説明

電子部品及びその製造方法

【課題】 成形体が金属磁性体粉末の表面をガラスで被覆した金属磁性体で形成されているにも係らず、各素子ごとに切断する際の切断刃や、成形体を加圧する際の金型やダイスによって、この金属磁性体粉末を被覆しているガラスが損傷する。この電子部品を高湿度環境で使用した場合、成形体の表面が腐食して錆が発生する。また、金属磁性体粉末の表面を被覆しているガラスの厚みが薄いため、充分な耐電圧が得られなかった。
【解決手段】 金属磁性体粉末の表面をガラスで被覆した金属磁性体を用いてコイルを内蔵した成形体を備える。成形体の表面は、セラミックスで被覆される。また、セラミックスが形成された成形体表面には、樹脂が含浸される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属磁性体を用いて形成された成形体内にコイルが埋設された電子部品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大電流が流れる電源回路やDC/DCコンバータ回路用のインダクタやトランス等として使用される電子部品に、図9に示す様に、金属磁性体粉末の表面をガラスで被覆した金属磁性体を用いた金属磁性体層91と導体パターン92を積層して成形体を形成し、金属磁性体粉末の表面をガラスで被覆した金属磁性体を用いて形成された成形体内に、コイルを形成するものがある(例えば、特許文献1を参照。)。
【特許文献1】特開2008-226960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この様な従来の電子部品は、成形体が金属磁性体粉末の表面をガラスで被覆した金属磁性体で形成されているにも係らず、各素子ごとに切断する際の切断刃や、成形体を加圧する際の金型、ダイス等によって、この金属磁性体粉末を被覆しているガラスが損傷し、この電子部品を高湿度環境で使用した場合、成形体の表面が腐食して錆が発生するという問題があった。また、従来の電子部品は、金属磁性体粉末の表面を被覆しているガラスの厚みが薄いため、充分な耐電圧(絶縁破壊電圧)が得られなかった。
【0004】
本発明は、高湿度環境で使用しても腐食せず、耐電圧を向上させることができる電子部品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、金属磁性体粉末の表面をガラスで被覆した金属磁性体を用いてコイルを内蔵した成形体を備えた電子部品において、成形体の表面がセラミックスで被覆され、セラミックスが形成された成形体表面に樹脂が含浸される。
また、本発明は、金属磁性体粉末の表面をガラスで被覆した金属磁性体を用いてコイルを内蔵した成形体を備えた電子部品において、成形体が、金属磁性体粉末の表面をガラスで被覆した金属磁性体を用いた金属磁性体層と、導体パターンと、金属磁性体層と導体パターン間に形成されたセラミックス部を積層して形成され、成形体の表面がセラミックスで被覆され、セラミックスが形成された成形体表面に樹脂が含浸される。
さらに、本発明は、金属磁性体粉末の表面をガラスで被覆した金属磁性体を用いてコイルを内蔵した成形体を備えた電子部品の製造方法において、第1のセラミックス層上に、金属磁性体粉末の表面をガラスで被覆した金属磁性体を用いて形成される複数の金属磁性体層、複数の金属磁性体層のそれぞれの表面に形成される導体パターン、複数の金属磁性体層間に形成される第2のセラミックス層を積み重ねる工程を繰り返し、最上層に第3のセラミックス層を形成して内部に金属磁性体層と導体パターンが積層された複数の積層体を内蔵する基板を形成する第1の工程、基板を積層体間に位置する第2のセラミック層に沿って切断して複数の成形体を形成する第2の工程、成形体を加圧、焼成する第3の工程、成形体に樹脂が含浸される第4の工程を備える。
またさらに、本発明は、金属磁性体粉末の表面をガラスで被覆した金属磁性体を用いてコイルを内蔵した成形体を備えた電子部品の製造方法において、第1のセラミックス層上に、金属磁性体粉末の表面をガラスで被覆した金属磁性体を用いて形成される複数の金属磁性体層、導体パターン、金属磁性体層と導体パターン間に形成されるセラミックス部、複数の金属磁性体層間に形成される第2のセラミックス層を所定の順序で積み重ねる工程を繰り返し、最上層に第3のセラミックス層を形成して内部に金属磁性体層とセラミックス部と導体パターンが積層された複数の積層体を内蔵する基板を形成する第1の工程、基板を積層体間に位置する第2のセラミック層に沿って切断して複数の成形体を形成する第2の工程、成形体を加圧、焼成する第3の工程、成形体に樹脂が含浸される第4の工程を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明の電子部品は、金属磁性体粉末の表面をガラスで被覆した金属磁性体を用いてコイルを内蔵した成形体の表面がセラミックスで被覆され、セラミックスが形成された成形体表面に樹脂が含浸されるので、高湿度環境において電子部品が腐食するのを防止でき、耐電圧も向上させることができる。
また、本発明の電子部品の製造方法は、第1のセラミックス層上に、金属磁性体粉末の表面をガラスで被覆した金属磁性体を用いて形成される複数の金属磁性体層、複数の金属磁性体層のそれぞれの表面に形成される導体パターン、複数の金属磁性体層間に形成される第2のセラミックス層を積み重ねる工程を繰り返し、最上層に第3のセラミックス層を形成して内部に金属磁性体層と導体パターンが積層された複数の積層体を内蔵する基板を形成する第1の工程、基板を積層体間に位置する第2のセラミック層に沿って切断して複数の成形体を形成する第2の工程、成形体を加圧、焼成する第3の工程、成形体に樹脂が含浸される第4の工程を備えるので、高湿度環境において電子部品が腐食するのを防止でき、耐電圧も向上させることができる。
さらに、本発明の電子部品の製造方法は、第1のセラミックス層上に、金属磁性体粉末の表面をガラスで被覆した金属磁性体を用いて形成される複数の金属磁性体層、導体パターン、金属磁性体層と導体パターン間に形成されるセラミックス部、複数の金属磁性体層間に形成される第2のセラミックス層を所定の順序で積み重ねる工程を繰り返し、最上層に第3のセラミックス層を形成して内部に金属磁性体層とセラミックス部と導体パターンが積層された複数の積層体を内蔵する基板を形成する第1の工程、基板を積層体間に位置する第2のセラミック層に沿って切断して複数の成形体を形成する第2の工程、成形体を加圧、焼成する第3の工程、成形体に樹脂が含浸される第4の工程を備えるので、高湿度環境において電子部品が腐食するのを防止でき、耐電圧も向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の電子部品は、金属磁性体粉末の表面がガラスで被覆された金属磁性体を用いた金属磁性体層と導体パターンを積層して成形体が形成され、導体パターンによって成形体の内部にコイルが形成される。コイルは成形体に形成された外部端子間に接続される。この成形体は、その表面がセラミックスで被覆される。セラミックスは、金属磁性体粉末を被覆しているガラスと同じ組成のガラス粉末が添加されて、金属磁性体の焼成収縮挙動と類似する様に調整される。このセラミックスが形成された成形体の表面には樹脂が含浸される。
従って、本発明の電子部品は、成形体を構成する金属磁性体が各素子ごとに切断する際の切断刃や、成形体を加圧する際の金型やダイスに接触することがなく、金属磁性体粉末を被覆しているガラスが損傷するのを防止できる。また、本発明の電子部品は、セラミックスが形成された成形体の表面に樹脂が含浸されているので、含浸された樹脂によって成形体表面に形成されたセラミックス中の空隙を埋めることができ、水分等腐食を引き起こす物質の浸入を防止できる。さらに、本発明の電子部品は、素子の強度を向上させることができる。
【実施例】
【0008】
以下、本発明の電子部品及びその製造方法の実施例を図1乃至図8を参照して説明する。
図1は本発明の電子部品の第1の実施例を示す分解斜視図であり、11A〜11Dは金属磁性体層、12A〜12Cは導体パターン、13A〜13Fはセラミックス層である。
金属磁性体層11A〜11Dは、金属磁性体として、Cr、Si及び、鉄を含有する金属磁性体(いわゆる、Fe−Cr−Si系金属磁性合金)の粉末に、SiO、B、ZnOを主成分とし、かつ、軟化温度が600±50℃のガラスをその体積が金属磁性体粉末の体積の3%になる様に添加し、機械的処理を施して、金属磁性体粉末の表面全体をガラスで被覆したものを用いて形成される。また、導体パターン12A〜12Cは、銀、銀系、金、金系、銅、銅系等の金属材料をペースト状にした導体ペーストを用いて形成される。さらに、セラミックス層13A〜13Fは、二酸化珪素を主成分とするセラミックス粉末に、軟化温度が600±50℃のガラス粉末を10〜40wt%添加したセラミックスが用いられる。このガラス粉末は、金属磁性体粉を被覆しているガラスと同じ組成のものが用いられる。
セラミックス層13A上には、セラミックス層13Aの大きさよりも小さく形成された金属磁性体層11Aと、この金属磁性体層11Aの側面に金属磁性体層11Aを取り囲む様に形成されたセラミックス層13Bが積層される。
この金属磁性体層11Aとセラミックス層13Bは同じ厚みになる様に形成される。また、金属磁性体層11Aとセラミックス層13Bを合わせた大きさはセラミックス層13Aと同じ大きさに形成される。さらに、金属磁性体層11Aの表面には、コイル用導体パターン12Aが形成される。このコイル用導体パターン12Aは1ターン未満分が形成される。コイル用導体パターン12Aの一端はセラミックス層13Bの端面まで引き出される。この金属磁性体層11Aとセラミックス層13B上には、金属磁性体層11Aと同じ大きさの金属磁性体層11Bと、金属磁性体層11Bの側面を取り囲む様にセラミックス層13Bと同じ大きさに形成されたセラミックス層13Cが積層される。
この金属磁性体層11Bとセラミックス層13Cは同じ厚みになる様に形成される。金属磁性体層11Bの表面には、コイル用導体パターン12Bが形成される。このコイル用導体パターン12Bは1ターン未満分が形成される。コイル用導体パターン12Bの一端は金属磁性体層11Bのスルーホール内の導体を介してコイル用導体パターン12Aの他端に接続される。この金属磁性体層11Bとセラミックス層13C上には、金属磁性体層11Bと同じ大きさの金属磁性体層11Cと、金属磁性体層11Cの側面を取り囲む様にセラミックス層13Cと同じ大きさに形成されたセラミックス層13Dが積層される。
この金属磁性体層11Cとセラミックス層13Dは同じ厚みになる様に形成される。金属磁性体層11Cの表面には、コイル用導体パターン12Cが形成される。コイル用導体パターン12Cは、1ターン未満が形成され、一端が金属磁性体層11Cのスルーホール内の導体を介してコイル用導体パターン12Bの他端に接続され、他端がセラミックス層13Dの端面まで引き出される。
この金属磁性体層11Cとセラミックス層13D上には、金属磁性体層11Cと同じ大きさの金属磁性体層11Dと、金属磁性体層11Dの側面を取り囲む様にセラミックス層13Dと同じ大きさに形成されたセラミックス層13Eが積層される。この金属磁性体層11Dとセラミックス層13Eは同じ厚みになる様に形成される。
この金属磁性体層11Dとセラミックス層13E上には、セラミックス層13Fが積層される。
これらが積層されることにより外表面がセラミックスで覆われた成形体が形成され、成形体を被覆しているセラミックスに樹脂が含浸される。この成形体内には、コイル用導体パターン12A乃至コイル用導体パターン12Cが螺旋状に接続されることによりコイルが形成される。コイルの両端は、成形体のセラミックスの表面まで引き出され、図2に示す様に成形体の両端面に形成された外部端子14、15間に接続される。
【0009】
この様な電子部品は以下の様にして製造される。まず、PETフィルム等の支持体30の表面にセラミックスを30μmの厚みで印刷、塗布して、図3(A)に示す様に、支持体30上にセラミックス層33Aが形成される。このセラミックスは、二酸化珪素を主成分とするセラミックス粉末に、SiO、B、ZnOを主成分とし、かつ、軟化温度が600±50℃のガラス粉末を10〜40wt%添加したものが用いられる。セラミックス粉末の平均粒径は1μm程度、ガラス粉末の平均粒径は2μm程度のものが望ましい。このセラミックス粉末とガラス粉末に、樹脂バインダとしてエチルセルロースを7.4wt%、分散剤を0.5wt%それぞれ添加し、これをペースト状にしてセラミックスペーストが形成される。このセラミックスペーストを用いてセラミックス層33Aが形成される。
次に、このセラミックス層33Aの表面に金属磁性体を印刷、塗布して、図3(B)に示す様に、セラミックス層33Aの表面に、互いに接触しない様に所定の間隔を空けて複数の金属磁性体層31Aが形成される。金属磁性体としては、Cr、Si及び、鉄を含有する金属磁性体(いわゆる、Fe−Cr−Si系金属磁性合金)の粉末が用いられる。また、金属磁性体粉末の平均粒径は20μm程度のものが望ましい。この金属磁性体粉末は、機械的方法によってその表面全体にガラスの被膜が形成される。このガラスによる金属磁性体粉末表面の被覆は、成形体の透磁率を考慮して、ガラスと金属磁性体の体積比が3%になる様に調整される。また、このガラスは、SiO、B、ZnOを主成分とし、かつ、軟化温度が600±50℃のものが用いられる。このガラスで被覆された金属磁性体粉末に、樹脂バインダとしてエチルセルロースを2.5wt%、分散剤を0.5wt%添加し、これをペースト状にして金属磁性体ペーストが形成される。この金属磁性体ペーストを用いて金属磁性体層31Aが形成される。
続いて、セラミックス層33Aの表面の複数の金属磁性体層31A間にセラミックスを印刷、塗布し、図3(C)に示す様に、複数の金属磁性体層31A間にセラミックス層33Bが形成される。このセラミックス層33Bは、セラミックス層33Aと同じセラミックスを、それぞれの金属磁性体層31Aを取り囲む様に、金属磁性体層31Aの厚みと同じ厚みに印刷して形成される。
さらに、複数の金属磁性体層31Aの表面に導体ペーストを印刷して、図3(D)に示す様に、それぞれの金属磁性体層31Aの表面にコイル用導体パターン32Aが形成される。このコイル用導体パターン32Aは、その一端がセラミックス層33Bの表面の後述の各素子に切断する際の切断線まで延在する様に形成される。
さらに続いて、このコイル用導体パターン32Aが形成された複数の金属磁性体層31Aの表面全体に金属磁性体を印刷、塗布し、図3(E)に示す様に、複数の金属磁性体層31Aの表面にそれぞれ金属磁性体層31Bが形成される。この金属磁性体層31Bは、金属磁性体層31Aと同じ金属磁性体を用いて、金属磁性体層31Aの大きさと同じ大きさに形成される。また、この金属磁性体層31Bのコイル用導体パターン32Aの他端と対応する位置には、それぞれスルーホールが形成される。
次に、複数の金属磁性体層31A間に位置するセラミック層33Bの表面にセラミックスを印刷、塗布し、図3(F)に示す様に、複数の金属磁性体層31B間にセラミックス層33Cが形成される。セラミックス層33Cは、セラミックス層33Bと同じセラミックスを、それぞれの金属磁性体層31Bを取り囲む様に、金属磁性体層31Bの厚みと同じ厚みに印刷して形成される。
続いて、複数の金属磁性体層31Bの表面に導体ペーストを印刷して、図3(G)に示す様に、それぞれの金属磁性体層31Bの表面にコイル用導体パターン32Bが形成される。このコイル用導体パターン32Bは、その一端が金属磁性体層31Bのスルーホール内に充填された導体によってコイル用導体パターン32Aの他端と接続される。
さらに続いて、このコイル用導体パターン32Bが形成された複数の金属磁性体層31Bの表面全体に金属磁性体を印刷、塗布し、図3(H)に示す様に、複数の金属磁性体層31Bの表面にそれぞれ金属磁性体層31Cが形成される。この金属磁性体層31Cは、金属磁性体層31Bと同じ金属磁性体を用いて、金属磁性体層31Bの大きさと同じ大きさに形成される。また、この金属磁性体層31Cのコイル用導体パターン32Bの他端と対応する位置には、それぞれスルーホールが形成される。
さらに、複数の磁性体層31B間に位置するセラミックス層33Cの表面にセラミックスを印刷、塗布し、図3(I)に示す様に、複数の金属磁性体層31C間にセラミックス層33Dが形成される。セラミックス層33Dは、セラミックス層33Cと同じセラミックスを、それぞれの金属磁性体層31Cを取り囲む様に、金属磁性体層31Cの厚みと同じ厚みに印刷して形成される。
次に、複数の金属磁性体層31Cの表面に導体ペーストを印刷して、図3(J)に示す様に、それぞれの金属磁性体層31Cの表面にコイル用導体パターン32Cが形成される。コイル用導体パターン32Cは、その一端が金属磁性体層31Cのスルーホール内に充填された導体によってコイル用導体パターン32Bの他端と接続され、他端がセラミックス層33Dの表面の後述の各素子に切断する際の切断線まで延在する様に形成される。この様にコイル用導体パターン32A乃至コイル用導体パターン32Cが螺旋状に接続されることによりコイルが形成される。
さらに、このコイル用導体パターン32Bが形成された複数の金属磁性体層31Cの表面に金属磁性体を印刷、塗布し、図3(K)に示す様に、それぞれの金属磁性体層31Cの表面に金属磁性体層31Dが形成される。この金属磁性体層31Dは、金属磁性体層31Cと同じ金属磁性体を用いて、金属磁性体層31Cの大きさと同じ大きさに形成される。
続いて、複数の磁性体層31C間に位置するセラミックス層33Dの表面にセラミックスを印刷、塗布し、図3(L)に示す様に、複数の磁性体層31D間にセラミックス層33Eが形成される。セラミックス層33Eは、セラミックス層33Dと同じセラミックスを、それぞれの金属磁性体層31Dを取り囲む様に、金属磁性体層31Dの厚みと同じ厚みに印刷して形成される。
この複数の金属磁性体層31Dとセラミックス層33Eの表面全体にセラミックスを30μmの厚みで印刷、塗布し、図3(M)に示す様に、複数の金属磁性体層31Dとセラミックス層33Eの上面にセラミックス層33Fが形成される。
この様にして金属磁性体層と導体パターンが積層された複数の積層体が内部に形成された基板は、複数の積層体間に位置するセラミックス層に沿って(すなわち、図3(M)に点線で示される切断線に沿って)切断されると共に、支持体30から剥離されることにより、図4(A)に示す様にそれぞれの成形体40に分離される。基板を切断する際の切断刃は、積層体に接触しない様に複数の積層体間の間隔よりも厚みの薄い刃が用いられる。
この成形体40は、金型内で約5t/cmの圧力を加えて加圧成型した後、大気中において400℃で脱脂し、窒素中において800℃で熱処理される。この様にして表面全体がセラミックスで被覆された成形体が形成される。
そして、図4(B)に示す様に成形体の両端面に外部端子44、45を形成した後、この成形体に樹脂を真空含浸することにより、図4(C)に示す様に、成形体表面に形成されたセラミックス中の空隙に樹脂が充填される。この樹脂が含浸された成形体は、バレル研磨が施され、外部端子44、45にニッケルメッキとスズメッキが施される。
【0010】
この様に形成された本発明の電子部品について、25℃で濃度5%の食塩水に100時間浸漬する塩水実験を行った。従来の電子部品、成形体の表面をセラミックスだけで被覆したもの及び、従来の電子部品に樹脂を含浸したものは表面が腐食して錆が発生したのに対し、成形体の表面をセラミックスで被覆し、さらに樹脂を含浸した本発明の電子部品は腐食することがなく、錆も発生しなかった。
【0011】
図5は本発明の電子部品の別の製造方法を説明する斜視図である。まず、PETフィルム等の支持体50の表面に、二酸化珪素を主成分とするセラミックス粉末に後述の金属磁性体粉末を被覆しているガラスと同じ組成のガラス粉末を10〜40wt%添加し、ペースト状にしたセラミックスペーストを30μmの厚みで印刷、塗布して、図5(A)に示す様に、支持体50上にセラミックス層53Aが形成される。
次に、このセラミックス層53Aの表面に、Cr、Si及び、鉄を含有する金属磁性体(いわゆる、Fe−Cr−Si系金属磁性合金)の粉末の表面を機械的方法によってSiO、B、ZnOを主成分とし、かつ、軟化温度が600±50℃のガラスで被覆した金属磁性体をペースト状にした金属磁性体ペーストを印刷、塗布して、図5(B)に示す様に、セラミックス層53Aの表面に、互いに接触しない様に所定の間隔を空けて複数の金属磁性体層51Aが形成される。
続いて、複数の金属磁性体層51Aの表面とセラミックス層53Aの表面に導体ペーストを印刷して、図5(C)に示す様に、金属磁性体層51Aの表面とセラミックス層53Aの表面に跨ってコイル用導体パターン52Aが形成される。セラミックス層53Aの表面に形成されたコイル用導体パターン52Aの一端は、後述の各素子に切断する際の切断線まで延在する様に形成される。
さらに続いて、このコイル用導体パターン52Aの一端が形成されたセラミックス層53Aの表面にセラミックスペーストを印刷、塗布し、図5(D)に示す様に、複数の金属磁性体層51A間にセラミックス層53Bが形成される。このセラミックス層53Bは、それぞれの金属磁性体層51Aを取り囲む様に、金属磁性体層51Aの厚みと同じ厚みに形成される。
さらに、コイル用導体パターン52Aが形成された複数の金属磁性体層51Aの表面全体に金属磁性体ペーストを印刷、塗布し、図5(E)に示す様に、複数の金属磁性体層51Aの表面にそれぞれ金属磁性体層51Bが形成される。この金属磁性体層51Bは、金属磁性体層51Aの大きさと同じ大きさに形成され、コイル用導体パターン52Aの他端と対応する位置にそれぞれスルーホールが形成される。
次に、複数の金属磁性体層51Bの表面に導体ペーストを印刷して、図5(F)に示す様に、それぞれの金属磁性体層51Bの表面にコイル用導体パターン52Bが形成される。このコイル用導体パターン52Bは、その一端が金属磁性体層51Bのスルーホール内に充填された導体によってコイル用導体パターン52Aの他端と接続される。
さらに、セラミックス層53Bの表面にセラミックスペーストを印刷、塗布し、図5(G)に示す様に、複数の金属磁性体層51B間にセラミックス層53Cが形成される。セラミックス層53Cは、金属磁性体層51Bを取り囲む様に、金属磁性体層51Bの厚みと同じ厚みに形成される。
続いて、コイル用導体パターン52Bが形成された複数の金属磁性体層51Bの表面全体に金属磁性体ペーストを印刷、塗布し、図5(H)に示す様に、複数の金属磁性体層51Bの表面にそれぞれ金属磁性体層51Cが形成される。この金属磁性体層51Cは、金属磁性体層51Bの大きさと同じ大きさに形成され、この金属磁性体層51Cのコイル用導体パターン52Bの他端と対応する位置にそれぞれスルーホールが形成される。
さらに続いて、複数の金属磁性体層51Cの表面とセラミックス層53Cの表面に導体ペーストを印刷して、図5(I)に示す様に、それぞれの金属磁性体層51Cの表面とセラミックス層53Cの表面に跨ってコイル用導体パターン52Cが形成される。コイル用導体パターン52Cの一端は、金属磁性体層51Cのスルーホール内に充填された導体によってコイル用導体パターン52Bの他端と接続される。また、セラミックス層53Cの表面に形成されたコイル用導体パターン52Cの他端は、後述の各素子に切断する際の切断線まで延在する様に形成される。この様にコイル用導体パターン52A乃至コイル用導体パターン52Cが螺旋状に接続されることによりコイルが形成される。
次に、コイル用導体パターン52Cの他端が形成されたセラミックス層53Cの表面にセラミックスペーストを印刷、塗布し、図5(J)に示す様に、複数の金属磁性体層51C間にセラミックス層53Dが形成される。セラミックス層53Dは、金属磁性体層51Cを取り囲む様に、金属磁性体層51Cの厚みと同じ厚みに形成される。
続いて、コイル用導体パターン52Cが形成された複数の金属磁性体層51Cの表面全体に金属磁性体ペーストを印刷、塗布し、図5(K)に示す様に、それぞれの金属磁性体層51Cの表面に金属磁性体層51Dが形成される。この金属磁性体層51Dは、金属磁性体層51Cの大きさと同じ大きさに形成される。
さらに続いて、セラミックス層53Dの表面にセラミックスペーストを印刷、塗布し、図5(L)に示す様に、複数の磁性体層51D間にセラミックス層53Eが形成される。セラミックス層53Eは、それぞれの金属磁性体層51Dを取り囲む様に、金属磁性体層51Dの厚みと同じ厚みに形成される。
さらに、この複数の金属磁性体層51Dとセラミックス層53Eの表面全体にセラミックスペーストを30μmの厚みで印刷、塗布し、図5(M)に示す様に、複数の金属磁性体層とセラミックス層の上面にセラミックス層53Fが形成される。
この様にして金属磁性体層と導体パターンが積層された複数の積層体が内部に形成された基板は、複数の積層体間に位置するセラミックス層に沿って(すなわち、図5(M)に点線で示される切断線に沿って)切断されると共に、支持体50から剥離されることにより、図4(A)に示す様にそれぞれの成形体40に分離される。基板を切断する際の切断刃は、積層体に接触しない様に複数の積層体間の間隔よりも厚みの薄い刃が用いられる。
この成形体40は、金型内で約5t/cmの圧力を加えて加圧成型した後、大気中において400℃で脱脂し、窒素中において800℃で熱処理される。この様にして表面全体がセラミックスで被覆された成形体が形成される。
そして、図4(B)に示す様に成形体の両端面に外部端子44、45を形成した後、この成形体に樹脂を真空含浸することにより、図4(C)に示す様に成形体表面に形成されたセラミックス中の空隙に樹脂が充填される。この樹脂が含浸された成形体は、バレル研磨が施され、外部端子44、45にニッケルとスズのメッキが施される。
【0012】
図6は本発明の電子部品の第2の実施例を示す分解斜視図である。
二酸化珪素を主成分とするセラミックス粉末に、軟化温度が600±50℃のガラス粉末を10〜40wt%添加したセラミックスを用いて形成したセラミックス層63A上には、セラミックス層63Aの大きさよりも小さい金属磁性体層61Aと、この金属磁性体層61Aの側面に金属磁性体層61Aを取り囲む様に形成されたセラミックス層63Bが積層される。金属磁性体層は、金属磁性体として、Cr、Si及び、鉄を含有する金属磁性体(いわゆる、Fe−Cr−Si系金属磁性合金)の粉末に、SiO、B、ZnOを主成分とし、かつ、軟化温度が600±50℃のガラスをその体積が金属磁性体粉末の体積の3%になる様に添加し、機械的処理を施して、金属磁性体粉末の表面全体をガラスで被覆したものを用いて形成される。また、セラミックス粉末に添加されるガラス粉末は、金属磁性体粉末を被覆しているガラスと同じ組成のものが用いられる。さらに、金属磁性体層61Aとセラミックス層63Bは同じ厚みに形成される。またさらに、金属磁性体層61Aとセラミックス層63Bを合わせた大きさはセラミックス層63Aと同じ大きさに形成される。
金属磁性体層61Aの表面には、セラミックス層63Aと同じ材料を用いてセラミックス部66Aが形成される。セラミックス部66Aは、後述のコイル用導体パターンが金属磁性体層と接触しない様にコイル用導体パターンと同じ形状でコイル用導体パターンよりも幅広に形成される。セラミックス部66Aの一端は、少なくとも金属磁性体層61Aの端面まで(図6ではセラミックス層63Bの端面まで)引き出される。セラミックス部66Aの表面には、コイル用導体パターン62Aが形成される。このコイル用導体パターン62Aは、1ターン未満分が形成され、一端がセラミックス層63Bの端面まで引き出される。コイル用導体パターン62Aが形成されたセラミックス部66Aの表面には、セラミックス部66Aと同じ形状、大きさのセラミックス部(図示を省略)が形成される。この金属磁性体層61Aとセラミックス層63B上には、金属磁性体層61Aと同じ大きさの金属磁性体層61Bと、金属磁性体層61Bの側面を取り囲む様にセラミックス層63Bと同じ大きさのセラミックス層63Cが積層される。
金属磁性体層61Bとセラミックス層63Cは同じ厚みになる様に形成される。金属磁性体層61Bの表面には、後述のコイル用導体パターンと同じ形状でコイル用導体パターンよりも幅広のセラミックス部66Bが形成される。このセラミックス部66Bの表面には、コイル用導体パターン62Bが形成される。コイル用導体パターン62Bは1ターン未満分が形成される。コイル用導体パターン62Bの一端は、金属磁性体層61Bとセラミックス部のスルーホール内の導体を介してコイル用導体パターン62Aの他端に接続される。このコイル用導体パターン62Bが形成されたセラミック部66Bの表面には、セラミックス部66Bと同じ形状、大きさのセラミックス部(図示を省略)が形成される。この金属磁性体層61Bとセラミックス層63C上には、金属磁性体層61Bと同じ大きさの金属磁性体層61Cと、金属磁性体層61Cの側面を取り囲む様にセラミックス層63Cと同じ大きさに形成されたセラミックス層63Dが積層される。
金属磁性体層61Cとセラミックス層63Dは同じ厚みになる様に形成される。金属磁性体層61Cの表面には、後述のコイル用導体パターンと同じ形状でコイル用導体パターンよりも幅広のセラミックス部66Cが形成される。このセラミックス部66Cの一端は、少なくとも金属磁性体層61Cの端面まで(図6ではセラミックス層63Dの端面まで)引き出される。セラミックス部66Cの表面には、コイル用導体パターン62Cが形成される。このコイル用導体パターン62Cは、1ターン未満分が形成され、一端が金属磁性体層61Cとセラミックス部のスルーホール内の導体を介してコイル用導体パターン62Bの他端に接続され、他端がセラミックス層63Dの端面まで引き出される。コイル用導体パターン62Cが形成されたセラミックス部66Cの表面には、セラミックス部66Cと同じ形状、大きさのセラミックス部(図示を省略)が形成される。
この金属磁性体層61Cとセラミックス層63D上には、金属磁性体層61Cと同じ大きさの金属磁性体層61Dと、金属磁性体層61Dの側面を取り囲む様にセラミックス層63Dと同じ大きさに形成されたセラミックス層63Eが積層される。この金属磁性体層61Dとセラミックス層63Eは同じ厚みになる様に形成される。
この金属磁性体層61Dとセラミックス層63E上には、セラミックス層63Fが積層される。
これらが積層されて外表面がセラミックスで覆われた成形体が形成され、セラミックスに樹脂が含浸される。この成形体内には、コイル用導体パターン62A乃至コイル用導体パターン62Cが螺旋状に接続されることによりコイルが形成される。コイルの両端は、成形体のセラミックスの表面まで引き出され、成形体の両端面に形成された外部端子間に接続される。
この様に形成された電子部品は、コイル用導体パターンの上下に形成されたセラミックス部によって、コイル用導体パターンが金属磁性体に接触するのを防止できるので、電子部品の耐電圧を高くすることができる。
【0013】
この様な電子部品は以下の様にして製造される。まず、PETフィルム等の支持体70の表面に、二酸化珪素を主成分とするセラミックス粉末に、SiO、B、ZnOを主成分とし、かつ、軟化温度が600±50℃のガラス粉末を10〜40wt%添加し、これにバインダを加えてペースト状にしたセラミックスペーストを30μmの厚みで印刷、塗布して、図7(A)に示す様に、支持体70上にセラミックス層73Aが形成される。このセラミックス粉末の平均粒径は1μm程度、ガラス粉末の平均粒径は2μm程度のものが望ましい。
次に、このセラミックス層73Aの表面に、Cr、Si及び、鉄を含有する金属磁性体(いわゆる、Fe−Cr−Si系金属磁性合金)の粉末の表面を機械的方法によってSiO、B、ZnOを主成分とし、かつ、軟化温度が600±50℃のガラスで被覆した金属磁性体をペースト状にした金属磁性体ペーストを印刷、塗布して、図7(B)に示す様に、セラミックス層73Aの表面に、互いに接触しない様に所定の間隔を空けて複数の金属磁性体層71Aが形成される。金属磁性体粉末は平均粒径を20μm程度にするのが望ましい。また、ガラスによる金属磁性体粉末表面の被覆は、成形体の透磁率を考慮して、ガラスと金属磁性体の体積比が3%になる様に調整される。
続いて、セラミックス層73Aの表面にセラミックスペーストを印刷、塗布し、図7(C)に示す様に、複数の金属磁性体層71A間にセラミッックス層73Bが形成される。このセラミックス層73Bは、それぞれの金属磁性体層73Aを取り囲む様に、金属磁性体層73Aの厚みと同じ厚みに形成される。
さらに、複数の金属磁性体層71Aの表面にセラミックスペーストを印刷して、図7(D)に示す様に、それぞれの金属磁性体層71Aの表面に後述のコイル用導体パターンと同じ形状でコイル用導体パターンよりも幅が数十μm〜数百μm広いセラミックス部76Aが形成される。それぞれのセラミックス部76Aの一端は、金属磁性体層71Aの端面まで引き出され、図7(D)ではセラミックス層73Bの表面の後述の各素子に切断する際の切断線まで延在する様に形成される。
さらに続いて、セラミックス部76Aの表面に導体ペーストを印刷して、図7(E)に示す様に、それぞれのセラミックス部76Aの表面にコイル用導体パターン72Aが形成される。コイル用導体パターン72Aの一端は、セラミックス層73Bの後述の各素子に切断する際の切断線まで延長する様に形成される。
次に、このコイル用導体パターン72Aが形成されたセラミックス部76Aの表面にセラミックスペーストを印刷、塗布して、セラミックス部76Aの表面にセラミックス部76Aと同じ形状、大きさのセラミックス部を形成した後、複数の金属磁性体層71Aの表面全体に金属磁性体ペーストを印刷、塗布し、図7(F)に示す様に、複数の金属磁性体層71Aの表面にそれぞれ金属磁性体層71Bが形成される。この金属磁性体層71Bは、金属磁性体層71Aの大きさと同じ大きさに形成される。また、コイル用導体パターン72Aよりも上層に形成されたセラミックス部と金属磁性体層71Bのコイル用導体パターン72Aの他端と対応する位置には、それぞれスルーホールが形成される。
さらに、セラミックス層73Bの表面にセラミックスペーストを印刷、塗布し、図7(G)に示す様に、複数の金属磁性体層71B間にセラミックス層73Cが形成される。セラミックス層73Cは、それぞれの金属磁性体層71Bを取り囲む様に、金属磁性体層71Bの厚みと同じ厚みに形成される。
続いて、複数の金属磁性体層71Bの表面にセラミックスペーストを印刷して、図7(H)に示す様に、それぞれの金属磁性体層71Bの表面に後述のコイル用導体パターンと同じ形状でコイル用導体パターンよりも幅が数十μm〜数百μm広いセラミックス部76Bが形成される。それぞれのセラミックス部76Bのコイル用導体パターン72Aの他端と対応する位置には、それぞれスルーホールが形成される。
さらに続いて、セラミックス部76Bの表面に導体ペーストを印刷して、図7(I)に示す様に、それぞれのセラミックス部76Bの表面にコイル用導体パターン72Bが形成される。このコイル用導体パターン72の一端は、セラミックス部と金属磁性体層71Bのスルーホール内の導体を介してコイル用導体パターン72Aの他端に接続される。
またさらに続いて、このコイル用導体パターン72Bが形成されたセラミックス部76Bの表面にセラミックスペーストを印刷、塗布して、セラミックス部76Bの表面にセラミックス部76Bと同じ形状、大きさのセラミックス部を形成した後、複数の金属磁性体層71Bの表面全体に金属磁性体ペーストを印刷、塗布し、図7(J)に示す様に、複数の金属磁性体層71Bの表面にそれぞれ金属磁性体層71Cが形成される。この金属磁性体層71Cは、金属磁性体層71Bの大きさと同じ大きさに形成される。また、コイル用導体パターン72Bよりも上層に形成されたセラミックス部と金属磁性体層71Cのコイル用導体パターン72Bの他端と対応する位置には、それぞれスルーホールが形成される。
次に、セラミックス層73Cの表面にセラミックスペーストを印刷、塗布し、図7(K)に示す様に、複数の金属磁性体層71C間にセラミックス層73Dが形成される。セラミックス層73Dは、それぞれの金属磁性体層71Cを取り囲む様に、金属磁性体層71Cの厚みと同じ厚みに形成される。
続いて、複数の金属磁性体層71Cの表面にセラミックスペーストを印刷して、図7(L)に示す様に、それぞれの金属磁性体層71Cの表面に後述のコイル用導体パターンと同じ形状でコイル用導体パターンよりも幅が数十μm〜数百μm広いセラミックス部76Cが形成される。それぞれのセラミックス部76Cの一端のコイル用導体パターン72Bの他端と対応する位置には、それぞれスルーホールが形成される。また、それぞれのセラミックス部76Cの他端は、金属磁性体層71Cの端面まで引き出され、図7(L)ではセラミックス層73Dの表面の後述の各素子に切断する際の切断線まで延在する様に形成される。
さらに、セラミックス部76Cの表面に導体ペーストを印刷して、図7(M)に示す様に、それぞれのセラミックス部76Cの表面にコイル用導体パターン72Cが形成される。コイル用導体パターン72Cは、一端がセラミックス部と金属磁性体層のスルーホール内の導体を介してコイル用導体パターン72Bの他端に接続され、他端がセラミックス層73Dの後述の各素子に切断する際の切断線まで延在する様に形成される。
またさらに、このコイル用導体パターン72Cが形成されたセラミックス部76Cの表面にセラミックスペーストを印刷、塗布して、セラミックス部76Cの表面にセラミックス部76Cと同じ形状、大きさのセラミックス部を形成した後、複数の金属磁性体層71Cの表面に金属磁性体ペーストを印刷、塗布し、図7(N)に示す様に、複数の金属磁性体層71Cの表面にそれぞれ金属磁性体層71Dが形成される。この金属磁性体層71Dは、金属磁性体層71Cの大きさと同じ大きさに形成される。
さらに続いて、セラミックス層73Dの表面にセラミックスペーストを印刷、塗布し、図7(O)に示す様に、複数の金属磁性体層71D間にセラミックス層73Eが形成される。セラミックス層73Eは、それぞれの金属磁性体層71Dを取り囲む様に、金属磁性体層71Dの厚みと同じ厚みに印刷して形成される。
この複数の金属磁性体層71Dとセラミックス層73Eの表面全体にセラミックスペーストを30μmの厚みで印刷、塗布し、図7(P)に示す様に、複数の金属磁性体層とセラミックス層の上面にセラミックス層73Fが形成される。
この様にして金属磁性体層と導体パターンが積層された複数の積層体が内部に形成された基板は、複数の積層体間に位置するセラミックス層に沿って(すなわち、図7(P)に点線で示される切断線に沿って)切断されると共に、支持体70から剥離されることにより、それぞれの成形体に分離される。基板を切断する際の切断刃は、積層体に接触しない様に複数の積層体間の間隔よりも厚みの薄い刃が用いられる。
この成形体は、金型内で約5t/cmの圧力を加えて加圧成型した後、大気中において400℃で脱脂し、窒素中において800℃で熱処理される。この様にして表面全体がセラミックスで被覆された成形体が形成される。
そして、成形体の両端面に外部端子を形成した後、この成形体に樹脂を真空含浸することにより、成形体表面に形成されたセラミックス中の空隙に樹脂が充填される。この樹脂が含浸された成形体は、バレル研磨が施され、外部端子にニッケルとスズのメッキが施される。
【0014】
この様に形成された本発明の電子部品は、図8(A)に示す様な測定回路のLの部分に適用して、図8(B)に示す様なフライバック電圧を加えて測定したところ、図8(C)に示す様に、本発明の電子部品の耐電圧特性81、82、83が、従来の電子部品に樹脂を含浸したものの特性84、85に比較して高くなった。
【0015】
以上、本発明の電子部品及びその製造方法の実施例を述べたが、本発明はこの実施例に限られるものではない。例えば、本発明の電子部品の第2の実施例において、セラミックス部66A、66Cがセラミックス層63B、63Dに連なって形成されても良い。また、本発明の電子部品の第2の実施例の製造方法において、セラミックス部とセラミックス層が同時に形成されても良い。さらに、実施例で成形体内に1つのコイルを形成した場合を説明したが、成形体内に複数のコイルを形成し、磁気的に結合させてトランスとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の電子部品の第1の実施例を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の電子部品の斜視図である。
【図3】本発明の電子部品の製造方法を説明する斜視図である。
【図4】本発明の電子部品の製造方法を説明する斜視図である。
【図5】本発明の電子部品の別の製造方法を説明する斜視図である。
【図6】本発明の電子部品の第2の実施例を示す分解斜視図である。
【図7】本発明の電子部品の第2の実施例の製造方法を説明する斜視図である。
【図8】本発明の電子部品の第2の実施例の特性を説明する説明図である。
【図9】従来の電子部品の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0017】
11A〜11D 金属磁性体層
12A〜12C コイル用導体パターン
13A〜13F セラミックス層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属磁性体粉末の表面をガラスで被覆した金属磁性体を用いてコイルを内蔵した成形体を備えた電子部品において、
該成形体の表面がセラミックスで被覆され、該セラミックスが形成された該成形体表面に樹脂が含浸されたことを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記成形体は、金属磁性体粉末の表面をガラスで被覆した金属磁性体を用いた金属磁性体層と導体パターンを積層して形成される請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
金属磁性体粉末の表面をガラスで被覆した金属磁性体を用いてコイルを内蔵した成形体を備えた電子部品において、
該成形体が、金属磁性体粉末の表面をガラスで被覆した金属磁性体を用いた金属磁性体層と、導体パターンと、該金属磁性体層と導体パターン間に形成されたセラミックス部を積層して形成され、
該成形体の表面がセラミックスで被覆され、該セラミックスが形成された該成形体表面に樹脂が含浸されたことを特徴とする電子部品。
【請求項4】
前記セラミックスが前記金属磁性体の焼成収縮挙動と類似する焼成収縮挙動を有している請求項1乃至請求項3に記載の電子部品。
【請求項5】
金属磁性体粉末の表面をガラスで被覆した金属磁性体を用いてコイルを内蔵した成形体を備えた電子部品の製造方法において、
第1のセラミックス層上に、金属磁性体粉末の表面をガラスで被覆した金属磁性体を用いて形成される複数の金属磁性体層、該複数の金属磁性体層のそれぞれの表面に形成される導体パターン、該複数の金属磁性体層間に形成される第2のセラミックス層を積み重ねる工程を繰り返し、最上層に第3のセラミックス層を形成して内部に金属磁性体層と導体パターンが積層された複数の積層体を内蔵する基板を形成する第1の工程、該基板を該積層体間に位置する第2のセラミック層に沿って切断して複数の成形体を形成する第2の工程、該成形体を加圧、焼成する第3の工程、該成形体に樹脂が含浸される第4の工程を備えた電子部品の製造方法。
【請求項6】
金属磁性体粉末の表面をガラスで被覆した金属磁性体を用いてコイルを内蔵した成形体を備えた電子部品の製造方法において、
第1のセラミックス層上に、金属磁性体粉末の表面をガラスで被覆した金属磁性体を用いて形成される複数の金属磁性体層、導体パターン、該金属磁性体層と導体パターン間に形成されるセラミックス部、該複数の金属磁性体層間に形成される第2のセラミックス層を積み重ねる工程を繰り返し、最上層に第3のセラミックス層を形成して内部に金属磁性体層とセラミックス部と導体パターンが積層された複数の積層体を内蔵する基板を形成する第1の工程、該基板を該積層体間に位置する第2のセラミック層に沿って切断して複数の成形体を形成する第2の工程、該成形体を加圧、焼成する第3の工程、該成形体に樹脂が含浸される第4の工程を備えた電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記第1のセラミックス層乃至前記第3のセラミックス層が、前記金属磁性体の焼成収縮挙動と類似する焼成収縮挙動を有するセラミックスを用いて形成される請求項5又は請求項6に記載の電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−118587(P2010−118587A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291888(P2008−291888)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000003089)東光株式会社 (243)
【Fターム(参考)】