説明

電子部品の結線方法及び電子部品

【目的】本発明の目的は、電子部品の電極と電極との電子部品の結線方法において、従来のメッキ工法に替えて、金属アセチリド化合物を主成分とする導電性ペーストによる電子部品の結線方法を提案し、その電子部品の結線方法により製造された電子部品を提供することである。
【構成】本発明に係る接続方法は、金属アセチリド化合物を含有している導電性ペーストを電子部品の電極に塗着して導電性ペースト膜を形成し、この導電性ペースト膜を加熱焼成して金属膜を形成し、他の電極と接続する方法である。従って、従来のメッキ工法のような複雑な工程を必要としないので、製造コストを大幅に低減することができる。また、この導電性ペーストは極めて薄い金属膜を形成できるので、多層電子部品の電極接続方法に用いれば、従来品に比べその厚みを格段に小さくでき、電子部品の小型化と高密度化を達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の電極を形成する導電性ペーストの利用方法に関し、更に詳細には、電子部品中の電極に金属膜を形成し、この金属膜と他の電極とを金属線等の接続導体により導通接合させる電子部品の結線方法及びこの方法により製造された電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体の目的とする電極(以下、目的電極という)と他の電極(例えば基板上の電極)とを導通接続させる場合に、目的電極の表面に金メッキを施すことが一般的に行われている。即ち、金メッキを半導体の目的電極の表面に施し、金メッキ膜と他の電極とを金線を用いてワイヤボンディングし、目的電極と他の電極を導通接続させる方法が、しばしば半導体技術に利用されている。特に、ICチップの結線方法では、金メッキと金線ワイヤボンディング法が広く普及している。
【0003】
ICチップの実装法としては、前記ワイヤボンディング法の他にビームリード法、フイルムキャリア法、フリップチップ法、チップキャリヤ法、ミニパッケージ法、直接実装法等がある。
【0004】
ワイヤボンディング法はもっともオーソドックスな方法で半導体パッケージに広く用いられている工法である。ビームリード法は、微細な金(Au)からなるビーム状のリードをICチップに形成し、このリードを基板上のAu導体に熱圧着する工法である。フイルムキャリア法は、キャリアにフイルムを用いてフィンガーを形成し、このフィンガーをチップの電極に形成されたバンプとボンディングする工法である。フリップチップ法は、ICチップの電極にハンダで形成されたバンプを設けて、このハンダを溶かしてICチップを基板に固定し接続する工法である。チップキャリヤ法は、ICチップをチップキャリヤと呼ばれる超小型パッケージに入れて基板に直接実装する工法である。ミニパッケージ法は、市販されている超小型パッケージを使用して基板を構成する工法である。直接実装法は、基板にパターンを形成しながら、同時にICチップの電極を接続していく工法である。
【0005】
上記ICチップの実装法は、それぞれに長所、短所を有しているが、電極と電極との接続面に金属メッキが施されていることが多い。金属メッキを電極表面に施すことにより電極表面の酸化を防ぎ、良好な接続が保持される。メッキ方法には電解メッキ、無電解メッキ、真空蒸着等があるが、電子部品の電極メッキには無電解メッキが主に用いられ、この無電解メッキ膜の上に更に電解メッキが施される場合もある。また、メッキ用金属としては銅、ニッケル、クロム、金、銀、スズ−ニッケル合金、スズ−鉛合金、ニッケル−コバルト合金などがあるが、この中でも半導体電子部品の電極には導電性、耐久性及び化学的安定性の観点から金メッキが利用されることが多い。
【0006】
近年、携帯電話やパソコンなどの情報電子機器の普及にともない、より小型化、高機能化が求められ、その結果、多数の電子部品を高密度に集積させてプリント配線基板上に実装する高密度部品実装技術が重要となっている。そのため、最近では抵抗やコンデンサなどの受動素子だけでなく、ICチップにおいても、パッケージや引き出しリードをなくしたベアチップを基板上に実装するフリップチップ工法が使用されつつある。
【0007】
フリップチップ工法として特開2004−79891号(特許文献1)が公表されている。この先行技術は、フリップチップ法によりICチップ搭載用の配線基板を製造する方法を提供している。また、ワイヤボンディング法として特開平9−307050号(特許文献2)が公表され、ICチップ用リードフレームの製造方法を提供している。以上の方法は半導体チップのような高精度を必要とする電子部品の電極接続として好適な工法である。
【0008】
他方、大型の電子部品、特に配線基板の電極を形成する方法として導電性ペーストを塗着焼成する方法が用いられている。本発明者等は、以前に金属アセチリド化合物を含有した金属組成物及びこの金属組成物から金属膜を形成する方法を特許第3491021号(特許文献3)として提案した。この発明は、金属アセチリド化合物を主成分とした導電性ペーストよる金属膜形成方法である。
【特許文献1】特開2004−79891号公報
【特許文献2】特開平9−307050号公報
【特許文献3】特許第3491021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図6は特許文献1におけるフリップチップ工法の概略説明図である。このフリップチップ法では、ICチップ20の下面の電極にハンダによりバンプ22が形成され、回路基板24の上面にパターン化された導体26を形成し、この導体26にハンダを供給して、バンプ22と導体26がハンダの溶融により一体に接続される。
【0010】
従来から、回路基板24の表面に配列された導体26の良好なハンダ濡れ性を得るために、導体26の表面に無電解ニッケルメッキ層を形成するのが一般的である。また、このメッキ層の酸化を防ぎ安定したハンダ付け性を得るために、前記無電解ニッケルメッキ層の上に金メッキが施されることが多い。しかし、この金メッキの上に前記フリップチップ工法によるハンダ層を形成する場合、加熱によって金メッキ膜が蒸発して、無電解ニッケルメッキ層とハンダ層との間に金属間化合物が生成されることが問題となっていた。
【0011】
特許文献1では、この問題を解決するために無電解ニッケルメッキ層の上に金メッキに替えて、ハンダより融点の高い無電解金属メッキ層を設けている。即ち、回路基板24の表面に配列された導体26に、第1メッキ工程として無電解ニッケルメッキ層を形成し、第2メッキ工程として無電解金属メッキ層を形成し、第2メッキ工程後、無電解金属メッキ層表面にハンダ層を形成する。このように無電解金属メッキ層を積層状に形成するには、複雑なメッキ工程を何回も繰り返す必要があり、多大の時間と労力が必要となり製造コストを引き上げる要因となっている。
【0012】
図7は特許文献2におけるワイヤボンディング法の概略説明図である。ワイヤボンディング法とは、ICチップ10の上面にある電極11の表面に金メッキを施して金膜12を形成し、この金膜12と他の電極13を金線14により接続し、接続点を熱圧着して結線する方法である。特許文献2では、リードフレームのチップ搭載部やワイヤボンディング部には金メッキ又は銀メッキが施され、封止される部分にはパラジウム又はその合金メッキが施され、更に外部リード部にも金メッキが施されている。このように、半導体の各所に異なった種類のメッキが必要で、そのために複雑なメッキ工程が要求され、高度の技術力が求められる。従って、電子部品の製造に多数の工程と多大の時間が必要で、製造コストを引き上げる要因となっている。
【0013】
このように上記先行技術(特許文献1と特許文献2)では、ICチップを搭載する基板の表面に無電解メッキにより金属膜が形成されている。無電解メッキを施すには複雑な工程を繰り返す必要があり、時間とコストだけでなく、メッキ所定部分をマスキングしてメッキを形成しなければならないなど、緻密で高度な技術力が要求される。また、メッキ施工部分以外のメッキ液による侵食が発生し、高精度の電子部品にとって深刻な問題となっている。一方、処理後のメッキ廃液や洗浄水による自然環境への汚染、特に鉛や水銀による生物への悪影響が問題となっており、無害化処理のために多大の費用が必要である。
【0014】
また、多層プリント配線基板のメッキ工程における必要条件として、絶縁基板の絶縁抵抗などの電気的特性、屈曲性などの機械的特性、メッキ液による汚染などの化学的要件、銅箔と絶縁基板材料との結合強度、銅クラッドと銅箔との密着力、析出銅の延性と強度、更に、無電解メッキによるメッキ厚の均一性、メッキの純度及びハンダ付け特性などがある。
【0015】
特に、メッキ厚の均一性は重要であり、均一なメッキ膜でないと必要以上にメッキ厚が厚くなり、素材の精度を悪くしてその品質や信頼性を阻害する原因になっている。しかし、現在のメッキ法によっては、均一なメッキ厚を形成することが難しい。
【0016】
また、メッキ析出物の延性の良否は、ハンダ付け加工時の温度衝撃によって発生する、絶縁基板と析出銅との温度膨張係数の相違による亀裂の発生原因となる。従って、メッキ析出物において、亀裂に耐え得る延性とその均一性及び強度が特に要求される。
【0017】
この他に、無電解メッキ浴、水洗、中和などの無電解銅メッキ工程の問題、メッキ前の洗浄、活性化、銅メッキ浴の種類、銅メッキ浴の管理、電解析出銅の特性などの問題がある。このように従来のメッキ工法には種々の問題があり、電子部品の高密度化、高品質化のために早急に解決される必要がある。
【0018】
他方、前述した大型電子部品の電極の形成に使用されてきた導電性ペーストを半導体などの微細な電子部品に使用する場合にも問題がある。特に多層電子部品の電極接続においては電子部品の小型化・高密度化を図るために、電極面の表面に金属薄膜を形成して接続することが切望される。しかし、従来の導電性ペーストは金属粉を主成分としているので、金属膜厚が必然的に厚くなる傾向がある。金属粉を構成する金属粒子の粒径は、現在の技術によっても0.1μm(100nm)より小さくすることは困難である。この金属粉体による導電性ペーストを塗布すると、その膜厚は金属粒子が多重に積層されるため、膜厚がどうしても厚くなる。仮に一粒子層の金属膜が形成できたとしても、膜厚は粒径より小さくできない。従って、金属粉の粒径以下の薄膜を形成することが困難である。多層電子部品では、この金属膜が層数だけ加算されるから、従来の導電性ペーストによる電極接続では、多層電子部品の小型化・高密度化を図ることができない。
【0019】
また、前記導電性ペーストにおいては、金属粉を有機樹脂と共に有機溶剤に分散して形成されている。この有機樹脂には、硫黄や塩素が含まれていることが多い。従って、この導電性ペーストを焼成すると、SOや塩素化合物が生成され、これらが大気中に排出されて環境問題を惹起していた。また、微量の硫黄化合物や塩素化合物が電子部品中に残留固結して、電子部品の劣化を生起する原因となっていた。
【0020】
本発明者等は以前、特許文献3で金属アセチリド化合物を主成分とする導電性ペーストによる金属膜形成方法を提案した。この発明では、導電性ペーストの主成分に金属アセチリド化合物が用いられているので、焼成してもSOや塩素化合物を生起せず、環境を清浄に保持できるなど、環境保全に一定の貢献をしている。しかし、この導電性ペーストを直ちに半導体などの電子部品の電極接続に使用するには、なお解決されねばならない課題があった。第1に、金属アセチリド化合物を主成分とする導電性ペーストを用いても、加熱焼成して有機物を除去する場合に、焼成温度が高いと電子部品の回路破断を発生させる恐れがあること。第2に、加熱焼成時に有機物が完全にガス化されず、また、ガス化されても一部が凝結して、有機物の一部が微細な電子部品内に残留し、電子部品の劣化を招来する恐れがある。これらの弱点は今だに解決されていない課題である。
【0021】
従って、本発明者等は上記課題について鋭意研究した結果、金属アセチリド化合物が分子状化合物であり、そのサイズが分子サイズであることに着目した。また、金属アセチリド化合物の炭素数に着目して、炭素数を特定範囲に設定することにより上記課題を解決することを創案するに至った。本発明は、金属アセチリド化合物を主成分とする導電性ペーストによる電極接続方法を提案し、半導体などの微細な電子部品にも十分使用できることを確認して完成したものである。
【0022】
従って、本発明の目的は、電子部品の電極と電極との電子部品の結線方法において、従来のメッキ工法にかえて、金属アセチリド化合物を主成分とする導電性ペーストによる電子部品の結線方法を提案し、その電子部品の結線方法により製造された電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の第1の形態は、電子部品の目的とする電極(目的電極)に金属膜を形成し、この金属膜を前記電子部品の他の電極に接続導体により導通接合させる電子部品の結線方法において、金属膜を形成する工程は、一般式M(−C≡C−R)(式中のMは金属原子、nは金属原子Mの価数、Rは酸素原子を含有する又は含有しない炭化水素基)で表される金属アセチリド化合物を少なくとも含有する導電性ペーストを塗着して導電性ペースト膜を形成する工程と、この導電性ペースト膜を加熱することにより金属以外の物質を除去して金属膜を形成する工程から少なくとも構成される電子部品の結線方法である。
【0024】
本発明の第2の形態は、目的電極の表面に保護膜が形成され、この保護膜の表面に前記金属膜が形成される電子部品の結線方法である。
【0025】
本発明の第3の形態は、金属アセチリド化合物の配位子(−C≡C−R)において、炭化水素基RがOH基を含む電子部品の結線方法である。
【0026】
本発明の第4の形態は、金属アセチリド化合物の配位子(−C≡C−R)に含まれる炭素数が5〜10の範囲にある電子部品の結線方法である。
【0027】
本発明の第5の形態は、金属アセチリド化合物として金アセチリド化合物を使用することにより、金属膜を金膜として形成し、接続導体として金線を使用する電子部品の結線方法である。
【0028】
本発明の第6の形態は、金属アセチリド化合物として金アセチリド化合物を使用することにより、金属膜を金膜として形成し、接続導体として接続用金膜を使用する電子部品の結線方法である。
【0029】
本発明の第7の形態は、第1〜第6形態のいずれかに記載の電子部品の結線方法により製造された電子部品である。
【発明の効果】
【0030】
本発明の第1の形態によれば、金属アセチリド化合物を主成分とする導電性ペーストにより、目的とする電極の表面に金属膜を形成できる。電極面に金属薄膜を形成するには導電性ペースト膜を電極面に形成する工程と、形成された導電性ペースト膜を加熱焼成する工程から少なくとも構成されるので、金属薄膜を容易に形成することができる。前記加熱条件は、金属薄膜を形成できる焼成条件が適用でき、非溶融、表面溶融、全面溶融など種々の焼成・焼結条件が適用される。加熱温度は、例えば300℃〜700℃の範囲が好適であるが、この温度条件は前記数値に限定されず、本発明の目的を達成する範囲内で任意に調整できる。この金属薄膜は電極表面に直接形成される場合と、他の金属膜を介して形成される場合がある。直接形成される場合は製造工程上の利点があり、他の金属膜を介して形成される場合には、他の金属膜の金属種を適宜選択して他の金属膜の機能を付加し、その上層に所望の金属膜を形成できる利点がある。形成される金属膜の厚さは、導電性ペーストの主成分である金属アセチリド化合物の原子径に比例する。金属アセチリド化合物は、前述したように金属原子と炭素からなる配位子とが化学結合した分子である。金属アセチリド化合物のサイズは分子サイズであり、それを構成する金属原子のサイズは原子サイズであり0,1nm〜0.5nmと極めて小さい。従って、金属アセチリド化合物を導電性ペーストに用いれば極めて薄い金属膜を形成できる。一方、従来の導電性ペーストは金属粉を主成分としており、金属粉の粒径は0.1μm(100nm)以上であり、分子レベルと比べ非常に大きく、この粒径以下の薄膜を形成することは不可能である。また、従来の無電解メッキにおいても、そのメッキ膜厚は1μm以上にするのが通常である。これらの従来技術と比較して、本発明に係る導電性ペーストを用いれば極めて薄い金属膜を形成できるので、多層電子部品の電極接続に用いれば、従来品に比べその厚みを格段に小さくでき、電子部品の小型化と高密度化を達成できる。また、一般に、電子部品の電極表面の金属膜として高価な貴金属が使用されているが、本発明に係る導電性ペーストを用いれば、薄膜化によって貴金属の使用量を格段に削減でき、電子部品の製造コストを低減できる利点がある。また、メッキ液を使用しないので、メッキ液による所定以外の侵食がなく、電子部品の劣化を招来する恐れがない。更に、この導電性ペーストは金属アセチリド化合物を主成分としているので、硫黄や塩素が含有されておらず、加熱焼成時にSOxやハロゲンのような有害ガスを放出することがないので、微細な電子部品に悪影響を及ぼすことがない。また、スクリーン印刷等により所定部分に正確に塗着でき、従来のメッキ工法のような複雑な工程を必要としない。従って、メッキ工程に係る時間とコストを削減でき、メッキ処理後の廃液の処理費用も発生しないので、製造コストを大幅に低減することができ、環境保護の観点からも好ましい。
【0031】
本発明の第2の形態によれば、電極の表面に保護膜が形成されるので、導電性ペーストにより形成された金属膜と電極とが直接に接触しない。従って、電極を構成する金属原子と金属アセチリド化合物から形成される金属膜原子とが相互に拡散することがないので、電極の表面に高品質で高耐久性を有した金属膜を形成することができる。例えば、電極の表面に保護膜としてニッケル層を形成し、このニッケル層の上層に金膜を形成すれば、ニッケル層が保護膜となって金原子と電極原子とが拡散せず、不要な金属間化合物が形成されない。また、保護膜を複層に形成することにより、保護膜の機能に複合作用を発現させ、所望の金属膜を電極の表面に形成することもできる。例えば、前記ニッケル層に他の保護膜を積層すれば、保護膜の遮断作用が強化され、金膜に一層の耐久性を付与することが可能になる。このように、保護膜を設けることにより、金属間化合物の形成を阻止できるので、電子部品の電極接続における信頼性の向上を図ることができる。
【0032】
本発明の第3の形態によれば、金属アセチリド化合物の配位子(−C≡C−R)の炭化水素基RにOH基を有しているので、その有極性により多くの有機溶剤に非常によく溶解する。金属アセチリド化合物は多くの有機溶剤に可溶であるが、その炭化水素基RがOH基を有すれば、特に有極性の有機溶剤に非常によく溶解する。従って、前期金属アセチリド化合物を主成分とした導電性ペーストを塗着して加熱焼成すれば非常に均一な金属膜を形成できるので、電子部品の精度を飛躍的に高めることができる。金属膜の薄膜化と均一化により、多層電子部品の小型化と高密度化、更に高機能化を図ることができる。この導電性ペーストは、有機溶剤に金属アセチリド化合物が均一に溶解しているので、加熱焼成すれば金属以外の有機成分を完全に分解除去することができるので高性能の電子部品を製造することができる。また、樹脂を適宜添加することにより、薄膜から厚膜まで所望の膜厚を容易に形成でき、使用用途に応じて自在に活用することができる。
【0033】
本発明の第4の形態によれば、金属アセチリド化合物の配位子(−C≡C−R)に含まれる炭素数が5〜10の範囲にあるから、導電性ペーストの安定性が良く、しかも加熱焼成時における分解温度を低くすることができる。例えば、炭素数が5以下になると、金属アセチリド化合物の揮発性が高くなり、有機溶剤に溶解させたときにペーストとしての安定性が十分ではなくなる。炭素数を11以上にすると、有機溶剤への溶解性は良くなるが、金属アセチリド化合物の分解温度が高くなり、導電性ペースト膜を焼成したときに、電子部品の内部を熱破断する可能性が出現する。従って、配位子の炭素数が5〜10の範囲内にあれば、安定した導電性ペーストを構成でき、しかも導電性ペースト膜を低温(例えば400℃以下)で焼成でき、電子部品の熱破断がなくなり、また金属アセチリド化合物が容易に分解されて有機物ガスが電子部品内に残留固結することが全く無い。つまり、電子部品に対する熱ストレスの影響を少なくすることができ、膨張や収縮による電子部品の回路破断などの不具合を防止できる。
【0034】
本発明の第5の形態によれば、金アセチリド化合物を用いて導電性ペーストを作製し、電子部品の電極の表面に塗着して焼成すると、前記電極の表面に均一な金膜を形成できる。金膜は金の優れた耐食性、高導電性、高ハンダ付け性を有しているので、高密度回路基板の電極に広く用いられている。特に、ワィヤボンディング法としてICチップと基板との接続に用いられ、即ちICチップの電極に金膜を形成し、他の電極と接続する接続導体に金線を用いて300℃前後の温度下で熱圧着すると、前記電極と金線とを容易に接続することができる。この方法は、一般的な方法と組み合わせて通常の半導体素子パッケージングに広く利用できる。
【0035】
本発明の第6の形態によれば、金アセチリド化合物を使用して電子部品の目的電極の表面に金膜を形成できるので、接続導体として接続用金膜を使用すれば、金膜を形成された目的電極と他の電極とを接続用金膜により直接接続できる。この方法は、フリップチップ法としてICチップと基板との接続に用いられ、多数の電子部品を高密度に集積させてプリント配線上に実装できる利点を有している。通常、ICチップの端子数はチップの縦と横の大きさに依存している。フリップチップ法では、端子間の間隔を通常より小さく配置できるのでより多くの端子を配置でき、チップの端部だけでなく内部にも配置できるので、電子部品を高密度に集積することができる。従って、本発明に係る電子部品の結線方法によりICチップの電極に金膜を形成すれば、ハンダの溶融により確実に基板と直接接続することができ、電子回路の小型化とハイブリッド化を同時に実現することができる。
【0036】
本発明の第7の形態によれば、第1〜第5形態のいずれかに記載の電子部品の結線方法により製造された電子部品であるので、従来のメッキ工法により製造された電子部品と同等以上の性能を有する。本発明の導電性ペーストは、金属アセチリド化合物を主成分としているので、広範囲の有機溶剤によく溶解し、均一な金属膜を形成できる。形成された金属膜の表面は平滑で密着性が高く、接続導体と容易にしかも確実に接続することができる。従って、本発明の電子部品の結線方法により製造された電子部品の導通接合性は、従来のメッキ工法により製造された電子部品のそれと同等以上の効能を有する。また、本発明の導電性ペーストは、これを塗着した電子部品の電極との密着性も高いので、この電子部品の結線方法により製造された電子部品は、衝撃にも強く高い信頼性を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に、本発明に係る導電性ペーストの実施形態を詳細に説明する。
【0038】
本発明に係る導電性ペーストの主成分である有機金属錯体は、一般式(−C≡C−R)で表される金属アセチリド化合物である。この一般式の中でMは金属原子を表し、例えばBi、Cu、In、Ni、Ru、Rh、Pb、Ag、Os、Ir、Pt、Au等の広範囲の金属元素から構成される。導電性ペースト等の金属としては、化学的安定性の高い貴金属がよく用いられ、ここではAu、Ag及び白金族(Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)の金属元素を云う。
【0039】
nは金属元素Mの価数を表し、例えば、Auは1価と3価、Agは1価と2価、Ptは2価と4価と6価などである。つまり、金属元素の種類に応じてその値が異なるだけでなく、特定の金属元素でも複数の価数を有している。本発明に係る導電性ペーストとしては、1分子当たりの金属量を多くするために、金属元素の中でも価数の小さな金属元素が好適である。
【0040】
金属アセチリド化合物の配位子−C≡C−R中のRは、酸素原子を含有する又は含有しない炭化水素基で、その構成元素はCとH、又はCとHとOである。炭化水素基Rの炭素数は3〜8が望ましく、従って配位子全体としての炭素数は5〜10が望ましい。その理由は、炭素数が小さいと揮発性が高くなり、金属アセチリド化合物は溶剤に溶け難くなると同時に、爆発性が増大して取り扱いが危険になる。また、前記配位子の炭素数が大きくなると、物質中での金属重量が相対的に小さくなり、導電性ペーストにしたときに必要十分な金属膜を形成することができなくなる。つまり、本発明に係る金属アセチリド化合物を導電性ペーストの主成分として利用するには、溶剤に可溶でしかも一定の金属重量が必要になる。従って、配位子−C≡C−R中のRの炭素数が3から8の範囲にあれば、金属アセチリド化合物は溶剤に溶け易くて安全性があり、しかも金属重量が相対的に大きくなり導電性ペーストとして十分用いることができる。
【0041】
炭化水素Rとして、酸素を含有する場合には水酸基として含有する脂肪族炭化水素基がある。この場合には直鎖状でもよいし、側鎖を有してもよい。配位子−C≡C−Rの具体例として、H−C≡C−Rの形でプロピン、2−プロピン−1−オール、1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,3−ジメチル−1−ブチン、1−ペンチン、1−ペンチン−3−オール、4−ペンチン−1−オール、4−ペンチン−2−オール、4−メチル−1−ペンチン、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,4−ジメチル−1−ペンチン−3−オール、1−ヘキシン、1−ヘキシン−3−オール、5−ヘキシン−1−オール、5−メチル−1−ヘキシン、5−メチル−1−ヘキシン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−ヘプチン、1−ヘプチン−3−オール、5−ヘプチン−3−オール、3,6−ジメチル−1−ヘプチン−3−オール、1−オクチン、1−オクチン−3−オール等がある。
【0042】
本発明に係る導電性ペーストには、焼成温度を低くする観点から、配位子の炭素数が5〜10の範囲にある金属アセチリド化合物が好適である。具体的には、例えば、H−C≡C−Rの形で1−ペンチン、1−ペンチン−3−オール、4−ペンチン−1−オール、4−ペンチン−2−オール、4−メチル−1−ペンチン、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,4−ジメチル−1−ペンチン−3−オール、1−ヘキシン、1−ヘキシン−3−オール、5−ヘキシン−1−オール、5−メチル−1−ヘキシン、5−メチル−1−ヘキシン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−ヘプチン、1−ヘプチン−3−オール、5−ヘプチン−3−オール、3,6−ジメチル−1−ヘプチン−3−オール、1−オクチン、1−オクチン−3−オール等がある。
【0043】
更に、有機溶剤への分散溶解性を良好にする観点から、炭化水素基Rが水酸基OHを含有することが望ましい。例えば、H−C≡C−Rの形で2−プロピン−1−オール、1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、1−ペンチン−3−オール、4−ペンチン−1−オール、4−ペンチン−2−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,4−ジメチル−1−ペンチン−3−オール、1−ヘキシン−3−オール、5−ヘキシン−1−オール、5−メチル−1−ヘキシン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−ヘプチン−3−オール、5−ヘプチン−3−オール、3,6−ジメチル−1−ヘプチン−3−オール、1−オクチン−3−オール等がある。
【0044】
また、炭化水素基Rとして、酸素を含有する場合には水酸基として含有する環状炭化水素を少なくとも含んだ炭化水素基がある。この炭化水素基には、直鎖に環状炭化水素基があってもよいし、側鎖に環状炭化水素基を含んでもよい。もちろん、R全体が環状炭化水素である場合を含む。配位子−C≡C−Rの具体例としては、H−C≡C−Rの形で1−エチニル−1−シクロプロパノール、1−エチニル−1−シクロブタノール、1−エチニル−1−シクロペンタノール、1−エチル−1−シクロヘキサノール、1−プロピン−3−シクロプロパノール、1−プロピン−3−シクロブタノール、1−プロピン−3−シクロペンタノール、1−ブチン−4−シクロプロパノール、1−ブチン−4−シクロブタノール、1−ぺンチン−5−シクロプロパノール等がある。
【0045】
本発明に係る金属アセチリド化合物は上述したように、金属元素、炭素、水素、および/または酸素のみから構成されており、焼成により分解ガスが発生しても、二酸化炭素、水蒸気、その他焼成温度によって一部炭化水素が生成されるだけで、SOやハロゲンガス等環境に対し有害な物質は生成されない。従って、環境や生物にとって極めて安全で清浄な有機金属錯体であるので、製造過程での衛生環境を悪くすることなく、脱硫装置などの多大な設備も必要ない。
【0046】
また、本発明に係る導電性ペーストに電極との密着性を高めるために、添加剤を使用することがある。使用される添加剤としては、界面活性剤や油性研磨剤等が利用される。
【0047】
本発明に係る導電性ペーストは金属アセチリド化合物と粘度調整用の樹脂を有機溶剤に混入させたもので、粘度を増大させたり減少させたりできるので、電子部品の電極に所望の膜厚を形成できる。
【0048】
従来のバルサム系化合物と異なり、金属アセチリド化合物は極性、非極性を問わず広範囲の有機溶剤に溶解する。有機溶剤の具体例としては、石油系溶剤、テルピネオール、ブチルカルビトール、乳酸エチル等のエステル類、セロソルブ類、アルコール類、芳香族類、DEP(ジエチルフタレート)等がある。
【0049】
導電性ペーストの粘度は、素材への塗着条件(印刷条件)、焼成条件及び焼成後の表面状態により異なり、この粘度を調整するために樹脂が混入される。樹脂としては金属アセチリド化合物と共に有機溶剤に溶解・分散し易いことが求められる。金属アセチリド化合物は多くの有機溶剤によく溶解するので、これらの有機溶剤に溶解・分散できる樹脂の選択幅は、従来のバルサム系化合物と比較すると遥かに広くなる。例えば、エチルセルロース、ニトロセルロース、アスファルト、ブチラール、アクリルコバイバルサム、ダンマー等、またこれらの関連物質が利用できる。
【0050】
金属アセチリド化合物、有機溶剤及び樹脂を混合して導電性ペーストを製造する場合、それぞれの配合量は、金属アセチリド化合物は60重量部〜10重量部、有機溶剤は30重量部〜85重量部、樹脂は3重量部〜30重量部が望ましい。これに必要ならば、添加剤を1重量部〜10重量部配合することもできる。金属アセチリド化合物がこれより少量になると、金属重量が少なくなって金属膜を形成できなくなり、これより多量になると金属アセチリド化合物は分散しきれず沈殿するようになる。従って、この範囲において良好な導電性ペーストを提供できる。
【0051】
上記範囲で製造される導電性ペーストの粘度は50p(ポアズ)〜5000p(ポアズ)の範囲になる。粘度が下限値より小さくなると導電性ペーストは有機金属液に近づき、粘度が上限値より大きくなると、電極表面に導電性ペーストを塗着したときその膜厚を薄くすることが困難になる。導電性ペーストの粘度はその用途に応じて自在に変更できる。
【0052】
導電性ペーストを製造するには、金属アセチリド化合物、有機溶剤、樹脂、添加剤から必要重量を容器内に充填して、混錬装置を用いて均一に溶解・分散させる。この混合液を一段又は複数段のメッシュに通して、ゴミや大きな粒子を除去する。この結果、微細で均一に溶解・分散した導電性ペーストを得ることができる。金属アセチリド化合物は従来の金属錯体と比較して有機溶剤に非常に溶解するので、上記混錬攪拌により均一に溶解・分散した導電性ペーストを容易に形成できる利点を有する。
【0053】
上記製法で製造された導電性ペーストを用いて電子部品の電極に金属メッキを施すことができる。導電性ペーストで電極に所定パターンを形成するには、スクリーン印刷、バッド印刷、転写、ディップ法等の方法により容易に、しかも正確に形成できる。
【0054】
次に所定パターンを焼成して金属膜を形成する。電子部品全体を加熱炉に投入して焼成温度まで過熱してもよいし、ガスバーナー等で局所的に加熱しても構わない。焼成すると有機溶剤や樹脂、添加剤、金属アセチリド化合物中の金属以外の配位子成分は熱分解して蒸発し、残留した金属原子は相互に結合・成長しながら電子部品内に所定パターンの金属膜を形成することができる。この形成された金属膜と他の電極の間を接続導体により接続して電子回路を形成する。
【0055】
図1は本発明の導電性ペーストによるワイヤボンディング工法の概略説明図である。ICチップの基板10に形成された電極11の表面に保護膜15を形成し、この保護膜15の表面に本発明の導電性ペーストによる金膜12を形成する。この金膜12と他の電極13とを金線14により接続点を熱圧着して結線する方法が示される。
【0056】
図2は本発明の導電性ペーストにより形成された金膜と電極との間に形成された保護膜の拡大模式図である。ICチップの基板10に形成された電極11と導電性ペーストにより形成された金膜12との間に保護膜15が設けられている。電極11と金膜12とが直接に接しないのでそれぞれの金属が相互拡散することがない。従って、保護膜15を設けることにより、電極11の表面に均一で強固な金膜12を形成することができる。この金膜12に金線14を熱圧着すれば他の電極と容易に接続できる。保護膜15は、導電性ペーストから形成しても良いし、メッキ法により形成しても良いが、導電性ペーストから形成すればメッキ工法の煩雑性が無くなる。
【0057】
保護膜15には、例えばニッケルが用いられる。ニッケル膜の形成にはメッキ法が一般的であるが、本発明ではレジネートペーストを用いている。レジネートペーストはパウダーと溶液から構成されるから、これらを適宜混合すれば用途に応じた粘度を有するペーストを調整できる。このペーストをスクリーン印刷法等により目的電極に塗着すれば容易に保護膜を形成でき、複層の保護膜も自在に形成できる。
【0058】
図3は本発明の導電性ペーストにより形成された金膜と電極との間に保護膜が形成されない場合の拡大模式図である。ICチップの基板10に形成された電極11の上面に金膜12が形成されている。この金膜12に金線14を熱圧着することにより他の電極と接続することができる。本発明による電子部品の結線方法では必ずしも保護膜を設ける必要はない。
【0059】
本発明の導電性ペーストには次のような特徴がある。第1に金属膜の膜厚を極めて薄い薄膜から厚膜まで自在に形成できる。第2に400℃以下の温度という比較的低温で焼成が可能であるから、電子部品の変質・熱変性を防止できる。第3に焼成後の金属膜が鏡面のように平滑に仕上がるので、電子部品のような高精度を要求される分野でその能力を発揮することができる。第4に硫黄や塩素を含んでないので、焼成時にSOxやハロゲンのような有害物質を放出せず、環境に対して清浄でしかも脱硫装置等の設備が不要となる。第5に、焼成により有機成分が分解ガスとなり、電子部品内に有機成分が残留せず、電子部品の耐久性を向上できる。
【実施例】
【0060】
[実施例1:金薄膜]
図4は本発明に係る電子部品の結線方法の従来工法との比較による一覧表(金薄膜)である。金アセチリド化合物として5−ヘキシン−1−オールを配位子とした金アセチリド化合物が使用された。この金アセチリド化合物5、10、22、35、48、60、65(重量部)用意して、これに有機溶剤としてブチルカルビトールを38(重量部)、樹脂としてエチルセルロースを適宜添加して、粘度100p(ポアズ)の有機導電性ペーストをそれぞれ作製した。これらの有機導電性ペーストをスクリーン印刷によりセラミックス基板上に350メッシュの大きさに塗布し、350℃の温度で10分間焼成して膜厚が200nmの金薄膜を作製した。これらの金薄膜に20μmの金線を用いてワイヤボンディング工法で結線して、金膜と金線との接続強度を調べた。これらの試料による電子部品の結線方法と従来工法による電子部品の結線方法を比較して、金薄膜表面の均一性、平滑性、密着性、光沢及び強度を目視により観察した。比較試料としての金薄膜は従来無電解メッキ法により金の配合量を適宜調製して作製した。
【0061】
実施例1から本発明による電子部品の結線方法は、作製された金薄膜表面の均一性、平滑性、密着性、光沢が従来メッキ法と比較して同等及び同等以上の性能を有し、金薄膜と金線との接続においても同等及び同等以上の強度を有していることが判明した。
【0062】
[実施例2:金厚膜]
図5は本発明に係る電子部品の結線方法の従来工法との比較による一覧表(金厚膜)である。実施例1と同様に金アセチリド化合物をそれぞれ用意して、同様の有機溶剤を同量添加し、同様の樹脂の添加量を増加して、粘度1000p(ポアズ)の有機導電性ペーストをそれぞれ作製した。これらの有機導電性ペーストを用いて実施例1と同様の方法で膜厚2000nmの金厚膜の試料を作製して、実施例1と同様の方法により金厚膜表面の均一性、平滑性、密着性、光沢及び強度を調べた。
【0063】
実施例2から、作製された金厚膜表面の均一性、平滑性、密着性、光沢においても従来メッキ法と比較して同等及び同等以上の性能を有し、金厚膜と金線との接続も同等及び同等以上の強度を有していることが明らかになった。
【0064】
実施例1及び実施例2より金属アセチリド化合物の配合量が10〜60(重量部)の範囲において、本発明に係る電子部品の結線方法の接続強度が従来メッキ法と比較して同等及び同等以上の性能を有していることが実証された。
【0065】
本発明は上記実施形態・実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々の変形例・設計変更をその技術的範囲内に包含するものであることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係る金属アセチリド化合物を主成分とする導電性ペーストによる電子部品の結線方法は従来工法と比較して、電子部品の電極と電極を確実に接続できるだけでなく、電極膜の薄膜化を達成できるので高機能の電子部品を製造できる。しかも環境を汚染することがないので、多層電子部品や高密度実装基板等の高密度電子部品の製造分野において広範囲に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の導電性ペーストによるワイヤボンディング工法の概略説明図である。
【図2】本発明の導電性ペーストにより形成された金膜と電極との間に保護膜が形成された場合の拡大模式図である。
【図3】本発明の導電性ペーストにより形成された金膜と電極との間に保護膜が形成されない場合の拡大模式図である。
【図4】本発明に係る電子部品の結線方法の従来メッキ法との比較による一覧表(金薄膜)である。
【図5】本発明に係る電子部品の結線方法の従来メッキ法との比較による一覧表(金厚膜)である。
【図6】特許文献1におけるICチップの電子部品の結線方法であるフリップチップ工法を説明した概略説明図である。
【図7】特許文献2におけるICチップの電子部品の結線方法であるワイヤボンディング工法を説明した概略説明図である。
【符号の説明】
【0068】
10 基板
11 電極
12 金膜
13 他の電極
14 金線
15 保護膜
20 ICチップ
22 バンプ
24 回路基板
26 導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の目的とする電極(目的電極)に金属膜を形成し、この金属膜を前記電子部品の他の電極に接続導体により導通接合させる電子部品の結線方法において、前記金属膜を形成する工程は、一般式M(−C≡C−R)(式中のMは金属原子、nは金属原子Mの価数、Rは酸素原子を含有する又は含有しない炭化水素基)で表される金属アセチリド化合物を少なくとも含有する導電性ペーストを塗着して導電性ペースト膜を形成する工程と、この導電性ペースト膜を加熱することにより金属以外の物質を除去して金属膜を形成する工程から少なくとも構成されることを特徴とする電子部品の結線方法。
【請求項2】
前記目的電極の表面に保護膜が形成され、この保護膜の表面に前記金属膜が形成される請求項1に記載の電子部品の結線方法。
【請求項3】
前記金属アセチリド化合物の配位子(−C≡C−R)において、炭化水素基RがOH基を含む請求項1又は2に記載の電子部品の結線方法。
【請求項4】
前記金属アセチリド化合物の配位子(−C≡C−R)に含まれる炭素数が5〜10の範囲にある請求項1、2又は3に記載の電子部品の結線方法。
【請求項5】
前記金属アセチリド化合物として金アセチリド化合物を使用することにより、前記金属膜を金膜として形成し、前記接続導体として金線を使用する請求項1〜4のいずれかに記載の電子部品の結線方法。
【請求項6】
前記金属アセチリド化合物として金アセチリド化合物を使用することにより、前記金属膜を金膜として形成し、前記接続導体として接続用金膜を使用する請求項1〜4のいずれかに記載の電子部品の結線方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の電子部品の結線方法により製造されたことを特徴とする電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−9250(P2007−9250A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−189289(P2005−189289)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(591040292)大研化学工業株式会社 (59)
【Fターム(参考)】