説明

電子部材の保存方法

【課題】 無酸素無水分包装で製造直後から実装直前まで保存することにより、鉛フリーはんだ導入後、実施されてきた高温リフロー時のデラミネーションを防ぐ目的で実施されているベーキング工程を必要としない、電子部材の保存方法を提供する。
【解決手段】 電子部材を酸素吸収機能の発現に水を必要としない酸素吸収剤及び脱湿材とともにガスバリア性容器内に収納する、電子部材の保存方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部材の保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部材を大気を含む環境で保存した場合、ポリエチレンの袋の様なガスバリア性の低い袋に封入し保存した場合、ガスバリア性の低い袋に乾燥したシリカゲルやゼオライトと共に封入し保存した場合、乾燥剤無しでガスバリア性の袋に保存した場合等では、保存中に電子部材が吸湿することが避けられない。このため、通常、電子基板に電子部品を実装する直前に、125℃〜150℃で所定の時間、ベーキング工程を行って乾燥し、実装時の加熱の際に発生するデラミネーションやポップコーンなどの変形を防ぐことが広く行われている。その場合の実施規格として、例えば、非特許文献1には電子部材の大気下放置時間ごとのベーキング時間・温度が定められている。
【0003】
しかし、ベーキング工程による電子部材の乾燥は、ベーキング工程の温度や時間、保存期間や保存温度、保存湿度が厳密に管理されない場合、必ずしもデラミネーション等の不良を根絶することは出来ず、さらに、ベーキング工程時の酸化に起因する接合不良も発生することがあった。
【0004】
一方、電子部材の保存方法としては、例えば、特許文献1では、鉄系リードフレームの保存方法が紹介され、特許文献2では、貴金属メッキされた電子部材の保存方法が紹介されているが、近年、環境問題の観点から鉛フリーはんだが幅広く使用され、その中でも錫−銀−銅を用いた三元系はんだが推奨されるようになった。そのため、錫と鉛からなる共晶はんだを用いて接合させるよりも、電子基板への実装工程でのリフロー・フロー工程は、温度を高くする必要が生じ、デラミネーション等の変形による不良の発生はより深刻となった。
【0005】
また、錫−銀−銅を用いた三元系はんだは、錫と鉛からなる共晶はんだよりも濡れ性が悪い上に粘度が高いため、保存時及びベーキング工程時の酸化による接合不良が発生しやすいという欠点も有している。
【0006】
【特許文献1】特開平9−207966号公報
【特許文献2】特開平9−286469号公報
【非特許文献1】IPC/JEDEC J−STD−033B.1(Joint Electron Device Engineering Council規格)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、電子部材実装時に鉛フリーはんだを用いるような場合であっても、その前処理としてベーキング工程を必要としない、電子部材の保存方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するには、電子部材を酸素吸収剤及び脱湿剤と共にガスバリア性容器内に収納する電子部材の保存方法を見いだし、本発明を完成した。
【0009】
即ち本発明は、電子部材を酸素吸収機能の発現に水を必要としない酸素吸収剤及び脱湿材とともにガスバリア性容器内に収納する、電子部材の保存方法である。
【0010】
本発明の好ましい実施態様においては、該酸素吸収剤が、不飽和脂肪酸化合物または、不飽和基を有する鎖状炭化水素重合物を主剤とし、且つ酸素吸収促進物質を含むこと、該酸素吸収剤の主剤が液状であって、該主剤が担体物質に含浸されてなること、該不飽和脂肪酸化合物が大豆油であり、且つ該酸素吸収促進物質がコバルト原子を含む物質であること、該ガスバリア性容器が、25℃、60%RHにおける酸素透過度が10ml/m/Day/atm以下で、かつ、40℃、60%RHにおける透湿度が1g/m/day以下であること、該電子部材が電子基板であることである。
【0011】
また本発明は、上記の方法により保存された電子基板と、電子部品の金属製端子とを、はんだにより接続してなる、電子部品を実装した電子基板である。
【0012】
さらにまた、本発明で用いられるはんだとしては、鉛フリーはんだが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の保存方法により、実装工程前のベーキング工程を省略可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明でいう電子部材とは、組立又は実装して回路を形成する電子機器に用いる各部材であり、電子基板や電子部品が例示できる。
【0015】
本発明でいう電子基板とは、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂やフェノール樹脂等の絶縁性基材上に回路パターンを形成し、半導体や抵抗・コンデンサー等の電子部品を搭載して回路を形成する基板であり、例えば半導体を接続するインターポーザや各電子部品を搭載して使用するマザーボード、BGA基板、FR−4基板が例示できる。
【0016】
本発明でいう電子部品とは、接続端子が金属であり、電子基板と接続して回路を形成する部品のことである。電子部品は、リードフレームを持つ部品及び表面実装部品が挙げられ、これらの電子部品は、例えば、プラスチック、金属、セラミック、半導体等の素材から構成される。
【0017】
また、本発明でいうリフローとは、はんだクリーム(はんだ粉末にフラックスを加えたペースト状のもの)を電子基板に印刷し、その上に電子部品を搭載して加熱、接合するはんだ付け工法である。フローとは基板の接続用開孔部に部品のリード線を通して差し込んで搭載し、溶融したはんだを接続部位に付着させて接合するはんだ付け工程である。なお、リフローで用いられる鉛フリーはんだは、錫−銀−銅の3元系はんだが最も信頼性が高いとされ主流となっている。
【0018】
本発明の保存方法においては、電子部材を、酸素並びに水分を実質的に除去したガスバリア性容器に収納し、密閉する必要がある。ここで実質的に酸素を取り去った状態とは、酸素濃度が1%以下、好ましくは0.1%以下の状態をいう。また、実質的に水分を取り去った状態とは、25℃での相対湿度が5%RH以下、好ましくは1%RH以下の状態をいう。上記の範囲を超えて酸素及び水分濃度が高い場合、電子部品の接続部などの酸化、電子基板の銅箔部等の酸化、電子部品のプラスチック部分や接着部の吸湿、電子基板の樹脂部分への吸湿等が発生し、リフロー時にデラミネーションやポップコーン等の変形や劣化の原因となる。それ故、ベーキング工程による電子部品の脱湿が必要となるが、ベーキング工程においては電子部材の酸化が進行しやすく、結果として電子基板との接続不良を引き起こす原因となる。
【0019】
本発明に用いられる酸素吸収剤は、酸素吸収に水分を必要としないものであれば特に制限を受けるものではない。例えば、不飽和脂肪酸化合物や不飽和基を有する鎖状炭化水素重合物の不飽和有機化合物、ポリアミドやポリオレフィン等の熱可塑性重合物を主剤とし、遷移金属塩等の酸素吸収促進物質を含む酸素吸収剤があげられるが、不飽和脂肪酸化合物または、不飽和基を有する鎖状炭化水素重合物を主剤とし、酸素吸収促進物質を含む酸素吸収剤が好ましい。
【0020】
酸素吸収剤に用いられる不飽和脂肪酸化合物とは、炭素数が10以上で炭素間に2重結合を1つ以上持った脂肪酸化合物、若しくは該脂肪酸化合物の塩またはそのエステルである。該不飽和脂肪酸化合物は、置換基、例えば、水酸基やホルミル基等を、脂肪酸部に有していても良い。また、不飽和脂肪酸化合物は必ずしも単一物質である必要はなく、2種以上の混合物であっても良い。
【0021】
不飽和脂肪酸化合物の例として、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、パリナリン酸、ダイマー酸またはリシノール酸等の不飽和脂肪酸、およびこれらのエステルを含有する油脂、エステル類や金属塩があげられる。また、不飽和脂肪酸化合物として、植物油、動物油から得られる脂肪酸、すなわち、アマニ油脂肪酸、大豆油脂脂肪酸、桐油脂肪酸、糠油脂肪酸、胡麻油脂肪酸、綿実油脂肪酸、菜種油脂肪酸やトール油脂肪酸等も用いられる。
【0022】
不飽和基を有する鎖状炭化水素重合物とは、炭素数10以上で炭素原子間に2重結合を1つ以上有した重合物またはその誘導体である。該誘導体は、置換基として、例えば、水酸基、アミノ基、ホルミル基やカルボキシル基等が存在しても良い。不飽和基を有する鎖状炭化水素重合物は、例えば、ブタジエン、イソプレンや1,3−ペンタジエンなどのオリゴマーや重合体があげられ、これらは、必ずしも単一物質である必要はなく、共重合体や2種以上の混合物であっても良い。不飽和基を有する鎖状炭化水素重合物は、必ずしも純粋物質である必要はなく、その製造時に混入してくる溶媒等の少量の不純物は、常識的な範囲で許容される。
【0023】
酸素吸収促進物質としては、有機化合物の酸化を促進する金属塩やラジカル開始剤をあげることができる。金属塩の金属種としては、Cu、Fe、Co、Ni、CrやMn等の遷移金属が好ましく、遷移金属塩として、例えば、不飽和脂肪酸遷移金属塩が好適に用いられる。
【0024】
前記の主剤等が液状物質である場合、担体物質にこれを含浸させて用いることが好ましい。酸素吸収剤に用いられる担体物質としては、例えば、天然パルプ、合成パルプからなる紙や合成紙、シリカゲル、アルミナ、活性炭、ゼオライト(天然ゼオライト、合成ゼオライト)、パーライトや活性白土等があげられる。また、担体物質に、脱湿能や酸性ガス吸収能を持たせ、脱湿剤や酸性ガス吸収剤とすることも実質的な使用方法である。
【0025】
酸素吸収剤における各成分の割合は、主剤100重量部に対し、酸素吸収促進物質は、0.01〜40重量部の範囲であり、担体物質は1〜1,000重量部の範囲である。
【0026】
本発明に用いられる脱湿剤としては、例えば、天然パルプ、合成パルプからなる紙や合成紙、シリカゲル、アルミナ、活性炭、ゼオライト(天然ゼオライト、合成ゼオライト)、パーライト、活性白土、生石灰、酸化バリウム、塩化カルシウム、臭化バリウム、水酸化カルシウム、硫酸カルシウム、塩化マグネシウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、塩化亜鉛等があげられる。これら脱湿剤は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いても良い。また上記の担体物質又は、酸性ガス吸収剤に脱湿機能をもつものを選んだ場合は、改めて脱湿剤を加えなくても良い。
【0027】
本発明に用いられる酸性ガス吸収剤としては、密閉雰囲気に存在する酸性物質を吸収又は吸着できる物質であれば特に制約はなく、例えば、紙や合成紙、合成樹脂類、ゼオライト(天然ゼオライト、合成ゼオライト)や活性炭に示される多孔性物質類ならびにアルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩や有機アミン類が用いられる。これら酸性ガス吸収剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いても良い。また、上記の担体物質又は、脱湿剤に酸性ガス吸収機能をもつものを選んだ場合は、改めて酸性ガス吸収剤を加えなくても良い。
【0028】
本発明の酸素吸収剤および脱湿剤の使用量としては、酸素吸収剤は、少なくともガスバリア性の密閉容器内の空間容積の酸素を吸収することができる量であり、好ましくはその量の1.1〜10倍の範囲であり、また脱湿剤は、少なくともガスバリア性密閉容器内の空間容積の水分を吸収することができる量であり、好ましくはその量の1.1〜500倍の範囲であり、ガスバリア性の密閉容器のバリア性能に応じ適宜選ばれる。
【0029】
本発明の酸素吸収剤、脱湿剤、さらには酸性ガス吸収剤は、各成分を混合して用いることも可能である。これらの単一剤あるいは混合物は適宜、粉体、顆粒、錠剤やシート状等にして用いられる。酸素吸収剤、脱湿剤、さらには酸性ガス吸収剤は、被保存物に直接触れることは好ましくなく、例えば、通常は紙または不織布を基材とする公知の通気性包材に包装して包装体として使用される。またこれら酸素吸収剤は、その一部あるいは全部を、脱湿剤さらには酸性ガス吸収剤と一緒の包装体として使用しても良い。包装体の形態は、特に限定されたものではなく、目的に応じて、例えば、小袋、シート、ブリスター包装体等をとることができる。包装体の包装材料および構成は特に限定されない。また、防塵対策として、上記の包装体を酸素、水分および酸性ガスの透過性に支障を来さず、かつ包装体から発生するダストを外部に放出させない無塵包材でさらに覆い、二重包装体とすることも可能である。しかし、包装体自体に防塵対策が施されている場合には、改めて無塵包材で覆う必要はない。
【0030】
本発明のガスバリア性の密閉容器は、保存期間を充分に長くとる場合は、ガスバリア性が不充分であると、ガスバリア性の密閉容器内の酸素、水分濃度の上昇につながりかねないので、例えば、プラスチック容器、フィルム袋、金属容器、ガラス容器等の、ガスバリア性の高い容器が望ましい。ガスバリア性密閉容器のガスバリア性としては、25℃、60%RHにおける酸素透過度が10ml/m/Day/atm以下であり、かつ、40℃、60%RHにおける水蒸気透過度が1g/m/Day以下であることが好ましい。一方、容器に電子部材を密閉保存する際、窒素、アルゴン等の乾燥不活性ガスで容器内を置換しても良い。このようなガス置換法は、酸素吸収剤や脱湿剤の、特に酸素吸収剤の使用量低減につながるので好ましい。
【実施例】
【0031】
以下に、本発明の実施例を示し、さらに具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
(酸素吸収剤の製造)
不飽和有機化合物として、大豆油を、また酸素吸収促進物質として、ナフテン酸コバルト(Co含有量8重量%)をそれぞれ選択し、大豆油100重量部とナフテン酸コバルト2重量部の混合物に天然ゼオライト(モルデナイト)350重量部を加え、ブレンダーで混合した後、25℃で10分間静置して流動性のある紛粒体とし、酸素吸収剤を得た。
【0033】
(実施例1)
前記酸素吸収剤5gと、脱湿剤及び酸性ガス吸収剤として機能する生石灰2.5gを混合し、内面に、開孔したポリエチレンフィルムをラミネートした紙の小袋(ポリエチレン層15μm/紙(38g/m)、内寸サイズ5cm×7.5cm)に充填後、開孔部をヒートシールし、ガス吸収剤包装体(以下、単にガス吸収剤という)を製造した。
【0034】
BGA基板(ビスマレイミドトリアジン樹脂4層、5cm×18.7cm、厚さ0.35mm、銅箔厚み35μm)1枚と上記したガス吸収剤1包とを、アルミニウム箔積層材(ポリエチレンテレフタレート層12μm/アルミニウム箔層7μm/ポリエチレン層100μm)からなる包装袋(サイズ:220mm×300mm、以下「アルミ袋」という)に空気500ml(25℃、75%RH)と共に入れ、袋の開口部をヒートシールして密閉した。このアルミ袋を85℃、85%RHの雰囲気下で168時間放置した。168時間保存した上記アルミ袋を開封し、BGA基板を取り出して最高温度260℃の温度プロファイルに設定したリフロー炉(古河電気工業株式会社製サラマンダXNB−738PC−C)を用いて3回リフローし、リフロー後の外観を観察した。観察した6枚のBGA基板中のデラミネーション発生数を表1に示した。
【0035】
(比較例1)
105℃で1時間乾燥させ、濃いコバルトブルーとなったシリカゲル10gを通気性不織布8.0cm×8.0cmに封入した包装体1包(以下「シリカゲル包装体」という)を、ガス吸収剤の代わりに用い、また、アルミ袋の代わりにポリエチレン袋(以下、「PE袋」という)を用いた他は、実施例1と同様に保存、リフロー、観察を行った。観察した6枚のBGA基板中のデラミネーション発生数を表1に示した。
【0036】
(比較例2)
保存後、125℃で2時間ベーキングした以外は、比較例1と同様に保存、リフロー、観察を行った。観察した6枚のBGA基板中のデラミネーション発生数を表1に示した。
【0037】
【表1】

【0038】
表1に示したように、電子部材基板を酸素及び水分を実質的に取り去った雰囲気に保持することにより、リフロー前にベーキング工程を省略してもデラミネーションの発生を防ぐことが可能であり、従来のベーキング工程の実施よりもデラミネーションの防止効果が優れていた。このことから本発明の電子部材の保存方法が、優れたデラミネーション防止効果を有することが示された。
【0039】
(実施例2)
銅張り積層板(FR−4基板、2.5cm×2.0cm、厚み1.6mm、銅箔厚み18μm)を、ソフトエッチング剤CPE700(三菱ガス化学株式会社製)でソフトエッチングし、3重量%希硫酸で洗浄後、蒸留水で表面を洗い流し、表面に付着した水分を窒素ガスで吹き飛ばした後、上記したガス吸収剤1包及び空気500ml(25℃、70%RH)と共にアルミ袋に入れ、袋の開口部をヒートシールして密封した。このアルミ袋を25℃、50%RHで16時間放置した後、さらに60℃、60%RHで4日間放置して、袋内の酸素濃度、及び相対湿度を測定したところ、それぞれ0.1%以下、及び1%RH以下(25℃)であった。
【0040】
上記の条件で4日間放置した後、アルミ袋から前記銅張り積層板を取り出し、連続電気化学還元法を用いて酸化膜厚を測定した。また、該銅張り積層板に、φ0.3の開孔をピッチ0.5でグリッド状に10×10箇所に並べた厚み0.1mmのメタルマスクを載せ、スキージにて鉛フリーはんだ(M705−GRN360−K2−V;Sn96.5/Ag3.0/Cu0.5、千住金属工業株式会社製)を塗布し、メタルマスクをはがした後、リフローシミュレーターSRS−1(株式会社マルコム製)を用いて最高温度235℃の温度プロファイルでリフロー後、塗布後とリフロー後のはんだの直径を測定し、直径の拡大率を計算した。酸化膜厚とはんだの直径の拡大率を表2に示した。
【0041】
(比較例3)
実施例2と同様にしてアルミ袋内で保存したソフトエッチング処理後の銅張り積層板を、125℃、2時間大気下でベーキング処理した後、実施例2と同様に酸化膜厚の測定と鉛フリーはんだをリフローして、塗布後とリフロー後のはんだの直径を測定し、直径の拡大率を計算した。酸化膜厚とはんだの直径の拡大率を表2に示した。
【0042】
【表2】

【0043】
(実施例3)
銅張り積層板(FR−4基板、40mm×40mm、厚み1.6mm、銅箔厚み35μm)を用い、厚み35μm、φ0.5の銅箔(以下、銅ランドと記載)をピッチ2.5mmでグリッド状に15×15個所配置し、銅ランド部以外の部分をソルダーマスクで塗布した基板を準備した。続いて該基板を、ソフトエッチング剤CPE700(三菱ガス化学株式会社製)でソフトエッチングし、3重量%希硫酸で洗浄後、蒸留水で表面を洗い流し、表面に付着した水分を窒素ガスで吹き飛ばした後、上記したガス吸収剤1包及び空気500ml(25℃、70%RH)と共にアルミ袋に空気500ml(25℃、70%RH)に入れ、袋の開口部をヒートシールして密封した。このアルミ袋を25℃、50%RHで16時間放置した後、60℃、60%RHで4日間放置して、袋内の酸素濃度、及び相対湿度を測定したところ、それぞれ0.1%以下、及び1%RH以下(25℃)であった。
【0044】
上記の条件で4日間放置した後、アルミ袋からソフトエッチング処理済みの前記銅張り積層板を取り出し、はんだボール搭載機(Printer Kit Orbit、株式会社モリカワ製)を用いて、水溶性フラックス(スパークルフラックスWF−6050、千住金属工業株式会社製)を基板ランド上に塗布し、φ0.5鉛フリーはんだボール(Sn96.5/Ag3.0/Cu0.5、千住金属工業株式会社製)をフラックス上に搭載後、リフローシミュレーターSRS−1(株式会社マルコム製)を用いて窒素気流下で最高温度235℃の温度プロファイルでリフローし、はんだボールを接続してリフロー1回時の試料とすると共に、更に2回リフローを繰り返すことで、リフロー3回時の試料とした。はんだボールを接続した試料は、リフロー1回品および3回品の両試料について、ハイスピードボンドテスター(4000HS、株式会社アークテック所有、デイジ社製)を用いて、シェア高さ100μm、シェアスピード1000mm/sでシェア試験を行い、各3枚、1枚当たり10カ所ずつ破壊エネルギーと破断部位を確認した。破壊エネルギーの平均と各破断部位別の破壊発生数を表3に示した。
【0045】
(比較例4)
実施例3と同様にしてアルミ袋内で保存したソフトエッチング処理後の銅張り積層板を、125℃、2時間大気下でベーキング処理し、処理後、実施例3と同様にはんだボールを接続して、リフロー1回品と3回品のボールシェア試験を行って、破壊エネルギーと破断部位を確認した。破壊エネルギーの平均と各破断部位別の破壊発生数を表3に示した。
【0046】
【表3】

【0047】
表3において、ベーキング処理を実施した比較例4では、はんだ破壊やランド破壊よりも、界面破壊が多く発生した。このことから、比較例4においては、はんだボールと銅箔との接続強度が、はんだボールそのものの強度や銅箔と基板樹脂との接着強度よりも、弱いことが分かる。一方、ベーキング処理を実施しなかった実施例3においては、比較例4とは逆に、界面破壊よりもランド破壊が進行しやすい傾向にあったため、はんだボールと銅箔との接続強度が強固であったことが分かる。
【0048】
表2及び表3に示したように、従来のベーキング工程は酸化膜厚の増加をもたらし、その結果鉛フリーはんだの濡れ性の低下や、銅箔との接続強度の低下を引き起こすことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明により、はんだによる実装前のベーキング工程を省略でき、その結果、リフローやフロー時の高温での実装時のデラミネーション発生を防止でき、しかもベーキング工程による酸化が引き起こす濡れ性の低下や接続強度の低下を防ぐことが可能となった。これにより、実装前の電子部材を高品質の状態で保存が可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部材を酸素吸収機能の発現に水を必要としない酸素吸収剤及び脱湿材とともにガスバリア性容器内に収納する、電子部材の保存方法。
【請求項2】
該酸素吸収剤が、不飽和脂肪酸化合物または、不飽和基を有する鎖状炭化水素重合物を主剤とし、且つ酸素吸収促進物質を含む、請求項1記載の電子部材の保存方法。
【請求項3】
該酸素吸収剤の主剤が液状であって、該主剤が担体物質に含浸されてなる、請求項2記載の電子部材の保存方法。
【請求項4】
該不飽和脂肪酸化合物が大豆油であり、且つ該酸素吸収促進物質がコバルト原子を含む物質である、請求項2または3記載の電子部材の保存方法。
【請求項5】
該ガスバリア性容器が、25℃、60%RHにおける酸素透過度が10ml/m/Day/atm以下で、かつ、40℃、60%RHにおける透湿度が1g/m/day以下である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電子部材の保存方法。
【請求項6】
該電子部材が電子基板である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の保存方法
【請求項7】
請求項6記載の方法により保存された電子基板と、電子部品の金属製端子とを、はんだにより接続してなる、電子部品を実装した電子基板。
【請求項8】
該はんだが鉛フリーはんだである、請求項7記載の電子基板。

【公開番号】特開2009−214922(P2009−214922A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62616(P2008−62616)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】