表示パネル6のチップ搭載位置にドライバチップ8を載置する。この際、一方のガラス基板61の他方のガラス基板62から突出させた部分に形成されている配線回路上の所定位置に正確にドライバチップ8が載置されるよう、図示しない画像認識機構に基づきアクチュエータ44を駆動して位置合わせを行いつつ熱圧着ツール41を下降させる。そして、ドライバチップ8に転移され略45〜55℃に加熱されているACF層22をガラス基板61の所定位置に接触させ、前記転移時と略同じ圧力で押圧した後、その吸着を解除して熱圧着ツール41を元の位置に上昇させる。これにより、ドライバチップ8が転移ACF層22を介して液晶表示パネル6の搭載位置に仮圧着状態で正確に載置される。
【0028】
次に、ドライバチップ8の載置を終えた熱圧着装置4を、反時計回り方向に90度回転させてレール5上を走行させ、元のドライバチップ8の吸着ステーションに対応する位置で停止させる。この後、次順の液晶表示パネルへのドライバチップ載置作業を開始する。
【0029】
なお、ドライバチップ8が載置された液晶表示パネル6は、間欠駆動される搬送ベルト7により下流側の図示しない熱圧着工程へ搬送し、そこで、再度正確に位置合わせした後、前記熱圧着ツール41とは別の熱圧着ツールによってACF層22をドライバチップ8を介し180〜190℃程度の高温に加熱しつつ550〜650kgf/cm2の圧力で5〜8秒間加圧して確実に硬化させ、ドライバチップ8の搭載が完了する。
【0030】
以上のように、本実施形態のドライバチップ載置工程においては、連続的に繰り出されるACFテープ2からドライバチップ8の導通接合面81へ型抜き方式でACF層22を転移させた後、そのドライバチップ8を液晶表示パネル6に載置(仮圧着)するから、熱圧着工程における本圧着時に転移させたACF片221を前述した高温且つ高圧の条件で熱圧着した際に、ドライバチップ8の導通接合面81から食み出すACFの量を最小限に抑えることができる。その結果、本圧着時において熱圧着ツールの押圧面に食み出したACFが付着しドライバチップ8全体を均一に押圧できずに導通不良が発生したり、食み出した未硬化状態のACFが吸湿することにより配線が腐食する等の不具合が解消される。
【0031】
また、熱圧着装置4をレール5上を往復移動させるだけで、ドライバチップ8の吸着、ACFの転移、及びACF付きドライバチップ8の液晶表示パネル6上への載置の3段階の実装作業を実施することができ、少ない工数でドライバチップ8を液晶表示パネル7に適正に搭載することが可能となる。
【0032】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態においては、ドライバチップ8にACFを転移させた状態でそのまま熱圧着装置4を載置ステーション対応位置に移動させて液晶表示パネル6にドライバチップ8を載置したが、ACFを転移させた後、一旦そのドライバチップをパレットにストックし、そのパレットをドライバチップ搭載(本圧着)工程に移動して液晶表示パネルにドライバチップを別の熱圧着装置により本圧着搭載してもよい。
【0033】
また、ドライバチップ8にACFを転移させた状態でそのまま熱圧着装置4を載置ステーション対応位置に移動させた際に、ドライバチップ8を載置した後に連続して同じ熱圧着装置でACFを硬化させる本圧着工程を実施してもよい。
【0034】
加えて、本発明の電子部品の搭載方法は、液晶表示パネルにドライバチップを搭載する工程に限らず、ACFを用いる工程であれば、他の電子部品の液晶表示パネル以外のデバイスへの搭載工程等に広く適用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態である液晶表示パネルへのドライバチップの載置工程を示す平面図である。
【図2】(a)〜(c)は、それぞれ、前記載置工程におけるACF転移動作を段階的に示す各段階毎の部分拡大斜視図である。
【図3】(a)、(b)は、それぞれ、前記ACF転移動作におけるACFの転移作用をより詳細に説明する各段階別説明図である。
【図4】(a)〜(c)は、前記載置工程における各作業ステーションを示した平面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 テープ搬送装置
11 繰出しリール
12 巻取りリール
13a、13b 支持ローラ
2 ACFテープ
21 ベースフィルム
22 ACF層
3 支持台
4 熱圧着装置
41 熱圧着ツール
411 吸着ヘッド
42 アクチュエータ
43 保持ブロック
5 レール
6 液晶表示パネル
7 搬送ベルト(パネル用)
8 ドライバチップ
81 導通接合面
82 エッジ
9 搬送ベルト(チップ用)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルム上に熱硬化性樹脂中に導電性粒子を分散混合してなる異方性導電接着剤が被着された導通接合用テープを、所定の経路に沿って搬送する工程と、
電子部品を所定の温度に加熱しつつその導通接合面を前記テープの異方性導電接着剤に所定の圧力で圧接させ、圧接したエリアの異方性導電接着剤を前記導通接合面に転移させる工程と、
前記異方性導電接着剤を前記導通接合面に転移させた電子部品を、搭載対象デバイスの搭載位置に移動させて前記電子部品を前記搭載位置に載置する工程と、
を有することを特徴とする電子部品の搭載方法。
【請求項2】
異方性導電接着剤を前記導通接合面に転移させる工程の、前記電子部品を圧接させる圧力は40〜60kgf/cm2の範囲内に、前記温度は50〜60℃の範囲内に、それぞれ設定されることを特徴とする請求項1に記載の電子部品の搭載方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−243867(P2008−243867A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78053(P2007−78053)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】