説明

電子部品及びその製造方法

【課題】コイルの直流抵抗値を低減できる電子部品及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】本体12は、絶縁性材料からなり、直方体状をなしている。コイル部13は、本体12に内蔵されているコイル部20a〜20cであって、同一形状を有する1枚の金属部材からなる複数のコイル導体20a〜20cが一致した状態で積層されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品及びその製造方法に関し、より特定的には、コイルを内蔵している電子部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子部品としては、例えば、特許文献1に記載の電子部品が知られている。該電子部品では、基板及び絶縁膜上に接着剤により貼りつけられた導体箔がエッチングにより加工されて、2つの導体パターンが基板及び絶縁膜上に形成されている。そして、基板及び絶縁膜が積層されて積層体が形成されることにより、2つの導体パターン同士が接続されて、コイルが形成されている。
【0003】
ところで、特許文献1に記載の電子部品は、コイルの直流抵抗値を低減することが困難であるという問題を有している。より詳細には、コイルの直流抵抗値は、コイルを構成している導体パターンの断面積の大きさに依存している。そして、導体パターンの断面積は、導体パターンの線幅及び導体パターンの厚みにより決定される。そこで、導体パターンの厚みを大きくして、導体パターンの断面積を大きくすることが考えられる。ところが、この場合には、厚みの大きな導体箔を加工する必要があり、導体箔を所望の導体パターンに加工することが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−329842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、コイルの直流抵抗値を低減できる電子部品及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る電子部品は、絶縁性材料からなる直方体状の本体と、前記本体に内蔵されているコイル部であって、同一形状を有する1枚の金属部材からなる複数のコイル導体が平面視したときに一致するように積層されてなるコイル部と、を備えていること、を特徴とする。
【0007】
本発明の一形態に係る電子部品の製造方法は、同一形状を有する1枚の金属部材からなる複数のコイル導体を準備する第1の工程と、前記複数のコイル導体を平面視したときに一致させて積層してコイル部を作製する第2の工程と、前記コイル部を絶縁性材料からなる本体内に埋め込む第3の工程と、を備えていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コイルの直流抵抗値を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態に係る電子部品の透視図である。
【図2】図2(a)は、マザーコイル導体の外観斜視図である。図2(b)は、マザーコイル部の外観斜視図である。
【図3】マザー本体の透視図である。
【図4】図4(a)は、比較例に係る電子部品のミアンダ部の断面構造図である。図4(b)は、電子部品のミアンダ部の断面構造図である。
【図5】変形例に係る電子部品の積層体の分解斜視図である。
【図6】変形例に係る電子部品のマザー積層体の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態に係る電子部品及びその製造方法について説明する。
【0011】
(電子部品の構造)
以下に、一実施形態に係る電子部品の構造について図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態に係る電子部品10の透視図である。図1において、上下方向をz軸方向と定義する。また、電子部品10をz軸方向から平面視したときに、電子部品10の長辺が延在している方向をx軸方向と定義し、電子部品10の短辺が延在している方向をy軸方向と定義する。
【0012】
電子部品10は、本体12、コイル部13及び外部電極14(14a,14b)を備えている。本体12は、絶縁性材料からなり、より特定的には、磁性体材料からなっており、直方体状をなしている。本実施形態では、本体12は、熱可塑性樹脂やセルロース等とフェライトとが混合されたペースト状の坏土が固められて焼成された部材である。
【0013】
コイル部13は、複数のコイル導体20(20a〜20c)により構成されている。コイル導体20a〜20cは、同一形状を有する1枚の金属部材からなり、金属板(金属シート)がエッチングにより加工されて作製されている。コイル導体20は、例えば、CuやAg等により作製されている。
【0014】
コイル導体20(20a〜20c)はそれぞれ、ミアンダ部22(22a〜22c)及び引き出し部24(24a〜24c),26(26a〜26c)を有している。ミアンダ部22は、x軸方向に進行しながらy軸方向に往復するジグザグ形状をなしている。引き出し部24は、y軸方向に延在する長方形状をなしており、ミアンダ部22のx軸方向の負方向側の端部に接続されている。引き出し部26は、y軸方向に延在する長方形状をなしており、ミアンダ部22のx軸方向の正方向側の端部に接続されている。
【0015】
以上のように構成されたコイル導体20a〜20cは、z軸方向から平面視したときに、一致するように積層されている。そして、コイル導体20a〜20cは、拡散接合により一体化されている。これにより、コイル導体20a〜20cは、コイル部13を構成している。拡散接合による接合方法とは、母材を密着させ、母材の融点以下の温度条件で、塑性変形をできるだけ生じない程度に加圧して、接合面間に生じる原子の拡散を利用して接合する方法である。
【0016】
また、コイル部13は、本体12に内蔵されている。ただし、引き出し部24,26の一部は、本体12から露出している。より詳細には、引き出し部24のx軸方向の負方向側の長辺は、本体12のx軸方向の負方向側の端面において本体12から露出している。また、引き出し部24のy軸方向の両側の短辺は、本体12のy軸方向の両側の側面において本体12から露出している。引き出し部26のx軸方向の正方向側の長辺は、本体12のx軸方向の正方向側の端面において本体12から露出している。また、引き出し部26のy軸方向の両側の短辺は、本体12のy軸方向の両側の側面において本体12から露出している。
【0017】
外部電極14aは、本体12の表面に設けられ、より詳細には、本体12のx軸方向の負方向側の端面を覆っており、該端面に隣接する面に折り返されている。これにより、外部電極14aは、引き出し部24(すなわち、コイル部13の端部)に接続されている。外部電極14aは、例えば、本体12のx軸方向の負方向側の端面に導電性ペーストが塗布されて形成された銀電極上にSnめっき及びNiめっきが施されて形成されている。
【0018】
外部電極14bは、本体12の表面に設けられ、より詳細には、本体12のx軸方向の正方向側の端面を覆っており、該端面に隣接する面に折り返されている。これにより、外部電極14bは、引き出し部26(すなわち、コイル部13の端部)に接続されている。外部電極14bは、例えば、本体12のx軸方向の正方向側の端面に導電性ペーストが塗布されて形成された銀電極上にSnめっき及びNiめっきが施されて形成されている。
【0019】
(電子部品の製造方法)
次に、一実施形態に係る電子部品10の製造方法について図面を参照しながら説明する。図2(a)は、マザーコイル導体120の外観斜視図である。図2(b)は、マザーコイル部113の外観斜視図である。図3は、マザー本体112の透視図である。
【0020】
まず、図2(a)に示す複数のマザーコイル導体120を準備する。具体的には、Cu又はAgの金属板をエッチングにより加工して、図2(a)に示す形状のマザーコイル導体120を作製する。
【0021】
次に、図2(b)に示すように、マザーコイル導体120a〜120cをz軸方向から平面視したときに一致させて積層して、マザーコイル部113を作製する。具体的には、複数のマザーコイル導体120a〜120c同士を密着させ、真空や不活性ガス中などの制御された雰囲気中で、加圧・加熱することによって、拡散接合により一体化する。拡散接合時の温度は、マザーコイル導体120の母材の再結晶温度以上、マザーコイル導体120の母材の融点以下である。マザーコイル導体120がAgにより作製されている場合には、拡散接合時の温度は、200℃(Agの再結晶温度)以上960℃(Agの融点)以下である。マザーコイル導体120がCuにより作製されている場合には、接合時の温度は、200℃〜250℃(Cuの再結晶温度)以上1080℃(Cuの融点)以下である。
【0022】
次に、ペースト状の坏土を作製する。具体的には、酸化第二鉄(Fe23)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニッケル(NiO)及び酸化銅(CuO)を所定の比率で秤量したそれぞれの材料を原材料としてボールミルに投入し、湿式調合を行う。得られた混合物を乾燥してから粉砕し、得られた粉末を800℃で1時間仮焼する。得られた仮焼粉末をボールミルにて湿式粉砕した後、乾燥してから解砕して、フェライトセラミック粉末を得る。
【0023】
このフェライトセラミック粉末に対して結合剤(熱可塑性樹脂、セルロース等)と可塑剤、湿潤材、溶剤を加えてミキサー、混錬機等で混合及び脱気を行う。これにより、ペースト状の坏土を得る。
【0024】
次に、板状のマザー本体112を作製するための型にマザー金属板116をセットし、型にペースト状の坏土を流し込む。これにより、図3に示すように、板状のマザー本体112内にマザーコイル部113を埋め込む。この後、マザー本体112に対して、静水圧プレスによる圧着を施す。
【0025】
次に、マザー本体112を図3の点線に沿ってカットして、未焼成の複数の本体12を得る。
【0026】
次に、未焼成の本体12に、脱バインダー処理及び焼成を施す。更に、本体12の表面に、バレル研磨処理を施して、面取りを行う。
【0027】
次に、Agを主成分とする導電性材料からなる導電性ペーストを、本体12のx軸方向の両側の端面に塗布する。そして、塗布した導電性ペーストを所定条件で焼き付ける。これにより、外部電極14a,14bとなるべき銀電極を形成する。更に、外部電極14a,14bとなるべき銀電極の表面に、Niめっき/Snめっきを施すことにより、外部電極14a,14bを形成する。以上の工程により、電子部品10が完成する。
【0028】
(効果)
以上のような電子部品10及びその製造方法によれば、コイルの直流抵抗値を低減できる。より詳細には、電子部品10では、コイル部13は、同一形状を有する1枚の金属部材からなる複数のコイル導体20a〜20cが平面視したときに一致するように積層されて構成されている。これにより、コイル部13のz軸方向の厚みは、コイル導体20の厚みの3倍となる。よって、コイル部13の断面積を増加させることができる。その結果、電子部品10及びその製造方法によれば、コイルの直流抵抗値を低減することが可能となる。
【0029】
また、電子部品10及びその製造方法によれば、以下の理由によっても、コイルの直流抵抗値を低減できる。図4(a)は、比較例に係る電子部品のミアンダ部222の断面構造図である。図4(b)は、電子部品10のミアンダ部22の断面構造図である。
【0030】
比較例に係る電子部品のミアンダ部222のz軸方向の厚さは、電子部品10のミアンダ部22のz軸方向の厚さの3倍である。すなわち、ミアンダ部22のz軸方向の厚さは、ミアンダ部22a〜22cのz軸方向の厚さの合計と等しい。以上のようなミアンダ部22,222をそれぞれエッチングにより形成すると、ミアンダ部22,222の角部が削り取られる。例えば、両面フォトエッチングによりミアンダ部22,222を形成すると、ミアンダ部22,222の線幅が、ミアンダ部22,222のz軸方向の厚みの約20%程度減少する。したがって、相対的に厚みの小さなミアンダ部22の方が、相対的に厚みの大きなミアンダ部222よりも、精度よく加工され、大きな断面積を有している。よって、電子部品10及びその製造方法によれば、コイルの直流抵抗値を低減できる。
【0031】
また、電子部品10及びその製造方法によれば、コイル導体20が拡散接合により一体化されることによりコイル部13が構成されている。拡散接合では、コイル導体20a〜20c同士が原子レベルで接合しているので、コイル導体20a〜20c同士の密着度が高い。その結果、コイル部13の直流抵抗値がより低減される。
【0032】
また、電子部品10及びその製造方法によれば、薄い金属板をエッチングしてコイル導体20を形成した後、コイル導体20を積層してコイル部13を形成している。そのため、厚みの大きな金属板をエッチングすることなく、厚みの大きなコイル部13を得ることができる。したがって、コイル導体20の形成が容易となるので、電子部品10の製造が容易となる。
【0033】
(変形例)
以下に、変形例に係る電子部品10aについて図面を参照しながら説明する。図5は、変形例に係る電子部品10aの積層体12aの分解斜視図である。図6は、変形例に係る電子部品10aのマザー積層体112aの分解斜視図である。なお、電子部品10aの透視図は、図1を援用する。
【0034】
電子部品10aの積層体12aは、図5に示すように、絶縁体層30a〜30hがz軸方向の正方向側から負方向側へとこの順に並ぶように積層されることによって構成されている。絶縁体層30(30a〜30h)の材料は、積層体12の材料と同じである。そして、コイル部13は、絶縁体層30d,30e間に設けられている。電子部品10aのその他の構成は、電子部品10と同じであるので、説明を省略する。
【0035】
電子部品10aの製造方法は、図6に示すように、セラミックグリーンシート130a〜130hと共に、マザーコイル部113を積層することにより、マザーコイル部113をマザー本体112aに埋め込む。セラミックグリーンシート130a〜130hの材料は、マザー本体112のペースト状の坏土と同じ成分である。なお、電子部品10aの製造方法のその他の工程は、電子部品10の製造方法と同じであるので、説明を省略する。
【0036】
以上のような電子部品10a及びその製造方法においても、電子部品10及びその製造方法と同様に、コイルの直流抵抗値を低減できる。
【0037】
(その他の実施形態)
本発明に係る電子部品及びその製造方法は、前記実施形態に係る電子部品10,10a及びその製造方法に限らず、その要旨の範囲内において変更可能である。
【0038】
電子部品10の製造方法では、本体12を焼成していたが、本体12の材料によっては、焼成工程は不要である。具体的には、本体12が金属磁性体を樹脂で固めたメタルコンポジットである場合には、本体12の焼成は不要である。
【0039】
また、電子部品10,10aでは、コイル部13は、ミアンダ状をなしているが、直線状等のその他の形状であってもよい。
【0040】
なお、コイル導体20は、金属板が加工されて作製されるのではなく、金属箔が加工されて作製されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上のように、本発明は、電子部品及びその製造方法に有用であり、コイルの直流抵抗値を低減できる点において優れている。
【符号の説明】
【0042】
10,10a 電子部品
12 本体
12a 積層体
13 コイル部
14a,14b 外部電極
20a〜20c コイル導体
22a〜22c ミアンダ部
24a〜24c,26a〜26c 引き出し部
30a〜30h 絶縁体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性材料からなる直方体状の本体と、
前記本体に内蔵されているコイル部であって、同一形状を有する1枚の金属部材からなる複数のコイル導体が平面視したときに一致するように積層されてなるコイル部と、
を備えていること、
を特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記コイル導体は、金属シートがエッチングにより加工されて作製されていること、
を特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記複数のコイル導体は、拡散接合により一体化されていること、
を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の電子部品。
【請求項4】
前記コイル部の両端にそれぞれ接続され、かつ、前記本体の表面に設けられている第1の外部電極及び第2の外部電極を、
更に備えていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電子部品。
【請求項5】
同一形状を有する1枚の金属部材からなる複数のコイル導体を準備する第1の工程と、
前記複数のコイル導体を平面視したときに一致させて積層してコイル部を作製する第2の工程と、
前記コイル部を絶縁性材料からなる本体内に埋め込む第3の工程と、
を備えていること、
を特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記第1の工程では、金属シートをエッチングにより加工して前記コイル導体を作製すること、
を特徴とする請求項5に記載の電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記第2の工程では、前記複数のコイル導体を拡散接合により一体化すること、
を特徴とする請求項5又は請求項6のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記第3の工程では、ペースト状の絶縁性材料内に前記コイル部を埋め込むこと、
を特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項9】
前記第3の工程では、複数枚の絶縁体層と共に前記コイル部を積層することにより、該コイル部を前記本体内に埋め込むこと、
を特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれかに記載の電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−16727(P2013−16727A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149903(P2011−149903)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】