説明

電子部品

【課題】プリント基板へのカバー装着時に、半田を使用せずに既製のカバーを用いて、プリント基板に形成した所定の位置決め穴に嵌着し、カバーがプリント基板から外れるのを防止する。
【解決手段】プリント基板1に位置決め穴3,4,5を形成し、カバー2に位置決め穴3,4,5に嵌合できるカバー爪6,7,8を形成し、位置決め穴3,4はプリント基板1の第1基板端面1aの近くに形成し、位置決め穴5をプリント基板1の第2基板端面1bの近くに形成し、かつ2個の位置決め穴3,4のうちの1個の位置決め穴4を位置決め穴3より第1基板端面1aに対して所定寸法平行にずらして形成する。さらに、プリント基板1の第1基板端面1aに形成した位置決め穴3,4に対応する2個のカバー爪6,7を嵌合して、プリント基板1の第2基板端面1b近くに形成した位置決め穴5にカバー2の第2端面2bに形成したカバー爪8をカバー2を捻りながら嵌合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品、とくに、回路素子等を搭載したプリント基板へのカバーの取り付けを、半田付けしない状態でもでき、また、鉛フリー半田を使用して容易に行うことができるようにした電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品、例えば、表面実装用水晶発振器は、図9に示すように、水晶振動子13と回路素子14とをベース基板10の主面上に搭載し、金属カバー9をベース基板10の上から被せて構成されている。
【0003】
ここで、金属カバー9をベース基板10へ取り付けるため、金属カバー9の側面に突出部11を設け、さらに、突出部11から膨出部(爪)12を下方に延出する。そして、ベース基板10の外周表面に突出部11を当接させ、ベース基板10の側面に形成した切欠部18に突出部11から下方に延出した膨出部12を嵌入して、図10に示すように、ベース基板10の側面に弾性的に金属カバー9を保持した後、半田により金属カバー9とベース基板10とを固定する(特許文献1)。
【0004】
ここで、金属カバー9をベース基板10に係合・固着する爪の従来例としては、図11(a)に示すように、カバー9に形成した嵌合爪12aを外側に拡開するよう略L字形に折曲形成し、ベース基板10に形成した嵌合溝18aに嵌合して係止するもの、また、図11(b)に示すように、カバー9に形成した嵌合爪12bの中央部分に弾性を有する略L字形の曲げ部Pを形成し、ベース基板10に形成した嵌合孔18bに嵌合爪12bを嵌入して、ベース基板10にカバー9を係止するもの、さらに、図11(c)に示すように、カバー9に形成した嵌合爪12cをその中央部に隙間gを有する二股形状に構成して、外側に拡開する方向に弾性をもたせて、ベース基板10にカバー9を係止する、ものがあった(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−165177号公報
【特許文献2】実開平6−79185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この種の電子部品、例えば、水晶発振器では、カバーに設けた嵌合爪をベース基板に設けた嵌合孔に嵌入した後、カバーの周辺を半田付けして実装基板に固定していた。そのため、完全な鉛フリー化が達成できず、また、客先での実装基板への実装時のリフローによりカバーを固定している半田が再溶融してしまい、カバーがベース基板から脱落するおそれがあった。
【0007】
また、完全な、カバーとプリント(ベース)基板との係合・固定を行うためには、カバーに設けた嵌合爪の形状等をその都度、係合・固定するプリント基板に合せて設計変更する必要が生じ、既製のカバーを多種のプリント基板に共通に用いることが極めて困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するため、本発明の電子部品では、客先での電子部品の実装基板への実装の際のリフロー(半田付け)時に、カバーがプリント基板から外れないようにするために、鉛入り高温半田を使用せず、かつ、既製のカバーを設計変更することなく共通に用いて、カバーをプリント基板に適宜形成した位置決め穴に係合・固着するようにした電子部品を提供することを目的とする。
【0009】
そのため、本発明の電子部品では、プリント基板の所定位置に位置決め穴を形成し、またカバーに位置決め穴に合致し嵌合できるカバー爪を前記カバーに形成して前記プリント基板の主面に被せて構成する電子部品において、少なくとも2個の前記位置決め穴を前記プリント基板の第1基板端面の近くに形成し、また、少なくとも1個の前記位置決め穴を前記プリント基板の第2基板端面の近くに形成し、かつ、前記第1基板端面近くに形成した少なくとも2個の前記位置決め穴のうちの1個の前記位置決め穴を前記第1基板端面に対して所定寸法縦方向中心線方向に平行にずらし(偏位)て形成し、さらに、前記カバー爪のうち少なくとも2個のカバー爪を前記カバーの第1端面と平行に形成するとともに、少なくとも1個の前記カバー爪を前記カバーの前記第2基板端面の中心位置に形成して、前記プリント基板の第1基板端面に形成した前記位置決め穴にそれぞれ対応する少なくとも2個の前記カバー爪を嵌合してから、前記プリント基板の前記第2基板端面近くに形成した前記位置決め穴に前記カバーの前記第2端面に形成した前記カバー爪を前記カバーを捻りながら嵌合して前記カバーの側面に返し部を形成して前記プリント基板に前記カバーを固着する。
【0010】
また、本発明の電子部品では、前記プリント基板の前記第1基板端面に形成した前記位置決め穴の形状が真円形状であり、また、前記プリント基板の第2基板端面に形成した位置決め穴の形状が長円形状である。
【0011】
さらに、本発明の電子部品では、前記プリント基板の前記第1基板端面の近くに形成した前記少なくとも2個の位置決め穴に対応して位置する前記カバーの側面に、前記カバーを前記プリント基板の前記第1基板端面の近くに形成した前記位置決め穴に嵌合して回転し、前記プリント基板に嵌合時の捻りにより、返し部を前記カバーの側面に形成し、前記少なくとも2個の位置決め穴から嵌合した前記カバー爪が外れるのを防止する。
【0012】
またさらに、本発明の電子部品では、前記少なくとも1個の位置決め穴を前記プリント基板の底面に向かって逆テーパ状に形成し、また、前記少なくとも1個のカバー爪が前記プリント基板の主面に対して鋭角となるように形成されている。
【0013】
また、本発明の電子部品では、前記少なくとも2個のカバー爪の前記プリント基板と接する根元部にくびれ部が形成されている。
【発明の効果】
【0014】
プリント基板へ所定の位置決め穴を形成するだけで既製のカバーを共通して用いることができ、かつ半田付けしない状態でもカバーをプリント基板に固定することができ客先での実装基板への電子部品実装の際のリフロー時に、半田が再溶融してもカバーがプリント基板から脱落することがなくなるとともに、完全な鉛フリー半田付けが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の電子部品に用いるカバーの図を示し、(a)は、カバー表面側から見た平面図、(b)は、その側面図を示す。
【図2】図1に示したカバーを係合して被せるプリント基板の平面図を示す。
【図3】本発明の電子部品に用いカバーを、回路素子等を搭載したプリント基板に固定する手順を示す電子部品の平面図であって、カバーの表面方向から見た図を示す。なお、ここで、プリント基板に搭載した回路素子等の図示は省略してある。
【図4】図3に示したカバーをプリント基板に固定して構成した電子部品を図3に示すIVIV矢視方向から見た横断面図を示す。
【図5】図3に示した電子部品を図3に示す矢視方向から見た横断面図を示す。
【図6】図3に示した電子部品を図3に示すVIVI矢視方向から見た縦断面図を示す。
【図7】図4及び図5に示したA矢視部の部分拡大図を示し、(a)は、カバー爪の付根が直角に切り込まれた実施例を、また、(b)は、カバー爪の付根にくびれを形成した実施例を、それぞれ示す。
【図8】図3及び図に示したB矢視部の部分拡大図であって、位置決め穴にカバー爪をカバーを捻って嵌合した際にカバーの側面に形成されるカバー固定用の返し部の平面図(a)及び断面図(b)を示す。
【図9】従来の電子部品、例えば、表面実装用水晶発振器を示し、その主要部品を金属カバー、実装振動子及びベース基板とに分解して示す展開図である。
【図10】図9に示した金属カバー、実装振動子及びベース基板を組立てて表面実装用水晶発振器を構成した組立図を示す。
【図11】図9及び図10に示した水晶発振器において、ベース基板に金属カバーを固定する従来例を示し、(a)は、金属カバーに設けた嵌合爪をベース基板の嵌合孔に嵌合する例を、(b)は、嵌合爪の中央部分に弾性を有する略L字状の曲げ部を形成した例を、(c)は、嵌合爪を二股形状に構成して、外側に拡開する方向に弾性を持たせて固定する例の部分拡大図を、それぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の電子部品の実施例について添付した図面に基いて説明する。
【実施例】
【0017】
図1に示すように、プリント基板上にIC回路、水晶振動子等の部品を搭載してから金属カバーを被せた発振器等の本発明の電子部品では、既製の金属カバーと同様に、コバール等の金属材料から、後述するプリント基板より幾分縦横寸法が小さい断面形状が字状のカバー2を平面視矩形状に構成し、その長辺方向の第1端面2a及び第2端面2bにカバー面から直立したカバー爪6,7,8をプレス加工等により金属カバー2の製作時に同時に形成する。
【0018】
ここで、図1に示すように、カバー2の第1端面2aには、カバー2の縦方向中心線CVからそれぞれ間隔(距離)をおいて少なくとも2個のカバー爪6,7を、また対向するカバー2の第2端面2bには、当該縦方向中心線CV上に少なくとも1個のカバー爪8を直立して形成する。特に、第1端面2aに設けたカバー爪6,7の幅方向位置及び寸法は、後述するプリント基板1の第1端面1a近くに形成した平面視で円形の位置決め穴3,4に嵌合できるように同間隔とし、これらの穴3,4の半径方向寸法D1より幾分小さくする(L1<D1)。また、第2端面2bに設けたカバー爪8は、同じくプリント基板1の第2端面1b近くに形成した、例えば、平面視で長円形の位置決め穴5に嵌合できるように、この穴5の幅方向寸法D2より幾分小さくなるよう(L2<D2)、カバー2のプレス加工時に金属板を打ち抜いたとき、それぞれ内側に曲げてカバー2面に直立して形成する。
【0019】
また、カバー2を被せる回路素子等を搭載したプリント基板1は、ガラスエポキシ樹脂等からなり、図2に示すように、前述した金属カバー2の縦方向寸法より、その縦方向寸法が、カバー爪6,7,8が嵌合する位置決め穴3,4,5をプリント基板1に形成できるよう幾分大きく構成されている。
【0020】
とくに、本発明の実施例では、図2に示すように、プリント基板1の第1基板端面1aの近くに、プリント基板1の縦方向中心線CVからそれぞれの幅方向にの等間隔を有し、かつ一方の位置決め穴3の水平方向中心線CHから縦方向中心線上に寸法dだけ平行方向に下方に偏位して(ずらして)他方の位置決め穴4を形成する。またプリント基板1の第2基板端面1b近くには、例えば、縦方向中心線CV上に少なくとも平面視で長円形をし幅方向寸法D2の1個の位置決め穴5を形成する。
【0021】
本発明の電子部品の実施例に用いるカバー2では、図2に示すように、回路基板1の縦方向両端面1a,1bの近くにカバー2の位置決め穴3,4,5を形成し、これらの位置決め穴3,4,5に形成位置が合致する嵌合可能な固定用のカバー爪6,7,8をカバー2にそれぞれ形成する。
【0022】
特に、本発明の電子部品の実施例では、図2に示すように、プリント基板1の第1基板端面1aの近くに形成した少なくとも2個の位置決め穴3,4のうちの片方の位置決め穴4を他方の位置決め穴3の方向中心線CVの方向に平行位置でdだけ偏位(ずらす)して形成する。また第1基板端面1aと対向する第2基板端面1bの近くに少なくとも1個の位置決め穴5を形成し、他方、カバー2の第1端面2aに形成した少なくとも2個のカバー爪3,4を前記位置決め穴3,4に、またカバー2の第2端面2bに形成した少なくとも1個のカバー爪をプリント基板1の回路部品等の搭載面の上から被せて電子部品を構成する。
【0023】
ここで、図2に示すように、プリント基板1の第1基板端面1a側に形成した少なくとも2個の位置決め穴3,4は、互いに第1基板端面1aに平行方向に、前述したように、所定寸法dだけ縦方向中心線CVの方向に偏位(ずれる)しているので、プリント基板1にカバー2を被せる際には、図3に仮想線で示すように、まず、カバー2の固定用のカバー爪6,7を一方の位置決め穴3,4に嵌入し(図4参照)カバー2を、図3に示す矢印方向に捻りながらカバー爪8を他方の位置決め穴5に嵌入(図5参照)し、嵌入後、僅かにさらにカバー2を回転させて実線で示すようにカバー2をプリント基板1に固定する(図3参照)。
【0024】
このカバー爪8の位置決め穴5への挿入の際、図3に示すカバー2のB矢視部分カバーの側面2cが弾性変形し、いわゆる返し部eが、カバー2の側面2dに突出して形成され(図8(a),(b)参照)、この返し部eがバネ効果を有するようになる。そのため、カバー3がプリント基板1に強固に固着され、半田付けをしなくとも、カバー2がプリント基板1から離脱するのが防止されるようになる。ここで、カバー2をプリント基板1に固着した後、さらに、通常の鉛フリー半田で、カバー2をプリント基板1に半田付けして固定してもよい。
【0025】
なお、図7(a)に示すように、通常は、カバー爪6,7,8は、カバー2の本体からプリント基板1との接触面から直角に切り出して折り曲げられて形成されるが、図7(b)に示すように、当該切り出し箇所にくびれ溝6aを形成してカバー爪6に弾力性を持たせて、その位置決め穴3への嵌入を容易にしてもよい。
【0026】
また、図8(a),(b)に拡大して示すように、カバー2の側面2dの一部に、カバー爪8を位置決め穴5への嵌入後、さらに僅かにカバー2を回転させることにより、突出した返し部eがカバー2に形成され、この返し部eのもつ弾性により、カバー2とプリント基板1とが離脱するのを阻止する。
【0027】
また、プリント基板1に形成する位置決め穴3,4,5のうち、図4に示す第1基板端面1a側の位置決め穴3,4をプリント基板の底面に向って逆テーパ状にし、また、これらの位置決め穴3,4に嵌入する爪6,7の側面をプリント基板1の主面に対して逆テーパ状に沿った鋭角になるように形成して爪6,7の抜け止めができるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 プリント基板
2 カバー
2d カバー側面
3 位置決め穴(真円形)
4 位置決め穴(真円形)
5 位置決め穴(真円形)
6 カバー爪
7 カバー爪
8 カバー爪
9 金属カバー
10 ベース基板
11 突出部
12 膨出部
13 水晶振動子
14 回路素子
18 切欠部
19 実装電極
d 偏位
カバー位置決め穴のVからの間隔
e 返し部
V 縦方向中心線
H 水平方向中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板の所定位置に位置決め穴を形成し、またカバーに位置決め穴に合致し嵌合できるカバー爪を前記カバーに形成して前記プリント基板の主面に被せて構成される電子部品において、少なくとも2個の前記位置決め穴を前記プリント基板の第1基板端面の近くに形成し、また、少なくとも1個の前記位置決め穴を前記プリント基板の第2基板端面の近くに形成し、かつ、前記第1基板端面近くに形成した少なくとも2個の前記位置決め穴のうちの1個の前記位置決め穴を前記第1基板端面に対して所定寸法縦方向中心線方向に平行にずらして形成し、さらに、前記カバー爪のうち少なくとも2個のカバー爪を前記カバーの第1端面と平行に形成するとともに、少なくとも1個の前記カバー爪を前記カバーの前記第2基板端面の中心位置に形成して、前記プリント基板の第1基板端面に形成した前記位置決め穴に、それぞれ対応する少なくとも2個の前記カバー爪を嵌合してから、前記プリント基板の前記第2基板端面近くに形成した前記位置決め穴に前記カバーの前記第2端面に形成した前記カバー爪を前記カバーを捻りながら嵌合して前記プリント基板に前記カバーを固着することを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記プリント基板の前記第1基板端面に形成した前記位置決め穴の形状が、平面視で真円形状であり、また、前記プリント基板の第2基板端面に形成した位置決め穴の形状、平面視で長円形状である請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記プリント基板の前記第1基板端面の近くに形成した前記少なくとも2個の位置決め穴に対応して位置する前記カバーの側面に、前記カバーを前記プリント基板の前記第1基板端面の近くに形成した前記位置決め穴に嵌合して回転し、前記プリント基板に嵌合時の捻りにより、返し部を前記カバーの側面に形成し、前記少なくとも2個の位置決め穴から嵌合した前記カバー爪が外れるのを防止する請求項1に記載の電子部品。
【請求項4】
前記少なくとも個の位置決め穴を前記プリント基板の底面に向かって逆テーパ状に形成し、また、前記少なくとも個のカバー爪の側面が前記プリント基板の主面に対して鋭角となるように形成されている請求項1に記載の電子部品。
【請求項5】
前記少なくとも2個のカバー爪の前記プリント基板と接する根元部にくびれ部が形成されている請求項1に記載の電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−33920(P2013−33920A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−95431(P2012−95431)
【出願日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】