説明

電子部品収納ケース

【課題】収納されている電子部品を外部から視認することができ、廃棄されても環境に対する影響が小さく、機械的強度が比較的大きく、製造が容易な電子部品収納ケースを提供する。
【解決手段】断面が略四角形の管状をなしており、その一面には、中央部分が内方に突出し、長手方向に延在する凸部1が設けられている。ICチップは凸部1上に載置されるようになっている。成形材料はポリ乳酸90質量%と、ポリ乳酸−脂肪族ポリエステル共重合体5%と、アジピン酸エステル5質量%とからなるペレットであり、これを押出成形して製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を運搬したり、プリント基板上等に電子部品を連続的に取り付けたりするときに用いられる電子部品収納ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ICチップや接続用コネクター等の電子部品をまとめて運搬したり、プリント基板等に電子部品を連続的に取り付けたりする場合、電子部品を一列に収納した電子部品収納ケースが用いられている。この電子部品収納ケースは、通常、細長い筒形状とされており、その一端側から電子部品をスライドさせて次々と装填することにより、電子部品収納ケースごと運搬することができる。また、電子部品収納ケースの一端から電子部品を1つづつ取り出して、連続的にプリント基板上等に電子部品を取り付けることもできる。このため、電子機器産業にとって電子部品収納ケースは欠かせない部品となっている。
【0003】
従来の電子部品収納ケースとして、例えば、ICを収容するためのものが特許文献1に記載されている。このIC用の電子部品収容ケースは、アルミニウムやカーボンの入ったプラスチック等の導電性材料からなるため、ICが静電気の放電によって破壊されることのないという利点を有する。
【特許文献1】特開平6−329183号公報
【0004】
しかし、導電性材料で製造された電子部品収納ケースは不透明であり、収容された電子部品の表面に印刷された型番等を外部から視認することができないという不具合がある。この不具合を解消するため、電子部品収納ケースの長さ方向に延在する窓を設けることもなされているが、その窓から塵や埃が進入しやすくなるという別の問題が生じることとなる。このため、最近では、電子部品収納ケースの材料として透明なプラスチック素材を用い、その表面に帯電防止剤を塗布した電子部品収納ケースも用いられている。この透明なプラスチックからなる電子部品収納ケースによれば、窓を設けなくても内部が確認でき、塵や埃が内部に侵入するおそれも小さくなる。
【0005】
ところで最近、環境保護の観点から、PET等の石油系プラスチックに替わり、自然界の土壌中で微生物によって分解が可能な生分解性プラスチックが普及しつつある。こうした生分解性プラスチックとして、デンプン糊及び籾殻粉を素材とし、さらに炭を添加して導電性を付与した電子部品収納ケースも提案されている(特許文献2参照)
【特許文献2】特開2002−46112号公報
【0006】
しかし、これらの素材では機械的強度が小さく、炭が含まれているために、窓を設けることなく電子部品の型番等を視認することできない。また、例え炭を添加しなくても、デンプン糊及び籾殻粉を素材とした生分解性プラスチックは透明度が低いため、型番等の確認は困難となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、収納されている電子部品を外部から視認することができ、廃棄されても環境に対する影響が小さく、機械的強度が比較的大きく、製造が容易な電子部品収納ケースを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、生分解性プラスチックとして比較的安価であり、射出成形が可能で、透明性にも優れているポリ乳酸を電子部品収納ケースの素材として用いることを考えた。しかし、発明者らの試験結果によれば、ポリ乳酸によって電子部品収納ケースを押出成形することは可能であるが、押出成形された長尺成形品を切断機によって所定の長さに切断使用とした場合、割れたり、ヒビを生じたりするため困難であることが分かった。そして、鋭意研究を行った結果、本発明をなすに至った。
【0009】
すなわち、本発明の電子部品収納ケースは、内部に複数の電子部品を収納する電子部品収納ケースであって、ポリ乳酸を主成分とし、ポリ乳酸−脂肪族ポリエステル共重合体及びアジピン酸エステルの少なくとも1種を含有するポリ乳酸樹脂組成物からなることを特徴とする。
【0010】
本発明の電子部品収納ケースは、主成分として生分解性に優れたポリ乳酸を含有しており、その他に含有するポリ乳酸−脂肪族ポリエステル共重合体やアジピン酸エステルも生分解性を有している。このため、廃棄されて土壌に埋められても、比較的短期間の間に、微生物によって分解され、環境に対する影響が小さい。また、透明性及び機械的強度に優れたポリ乳酸を主成分としており、共存するポリ乳酸−脂肪族ポリエステル共重合体やアジピン酸エステルも、透明性にそれほど影響しない。このため、電子部品収納ケース内に収納されている電子部品の表面に印刷された文字を外部から読むことも可能である。このため、電子部品収納ケースに窓を設けることも不要となり、塵や埃が内部に入り難くなる。さらに、ポリ乳酸−脂肪族ポリエステル共重合体及びアジピン酸エステルは、硬くて割れやすいポリ乳酸を柔軟にして割れ難くする効果を奏する。このため、この押出成形された電子部品収納ケースを切断機によって所定の長さに切断する場合、割れやヒビが生ずることもない。
【0011】
したがって、本発明の電子部品収納ケースによれば、収納されている電子部品を外部から視認することができ、廃棄されても環境に対する影響が小さく、機械的強度が比較的大きく、容易に製造することができる。
【0012】
本発明の電子部品収納ケースにおける組成割合としては、ポリ乳酸の含有量は70〜99.9質量%、好ましくは90〜95質量%とされており、ポリ乳酸−脂肪族ポリエステル共重合体または、アジピン酸エステルの含有量は0.1〜30質量%、好ましくは5〜10質量%とされていることがよい。発明者らの試験結果によれば、組成がこの範囲内であれば、機械的強度が大きく、透明性に優れ、適度にしなやかさを有し、押出成形された電子部品収納ケースを切断機によって所定の長さに切断する場合、割れやヒビを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の電子部品収納ケースを具体化した実施例1〜3及び比較例1を説明する。なお、これらの電子部品収納ケースは、無数のICチップを一列に収容するためのIC収容ケースである。
【0014】
<ポリ乳酸樹脂組成物の調製>
(実施例1〜3)
実施例1〜3においてIC収納ケースの成形材料となるポリ乳酸樹脂組成物を以下のように製造した。すなわち、ポリ乳酸と、ポリ乳酸−脂肪族ポリエステル共重合体及び/又はアジピン酸エステルを下記表1の配合比率となるように、混練押出機によって溶融混練(溶融温度180°C)し、押出されたポリ乳酸系樹脂組成物を水中で冷却し、切断してペレットとした。
【表1】

上記表中の各薬品の詳細は以下のとおりである。
ポリ乳酸:(三井化学(株)製、商品名:レイシア MFR 5g/min以下)
ポリ乳酸−脂肪族ポリエステル共重合体:(大日本インキ化学工業(株)製、商品名:プラメートPD−150)
アジピン酸エステル:(大八化学工業(株)製、商品名:DAIFATTY-101)
【0015】
(比較例1)
比較例1ではポリ乳酸(三井化学(株)製、商品名:レイシア MFR 5g/min以下)をペレットとしてそのまま用いた。
【0016】
<押出成形>
以上のようにして得た実施例1〜3及び比較例1のペレットを用い、押出成形機により 180°CでIC収納ケースの押出成形を行った。このIC収納ケースは、図1に示すように、断面が略四角形の管状をなしており、その一面には、中央部分が内方に突出し、長手方向に延在する凸部1が設けられている。また、内面には2箇所に内方突出し、長手方向に延在する突起2、3が設けられている。ICチップは凸部1上に載置され、突起2、3でガタツキが防止されるようになっている。
【0017】
<切断>
上記の押出成形によって得られた長尺成形体をせん断プレスによって切断し、実施例1〜3及び比較例1のIC収納ケースを得た。
【0018】
<評価>
実施例1〜3のIC収納ケースでは、その両端が滑らかな切断面とされており、割れやヒビ等の欠陥はなかった。また、IC収納ケース内にICチップを収納して外部から観察した結果、その表面の印刷文字を充分読み取ることができた。また、実際の電子回路組立現場にて使用した結果、使用に充分耐える機械的強度を有していた。これに対して、比較例1のIC収納ケースは、透明性はあるものの、両端の切断面に割れやヒビ等の欠陥が生じており、使用に支障をきたしていた。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は電子回路組立現場等において、電子部品を運搬したり、プリント基板上等に電子部品を連続的に取り付けたりするときに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例及び比較例のIC収納ケースの斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1…凸部
2、3…突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に複数の電子部品を収納する電子部品収納ケースであって、
ポリ乳酸を主成分とし、ポリ乳酸−脂肪族ポリエステル共重合体及びアジピン酸エステルの少なくとも1種を含有するポリ乳酸樹脂組成物からなることを特徴とする電子部品収納ケース。
【請求項2】
ポリ乳酸の含有量は70〜99.9質量%とされており、ポリ乳酸−脂肪族ポリエステル共重合体及びアジピン酸エステルの合計の含有量は0.1〜30質量%とされていることを特徴とする請求項1記載の電子部品収納ケース。
【請求項3】
ポリ乳酸の含有量は90〜95質量%とされており、ポリ乳酸−脂肪族ポリエステル共重合体及びアジピン酸エステルの合計の含有量は5〜10質量%とされていることを特徴とする請求項1記載の電子部品収納ケース。

【図1】
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【公開番号】特開2006−89075(P2006−89075A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−276176(P2004−276176)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(593227132)ダイトーエムイー株式会社 (12)
【Fターム(参考)】