説明

電子部品位置決め用治具

【課題】電子部品を位置決めするための位置決め部材を支持した台座が反転されても、位置決め部材、電子部品が台座上から脱落することのない電子部品位置決め用治具を提供する。
【解決手段】電子部品13を位置決めするカーボン製の位置決め部材15と、位置決め部材15を平面上に支持する台座17とを備える電子部品位置決め用治具11であって、台座17は位置決め部材15に係止する枠部材21と枠部材21を固定する本体部23とで形成され、位置決め部材15は、台座17の枠部材21を接合手段29により台座17の本体部23に固定することにより台座17の枠部材21と台座17の本体部23との間で台座17の本体部上を変位可能に挟持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、要素部品と基材をロウ付けするに際し、要素部品と基材を位置決めする電子部品位置決め用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
要素部品を基材(リードフレーム)にロウ付けする場合に電子部品位置決め治具が用いられる。具体的には、半田等のロウ材により電子部品としての半導体パッケージを基材としてのリードフレームに接合するに際し、電子部品位置決め用治具が用いられる。電子部品位置決め用治具は、凹部に電子部品を収容し、その上にリードフレームを載置して、位置決めピン等により電子部品とリードフレームとの位置決めを行う。電子部品とリードフレームの間に半田等のロウ材を挟持し、これらを炉内で加熱することによりロウ材を熱溶融して電子部品をリードフレームに接合する。
【0003】
このような電子部品位置決め用治具としては、例えば特許文献1に半導体用パッケージ位置決め用治具が開示されている。図7に、従来の半導体用パッケージ位置決め用治具の分解斜視図を示す。半導体用パッケージ位置決め用治具501は、複数の収納部503が形成された本体505と、半導体用パッケージ507を収納すると共に収納部503で自在に摺動する位置決め部材509との二つに分けて、位置決め部材509ごとに位置決めを行うようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−170379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子部品位置決め用治具は、カーボン、セラミックスの耐熱性材料によって形成され、高温(例えば200〜600℃)で電子部品等が熱処理されると、基材としてのリードフレームと電子部品位置決め用治具の熱膨張係数の差により、電子部品の位置ズレの問題が生じると考えられる。
特許文献1に記載の従来の半導体用パッケージ位置決め用治具501によれば、位置決め部材509が収納部503内で自由に摺動することによって、リードフレーム511の熱膨張に連動してそれぞれの位置決め部材509が摺動し、リードフレーム511と半導体用パッケージ位置決め用治具501の材質との熱膨張係数の差を吸収することができ、半導体用パッケージ507とリードフレーム511をロウ材513によって高い精度で接合することができると考えられる。なお、図7に示すように、半導体用パッケージ位置決め用治具501は、半導体用パッケージ507とリードフレーム511の位置決めを行うための位置決めピン515を備えている。
上記した従来の半導体用パッケージ位置決め用治具501は、本体505に形成した収納部503に、位置決め部材509を摺動自在に配置しているため、半導体用パッケージ位置決め用治具501の全体が縦向きに近い角度で立てられたり、反転されたりした状態で用いられると、位置決め部材509、半導体用パッケージ507が台座上から脱落する。
また、位置決め部材509は、使用を繰り返すうちに欠けや消耗が生じるため、一部を交換する必要がある。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、電子部品を位置決めするための位置決め部材を支持した台座が反転されても、位置決め部材、電子部品が台座上から脱落することがなく、位置決め部材が容易に交換可能な電子部品位置決め用治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 要素部品を位置決めするカーボン製の位置決め部材と、前記位置決め部材を平面上に支持する台座とを備える電子部品位置決め用治具であって、前記台座は前記位置決め部材に係止する枠部材と該枠部材を固定する本体部とで形成され、前記位置決め部材は、前記台座の枠部材を接合手段により前記台座の本体部に固定することにより該台座の枠部材と該台座の本体部との間で前記台座の本体部上を変位可能に挟持されることを特徴とする電子部品位置決め用治具。
【0008】
本発明の電子部品位置決め用治具によれば、台座の本体部に位置決め部材が配置され、接合手段によって本体部に固定された枠部材が、本体部との間に位置決め部材を挟持する。本体部と枠部材によって挟持された位置決め部材は、本体部の平面上で変位可能となる。これにより、位置決め部材が平面上で変位(自由に摺動)することで、基材の熱膨張に連動してそれぞれの位置決め部材が摺動し、基材と電子部品位置決め用治具の材質との熱膨張係数の差が吸収される。これに加えて、電子部品位置決め用治具の全体が縦向きに立てられたり、反転されたりしても、位置決め部材が台座上から脱落することがなく、位置決め部材にピンが設けられていれば基材、要素部品も台座から脱落し難くできる。また、本体と枠部材とを繋ぐ接合手段を取り外すことによって、本体部と枠部材を分離することができるので、位置決め部材を傷つけることなく位置決め部材を交換できる。
【0009】
(2) 前記位置決め部材は複数に分割され、前記複数に分割した位置決め部材は、該位置決め部材を集合状態に配列した際に互いに隣接する位置決め部材間で係合する係止部を備えると共に、外側に配列された前記位置決め部材の外周縁のみが前記台座の枠部材により係止されることを特徴とする(1)の電子部品位置決め用治具。
【0010】
本発明の電子部品位置決め用治具によれば、台座の本体部に、複数の位置決め部材が縦横に隣接して配置され、外側に配列された位置決め部材は、外周縁が枠部材によって本体部に係止され、脱落が抑制される。この脱落の抑制された外側の位置決め部材に、内側で隣接する位置決め部材は、その隣接部が係止部によって外側の位置決め部材と本体部との間に挟まれ、脱落が抑制される。つまり、全ての位置決め部材が摺動自在となり、且つ脱落が抑制される。また、内側に隣接する位置決め部材であっても、本体と枠部材とを繋ぐ接合手段を取り外すことにより、位置決め部材を傷つけることなく位置決め部材を交換できる。また、位置決め部材を細かく分割できるので、基材と電子部品位置決め用治具の熱膨張係数が大きく異なっても発生する熱応力を小さくすることができる。
【0011】
(3) 前記接合手段は、前記枠部材あるいは前記本体部に貫通形成した孔に挿通して締結される雄ネジであることを特徴とする(1)の電子部品位置決め用治具。
【0012】
本発明の電子部品位置決め用治具によれば、本体部の裏側から挿通した雄ネジが、枠部材に貫通形成された孔に螺合することで、枠部材が本体部に分離可能に固定され、枠部材や位置決め部材の交換が容易となる。
【0013】
(4) 前記枠部材は複数に分割可能であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つの電子部品位置決め用治具。
【0014】
本発明の電子部品位置決め用治具によれば、複数の位置決め部材の一部に欠け、消耗、汚れ等の理由により、交換の必要が生じた場合、交換対象となる位置決め部材を直接、あるいは間接的に固定している枠部材のみを固定解除すれば交換対象の位置決め部材が脱着可能となり、交換不要な他の位置決め部材は固定したままとして、交換作業を省力化できる。
【0015】
(5) 前記位置決め部材の表面には、位置決めピンを備えていることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1つの電子部品位置決め用治具。
【0016】
本発明の電子部品位置決め用治具によれば、位置決めピンを基材に形成された位置決め穴に挿入することにより、位置決め部材間の間隔を所定間隔に形成することができる。
【0017】
(6) 前記位置決めピンは、前記位置決め部材に形成されたピン孔に裏面より挿入されたピンにより構成されることを特徴とする(5)の電子部品位置決め用治具。
【0018】
本発明の電子部品位置決め用治具によれば、ピン孔に挿抜されるピンとすることにより、ピンが磨耗しても交換することができる。
【0019】
(7) 前記位置決めピンは、前記位置決め部材表面に突き出る突出部と該突出部の反対側の基端部を有し、前記基端部には、前記突出部の直径を超える太径部が形成されていることを特徴とする(6)の電子部品位置決め用治具。
【0020】
本発明の電子部品位置決め用治具によれば、基端部には突出部の直径を超える太径部が形成されるので、ピン35が位置決め部材15の表側から抜けず、枠部材21と本体部23を分離すれば、位置決め部材15を容易に交換することができる。
【0021】
(8) 前記位置決めピンは金属であることを特徴とする(5)〜(7)のいずれか1つの電子部品位置決め用治具。
【0022】
本発明の電子部品位置決め用治具によれば、ピンを金属製とすることにより、摩耗を低減させて長寿命化を図ることができる。
【0023】
(9) 前記カーボンは、C/Cコンポジット材、黒鉛材、C/Cコンポジット材若しくは黒鉛材の表面にガラス状カーボンが被覆された炭素材、又は、C/Cコンポジット材若しくは黒鉛材の表面に熱分解炭素の被膜を形成された炭素材であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1つの電子部品位置決め用治具。
【0024】
本発明の電子部品位置決め用治具によれば、カーボンからなるので、ロウ材との濡れ性が悪く、ロウ材が漏出しても位置決め部材と接合することを防ぐことができる。また、カーボンは、軟らかく、要素部品あるいは基材と摩擦が生じても、要素部品あるいは基材を摩耗させたり傷つけたりすることがない。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る電子部品位置決め用治具によれば、要素部品を位置決めするための位置決め部材を支持した台座が反転されても、位置決め部材、要素部品が台座上から脱落し難くできる。また、接合手段を取り外すことによって、本体部と枠部材を分離することができるので、位置決め部材を傷つけることなく、位置決め部材を交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態1に係る電子部品位置決め用治具の断面図である。
【図2】(a)は比較例に係る従来の電子部品位置決め用治具の平面図、(b)は本発明の実施形態2に係る電子部品位置決め用治具の平面図である。
【図3】本発明の位置決め部材の隣接部に係止部を備えた変形例に係る電子部品位置決め用治具の断面図である。
【図4】本発明の枠部材が分割された変形例に係る電子部品位置決め用治具の断面図である。
【図5】本発明の位置決め部材にピンの設けられた変形例に係る電子部品位置決め用治具の断面図である。
【図6】本発明に係る電子部品位置決め用治具の変形例による断面図である。
【図7】従来の半導体用パッケージ位置決め用治具の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態1に係る電子部品位置決め用治具の断面図である。
本実施の形態に係る電子部品位置決め用治具11は、要素部品13を位置決めするカーボン製の位置決め部材15と、位置決め部材15を平面上に支持する台座17とに大別して構成される。位置決め部材15は、要素部品13を収納する要素部品収納部19を露出させて有している。台座17は、位置決め部材15に係止する枠部材21と、枠部材21を固定する本体部23とで形成される。
本実施形態の要素部品13は半導体素子であり、後述する基材27はセラミック基板である。
【0028】
位置決め部材15は、カーボンからなるので、ロウ材25との濡れ性が悪く、ロウ材25が漏出しても位置決め部材15と接合することを防ぐことができる。また、位置決め部材15はカーボンからなるので、軟らかく、要素部品13あるいは基材27(セラミック基板)と摩擦が生じても、要素部品13あるいは基材27を摩耗させたり傷つけたりすることがない。位置決め部材15は、どのようなカーボンであっても良く、C/Cコンポジット材、黒鉛材、C/Cコンポジット材若しくは黒鉛材の表面にガラス状カーボンが被覆された炭素材、又はC/Cコンポジット材若しくは黒鉛材の表面に熱分解炭素の被膜を形成した炭素材等が挙げられる。中でも黒鉛材は、高温で処理され結晶化が進行し特に軟らかいカーボンであるので加工しやすく、要素部品13あるいは基材27と摩擦が生じても、要素部品13あるいは基材27を摩耗させたり傷つけたりすることがないので好適に使用することができる。
C/Cコンポジット材とは、炭素繊維強化炭素複合材のことを言う。
C/Cコンポジット材若しくは黒鉛材の表面にガラス状カーボンが被覆された炭素材とは、C/Cコンポジット材又は黒鉛材の表面にポリ塩化ビニルを熱処理したピッチ、フェノール樹脂、フラン樹脂、コプナ樹脂などを塗布し、炭素化してガラス状炭素の被膜を形成したもののことを言う。
C/Cコンポジット材若しくは黒鉛材の表面に熱分解炭素の被膜を形成した炭素材とは、CVD炉内でC/Cコンポジット材又は黒鉛材の表面にメタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレンなどの炭化水素ガスの熱分解した被膜を形成したもののことを言う。
【0029】
要素部品13としては、半導体素子以外に、ハーメチックパッケージの容器、サーミスタ、サージ・アブソーバ、抵抗、コンデンサなどの電子部品、導体ピンなどの接続部品などが挙げられ、基材27としては、セラミック基板以外に、樹脂基板、金属基板、リードフレーム、TAB(Tape Automated Bonding)、フィルム基板等が挙げられる。
枠部材21は、耐熱性があればどのような材質であってもかまわない。枠部材21は、例えばアルミナ、ジルコニア、窒化珪素、窒化アルミニウム、カーボン等のセラミック、ステンレス等の鉄系合金、白銅、洋白、青銅、黄銅などの銅合金などの金属等が挙げられる。枠部材21はカーボンであることが好ましく、さらに黒鉛材であることがより好ましい。枠部材21は、位置決め部材15の要素部品13を収納する面に存在しているので、カーボンであれば熱衝撃に強く、要素部品13あるいは基材27と摩擦が生じても、要素部品13あるいは基材27を摩耗させたり傷つけたりすることがないので好ましく、黒鉛材はカーボン部材のうちでも特に軟らかいのでより好ましい。
【0030】
本体部23は、耐熱性があればどのような材質であってもかまわない。本体部23は、例えばアルミナ、ジルコニア、窒化珪素、窒化アルミニウム、カーボン等のセラミック、ステンレス等の鉄系合金、白銅、洋白、青銅、黄銅などの銅合金などの金属等が挙げられる。本体部23の材質は、枠部材21と同じ材質を使用することが好ましい。本体部23と枠部材21とで同材質を使用すれば、全温度域で熱膨張に差がないため、枠部材21と本体部23を接続する接合手段29に応力(剪断応力)がかかりにくいからである。
【0031】
位置決め部材15は、台座17の枠部材21を接合手段29により台座17の本体部23に固定することにより挟持される。本体部23と枠部材21とを分解可能にする場合には、接合手段29としてネジを使用することが好ましい。ネジであれば何れも破壊することなく台座17を分解することができる。接合手段29は、枠部材21あるいは本体部23に貫通形成した孔31に挿通して締結される雄ネジ33とすることが望ましい。雌ネジは、ナットを使用しても良いし、枠部材21あるいは本体部23に雌ネジを切っても良い。本体部23の裏側から挿通した雄ネジ33が、枠部材21に貫通形成された孔31(雌ネジ及び埋め込まれたナット)に螺合することで、枠部材21が本体部23に分離可能に固定され、枠部材21及び位置決め部材15の交換が容易となる。
【0032】
雄ネジ33に金属を使用した場合、高温に曝す、あるいは長期間使用すると金属が浸炭し、雄ネジ33をゆるめることができなくなるため、この場合には、雄ネジ33と螺合する雌ネジを形成した枠部材21あるいは本体部23を破壊し分解してもよい。本体部23と枠部材21の何れに雌ネジを形成しても良いが、本体部23は反り防止の観点から1枚であることが好ましく、枠部材21は、複数に分割可能であるので、枠部材21に雌ネジを形成し、枠部材21を破壊するようにすることが好ましい。本体部23よりも枠部材21の方が小さく、枠部材21は枠状であるので細く、容易に破壊できるからである。
【0033】
なお、接合手段29は、上記したネジの他、枠部材21と本体部23を接着しなければどのようなものであってもかまわない。例えば、適宜な嵌め合い力により係合する嵌合ピン、プッシュナットなどの方法で固定しても良い。接合手段29は、どのような材質であってもかまわないが、嵌合ピンを使用する場合、金属を使用することが好ましい。金属であれば強度が非常に大きいので細くすることできるため、電子部品位置決め用治具11の大きさを小さくすることができる。この場合、嵌合ピンに使用する材質としては、鉄、銅の他、炭素鋼、ステンレス、コバール等の鉄合金、白銅、洋白、青銅、黄銅などの銅合金などの金属が挙げられる。
【0034】
位置決め部材15は、枠部材21との間に、本体部23の上面に沿う方向に間隙37を有して挟持されている。間隙37は、位置決め部材15の周囲に形成されている。したがって、位置決め部材15は、挟持状態において、台座17の枠部材21と台座17の本体部23との間で台座17の本体部上を変位可能となっている。位置決め部材15が変位可能に挟持されることで、基材27の熱膨張に連動して位置決め部材15が摺動し、基材27と電子部品位置決め用治具11の材質との熱膨張係数の差を吸収することができ、要素部品(たとえば半導体素子)13と基材27をロウ材25によって高い精度で接合することができる。大きな基材27に多数の要素部品を同時にロウ付けする場合であっても位置決め部材が本体部上で変位可能であるので、熱膨張差によるかじり付きが確実に防止される。なお、図1中、13aは半導体素子を示す。
ロウ付けを行うロウ材としては、銀系、リン銅系、アルミ系のロウ材の他、銀ペーストなどの金属ペースト、半田などがが挙げられ、特に限定はされない。
【0035】
図2(a)は比較例に係る従来の電子部品位置決め用治具501の平面図、(b)は本発明の実施形態2に係る電子部品位置決め用治具11の平面図、図3は本発明の位置決め部材15の隣接部に係止部39を備えた変形例に係る電子部品位置決め用治具11の断面図である。図2(a)、(b)、図3の位置決め部材の表面には要素部品の形状に応じて要素部品収納部が形成されていてもよい。
図3に示す本発明の電子部品位置決め用治具の変形例において、位置決め部材15は、複数に分割され、外側に配列された位置決め部材15の外周縁のみが台座17の枠部材21により係止される。複数に分割した位置決め部材15は、位置決め部材15を集合状態に配列した際に、互いに隣接する位置決め部材15同士で係合する係止部39を備える。このため、従来の電子部品位置決め用治具の構成では図2(a)に示すように、それぞれの位置決め部材509が相互に離間して配置されていたが、本発明の実施形態2に係る電子部品位置決め用治具11では図2(b)に示すように、係止部39を介して連続して配置されることになる。また、図3に示すように、本体部23は、位置決め部材の裏面の一部が露出するよう開口部があってもよい。位置決め部材の裏面にも要素部品収納部を形成し、電子部品位置決め用治具の両面を利用し、位置決めすることができる。
【0036】
図3に示すように、係止部39は、位置決め部材15に形成した階段形状部と、これと相互に嵌り合う逆向きの階段形状部とすることができる。なお、これら、階段形状部同士の係止構造においても、上述したように、位置決め部材15は、本体部23の上面に沿う方向に間隙37を有して配列する。基材と電子部品位置決め用治具との熱膨張係数の差を吸収する作用を損ねないようにするためである。
【0037】
このように、電子部品位置決め用治具11では、台座17の本体部23に、複数の位置決め部材15が縦横に隣接して配置され、外側に配列された位置決め部材15は、外周縁が枠部材21によって本体部23に係止され、脱落が抑制される。この脱落の抑制された外側の位置決め部材15に、内側で隣接する位置決め部材15は、その隣接部が係止部39によって外側の位置決め部材15と本体部23との間に挟まれ、抑制が規制される。つまり、全ての位置決め部材15が摺動自在となり、且つ脱落が抑制される。
【0038】
なお、位置決め部材15は、互いに接した2×2以上の配列を成していることが好ましい。この構成によれば、位置決め部材15が互いに隣接し、位置決め部材15の間に枠部材21がないので、要素部品を高密度に配置し、要素部品と基材をロウ付けすることができる。また、位置決め部材15は、互いに接した2×2を越える配列を成し、少なくとも1組以上の位置決め部材15の隣接部には位置決め部材15の脱落を防止する係止部39が形成されていることが好ましい。この構成によれば、2×2を越える多数の配列を組んでも、位置決め部材15が脱落しない。さらに位置決め部材を細かく分割することにより、電子部品位置決め用治具と基材との間に発生する熱応力を小さくすることができる。
【0039】
図4は本発明の枠部材21が分割された変形例に係る電子部品位置決め用治具11の断面図である。
枠部材21は複数に分割可能に構成することが好ましい。図4に示した電子部品位置決め用治具例では、枠部材21が、第一枠部材41、第二枠部材42、第三枠部材43、第四枠部材44に分割されている。枠部材21を分割可能とすることにより、複数の位置決め部材15の一部に交換の必要が生じた場合、交換対象となる位置決め部材15を直接、あるいは間接的に固定している第一枠部材41又は第二枠部材43のみを固定解除すれば交換対象の位置決め部材15が脱着可能となり、交換不要な他の位置決め部材15は固定したままとして、交換作業を省力化できる。
【0040】
図5は本発明の位置決め部材15にピン35の設けられた変形例に係る電子部品位置決め用治具11の断面図である。
位置決め部材15の表面には、位置決め用のピン35が設けられている。ピン35は金属製であり、位置決め部材15に形成されたピン孔45に裏面から挿入されている。これにより、ピン35が摩耗、湿炭、消耗しても交換することができる。さらに、位置決め部材15の表面に位置決め用のピン35を備え、このピン35を基材27に形成された位置決め穴に挿入すると、位置決め部材間の間隙37を適宜に形成することができる。
ピン35は、位置決め部材15に形成されたピン孔45に相対し、位置決め部材15の要素部品実装面に突き出る突出部47と、突出部47の反対側の基端部49を有し、基端部49には突出部47の直径を超える太径部51が形成される。この構成により、ピン35が位置決め部材15の表側から抜けず、枠部材21と本体部23を分離すれば、ピン35を容易に交換することができる。また、ピン35とピン孔45には隙間があることが好ましい。ピン35と、カーボン製の位置決め部材15との間に隙間があると、浸炭してもピン35を位置決め部材15から抜けやすくできる。
浸炭とは、金属中に炭素か侵入することを言い、ピンが浸炭されると、ピンが太くなったり、表面が粗くなったりし、抜けなくなる問題が発生する。
【0041】
次に、上記構成を有する電子部品位置決め用治具11の作用を説明する。
電子部品位置決め用治具11では、台座17の本体部23に位置決め部材15が配置され、接合手段29によって本体部23に固定された枠部材21が、本体部23との間に位置決め部材15を挟持する。本体部23と枠部材21によって挟持された位置決め部材15は、本体部23の平面上で変位可能となる。これにより、位置決め部材15が平面上で変位(自由に摺動)することで、基材27の熱膨張に連動してそれぞれの位置決め部材15が摺動し、基材27と電子部品位置決め用治具11の材質との熱膨張係数の違いにより発生する熱膨張差が吸収される。これに加えて、電子部品位置決め用治具11の全体が縦向きに立てられたり、反転されたりしても、位置決め部材15が台座上から脱落することがない。また、位置決め部材15にピン35が設けられている場合は、基材27、電子部品13も台座17から脱落しなくなる。
【0042】
また、位置決め部材15が複数で構成され、摺動自在に台座17に収納されているので、要素部品と基材のロウ付け時と、取り外し時の温度(例えば0〜50℃)の温度差によって、位置決め部材15が噛むことがない。台座17は、枠部材21と本体部23とからなる分割可能な構造であるため、破損、又は消耗した場合に、一部の位置決め部材15だけを容易に交換することができる。
【0043】
従来の電子部品位置決め用治具11は、繰り返し使用するうちに要素部品収納部19に酸化、欠け、フラックス等による汚れが生じ、一部の要素部品収納部19が使用できなくなることがある。ロウ付けする要素部品13が小さい場合、高い位置決め精度が必要な場合、ロウ付けする要素部品13が多数の場合には、一部の電子部品収納部が使用不可になりやすい。一部の電子部品収納部19が使用不可能となると、生産性が低下する問題が生じる。これに対し、電子部品位置決め用治具11では、位置決め部材15と台座17とからなり、台座17は枠部材21と本体部23とを接合手段29によって接続しているので、位置決め部材15が要素部品収納部19の破損、又は消耗等の理由で交換が必要になった場合であっても、接合手段29を取り外し、枠部材21と本体部23を分解、あるいは枠部材21又は本体部23を破壊しさえすれば位置決め部材15を取り外し交換することができる。
【0044】
台座17は、位置決め部材15を収納する枠部材21と本体部23とからなり、位置決め部材15は枠部材21と本体部23に挟み込まれているので、位置決め部材15がバラバラにならない。枠部材21と本体部23とは接合手段29を取り外し、離すだけで分解できるので、交換の必要な位置決め部材を、消耗、欠けのない位置決め部材15に容易に交換できる。
【0045】
電子部品位置決め用治具11では、枠部材21と本体部23とからなる台座17に、要素部品収納部19を露出した位置決め部材15が摺動自在に、且つ、取り外しできないように組み付けられている。このため、電子部品13と位置決め部材15が噛んだ場合であっても、要素部品13にロウ付けされた基材(基板)27を強く引き離すことで、位置決め部材が電子部品位置決め用治具から外れることはなく、位置決め部材15から要素部品13を引き離すことができる。
【0046】
電子部品位置決め用治具11は、複数の位置決め部材15を摺動自在に有しているので、ロウ付けする基材27、電子部品位置決め用治具との熱膨張係数が異なっても、位置決め部材15が摺動し電子部品13と、位置決め部材15とが強く噛むことを防ぐことができる。
【0047】
さらに、位置決め部材15が自在に摺動することによって、基材との間に発生する応力を緩和することができる。このため、例えば基材としての(セラミック基板)に複数個の要素部品(半導体素子)を実装する必要がある場合は、半導体素子の実装の回数を減らすために、基材27に多数個の要素部品13を同時に実装し、ロウ付け以降に基材を分割することが望ましい。そういう場合において、上記実施形態は、特に好適である。さらに、ロウ付け後に基材を分割する場合に、あらかじめ図1に示すような分割溝53を基材(セラミック基板)27に形成しておくことが望ましい。このような場合には、ロウ付け時に分割溝53が基材(セラミック基板)27と位置決め部材15との熱膨張差によって割れやすくなるので、この割れを防止するのにも特に有効となる。
【0048】
したがって、本実施の形態に係る電子部品位置決め用治具11によれば、要素部品13を位置決めするための位置決め部材15を支持した台座17が反転されても、位置決め部材15、要素部品13が台座上から脱落することがなく、位置決め部材を容易に交換することが可能となる。
【0049】
図6は、本発明に係る電子部品位置決め用治具の変形例による断面図で、位置決め部材15が、要素部品として電子部品の代わりに、電子部品のパッケージの容器40を位置決めした場合を示す。
【0050】
以上、本発明の各種実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態において示された事項に限定されず、特許請求の範囲及び明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者がその変更・応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
11 電子部品位置決め用治具
13 要素部品
15 位置決め部材
17 台座
21 枠部材
23 本体部
27 基材
29 接合手段
31 孔
33 雄ネジ
39 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
要素部品を位置決めするカーボン製の位置決め部材と、前記位置決め部材を平面上に支持する台座とを備える電子部品位置決め用治具であって、
前記台座は前記位置決め部材に係止する枠部材と該枠部材を固定する本体部とで形成され、
前記位置決め部材は、前記台座の枠部材を接合手段により前記台座の本体部に固定することにより該台座の枠部材と該台座の本体部との間で前記台座の本体部上を変位可能に挟持されることを特徴とする電子部品位置決め用治具。
【請求項2】
前記位置決め部材は複数に分割され、前記複数に分割した位置決め部材は、該位置決め部材を集合状態に配列した際に互いに隣接する位置決め部材間で係合する係止部を備えると共に、外側に配列された前記位置決め部材の外周縁のみが前記台座の枠部材により係止されることを特徴とする請求項1記載の電子部品位置決め用治具。
【請求項3】
前記接合手段は、前記枠部材あるいは前記本体部に貫通形成した孔に挿通して締結される雄ネジであることを特徴とする請求項1記載の電子部品位置決め用治具。
【請求項4】
前記枠部材は複数に分割可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子部品位置決め用治具。
【請求項5】
前記位置決め部材の表面には、位置決めピンを備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子部品位置決め用治具。
【請求項6】
前記位置決めピンは、前記位置決め部材に形成されたピン孔に裏面より挿入されたピンにより構成されることを特徴とする請求項5に記載の電子部品位置決め用治具。
【請求項7】
前記位置決めピンは、前記位置決め部材表面に突き出る突出部と該突出部の反対側の基端部を有し、前記基端部には、前記突出部の直径を超える太径部が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の電子部品位置決め用治具。
【請求項8】
前記位置決めピンは金属であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の電子部品位置決め用治具。
【請求項9】
前記カーボンは、C/Cコンポジット材、黒鉛材、C/Cコンポジット材若しくは黒鉛材の表面にガラス状カーボンが被覆された炭素材、又は、C/Cコンポジット材若しくは黒鉛材の表面に熱分解炭素の被膜を形成した炭素材であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の電子部品位置決め用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−148287(P2012−148287A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7181(P2011−7181)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】