説明

電子部品

【課題】良好なクリック感触が得られ、組み立てが容易で耐久性も向上し小型化も図れる電子部品を提供する。
【解決手段】ケース150の裏面側に回転体90を配置し、回転体90と操作つまみ210とを一体に回転するように連結する。回転体90の裏面側にクリック弾接体120と摺動子板110を設置し、回転体90の裏面の押釦180の押釦部181の真下に一部が対向する位置から突出する固定突起101によってクリック弾接体120と摺動子板110を回転体90に取り付ける。クリック弾接体120は、回転体90に取り付ける弾接体基部121と、弾接体基部121の外周側に配置されるアーム部127とを具備する。アーム部127中に設けた弾接部133を、回転体90の外周の外側を越えてケース150に設けたクリック係合部161に弾接させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式電子部品の機能と押釦式電子部品の機能を併せ持つ電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転式電子部品の中には、操作つまみを回転することでクリック感触を生じながら電気的出力を変化させ、一方操作つまみの中央に設置した押釦を押圧することで押圧スイッチを操作する構造の電子部品がある。
【0003】
例えば特許文献1に示す電子部品は、ケース50の表面側に回転つまみ10を設置し、ケース50の裏面側にクリック板70と摺動子110を重ね合わせて設置し、さらに回転つまみ10の中央に設けた開口部13内に押釦つまみ30を設置し、前記回転つまみ10を回転することでクリック板70と摺動子110を回転してクリック感触を生じさせると同時に摺動子110が摺接パターン179上を摺動してその電気的出力を変化し、一方押釦つまみ30を押圧することで中央スイッチ183をオンする構成となっている。そして前記クリック板70のクリック弾接部79とこのクリック弾接部79が弾接してクリック感触を生じさせるクリック係合部165を開口部13の押釦つまみ30の下側の空き空間Cに設置している。このように構成すれば電子部品の外径の小型化が図れる。
【0004】
しかしながら上記電子部品の場合、中央の狭い空間Cにクリック弾接部79等を設置しなければならないので、クリック弾接部79及びこれを支持する弾接アーム部75が小さくなり、そのバネ性が阻害されて良好なクリック感触が得られなくなるばかりか、その耐久性に悪影響を及ぼす恐れがあった。この問題は特に電子部品を小型化すればするほど大きくなる。
【0005】
上記問題を解決するには、例えば特許文献2に示すように、操作つまみ210と一体に回転する回転体90を設置し、この回転体90の上下面にそれぞれクリックバネ120と摺動子100とを設置し、クリックバネ120の基部121の外周側に設けたアーム部123の弾接部131をケース150に設けたクリック係合部159に弾接する構成とすればよい。このように構成すれば弾接部131及びアーム部123の大きさ(長さ寸法や幅寸法や厚み寸法)を大きくでき、そのバネ性が良好になり、またその耐久性が向上する。
【0006】
しかしながらこの電子部品の場合、クリックバネ120の操作つまみ210への取り付けと、摺動子100の回転体90への取り付けとをそれぞれ別工程で行わなければならず、組立工程が煩雑であった。また操作つまみ210の中央には押釦つまみ180を上下動自在に収納する開口部212を設けているので、操作つまみ210とクリックバネ120間を連結するためのクリックバネ固定部219は開口部212の外側位置に設置しなければならず、その分クリックバネ120の基部121の外径寸法が大きくなり、アーム部123の外径寸法も大きくなり、回転式電子部品の小型化が阻害される恐れがあった。またクリックバネ120はケース150と回転体90の間に設置されるので、弾接部131の上下動できるスペースはケース150と回転体90の間の狭い空間となり、このため弾接部131の上下動を大きく取ることができず、良好なクリック感触が阻害される恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−134574号公報
【特許文献2】特開2008−283009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、良好なクリック感触が得られ、組み立てが容易で、耐久性も向上し、小型化も図れる電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願請求項1に記載の発明は、ケースと、前記ケースの表面側に回転自在に設置される操作つまみと、前記ケースの前記操作つまみを設置した反対面側に設置されて前記操作つまみと一体に回転してクリック感触を生じさせるクリック弾接体と、前記ケースの前記操作つまみを設置した反対面側に設置され前記操作つまみと一体に回転して電気的出力を変化させる摺動子板と、前記操作つまみの中央に設けた開口内に上下動自在に露出する押釦部を有しこの押釦部を下降させることでその下方に設置した押圧スイッチを押圧操作する押釦と、を具備する電子部品において、前記ケースの前記操作つまみを設置した反対面側に回転体を配置し、この回転体と前記操作つまみとを一体に回転するように連結し、さらにこの回転体の操作つまみ側の中央に前記押釦の押釦部を配置し、前記回転体の前記操作つまみを設置した反対面側に前記クリック弾接体と摺動子板を設置し、さらに回転体の前記クリック弾接体と摺動子板を設置した面の前記押釦の押釦部の真下に少なくとも一部が対向する位置から突出する固定突起によってこれらクリック弾接体と摺動子板を回転体に取り付けたことを特徴とする電子部品にある。
【0010】
本願請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子部品であって、前記クリック弾接体は、前記回転体に取り付ける弾接体基部と、弾接体基部の外周側に配置されるアーム部とを具備して構成されており、アーム部中に設けた弾接部を、回転体の外周の外側を越えて前記ケースに設けたクリック係合部に弾接させることを特徴とする電子部品にある。
【0011】
本願請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の電子部品であって、前記クリック弾接体は、前記弾接体基部の外周からアーム基部を突出して設け、このアーム基部に前記アーム部を連結して構成されており、さらに前記アーム基部には、前記操作つまみから突出する回転体固定突起を係止する係止部を設けたことを特徴とする電子部品にある。
【0012】
本願請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の電子部品であって、前記摺動子板を摺接させる摺接パターンを設けた回路基板と、前記ケースを載置する取付台と、前記取付台を揺動自在に支持する支持部材と、前記取付台の揺動によって押圧される押圧スイッチと、をさらに具備することを特徴とする電子部品にある。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、回転体の操作つまみを取り付けた反対面側にクリック弾接体と摺動子板の両者を取り付けたので、これらクリック弾接体と摺動子板の両者を回転体に同一工程にて取り付けることができ、これによって組立工程の簡素化が図れる。
またクリック弾接体と摺動子板を取り付ける回転体の固定突起の位置を、押釦の押釦部の真下にかかる位置としたので、押釦部の外径寸法に影響されることなく、回転体の固定突起の位置を回転体の回転中心に近い位置に設置でき、その分クリック弾接体と摺動子板の外径寸法を小さくでき、回転式電子部品の小型化が図れる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、クリック弾接体は、回転体に取り付ける弾接体基部の外周側にアーム部を配置する構成なので、回転体に取り付ける弾接体基部の部分を小さく形成しても、その外側のアーム部の長さ寸法や幅寸法や厚み寸法を大きくすることができ、そのバネ性が損なわれず良好なクリック感触が得られるばかりか、その耐久性が向上する。
またこの発明によれば、クリック弾接体の弾接体基部を回転体の操作つまみを取り付けた反対面側に取り付けた上で、クリック弾接体のアーム部中に設けた弾接部を回転体の外周の外側を越えてケースに設けたクリック係合部に弾接させたので、弾接部は回転体の厚み寸法分を含む十分な上下動が行える。このため弾接部の上下動を大きく取ることができ、この点からも良好なクリック感触が得られる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、弾接体基部の外周からアーム基部を突出して設け、このアーム基部に、アーム部連結機能と、操作つまみの回転体固定突起係止機能とを持たせたので、アーム部の根元部分を確実に固定でき、弾接部の上下動に伴うアーム部の湾曲動作が安定し、より良好なクリック感触を得ることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、回転式電子部品と押圧式電子部品の機能を有する電子部品に、さらに揺動式電子部品の機能を一体化した多機能型の電子部品を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】電子部品1の概略側断面図である。
【図2】電子部品1の斜視図である。
【図3】電子部品1の上側の部品の分解斜視図である。
【図4】電子部品1の下側の部品の分解斜視図である。
【図5】回転体90とケース150と押釦180と操作つまみ210とを斜め下方から見た分解斜視図である。
【図6】回転体90の平面図である。
【図7】回転体90にクリック弾接体120と摺動子板110を取り付けた状態を斜め上方から見た斜視図である。
【図8】回転体90にクリック弾接体120と摺動子板110を取り付けた状態を斜め下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明を用いて構成した電子部品(以下「クリック機能付き多機能型電子部品」という)1の概略側断面図(図2のA−A概略断面図)、図2はクリック機能付き多機能型電子部品1の斜視図、図3はクリック機能付き多機能型電子部品1の上側の部品の分解斜視図、図4はクリック機能付き多機能型電子部品1の下側の部品の分解斜視図である。また図5は回転体90とケース150と押釦180と操作つまみ210とを斜め下方から見た分解斜視図である。なお以下の説明において、「上」とは回転体90から操作つまみ210側を見る方向をいい、「下」とはその反対方向をいうものとする。
【0019】
これらの図に示すようにクリック機能付き多機能型電子部品1は、保持板11と保持カバー20からなる支持部材10の前記保持板11上に、フレキシブル回路基板30の第2回路基板(以下「第2回路基板部」という)31と、取付台60と、フレキシブル回路基板30の第1回路基板(以下「第1回路基板部」という)41と、保持カバー20と、電気的機能部である摺動子板110とクリック弾接体120を取り付けた回転体90と、ケース150と、押釦180と、操作つまみ210とを設置して構成されている。このクリック機能付き多機能型電子部品1は、操作つまみ210を回転することで操作するクリック機能付き回転式電子部品としての機能の他に、押釦180を押圧することで操作する押圧式電子部品としての機能と、操作つまみ180を多方向に揺動して揺動した側のスイッチをオンする揺動式電子部品の機能を併せ持つものである。
【0020】
保持板11は硬質板で構成され、この例では金属板(ステンレス板)を用いているが、合成樹脂板等の他の材質を用いても良い。保持板11は少なくとも保持カバー20を載置する寸法形状に形成され、下記する保持カバー20の各取付部25(4つ)に対向する位置に貫通孔からなる挿入取付部13を設けている。
【0021】
保持カバー20は合成樹脂を略矩形状に成形し、その中央に略円形の開口21を設けて構成されている。保持カバー20の下面の4つの角部近傍には、開口21につながる4つの凹状の係合部23が設けられている。係合部23は下記する取付台60の係合片67を上下動自在に挿入・係合する寸法形状に形成されている。保持カバー20の下面の前記保持板11の各挿入取付部13に対向する位置(4か所、図4では3か所のみ示す)には、小突起状の取付部25が設けられている。
【0022】
フレキシブル回路基板30は可撓性を有する合成樹脂フイルム上に所望の回路パターンを設けて構成されており、この例では熱可塑性のPET(ポリエチレンテレフタレート)フイルムを用いているが、他の各種熱可塑性、熱硬化性、光硬化性の合成樹脂フイルムを用いて構成しても良い。フレキシブル回路基板30は、摺接パターン45(図1参照)が形成された第1回路基板部41と中央の押圧スイッチ(以下「中央スイッチ」という)33とその周囲を囲む4つの押圧スイッチ35とが形成された第2回路基板部31とを、帯状の連結部51によって連結して構成されている。なお図4では第1回路基板部41が上下逆向きとなっているため、摺接パターン45は見えない。
【0023】
第2回路基板部31は略矩形状の外形を有し、その上面の中央に中央スイッチ33を設置し、中央スイッチ33の周囲の複数の位置(この例では同一円周上の等間隔(90°間隔)の4か所の位置)に押圧スイッチ35を設置して構成されている。両スイッチ33,35は何れも、図示しない一対のスイッチ接点上に弾性金属板をドーム形状に形成してなる反転板(可動接点板)を取り付けて構成されており、反転板を押圧してこれを反転することでスイッチがオンする構造になっている。第2回路基板部31の外周には帯状の引出部37が連結されている。引出部37には各スイッチ33,35と摺接パターン45とからそれぞれ引き出される回路パターンが形成されている。
【0024】
取付台60は合成樹脂を略円板状に成形して構成されており、その中央には押釦180の押圧部183を挿通して軸支する開口部61が設けられ、開口部61の周囲には上方向に向かって突出する筒状の突起からなる軸部63が設けられている。一方取付台60の外周近傍の複数の位置(この例では4か所の位置)には、貫通孔からなる取付部65が設けられ、また取付台60の外周の所定位置(この例では各取付部65の外側の4か所の位置であって、前記保持カバー20の各係合部23に対向する位置)には、半径方向外方に向かって突出する係合片67が設けられている。取付台60の下面の各取付部65の間の所定位置(前記第2回路基板部31の各押圧スイッチ35に対向する位置、各取付部65間の中間位置)には、下方向に向かって突出する柱状の押圧部69が設けられている。
【0025】
第1回路基板部41は略矩形状の外形を有し、中央に取付台60の軸部63を挿通する円形の開口部43を設け、またその下面の開口部43の周囲に摺接パターン45(図1参照)を設けて構成されている。摺接パターン45はスイッチパターンや抵抗体パターン等である。第1回路基板部41の前記取付台60の各取付部65に対向する位置には、貫通孔からなる挿通部47が設けられている。
【0026】
摺動子板110は弾性金属板(例えばリン青銅板)製であり、略円形の平板リング状に形成され、中央に開口111を設けると共に、等間隔(120°間隔)の3か所の位置に小孔からなる取付固定部113を設け、また各取付固定部113の側部から3本ずつの摺動冊子115を摺動子板110の開口111の周囲を囲むように配置して構成されている。各組の摺動冊子115中の先端近傍部分には摺動接点117が設けられている。
【0027】
クリック弾接体120は1枚の弾性金属板(例えばステンレス板)製であり、リング形状に形成され中央に開口123を有する弾接体基部121と、弾接体基部121の外周の180°対向する位置から突出する略矩形状のアーム基部125と、これらアーム基部125の両側部にそれぞれ両端部が連結される半円弧状の一対のアーム部127,127とを具備して構成されている。弾接体基部121の外径寸法は、摺動子板110の外径寸法と略同一であり、摺動子板110の各取付固定部113に対向する位置(等間隔(120°間隔)の3か所の位置)に小孔からなる被取付部129を設けている。アーム基部125には下記する操作つまみ210の回転体固定突起217を挿入する複数(2つ)ずつの小孔からなる係止部131が設けられている。一方各アーム部127は両端の根元部分で折り曲げられて上方向に傾斜している。各アーム部127の中央には上方向に凸となるように略円弧状に湾曲する弾接部133が形成されている。
【0028】
回転体90は合成樹脂を略円板状に成形して構成されており、その中央には上下方向に筒状に延びる軸支部91が形成されている。軸支部91の中央の貫通する開口93は前記取付台60の軸部63を回動自在に挿入する寸法に形成されている。回転体90の上面の軸支部91の周囲からはリング状の突起95が突設され、これによって突起95の内側の凹部を押釦部収納部97としている。押釦部収納部97の内径寸法は下記する押釦180の押釦部181の外周を略ぴったり収納する寸法に形成されている。回転体90の下面の軸支部91の周囲の面は平面状の取付面99となっており、その形状は前記クリック弾接体120の弾接体基部121及びアーム基部125を合わせた形状と略一致している。そして取付面99の軸支部91を囲む位置であって、前記クリック弾接体120の各被取付部129に対向する位置には複数(3か所)の小突起からなる固定突起101が形成されている。また取付面99の外周近傍位置であって、前記クリック弾接体120の各係止部131に対向する位置には複数(2つ)ずつの小孔からなる取付挿入部103が形成されている。回転体90の下面の前記クリック弾接体120のアーム部127に対向する面は半径方向外方に向けて上方向に傾斜する傾斜面105となっており、傾斜面105の先端部分(クリック弾接体120の弾接部133に対向する部分)は直線状に切り欠かれることでその外側部分を弾接部露出部107としている。
【0029】
ここで図6は回転体90の平面図である。同図に点線で示すように、各固定突起101の一部(半分以上の部分)は、押釦部収納部97の真下に位置している。押釦部収納部97には上述のように略ぴったり押釦180の押釦部181(つば部181aを含む)が収納されるので、言い換えれば、固定突起101は回転体90の押釦180の押釦部181を設置するその真下に少なくとも一部が対向する位置から突出していることになる。
【0030】
ケース150は合成樹脂を成形して構成されており、略円形平板状の上面部151と、上面部151の外周から下方に筒状に突出してなる側壁部153と、側壁部153の下面から外方に向けてつば状に突出するつば部155とを具備している。上面部151の中央には下記する操作つまみ210の軸支部215を回動自在に挿入する上下に貫通する円形の開口部157が設けられている。またつば部155の下面の複数位置には前記取付台60の各取付部65に挿入される突起からなる取付台固定部159が設けられている。また上面部151の下面の開口部157の周囲には、前記クリック弾接体120の弾接部133を弾接させる多数の凹凸をリング状に形成してなるクリック係合部161が設けられている。
【0031】
押釦180は合成樹脂の成形品であり、略円板状の押釦部181と、押釦部181の下面中央から下方向に突出する柱状の押圧部183とを具備して構成されている。押釦部181の外周部分は薄板リング状のつば部181aとなっている。また押圧部183の外周面には上下方向(軸方向)に沿う突条からなる回り止め係合部185が設けられている。
【0032】
操作つまみ210は合成樹脂の成形品であり、略円板状の本体部211の外周から下方に向けて筒状に側壁部213を突出して構成されている。本体部211の中央には上下に貫通して前記押釦180の押釦部181(つば部181aを除く)を挿入する内径寸法(つば部181aの外径寸法よりも小さい内径寸法)の円形の開口212が設けられている。また本体部211の下面の開口212の周囲には下方向に突出する筒状の軸支部215が設けられている。軸支部215の外径寸法は前記ケース150の開口部157に略ぴったり挿入されて回動自在に軸支される寸法に形成され、軸支部215の内径寸法は前記回転体90の突起95をほぼぴったり収納する寸法に形成されている。軸支部215の下端辺の180°対向する位置からは2本ずつ下方向に向かって回転体固定突起217が突設されている。
【0033】
次に電子部品1の組立方法を説明する。まず予め回転体90の取付面99にクリック弾接体120と摺動子板110とを積層して配置する。即ち回転体90の取付面99にクリック弾接体120の弾接体基部121とアーム基部125とを当接し、さらに弾接体基部121の下面に摺動子板110を当接する。このとき回転体90に設けた各固定突起101を、クリック弾接体120の各被取付部129と摺動子板110の各取付固定部113に挿入し、各固定突起101の先端を熱によってかしめ、これによって回転体90の取付面99にクリック弾接体120と摺動子板110とを取り付ける。
【0034】
図7,図8は回転体90にクリック弾接体120と摺動子板110を取り付けた状態を示す図であり、図7は斜め上方から見た斜視図、図8は斜め下方から見た斜視図である。なお図8において、各固定突起101は熱かしめする前の、これらを潰していない状態を示している。これらの図に示すように回転体90にクリック弾接体120と摺動子板110を取り付けた際、回転体90の各取付挿入部103とクリック弾接体120の各係止部131は同一位置に位置し、両者で1つの貫通孔を形成している。またクリック弾接体120の両アーム部127の上面の一部(アーム部127の上面の内、内周に近い側の面)は回転体90の各傾斜面105に当接している。またクリック弾接体120の両弾接部133は回転体90の各弾接部露出部107内に位置し、これによって両弾接部133は回転体90の外周の外側を越えて回転体90の上面側に露出している。
【0035】
そして操作つまみ210の開口212にその下面側から押釦180の押釦部181を挿入し、押釦部181のつば部181aを除く中央部分の上面を開口212から操作つまみ210の上面側に露出させる。次に操作つまみ210の下面側にケース150を設置する。このときケース150の開口部157内に操作つまみ210の軸支部215が回動自在に挿入され、また操作つまみ210の側壁部213の内側にケース150の側壁部153が入り込む。
【0036】
次にケース150の下面側の側壁部153内に、前記クリック弾接体120と摺動子板110とを取り付けた回転体90を挿入する。このとき回転体90上面の突起95を操作つまみ210の軸支部215の内側に挿入し、同時に回転体90の押釦部収納部97内に押釦180の押釦部181(つば部181aを含む)を上下動自在に挿入し、また回転体90の開口93内に押釦180の押圧部183を挿入する。このとき同時に、操作つまみ210の各回転体固定突起217を回転体90の各取付挿入部103とクリック弾接体120の各係止部131に挿入し、各係止部131の下面側に突出した前記各回転体固定突起217の先端を熱かしめし、これによって操作つまみ210と回転体90とクリック弾接体120と摺動子板110とをケース150を挟んで一体化する。さらにこのときクリック弾接体120の各弾接部133はケース150下面のクリック係合部161に弾接し、そのアーム部127は少し下降して回転体90の傾斜面105から離れる。
【0037】
次に図4に示すフレキシブル回路基板30の第1回路基板部41をその下面を上に向けた状態で取付台60上に載置し、その際第1回路基板部41の開口部43に取付台60の軸部63を挿通し、これらを前記ケース150の下側に設置する。このとき取付台60の軸部63は回転体90の開口93に挿入され、回転体90を回動自在に軸支する。同時に取付台60の開口部61に押釦180の押圧部183が上下動自在で且つ押釦180が取付台60に対して回動しないように挿入され、押圧部183の下端は取付台60の下面に露出する。同時に摺動子板110の摺動接点117が第1回路基板部41の摺接パターン45に弾接する。さらにこのときケース150の各取付台固定部159が前記第1回路基板部41の各挿通部47と取付台60の各取付部65に挿入され、取付台60の下面から突出する各取付台固定部159の先端を熱かしめして固定する。
【0038】
次に連結部51を折り曲げることで第2回路基板部31を取付台60の下面側に設置し、さらに第2回路基板部31の下面側に保持板11を設置した上で、操作つまみ210の上部から被せるように保持カバー20を第2回路基板部31上に載置する。このとき保持カバー20の開口21内に前記ケース150や取付台60等が設置され、また保持カバー20の各係合部23内に取付台60の各係合片67が上下動自在に挿入され、さらに保持カバー20の各取付部25が保持板11の各挿入取付部13に挿入される。そして保持板11の下面から突出する各取付部25の先端を熱かしめすれば、クリック機能付き多機能型電子部品1の組み立てが完了する。なお上記組立手順はその一例であり、他の各種異なる組立手順を用いて組み立てても良いことはいうまでもない。
【0039】
以上のようにして構成されたクリック機能付き多機能型電子部品1は、図1に示すように、ケース150の上部に設置した操作つまみ210と、ケース150の下部に設置した回転体90,クリック弾接体120,摺動子板110とが、ケース150の上下でケース150に対して一体に回転自在に設置される。またクリック弾接体120の弾接部133はケース150のクリック係合部161に弾接した状態となっており、また摺動子板110の摺動接点117は第1回路基板部41の摺接パターン45に当接した状態となっている。また押釦180の押圧部183の下面は中央スイッチ33の反転板に当接し、つば部181aの上面は操作つまみ210の下面の開口212周囲の面に接近又は当接している。また取付台60の各押圧部69は各押圧スイッチ35の反転板に当接して水平状態を保っている。
【0040】
そして操作つまみ210を回転すれば、回転体90とクリック弾接体120と摺動子板110が操作つまみ210と一体に回転し、摺動子板110の摺動接点117が摺接パターン45上を摺動して摺接パターン45の電気的出力が変化する。同時にクリック弾接体120の弾接部133がケース150のクリック係合部161に弾接係合してクリック感触が得られる。即ち摺動子板110と摺接パターン45によって回転式電子部品の出力を取り出す検出手段が構成されており、一方クリック弾接体120とクリック係合部161によって回転式電子部品のクリック機構が構成されている。
【0041】
一方押釦180の押釦部181を押圧すれば、その押圧部183が中央スイッチ33の反転板を押圧してこれを反転し、中央スイッチ33がオンする。押釦180への押圧を解除すれば反転板の弾性復帰力によって中央スイッチ33はオフし、押釦180は元の位置に自動復帰する。また操作つまみ210の上面の取付台60の4か所の押圧部69の何れかに対応する部分を押圧すれば、ケース150や押釦180等、取付台60上に設置されている各構成部品が取付台60と一体に押圧された方向に傾いて揺動し、下降した側の押圧部69が対向する押圧スイッチ35の反転板を押圧してこれを反転し、押圧スイッチ35がオンする。操作つまみ210への押圧を解除すれば、反転している反転板の弾性復帰力によって操作つまみ210及び取付台60等の各構成部品が一体に元の水平位置に自動復帰し、押圧スイッチ35はオフする。
【0042】
以上説明したように、クリック機能付き多機能型電子部品1は、ケース150と、ケース150の表面側に回転自在に設置される操作つまみ210と、ケース150の操作つまみ210を設置した反対面側に設置されて操作つまみ210と一体に回転してクリック感触を生じさせるクリック弾接体120と、ケース150の操作つまみ210を設置した反対面側に設置され操作つまみ210と一体に回転して電気的出力を変化させる摺動子板110と、操作つまみ210の中央に設けた開口212内に上下動自在に露出する押釦部181を有しこの押釦部181を下降させることでその下方に設置した中央スイッチ33を押圧操作する押釦180とを具備して構成されている。
【0043】
さらにこのクリック機能付き多機能型電子部品1においては、ケース150の操作つまみ210を設置した反対面側(下面側)に回転体90を配置し、この回転体90と操作つまみ210とを一体に回転するように連結し、さらにこの回転体90の操作つまみ210側の中央に押釦180の押釦部181を配置し、回転体90の操作つまみ210を設置した反対面側にクリック弾接体120と摺動子板110を設置し、さらに回転体90のクリック弾接体120と摺動子板110を設置した面(取付面99)の押釦180の押釦部181の真下に少なくとも一部が対向する位置から突出する固定突起101によってクリック弾接体120と摺動子板110を回転体90に取り付けている。
【0044】
以上のように、回転体90の操作つまみ210を取り付けた反対面側にクリック弾接体120と摺動子板110の両者を取り付けたので、クリック弾接体120と摺動子板110の両者を回転体90に同一工程にて取り付けることができ、これによって組立工程の簡素化が図れる。またクリック弾接体120と摺動子板110を取り付ける回転体90の固定突起101の位置を、押釦180の押釦部181の真下にかかる位置としたので、押釦部181の外径寸法に影響されることなく、固定突起101の位置を回転体90の回転中心に近い位置に設置でき、その分クリック弾接体120と摺動子板110の外径寸法を小さくでき、クリック機能付き多機能型電子部品1の小型化を図ることができる。
【0045】
またこのクリック機能付き多機能型電子部品1のクリック弾接体120は、回転体90に取り付ける弾接体基部121と、弾接体基部121の外周から突出するアーム部127とを具備して構成されており、アーム部127中に設けた弾接部133は、回転体90の外周の外側を越えてケース150に設けたクリック係合部161に弾接させる構成となっている。
【0046】
以上のようにクリック弾接体120は、回転体90に取り付ける弾接体基部121の外周側にアーム部127を配置する構成なので、回転体90に取り付ける弾接体基部121の部分を小さく形成しても、その外側のアーム部127の長さ寸法や幅寸法や厚み寸法を大きくすることができ、そのバネ性が損なわれず良好なクリック感触が得られるばかりか、その耐久性が向上する。またクリック弾接体120の弾接体基部121を回転体90の操作つまみ210を取り付けた反対面側に取り付けた上で、クリック弾接体120のアーム部127中に設けた弾接部133を回転体90の外周の外側を越えてケース150に設けたクリック係合部161に弾接させるので、弾接部133は回転体90の厚み寸法分を含む十分な上下動が行える。このため弾接部133の上下動を大きく取ることができ、この点からも良好なクリック感触が得られる。
【0047】
またこのクリック機能付き多機能型電子部品1のクリック弾接体120は、弾接体基部121の外周からアーム基部125を突出して設け、このアーム基部125にアーム部127を連結して構成されており、さらにアーム基部125には、操作つまみ210の押釦180の押釦部181の外周よりも外側位置から突出する回転体固定突起217を係止する係止部131を設けている。このように弾接体基部121の外周からアーム基部125を突出して設け、このアーム基部125に、アーム部127の連結機能と、操作つまみ210の回転体固定突起217の係止機能とを持たせたので、アーム部127の根元部分を確実に固定でき、弾接部133の上下動に伴うアーム部127の湾曲動作が安定し、より良好なクリック感触を得ることができる。
【0048】
またこのクリック機能付き多機能型電子部品1は、摺動子板110を摺接することで変化する電気的出力を取り出す摺接パターン45を設けた回路基板(第1回路基板部41)と、ケース150を載置する取付台60と、取付台60を揺動自在に支持する支持部材(保持板11と保持カバー20)と、取付台60の揺動によって押圧される押圧スイッチ35とをさらに具備しているので、回転式電子部品と押圧式電子部品の機能を有する電子部品に、さらに揺動式電子部品の機能を一体化した多機能型の電子部品を構成することができる。
【0049】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、上記クリック機能付き多機能型電子部品1では、第1回路基板部41と第2回路基板部31を連結部51によって一体に連結しているが、第1回路基板部41と第2回路基板部31とを別個の回路基板として構成しても良い。その場合、第1回路基板部41と第2回路基板部31の少なくとも何れかを硬質の回路基板で構成しても良い。
【0050】
また上記クリック機能付き多機能型電子部品1では、クリック弾接体120と摺動子板110とを直接接合するように重ね合わせて設置したが、両者間に別の部材を介在して重ね合わせても良い。また上記クリック弾接体120は、アーム部127をいわゆる両持ち状に弾接体基部121に連結しているが、片持ち状に弾接体基部121に連結しても良い。またアーム部127の本数は1本又は3本以上であっても良い。また場合によってはアーム基部125の係止部131と操作つまみ210の回転体固定突起217との係合を省略しても良い。
【0051】
また上記クリック機能付き多機能型電子部品1では、電子部品に揺動式電子部品の機能を持たせるために取付台60を支持部材(保持板11と保持カバー20)によって揺動自在に支持させたが、取付台60を揺動自在に支持する構造として他の各種構造を用いても良い。さらに電子部品に揺動式電子部品の機能を持たせる必要がない場合は、取付台60を支持部材によって揺動自在に支持させる構造や押圧スイッチ35は不要となる。
【0052】
また上記クリック機能付き多機能型電子部品1では、中央スイッチ33や押圧スイッチ35を、1枚の合成樹脂フイルム上に形成した接点パターン上に反転板を取り付けることで構成しているが、これらのスイッチは2枚の合成樹脂フイルムを重ね合わせて両合成樹脂フイルムにそれぞれ設けた一対の接点パターンを隙間を介して対向させ、一方の合成樹脂フイルムに設けた接点パターンの裏面側に反転板を設置すること(但し反転板は必ずしも設置しなくて良い)で構成されるいわゆるメンブレンスイッチで構成しても良い。
【符号の説明】
【0053】
1 クリック機能付き多機能型電子部品(電子部品)
10 支持部材
11 保持板
20 保持カバー
30 フレキシブル回路基板
31 第2回路基板部(第2回路基板)
33 中央スイッチ(押圧スイッチ)
35 押圧スイッチ
41 第1回路基板部(第1回路基板)
45 摺接パターン(電気的機能部)
60 取付台
90 回転体
101 固定突起
110 摺動子板(電気的機能部)
120 クリック弾接体
121 弾接体基部
125 アーム基部
127 アーム部
131 係止部
133 弾接部
150 ケース
161 クリック係合部
180 押釦
181 押釦部
183 押圧部
210 操作つまみ
212 開口
217 回転体固定突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケースの表面側に回転自在に設置される操作つまみと、
前記ケースの前記操作つまみを設置した反対面側に設置されて前記操作つまみと一体に回転してクリック感触を生じさせるクリック弾接体と、
前記ケースの前記操作つまみを設置した反対面側に設置され前記操作つまみと一体に回転して電気的出力を変化させる摺動子板と、
前記操作つまみの中央に設けた開口内に上下動自在に露出する押釦部を有しこの押釦部を下降させることでその下方に設置した押圧スイッチを押圧操作する押釦と、を具備する電子部品において、
前記ケースの前記操作つまみを設置した反対面側に回転体を配置し、この回転体と前記操作つまみとを一体に回転するように連結し、さらにこの回転体の操作つまみ側の中央に前記押釦の押釦部を配置し、
前記回転体の前記操作つまみを設置した反対面側に前記クリック弾接体と摺動子板を設置し、さらに回転体の前記クリック弾接体と摺動子板を設置した面の前記押釦の押釦部の真下に少なくとも一部が対向する位置から突出する固定突起によってこれらクリック弾接体と摺動子板を回転体に取り付けたことを特徴とする電子部品。
【請求項2】
請求項1に記載の電子部品であって、
前記クリック弾接体は、前記回転体に取り付ける弾接体基部と、弾接体基部の外周側に配置されるアーム部とを具備して構成されており、アーム部中に設けた弾接部を、回転体の外周の外側を越えて前記ケースに設けたクリック係合部に弾接させることを特徴とする電子部品。
【請求項3】
請求項2に記載の電子部品であって、
前記クリック弾接体は、前記弾接体基部の外周からアーム基部を突出して設け、このアーム基部に前記アーム部を連結して構成されており、
さらに前記アーム基部には、前記操作つまみから突出する回転体固定突起を係止する係止部を設けたことを特徴とする電子部品。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の電子部品であって、
前記摺動子板を摺接させる摺接パターンを設けた回路基板と、
前記回路基板及びケースを載置する取付台と、
前記取付台を揺動自在に支持する支持部材と、
前記取付台の揺動によって押圧される押圧スイッチと、
をさらに具備することを特徴とする電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−41727(P2013−41727A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177153(P2011−177153)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000215833)帝国通信工業株式会社 (262)
【Fターム(参考)】