説明

電子部品収納用パッケージ

【課題】 ろう材を含む接合材を介した、セラミック基板と金属枠体との接合の信頼性が高い電子部品収納用パッケージを提供する。
【解決手段】 上面に電子部品の搭載部1aを有するセラミック基板1と、セラミック基板1の上面にろう材5を含む接合材3を介して接合された、搭載部1aを取り囲む金属枠体2とを備え、金属枠体2はろう材5よりも熱膨張係数が小さく、接合材3は、熱膨張係数が金属枠体2の熱膨張係数以下の金属粉末が加圧成型されてなる枠状のコア材4と、コア材4の表面を覆うとともに少なくともその表面近傍の金属粉末の間に含浸したろう材5とからなる電子部品収納用パッケージである。コア材4により接合材3の熱膨張係数を低減でき、接合強度を向上できるため、接合材3に作用する熱応力を小さくして接合材3の破壊を抑制することができるので、接合の信頼性が高いものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搭載部が設けられたセラミック基板の上面に、ろう材を含む接合材を介して金属枠体が接合されてなる電子部品収納用パッケージに関するものであり、特に金属枠体の接合の信頼性が良好な電子部品収納用パッケージに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子や水晶振動子等の電子部品を搭載するために用いられる電子部品収納用パッケージとして、上面に電子部品の搭載部を有するセラミック基板と、セラミック基板の上面の外周部にろう材を含む接合材を介して接合された金属枠体とを備えるものが用いられている。この金属枠体は電子部品を搭載後に電子部品を封止するための蓋体を接合するためのものである。なお、腐食を防止する目的のために、ろう材および金属枠体は金(Au)などのめっき層により覆うことが一般的に行なわれている。
【0003】
セラミック基板に金属枠体を接合するための接合材としては、従来からろう材として例えば銀(Ag)が85質量%および銅(Cu)が15質量%を混合したような銀ろう等が使用されてきた。また、金属枠体には鉄(Fe)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)合金等が、熱膨張係数がセラミックスと近いことから多用されている。
【0004】
しかしながら、銀ろうは熱膨張係数が18〜20ppm/℃であり、被接合材である鉄−ニッケル−コバルト合金からなる金属枠体の熱膨張係数(5〜6ppm/℃)や例えば酸化アルミニウム質焼結体からなるセラミック基板の熱膨張係数(3〜10ppm/℃)と大きく異なることから、急激な温度変化が発生したり温度の昇降が繰り返されるような環境下での信頼性がクラック発生や剥離などによって損なわれたりすることがあった。
【0005】
これに対して、セラミック基板に金属枠体を接合するための接合材として、ろう材の中にろう材よりも熱膨張係数の小さいフィラーを分散させることで、接合材の熱膨張係数を低減させる技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0006】
また、ろう材の中に、ろう材よりも熱膨張係数の小さい金属板を加えたり、金属枠体の形状を工夫したりする技術が提案されている(例えば、特許文献2,3を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−205389号公報
【特許文献2】特開平3−37165号公報
【特許文献3】特開2001−308211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ろう材に熱膨張係数の小さいフィラーを分散させて接合材の熱膨張係数を低減させる場合は、ろう材の熱膨張係数がセラミック基板や金属枠体の熱膨張係数と比較して十分大きいために、接合材の熱膨張係数を十分に低減させるためには、多量のフィラーを添加しなければならない。このように多量のフィラーを添加した場合においては、フィラーが接合材の表面に露出することがあり、接合材の表面近傍においてフィラー同士の間隙を十分に充填するだけのろう材が不足し、接合材の表面にピンホールができてしまうことで腐食防止のためのめっきが表面に良好に成膜されず、当該部分の耐食性が損なわれてしまい、その結果として使用環境の影響を受けて接合材が腐食に至るという問題点があった。
【0009】
一方、ろう材の中にろう材よりも熱膨張係数の小さい金属板を加えたり、金属枠体の形状を工夫したりする場合には、ろう材と金属板および金属枠体とのそれぞれの界面の断面形状が直線的であるために接合強度が不足したり、三者の熱膨張係数の差が原因で熱負荷に対する信頼性が損なわれたりするといった問題点があった。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑み案出されたものであり、その目的は、金属枠体の接合強度を向上させることができるとともに、熱負荷が加えられても信頼性を保つことが可能な電子部品収納用パッケージを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電子部品収納用パッケージは、上面に電子部品の搭載部を有するセラミック基板と、該セラミック基板の上面にろう材を含む接合材を介して接合された、前記搭載部を取り囲む金属枠体とを備える電子部品収納用パッケージであって、前記金属枠体は前記ろう材よりも熱膨張係数が小さく、前記接合材は、熱膨張係数が前記金属枠体の熱膨張係数以下の金属粉末が加圧成型されてなる枠状のコア材と、該コア材の表面を覆うとともに少なくとも表面近傍の前記金属粉末の間に含浸したろう材とからなることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の電子部品収納用パッケージは、上記構成において、前記接合材における前記金属粉末の含有量が80〜90体積%であることを特徴とするものである。
【0013】
さらに、本発明の電子部品収納用パッケージは、上記構成において、前記金属粉末は、平均粒径dが5〜10μmの第1金属粉末と、平均粒径dが0.2×dμmの第2金属粉末とが混合されてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電子部品収納用パッケージによれば、接合材が、熱膨張係数が金属枠体の熱膨張係数以下の金属粉末が加圧成型されてなる枠状のコア材と、このコア材の表面を覆うとともに少なくとも表面近傍の金属粉末の間に含浸したろう材とからなることから、ろう材とコア材との界面の断面形状が複雑な形状となって接合強度を向上させることができるとともに、金属枠体と接合材との熱膨張係数の差およびセラミック基板と接合材との熱膨張係数の差を低減することができるので、熱衝撃によるクラックの発生およびそれによる気密性の劣化を効果的に防止することができる。
【0015】
また、金属粉末を加圧成型して枠状のコア材とすることから、コア材を構成する金属粉末がろう材中に分散して接合材の表面に露出することを防ぎ、コア材の表面をろう材で確実に覆うことができる。これにより、接合材の表面には、凹凸やピンホール等の発生が抑制され、欠陥無くめっき膜を形成することができるので、接合材の腐食を効果的に防止することができる。
【0016】
さらに、コア材の少なくとも表面近傍のコア材を構成する金属粉末の隙間にろう材を含浸させていることで、ろう材とコア材との熱膨張係数の差による熱応力の影響を小さくすることができるので、熱負荷に対する信頼性を向上させることができる。また、ろう材とコア材を構成する金属粉末との接合面積が増えることから、ろう材とコア材との接合強度を向上させることができる。
【0017】
また、本発明の電子部品収納用パッケージによれば、コア材は金属粉末を加圧成型してなるものであることから、ろう材中に分散させる場合に比べて、金属粉末を密に充填させることができるため、接合材における金属粉末の含有量を80〜90体積%と高くすることができるので、これによって熱膨張係数を低減する効果を増すことができる。
【0018】
また、本発明の電子部品収納用パッケージによれば、金属粉末が、平均粒径dが5〜10μmの第1金属粉末と、平均粒径dが0.2×dμmの第2金属粉末とが混合されてなるものであるときには、加圧成型時にコア材を変形させることなく金属粉末を最密に充填してコア材とすることができるので、接合材における金属粉末の含有量を高くして熱膨張係数を低減する効果を増すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の電子部品収納用パッケージの実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】図1におけるa部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の電子部品収納用パッケージについて、添付の図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1は本発明の電子部品収納用パッケージの実施の形態の一例を示す断面図であり、図2は図1におけるa部を拡大した断面図である。図1および図2において、1はセラミック基板、2は金属枠体、3は接合材、4はコア材、4aは第1金属粉末、4bは第2金属粉末、5はろう材である。
【0022】
図1および図2に示す例のように、本発明の電子部品収納用パッケージは、上面に電子部品(図示せず)の搭載部1aを有するセラミック基板1と、セラミック基板1の上面にろう材5を含む接合材3を介して接合された、搭載部1aを取り囲む金属枠体2とを備える電子部品収納用パッケージであって、金属枠体2はろう材5よりも熱膨張係数が小さく、接合材3は、熱膨張係数が金属枠体2の熱膨張係数以下の金属粉末(4a,4b)が加圧成型されてなる枠状のコア材4と、コア材4の表面を覆うとともに少なくとも表面近傍の金属粉末(4a,4b)の間に含浸したろう材5とからなることを特徴とするものである。
【0023】
セラミック基板1は、本例では上面に凹部を有する形状であり、この凹部の底面に電子部品の搭載部1aを有しているが、上面が平坦な板状の形状であっても構わない。このセラミック基板1は、例えば酸化アルミニウム質焼結体,窒化アルミニウム質焼結体,ムライト質焼結体またはガラスセラミックス等のセラミック材料から成り、上面には、搭載部1aを取り囲むようにして、金属枠体2が接合材3を介して接合されるメタライズ層(図示せず)が形成されている。
【0024】
このようなセラミック基板1は、例えば酸化アルミニウム質焼結体から成る場合であれば、アルミナ,シリカ,マグネシアおよびカルシア等の原料粉末に適当な有機バインダおよび溶剤を添加混合して泥漿状となすとともに、これを周知のドクターブレード法を採用してシート状に形成してセラミックグリーンシートを準備するとともに、これに例えば打ち抜き金型を用いて打ち抜き加工を施し、これらのセラミックグリーンシートに配線導体(図示せず)となるメタライズ層(図示せず)および金属枠体2を接合するためのメタライズ層となるタングステン等の金属ペーストをスクリーン印刷法によりそれぞれ所定のパターンに印刷塗布し、しかる後、これらのセラミックグリーンシートを上下に積層してセラミックグリーンシート積層体として、このセラミックグリーンシート積層体を還元雰囲気中にて約1600℃の温度で焼成することによって形成される。
【0025】
金属枠体2は、セラミック基板1とともに搭載される電子部品を収納する容器を構成する蓋体(図示せず)を接合するためのものであり、セラミック基板1の上面に搭載部1aを取り囲むようにして接合材3を介して接合されている。この金属枠体2は、一般的に熱膨張係数が小さく、かつセラミック基板1のセラミックスとの接合信頼性の高い材料を選択する。例えば、セラミック基板1が酸化アルミニウム質焼結体(アルミナセラミックス)から成るものである場合は、熱膨張係数が比較的近い値である鉄(Fe),ニッケル(Ni)およびコバルト(Co)を含む合金(Fe−Ni−Co合金)から成るものが用いられる。金属枠体2は、例えば、圧延ロールされたFe−Ni−Co合金の板材に打ち抜き金型を用いて打ち抜き加工を施したり、硝酸などの薬液でエッチング加工を施したりすることにより、セラミック基板1の搭載部1aを取り囲むように枠状に加工される。
【0026】
接合材3は、セラミック基板1の上面に金属枠体2を接合するものであり、本発明においては、熱膨張係数が金属枠体2の熱膨張係数以下の金属粉末(4a,4b)が加圧成型されてなる枠状のコア材4と、このコア材4の表面を覆うとともに少なくともコア材4の表面近傍の金属粉末(4a,4b)の間に含浸したろう材5とからなるものである。従って、接合材3は、コア材4の表面をろう材5で覆っていることから、熱膨張係数を調整して低減させるための金属粉末(4a,4b)を多量に有するものとしても、従来のように金属粉末を分散させて有しているもののように接合材3の表面に金属粉末が露出してしまうことがなく、表面が滑らかな面となっており、腐食防止のためのめっき膜で良好に被覆することができるので、長期間にわたって腐食を防止することができる。
【0027】
また、コア材4が金属粉末(4a,4b)を加圧成型してなるものであることから、従来の接合材のように金属粉末をろう材中に分散させているものと比べて、接合材3中に多量の金属粉末(4a,4b)を安定して配置させることができ、しかも金属粉末(4a,4b)がばらばらに存在しているのではなくコア材4であることによってろう材5との接合強度を向上させることができるので、接合材3の熱膨張係数を効果的に低減させることができるとともに接合強度を向上させることができる。
【0028】
なお、接合材3において、ろう材5はコア材4に対して少なくともその表面近傍に含浸しているものであるが、もちろんコア材4の内部に全体に行き渡って含浸しているものであってもよい。コア材4に対するろう材5の含浸の程度は、電子部品収納用パッケージの用途や仕様に応じて設定して、金属枠体2をセラミック基板1に接合する際の接合条件等によって調整すればよい。
【0029】
コア材4は、熱膨張係数が金属枠体2の熱膨張係数以下の金属粉末(4a,4b)が加圧成型されてなるものである。その金属粉末(4a,4b)の材料としては、金属枠体2と同じ材料でもよいし、異なる材料でもよいが、接合材3の熱膨張係数の低減のために金属枠体2およびろう材5よりも熱膨張係数が小さく、しかもろう材5とよく濡れるものを必要があり、かかる観点から各部材の材料の組合せに応じて適宜選択される。
【0030】
それら材料の組合せとして、例えば、セラミック基板1が酸化アルミニウム質焼結体(熱膨張係数:3〜10ppm/℃)から、金属枠体2が鉄−ニッケル−コバルト合金(熱膨張係数:5〜6ppm/℃)から、ろう材5が銀ろう(熱膨張係数:18〜20ppm/℃)からなる場合であれば、金属粉末(4a,4b)には、金属枠体2と同じ鉄−ニッケル−コバルト合金(熱膨張係数:5〜6ppm/℃)等を用いればよい。
【0031】
また、セラミック基板1が窒化アルミニウム質焼結体(熱膨張係数:4〜6ppm/℃)から、金属枠体2が鉄−ニッケル合金(熱膨張係数:7〜9ppm/℃)から、ろう材5が銀ろう(熱膨張係数:18〜20ppm/℃)からなる場合であれば、金属粉末(4a,4b)には、鉄−ニッケル−コバルト合金(熱膨張係数:5〜6ppm/℃)あるいは金属枠体2と同じ鉄−ニッケル合金(熱膨張係数:7〜9ppm/℃)等を用いればよい。
【0032】
接合材3における金属粉末(4a,4b)の含有量は80〜90体積%であることが好ましい。金属粉末(4a,4b)の含有量が80体積%未満であると、接合材3の熱膨張係数を所望通りに十分に低減させにくくなる傾向があり、金属枠体2を接合した後の熱負荷に対する信頼性が低くなりやすい傾向がある。また、金属粉末(4a,4b)の含有量が90体積%を超えると、ろう材5の体積が不足してコア材4の表面や内部にろう材5が浸透しにくい傾向があり、接合材3の表面にボイドなどの欠陥を生じやすい傾向がある。
【0033】
また、金属粉末(4a,4b)の形状は特に制限はないが、球形状のものを使用することが好ましい。球形状の金属粉末(4a,4b)を使用すると、加圧成型によって金属粉末(4a,4b)が良好に充填された状態でコア材4を作製することができ、コア材4へのろう材5の含浸も良好となりやすい。
【0034】
また、金属粉末(4a,4b)は、平均粒径dが5〜10μmの第1金属粉末4aと、平均粒径dが0.2×dμmの第2金属粉末4bとが混合されてなるものであることが好ましい。なお、これら第1金属粉末4aおよび第2金属粉末4bの形状も、これら第1金属粉末4aおよび第2金属粉末4bを最密に充填してコア材4を作製するためには、球形状であることが好ましい。第1金属粉末4aの平均粒径dおよび第2金属粉末4bの平均粒径dがそれぞれ上記範囲よりも小さくなると、これらを金型で加圧成型するときに凝集しやすくなって、成形性が劣化しやすい傾向がある。また、第1金属粉末4aの平均粒径dおよび第2金属粉末4bの平均粒径dがそれぞれ上記範囲よりも大きくなると、そのコア材4を用いて接合材3を形成する際にろう材5を溶融させたときに、コア材4の表面や内部にボイドなどの欠陥を生じやすい傾向がある。
【0035】
これら第1金属粉末4aおよび第2金属粉末4bの材料としては、もちろん両者に同じ材料を用いてもよく、異なる材料のものを組み合わせて用いてもよい。第1金属粉末4aおよび第2金属粉末4bの材料を同じものとした場合には、加圧成型するときに一方の金属粉末の偏在が生じにくく、充填率の高いコア材4をより高密充填させて成型しやすいという点で好ましい。
【0036】
コア材4は、例えば、予め混合した第1金属粉末4aと第2金属粉末4bとを金型に充填して、1,000〜10,000MPaの圧力で加圧することで金属枠体2に対応した枠状に成形される。このとき、第1金属粉末4aおよび第2金属粉末4bには、コア材4の保形性を向上させるため、必要に応じてポリビニルアルコール(PVA)等の成型助剤を数質量%添加しておいてもよい。次に、別の金型にこのコア材4の成型体をその周囲にろう材5の金属粉末を配置して充填して、再度1,000〜10,000MPaの圧力で加圧成型する。これにより、加熱溶融することによって接合材3となる、コア材4とろう材5との枠状の圧着体が形成される。
【0037】
ろう材5は、金属枠体2、この金属枠体2に対応してセラミック基板1の上面に形成されたメタライズ層およびコア材4を接合するものであり、それらに対する濡れ性が良好な材料のものが選定され、その熱膨張係数が金属枠体2およびコア材4の金属粉末(4a,4b)よりも大きいものである。ろう材5の材料は、セラミック基板1に電子部品を搭載するときの加熱条件やその後の熱処理、あるいは電子部品収納用パッケージの使用環境等を鑑みて選定されるが、セラミック基板1が酸化アルミニウム質焼結体からなり、金属枠体2が鉄−ニッケル−コバルト合金からなる場合であれば、例えば銀ろう(質量比が銀(Ag):銅(Cu)=85:15)等を用いることができる。
【0038】
また、ろう材5としては、銀ろうにチタン(Ti),ジルコニウム(Zr),ハフニウム(Hf)およびこれらの水素化物の少なくとも1種を添加した活性金属ろう等を用いることもできる。この活性金属ろうを用いた場合には、セラミック基板1に金属枠体2を接合するためのメタライズ層の形成を省略することができるので、それに関わる製造工程を削減することができ、セラミック基板1のセラミック表面と金属枠体2とを接合材3によって直接接合することができる。
【0039】
金属枠体2をセラミック基板1に接合材3を用いて接合するには、接合材3となるコア材4とろう材5との圧着体を、セラミック基板1の上面に搭載部1aを取り囲んで形成されたメタライズ層の上に載置し、その圧着体の上に金属枠体2を重ね合わせて載置する。その後、還元雰囲気中でろう材5の融点以上の温度まで加熱することによって、金属枠体2がセラミック基板1の上面に接合材3を介してろう付けにより接合される。このとき加熱する温度はろう材5によって様々であるが、例えば銀ろうの場合では800〜900℃である。加熱によりろう材5が溶融すると、ろう材5でコア材4の金属粉末(第1金属粉末4aおよび第2金属粉末4b)が濡れることにより、コア材4の少なくとも表面近傍にろう材5が含浸するとともに、金属枠体2とも、またセラミック基板1のメタライズ層とも濡れることにより、接合材3を介してセラミック基板1と金属枠体2とが接合される。
【0040】
以上のようにして得られた本発明の電子部品収納用パッケージを用いることにより、熱衝撃や温度サイクル等の熱負荷によってセラミック基板1と金属枠体2との接合部が剥離したり、気密信頼性が損なわれたりすることを効果的に防止することができる。
【実施例】
【0041】
本発明の電子部品収納用パッケージの実施例について、以下に具体的に説明する。
【0042】
まず、酸化アルミニウム質焼結体からなり、上面に電子部品の搭載部を有するセラミック基板1を作製した。このセラミック基板1において、金属枠体2を接合する部分には、金属枠体2に対応するパターンでタングステンから成るメタライズ層(厚さ10μm)を形成した。
【0043】
セラミック基板1の寸法は、3.0mm×2.5mm×0.5mmtとした。また、電子部品を搭載するための凹部の深さは0.4mmとし、金属枠体2を搭載する部分のメタライズ層の幅は金属枠体2の幅に合わせて0.25mmとした。また、メタライズ層の表面には、ニッケルめっき膜を5μmの厚みで形成した。
【0044】
接合材3はコア材4とろう材5とから構成した。コア材4を構成する金属粉末(4a,4b)の材質は鉄:ニッケル:コバルト=54:29:17(質量比)の鉄−ニッケル−コバルト合金とした。コア材4は、平均粒径dが10μmの第1金属粉末4aを75質量%と、平均粒径dが2μm(0.2×d)の第2金属粉末4bを25質量%とを秤量して、メノウ乳鉢を用いて10分間混合し、しかる後、混合された粉末を金型に充填して、3,000MPaで加圧成型することにより作製した。コア材4を加圧成型した後、別の金型にろう材5として銀ろう(Ag:Cu≒85:15(重量比))からなる粉末とともに充填して、3,000MPaで加圧成型してコア材4とろう材5とを圧着した圧着体を作製した。このとき、接合材3におけるコア材4の金属粉末(4a,4b)の含有量は85体積%になるように調整した。
【0045】
次に、セラミック基板1のメタライズ層の上面に接合材3となる圧着体を載置し、さらにその上に金属枠体2を載置して、還元雰囲気において900℃で加熱した。ここで、金属枠体2には質量比が鉄:ニッケル:コバルト=54:29:17の鉄−ニッケル−コバルト合金からなる、寸法が3.0mm×2.5mm×0.15mmtのものを使用した。また、金属枠体2の枠幅は0.25mmとした。このようにして、セラミック基板1と金属枠体2とが接合材3を介して接合された、本発明のセラミック電子部品収納用パッケージNo.1を作製した。
【0046】
次に、他の実施例として、金属粉末(4a,4b)の材質は同じで、第1金属粉末4aの平均粒径dが5μmで、第2金属粉末4bの平均粒径dが1μm(0.2×d)であるものを用いて、同様の条件で本発明の電子部品収納用パッケージNo.2を作製した。
【0047】
また、比較例として、接合材3にコア材4を用いず、ろう材5のみを用いたもので電子部品収納用パッケージNo.3を作製した。
【0048】
得られた各例の電子部品収納用パッケージに、−50℃〜+150℃で2,000サイクルの温度サイクル試験を行なった後、セラミック基板1と金属枠体2との接合部について外観および断面状態を倍率が1,000倍の電子顕微鏡で確認した。
【0049】
その結果、実施例の電子部品収納用パッケージNo.1およびNo.2においては、ボイドや剥離の発生は見られなかった。一方、比較例の電子部品収納用パッケージNo.3は、セラミック基板1と接合材3との界面に空隙が生じている部分があった。これにより、本発明の電子部品収納用パッケージによれば、セラミック基板1に対する金属枠体2の接合強度を向上させることができ、接合部における熱衝撃によるクラックの発生およびそれによる気密性の劣化を効果的に防止することができることが確認できた。
【0050】
なお、本発明は、上述の実施の形態の例および実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変更が可能であることは言うまでもない。例えば、上述の実施例では、ろう材5としてのろう材粉末を加圧成型することによってコア材4との圧着体を作製したが、ろう材5として予め圧延ロールされたろう材合金の板材を用いて打ち抜き加工等によりコア材4と同じく枠状に形成して、これをコア材4と接着することにより一体化させておき、圧着体と同様に加熱することによって、金属枠体2をセラミック基板1の上面に接合材3を介してろう付けにより接合してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1・・・セラミック基板
1a・・・搭載部
2・・・金属枠体
3・・・接合材
4・・・コア材
4a・・・第1金属粉末
4b・・・第2金属粉末
5・・・ろう材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に電子部品の搭載部を有するセラミック基板と、該セラミック基板の上面にろう材を含む接合材を介して接合された、前記搭載部を取り囲む金属枠体とを備える電子部品収納用パッケージであって、前記金属枠体は前記ろう材よりも熱膨張係数が小さく、前記接合材は、熱膨張係数が前記金属枠体の熱膨張係数以下の金属粉末が加圧成型されてなる枠状のコア材と、該コア材の表面を覆うとともに少なくとも表面近傍の前記金属粉末の間に含浸したろう材とからなることを特徴とする電子部品収納用パッケージ。
【請求項2】
前記接合材における前記金属粉末の含有量が80〜90体積%であることを特徴とする請求項1記載の電子部品収納用パッケージ。
【請求項3】
前記金属粉末は、平均粒径dが5〜10μmの第1金属粉末と、平均粒径dが0.2×dμmの第2金属粉末とが混合されてなることを特徴とする請求項1記載の電子部品収納用パッケージ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−29524(P2011−29524A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176065(P2009−176065)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】