説明

電子部品実装装置

【課題】 電子部品の吸着ノズルの中心線に対する芯ずれ量を検出する際に、芯ずれ量の誤検出を防止することができる電子部品実装装置を提供する。
【解決手段】吸着ノズル96aの位置を特定する基準マーク63bがマーク面63aに形成された基準マーク部材60が、装着ヘッド95の軸支部95aに揺動可能に取り付けられ、この基準マーク部材60が、アクチュエータ65によって、マーク面63aが水平となる測定位置と、基準マーク63bが撮像装置によって撮像されない退避位置との間で揺動する。このため、基準マーク63bを用いないで電子部品P2の芯ずれ量を検出する場合において、基準マーク部材60を退避位置に退避させると、撮像装置によって基準マーク63bが電子部品P2とともに撮像されず、基準マーク63bが電子部品P2の一部と認識されることが無く、電子部品P2の芯ずれ量の誤検出が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品をプリント基板に実装する電子部品実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に示されるように、吸着ノズルで電子部品を吸着してプリント基板に実装する電子部品実装装置が知られている。このような電子部品実装装置では、吸着ノズルの先端に吸着した電子部品をプリント基板上の指定された座標位置に移動する途中に、吸着ノズルを撮像装置上で一旦停止させ、吸着された電子部品の吸着ノズルの中心線に対する芯ずれ量を撮像装置により検出している。そして、この芯ずれ量に基づき、吸着ノズルの移動量を補正して、電子部品をプリント基板上の指定された座標位置に正確に装着するようになっている。
【0003】
特許文献1に示されるような電子部品実装装置では、芯ずれ量の検出のために、電子部品を吸着した吸着ノズルを撮像装置上で一旦停止させる必要があるため、電子部品のプリント基板への装着のタクトタイムが長くなってしまう。そこで、特許文献2に示されるように、吸着ヘッドに隣接して、下端に基準マークが形成された基準マーク部材を昇降可能に設け、電子部品を吸着した吸着ノズルが撮像装置上を通過する際に、撮像装置で、吸着ノズルで吸着された電子部品とともに基準マークを撮像し、撮像された画像中の基準マークの位置から電子部品の吸着ノズルに対する芯ずれ量を求める電子部品実装装置が提案されている。このような電子部品実装装置では、吸着ノズルを撮像装置上で一旦停止させることなく、芯ずれ量を検出することができるので(オン・ザ・フライ検出)、電子部品のプリント基板への装着のタクトタイムを短縮することができる。なお、このような基準マークは、吸着ノズルの位置補正にも用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−179636号公報(第14頁、図1)
【特許文献2】特開2005−222976号公報(第5、6頁、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、基準マーク部材は、吸着ノズルに隣接して設けられているため、大型の電子部品を吸着ノズルで吸着する場合には、吸着ノズルで吸着した電子部品に基準マーク部材が干渉してしまう。特許文献2に示される電子部品実装装置では、大型の電子部品を吸着ノズルで吸着する場合に、基準マーク部材を上方に移動させて電子部品に干渉しない位置に退避させ、上述のように吸着ノズルを撮像装置上で一旦停止させて、電子部品の芯ずれ量を検出することも考えられる。しかしながら、この場合には、基準マークが吸着ノズルで吸着された電子部品とともに撮像されてしまう場合もあり、基準マークが電子部品の一部と認識されることにより、電子部品の芯ずれ量が誤検出されてしまう問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、電子部品の吸着ノズルの中心線に対する芯ずれ量を検出する際に、芯ずれ量の誤検出を防止することができる電子部品実装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するためになされた、請求項1に係る電子部品実装装置は、基台と、基台に対して水平方向に移動可能に装架された装着ヘッドと、装着ヘッドに設けられ、下端に水平方向に延在する吸着部が形成され、電子部品を吸着部において吸着し、当該電子部品をプリント基板上に装着する吸着ノズルと、基台に設けられ、吸着ノズルの下方から撮像する撮像装置と、撮像装置によって撮像された画像に基づき、吸着ノズルで吸着されている電子部品の吸着ノズルに対する吸着位置を特定する位置特定手段を備えた電子部品実装装置であって、先端面に基準マークが設けられ、装着ヘッドに水平方向に設けられた軸支部に揺動可能に取り付けられ、先端面が水平となる測定位置と、基準マークが撮像装置によって撮像されない退避位置との間で揺動する基準マーク部材と、基準マーク部材を、測定位置と退避位置との間で揺動させる揺動手段と、揺動手段によって基準マーク部材を測定位置に位置させ、撮像装置によって撮像された基準マークを含む画像に基づき、吸着ノズルの位置を特定するノズル位置特定手段と、を設けた。
【0008】
請求項2に係る電子部品実装装置は、請求項1において、基準マーク部材が測定位置に揺動された際に、揺動手段によって基準マーク部材が押圧されて、基準マーク部材を測定位置に位置決めする位置決め部材を設けた。
【0009】
請求項3に係る電子部品実装装置は、請求項2において、位置決め部材には、第1面及び当該第1面に対して異なる方向に延在する第2面が形成され、基準マーク部材は揺動部材によって第1面及び第2面に押圧される。
【0010】
請求項4に係る電子部品実装装置は、請求項1乃至請求項3において、位置特定手段は、基準マーク部材が測定位置にある状態で撮像装置によって撮像された基準マーク及び吸着ノズルで吸着された電子部品を含む画像に基づき、吸着ノズルに対する電子部品の位置を特定する。
【0011】
請求項5に係る電子部品実装装置は、請求項4において、基準マーク部材が測定位置にある状態において、基準マーク及び吸着ノズルによって吸着されている電子部品は、撮像装置が撮像することができる範囲の被写界深度内に位置するように構成されていることである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る電子部品実装装置によれば、先端面に基準マークが形成された基準マーク部材が、装着ヘッドに水平方向に設けられた軸支部に揺動可能に取り付けられ、この基準マーク部材が、揺動手段によって、先端面が水平となる測定位置と、基準マークが撮像装置によって撮像されない退避位置との間で揺動する。このため、基準マーク部材が測定位置にある場合には、撮像装置によって撮像された基準マークの画像に基づいて、吸着ノズルの位置を特定することができる。一方で、基準マークを用いないで電子部品の芯ずれ量を検出する場合において、基準マーク部材を退避位置に退避させると、撮像装置によって基準マークが撮像されず、基準マークが電子部品とともに写らないので、基準マークが電子部品の一部と認識されることが無く、電子部品の芯ずれ量の誤検出が防止される。
【0013】
請求項2に係る電子部品実装装置によれば、基準マーク部材が測定位置に揺動された際には、基準マーク部材が揺動手段によって位置決め部材に押圧される。これにより、基準マーク部材の揺動が、位置決め部材に押圧されることによって規制されるので、精度高く位置決め部材が測定位置に位置決めされ、この結果、精度高く吸着ノズルの位置を特定することができる。
【0014】
請求項3に係る電子部品実装装置によれば、基準マーク部材は揺動部材によって第1面及びこれと異なる方向に延在する第2面に押圧される。これにより、基準マーク部材は、第1面及び第2面に点接触した状態で押圧されるので、基準マーク部材の水平方向位置が規制される。このため、より精度高く、位置決め部材が測定位置に位置決めされる。
【0015】
請求項4に係る電子部品実装装置によれば、位置特定手段は、基準マーク部材が測定位置にある状態で撮像装置によって撮像された基準マーク及び吸着ノズルで吸着された電子部品を含む画像に基づき、吸着ノズルに対する電子部品の位置を特定する。これにより、基準マーク部材及び電子部品を吸着した吸着ノズルを撮像装置の上方において通過させて、撮像装置で基準マーク部材及び吸着ノズルで吸着された電子部品を撮像させることにより、吸着ノズルの中心線に対する電子部品の芯ずれ量を検出することができる。このため、電子部品を吸着した吸着ノズルを撮像装置上で停止させること無く電子部品の芯ずれ量を検出するオン・ザ・フライ検出を行うことができ、プリント基板実装のタクトタイムを短縮することができる。
【0016】
請求項5に係る電子部品実装装置によれば、基準マーク部材が測定位置にある状態において、基準マーク及び吸着ノズルによって吸着されている電子部品は、撮像装置が撮像することができる範囲の被写界深度内に位置するように構成されている。このため、撮像装置のレンズ絞りを開放することにより、撮像装置での露光時間を短縮したとしても、基準マークが撮像装置によって明瞭に撮像されるので、撮像装置上を通過する吸着ノズルの移動速度を高め、プリント基板実装のタクトタイムを短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】電子部品実装装置の斜視図である。
【図2】装着ヘッドの側面図であり、(A)は基準マーク部材が測定位置にある状態を表した図であり、(B)は基準マーク部材が退避位置にある状態を表した図である。
【図3】装着ヘッドの下面図であり、(A)は基準マーク部材が測定位置にある状態を表した図であり、(B)は基準マーク部材が退避位置にある状態を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(電子部品実装装置の説明)
本発明に係る電子部品実装装置の実施形態を、図面に基づいて以下に説明する。図1に示すように、電子部品実装装置100は、電子部品供給装置10、基板搬送装置80、及び、移載装置90を備えている。なお、電子部品実装装置100の幅方向をX軸方向とし、電子部品実装装置100の前後方向をY軸方向とし、電子部品実装装置100の上下方向をZ軸方向とする。
【0019】
電子部品供給装置10は、電子部品実装装置100の基台83の端部に設けられている。電子部品供給装置10は、複数のカセット式のフィーダ11と、このフィーダ11が1つずつ装着される複数のフィーダ装着部12とから構成されている。フィーダ装着部12は、基台83の端部に複数並設されている。そして、各フィーダ11は、フィーダ装着部12に着脱可能に装着される本体13と、この本体13の後部に着脱可能に装着された複数の供給リール14と、本体13の先端に設けられた供給部15を備えている。
【0020】
各供給リール14には、所定個数の電子部品Pを一定のピッチ間隔で保持したキャリアテープが巻回されている。フィーダ11は、供給リール14に巻回されたキャリアテープを1ピッチずつ送り出して、電子部品Pを供給部15に1個ずつ移送する移送機構(図示省略)を備えている。
【0021】
各電子部品実装装置100の基台83上には、プリント基板75をY軸方向に搬送する基板搬送装置80が設けられている。基板搬送装置80は、基台83上に一対のガイドレール84a、84bを互い平行に対向させてそれぞれ水平に並設し、このガイドレール84a、84bによりそれぞれ案内されるプリント基板75を支持して搬送する一対のコンベアベルト(図示省略)を互いに対向させて並設して構成されたものである。図示は省略したが、各電子部品実装装置100は、基板搬送装置80がX方向に連続されるように互いに隣接して配置されて、電子部品実装ラインが構成されている。そして、各電子部品実装装置100の基板搬送装置80は互いに連動して作動され、各プリント基板75を隣の基板搬送装置80上に順次送り込んで、所定位置に位置決め保持するようになっている。
【0022】
移載装置90はXYロボットタイプのものであり、基台83上に装架されて基板搬送装置80及び電子部品供給装置10の上方に配設され、ガイドレール92に沿ってY軸方向に移動可能なY軸スライド93を備えている。Y軸スライド93は、Y軸サーボモータ91の出力軸に連結されたボールねじ91aを有するボールねじ機構によってY軸方向に移動される。Y軸スライド93には、X軸スライド94がY軸方向と直交するX軸方向に移動可能に案内されている。Y軸スライド93にはX軸サーボモータ97が設置され、このX軸サーボモータ97の出力軸に連結された図略のボールねじ機構によってX軸スライド94がX軸方向に移動される。
【0023】
X軸スライド94には、装着ヘッド95が取り付けられている。このような構造により、装着ヘッド95は、基台83に水平方向移動可能に装架されている。後述するように装着ヘッド95は、吸着ノズル96aを有していて、この吸着ノズル96aで、供給部15にある電子部品Pを負圧により吸着してプリント基板75に装着する。
【0024】
電子部品供給装置10と基板搬送装置80との間には、撮像装置70と照明装置(図示省略)が設けられている。撮像装置70は、CCDやCMOS等の撮像素子と、この撮像素子に被写像を結像するレンズを有していて、装着ヘッド95の下方から装着ヘッド95の下端部を撮像する。照明装置は、装着ヘッド95の下端を下方から照明する。
【0025】
制御部50は、電子部品実装装置100の統括制御を行うものであり、電子部品供給装置10、基板搬送装置80、及び、移載装置90の各サーボモータや後述のアクチュエータ65に指令を出力することにより、これらを制御する。また、制御部50は、撮像装置70で撮像された画像データが入力される。制御部50は、各種プログラムが実行されるCPU50a、及び、CPU50aで実行されるプログラムや各種設定値が記憶される記憶部50bを有している。記憶部50bには、撮像装置70によって撮像された画像に基づき、吸着ノズル96aで吸着されている電子部品Pの吸着ノズル96aに対する吸着位置を特定する位置特定プログラムが記憶されている。また、記憶部50bには、後述するように、アクチュエータ65に基準マーク部材60を「測定位置」に位置させる指令を出力し、撮像装置70によって撮像された基準マーク63bを含む画像に基づき、吸着ノズル96aの位置を特定するノズル位置特定手段プログラムが記憶されている。なお、制御部50が、特許請求の範囲に記載の「位置特定手段」、「ノズル位置特定手段」に相当し得る。
【0026】
(装着ヘッドの説明)
以下に、図2及び図3を用いて、装着ヘッド95の説明をする。図2及び図3に示すように、装着ヘッド95には、吸着ヘッド96、サーボモータ98、基準マーク部材60、アクチュエータ65、位置決め部材64が設けられている。吸着ヘッド96は、Z軸方向に昇降可能に、装着ヘッド95に案内支持され、ボールねじを介してサーボモータ98により昇降が制御される。吸着ヘッド96には、下方に突出した円筒状の吸着ノズル96aが設けられている。吸着ノズル96aの下端には、水平方向に延在する吸着部96bが形成され、この吸着部96bにおいて電子部品Pを吸着する。
【0027】
基準マーク部材60は、基部61、当接部62、基準マーク部63とから構成されている。基部61は、本実施形態では板状であり、図2の(A)において、その上端に軸着部61aが形成されている。この軸着部61aが装着ヘッド95に設けられた軸支部95aに軸支され、基部61が装着ヘッド95に揺動可能に取り付けられている。なお、軸着部61aの軸方向は、水平方向であり、図2の(A)に示すように、装着ヘッド95の下端よりも上方に位置している。当接部62は、扁平な円柱形状であり、図2の(A)において、基部61の下端に取り付けられている。
【0028】
基準マーク部63は、縦長の円柱形状であり、図2の(A)において、当接部62の下端に取り付けられている。基準マーク部63の先端には、基準マーク部63の軸線方向と直交するマーク面63a(先端面)が形成されている。図3の(A)に示すように、マーク面63aには、印刷やシールの貼付等により基準マーク63bが設けられている。マーク面63aにおいて、基準マーク63bと、他の部分とは光の反射率が大きく異なっている。この基準マーク63bは、後述するように、吸着ノズル96aの位置を特定するためのものである。
【0029】
アクチュエータ65は、サーボモータ(不図示)を備えていて、ボールねじ等を介してサーボモータにより、Z軸方向の昇降が制御される移動軸65a(移動部材)を備えている。図2の(A)において、移動軸65aの下端は、基部61の軸着部61aの斜め下方位置に形成された連結部61bに連結されている。
【0030】
図2の(A)に示すように、アクチュエータ65の移動軸65aが下方に降下した状態では、基準マーク部63の軸心がZ軸方向(鉛直方向)となり、基準マーク部63が、装着ヘッド95の下端から下方に突出した状態となる。この状態では、基準マーク部63のマーク面63aが水平方向となり、撮像装置70によって基準マーク63bを撮像することができる。図2の(A)に示すように、マーク面63aが水平方向となる基準マーク部材60の位置を「測定位置」とする。
【0031】
図2の(B)に示すように、アクチュエータ65の移動軸65aが上方に移動すると、基準マーク部材60は、「測定位置」から90°揺動し、基準マーク部63の軸心が水平方向となり、基準マーク部材60が装着ヘッド95の下端から上方に退避した状態となる。この状態では、マーク面63aが鉛直方向となり、基準マーク63bが撮像装置70によって撮像できなくなる。図2の(B)に示すように、基準マーク部材60が装着ヘッド95の下端から上方に退避した基準マーク部材60の位置を「退避位置」とする。このように、アクチュエータ65により、基準マーク部材60は、「測定位置」(図2の(A))と、「退避位置」(図2の(B))の間で揺動する。
【0032】
図2に示すように、装着ヘッド95の下端部には、ブロック状の位置決め部材64が設けられている。図3に示すように、位置決め部材64には、略V字形状に凹陥した位置決め凹部64aが形成されている。位置決め凹部64aには、鉛直方向に延在する面である第1面64b及び第2面64cが形成されている。第2面64cは第1面64bに対して異なる方向に延在し、第1面64bと第2面64cはV字状に公差している。
【0033】
図2の(A)や図3の(A)に示すように、基準マーク部材60が「測定位置」に揺動された際には、アクチュエータ65によって基準マーク部材60の当接部62が位置決め部材64の位置決め凹部64aに押圧されて、基準マーク部材60が「測定位置」に位置決めされる。この状態では、図3の(A)に示すように、円柱形状の当接部62は、位置決め凹部64aの第1面64b及び第2面64cに点接触した状態で押圧されているので、当接部62の水平方向位置が規制され、この結果、基準マーク部材60の水平方向位置が規制される。また、基準マーク部材60は、軸支部95aに軸着されているので、基準マーク部材60の水平方向位置が規制されると、基準マーク部材60の鉛直方向位置が規制される。このため、基準マーク部材60が、精度高く「測定位置」に位置決めされ、この結果、基準マーク63bが精度高く「測定位置」に位置決めされる。
【0034】
(吸着ノズルの位置補正の説明)
電子部品実装装置100では、温度変化等により、制御部50が指令する指令位置に対する吸着ノズル96aの位置ズレが生じてしまう。この場合に、吸着ノズル96aの位置補正を実行する。まず、制御部50は、アクチュエータ65に指令を出力し、基準マーク部材60を「測定位置」に移動させ位置させる。次に、制御部50は、X軸サーボモータ97やY軸サーボモータ91に移動指令を出力することにより、電子部品Pを吸着していない吸着ノズル96aを撮像装置70上の指令位置に移動させ、撮像装置70で基準マーク63bを撮像させる。次に、制御部50は、撮像装置70で撮像された基準マーク63bの画像から基準マーク63bの中心位置を認識し、吸着ノズル96aの中心線96cの基台83に対する水平方向座標(以下、単に水平方向座標とする)を算出する。つまり、制御部50は、基準マーク63bの中心と吸着ノズル96aの中心線96cの水平方向の相対位置を把握しているので、基準マーク63bの中心位置に基づき、吸着ノズル96aの中心線96cの水平方向座標を算出することができる。そして、制御部50は、算出された吸着ノズル96aの中心線96cの水平方向座標に基づき、移動指令の水平方向座標と吸着ノズル96aの水平方向座標を一致させる。
【0035】
(オン・ザ・フライ補正の説明)
以下に、吸着ノズル96aを撮像装置70上で停止させること無く、吸着ノズル96aの中心線96cに対する電子部品P1の芯ずれ量を検出するオン・ザ・フライ検出について説明する。制御部50は、X軸サーボモータ97やY軸サーボモータ91に移動指令を出力することにより、電子部品P1を吸着している吸着ノズル96aを撮像装置70上において通過させ、撮像装置70で基準マーク63b及び電子部品P1を撮像させる。この際には、図2の(A)に示すように、基準マーク部材60は、「測定位置」に位置している。次に、制御部50は、撮像された基準マーク63bの画像に基づき、吸着ノズル96aの中心線96cの水平方向座標を算出するとともに、撮像された電子部品P1の画像に基づき、電子部品P1の水平方向座標を算出し、吸着ノズル96aの中心線96cに対する電子部品P1の芯ずれ量を算出する。
【0036】
オン・ザ・フライ検出においては、基準マーク部材60が他の部材に干渉しない場合には、基準マーク部材60を常時「測定位置」に位置させていても差し支え無い。一方で、基準マーク部材60が他の部材に干渉する場合には、撮像装置70で基準マーク63bを撮像する際に基準マーク部材60を「測定位置」に位置させ、それ以外の場合には基準マーク部材60を「退避位置」に退避させる。
【0037】
オン・ザ・フライ検出において、プリント基板実装のタクトタイムを短縮するためには、撮像装置70のレンズ絞りを開放することにより、撮像装置70での露光時間を短縮して、撮像装置70上を通過する吸着ノズル96aの移動速度を高める必要がある。ところが、撮像装置70のレンズ絞りを開放させると、撮像装置70の被写界深度が狭くなる。
【0038】
本実施形態では、図2の(A)に示すように、基準マーク部材60が「測定位置」にある状態では、基準マーク63bが設けられている基準マーク部63下端は、装着ヘッド95の下端から下方に突出している。また、吸着ノズル96aの吸着部96bは、サーボモータ98によって、装着ヘッド95の下端から下方に鉛直方向移動可能に突出させることができる。このため、基準マーク63b及び吸着ノズル96aによって吸着されている電子部品P1を、撮像装置70が撮像することができる範囲の被写界深度内(図2の(A)において2点鎖線で示す範囲)に位置させることができる。これにより、撮像装置70のレンズ絞りを開放することにより、撮像装置70での露光時間を短縮させたとしても、基準マーク63bが撮像装置70によって明瞭に撮像されるので、撮像装置70上を通過する吸着ノズル96aの移動速度を高め、プリント基板実装のタクトタイムを短縮させることができる。
【0039】
(基準マーク部材が退避位置にある状態における芯ずれ量算出の説明)
以下に、基準マーク部材60が「退避位置」にある状態における芯ずれ量算出を説明する。吸着ノズル96aで吸着すると基準マーク部材60に干渉してしまう大型の電子部品P2(図2の(B)に示す)をプリント基板75に実装する場合には、制御部50は、アクチュエータ65に指令を出力することにより、基準マーク部材60を「退避位置」に退避させる。図2の(B)に示すように、電子部品P2が基準マーク部材60に干渉すること無く、電子部品P2を吸着ノズル96aで吸着することができる。
【0040】
次に、制御部50は、X軸サーボモータ97やY軸サーボモータ91に移動指令を出力することにより、電子部品P2を吸着した吸着ノズル96aを撮像装置70上の指令位置で一旦停止させ、撮像装置70で電子部品P2を撮像させる。そして、制御部50は、撮像された電子部品P2の画像に基づき、電子部品P2の水平方向座標を算出する。なお、上述した吸着ノズルの位置補正によって、移動指令の水平方向座標と吸着ノズル96aの水平方向座標は一致しているので、制御部50は、撮像装置70上の指令位置にある吸着ノズル96aの中心線96cの水平方向座標を認識している。そして、制御部50は、撮像装置70上の指令位置にある吸着ノズル96aの中心線96cの水平方向座標と、電子部品P2の水平方向座標から、吸着ノズル96aの中心線96cに対する電子部品P1の芯ずれ量を算出する。
【0041】
以上説明した実施形態では、図2に示すように、マーク面63aに基準マーク63bが設けられた基準マーク部材60が、装着ヘッド95に水平方向に設けられた軸支部95aに揺動可能に取り付けられている。そして、基準マーク部材60が、アクチュエータ65(揺動手段)によって、マーク面63aが水平となる「測定位置」と(図2の(A))、基準マーク63bが撮像装置70によって撮像されない「退避位置」(図2の(B)、図3の(B))との間で揺動する。このため、基準マーク部材60が「測定位置」にある場合には、撮像装置70によって撮像された基準マーク63bの画像に基づいて、吸着ノズル96aの位置を特定することができる。一方で、基準マーク63bを用いないで電子部品P2の芯ずれ量を検出する場合において、基準マーク部材60を退避位置に退避させると、撮像装置70によって基準マーク63bが撮像されず、基準マーク63bが電子部品P2とともに写らないので、基準マーク63bが電子部品P2の一部と認識されることが無く、電子部品P2の芯ずれ量の誤検出が防止される。
【0042】
また、図2の(A)に示すように、基準マーク部材60が「測定位置」に揺動された際には、基準マーク部材60がアクチュエータ65によって位置決め部材64に押圧される。これにより、基準マーク部材60の揺動が、位置決め部材64に押圧されることによって規制されるので、精度高く基準マーク部材60が「測定位置」に位置決めされ、この結果、精度高く基準マーク63bが位置決めされることにより精度高く吸着ノズル96aの水平方向位置を特定することができる。
【0043】
また、図3の(A)に示すように、基準マーク部材60はアクチュエータ65によって第1面64b及びこれと異なる方向に延在する第2面64cに押圧される。これにより、基準マーク部材60は、第1面64b及び第2面64cに点接触した状態で押圧されるので、基準マーク部材60の水平方向位置が規制される。このため、より精度高く、基準マーク部材60が「測定位置」に位置決めされる。
【0044】
また、図2の(A)に示すように、制御部50(位置特定手段)は、基準マーク部材60が「測定位置」にある際に、撮像装置70によって撮像された基準マーク63b及び吸着ノズル96aで吸着された電子部品P1を含む画像に基づき、吸着ノズル96aに対する電子部品P1の位置を特定する。これにより、基準マーク部材60及び電子部品P1を吸着した吸着ノズル96aを撮像装置70の上方において通過させて、撮像装置70で基準マーク部材60及び吸着ノズル96aで吸着された電子部品P1を撮像させることにより、吸着ノズル96aの中心線96cに対する電子部品P1の芯ずれ量を検出することができる。このため、電子部品P1を吸着した吸着ノズル96aを撮像装置70上で停止させること無く電子部品P1の芯ずれ量を検出するオン・ザ・フライ検出を行うことができ、プリント基板75の実装のタクトタイムを短縮することができる。
【0045】
また、図2の(A)に示すように、基準マーク部材60が「測定位置」にある状態において、基準マーク63b及び吸着ノズル96aによって吸着されている電子部品P1は、撮像装置70が撮像することができる範囲の被写界深度内(図2の(A)において2点鎖線で示す範囲)に位置している。このため、撮像装置70のレンズ絞りを開放することにより、撮像装置70での露光時間を短縮したとしても、基準マーク63bが撮像装置70によって明瞭に撮像されるので、撮像装置70上を通過する吸着ノズル96aの移動速度を高め、プリント基板75の実装のタクトタイムを短縮させることができる。
【0046】
上記説明した実施形態では、吸着ノズル96aが装着ヘッド95に対して鉛直方向に昇降可能に設けられているが、装着ヘッド95が基台83に対して鉛直方向に移動可能に装架されることにより、吸着ノズル96aが鉛直方向に昇降する実施形態であっても差し支え無い。
【符号の説明】
【0047】
50…制御部(位置特定手段、ノズル位置特定手段)、 60…基準マーク部材、 63a…マーク面(先端面)、 63b…基準マーク、 64…位置決め部材、 65…アクチュエータ(揺動手段)、 70…撮像装置、 95…装着ヘッド、 95a…軸支部、 96…吸着ヘッド、 96a…吸着ノズル、 96b…吸着部、 83…基台、 100…電子部品実装装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
前記基台に対して水平方向に移動可能に装架された装着ヘッドと、
前記装着ヘッドに設けられ、下端に水平方向に延在する吸着部が形成され、電子部品を前記吸着部において吸着し、当該電子部品をプリント基板上に装着する吸着ノズルと、
前記基台に設けられ、前記吸着ノズルの下方から撮像する撮像装置と、
前記撮像装置によって撮像された画像に基づき、前記吸着ノズルで吸着されている電子部品の前記吸着ノズルに対する吸着位置を特定する位置特定手段を備えた電子部品実装装置であって、
先端面に基準マークが設けられ、前記装着ヘッドに水平方向に設けられた軸支部に揺動可能に取り付けられ、前記先端面が水平となる測定位置と、前記基準マークが前記撮像装置によって撮像されない退避位置との間で揺動する基準マーク部材と、
前記基準マーク部材を、前記測定位置と前記退避位置との間で揺動させる揺動手段と、
前記揺動手段によって前記基準マーク部材を前記測定位置に位置させ、前記撮像装置によって撮像された前記基準マークを含む画像に基づき、前記吸着ノズルの位置を特定するノズル位置特定手段と、を設けた電子部品実装装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記基準マーク部材が前記測定位置に揺動された際に、前記揺動手段によって前記基準マーク部材が押圧されて、前記基準マーク部材を前記測定位置に位置決めする位置決め部材を設けた電子部品実装装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記位置決め部材には、第1面及び当該第1面に対して異なる方向に延在する第2面が形成され、前記基準マーク部材は前記揺動部材によって前記第1面及び前記第2面に押圧される電子部品実装装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかにおいて、
前記位置特定手段は、前記基準マーク部材が前記測定位置にある状態で前記撮像装置によって撮像された前記基準マーク及び前記吸着ノズルで吸着された電子部品を含む画像に基づき、前記吸着ノズルに対する前記電子部品の位置を特定する電子部品実装装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記基準マーク部材が前記測定位置にある状態において、
前記基準マーク及び前記吸着ノズルによって吸着されている前記電子部品は、前記撮像装置が撮像することができる範囲の被写界深度内に位置するように構成されている電子部品実装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−115383(P2013−115383A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262947(P2011−262947)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】