説明

電子部品

【課題】所望の容量値を有するコンデンサを内蔵している電子部品を提供することである。
【解決手段】積層体12は、複数の絶縁体層16が積層されてなる。ランド電極14a,14cは、積層体12の底面に設けられている。内部導体18l,18mはそれぞれ、積層体12内においてランド電極14a,14cと絶縁体層16iを介して対向し、ランド電極14a,14cの面積よりも大きな面積を有し、かつ、z軸方向から平面視したときに、ランド電極14a,14cを包含している。コンデンサ導体19は、コンデンサ導体18l,18mよりもz軸方向の正方向側に設けられ、かつ、コンデンサ導体18l,18mと対向している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関し、より特定的には、複数の絶縁体層が積層されてなる積層体を備えた電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子部品としては、例えば、特許文献1に記載の表面実装部品が知られている。図11は、特許文献1に記載の表面実装部品510を備えている電子装置500の断面構造図である。
【0003】
図11の電子装置500は、表面実装部品510及びマザー基板523を備えている。表面実装部品510は、モジュール基板521、ランド導体522及び内部電極526を含んでいる。モジュール基板521は、導電体と非導電体との積層構造をなしている。ランド導体522は、モジュール基板521の底面に設けられている。内部電極526は、モジュール基板521内に設けられ、ランド導体522に非導電体を介して対向している。マザー基板523は、対応電極524を含んでおり、表面実装部品510が実装される基板である。対応電極524は、マザー基板523の上面に設けられている。電子装置500においては、ランド導体522と対応電極524とがはんだ等により接続されることによって、表面実装部品510がマザー基板523に実装されている。
【0004】
以上のような表面実装部品510では、ランド導体522と内部電極526とは、対向することによりコンデンサを構成している。よって、モジュール基板521の内部の回路とマザー基板523とは、該コンデンサを介して電気的に接続されている。
【0005】
しかしながら、表面実装部品510は、以下に説明するように、ランド導体522及び内部電極526からなるコンデンサにおいて、所望の容量値を得ることが困難であるという問題を有している。より詳細には、ランド導体522と内部電極526とは、上側から平面視したときに一致した状態で対向している。そのため、ランド導体522又は内部電極526が印刷される位置がわずかでもずれると、ランド導体522と内部電極526とが対向している部分の面積が変化してしまう。その結果、ランド導体522及び内部電極526からなるコンデンサの容量値が変動してしまう
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−68569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、所望の容量値を有するコンデンサを内蔵している電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る電子部品は、複数の絶縁体層が積層されてなる積層体と、前記積層体の底面に設けられているランド電極と、前記積層体内において前記ランド電極と前記絶縁体層を介して対向している第1のコンデンサ導体であって、該ランド電極の面積よりも大きな面積を有し、かつ、積層方向から平面視したときに、該ランド電極を包含している第1のコンデンサ導体と、前記第1のコンデンサ導体よりも積層方向の上側に設けられ、かつ、該第1のコンデンサ導体と対向している第2のコンデンサ導体と、を備えていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、積層時の積みずれが起こったとしても、所望の容量値を有するコンデンサを内蔵している電子部品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電子部品の外観斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る電子部品の分解斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る電子部品の等価回路図である。
【図4】第2の実施形態に係る電子部品の分解斜視図である。
【図5】第2の実施形態に係る電子部品の等価回路図である。
【図6】絶縁体層を積層した図である。
【図7】実験結果を示したグラフである。
【図8】絶縁体層を積層した図である。
【図9】第3の実施形態に係る電子部品の分解斜視図である。
【図10】第3の実施形態に係る電子部品の等価回路図である。
【図11】特許文献1に記載の表面実装部品を備えている電子装置の断面構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態に係る電子部品について図面を参照しながら説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
(電子部品の構成)
以下に、本発明の第1の実施形態に係る電子部品の構成について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る電子部品10の外観斜視図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係る電子部品10の分解斜視図である。図3は、本発明の第1の実施形態に係る電子部品10の等価回路図である。以下、電子部品10の積層方向をz軸方向と定義する。また、z軸方向から平面視したときに、電子部品10の長辺に沿った方向をx軸方向と定義し、電子部品10の短辺に沿った方向をy軸方向と定義する。
【0013】
電子部品10は、図1及び図2に示すように、積層体12、ランド電極14(14a〜14c)、内部導体18(18a〜18m)、グランド導体19及びビアホール導体b(b1〜b41)を備えている。
【0014】
積層体12は、図2に示すように、長方形状の複数の絶縁体層16(16a〜16i)が積層されることによって構成され、直方体状をなしている。絶縁体層16は、長方形状をなしており、例えば、Ba−Al−Si系のセラミック誘電体により構成されている。絶縁体層16a〜16iは、z軸方向において正方向側から負方向側へとこの順に並ぶように積層されている。以下では、絶縁体層16のz軸方向の正方向側の主面を表面と呼び、絶縁体層16のz軸方向の負方向側の主面を裏面と呼ぶ。
【0015】
ランド電極14a〜14cは、絶縁体層16iの裏面(積層体12の底面)に設けられ、y軸方向に延在する長方形状をなしている。すなわち、電子部品10は、いわゆるLGA(Land Grid Array)構造をなしている。なお、理解の容易のために、図2では、ランド電極14a〜14cは、絶縁体層16iの裏面から離された状態で記載されている。ランド電極14a〜14cは、x軸方向の負方向側から正方向側へとこの順に並んでいる。ランド電極14aは入力端子として用いられる。ランド電極14bはグランド端子として用いられる。ランド電極14cは出力端子として用いられる。
【0016】
内部導体18及びグランド導体19は、Cuを主成分とする導電性材料により構成されており、絶縁体層16の表面上に設けられている。ビアホール導体bは、絶縁体層16をz軸方向に貫通するビアホールにCuを主成分とする導電性材料が充填されることにより構成されている。ランド電極14、内部導体18、グランド導体19及びビアホール導体bは、以下に説明するように、積層体12に内蔵されているコイルLs1〜Ls3及びコンデンサCs1〜Cs3,Cm1,Cm2,Cp1(図3参照)を構成している。
【0017】
コイルLs1は、図2及び図3に示すように、内部導体18a,18d及びビアホール導体b1〜b3,b8〜b13により構成されている。より詳細には、内部導体18a,18dはそれぞれ、絶縁体層16b,16cの表面上に設けられ、y軸方向に延在し、y軸方向の正方向側の端部においてx軸方向の正方向側に折れ曲がるL字状をなしている。内部導体18aと内部導体18dとは、同じ形状をなしており、z軸方向から平面視したときに一致した状態で重なっている。また、ビアホール導体b1は、絶縁体層16bをz軸方向に貫通しており、内部導体18aの一端と内部導体18dの一端とを接続している。ビアホール導体b8は、絶縁体層16bをz軸方向に貫通しており、内部導体18aの他端と内部導体18dの他端とを接続している。これにより、内部導体18a,18dは互いに接続されている。
【0018】
ビアホール導体b2,b3は、絶縁体層16c,16dをそれぞれz軸方向に貫通している。ビアホール導体b2,b3は、直列に接続されることにより1本のビアホール導体を構成している。ビアホール導体b2のz軸方向の正方向側の端部は、内部導体18dの一端に接続されている。ビアホール導体b3のz軸方向の負方向側の端部は、内部導体18hの一端に接続されている。
【0019】
ビアホール導体b9〜b13は、絶縁体層16c〜16gをz軸方向に貫通している。ビアホール導体b9〜b13は、直列に接続されることにより1本のビアホール導体を構成している。ビアホール導体b9のz軸方向の正方向側の端部は、内部導体18dの他端に接続されている。
【0020】
以上のように、コイルLs1は、x軸方向の正方向側から平面視したときに、コ字型をなすループ型コイルをなしている。
【0021】
内部導体18lは、絶縁体層16iの表面上に設けられ、y軸方向に延在する長方形状をなしている。内部導体18lは、積層体12内においてランド電極14aと絶縁体層16iを介して対向しており、ランド電極14aよりも大きな面積を有し、かつ、z軸方向の正方向側(積層方向)から見たときに、ランド電極14aを包含している。
【0022】
コンデンサCs1は、内部導体18h,18l及びグランド導体19により構成されている。内部導体18hは、絶縁体層16eの表面上に設けられ、y軸方向に延在する部分と、該部分のy軸方向の中央部においてx軸方向の正方向側に突出している部分とからなるT字状をなしている。グランド導体19は、絶縁体層16hに設けられており、十字型をなしている。グランド導体19は、内部導体18hよりもz軸方向の負方向側(積層方向の下側)であって、内部導体18lよりもz軸方向の正方向側(積層方向の上側)に設けられている。内部導体18hとグランド導体19とは、絶縁体層16e,16f,16gを介して互いに対向しており、内部導体18lとグランド導体19とは、絶縁体層16hを介して互いに対向している。これにより、内部導体18h,18lとグランド導体19との間には、コンデンサCs1が形成されている。
【0023】
ビアホール導体b4〜b7は、絶縁体層16e〜16hをz軸方向に貫通している。ビアホール導体b4〜b7は、直列に接続されることにより1本のビアホール導体を構成している。ビアホール導体b4のz軸方向の正方向側の端部は、ビアホール導体b3のz軸方向の負方向側の端部に接続されている。ビアホール導体b7のz軸方向の負方向側の端部は、内部導体18lに接続されている。また、ビアホール導体b13のz軸方向の負方向側の端部は、グランド導体19に接続されている。これにより、コイルLs1とコンデンサCs1とは、並列接続されていることにより、LC並列共振器LC1を構成している。
【0024】
また、ビアホール導体b14は、絶縁体層16iをz軸方向に貫通している。ビアホール導体b14のz軸方向の正方向側の端部は、内部導体18lに接続されている。ビアホール導体b14のz軸方向の負方向側の端部は、ランド電極14aに接続されている。これにより、コイルLs1及びコンデンサCs1からなるLC並列共振器LC1は、ビアホール導体b14を介してランド電極14aに接続されている。
【0025】
また、ビアホール導体b15,b16は、絶縁体層16h,16iをz軸方向に貫通している。ビアホール導体b15,b16は、直列に接続されることにより1本のビアホール導体を構成している。ビアホール導体b15のz軸方向の正方向側の端部は、グランド導体19に接続されている。ビアホール導体b16の負方向側の端部は、ランド電極14bに接続されている。これにより、コイルLs1及びコンデンサCs1からなるLC並列共振器LC1は、ビアホール導体b15,b16を介してランド電極14bに接続されている。
【0026】
コイルLs2は、図2及び図3に示すように、内部導体18b,18e及びビアホール導体b31〜b34,b36〜b41により構成されている。より詳細には、内部導体18b,18eはそれぞれ、絶縁体層16b,16cの表面において内部導体18a,18dのx軸方向の正方向側に設けられ、y軸方向に延在している長方形状をなしている。内部導体18bと内部導体18eとは、同じ形状をなしており、z軸方向から平面視したときに一致した状態で重なっている。また、ビアホール導体b31は、絶縁体層16bをz軸方向に貫通しており、内部導体18bの一端と内部導体18eの一端とを接続している。ビアホール導体b36は、絶縁体層16bをz軸方向に貫通しており、内部導体18bの他端と内部導体18eの他端とを接続している。これにより、内部導体18b,18eは互いに接続されている。
【0027】
ビアホール導体b32〜b34は、絶縁体層16c〜16eをそれぞれz軸方向に貫通している。ビアホール導体b32〜b34は、直列に接続されることにより1本のビアホール導体を構成している。ビアホール導体b32のz軸方向の正方向側の端部は、内部導体18eの一端に接続されている。
【0028】
ビアホール導体b37〜b41は、絶縁体層16c〜16gをz軸方向に貫通している。ビアホール導体b37〜b41は、直列に接続されることにより1本のビアホール導体を構成している。ビアホール導体b37のz軸方向の正方向側の端部は、内部導体18eの他端に接続されている。
【0029】
以上のように、コイルLs2は、x軸方向の正方向側から平面視したときに、コ字型をなすループ型コイルをなしている。
【0030】
コンデンサCs2は、内部導体18j,18k及びグランド導体19により構成されている。内部導体18j,18kはそれぞれ、絶縁体層16f,16gの表面上に設けられ、長方形状をなしている。ビアホール導体b35は、絶縁体層16fをz軸方向に貫通している。ビアホール導体b35のz軸方向の正方向側の端部は、内部導体18jに接続されている。ビアホール導体b35のz軸方向の負方向側の端部は、内部導体18kに接続されている。内部導体18jとグランド導体19とは、絶縁体層16f,16gを介して対向している。内部導体18kとグランド導体19とは、絶縁体層16gを介して互いに対向している。これにより、内部導体18j,18kとグランド導体19との間にコンデンサCs2が形成されている。
【0031】
ビアホール導体b34のz軸方向の負方向側の端部は、内部導体18jに接続されている。また、ビアホール導体b41のz軸方向の負方向側の端部は、グランド導体19に接続されている。これにより、コイルLs2とコンデンサCs2とは、並列接続されていることにより、LC並列共振器LC2を構成している。また、コイルLs2及びコンデンサCs2からなるLC並列共振器LC2は、ビアホール導体b15,b16を介してランド電極14bに接続されている。
【0032】
コイルLs3は、図2及び図3に示すように、内部導体18c,18f及びビアホール導体b17〜b19,b24〜b29により構成されている。より詳細には、内部導体18c,18fはそれぞれ、絶縁体層16b,16cの表面上に設けられ、y軸方向に延在し、y軸方向の正方向側の端部においてx軸方向の負方向側に折れ曲がるL字状をなしている。内部導体18cと内部導体18fとは、同じ形状をなしており、z軸方向から平面視したときに一致した状態で重なっている。また、ビアホール導体b17は、絶縁体層16bをz軸方向に貫通しており、内部導体18cの一端と内部導体18fの一端とを接続している。ビアホール導体b24は、絶縁体層16bをz軸方向に貫通しており、内部導体18cの他端と内部導体18fの他端とを接続している。これにより、内部導体18c,18fは互いに接続されている。
【0033】
ビアホール導体b18,b19は、絶縁体層16c,16dをそれぞれz軸方向に貫通している。ビアホール導体b18,b19は、直列に接続されることにより1本のビアホール導体を構成している。ビアホール導体b18のz軸方向の正方向側の端部は、内部導体18fの一端に接続されている。ビアホール導体b19のz軸方向の負方向側の端部は、内部導体18iの一端に接続されている。
【0034】
ビアホール導体b25〜b29は、絶縁体層16c〜16gをz軸方向に貫通している。ビアホール導体b25〜b29は、直列に接続されることにより1本のビアホール導体を構成している。ビアホール導体b25のz軸方向の正方向側の端部は、内部導体18fの他端に接続されている。
【0035】
以上のように、コイルLs3は、x軸方向の正方向側から平面視したときに、コ字型をなすループ型コイルをなしている。
【0036】
内部導体18mは、絶縁体層16iの表面上に設けられ、y軸方向に延在する長方形状をなしている。内部導体18mは、積層体12内においてランド電極14cと絶縁体層16iを介して対向しており、ランド電極14cよりも大きな面積を有し、かつ、z軸方向の正方向側(積層方向)から見たときに、ランド電極14cを包含している。
【0037】
コンデンサCs3は、内部導体18i,18m及びグランド導体19により構成されている。内部導体18iは、絶縁体層16eの表面上に設けられ、y軸方向に延在する部分と、該部分のy軸方向の中央部においてx軸方向の負方向側に突出している部分とからなるT字状をなしている。グランド導体19は、内部導体18iよりもz軸方向の負方向側(積層方向の下側)であって、内部導体18mよりもz軸方向の正方向側(積層方向の上側)に設けられている。内部導体18iとグランド導体19とは、絶縁体層16e,16f,16gを介して互いに対向しており、内部導体18mとグランド導体19とは、絶縁体層16hを介して互いに対向している。これにより、内部導体18i,18mとグランド導体19との間には、コンデンサCs3が形成されている。
【0038】
ビアホール導体b20〜b23は、絶縁体層16e〜16hをz軸方向に貫通している。ビアホール導体b20〜b23は、直列に接続されることにより1本のビアホール導体を構成している。ビアホール導体b20のz軸方向の正方向側の端部は、ビアホール導体b19のz軸方向の負方向側の端部に接続されている。ビアホール導体b23のz軸方向の負方向側の端部は、内部導体18mに接続されている。また、ビアホール導体b29のz軸方向の負方向側の端部は、グランド導体19に接続されている。これにより、コイルLs3とコンデンサCs3とは、並列接続されていることにより、LC並列共振器LC3を構成している。
【0039】
また、ビアホール導体b30は、絶縁体層16iをz軸方向に貫通している。ビアホール導体b30のz軸方向の正方向側の端部は、内部導体18mに接続されている。ビアホール導体b30のz軸方向の負方向側の端部は、ランド電極14cに接続されている。これにより、コイルLs3及びコンデンサCs3からなるLC並列共振器LC3は、ビアホール導体b30を介してランド電極14cに接続されている。また、コイルLs3及びコンデンサCs3からなるLC並列共振器LC3は、ビアホール導体b15,b16を介してランド電極14bに接続されている。
【0040】
コンデンサCm1は、内部導体18h及び内部導体18jにより構成されている。内部導体18hと内部導体18jとは、絶縁体層16eを介して互いに対向している。これにより、内部導体18h,18j間にはコンデンサCm1が形成されている。
【0041】
コンデンサCm2は、内部導体18i及び内部導体18jにより構成されている。内部導体18iと内部導体18jとは、絶縁体層16eを介して互いに対向している。これにより、内部導体18i,18j間にはコンデンサCm2が形成されている。
【0042】
コンデンサCp1は、内部導体18g及び内部導体18h,18iにより構成されている。内部導体18gは、絶縁体層16dの表面上に設けられ、x軸方向に延在する長方形状をなしている。内部導体18gと内部導体18h,18iとは、絶縁体層16dを介して互いに対向している。これにより、内部導体18h,18g間、及び、内部導体18g,18i間に2つのコンデンサが形成される。これらの2つのコンデンサは、直列に接続されて、コンデンサCp1を構成している。
【0043】
以上のように構成された電子部品10は、例えば、バンドパスフィルタとして用いられる。より詳細には、LC並列共振器LC1〜LC3のインピーダンスは、これらの共振周波数において最大となる。そのため、LC並列共振器LC1〜LC3は、これらの共振周波数付近の周波数を有する高周波信号を通過させない。すなわち、LC並列共振器LC1〜LC3の共振周波数付近の周波数を有する高周波信号は、外部電極14aから外部電極14bへと流れずに、外部電極14aから外部電極14cへと流れる。一方、LC並列共振器LC1〜LC3の共振周波数付近の周波数外の周波数では、LC並列共振器LC1〜LC3のインピーダンスは比較的に低い。そのため、LC並列共振器LC1〜LC3の共振周波数付近の周波数外の周波数は、LC並列共振器LC1〜LC3を通過して、外部電極14bを介してグランドへと流れる。以上のように、電子部品10では、LC並列共振器LC1〜LC3の共振周波数付近の周波数の高周波信号のみを通過させるバンドパスフィルタとして機能する。
【0044】
(効果)
前記電子部品10では、所望の容量値を有するコンデンサCs1,Cs3において所望の容量値を得ることができる。より詳細には、内部導体18l,18mはそれぞれ、積層体12内においてランド電極14a,14cと絶縁体層16iを介して対向しており、ランド電極14a,14cよりも大きな面積を有し、かつ、z軸方向の正方向側(積層方向)から見たときに、ランド電極14a,14cを包含している。このため、コンデンサCs1,Cs3を構成する内部導体18l,18m,18h,18i又はランド電極14a,14cが印刷される位置がわずかにずれても、z軸方向から平面視したときに、ランド電極14a,14cが内部導体18l,18m内に包含された状態が維持される。そのため、電子部品10では、ランド電極14a,14cが内部導体18l,18mからはみ出してグランド電極19と対向して容量を形成することが抑制される。従って、コンデンサCs1,Cs3が所望の容量値からずれることが抑制される。
【0045】
また、電子部品10では、所望の容量値を有するコンデンサCs1,Cs3を得た場合であっても、ランド電極14a〜14c間の絶縁性を維持することができる。より詳細には、所望の容量値を得ようとして、ランド電極14a,14cの面積を大きくした場合、ランド電極14a〜14c間の間隔が小さくなる。一方で、ランド電極14a〜14cは、電子部品10が基板に実装される際に、基板のランドとはんだにより接続される。そのため、ランド電極14a〜14c間の間隔が小さくなると、はんだ実装時に、ランド電極14a〜14c間がはんだにより接続されてしまうおそれがある。すなわち、ランド電極14a〜14c間の絶縁性が維持されない。
【0046】
そこで、電子部品10では、内部導体18l,18mの面積がランド電極14a,14cの面積よりも大きい。内部導体18l,18mは、電子部品10に内蔵されているので、ランド電極14a〜14cのようにはんだ実装されない。よって、電子部品10の基板への実装の際に、内部導体18l,18m間においてショートが発生するおそれがない。よって、内部導体18l,18m間は、ランド電極14a〜14cに比べて近接させることが容易である。すなわち、内部導体18l,18mは、ランド電極14a〜14cに比べて容易に大型化できる。以上より、電子部品10では、所望の容量値を有するコンデンサCs1,Cs3を得た場合であっても、ランド電極14a〜14c間の絶縁性を維持することができる。
【0047】
(第2の実施形態)
(電子部品の構成)
以下に、第2の実施形態に係る電子部品10aの構成について、図面を参照しながら説明する。図4は、第2の実施形態に係る電子部品10aの分解斜視図である。図5は、第2の実施形態に係る電子部品10aの等価回路図である。なお、電子部品10aの外観斜視図は、図1を援用する。なお、電子部品10aの構成の内、電子部品10と同じ構成については、同じ参照符号を付した。
【0048】
電子部品10aは、図4に示すように、積層体12、ランド電極14(14a〜14c)、内部導体18(18a〜18g,18l,18m),38(38a〜38h)、グランド導体39(39a,39b)及びビアホール導体b(b51〜b97)を備えている。
【0049】
積層体12は、図4に示すように、長方形状の複数の絶縁体層16(16a〜16j)が積層されることによって構成され、直方体状をなしている。絶縁体層16は、長方形状をなしており、例えば、Ba−Al−Si系のセラミック誘電体により構成されている。絶縁体層16a〜16jは、z軸方向において正方向側から負方向側へとこの順に並ぶように積層されている。以下では、絶縁体層16のz軸方向の正方向側の主面を表面と呼び、絶縁体層16のz軸方向の負方向側の主面を裏面と呼ぶ。
【0050】
ランド電極14a〜14cは、絶縁体層16jの裏面(積層体12の底面)に設けられ、y軸方向に延在する長方形状をなしている。すなわち、電子部品10aは、いわゆるLGA(Land Grid Array)構造をなしている。なお、理解の容易のために、図4では、ランド電極14a〜14cは、絶縁体層16jの裏面から離された状態で記載されている。ランド電極14a〜14cは、x軸方向の負方向側から正方向側へとこの順に並んでいる。ランド電極14aは入力端子として用いられる。ランド電極14bはグランド端子として用いられる。ランド電極14cは出力端子として用いられる。
【0051】
内部導体18,38及びグランド導体39は、Cuを主成分とする導電性材料により構成されており、絶縁体層16の表面上に設けられている。ビアホール導体bは、絶縁体層16をz軸方向に貫通するビアホールにCuを主成分とする導電性材料が充填されることにより構成されている。ランド電極14、内部導体18,38、グランド導体39及びビアホール導体bは、以下に説明するように、積層体12に内蔵されているコイルLs1〜Ls3及びコンデンサCs1〜Cs3,Cm1,Cm2,Cp1(図5参照)を構成している。
【0052】
コイルLs1は、図4及び図5に示すように、内部導体18a,18d及びビアホール導体b51〜b53,b57〜b61により構成されている。より詳細には、内部導体18a,18dはそれぞれ、絶縁体層16b,16cの表面上に設けられ、y軸方向に延在し、y軸方向の正方向側の端部においてx軸方向の正方向側に折れ曲がるL字状をなしている。内部導体18aと内部導体18dとは、同じ形状をなしており、z軸方向から平面視したときに一致した状態で重なっている。また、ビアホール導体b51は、絶縁体層16bをz軸方向に貫通しており、内部導体18aの一端と内部導体18dの一端とを接続している。ビアホール導体b57は、絶縁体層16bをz軸方向に貫通しており、内部導体18aの他端と内部導体18dの他端とを接続している。これにより、内部導体18a,18dは互いに接続されている。
【0053】
ビアホール導体b52,b53は、絶縁体層16c,16dをそれぞれz軸方向に貫通している。ビアホール導体b52,b53は、直列に接続されることにより1本のビアホール導体を構成している。ビアホール導体b52のz軸方向の正方向側の端部は、内部導体18dの一端に接続されている。
【0054】
ビアホール導体b58〜b61は、絶縁体層16c〜16fをz軸方向に貫通している。ビアホール導体b58〜b61は、直列に接続されることにより1本のビアホール導体を構成している。ビアホール導体b58のz軸方向の正方向側の端部は、内部導体18dの他端に接続されている。
【0055】
以上のように、コイルLs1は、x軸方向の正方向側から平面視したときに、コ字型をなすループ型コイルをなしている。
【0056】
内部導体18lは、絶縁体層16jの表面上に設けられ、y軸方向に延在する長方形状をなしている。内部導体18lは、積層体12内においてランド電極14aと絶縁体層16jを介して対向しており、ランド電極14aよりも大きな面積を有し、かつ、z軸方向の正方向側(積層方向)から見たときに、ランド電極14aを包含している。内部導体18lとランド電極14aとの間には導体層が設けられていない。
【0057】
コンデンサCs1は、内部導体18l,38c,38f及びグランド導体39a,39bにより構成されている。内部導体38c,38fはそれぞれ、絶縁体層16f,16hの表面上に設けられ、y軸方向に延在する長方形状をなしている。グランド導体39aは、絶縁体層16gの表面上に設けられ、x軸方向に延在する部分と、該部分のx軸方向の中央部においてy軸方向の負方向側に突出している部分とからなるT字状をなしている。グランド導体39bは、絶縁体層16iの表面上に設けられ、長方形状をなしている。ただし、グランド導体39bには、x軸方向の負方向側の辺(外縁)からx軸方向の正方向側に向かって窪んでいる切り欠きA1、及び、x軸方向の正方向側の辺(外縁)からx軸方向の負方向側に向かって窪んでいる切り欠きA2が設けられている。
【0058】
ここで、電子部品10aの切り欠きA1,A2の形状について図面を参照しながら説明する。図6は、絶縁体層16h〜16jを積層した図である。ただし、理解の容易のために、内部導体38gについては省略した。
【0059】
切り欠きA1,A2のx軸方向の深さD1,D2はそれぞれ、内部導体18l,18m,38f,38hにおける切り欠きA1,A2と重なっている部分のx軸方向の幅D3,D4よりも大きい。
【0060】
更に、グランド導体39bは、内部導体18lよりもz軸方向の正方向側(積層方向の上側)に設けられている。また、内部導体38fは、グランド導体39bよりもz軸方向の正方向側(積層方向の上側)に設けられている。これにより、内部導体18lとグランド導体39bとは、絶縁体層16iを介して互いに対向している。同様に、内部導体38fとグランド導体39bとは、絶縁体層16hを介して互いに対向している。すなわち、内部導体18l,38fとグランド導体39bとの間にはそれぞれ、容量が形成されている。
【0061】
更に、グランド導体39aは、内部導体38fよりもz軸方向の正方向側(積層方向の上側)に設けられている。また、内部導体38cは、グランド導体39aよりもz軸方向の正方向側(積層方向の上側)に設けられている。これにより、内部導体38fとグランド導体39aとは、絶縁体層16gを介して互いに対向している。同様に、内部導体38cとグランド導体39aとは、絶縁体層16fを介して互いに対向している。すなわち、内部導体38c,38fとグランド導体39aとの間にはそれぞれ、容量が形成されている。
【0062】
また、ビアホール導体b54〜b56は、絶縁体層16e〜16gをz軸方向に貫通している。ビアホール導体b54〜b56は、直列に接続されることにより1本のビアホール導体を構成している。ビアホール導体b54のz軸方向の正方向側の端部は、ビアホール導体b53のz軸方向の負方向側の端部に接続されている。ビアホール導体b54のz軸方向の負方向側の端部は、内部導体38cに接続されている。ビアホール導体b56のz軸方向の負方向側の端部は、内部導体38fに接続されている。
【0063】
また、ビアホール導体b64,b65は、絶縁体層16h,16iをz軸方向に貫通している。ビアホール導体b64,b65は、直列に接続されることにより1本のビアホール導体を構成しており、切り欠きA1内を通過している。ビアホール導体b64のz軸方向の正方向側の端部は、内部導体38fに接続されている。ビアホール導体b65のz軸方向の負方向側の端部は、内部導体18lに接続されている。すなわち、ビアホール導体b64,b65は、内部導体18lと内部導体38fとを接続している。
【0064】
以上のように内部導体18l,38c,38fが接続されることにより、内部導体18l,38c,38f及びグランド導体39a,39bにより構成されている4つのコンデンサが接続されている。そして、4つのコンデンサにより、コンデンサCs1が形成されている。
【0065】
また、前記の通り、ビアホール導体b65のz軸方向の負方向側の端部は、内部導体18lに接続されている。更に、ビアホール導体b62,b63は、絶縁体層16g,16hをz軸方向に貫通している。ビアホール導体b62,b63は、直列に接続されることにより1本のビアホール導体を構成している。ビアホール導体b62のz軸方向の正方向側の端部は、ビアホール導体b61のz軸方向の負方向側の端部に接続されている。ビアホール導体b63のz軸方向の負方向側の端部は、グランド導体39bに接続されている。これにより、コイルLs1とコンデンサCs1とは、並列接続されていることにより、LC並列共振器LC1を構成している。
【0066】
また、ビアホール導体b66は、絶縁体層16jをz軸方向に貫通している。ビアホール導体b66のz軸方向の正方向側の端部は、内部導体18lに接続されている。ビアホール導体b66のz軸方向の負方向側の端部は、ランド電極14aに接続されている。これにより、コイルLs1及びコンデンサCs1からなるLC並列共振器LC1は、ビアホール導体b66を介してランド電極14aに接続されている。
【0067】
また、ビアホール導体b67,b68は、絶縁体層16i,16jをz軸方向に貫通している。ビアホール導体b67,b68は、直列に接続されることにより1本のビアホール導体を構成している。ビアホール導体b67のz軸方向の正方向側の端部は、グランド導体39bに接続されている。ビアホール導体b68のz軸方向の負方向側の端部は、ランド電極14bに接続されている。これにより、コイルLs1及びコンデンサCs1からなるLC並列共振器LC1は、ビアホール導体b67,b68を介してランド電極14bに接続されている。
【0068】
コイルLs2は、図4及び図5に示すように、内部導体18b,18e及びビアホール導体b85〜b88,b91〜b95により構成されている。より詳細には、内部導体18b,18eはそれぞれ、絶縁体層16b,16cの表面において内部導体18a,18dのx軸方向の正方向側に設けられ、y軸方向に延在している長方形状をなしている。内部導体18bと内部導体18eとは、同じ形状をなしており、z軸方向から平面視したときに一致した状態で重なっている。また、ビアホール導体b85は、絶縁体層16bをz軸方向に貫通しており、内部導体18bの一端と内部導体18eの一端とを接続している。ビアホール導体b91は、絶縁体層16bをz軸方向に貫通しており、内部導体18bの他端と内部導体18eの他端とを接続している。これにより、内部導体18b,18eは並列接続されている。
【0069】
ビアホール導体b86〜b88は、絶縁体層16c〜16eをそれぞれz軸方向に貫通している。ビアホール導体b86〜b88は、直列に接続されることにより1本のビアホール導体を構成している。ビアホール導体b86のz軸方向の正方向側の端部は、内部導体18eの一端に接続されている。
【0070】
ビアホール導体b92〜b95は、絶縁体層16c〜16fをz軸方向に貫通している。ビアホール導体b92〜b95は、直列に接続されることにより1本のビアホール導体を構成している。ビアホール導体b92のz軸方向の正方向側の端部は、内部導体18eの他端に接続されている。
【0071】
以上のように、コイルLs2は、x軸方向の正方向側から平面視したときに、コ字型をなすループ型コイルをなしている。
【0072】
コンデンサCs2は、内部導体38d,38g及びグランド導体39a,39bにより構成されている。内部導体38d,38gはそれぞれ、絶縁体層16f,16hの表面上に設けられ、T字状をなしている。ビアホール導体b89,b90は、絶縁体層16f,16gをz軸方向に貫通している。ビアホール導体b89,b90は、直列に接続されることにより1本のビアホール導体を構成している。ビアホール導体b89のz軸方向の正方向側の端部は、内部導体38dに接続されている。ビアホール導体b90のz軸方向の負方向側の端部は、内部導体38gに接続されている。内部導体38d,38gとグランド導体39aとは、絶縁体層16f,16gを介して対向している。内部導体38gとグランド導体39bとは、絶縁体層16hを介して互いに対向している。これにより、内部導体38d,38gとグランド導体39a,39bとの間にコンデンサCs2が形成されている。
【0073】
ビアホール導体b88のz軸方向の負方向側の端部は、内部導体38dに接続されている。また、ビアホール導体b95のz軸方向の負方向側の端部は、グランド導体39aに接続されている。更に、ビアホール導体b96,b97は、絶縁体層16g,16hをz軸方向に貫通している。ビアホール導体b96,b97は、直列に接続されることにより1本のビアホール導体を構成している。ビアホール導体b96のz軸方向の正方向側の端部は、グランド導体39aに接続されている。ビアホール導体b97のz軸方向の負方向側の端部は、グランド導体39bに接続されている。これにより、コイルLs2とコンデンサCs2とは、並列接続されていることにより、LC並列共振器LC2を構成している。また、コイルLs2及びコンデンサCs2からなるLC並列共振器LC2は、ビアホール導体b67,b68を介してランド電極14bに接続されている。
【0074】
コイルLs3は、図4及び図5に示すように、内部導体18c,18f及びビアホール導体b69〜b71,b75〜b79により構成されている。より詳細には、内部導体18c,18fはそれぞれ、絶縁体層16b,16cの表面上に設けられ、y軸方向に延在し、y軸方向の正方向側の端部においてx軸方向の負方向側に折れ曲がるL字状をなしている。内部導体18cと内部導体18fとは、同じ形状をなしており、z軸方向から平面視したときに一致した状態で重なっている。また、ビアホール導体b69は、絶縁体層16bをz軸方向に貫通しており、内部導体18cの一端と内部導体18fの一端とを接続している。ビアホール導体b75は、絶縁体層16bをz軸方向に貫通しており、内部導体18cの他端と内部導体18fの他端とを接続している。これにより、内部導体18c,18fは互いに接続されている。
【0075】
ビアホール導体b70,b71は、絶縁体層16c,16dをそれぞれz軸方向に貫通している。ビアホール導体b70,b71は、直列に接続されることにより1本のビアホール導体を構成している。ビアホール導体b70のz軸方向の正方向側の端部は、内部導体18fの一端に接続されている。
【0076】
ビアホール導体b76〜b79は、絶縁体層16c〜16fをz軸方向に貫通している。ビアホール導体b76〜b79は、直列に接続されることにより1本のビアホール導体を構成している。ビアホール導体b76のz軸方向の正方向側の端部は、内部導体18fの他端に接続されている。
【0077】
以上のように、コイルLs3は、x軸方向の正方向側から平面視したときに、コ字型をなすループ型コイルをなしている。
【0078】
内部導体18mは、絶縁体層16jの表面上に設けられ、y軸方向に延在する長方形状をなしている。内部導体18mは、積層体12内においてランド電極14cと絶縁体層16jを介して対向しており、ランド電極14cよりも大きな面積を有し、かつ、z軸方向の正方向側(積層方向)から見たときに、ランド電極14cを包含している。内部導体18mとランド電極14cとの間には導体層が設けられていない。
【0079】
コンデンサCs3は、内部導体18m,38e,38h及びグランド導体39a,39bにより構成されている。内部導体38e,38hはそれぞれ、絶縁体層16f,16hの表面上に設けられ、y軸方向に延在する長方形状をなしている。
【0080】
更に、グランド導体39bは、内部導体18mよりもz軸方向の正方向側(積層方向の上側)に設けられている。また、内部導体38hは、グランド導体39bよりもz軸方向の正方向側(積層方向の上側)に設けられている。これにより、内部導体18mとグランド導体39bとは、絶縁体層16iを介して互いに対向している。同様に、内部導体38hとグランド導体39bとは、絶縁体層16hを介して互いに対向している。すなわち、内部導体18m,38hとグランド導体39bとの間にはそれぞれ、容量が形成されている。
【0081】
更に、グランド導体39aは、内部導体38hよりもz軸方向の正方向側(積層方向の上側)に設けられている。また、内部導体38eは、グランド導体39aよりもz軸方向の正方向側(積層方向の上側)に設けられている。これにより、内部導体38hとグランド導体39aとは、絶縁体層16gを介して互いに対向している。同様に、内部導体38eとグランド導体39aとは、絶縁体層16fを介して互いに対向している。すなわち、内部導体38e,38hとグランド導体39aとの間にはそれぞれ、容量が形成されている。
【0082】
また、ビアホール導体b72〜b74は、絶縁体層16e〜16gをz軸方向に貫通している。ビアホール導体b72〜b74は、直列に接続されることにより1本のビアホール導体を構成している。ビアホール導体b72のz軸方向の正方向側の端部は、ビアホール導体b71の負方向側の端部に接続されている。ビアホール導体b72のz軸方向の負方向側の端部は、内部導体38eに接続されている。ビアホール導体b74のz軸方向の負方向側の端部は、内部導体38hに接続されている。
【0083】
また、ビアホール導体b82,b83は、絶縁体層16h,16iをz軸方向に貫通している。ビアホール導体b82,b83は、直列に接続されることにより1本のビアホール導体を構成しており、切り欠きA2内を通過している。ビアホール導体b82のz軸方向の正方向側の端部は、内部導体38hに接続されている。ビアホール導体b83のz軸方向の負方向側の端部は、内部導体18mに接続されている。すなわち、ビアホール導体b82,b83は、内部導体18mと内部導体38hとを接続している。
【0084】
以上のように内部導体18m,38e,38hが接続されることにより、内部導体18m,38e,38h及びグランド導体39a,39bにより構成されている4つのコンデンサが接続されている。そして、4つの容量により、コンデンサCs3が形成されている。
【0085】
また、前記の通り、ビアホール導体b83のz軸方向の負方向側の端部は、内部導体18mに接続されている。更に、ビアホール導体b80,b81は、絶縁体層16g,16hをz軸方向に貫通している。ビアホール導体b80,b81は、直列に接続されることにより1本のビアホール導体を構成している。ビアホール導体b80のz軸方向の正方向側の端部は、ビアホール導体b79のz軸方向の負方向側の端部に接続されている。ビアホール導体b81のz軸方向の負方向側の端部は、グランド導体39bに接続されている。これにより、コイルLs3とコンデンサCs3とは、並列接続されていることにより、LC並列共振器LC3を構成している。
【0086】
また、ビアホール導体b84は、絶縁体層16jをz軸方向に貫通している。ビアホール導体b84のz軸方向の正方向側の端部は、内部導体18mに接続されている。ビアホール導体b84のz軸方向の負方向側の端部は、ランド電極14cに接続されている。これにより、コイルLs3及びコンデンサCs3からなるLC並列共振器LC3は、ビアホール導体b84を介してランド電極14cに接続されている。
【0087】
また、ビアホール導体b67,b68は、絶縁体層16i,16jをz軸方向に貫通している。ビアホール導体b67,b68は、直列に接続されることにより1本のビアホール導体を構成している。ビアホール導体b67のz軸方向の正方向側の端部は、グランド導体39bに接続されている。ビアホール導体b68の負方向側の端部は、ランド電極14bに接続されている。これにより、コイルLs3及びコンデンサCs3からなるLC並列共振器LC3は、ビアホール導体b67,b68を介してランド電極14bに接続されている。
【0088】
コンデンサCm1は、内部導体38a及び内部導体38dにより構成されている。内部導体38aは、絶縁体層16eの表面上に設けられ、y軸方向に延在し、y軸方向の正方向側の端部においてx軸方向の正方向側に折れ曲がるL字状をなしている。また、内部導体38aは、ビアホール導体b53,b54に接続されている。内部導体38dは、前記の通り、絶縁体層16fの表面上に設けられ、T字状をなしている。また、内部導体38dは、ビアホール導体b88,b89に接続されている。内部導体38aと内部導体38dとは、絶縁体層16eを介して互いに対向している。これにより、内部導体38a,38d間にはコンデンサCm1が形成されている。
【0089】
コンデンサCm2は、内部導体38b及び内部導体38dにより構成されている。内部導体38bは、絶縁体層16eの表面上に設けられ、y軸方向に延在し、y軸方向の正方向側の端部においてx軸方向の負向側に折れ曲がるL字状をなしている。また、内部導体38bは、ビアホール導体b71,b72に接続されている。内部導体38dは、前記の通り、絶縁体層16fの表面上に設けられ、T字状をなしている。内部導体38bと内部導体38dとは、絶縁体層16eを介して互いに対向している。これにより、内部導体38b,38d間にはコンデンサCm2が形成されている。
【0090】
コンデンサCp1は、内部導体18g及び内部導体38a,38bにより構成されている。内部導体18gは、絶縁体層16dの表面上に設けられ、x軸方向に延在する長方形状をなしている。内部導体18gと内部導体38a,38bとは、絶縁体層16dを介して互いに対向している。これにより、内部導体38a,18g間、及び、内部導体18g,38b間に2つのコンデンサが形成される。これらの2つのコンデンサは、直列に接続されて、コンデンサCp1を構成している。
【0091】
以上のように構成された電子部品10aは、例えば、バンドパスフィルタとしても用いられる。ただし、電子部品10aの動作は、電子部品10の動作と同じであるので、説明を省略する。
【0092】
(効果)
前記電子部品10aでは、電子部品10と同様に、所望の容量値を有するコンデンサCs1,Cs3において所望の容量値を得ることができる。更に、電子部品10aでは、電子部品10と同様に、所望の容量値を有するコンデンサCs1,Cs3を得た場合であっても、ランド電極14a〜14c間の絶縁性を維持することができる。
【0093】
また、電子部品10aによれば、絶縁体層16h〜16jの積層時に、絶縁体層16h〜16jがx軸方向にずれたとしても、コンデンサCs1,Cs3の容量値が変動しにくくなる。より詳細には、図6に示すように、切り欠きA1,A2のx軸方向の深さD1,D2はそれぞれ、内部導体18l,18m,38f,38hにおける切り欠きA1,A2と重なっている部分のx軸方向の幅D3,D4よりも大きい。そのため、絶縁体層16h〜16jがx軸方向にわずかにずれたとしても、内部導体18l,18m,38f,38hとグランド導体39bとが対向している部分の面積は変化しない。その結果、電子部品10aによれば、絶縁体層16h〜16jの積層時に、絶縁体層16h〜16jがx軸方向にずれたとしても、コンデンサCs1,Cs3の容量値が変動しにくくなる。
【0094】
本願発明者は、コンデンサCs1,Cs3の容量値の変動を抑制できることを明らかにするために、以下に説明する実験を行った。具体的には、電子部品10aを第1のサンプルとして作製し、切り欠きA1,A2が設けられていない電子部品を第2のサンプルとして作製した。第2のサンプルにおける切り欠きA1,A2以外の構成は、第1のサンプルと同じである。そして、第1のサンプル及び第2のサンプルを用いて、周波数と挿入損失との関係を調べた。図7は、実験結果を示したグラフである。縦軸は挿入損失を示し、横軸は周波数を示している。
【0095】
図7によれば、第2のサンプルでは、高周波信号の通過帯域において、第1のサンプルよりも挿入損失が大きくなっていることが分かる。これは、第2のサンプルでは、積層ずれが発生して、コンデンサCs1,Cs3の容量値が小さくなっているためであると考えられる。よって、電子部品10aによれば、コンデンサCs1,Cs3の容量値が変動しにくくなることがわかる。
【0096】
また、電子部品10aでは、コンデンサCs1〜Cs3の容量値の変動を抑制できる。より詳細には、コンデンサCs1〜Cs3はそれぞれ、複数の内部導体18,38と複数のグランド導体39とにより形成された複数のコンデンサが並列接続されることにより構成されている。そのため、コンデンサCs1〜Cs3のそれぞれを構成する複数のコンデンサの容量値は比較的に小さい。そのため、複数のコンデンサのうちのいずれか1つのコンデンサの容量値が積層ずれ等によって変動したとしても、コンデンサCs1〜Cs3の容量値の変動量は比較的に小さくてすむ。よって、電子部品10aでは、コンデンサCs1〜Cs3の容量値の変動を抑制できる。
【0097】
(変形例)
以下に、変形例に係る内部導体18'l,18'm,38'f,38'h及びグランド導体39'bについて図面を参照しながら説明する。図8は、絶縁体層16h〜16jを積層した図である。
【0098】
図8に示すように、切り欠きA1,A2のx軸方向の深さD1,D2はそれぞれ、内部導体18'l,18'm,38'f,38'hにおける切り欠きA1,A2と重なっている部分のx軸方向の幅D3,D4よりも大きい。ただし、内部導体18'l,18'm,38'f,38'hにおける切り欠きA1,A2と重なっている部分のx軸方向の幅D3,D4は、内部導体18'l,18'm,38'f,38'hのそれ以外の部分のx軸方向の幅D5,D6よりも小さい。これにより、切り欠きA1,A2のx軸方向の深さD1,D2を小さくできる。
【0099】
(第3の実施形態)
(電子部品の構成)
以下に、第3の実施形態に係る電子部品10bの構成について、図面を参照しながら説明する。図9は、第3の実施形態に係る電子部品10bの分解斜視図である。図10は、第3の実施形態に係る電子部品10bの等価回路図である。なお、電子部品10bの外観斜視図は、図1を援用する。また、電子部品10bの構成の内、電子部品10と同じ構成については、同じ参照符号を付した。
【0100】
電子部品10bと電子部品10の相違点は、ビアホール導体b14,b30の有無である。より詳細には、図9に示すように、電子部品10bでは、ランド電極14aと内部電極18lとの間にビアホール導体が設けられていない。よって、ランド電極14aと内部電極18lとは、互いに絶縁された状態で絶縁体層16iを介して互いに対向している。これにより、ランド電極14aと内部電極18lとの間には、コンデンサCx1が形成されている。また、ランド電極14cと内部電極18mとの間にもビアホール導体が設けられていない。よって、ランド電極14cと内部電極18mとは、互いに絶縁された状態で絶縁体層16iを介して互いに対向している。これにより、ランド電極14cと内部電極18mとの間には、コンデンサCx2が形成されている。
【0101】
以上のように構成された電子部品10bは、例えば、バンドパスフィルタとして用いられる。ただし、電子部品10bの動作は、電子部品10の動作と同じであるので、説明は省略する。
【0102】
(効果)
前記電子部品10bでは、電子部品10と同様に、コンデンサCs1,Cs3において所望の容量値を得ることができる。
【0103】
また、電子部品10bによれば、ランド電極14a,14cの印刷時にランド電極14a,14cがわずかにずれたとしてもコンデンサCx1,Cx2の容量値が変動しにくくなる。より詳細には、内部導体18l,18mはそれぞれ、積層体12内においてランド電極14a,14cと絶縁体層16iを介して対向しており、ランド電極14a,14cよりも大きな面積を有し、かつ、z軸方向の正方向側(積層方向)から見たときに、ランド電極14a,14cを包含している。このため、コンデンサCx1,Cx2を構成する内部導体18l,18m又はランド電極14a,14cがわずかにずれても、内部導体18l,18mとランド電極14a,14cとが対向している部分の面積は変化しない。その結果、電子部品10bでは、ランド電極14a,14cの印刷時にランド電極14a,14cがわずかにずれたとしてもコンデンサCx1,Cx2の容量値が変動しにくくなる。
【0104】
さらに、電子部品10bによれば、ランド電極14a,14cが印刷される位置がわずかにずれても、z軸方向から平面視したときに、ランド電極14a,14cが内部導体18l,18m内に包含された状態が維持される。そのため、電子部品10では、ランド電極14a,14cが内部導体18l,18mからはみ出して、グランド電極19と対向して容量を形成することが抑制される。従って、コンデンサCx1,Cx2が所望の容量値からずれることが抑制されるとともに、不要な容量により電子部品10bの特性が変化することを防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
以上のように、本発明は、電子部品に有用であり、特に、所望の容量値を有するコンデンサを得ることができる点において優れている。
【符号の説明】
【0106】
10,10a,10b 電子部品
12 積層体
14(14a〜14c)ランド電極
16(16a〜16j) 絶縁体層
18(18a〜18m),38(38a〜38h)内部導体
19,39(39a,39b) グランド導体
b(b1〜b41,b51〜b97)ビアホール導体
Ls1〜Ls3 コイル
Cs1〜Cs3,Cm1,Cm2,Cp1,Cx1,Cx2 コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁体層が積層されてなる積層体と、
前記積層体の底面に設けられているランド電極と、
前記積層体内において前記ランド電極と前記絶縁体層を介して対向している第1のコンデンサ導体であって、該ランド電極の面積よりも大きな面積を有し、かつ、積層方向から平面視したときに、該ランド電極を包含している第1のコンデンサ導体と、
前記第1のコンデンサ導体よりも積層方向の上側に設けられ、かつ、該第1のコンデンサ導体と対向している第2のコンデンサ導体と、
を備えていること、
を特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記ランド電極と前記第1のコンデンサ導体との間には、導体層が設けられていないこと、
を特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記第2のコンデンサ導体は、グランド導体であること、
を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の電子部品。
【請求項4】
前記第1のコンデンサ導体及び前記第2のコンデンサ導体は、コンデンサを形成しており、
前記コンデンサは、前記積層体に内蔵されているLCフィルタの一部を構成していること、
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電子部品。
【請求項5】
前記ランド電極と前記第1のコンデンサ導体とを接続する第2のビアホール導体を、
更に備えていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−238872(P2012−238872A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−161617(P2012−161617)
【出願日】平成24年7月20日(2012.7.20)
【分割の表示】特願2012−524945(P2012−524945)の分割
【原出願日】平成24年1月16日(2012.1.16)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】